説明

切断刃の再生方法及びその再生設備

【課題】 先端エッジ部及びサイドエッジ部が摩耗した切断刃を、安定した品質の切断刃に効率良く再生できるようにすること。
【解決手段】 刃先部を備え、刃先部は、回転方向に向かって尖った先端エッジ部を有し、刃先部を含む側面外縁部にサイドエッジ部を有する補修される切断刃の再生方法であって、先端エッジ部及びサイドエッジ部の磨耗量の程度の異なる切断刃を、その磨耗量の程度に応じてグループA〜Eに分けるグループ分け工程と、それぞれの各グループA〜Dに属する切断刃の先端エッジ部及びサイドエッジ部に対して、各グループごとに定めた肉盛りされる基準線K1、K2,・・・、K4を通る位置に面取り加工を行う面取り工程と、面取り加工が行われた先端エッジ部及びサイドエッジ部に対して肉盛り溶接を行なう肉盛り溶接工程と、切断刃の肉盛り溶接部分を所定の先端エッジ部及びサイドエッジ部の形状に再生加工する加工工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剪断式破砕機等に用いられる切断刃の再生方法、及びその再生設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック、木片、紙、金属、ゴム、繊維、及び皮革等の固形状の被破砕物を剪断破砕する剪断式破砕機が知られている。例えば、この種の剪断式破砕機として、本出願人が先に出願した剪断式破砕機がある(特許文献1参照)。
【0003】
図23の剪断式破砕機を示す横断面図と、図24に示すXXIIII−XXIIII断面図とに示すように、この剪断式破砕機100は、回転軸101、102の軸方向に、複数の回転刃103がスペーサ104を挟んで交互に設けられている。スペーサ104は、図23に示すように、回転刃103の基部を軸方向に位置決めできる外径に形成され、これによって、回転刃103を軸方向に位置決めして着脱自在に取り付けている。
【0004】
これらの回転刃103は、図23に示すように、回転軸101、102に着脱自在に取り付けられている刃台部106と、この刃台部106の周囲を取り囲むように着脱自在に取り付けられている分割式の切断刃105とを有しており、回転方向R側に回転する回転刃103の互いに対向する側面間には、例えば、0.5mm〜1mm程度の軸方向隙間を設けた状態で互いの切断刃105が噛合うようにオーバーラップした状態で配置されている。この回転刃103の外周に設けられた切断刃105は、被破砕物120を引き込むとともに、互いに対向する回転刃103どうし間での剪断作用によって被破砕物120を破砕する。
【0005】
また、切断刃105の取付面には係合段部107が設けられており、この係合段部107が刃台部106に設けられた係合突起108と係合して破砕反力を受けるようになっている。この分割式の切断刃105は、外向きに突出する刃先部の回転方向に尖った先端エッジ部109と、側面外縁部に沿って形成されたサイドエッジ部110(側縁)とを具備している。
【0006】
これらエッジ部109、110は、剪断破砕によって早期摩耗するが、これらのエッジ部109、110を有する切断刃105を分割式とすることにより、エッジ部109、110が磨耗しても切断刃105のみを交換できるようにしている。
【0007】
ところで、この種の剪断式破砕機100における切断刃105は、先端エッジ部109で被破砕物の引き込み及び破砕を行い、この先端エッジ部109及びサイドエッジ部110で剪断破砕を行うため、先端エッジ部109及びサイドエッジ部110に早期摩耗が生じる。
【0008】
この早期摩耗としては、先端エッジ部109及びサイドエッジ部110が丸味を帯びた状態(ラウンド状)となる摩耗であり、この摩耗が生じると破砕性能が低下して破砕効率が落ちてしまう。また、被破砕物によってはエッジ部109、110に欠損等が生じることがあり、この欠損が生じても、破砕性能が低下して破砕効率が低下してしまう。そのため、このような摩耗・欠損(これら「摩耗」と「欠損」とを総称して「磨損」と言う。)が発生した場合には、一般的に、その都度新しい切断刃105に交換している。
【0009】
しかしながら、上記したような分割式の切断刃105を採用している破砕機であっても、例えば1台で数十個の切断刃105が使用されており、交換のために多くの費用と労力を要する。
【0010】
しかも、このような切断刃105は、耐摩耗性を高めるために全体が合金工具鋼のような高価な材料で製造されており、上記したように多くの切断刃105が使用されている剪断式破砕機100の場合には、その切断刃105の全てを新品に交換しようとすると多大な費用を要する。また、資源の有効活用にならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−323232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上記したように、磨損した切断刃105の全てを新品に交換するには多大な費用を要するため、磨損が生じた切断刃105のエッジ部109、110に硬化肉盛溶接材を肉盛り溶接し、その肉盛り溶接した部分を規定のエッジ部109、110に再生加工して切断刃105自体を再利用しようとする考えがある。
【0013】
しかし、このような再生は、作業者の熟練度によって肉盛り溶接の品質や状態が異なり、仕上がりに差が生じて安定した品質を保つのは難しい。しかも、多数の切断刃105を再生するには非常に多くの時間と労力を要するため、実現化は難しい。
【0014】
一方、仮に、切断刃105のエッジ部を自動機械で再生する場合、切断刃105のエッジ部の形状が、外向きに突出する刃先部の回転方向に向かって尖った先端エッジ部109と、この先端エッジ部109に連続する曲面形状のサイドエッジ部110とで形成されているため、そのようなエッジ部の一部が磨損しているような場合に、その部分で自動機械による自動肉盛り溶接が停止してしまうトラブル(以下、「チョコ停」という)が発生し、自動肉盛り溶接の再開のために再起動などの処置によって現状復帰させるまで、設備が停止して生産効率を低下させてしまうことがある。しかし、切断刃105の再生において、この「チョコ停」を防止するための有効な対策はない。
【0015】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、先端エッジ部及びサイドエッジ部が摩耗した切断刃を、安定した品質の切断刃に効率良く再生することができる切断刃の再生方法、及びその再生設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る切断刃の再生方法は、固定部と、この固定部から外向きに突出する刃先部とを備え、前記刃先部は、回転方向に向かって尖った先端エッジ部を有し、前記刃先部を含む側面外縁部にサイドエッジ部を有する補修される切断刃の再生方法であって、前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部の磨耗量の程度の異なる前記切断刃を、その磨耗量の程度に応じて複数のグループに分けるグループ分け工程と、それぞれの前記各グループに属する前記切断刃の前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部に対して、前記各グループごとに定めた肉盛りされる基準となる基準線又は基準面を通る位置に面取り加工を行う面取り工程と、前記面取り加工が行われた前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部に対して肉盛り溶接を行なう肉盛り溶接工程と、前記切断刃の肉盛り溶接部分を所定の前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部の形状となるように再生加工する加工工程とを備えることを特徴とするものである。
【0017】
