説明

切断装置及び切断方法

【課題】被切断物を切断する際の切断くずが切断後の物品に付着することを防止する。
【解決手段】切断機構15には、回転刃17と切削水用ノズル18とが設けられる。被切断物である樹脂封止体1が吸着される吸着用治具6の上面には、樹脂封止体1に設けられた格子状の複数の領域5の境界線4に各々重なる複数の溝13,14が設けられる。回転刃17が樹脂封止体1を切断する際には、回転刃17の周端部が溝13,14に収容される。溝13,14の底面には、複数の吸引孔30と複数の供給孔34とが相隣り合って設けられる。回転刃17によって樹脂封止体1が切断されている間、切削水用ノズル18は被切削点に向かって切削水19を吐出し、複数の供給孔34は溝13,14の内部に洗浄水37を供給する。切削水19と洗浄水37とは、複数の吸引孔30を経由して吸引されることによって、切断くずを含む排水38として吸着用治具6の外部に除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、格子状に設けられた複数の領域を有する被切断物を切断することによって、領域に各々対応する複数の物品を製造する際に使用される、切断装置及び切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における被切断物の切断方式を、図7を参照して説明する。図7は、従来の被切断物の切断方式を説明する概略斜視図である。被切断物の例として、基板の複数の領域に各々装着されたチップ状の素子が樹脂封止されて形成された樹脂封止体を挙げて説明する。この例では、樹脂封止体を切断することによって、各領域に対応する複数の電子部品を製造する。なお、以下に説明するいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。
【0003】
樹脂封止体1は、リードフレーム、ガラスエポキシ基板等のプリント基板、セラミックス基板等からなる基板2と、硬化樹脂3とを有する複合材料である。基板2は、仮想的に設けられた格子状の境界線4と、それらの境界線4によって区切られた複数の領域5とを有する。領域5のそれぞれには1個又は複数個のチップ状の素子(半導体チップ等からなり、以下適宜「チップ」という。)が装着され、それらのチップが硬化樹脂3によって樹脂封止されている。樹脂封止体1が有する領域5のそれぞれが切断され個片化されることによって、各領域5にそれぞれ対応する電子部品が製造される。
【0004】
樹脂封止体1を切断する電子部品用の切断装置には、樹脂封止体1を吸着固定する吸着用治具6が設けられる。吸着用治具6は、ベース7に取り付けられている。ベース7は、X方向とY方向とZ方向とに移動自在であるとともに、θ方向に回動自在に設けられている。吸着用治具6には、基板2の複数の領域5をそれぞれ吸着して保持(固定)する複数の柱状の突起8が設けられている。また、各突起8は、樹脂封止体1が領域5単位に切断されて形成された各電子部品(パッケージ)を吸着して保持する。突起8の上面には、吸着用の空間である凹部9と、凹部9に設けられた吸引孔10とが設けられている。吸引孔10は、突起8、吸着用治具6、及びベース7の内部に設けられた吸引管(図示なし)と吸引用配管11とを順次経由して、真空ポンプや減圧タンク等の吸引源12につながっている。突起8同士の間には、X方向に延びる溝13とY方向に延びる溝14とが設けられている。
【0005】
吸着用治具6の付近には、切断機構15が、Y方向に移動自在に設けられている。切断機構15には、モータ(図示なし)の回転軸16と、回転軸16に固定された回転刃17と、切削水用ノズル18とが設けられている。切削水用ノズル18が設けられている場所は、樹脂封止体1に対して切断機構15が相対的に進んでいく行き先の側であって、回転刃17の周端部が樹脂封止体1に接触する部分である被切削点付近である。また、樹脂封止体1が切断される際には、回転刃17の周端部が溝13又は溝14に収容される。
【0006】
樹脂封止体1を切断する工程では、まず、切断しようとするY方向に沿う境界線4に対して、X,Y,Z方向において回転刃17を位置合わせする。次に、樹脂封止体1に向かって切断機構15を+Y方向に移動させる。これにより、樹脂封止体1をその境界線4に沿って完全に切断する(フルカットする)ことができる。Y方向に沿う境界線4の全てにおいて樹脂封止体1を切断した後に、ベース7をθ方向に90°だけ回動させる。その後に、新たにY方向に沿うことになった境界線4のそれぞれにおいて、樹脂封止体1を完全に切断する(フルカットする)。これにより、樹脂封止体1を切断して、各領域5にそれぞれ対応する電子部品に個片化することができる。
【0007】
樹脂封止体1を切断する際に、切削水用ノズル18は、上方又は斜め上方から被切削点に向かって切削水19を吐出する。切削水19は、回転刃17と樹脂封止体1との間における加工抵抗の低減(言い換えれば潤滑)と、回転刃17と樹脂封止体1との冷却と、発生した切断くずの除去という役割をはたす。
【0008】
ところで、近年、コストダウンの要請に基づいて、1枚の基板における電子部品の取れ数増加という傾向がいっそう強まっている。この傾向から、基板2の大型化と、樹脂封止体1を切断する際の切り代(カーフロス、切断幅)の狭小化とが求められている。これらのことによって、次の問題が発生している。
【0009】
まず、基板2の大型化に起因する問題がある。基板2の大型化により、X方向に延びる溝13の長さとY方向に延びる溝14の長さとが増大している。したがって、上方又は斜め上方から切削水19を吐出する方式では、溝13,14の長さ方向の全ての部分に切削水19が十分な勢いで十分な量だけ行き渡ることが困難になっている。このことから、切断くずを含む水が溝13,14から除去されにくくなっている。
【0010】
切断くずを含む水が溝13,14に残っている場合には、吸着用治具6において吸着から解除された電子部品が搬送機構(図示なし)によって搬送される際に、次の事態が発生するおそれがある。それは、個片化された複数の電子部品が搬送機構によって一括して吸着される際に、溝13,14において切断くずを含んで残っている水が吸い上げられて電子部品の全面にわたって付着するという事態である。そして、切断くずを含む水が電子部品の全面にわたって付着した状態で、電子部品が搬送される。
【0011】
電子部品に付着した切断くずは、後工程において不具合を発生させるという第1の問題を引き起こす。特に、ガラスエポキシ基板等及び硬化樹脂3が切断されることによって発生する大量の樹脂系の切断くずは、接触不良の原因になる。また、基板2において配線材料として使用されている銅箔に起因する金属系の切断くずは、短絡の原因になる。更に、電子部品に付着した切断くずは、電子部品を洗浄して切断くずを完全に除去する工程が必要になるので工数が増加するという第2の問題を引き起こす。
【0012】
次に、切り代の狭小化に起因する問題がある。上方又は斜め上方から切削水19を吐出する従来の方式では、切り代を通して溝13,14に切削水19が注入される。したがって、従来の方式では、切り代が狭くなるに伴い、狭くなった切り代を通して溝13,14に切削水19が注入されにくくなる。このことにより、溝13,14の長さ方向の全ての部分に切削水19が十分な勢いで十分な量だけ行き渡ることが困難になっている。したがって、切断くずを含む水が溝13,14から除去されにくくなっているので、上述した2つの問題が発生する。
【0013】
また、基板2の面(図では上側に示された面)にはんだバンプ等の突起状電極が形成されている場合には、突起状電極の付け根部分に切断くずが付着しやすい。したがって、上述した2つの問題はいっそう顕著になる。
【0014】
上述した問題に対処するために、研削水(切削水)供給ノズルとは別に、ワーク(被切断物)の斜め上方に高圧洗浄ノズルを設ける構成が提案されている。この構成によれば、高圧洗浄ノズルは、ワークの切断ストローク端近傍に設けられ、切断後のワークに向けて斜め上方から、研削水よりも高圧の洗浄水を供給する(例えば、特許文献1参照)。
【0015】
しかし、この構成を採用したとしても、ワークである基板の大型化と切り代の狭小化とに伴い、治具本体の上面に設けられた逃げ溝における長さ方向の全ての部分に洗浄水が十分な勢いで十分な量だけ行き渡ることが困難になっている。このことから、切断くずを含む水が逃げ溝から除去されにくいという状態は解消されていない。
【0016】
【特許文献1】特開2003−168659号公報(第2−4頁、第1−3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明が解決しようとする課題は、切断装置の治具に設けられた溝における切断くずを除去することが困難であることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以下、「課題を解決するための手段」と「発明の効果」と「発明を実施するための最良の形態」との説明におけるかっこ内の符号は、説明における用語と図面に示された構成要素とを対比しやすくする目的で記載されたものである。また、これらの符号等は、「図面に示された構成要素に限定して、説明における用語の意義を解釈すること」を意味するものではない。
【0019】
上述の課題を解決するために、本発明に係る切断装置は、格子状に設けられた複数の領域(5)を有する被切断物(1)を固定面に固定する治具(6)と、固定面において複数の領域(5)の境界線(4)に重なるようにして設けられた複数の溝(13,14)と、境界線(4)に沿って被切断物(1)を切断する回転刃(17)とを備え、領域(5)に各々対応する複数の物品を製造する際に使用される切断装置であって、治具(6)の側方に設けられ、複数の溝(13,14)のうち回転刃(17)が切断している1つの境界線(4)からなる被切断線(20)に重なる1つの溝(21)に向かって1つの溝(21)が延びる方向に洗浄液(23,29)を噴射する噴射手段(22,27,28)を備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る切断装置は、格子状に設けられた複数の領域(5)を有する被切断物(1)を固定面に固定する治具(6)と、固定面において複数の領域(5)の境界線(4)に重なるようにして設けられた複数の溝(13,14)と、境界線(4)に沿って被切断物(1)を切断する回転刃(17)とを備え、領域(5)に各々対応する複数の物品を製造する際に使用される切断装置であって、治具(6)の側方に設けられ、複数の溝(13,14)のうち既に切断され終わった境界線(25)に重なる1つの溝(26)に向かって1つの溝(26)が延びる方向に洗浄液(23)を噴射する噴射手段(24)を備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る切断装置は、上述の切断装置において、噴射手段(22,24,27,28)は、1つの溝(21,26)を含むとともに1つの溝(21,26)と同じ方向に延びる1又は複数の溝に向かって洗浄液(23,29)を噴射するとともに、1又は複数の溝のうち少なくとも1つの溝(26)は、被切断線(20)よりも以前に切断された境界線(25)に重なる溝(26)であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る切断装置は、格子状に設けられた複数の領域(5)を有する被切断物(1)を固定面に固定する治具(6)と、固定面において複数の領域(5)の境界線(4)に重なるようにして設けられた複数の溝(13,14)と、境界線(4)に沿って被切断物(1)を切断する回転刃(17)とを備え、領域(5)に各々対応する複数の物品を製造する際に使用される切断装置であって、複数の溝(13,14)の底面に設けられた複数の吸引孔(30)と、複数の吸引孔(30)に各々つながっている複数の吸引管とを備えるとともに、複数の吸引管は複数の溝(13,14)において溜まっている液体を吸引して治具(6)の外部に排出することを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る切断装置は、上述の切断装置において、複数の溝(13,14)の底面に設けられた複数の供給孔(34)を備えるとともに、複数の供給孔(34)は複数の溝(13,14)に洗浄液(37)を供給することを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る切断装置は、上述の切断装置において、複数の吸引