本発明に係る切断刃の再生方法によると、まず、先端エッジ部及びサイドエッジ部の磨耗量の程度の異なる補修される切断刃を、その磨耗量の程度に応じて複数のグループに分ける(グループ分け工程)。次に、それぞれの各グループに属する切断刃の先端エッジ部及びサイドエッジ部に対して、各グループごとに定めた肉盛りされる基準となる基準線又は基準面を通る位置に面取り加工を行う(面取り工程)。そして、面取り加工が行われた先端エッジ部及びサイドエッジ部に対して肉盛り溶接を行なう(肉盛り溶接工程)。しかる後に、切断刃の肉盛り溶接された部分を所定の先端エッジ部及びサイドエッジ部の形状となるように再生加工する(加工工程)。このようにして、補修される切断刃を再生して再利用できるようにすることができる。
【0018】
この発明に係る切断刃の再生方法において、前記肉盛り溶接工程は、前記各グループごとに定めた肉盛り量の肉盛り溶接を、前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部に対して行なうものとすることができる。
【0019】
このように、切断刃の先端エッジ部及びサイドエッジ部に対して肉盛り溶接する肉盛り量が、各グループごとに定められているので、各グループに属する切断刃に対して肉盛り溶接するときの溶接機の溶接条件(例えば溶接トーチの送り速度、肉盛り溶接材の供給速度)を、例えば同一にすることができる。これによって、切断刃に対する肉盛り溶接の自動化を図ることができ、肉盛り溶接の品質の向上及び安定を図ることができ、溶接コストの低減を図ることができる。
【0020】
この発明に係る切断刃の再生方法において、肉盛り溶接工程において、前記面取り加工が行われた前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部に対しての肉盛り溶接を自動溶接機で行なうものとすることができる。
【0021】
このように、肉盛り溶接を自動溶接機で行なうと、作業者の労力の削減、摩耗した切断刃の再生作業の効率の向上、再生した切断刃の品質の安定化を図ることができる。更に、剪断式破砕機における切断刃のランニングコストの削減が可能となる。
【0022】
この発明に係る切断刃の再生方法において、前記グループ分け工程は、前記切断刃の前記刃先部の厚み方向の幅寸法に基づいて、前記切断刃を複数の前記グループに分けるものとすることができる。
【0023】
このように、切断刃の刃先部の厚み方向の幅寸法に基づいて、切断刃を複数のグループに分けるようにすると、この切断刃の刃先部を含む側面外縁部に形成されているサイドエッジ部の幅方向の磨耗量を正確に測定することができる。これによって、サイドエッジ部に対して、各グループごとに定めた肉盛りされる基準となる基準線又は基準面を通る位置に適格に面取り加工を行うことができる。このように、適格に面取り加工ができると、その面取り部に対して必要とされる肉盛り量の溶接を正確に行うことができ、これによって、サイドエッジ部における切断刃の厚み方向の幅寸法を新品と略同一となるように再生加工することができる。
【0024】
その結果、例えば互いに対向して設けられている2つの回転する切断刃のそれぞれに形成されているサイドエッジ部どうしが、互いに重なり合うことによって被破砕物を剪断破砕する場合に、そのサイドエッジ部どうしの隙間を、略設計値となるように補修することができ、被破砕物を効率よく剪断破砕することができる。
【0025】
この発明に係る切断刃の再生方法において、前記面取り加工が行なわれた前記切断刃を所定温度に予熱処理する予熱工程と、前記肉盛り溶接された前記切断刃を所定温度で後熱処理する後熱工程とを備え、前記肉盛り溶接工程は、前記予熱処理され、かつ、前記切断刃の面取りが行なわれている前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部に硬化肉盛溶接材を連続的に供給して自動肉盛り溶接を行ない、前記加工工程は、前記後熱処理された前記切断刃の肉盛り溶接部分に対して前記再生加工するものとすることができる。
【0026】
このように、切断刃を予熱処理すると、面取りが行なわれている先端エッジ部及びサイドエッジ部に対して、良好な肉盛り溶接を可能とすることができ、これによって、硬化肉盛溶接材を連続的に供給して、自動溶接機によって自動肉盛り溶接をすることが可能となる。そして、切断刃を後熱処理することによって、切断刃の残留応力を除去することができ、割れや変形を防止できる。
【0027】
この発明に係る切断刃の再生方法において、前記予熱工程と、前記肉盛り溶接工程と、前記後熱工程との間における前記切断刃の移動をロボットで行うものとすることができる。
【0028】
このようにすれば、先端エッジ部及びサイドエッジ部が複雑な形状の切断刃であっても、肉盛り溶接前の予熱処理から溶接後の後熱処理までの切断刃の移動を迅速に安定して行うことができる。
【0029】
本発明に係る切断刃の再生設備は、固定部と、この固定部から外向きに突出する刃先部とを備え、前記刃先部は、回転方向に向かって尖った先端エッジ部を有し、前記刃先部を含む側面外縁部にサイドエッジ部を有する補修される切断刃を、磨耗量の程度に応じて複数のグループに分けてグループごとに再生加工する切断刃の再生設備であって、それぞれの前記各グループに属する前記切断刃の前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部に対して、前記各グループごとに定めた肉盛りされる基準となる基準線又は基準面を通るように面取り加工を行う面取り機と、
前記面取り加工が行われた前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部に対して肉盛り溶接を行なう肉盛り溶接機と、前記切断刃の肉盛り溶接部分を所定の前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部の形状となるように再生加工する加工機とを備えることを特徴とするものである。
【0030】
本発明に係る切断刃の再生設備によると、先端エッジ部、及びサイドエッジ部を有する補修される切断刃を、磨耗量の程度に応じて複数のグループに分けてグループごとに再生加工することができる。
【0031】
まず、面取り機は、それぞれの各グループに属する切断刃の先端エッジ部及びサイドエッジ部に対して、各グループごとに定めた肉盛りされる基準となる基準線又は基準面を通るように面取り加工を行う。次に、肉盛り溶接機が、面取り加工が行われた先端エッジ部及びサイドエッジ部に対して肉盛り溶接を行ない、そして、加工機が、切断刃の肉盛り溶接部分を所定の先端エッジ部及びサイドエッジ部の形状となるように再生加工する。このようにして、補修される切断刃を再生して再利用できるようにすることができる。
【0032】
この発明に係る切断刃の再生設備において、前記肉盛り溶接機は、前記各グループごとに定めた肉盛り量の肉盛り溶接を、前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部に対して行なうものとすることができる。
【0033】
このようにすると、切断刃の再生方法で説明したのと同様に作用する。
【0034】
この発明に係る切断刃の再生設備において、前記肉盛り溶接機は、自動溶接機であるとすることができる。
【0035】
このようにすると、切断刃の再生方法で説明したのと同様に作用する。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る切断刃の再生方法、及びその再生設備によると、先端エッジ部及びサイドエッジ部の磨耗量の程度の異なる補修される切断刃を、その磨耗量の程度に応じて複数のグループに分けて、例えばその磨耗量の小さい切断刃に対しては、新品のエッジ部の表面を基準にしてその表面から浅い位置に面取り加工を行い、この浅い位置に形成した面取り部に対して、小さい肉盛りの溶接を行なうことによって、新品と略同様のエッジ部を形成できる。よって、このように磨耗量の小さい切断刃に対しては、肉盛り溶接及び再生加工を少ない手間と時間で行うことができる。
【0037】
そして、例えば磨耗量の大きい切断刃に対しては、新品のエッジ部の表面を基準にしてその表面から深い位置に面取り加工を行い、この深い位置に形成した面取り部に対して、大きい肉盛りの溶接を行なうことによって、新品と略同様のエッジ部を形成できる。このように、磨耗量の大きい切断刃に対しては、肉盛り溶接及び再生加工を規定通り確実に行うことができる。
【0038】