孔(30)と複数の供給孔(34)とは複数の溝(13,14)における交差点に各々設けられており、交差点のうち隣り合う交差点には吸引孔(30)と供給孔(34)とが各々配置されていることを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る切断装置は、上述の切断装置において、格子状に設けられた複数の領域(5)を有する被切断物(1)を固定面に固定する治具(6)と、固定面において複数の領域(5)の境界線(4)に重なるようにして設けられた複数の溝(13,14)と、境界線(4)に沿って被切断物(1)を切断する回転刃(17)とを備え、領域(5)に各々対応する複数の物品を製造する際に使用される切断装置であって、被切断物(1)における被切削点に向かって上方又は斜め上方から切削水(19)を吐出する切削水用ノズル(18)と、複数の溝(13,14)の底面に設けられた複数の供給孔(34)と、複数の供給孔(34)に各々つながっている複数の供給管(35)とを備えるとともに、切削水(19)と複数の供給孔(34)から複数の溝(13,14)に供給された洗浄水(37)とが複数の溝(13,14)に行き渡ることによって複数の溝(13,14)において溜まっている液体を治具(6)の外部に排出することを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る切断方法は、格子状に設けられた複数の領域(5)を有する被切断物(1)を切断することによって領域(5)に各々対応する複数の物品を形成する切断方法であって、複数の領域(5)を区切る複数の境界線(4)に各々対応して治具(6)の固定面に設けられた複数の溝(13,14)と複数の境界線(4)とを各々位置合わせする工程と、被切断物(1)を固定面に固定する工程と、回転刃(17)によって複数の境界線(4)のうち1つの境界線(4)からなる被切断線(20)に沿って被切断物(1)を切断する工程と、複数の溝(13,14)のうち被切断線(20)に重なる1つの溝(21)に向かって、治具(6)の側方から1つの溝(21)が延びる方向に洗浄液(23,29)を噴射する工程とを備えることを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る切断方法は、格子状に設けられた複数の領域(5)を有する被切断物(1)を切断することによって領域(5)に各々対応する複数の物品を形成する切断方法であって、複数の領域(5)を区切る複数の境界線(4)に各々対応して治具(6)の固定面に設けられた複数の溝(13,14)と複数の境界線(4)とを各々位置合わせする工程と、被切断物(1)を固定面に固定する工程と、回転刃(17)によって複数の境界線(4)のうち1つの境界線(4)からなる被切断線(20)に沿って被切断物(1)を切断する工程と、複数の溝(13,14)のうち既に切断され終わった境界線(25)に重なる1つの溝(26)に向かって、治具(6)の側方から1つの溝(26)が延びる方向に洗浄液(23)を噴射する工程とを備えることを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る切断方法は、上述の切断方法において、洗浄液(23,29)を噴射する工程では1つの溝(21,26)を含むとともに1つの溝(21,26)と同じ方向に延びる1又は複数の溝に向かって洗浄液(23,29)を噴射するとともに、1又は複数の溝のうち少なくとも1つの溝(26)は、被切断線(20)よりも以前に切断された境界線(25)に重なる溝(26)であることを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係る切断方法は、格子状に設けられた複数の領域(5)を有する被切断物(1)を切断することによって領域(5)に各々対応する複数の物品を形成する切断方法であって、複数の領域(5)を区切る複数の境界線(4)に各々対応して治具(6)の固定面に設けられた複数の溝(13,14)と複数の境界線(4)とを各々位置合わせする工程と、被切断物(1)を固定面に固定する工程と、回転刃(17)によって複数の境界線(4)のうち1つの境界線(4)からなる被切断線(20)に沿って被切断物(1)を切断する工程と、複数の溝(13,14)の底面に設けられた複数の吸引孔(30)と該複数の吸引孔(30)に各々つながっている複数の吸引管とを順次介して、複数の溝(13,14)において溜まっている液体を吸引して治具(6)の外部に排出する工程とを備えることを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係る切断方法は、上述の切断方法において、複数の溝(13,14)の底面に設けられた複数の供給孔(34)から複数の溝(13,14)に洗浄液(37)を供給する工程を備えることを特徴とする。
【0031】
また、本発明に係る切断方法は、上述の切断方法において、複数の吸引孔(30)と複数の供給孔(34)とは複数の溝(13,14)における交差点に各々設けられており、交差点のうち隣り合う交差点には吸引孔(30)と供給孔(34)とが各々配置されていることを特徴とする。
【0032】
また、本発明に係る切断方法は、上述の切断方法において、格子状に設けられた複数の領域(5)を有する被切断物(1)を切断することによって領域(5)に各々対応する複数の物品を形成する切断方法であって、複数の領域(5)を区切る複数の境界線(4)に各々対応して治具(6)の固定面に設けられた複数の溝(13,14)と複数の境界線(4)とを各々位置合わせする工程と、被切断物(1)を固定面に固定する工程と、被切断物(1)における被切削点に向かって上方又は斜め上方から切削水(19)を吐出する工程と、回転刃(17)によって複数の境界線(4)のうち1つの境界線(4)からなる被切断線(20)に沿って被切断物(1)を切断する工程と、複数の溝(13,14)の底面に設けられた複数の供給孔(34)に各々つながっている複数の供給管(35)と複数の供給孔(34)とを順次介して、複数の溝に洗浄水(37)を供給する工程と、切削水(19)と複数の供給孔(34)から複数の溝(13,14)に供給された洗浄水(37)とを複数の溝(13,14)に行き渡らせることによって複数の溝(13,14)において溜まっている液体を治具(6)の外部に排出する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、治具(6)の側方に設けられ、複数の溝(13,14)のうち回転刃(17)が切断している1つの境界線(4)からなる被切断線(20)に重なる1つの溝(21)、又は、既に切断され終わった境界線(25)に重なる1つの溝(26)に向かって、その1つの溝(21,26)が延びる方向に洗浄液(23,29)を噴射する噴射手段(22,24,27,28)を備える。