このように、磨耗量の程度に応じてグループ分けされた切断刃を、各グループごとに定めた面取り加工、肉盛り溶接、及び再生加工を行うことよって、各グループごとのこれらの各作業を略同一の条件で行うことができる。従って、エッジ部が摩耗した切断刃を効率良く再生することができるとともに、再生した切断刃の品質を安定させることが可能となる。また、これにより、この切断刃が使用される剪断式破砕機における切断刃のランニングコストを大幅に削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る切断刃の再生方法を説明するための新品の切断刃の斜視図である。
【図2】同実施形態に係る同再生方法によって再生される切断刃を示す図であり、(a) は磨耗した切断刃の斜視図、(b) は磨耗した切断刃のグループ分けするための検査の状態を示す斜視図である。
【図3】同実施形態に係る同再生方法によって再生される切断刃の各グループと刃先部の幅寸法等との関係を示す図である。
【図4】同実施形態に係る同再生方法によって再生される切断刃の各グループと刃先部の幅寸法と基準線等との関係を示す図である。
【図5】同実施形態に係る同再生方法の各工程を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る切断刃の再生設備を示す平面図である。
【図7】図6に示す同再生設備のハンドリングロボットを示す図であり、(a) は側面図、(b) は図7(a) に示すVII矢視図である。
【図8】図6に示す同再生設備の多軸保持機を示す図であり、(a) は平面図、(b) は側面図である。
【図9】図6に示す同再生設備の自動溶接機を示す側面図である。
【図10】図6に示す同再生設備による切断刃の再生方法を示すフローチャートである。
【図11】同実施形態の同再生設備が備える予熱機へ切断刃を移動させた状態を示す斜視図である。
【図12】同実施形態の同再生設備が備える多軸保持機に切断刃が保持された状態を示す斜視図である。
【図13】同実施形態の同再生設備が備える自動溶接機で切断刃の先端エッジ部に肉盛り溶接をする状態を示す図であり、(a) は斜視図、(b) は側面図である。
【図14】(a) 〜(c) は、図13に示す先端エッジ部の肉盛り溶接時における手順を示す斜視図である。
【図15】同実施形態の同再生設備が備える自動溶接機で切断刃のサイドエッジ部に肉盛り溶接をする状態を示す斜視図である。
【図16】(a)、(b) は、図15に示すサイドエッジ部の肉盛り溶接時における手順を示す斜視図である。
【図17】図16に示すサイドエッジ部とは異なるサイドエッジ部に肉盛り溶接をする状態を示す斜視図である。
【図18】図17に示すサイドエッジ部の肉盛り溶接時における手順を示す斜視図である。
【図19】図18に示すサイドエッジ部の肉盛り溶接後にスラグを除去する状態を示す斜視図である。
【図20】(a) は、肉盛り溶接後の検査の状態を示す斜視図であり、(b) は手修正の状態を示す斜視図である。
【図21】同実施形態の同再生設備が備える後熱機へ後熱処理時に切断刃を移動させた状態を示す斜視図である。
【図22】(a) は図21に示す後熱処理を行った後の切断刃を配設した回転刃を示す側面図であり、(b) は他の一体式切断刃を示す側面図である。
【図23】従来の剪断式破砕機を示す横断面図である。
【図24】図22に示す剪断式破砕機のXXIIII−XXIIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る切断刃の再生方法及びその再生設備の一実施形態を、図1〜図24を参照して説明する。切断刃3は、図23及び図24に示すように、剪断式破砕機100に取り付けて、或る一定時間以上使用すると、先端エッジ部31、及びサイドエッジ部32が磨耗して破砕性能が低下し、その結果、破砕効率が低下してしまうのが現状である。
【0041】
図2(a) は、この磨耗した切断刃3を示す斜視図である。この斜視図で示すように、切断刃3の先端エッジ部31及びサイドエッジ部32が磨耗によって丸味を帯びた状態となり、エッジ部32に欠損が生じることもある。
【0042】
このように、特にサイドエッジ部32が磨耗して、図2(b) に示す刃先部127の幅Wの寸法が小さくなると、破砕機に取り付けられているこの磨耗した切断刃3の互いに対向する側面間には、規定以上の隙間が形成されることになり、破砕効率が低下してしまうことになる。
【0043】
そこで、本発明に係る切断刃の再生方法及びその再生設備1を使用して、このように磨耗した切断刃3の先端エッジ部31、及びサイドエッジ部32に対して補修(再生処理)を行なうことによって、磨耗した切断刃3を再生して再利用できるようにすることができる。
【0044】
このように再生処理される切断刃3は、図1に示すものであり、図23及び図24に示すものと同等のものであって、外向きに突出する刃先部127の回転方向R側に尖った先端エッジ部31と、側面外縁部に沿って形成されたサイドエッジ部32とを備えている。そして、切断刃3の取付面(固定部125の下面)には係合段部107が設けられており、この係合段部107が、図24に示す刃台部106に設けられた係合突起108と係合して破砕反力を受けるようになっている。
【0045】
これらエッジ部31、32は、剪断破砕によって摩耗するが、これらのエッジ部31、32を有する切断刃3は、分割式であるので、エッジ部31、32が磨耗しても、刃台部106を交換せずに切断刃3のみを交換できるようになっている。
【0046】
また、図1に示す126は、ボルト挿通孔である。このボルト挿通孔126は、切断刃3を刃台部106に対して着脱自在に取り付けるための固定ボルトを挿通するためのものである。
【0047】
次に、切断刃の再生方法について説明する。この切断刃の再生方法は、図5に示すように、磨耗した切断刃3のグループ分けを行なうグループ分け工程(ステップS101)、磨耗した切断刃3に対して面取り加工を行う面取り工程(ステップS102)、面取り加工が行われた切断刃3に対して予熱処理を行なう予熱工程(ステップS103)、面取り部の溶接の起点に対して肉盛り溶接する起点肉盛り溶接工程(ステップS104)、面取り部に対して肉盛り溶接する肉盛り溶接工程(ステップS105)、肉盛り溶接された切断刃3に対して後熱処理する後熱工程(ステップS106)、及び後熱処理された切断刃3に対して再生加工(仕上げ加工)する加工工程(ステップS107)を備えている。
【0048】
図5に示すグループ分け工程(ステップS101)は、先端エッジ部31及びサイドエッジ部32の磨耗量の程度の異なる切断刃3を、その磨耗量の程度に応じて複数のグループに分ける工程である。この複数のグループは、図3に示すように、この実施形態では、A、B、C、D、Eの5つのグループである。ただし、これ以外の数のグループに分けるようにしてもよい。
【0049】
そして、磨耗した切断刃3をA〜Eの5つのグループに分ける方法として、例えば図2に示すように、作業者が、磨耗した切断刃3の刃先部127の厚み方向の幅寸法Wを所定の検査器具84を使用して測定し、この幅寸法Wに基づいて、切断刃3をA〜Eの5つのグループに分けている。
【0050】
図3に示すように、例えば新品の切断刃3の刃先部127の幅寸法WをW1とする。そして、磨耗量の最も小さいグループをAとし、磨耗量が大きくなるにつれてB〜Eにグループ分けされる。ただし、Eグループは、磨耗量が大き過ぎるために肉盛り溶接によっては、補修することができないグループとしている。
【0051】
各グループの幅寸法Wは、Aグループは、W1未満W2以上(例えば75〜74mm)、Bグループは、W2未満W3以上(例えば74〜72mm)、Cグループは、W3未満W4以上(例えば72〜71mm)、Dグループは、W4未満W5以上(例えば71〜70mm)、Eグループは、W5未満(例えば70mm〜)である。
【0052】
図4は、切断刃3の刃先部127を示す部分拡大断面図である。この断面図に示すように、新品の切断刃3の刃先部127の断面形状は、略直角に形成され、その幅寸法Wは、W1で表されている。刃先部127のサイドエッジ部32の磨耗が大きくなるにつれて、このサイドエッジ部32の丸味の半径が大きくなり、幅寸法Wが、W1、W2、・・・、W5と順次小さくなっている。各幅寸法W1、W2、・・・、W5によって5つの各グループA〜Eが区分けされている。
【0053】
図5に示す面取り工程(ステップS102)は、それぞれの各グループA〜Dに属する切断刃3の先端エッジ部31及びサイドエッジ部32に対して、各グループA〜Dごとに定めた肉盛りされる基準となる基準線K(K1、K2、K3、K4)(又は基準面)(図3参照)を通る位置に面取り加工を行う工程である。
【0054】
これら各グループA、B、・・・、Dごとに定めた肉盛りされる基準となる基準線K1、K2、・・・、K4は、図4に示すように、磨耗した切断刃3が、グループAとして判定されたときは、基準線K1を通る位置に例えば約45°の面取り加工を行い、面取り部T1を形成する。そして、同様に、磨耗した切断刃3が、グループB、C、Dとして判定されたときは、基準線K2、K3、K4を通るそれぞれの位置に約45°の面取り加工を行い、面取り部T2、T3、T4を形成する。
【0055】
次に、基準線K1〜K4の設定の仕方について説明する。図4に示すように、グループAに属する切断刃3に対しては、基準線K1を通る位置に面取り加工を行い、面取り部T1を形成している。この面取り部T1は、この面取り部T1に対して肉盛り溶接することによって、新品の切断刃3のサイドエッジ部32(及び先端エッジ部31)を形成することができるように設定されている。そして、この面取り部T1の大きさは、肉盛り溶接するために必要とされる面積を備えており、必要以上に大きくなり過ぎないように設定されている。同様に、基準線K2〜K4が設定されている。
【0056】
なお、この面取り加工は、自動的に機械加工によって行われるように面取り機械のプログラムが設定されている。
【0057】
図5に示す予熱工程(ステップS103)は、図4に示すように、面取り加工が行なわれた切断刃3を、予熱機60によって所定温度に予熱処理する工程である。この予熱機60は、後述する図6に示す再生設備1に設けられている。
【0058】
このように、切断刃3を予熱処理すると、面取りが行なわれている先端エッジ部31及びサイドエッジ部32に対して、良好な肉盛り溶接を可能とすることができ、これによって、硬化肉盛溶接材を連続的に供給して、自動溶接機50によって自動肉盛り溶接を良好に行うことができる。
【0059】
図5に示す起点肉盛り溶接工程(ステップS104)は、図4に示す面取り部Tの溶接の起点に対して肉盛り溶接する工程である。つまり、予熱機60によって予熱処理され、かつ、切断刃3の面取りが行なわれている先端エッジ部31及びサイドエッジ部32の溶接の起点に対して硬化肉盛溶接材を供給して、自動溶接機50によってアークスポット自動肉盛り溶接を行なう工程である。
【0060】
この起点肉盛り溶接は、肉盛り溶接の起点間に肉盛り溶接するときに、溶接の起点で溶接だれを防止することができ、起点間の肉盛り溶接を綺麗に連続的に行うことができるようにするものである。
【0061】
図5に示す肉盛り溶接工程(ステップS105)は、予熱機60によって予熱処理され、かつ、切断刃3の面取りが行なわれている先端エッジ部31及びサイドエッジ部32に硬化肉盛溶接材を連続的に供給して、自動溶接機50によって自動肉盛り溶接を行なう工程である。
【0062】
そして、この肉盛り溶接工程は、各グループA〜Dごとに定めた肉盛り量の肉盛り溶接を、先端エッジ部31及びサイドエッジ部32に対して行なうように設定されている。
【0063】
このように、切断刃3の先端エッジ部31及びサイドエッジ部32に対して肉盛り溶接する肉盛り量が、各グループA〜Dごとに定められているので、各グループA〜Dに属する切断刃3に対して肉盛り溶接するときの自動溶接機50の溶接条件(例えば溶接トーチ55の送り速度、硬化肉盛り溶接材の供給速度)を、例えば同一にすることができる。これによって、切断刃3に対する肉盛り溶接の自動化を図ることができ、肉盛り溶接の品質の向上及び安定を図ることができ、溶接コストの低減を図ることができる。
【0064】
なお、図4で二点鎖線128で示すものは、グループCに属する切断刃3のサイドエッジ部32に肉盛り溶接を行なった状態を示している。
【0065】
図5に示す後熱工程(ステップS106)は、面取り部Tに肉盛り溶接された切断刃3を、図6に示す後熱機70によって所定温度で後熱処理する工程である。
【0066】
このように、切断刃3を後熱処理することによって、切断刃3の残留応力を除去することができ、割れや変形を防止できる。
【0067】
図5に示す加工工程(ステップS107)は、後熱処理された切断刃3の肉盛り溶接部分を所定の先端エッジ部31及びサイドエッジ部32に対して、機械加工によって再生加工する工程である。
【0068】
なお、図5に示す予熱工程と、肉盛り溶接工程と、後熱工程との間における切断刃3の移動を図6に示すハンドリングロボット20で行うように構成されている。
【0069】
このように構成することによって、先端エッジ部31及びサイドエッジ部32が複雑な形状の切断刃3であっても、自動肉盛り溶接前の予熱処理から自動溶接後の後熱処理までの切断刃3の移動を迅速に安定して行うことができる。
【0070】
次に、切断刃の再生設備1を、図6を参照して説明する。この切断刃の再生設備1は、切断刃の再生方法を使用することができるものであり、補修される切断刃3(図1に示す切断刃3が使用されて磨耗したもの)を、磨耗量の程度に応じて複数のグループA〜Eに分けて各グループA〜Dごとに再生加工することができるものである。
【0071】
この切断刃の再生設備1は、図3に示すそれぞれの各グループA〜Dに属する切断刃3の先端エッジ部31及びサイドエッジ部32に対して、各グループA、B、C、Dごとに定めた肉盛りされる基準となる基準線K1、K2、K3、K4(又は基準線Kを通る基準面)を通るように面取り加工を行う面取り機(図示せず)と、面取り加工が行われた先端エッジ部31及びサイドエッジ部32に対して肉盛り溶接を行なう肉盛り溶接機(自動溶接機)50と、切断刃3の肉盛り溶接部分を所定の(新品の)先端エッジ部31及びサイドエッジ部32の形状となるように再生加工する加工機(図示せず)とを備えている。
【0072】
次に、上記のように構成された切断刃の再生方法によって、磨耗した切断刃3を再生する手順、及びその作用について説明する。図5に示すように、まず、先端エッジ部31及びサイドエッジ部32の磨耗量の程度の異なる補修される切断刃3を、その磨耗量の程度(W1〜W2)、(W2〜W3)、・・・、(W5〜)、に応じて例えば5つのグループA〜Eに分ける(ステップS101)。次に、図4に示すように、それぞれの各グループA〜Dに属する切断刃3の先端エッジ部31及びサイドエッジ部32に対して、各グループA、B、C、Dごとに定めた肉盛りされる基準となる基準線K1、K2、K3、K4(又はこの基準線を通る基準面)を通る位置に面取り加工を行う(ステップS102)。
【0073】
そして、面取り加工が行われた先端エッジ部31及びサイドエッジ部32の各面取り部T1、T2、T3、T4に対して肉盛り溶接を行なう(ステップS104)。しかる後に、切断刃3の肉盛り溶接された部分を例えば新品の先端エッジ部31及びサイドエッジ部32の形状となるように再生加工する(ステップS107)。このようにして、補修される切断刃3を再生して再利用できるようにすることができる。
【0074】
従って、この切断刃の再生方法及び切断刃の再生設備1によると、先端エッジ部31及びサイドエッジ部32の磨耗量の程度の異なる補修される切断刃3を、その磨耗量の程度に応じて複数のグループA〜Dに分けて、例えばその磨耗量の小さい切断刃3に対しては、新品のエッジ部31、32の表面を基準にしてその表面から浅い位置(例えばK1を通る位置)に面取り加工を行い、この浅い位置に形成した面取り部T1に対して、小さい肉盛りの溶接を行なうことによって、新品と略同様のエッジ部31、32を形成できる。よって、このように磨耗量の小さい切断刃3に対しては、肉盛り溶接及び再生加工を少ない手間と時間で行うことができる。
【0075】