これにより、被切断線(20)に重なる1つの溝(21)、又は、既に切断され終わった境界線(25)に重なる1つの溝(26)に向かってその1つの溝(21,26)が延びる方向に直接噴射された洗浄液(23,29)が、その1つの溝(21,26)における長さ方向の全ての部分において流動する。したがって、1つの溝(21,26)の内部に残っていた液体がその1つの溝(21,26)から除去される。
【0034】
また、本発明によれば、噴射手段(22,24,27,28)は、被切断線(20)に重なる1つの溝(21)とその1つの溝(21)に対して同じ方向に延びる1又は複数の溝とに向かって洗浄液(23,29)を噴射する。そして、その1又はそれらの複数の溝(26)には、その時点で切断されている被切断線(20)よりも以前に切断された境界線(25)、すなわち既に切断され終わった境界線(25)に重なる溝(26)が含まれる。これにより、その時点で切断されている被切断線(20)に重なる溝(21)に加えて、以前に切断された境界線(25)に重なる溝(26)にも、洗浄液(23,29)を直接噴射することができる。したがって、切断され終わった境界線(25)に重なる溝(26)には、その境界線(25)自身において被切断物(1)が切断された時と、それよりも後に別の境界線(4)である被切断線(20)において被切断物(1)が切断される時との少なくとも2回にわたって、洗浄液(23,29)が直接噴射される。よって、1つの溝(26)の内部に残っていた液体がその1つの溝(26)から除去される効果が増大する。
【0035】
また、本発明によれば、複数の溝(13,14)の底面に設けられた複数の吸引孔(30)と、複数の吸引孔(30)に各々つながっている複数の吸引管とを備えるとともに、複数の吸引管は複数の溝(13,14)において溜まっている液体を吸引して治具(6)の外部に排出する。これにより、複数の溝(13,14)の内部に残っていた液体が、治具(6)の外部、ひいては切断装置の外部に排出される。したがって、複数の溝(13,14)の内部が洗浄される。
【0036】
また、本発明によれば、複数の吸引孔(30)に加えて複数の溝(13,14)の底面に設けられた複数の供給孔(34)を備えるとともに、複数の供給孔(34)は複数の溝(13,14)に洗浄液(37)を供給する。これにより、供給孔(34)から供給された洗浄液(37)が、吸引孔(30)によって吸引されて治具(6)の外部、ひいては切断装置の外部に排出される。したがって、供給孔(34)と吸引孔(30)との間における溝(13,14)の内部が洗浄される。
【0037】
また、本発明によれば、複数の吸引孔(30)と複数の供給孔(34)とは複数の溝(13,14)における交差点に各々設けられており、交差点のうち隣り合う交差点には吸引孔(30)と供給孔(34)とが各々配置されている。したがって、隣り合う交差点に設けられた吸引孔(30)と供給孔(34)との間で洗浄液(37)が流動するので、それらの間における溝(13,14)の内部が効果的に洗浄される。また、溝(13,14)の内部において液体が除去されにくい部分、すなわち液体が残りやすい部分である交差点に、吸引孔(30)と供給孔(34)とが配置されている。したがって、交差点付近に残っている液体が治具(6)の外部、ひいては切断装置の外部に排出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
被切断物である樹脂封止体(1)が吸着される吸着用治具(6)の上面には、樹脂封止体(1)に設けられた格子状の複数の領域(5)の境界線(4)に各々重なる複数の溝(13,14)が設けられている。回転刃(17)が被切断線(20)において樹脂封止体(1)を切断する際には、回転刃(17)の周端部が被切断線(20)に重なる切断部溝(21)に収容される。吸着用治具(6)の前方に設けられた洗浄水用ノズル(22)から、切断部溝(21)に向かって、切断部溝(21)が延びる方向であるとともに切断くずが排出される方向である−Y方向に洗浄液(23)を噴射する。また、吸着用治具(6)の前方に設けられた別の洗浄水用ノズル(24)から、被切断線(20)の直前に切断された境界線(25)に重なる溝(26)に向かって、−Y方向に洗浄液(23)を噴射する。
【実施例1】
【0039】
本発明に係る切断装置の実施例1を、図1を参照して説明する。図1は、本実施例に係る切断装置の要部を示す概略斜視図である。図1に示されているように、本実施例に係る切断装置が有する吸着用治具6には、樹脂封止体1が吸着固定されている。樹脂封止体1は、Y方向に沿う1つの境界線4からなる被切断線20において回転刃17によって切断されている。その被切断線20には、Y方向に延びる溝14のうちの1つの溝である切断部溝21が、平面視した場合に重なっている。そして、切断部溝21には、回転刃17の外縁である周端部が収容される。
【0040】
吸着用治具6における側方(図1では前方)の近傍には、回転刃17と一体的に洗浄水用ノズル22が設けられている。洗浄水用ノズル22は、切断部溝21が延びる方向に洗浄水用ノズル22の中心軸がほぼ沿うようにして、水平又はわずかに下向きに設けられている。また、洗浄水用ノズル22は、発生した切断くずが切削水19によって排出される方向(−Y方向)に向いて設けられている。ここで、「吸着用治具6の側方の近傍」というときの「側方の近傍」とは、図示されている治具の4つの側面(正面、背面、右側面、左側面)の近傍を意味する。
【0041】
これらの構成によって、洗浄水用ノズル22は、切断部溝21が延びる方向かつ切断くずが排出される方向に、その切断部溝21に向かって高圧の洗浄水23を直接噴射し、高圧の洗浄水23を切断部溝21の内部において高速で流動させることができる。また、洗浄水用ノズル22を、その中心軸がわずかに下向きになるように設けることによって、洗浄水23を切断部溝21の底面に衝突させた後に切断部溝21の内部において高速で流動させることができる。