そして、例えば磨耗量の大きい切断刃3に対しては、新品のエッジ部31、32の表面を基準にしてその表面から深い位置(例えばK4を通る位置)に面取り加工を行い、この深い位置に形成した面取り部T4に対して、大きい肉盛りの溶接を行なうことによって、新品と略同様のエッジ部31、32を形成できる。このように、磨耗量の大きい切断刃3に対しては、肉盛り溶接及び再生加工を規定通り確実に行うことができる。
【0076】
このように、磨耗量の程度に応じてグループA〜D分けされた切断刃3を、各グループA〜Dごとに定めた面取り加工、肉盛り溶接、及び再生加工を行うことよって、各グループA〜Dごとのこれらの各作業を略同一の条件で行うことができる。従って、エッジ部31、32が摩耗した切断刃3を効率良く再生することができるとともに、再生した切断刃3の品質を安定させることが可能となる。また、これにより、この切断刃3が使用される剪断式破砕機における切断刃3のランニングコストを大幅に削減することが可能となる。
【0077】
また、肉盛り溶接を自動溶接機50で行なう構成とすると、作業者の労力の削減、摩耗した切断刃3の再生作業の効率の向上、再生した切断刃3の品質の安定化を図ることができる。更に、剪断式破砕機における切断刃3のランニングコストの削減が可能となる。
【0078】
更に、図2及び図3に示すように、切断刃3の刃先部127の厚み方向の幅寸法Wに基づいて、切断刃3を複数のグループA〜Eに分けるようにすると、この切断刃3の刃先部127を含む側面外縁部に形成されているサイドエッジ部32の幅方向の磨耗量を正確に測定することができる。これによって、サイドエッジ部32に対して、各グループA〜Dごとに定めた肉盛りされる基準となる基準線K1、K2、・・・(又は基準線Kを通る基準面)を通る位置に適切に面取り加工を行うことができる。このように、適切に面取り加工ができると、その面取り部T1、T2、・・・に対して必要とされる肉盛り量の溶接を正確に行うことができ、これによって、サイドエッジ部32における切断刃3の厚み方向の幅寸法Wを新品と略同一のW1となるように再生加工することができる。
【0079】
その結果、例えば互いに対向して設けられている2つの回転する切断刃3のそれぞれに形成されているサイドエッジ部32どうしが、互いに重なり合うことによって被破砕物を剪断破砕する場合に、そのサイドエッジ部32どうしの隙間を、略設計値(例えば0.5〜1.0mm)となるように補修することができ、被破砕物を効率よく剪断破砕することができる。
【0080】
次に、切断刃の再生設備を、図6〜図24を参照して詳細に説明する。図6は、切断刃の再生設備を示す平面図であり、主要部を示している。
【0081】
図6に示すように、この切断刃の再生設備1の肉盛り溶接を行う構成は、所定範囲で区切られた仕切り壁2内に設けられており、この仕切り壁2内に切断刃3を搬入出させる搬入出機15と、仕切り壁2内で切断刃3を所定位置に移動させるハンドリングロボット20と、切断刃3を所定温度まで予熱する予熱機60と、予熱した切断刃3を所定の溶接姿勢に保つ多軸保持機40と、この多軸保持機40で保持した切断刃3に対して硬化肉盛溶接材を自動肉盛り溶接する自動溶接機50(溶接ロボット)と、肉盛り溶接を行った切断刃3に対して徐冷等の後熱処理を行う後熱機70とを備えている。搬入出機15には、切断刃3を載置する載置部16が設けられ、この載置部16が搬送部17によって仕切り壁2の内外に移動させられるようになっている。
【0082】
また、ハンドリングロボット20の作業範囲W20内には、複数の切断刃3を所定番地に待機させる待機部4と、溶接時に使用するタブ5を載置するタブ台6と、スラグ除去用のブラシ7と、自動溶接機50の溶接トーチ55の清掃等を行う溶接トーチ調整機56とを備えている。切断刃3は、待機部4の所定番地に配置され、切断刃3の種類や予熱時間等が後述する制御装置80に入力される。この時、後述する「手修正が必要な切断刃」をどの番地に待機させているか等の情報も制御装置80に入力される。また、タブ5も、タブ台6の所定位置に配置される。
【0083】
さらに、仕切り壁2の外部には、所定番地に配置された切断刃3の配置座標、タブ5の配置座標、その他の各機器の配置座標に基いてハンドリングロボット20、多軸保持機40、自動溶接機50等の動作を制御する制御装置80が設置されている。また、予熱機60と後熱機70との温度制御等を行う予熱・後熱機制御装置81と、仕切り壁2の外部の搬入出機15上に形成された判定部82において切断刃3の修正等を行う手修正溶接機83も備えられている。
【0084】
ハンドリングロボット20は、待機部4に配置した切断刃3を予熱機60へ移動、予熱機60から多軸保持機40へ移動、多軸保持機40から後熱機70へ移動、予熱機60及び後熱機70と搬入出機15との間での移動等が可能であり、切断刃3を作業範囲W20内で移動させることができるように設定されている。また、タブ台6上のタブ5、ブラシ7を保持し、多軸保持機40に保持された切断刃3に接するように移動させることもできる。
【0085】
予熱機60は、切断刃3を肉盛り溶接に適した温度まで予熱できる機能を有している。
【0086】
多軸保持機40は、切断刃3を保持し、肉盛り溶接の位置に応じて切断刃3の姿勢を変更できる機能を有している。
【0087】
自動溶接機50は多軸の自動溶接ロボットであり、作業範囲W50内で溶接トーチ55の位置を変更できるようになっており、溶接トーチ調整機56は、この溶接トーチ55の先端のワイヤ長調整、トーチのスパッタ除去、トーチ内部の清掃等を行う機能を有している。
【0088】
後熱機70は、ハンドリングロボット20で開閉口71から入れた切断刃3を所定温度で徐冷等の後熱処理を行う機能を有している。この後熱機70は、開閉口71の外部で載置台72に載置された切断刃3が搬入され、後熱処理した切断刃3は、開閉口71と反対側の開閉口から順に搬出するようにしてもよい。
【0089】
図7は、図6に示す再生設備のハンドリングロボット20の図であり、(a) は側面図、(b) は(a) に示すVII矢視図である。図8は、図6に示す再生設備1の多軸保持機40を示す図面であり、(a) は平面図、(b) は側面図である。
【0090】
図7(a) に示すように、ハンドリングロボット20としては多関節ロボットが採用されており、床に固定される基台21と、下部アーム22、上部アーム23、及び手首24を有している。下部アーム22は、下端部が鉛直な第1軸J1のまわりに旋回可能に基台21に設けられるとともに、水平な第2軸J2のまわりに前後に角変位可能に基台21に設けられている。下部アーム22の上端部には上部アーム23の基端部が、水平な第3軸J3のまわりに上下に角変位可能に設けられている。上部アーム23の先端部に取付けられる手首24は、上部アーム23の軸線に平行な第4軸J4のまわりに角変位可能に設けられるとともに、上部アーム23の軸線に直交する第5軸J5のまわりで角変位可能となっている。この手首24に取付けられる把持部25は、第5軸J5に直交する第6軸J6のまわりで角変位可能となっている。
【0091】
また、この把持部25には、予熱して高温となった切断刃3(図6)を可動片26aで把持できる第1把持部26と、図7(b) に示すように、この第1把持部26と直交する方向に移動する可動片27aを有する第2把持部27とを備えている。
【0092】
多関節型ロボット20の各軸J1〜J6に対する各構成の駆動は、それぞれ図示しないサーボモータによって行われ、これらのサーボモータによって、ロボット20の姿勢が制御され、把持部25が作業範囲W20(図6)内で移動させられる。また、把持部25の第1把持部26と第2把持部27とは、液圧シリンダ26b、27bによって開閉される。
【0093】
図8(a)、(b) に示すように、多軸保持機40(ポジショナー)は、基礎上に固定される基台41と、傾倒部42、回転部43、及び保持部44を有している。傾倒部42は、水平な第7軸J7のまわりに傾倒可能に基台41に設けられている。回転部43は、傾倒部42上で第7軸J7と直交する第8軸J8のまわりで回転可能なように設けられている。保持部44は、回転部43上の所定位置に切断刃3(図12)を保持するように、位置保持部材44aと固定部材45とを有している。固定部材45は可動体であり、位置保持部材44aとの間で切断刃3を保持する。これにより、保持部44に保持された切断刃3は、回転部43の回転と傾倒部42の傾倒とによって姿勢制御される。