【0042】
図1に示された切断装置は、次のようにして樹脂封止体1を切断する。まず、切断しようとするY方向に沿う境界線4に対して、X,Y,Z方向において回転刃17を位置合わせする。
【0043】
次に、切削水19と洗浄水23とを噴射させながら、樹脂封止体1に向かって切断機構15を+Y方向に移動させる。これによって、樹脂封止体1を被切断線20に沿って切断する。ここで、洗浄水用ノズル22は、切断部溝21に向かってその切断部溝21が延びる方向に、かつ、切断くずが排出される方向(−Y方向)に、高圧の洗浄水23を直接噴射する。したがって、回転刃17によって発生した切断くずは、切断部溝21の内部を−Y方向に向かって高速で流動する洗浄水23によって、切断部溝21から吸着用治具6の外部に除去される。
【0044】
次に、Y方向に沿う境界線4の全てにおいて樹脂封止体1を切断した後に、吸着用治具6が取り付けられたベース7(図7参照)をθ方向に90°だけ回動させる。その後に、新たにY方向に沿うことになった境界線4のそれぞれにおいて樹脂封止体1を切断する。洗浄水23を噴射することについては、最初のY方向における切断の場合と同様である。ここまでの工程により、樹脂封止体1を切断して、各領域5にそれぞれ対応する電子部品に個片化することができる。
【0045】
本実施例によれば、被切断線20に重なる切断部溝21に向かってその切断部溝21が延びる方向に、かつ、切断くずが排出される方向(−Y方向)に、高圧の洗浄水23を直接噴射する。これにより、切断部溝21に向かって直接噴射された洗浄水23が、その切断部溝21の内部における長さ方向の全ての部分において、切断くずが排出される方向に高速で流動する。したがって、切断部溝21の内部に残っており切断くずを含む液体が、切断部溝21の内部から吸着用治具6の外部に除去される。
【実施例2】
【0046】
本発明に係る切断装置の実施例2を、図2を参照して説明する。図2は、本実施例に係る切断装置の要部を示す概略斜視図である。図2に示されているように、吸着用治具6における側方(図1では前方)の近傍には、切断機構15と一体的に2個の洗浄水用ノズル22,24が設けられている。洗浄水用ノズル24は、その時点で切断されている被切断線20の直前に切断された境界線25に重なる溝26に向かって、設けられている。そして、洗浄水用ノズル24は、その溝26が延びる方向に、かつ、切断くずが排出される方向(−Y方向)に、高圧の洗浄水23を直接噴射する。
【0047】
本実施例によれば、その時点で切断されている被切断線20に重なる切断部溝21に高圧の洗浄水23が直接噴射される。加えて、直前に切断された境界線25に重なる溝26にも、洗浄水23が直接噴射される。したがって、直前に切断された境界線25に重なる溝26には、その境界線25自身において被切断物1が切断された時と、その直後に隣の境界線である被切断線20において被切断物1が切断される時との2回にわたって、洗浄水23が直接噴射される。このことによって、直前に切断された境界線25に重なる溝26、言い換えれば既に切断され終わった境界線25に重なる溝26の内部に残っており切断くずを含む液体がその1つの溝26から除去される効果が増大する。
【0048】
なお、洗浄水用ノズル24は、その時点で切断されている被切断線20よりも以前に切断された境界線(直前に切断された境界線に限らない)に重なる溝に向かって、設けられていればよい。また、洗浄水用ノズル24は、その時点で切断されている被切断線20よりも以前に切断された境界線に重なる溝に向かって、2個以上設けられていてもよい。また、2個以上設けられた洗浄水用ノズル24のうち少なくとも1個が、その時点で切断されている被切断線20よりも以前に切断された境界線に重なる溝に向かって、設けられていればよい。更に、2個以上設けられた洗浄水用ノズル24には、これから切断しようとする境界線に重なる溝に向かって設けられているノズルが含まれていてもよい。
【0049】
また、その時点で切断されている被切断線20に重なる溝21に向かって洗浄水23を噴射することなく、既に切断され終わった境界線25に重なる溝26に向かって洗浄水23を噴射することとしてもよい。言い換えれば、洗浄水用ノズル24のみを1個又は複数個設けてもよい。更に、既に切断され終わった境界線25に重なる溝26と、まだ切断されていない境界線4に重なる溝14とに向かって、洗浄水23を噴射することとしてもよい。
【0050】
なお、ここまで説明した実施例1と実施例2とにおいては、切断機構15と一体的に洗浄水用ノズル22,24が設けられていることとした。これに限らず、洗浄水用ノズル22,24を、切断機構15とは分離して設けることもできる。この場合には、洗浄水用ノズル22,24を、X方向には切断機構15に同期して移動させ、Y方向には切断機構15とは非同期で移動させてもよい。
【0051】
また、複数個の洗浄水用ノズル22,24間のピッチ(中心間距離)を可変にできる構成を採用してもよい。これにより、電子部品のサイズ、言い換えれば境界線4の間隔が変わった場合においても複数個の洗浄水用ノズル22,24自体を変更する必要がないという効果が得られる。
【実施例3】
【0052】
本発明に係る切断装置の実施例3を、図3を参照して説明する。図3は、本実施例に係る切断装置の要部を示す概略斜視図である。図3に示されているように、吸着用治具6における側方(図1では前方)の近傍には、回転刃17とは分離して、X方向に沿って延びる長尺の洗浄水用ノズル27が設けられている。洗浄水用ノズル27は、切断しようとする方向(Y方向)に沿う全ての溝14にそれぞれ対向する複数の噴射口(図示なし)を有する。そして、洗浄水用ノズル27が有する複数の噴射口は、すべての溝14に対して、それらの溝14が延びる方向に、かつ、切断くずが排出される方向(−Y方向)に、高圧の洗浄水23をそれぞれ直接噴射する。
【0053】