【0094】
図9に示すように、自動溶接機50は多関節ロボットであり、床に固定される基台51、下部アーム52、上部アーム53、及び手首54を有している。下部アーム52は、下端部が鉛直な第9軸J9のまわりで旋回可能なように基台51に設けられるとともに、水平な第10軸J10のまわりに前後に角変位可能に基台51に設けられている。下部アーム52の上端部には上部アーム53の基端部が、水平な第11軸J11のまわりで上下に角変位可能なように設けられている。上部アーム53の先端部に設けられる手首54は、上部アーム53の軸線と平行な第12軸J12のまわりで回転可能なように設けられるとともに、上部アーム53の軸線に直交する第13軸J13のまわりで角変位可能となっている。この手首54に取付けられる溶接トーチ55は、手首54の制御によって角変位可能となっている。
【0095】
この手首54に設けられた溶接トーチ55は、下部アーム52、上部アーム53、及び手首54を図示しないサーボモータで駆動することによって姿勢制御される。この溶接トーチ55の姿勢制御は、多軸保持機40による切断刃3の姿勢制御とともに行われる。この溶接トーチ55は、作業範囲W50内で移動可能となっている。
【0096】
図10は、図6に示す再生設備1による切断刃の再生方法を示すフローチャートである。このフローチャートと上述した図6とに基いて、再生設備1による切断刃3の再生方法を以下に説明する。
【0097】
<判定>
まず、摩耗した切断刃3が入庫されると、その切断刃3の摩耗状態から、補修可能か否かの判定が行われる(ステップS1)。この判定で、補修不可能と判定されると、再生されることなく処分される(ステップS2)。また、補修可能と判定された切断刃3でも、手修正が必要か否かの判断が行われ(ステップS3)、手修正が必要な場合は制御装置80に手修正が必要であることが入力されて記憶される(ステップS4)。この手修正が必要か否かの判断は、上記「チョコ停」を生じるような磨損があるか否かで判断される。
【0098】
また、この判定工程では、図5のステップS101に示すように、磨耗した切断刃3のグループ(A〜E)分けも行なわれる。そして、グループEに分類された切断刃3は、補修不可能と判定されたものである(ステップS2)。
【0099】
<必要加工>
上記判定で補修可能と判定されると、後述する先端エッジ部31とサイドエッジ部32とに必要な面取り加工が行われる(ステップS5)。この面取り加工は、図5のステップS102で説明したように、各グループごとに定めた肉盛り基準線Kを通る位置に約45°の面取りが行なわれる。この面取りは、磨耗したエッジ部31、32の均一化、アーク長を一定に保つことによる溶接の安定化、溶融金属の品質一定化、硬度の一定化、等のために行われる。また、この面取り加工としては、肉盛り溶接の肉盛り量、硬化肉盛溶接材料の種類等に応じた面取り加工が行われる。
【0100】
また、面取りは、平坦面として形成したが、これに代えて、例えば凹状の湾曲面として形成してもよい。
【0101】
<予熱処理>
予熱処理としては、切断刃3の材質、大きさ等に応じて肉盛り溶接に適した温度に予熱できる予熱機60において所定時間予熱される(ステップS6、S103)。
【0102】
<手修正>
予熱処理によって所定温度まで予熱された切断刃3で、手修正が必要と判定されている切断刃3は(ステップS7)、搬入出機15により判定部82まで移送されて作業者Mによる手修正が行われる(ステップS8)。この手修正は、次の自動溶接機50による自動溶接に問題を生じないようにする肉盛り溶接がエッジ部31、32に行われる。
【0103】
<肉盛り溶接>
手修正が不要な切断刃3及び手修正を行った切断刃3は、自動溶接機50によってエッジ部31、32に後述するように肉盛り溶接30が行われる(ステップS9、S104、S105)。また、この肉盛り溶接30は、図5のステップS104、S105で説明したように行なわれる。
この肉盛り溶接30としては、アーク溶接により、面取りを行ったエッジ部31、32に行われる。この肉盛り溶接時には、予め制御装置80に入力されている切断刃3の溶接位置と、多軸保持機40の座標、自動溶接機50の溶接トーチ55先端の座標等によって最適な位置となるように各軸J1〜J13を制御しながらエッジ部31、32の一端部から他端部まで連続的に行われる。
【0104】
<点検>
肉盛り溶接30を行った後、その肉盛り溶接30によって盛られた肉に不足部分等を生じていないかが作業者によって点検される(ステップS10)。この点検時に肉盛り不足の部分がある場合には、手修正によって補修されて必要な量の硬化肉盛溶接材料が肉盛りされる(ステップS11)。
【0105】
<後熱処理>
上記したように先端エッジ部31とサイドエッジ部32とに肉盛り溶接30が行われた切断刃3は、その後、所定温度で徐冷等の後熱処理が行われる(ステップS12、S106)。この後熱処理により、摩耗した切断刃3のエッジ部31、32への硬化肉盛溶接材の肉盛り溶接30が完了する。
【0106】
<粗加工>
肉盛り溶接30が行われた切断刃3は、まず、縦型ミーリングマシン等により、肉盛りされたサイドエッジ部32と先端エッジ部31の背面の余肉が粗加工によって除去される(ステップS13)。
【0107】
<仕上加工>(再生加工)
次に、ロータリ研磨機等により、両側面の研磨と、先端エッジ部31の研磨等が行われ、切断刃3の先端エッジ部31とサイドエッジ部32とが再生加工されて所定の新品の切断刃3と略同等の形状のエッジ部に仕上げられる(ステップS14、S107)。
【0108】
なお、これら<粗加工><仕上加工>の機械加工は、例えば、工具マガジンに格納した複数の切削工具を自動的に交換する自動工具交換機能を有し、目的に合わせてコンピュータ数値制御(CNC)の指令によって工具を自動的に交換して、異種の機械加工を1台で行うことができる工作機械(マシニングセンタ)で行うようにしてもよい。
【0109】
以下、図11〜図21に基いて、図10のフローチャートに示す主要な工程を詳細に説明する。なお、以下の説明でも分割式切断刃3を例にし、上述した図面中で説明した構成には同一符号を付して、その説明は省略する。
【0110】
図11は、図10に示すフローチャートの予熱処理時(ステップS6)に予熱機60へ切断刃3を移動させた状態を示す斜視図である。図12は、図10に示すフローチャートの予熱処理後の切断刃3を多軸保持機40に保持した状態を示す斜視図である(ステップS9)。
【0111】
図11に示すように、予熱機60は、切断刃3を載置する支持台61と、この支持台61と一体的に開閉する蓋体62が水平方向にスライドするようになっており、図示するように、支持台61に切断刃3を載置した状態で蓋体62を閉じれば、切断刃3が予熱機60内に格納される。この予熱機60の支持台61への切断刃3の載置は、待機部4の所定番地に配置された切断刃3をハンドリングロボット20が把持して移動させることにより行われる。この予熱機60により、切断刃3の材質や大きさ等に応じて肉盛り溶接に適した温度(例えば、150〜500℃程度)まで予熱される。
【0112】
図12に示すように、予熱機60による予熱処理が完了した切断刃3は、ハンドリングロボット20によって多軸保持機40へ移動させられ、多軸保持機40の保持部44に保持される。この切断刃3の保持は、保持部44の位置保持部材44aに当接するようにハンドリングロボット20で移動させられた切断刃3が、固定部材45と位置保持部材44aとによって挟まれて保持される。
【0113】
また、図10に示す手修正が必要か否かの判断(ステップS3)で手修正が必要と判断された切断刃3は、この多軸保持機40に保持される前に搬入出機15で判定部82まで移動させられて手修正が行われる(図6)。
【0114】