本実施例によれば、常時、すべての溝14に対して、高圧の洗浄水23がそれぞれ直接噴射される。これにより、その時点で切断されている被切断線20に重なる溝21に加えて、それ以前に切断された境界線(直前に切断された境界線25を含む)に重なる溝(溝26を含む)を含む他の溝14にも、高圧の洗浄水23がそれぞれ直接噴射される。したがって、全ての溝14に重なる境界線4において被切断物1が切断された後においても、全ての溝14に向かって洗浄水23が直接噴射される。よって、全ての溝14において、内部に残っており切断くずを含む液体が除去される効果が増大する。
【0054】
なお、すべての噴射口間のピッチ(隣接する噴射口間の中心間距離)が異なる複数の洗浄水用ノズル27を準備しておいてもよい。これにより、電子部品のサイズ、言い換えれば境界線4の間隔が変わった場合においてもノズル自体を交換することによって対応できるという効果が得られる。
【実施例4】
【0055】
本発明に係る切断装置の実施例4を、図4を参照して説明する。図4は、本実施例に係る切断装置の要部を示す概略斜視図である。図4に示されているように、吸着用治具6における側方(図1では前方)の近傍には、回転刃17とは分離して、X方向に沿って延びる長尺の洗浄水用ノズル28が設けられている。洗浄水用ノズル28は、切断しようとする方向(Y方向)に沿う全ての溝14に対向してX方向に沿って延びる、1個のスリット状の噴射口を有する。そして、洗浄水用ノズル28は、すべての溝14に対して、それらの溝14が延びる方向に、かつ、切断くずが排出される方向(−Y方向)に、X方向とY方向とに延びてZ方向に小さい厚さを有する膜状(カーテン状)で高圧の洗浄水29を直接噴射する。
【0056】
本実施例によれば、洗浄水29は膜状の形状を有するので、常時、すべての溝14に対して、高圧の洗浄水23がそれぞれ直接噴射される。したがって、実施例3と同様の効果が得られる。加えて、本実施例によれば、電子部品のサイズ、言い換えれば境界線4の間隔が変わった場合においてもノズル自体を変更する必要がないという効果が得られる。
【0057】
なお、本実施例の説明では、洗浄水用ノズル28が1個のスリット状の噴射口を有することとした。これに限らず、洗浄水用ノズル28の噴射口は、X方向に沿って延びる複数個のスリット状の噴射口であってもよい。また、X方向に沿って複数の洗浄水用ノズル28を設けてもよい。また、1個又は複数個のスリット状の噴射口を設けて、それらの噴射口が扇状に拡がる洗浄水を噴射することとしてもよい。
【0058】
また、ここまで説明した実施例1〜4において洗浄水23、29に必要な条件は、洗浄水23、29が、切断部溝21及び溝26の内部における長さ方向の全ての部分において切断くずが排出される方向に高速で流動することである。したがって、切断部溝21及び溝26に向かって噴射された洗浄水23の圧力、噴射速度、断面形状、断面積等については、上述した条件を満たすように定めればよい。洗浄水用ノズル22、24、27、28の噴射口と切断部溝21及び溝26の開口との距離についても、上述した条件を満たすように定めればよい。
【実施例5】
【0059】
本発明に係る切断装置の実施例5を、図5を参照して説明する。図5は、本実施例に係る切断装置の要部を示す概略斜視図である。図5に示されているように、吸着用治具6における溝13,14の底面には、複数の吸引孔30が設けられている。複数の吸引孔30は、吸着用治具6及びベース7の内部に設けられた吸引管(図示なし)と吸引用配管31とを順次経由して、真空ポンプや減圧タンク等の吸引源32につながっている。そして、回転刃17によって樹脂封止体1が切断されている間、溝13,14の内部に溜まっている液体は、複数の吸引孔30を経由して吸引されることによって排水33として吸着用治具6の外部に除去される。
【0060】
本実施例によれば、複数の溝13,14の底面に設けられ吸引源32につながっている複数の吸引孔30によって、溝13,14の内部が吸引される。このことにより、複数の溝13,14の内部に残っており切断くずを含む液体が吸引されて吸着用治具6の外部、ひいては切断装置の外部に除去される。したがって、複数の溝13,14の内部が洗浄される。
【0061】
ところで、溝13,14の内部において複数の吸引孔30が設けられる場所と数とについては、特に限定されるものではなく任意に定めることができる。しかし、それらの場所は、図に示されているように溝13,14の交差点であることが好ましい。これにより、複数の溝13,14の内部において切断くずを含む液体が溜まりやすい交差点において、溜まっている液体が切断装置の外部に除去される効果が高まる。
【実施例6】
【0062】
本発明に係る切断装置の実施例6を、図6を参照して説明する。図6は、本実施例に係る切断装置の要部を示す概略斜視図である。図6に示されているように、吸着用治具6における溝13,14の底面には、複数の吸引孔30と複数の供給孔34とが相隣り合って設けられている。図6では、吸引孔30は楕円の内部に「X」を付して、供給孔34は楕円の内部に「・」を付して、それぞれ示されている。複数の供給孔34は、吸着用治具6及びベース7の内部に設けられている供給管(図示なし)と供給用配管35とを順次経由して、洗浄水の供給源36につながっている。
【0063】
回転刃17によって樹脂封止体1が切断されている間、複数の供給孔34は溝13,14の内部に洗浄水37を供給する。そして、複数の供給孔34から供給された洗浄水37は、複数の吸引孔30を経由して吸引されることによって排水38として吸着用治具6の外部、ひいては切断装置の外部に除去される。したがって、溝13,14の内部に溜まっている液体は、その排水38に混じって吸着用治具6の外部に除去される。
【0064】
本実施例によれば、複数の供給孔34から供給された洗浄水37が複数の吸引孔30を経由して吸引されることによって、排水38として吸着用治具6の外部に除去される。これにより、複数の溝13,14の内部に残っており切断くずを含む液体が吸引されて、排水38に混じって吸着用治具6の外部、ひいては切断装置の外部に除去される。したがって、複数の溝13,14の内部が効果的に洗浄される。
【0065】
ところで、溝13,14の内部において、複数の吸引孔30と複数の供給孔34とが相隣り合って設けられていることとした。複数の吸引孔30と複数の供給孔34とが設けられる場所と数とについては、特に限定されるものではなく任意に定めることができる。しかし、それらの場所は、図に示されているように溝13,14の交差点であることが好ましい。これにより、複数の溝13,14の内部において切断くずを含む液体が溜まりやすい交差点において、溜まっている液体が切断装置の外部に除去される効果が高まる。
【0066】
なお、上述した各実施例において、被切断物としての樹脂封止体1は、その樹脂封止体1を切断してLEDパッケージ、CCD等の光素子(光学系電子部品)を製造する場合における、透光性樹脂を含む樹脂封止体であってもよい。また、被切断物は、透光性樹脂を含む樹脂成形体を切断して光学レンズ、光通信部品、導光板等の光学系の物品を製造する場合における樹脂成形体であってもよい。特に、光素子や光学系の物品を製造する場合における切断くずの付着は、歩留まり低下の原因になる。そして、本発明によれば、光素子や光学系の物品に切断くずが付着することを防止することによって、光素子や光学系の物品を製造する際の歩留まりを向上させることができる。
【0067】
また、被切断物は、樹脂封止体以外に、シリコンウェーハ、化合物半導体ウエーハ等のウエーハ類、ガラス基板、セラミックス基板等の基板類であってもよい。言い換えれば、被切断物を切断して個片化する際に切断くずの付着を避けたいような場合において、本発明を適用することができる。
【0068】
また、洗浄水用ノズルの噴射口を縦長にして、切削水用ノズルと洗浄水用ノズルとを共通化してもよい。この場合には、切削水・洗浄水兼用ノズルが、切削場所と切断部溝との双方に向かって水を噴射することになる。また、洗浄水用ノズルと同様の形状を有する切削水用ノズルを、洗浄水用ノズルに対してZ方向に並べて設けることもできる。
【0069】
また、1枚の回転刃17を使用する実施例について説明した。これに限らず、切断装置には複数の回転刃17が設けられていてもよい。
【0070】
また、ここまでの説明における「切削水」は、加工抵抗の低減(潤滑)と冷却と切断によって発生する切りくずの除去とを目的として供給される液体、すなわち切削液の総称である。また、「洗浄水」は、切断によって発生する切りくずの除去を主な目的として供給される液体、すなわち洗浄液の総称である。そして、「切削水」と「洗浄水」とのいずれについても、通常は市水又は純水が使用される。また、「切削水」と「洗浄水」として、市水又は純水に添加剤(洗剤、潤滑剤等)を添加した液体を使用してもよい。
【0071】
また、吸着用治具6を使用して被切断物である樹脂封止体1を吸着固定した。これに限らず、被切断物や個片化された後の物品等の寸法形状によっては、クランプ等を使用して被切断物を固定してもよい。
【0072】
また、上述した各実施例においては、被切断物を完全に切断する「フルカット」について説明した。これに限らず、被切断物の厚み方向の一部を残して被切断物を切削(部分的に切断)する、いわゆる「ハーフカット」に対して本発明を適用することもできる。ハーフカットの場合においても、切断くずを含む切削水19が吸着用治具6の溝13,14に入り込むことがあるので(図1参照)、本発明は有効である。
【0073】
また、本発明は、上述の各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施例1に係る切断装置の要部を示す概略斜視図である。
【図2】実施例2に係る切断装置の要部を示す概略斜視図である。
【図3】実施例3に係る切断装置の要部を示す概略斜視図である。
【図4】実施例4に係る切断装置の要部を示す概略斜視図である。
【図5】実施例5に係る切断装置の要部を示す概略斜視図である。
【図6】実施例6に係る切断装置の要部を示す概略斜視図である。
【図7】従来の被切断物の切断方式を説明する概略斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
1 樹脂封止体(被切断物)
2 基板
3 硬化樹脂
4 境界線
5 領域
6 吸着用治具(治具)
7 ベース
8 突起
9 凹部
10 吸引孔
11 吸引用配管
12 吸引源
13、14、26 溝
15 切断機構
16 回転軸
17 回転刃
18 切削水用ノズル
19 切削水
20 被切断線
21 切断部溝
22、24、27、28 洗浄水用ノズル
23、29、37 洗浄水(洗浄液)
25 直前に切断された境界線(既に切断され終わった境界線)
30 吸引孔
31 吸引用配管
32 吸引源
33、38 排水
34 供給孔
35 供給用配管
36 供給源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状に設けられた複数の領域を有する被切断物を固定面に固定する治具と、前記固定面において前記複数の領域の境界線に重なるようにして設けられた複数の溝と、前記境界線に沿って前記被切断物を切断する回転刃とを備え、前記領域に各々対応する複数の物品を製造する際に使用される切断装置であって、
前記回転刃と前記被切断物とが接触する被切削点に向かって上方又は斜め上方から切削水を吐出する切削水用ノズルと、
前記複数の溝の底面に設けられた複数の吸引孔と、
前記複数の吸引孔に各々つながっている複数の吸引管とを備えるとともに、
前記複数の吸引管は前記複数の溝において溜まっている液体を吸引して前記治具の外部に排出し、
前記溜まっている液体には前記切削水と前記回転刃によって発生した切断くずとが含まれることを特徴とする切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の切断装置において、
前記複数の吸引孔の少なくとも一部は前記複数の溝同士が交差する複数の交差点の少なくとも一部に設けられていることを特徴とする切断装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の切断装置において、
前記複数の溝の底面に設けられた複数の供給孔と、
前記複数の供給孔に各々つながっている複数の供給管とを備えるとともに、
前記複数の供給孔は前記複数の溝に洗浄液を供給し、
前記切削水と前記洗浄液とが前記複数の溝に行き渡り、
前記溜まっている液体には前記洗浄液が含まれることを特徴とする切断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の切断装置において、