図13は、図10に示すフローチャートの肉盛り溶接時(ステップS9)における切断刃3の先端エッジ部31を溶接する状態を示す図面であり、図13(a) は斜視図、図13(b) は側面図である。図14(a) 〜(c) は、図13に示す先端エッジ部31の溶接時における手順を示す斜視図である。図15は、同肉盛り溶接時(ステップS9)における切断刃3のサイドエッジ部32を溶接する状態を示す斜視図であり、図16(a)、(b) は、図15に示すサイドエッジ部32の溶接時における手順を示す斜視図である。図17は、図16に示すサイドエッジ部32とは異なるサイドエッジ部32を溶接する状態を示す斜視図であり、図18は、図17に示すサイドエッジ部32の溶接時における手順を示す斜視図である。なお、図14、図16、図18では、説明上、切断刃3を水平にした状態にし、切断刃3の各角位置(端部位置)に記号(A) 〜(F) を付し、作業順に(1) 〜(9) を付して説明する。
【0115】
図13(a) に示すように、多軸保持機40に保持された切断刃3のエッジ部31、32への肉盛り溶接は、まず先端エッジ部31に行われる。この先端エッジ部31は、回転方向前側に尖っているので、ハンドリングロボット20によって先端エッジ部31における溶接機50と反対側(下面側)(以下、「反溶接機側」と言うこともある。)にタブ5を当てた状態で、上側から自動溶接機50の溶接トーチ55によって肉盛り溶接が行われる。つまり、図13(b) に示すように、タブ5を先端エッジ部31の下面に沿うように溶接トーチ55と反対側(反溶接機側)に当て、溶接トーチ55によって上側から溶接することにより、肉盛り溶接の肉が溶接トーチ55と反対側に盛られるのを防止して、溶接後の先端エッジ部31への再生加工(仕上げ加工)が容易に行えるようにしている。このタブ5(当て板)は、耐火性のセラミック製ブロックや銅などの金属製ブロックが用いられる。
【0116】
また、この溶接トーチ55による溶接姿勢としては、基本として溶接トーチ55の先端を真下方向に向けた下向き溶接で、水平からやや登り勝手となるように切断刃3の姿勢を保ちながら行われる。この溶接姿勢は、多軸保持機40によって切断刃3の姿勢が最適な姿勢となるように制御され、自動溶接機50によって溶接トーチ55の姿勢が制御される。
【0117】
図14(a) 〜(c) に示すように、先端エッジ部31への肉盛り溶接の詳細は、図14(a) のように、まず先端エッジ部31の厚み方向両端部の(A)、(B)の位置(溶接起点)に溶接トーチ55でアークスポット肉盛り溶接33、34を順に行う[(1)、(2)]。この溶接は、図5のステップS104の溶接基点の肉盛り溶接である。そして、図14(b) に示すように、その先端エッジ部31のアークスポット溶接33、34間に肉盛り溶接30が連続的に行われる[(3)]。この肉盛り溶接30は、先にアークスポット肉盛り溶接33を行った(A) 位置から(B) 位置に向けて行われ、アークスポット肉盛り溶接33、34による効果的な溶接だれ防止を図っている。また、図14(c) に示すように、この例では、2層の肉盛り溶接30を行うようにしている。この先端エッジ部31への肉盛り溶接30は、最も磨耗しやすいので2層以上が好ましい。
【0118】
次に、図15に示すように、切断刃3のサイドエッジ部32に肉盛り溶接がされる。この肉盛り溶接も、溶接トーチ55による溶接姿勢としては、基本として溶接トーチ55の先端を真下方向に向けた下向き溶接で、水平からやや登り勝手となるように切断刃3の姿勢を制御しながら行われる。この溶接姿勢も、多軸保持機40によって切断刃3の姿勢が最適な姿勢となるように制御され、自動溶接機50によって溶接トーチ55の姿勢が制御される。
【0119】
図16(a) 、(b) に示すように、このサイドエッジ部32への肉盛り溶接30は、図16(a) に示すように、切断刃3の反回転方向端部における鋭角部の厚み方向両端部(C)、(D) 位置に、アークスポット溶接35、36を順に行い[(4)、(5)]、図16(b) に示すように、そのアークスポット溶接35、36を行った端部(C)、(D) 位置から先端エッジ部31の(A)、(B) 位置に向けて肉盛り溶接30が連続的に行われる[(6)、(7)]。この肉盛り溶接30も、先に行ったアークスポット溶接35の(C) 位置から先端エッジ部31の(A) 位置に向けて行われ、アークスポット溶接35、36による効果的な溶接だれ防止を図っている。
【0120】
次に、図17に示すように、先端エッジ部31を間に挟む他方のサイドエッジ部32に肉盛り溶接がされる。この肉盛り溶接も、溶接トーチ55による溶接姿勢としては、基本として溶接トーチ55の先端を真下方向に向けた下向き溶接で、水平からやや登り勝手となるように切断刃3の姿勢を制御しながら行われる。この溶接姿勢も、多軸保持機40によって切断刃3の姿勢が最適な姿勢となるように制御され、自動溶接機50によって溶接トーチ55の姿勢が制御される。
【0121】
図18に示すように、このサイドエッジ部32への肉盛り溶接30は、サイドエッジ部32の回転方向端部の(E)、(F) 位置から先端エッジ部31の(A)、(B) 位置に向けて肉盛り溶接30が連続的に行われる[(8)、(9)]。この回転方向端部(E)、(F) 位置は、端部の角が鋭角ではないため、上記したようなアークスポット溶接35、36を行うことなく肉盛り溶接30が行われる。
【0122】
図19は、図18に示すサイドエッジ部の溶接後にスラグ除去する状態を示す斜視図である。上記したようにして、切断刃3の先端エッジ部31とサイドエッジ部32とに肉盛り溶接30(図18)が完了すると、その肉盛り溶接30のスラグを除去するためにハンドリングロボット20が第1把持部26でブラシ7を把持し、サイドエッジ部32に沿ってブラシ7を移動させることによってスラグが除去される。
【0123】
また、このようにスラグ除去する時間を利用し、自動溶接機50の溶接トーチ55は、次の溶接に備えて、図6に示す溶接トーチ調整機56によってワイヤーの調整、トーチのスパッタ除去、トーチ内部の清掃、ワイヤー長の調整等が行われる。
【0124】
なお、サイドエッジ部32に複数層の肉盛り溶接30をする場合、奇数層と偶数層とで溶接の進行方向を逆にすることにより、溶接ビード終端における凹みを分散させるようにすることができる。
【0125】
図20(a) は、図10に示すフローチャートの肉盛り溶接後の検査(ステップS10)の状態を示す斜視図であり、図20(b) は手修正の状態を示す斜視図である。図示するように、自動溶接機50による肉盛り溶接30が完了すると、その切断刃3は搬入出機15によって一旦判定部82に搬出され、作業者Mによる目視の検査が行われる(図6)。この検査は、図20(a) に示すように、肉盛り溶接30の盛り量等が検査器具84によって検査される。この検査で肉盛り量に不足がある場合、図20(b) に示すように、作業者Mが手修正溶接機83(図6)の溶接トーチ83aによって手作業で肉盛り溶接を行って修正する。
【0126】
図21は、図10に示すフローチャートの後熱処理時(ステップS12)に後熱機70へ切断刃3を移動させた状態を示す斜視図である。上記したような検査が行われた切断刃3は、再び搬入出機15によって仕切り壁2の内部に搬入され(図6)、ハンドリングロボット20によって後熱機70の載置台72に載置され、開閉口71から後熱機70内に入れられる。この切断刃3は、後熱機70内で所定時間の後熱処理が行われる。
【0127】
この後熱機70によって後熱処理された切断刃3は、ハンドリングロボット20によって上述した待機部4の所定番地に戻される(図6)。この後熱処理された切断刃3は、図示しない加工機によって、粗加工と仕上加工とが行われて、先端エッジ部31及びサイドエッジ部32が新品と同様に再生された切断刃3となる。
【0128】
以上のような図11〜図21に示す切断刃の再生方法は、切断刃3に手修正が必要な物が含まれるような場合の説明であり、手修正を行うことによって自動溶接機50が自動溶接中に上記した「チョコ停」を生じるのを防止する必要が無いような切断刃3のみの場合には、手修正に関する工程を省くようにすればよい。
【0129】
図22(a) は、図21に示す切断刃3を配設した回転刃10を示す側面図であり、図22(b) は他の切断刃11を示す側面図である。
【0130】
図22(a) に示すように、再生した分割式の切断刃3によれば、刃台部106(図24と同一構成)の周囲に取付けた状態で先端エッジ部31と、サイドエッジ部32の外周縁部の全体とに硬化肉盛溶接材料を肉盛り溶接した回転刃10として再生することができるので、新品に交換する場合に比べて費用を抑えることができ、更に、切断刃3に要するランニングコストを下げた剪断式破砕設備の運用が可能となる。しかも、回転方向Rに回転する回転刃10のエッジ部の外周縁部の全体が硬化肉盛溶接材料となり、エッジ部31、32の硬度が大きい回転刃10を形成することができる。
【0131】
また、図22(b) に示すように、上記実施の形態では分割式切断刃3を例に説明しているが、一体式切断刃11においても同様に再生することができる。この切断刃3と刃台部106とが一体形成された一体式切断刃11の場合、上述した多軸保持機40が一体式切断刃11を保持して姿勢制御できる構成に変更され、先端エッジ部31の端部から次の先端エッジ部31の端部までのサイドエッジ部32が、連続的に自動肉盛り溶接される。そして、この先端エッジ部31とサイドエッジ部32とに肉盛り溶接30を行った一体式切断刃11によれば、最も仕事をする先端エッジ部31と、サイドエッジ部32とが硬度の大きい硬化肉盛溶接材料となった一体式切断刃11として再生することができるので、新品に交換する場合に比べて費用を抑えることができ、更に、一体式切断刃11に要するランニングコストを下げた剪断式破砕設備の運用が可能となる。このように、本発明は分割式切断刃3に限定されるものではなく、一体式切断刃11にも適用できる。
【0132】
なお、上記実施の形態の再生設備1では、再生する切断刃3に肉盛り溶接30を行う構成を主に説明したが、入庫された切断刃3のエッジ部31、32に対する面取り加工を行う装置、及び肉盛り溶接30を行った切断刃3にエッジ部31、32を再生加工する装置(縦型ミーリングマシン、ロータリ研磨機等)を含めて連続的に作業が行えるように各機械を配置して再生設備を構成するのが好ましく、上記実施の形態の機械配置は一例であり、各機器の配置は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0133】
さらに、上述した実施の形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0134】
以上のように、本発明に係る切断刃の再生方法、及びその再生設備は、先端エッジ部及びサイドエッジ部が摩耗した切断刃を、安定した品質の切断刃に効率良く再生することができる優れた効果を有し、このような切断刃の再生方法、及びその再生設備に適用するのに適している。
【符号の説明】
【0135】
1 再生設備
3 切断刃
5 タブ
10 回転刃
11 一体式切断刃
15 搬入出機
16 載置部
17 搬送部
20 ハンドリングロボット
25 把持部
26 第1把持部
27 第2把持部
30 肉盛り溶接
31 先端エッジ部
32 サイドエッジ部
40 多軸保持機
42 傾倒部
43 回転部
44 保持部
45 固定部材
50 自動溶接機
55 溶接トーチ
60 予熱機
70 後熱機
80 制御装置
82 判定部
83 手修正溶接機
84 検査器具
107 係合段部
125 固定部
126 ボルト挿通孔
127 刃先部
128 肉盛り溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、この固定部から外向きに突出する刃先部とを備え、前記刃先部は、回転方向に向かって尖った先端エッジ部を有し、前記刃先部を含む側面外縁部にサイドエッジ部を有する補修される切断刃の再生方法であって、
前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部の磨耗量の程度の異なる前記切断刃を、その磨耗量の程度に応じて複数のグループに分けるグループ分け工程と、
それぞれの前記各グループに属する前記切断刃の前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部に対して、前記各グループごとに定めた肉盛りされる基準となる基準線又は基準面を通る位置に面取り加工を行う面取り工程と、
前記面取り加工が行われた前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部に対して肉盛り溶接を行なう肉盛り溶接工程と、
前記切断刃の肉盛り溶接部分を所定の前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部の形状となるように再生加工する加工工程とを備えることを特徴とする切断刃の再生方法。
【請求項2】
前記肉盛り溶接工程は、前記各グループごとに定めた肉盛り量の肉盛り溶接を、前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部に対して行なうことを特徴とする請求項1記載の切断刃の再生方法。
【請求項3】
肉盛り溶接工程において、前記面取り加工が行われた前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部に対しての肉盛り溶接を自動溶接機で行なうことを特徴とする請求項2記載の切断刃の再生方法。
【請求項4】
前記グループ分け工程は、前記切断刃の前記刃先部の厚み方向の幅寸法に基づいて、前記切断刃を複数の前記グループに分けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の切断刃の再生方法。
【請求項5】
前記面取り加工が行なわれた前記切断刃を所定温度に予熱処理する予熱工程と、
前記肉盛り溶接された前記切断刃を所定温度で後熱処理する後熱工程とを備え、
前記肉盛り溶接工程は、前記予熱処理され、かつ、前記切断刃の面取りが行なわれている前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部に硬化肉盛溶接材を連続的に供給して自動肉盛り溶接を行ない、
前記加工工程は、前記後熱処理された前記切断刃の肉盛り溶接部分に対して前記再生加工することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の切断刃の再生方法。
【請求項6】
前記予熱工程と、前記肉盛り溶接工程と、前記後熱工程との間における前記切断刃の移動をロボットで行うようにした請求項5記載の切断刃の再生方法。
【請求項7】
固定部と、この固定部から外向きに突出する刃先部とを備え、前記刃先部は、回転方向に向かって尖った先端エッジ部を有し、前記刃先部を含む側面外縁部にサイドエッジ部を有する補修される切断刃を、磨耗量の程度に応じて複数のグループに分けてグループごとに再生加工する切断刃の再生設備であって、
それぞれの前記各グループに属する前記切断刃の前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部に対して、前記各グループごとに定めた肉盛りされる基準となる基準線又は基準面を通るように面取り加工を行う面取り機と、
前記面取り加工が行われた前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部に対して肉盛り溶接を行なう肉盛り溶接機と、
前記切断刃の肉盛り溶接部分を所定の前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部の形状となるように再生加工する加工機とを備えることを特徴とする切断刃の再生設備。
【請求項8】
前記肉盛り溶接機は、前記各グループごとに定めた肉盛り量の肉盛り溶接を、前記先端エッジ部及び前記サイドエッジ部に対して行なうことを特徴とする請求項7記載の切断刃の再生設備。
【請求項9】
前記肉盛り溶接機は、自動溶接機であることを特徴とする請求項8記載の切断刃の再生設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−86178(P2012−86178A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235932(P2010−235932)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(390015967)株式会社キンキ (29)
【Fターム(参考)】