前記複数の吸引孔と前記複数の供給孔とは前記複数の溝同士が交差する複数の交差点に各々設けられており、
前記複数の交差点のうち隣り合う交差点には前記吸引孔と前記供給孔とが各々配置されていることを特徴とする切断装置。
【請求項5】
格子状に設けられた複数の領域を有する被切断物を固定面に固定する治具と、前記固定面において前記複数の領域の境界線に重なるようにして設けられた複数の溝と、前記境界線に沿って前記被切断物を切断する回転刃とを備え、前記領域に各々対応する複数の物品を製造する際に使用される切断装置であって、
前記回転刃と前記被切断物とが接触する被切削点に向かって上方又は斜め上方から切削水を吐出する切削水用ノズルと、
前記複数の溝の底面に設けられた複数の供給孔と、
前記複数の供給孔に各々つながっている複数の供給管とを備えるとともに、
前記複数の供給孔は前記複数の溝に洗浄液を供給し、
前記切削水と前記洗浄液とが前記複数の溝の長さ方向の全ての部分に十分な勢いで十分な量だけ行き渡ることによって、前記複数の溝において溜まっている液体を前記治具の外部に排出し、
前記溜まっている液体には前記切削水と前記洗浄液と前記回転刃によって発生した切断くずとが含まれることを特徴とする切断装置。
【請求項6】
請求項5に記載の切断装置において、
前記複数の供給孔の少なくとも一部は前記複数の溝同士が交差する複数の交差点の少なくとも一部に設けられていることを特徴とする切断装置。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか1つに記載の切断装置において、
前記被切断物は、透光性樹脂を含む樹脂封止体であって該樹脂封止体を切断して光素子を製造する場合における前記樹脂封止体、又は、透光性樹脂を含む樹脂成形体であって該樹脂成形体を切断して光学系の物品を製造する場合における前記樹脂成形体のいずれかであることを特徴とする切断装置。
【請求項8】
格子状に設けられた複数の領域を有する被切断物を回転刃を使用して切断することによって前記領域に各々対応する複数の物品を形成する切断方法であって、
前記複数の領域を区切る複数の境界線に各々対応して治具の固定面に設けられた複数の溝と前記複数の境界線とを各々位置合わせする工程と、
前記被切断物を前記固定面に固定する工程と、
前記回転刃と前記被切断物とが接触する被切削点に向かって上方又は斜め上方から切削水を吐出する工程と、
前記回転刃によって前記複数の境界線のうち1つの境界線からなる被切断線に沿って前記被切断物を切断する工程と、
前記複数の溝の底面に設けられた複数の吸引孔と該複数の吸引孔に各々つながっている複数の吸引管とを順次介して、前記複数の溝において溜まっている液体を吸引して前記治具の外部に排出する工程とを備え、
前記溜まっている液体には前記切削水と前記回転刃によって発生した切断くずとが含まれることを特徴とする切断方法。
【請求項9】
請求項8に記載の切断方法において、
前記排出する工程では、前記複数の溝同士が交差する複数の交差点の少なくとも一部に設けられた前記吸引孔を使用して前記溜まっている液体を吸引することを特徴とする切断方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の切断方法において、
前記複数の溝の底面に設けられた複数の供給孔から前記複数の溝に洗浄液を供給する工程を備え、
前記供給する工程では前記切削水と前記洗浄液とを前記複数の溝に行き渡らせ、
前記溜まっている液体には前記洗浄液が含まれることを特徴とする切断方法。
【請求項11】
請求項10に記載の切断方法において、
前記複数の吸引孔と前記複数の供給孔とは前記複数の溝における交差点に各々設けられており、
前記交差点のうち隣り合う交差点には前記吸引孔と前記供給孔とが各々配置されていることを特徴とする切断方法。
【請求項12】
格子状に設けられた複数の領域を有する被切断物を回転刃を使用して切断することによって前記領域に各々対応する複数の物品を形成する切断方法であって、
前記複数の領域を区切る複数の境界線に各々対応して治具の固定面に設けられた複数の溝と前記複数の境界線とを各々位置合わせする工程と、
前記被切断物を前記固定面に固定する工程と、
前記回転刃と前記被切断物とが接触する被切削点に向かって上方又は斜め上方から切削水を吐出する工程と、
前記回転刃によって前記複数の境界線のうち1つの境界線からなる被切断線に沿って前記被切断物を切断する工程と、
前記複数の溝の底面に設けられた複数の供給孔に各々つながっている複数の供給管と前記複数の供給孔とを順次介して、前記複数の溝に洗浄液を供給する工程と、
前記切削水と前記洗浄液とを前記複数の溝の長さ方向の全ての部分に十分な勢いで十分な量だけ行き渡らせることによって、前記複数の溝において溜まっている液体を前記治具の外部に排出する工程とを備え、
前記溜まっている液体には前記切削水と前記洗浄液と前記回転刃によって発生した切断くずとが含まれることを特徴とする切断方法。
【請求項13】
請求項12に記載の切断方法において、
前記供給する工程では、前記複数の溝同士が交差する複数の交差点の少なくとも一部に設けられた前記供給孔を使用して前記洗浄液を供給することを特徴とする切断方法。
【請求項14】
請求項8〜13のうちいずれか1つに記載の切断方法において、
前記被切断物は、透光性樹脂を含む樹脂封止体であって該樹脂封止体を切断して光素子を製造する場合における前記樹脂封止体、又は、透光性樹脂を含む樹脂成形体であって該樹脂成形体を切断して光学系の物品を製造する場合における前記樹脂成形体のいずれかであることを特徴とする切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−10180(P2013−10180A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227358(P2012−227358)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【分割の表示】特願2008−49048(P2008−49048)の分割
【原出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(390002473)TOWA株式会社 (192)
【Fターム(参考)】