説明

切断装置及び切断装置の制御方法

【課題】フリクション方式のメイン及びサブの走行台車を用いた切断装置において、各車輪径の差、又は車輪とレールとの滑り等による走行距離のズレを抑制して、正確な直進が可能な切断装置及び切断装置の台車駆動方法を提供すること。
【解決手段】ビーム11により連結されフリクション駆動により走行するメイン及びサブ走行台車10、10と、前記ビーム11に配置された切断手段とを備えた切断装置100であって、前記メイン及びサブの走行台車10、10は、それぞれ駆動モータと、駆動輪と、従動輪と、前記従動輪の回転量を検出する位置検出手段とを備え、前記制御部Cは、前記メイン及びサブの走行台車10、10を所定距離移動させた際に検出された回転量の差に基づき、前記駆動モータの回転を補正する走行距離補正手段を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリクション方式で走行する走行台車を左右に有するフレームプレーナ(ガス切断装置)をはじめとする切断装置に係り、左右の各車輪径の差や車輪とレールの滑り等に起因する走行距離のズレを抑制して、正確な直進が可能な切断装置及び切断装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス切断をはじめとする被加工材を切断する技術分野において、例えば、被切断材を載置する切断定盤の両側(左右)にフリクション方式で走行する走行台車を設け、これら走行台車間にガス切断トーチ等の切断手段を設けたビーム(梁)を渡して連結し、走行台車を直進させながら被加工材を直線的に切断するフレームプレーナ等の切断装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭46‐34220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フリクション方式で走行する切断装置では、左右の走行台車のそれぞれにサドル(一方をメインサドル、他方をサブサドルとする)が設けられているが、これら左右の走行台車のそれぞれに設けられた車輪は、加工精度等による車輪径違いや車輪とレールとの滑りにより、メインサドルとサブサドルの走行距離に差が生じることがある。
【0005】
具体的には、メインサドル及びサブサドルにおいて、車輪径の差異、又は車輪とレールとの滑りによる走行距離のズレがあると、走行距離に差が生じ、長い距離を走行させる場合には、メイン及びサブの車輪の回転量が同じであっても、台車がねじられてしまい、両輪駆動により正確に直進することが困難となる。
【0006】
また、フリクション駆動により走行する切断装置では、片側のサドルの車輪のみモータにて駆動して、他方のサドルの車輪は駆動させないようにした片側駆動が行われている。しかしながら、レールスパンが大きな切断装置では、駆動しない片側が遅れてしまうため、片側のみで駆動することが困難という問題があった。
【0007】
そこで、切断装置において左右の走行台車の駆動モータを同期させて駆動する場合に、メイン及びサブの走行台車で実際の移動量にズレが生じないように、これらメイン及びサブのサドルでズレが生じないように、両側ともラック/ピニオンを用いて走行させている。
しかしながら、このようなラック/ピニオンを用いる場合、設備の製作コストが大きくなるため、両側が車輪とレールのフリクションにより駆動する場合でも、車輪の移動量に差が生じるのを抑制して、両輪駆動でも正確な直進を可能とする技術的な手段に対する強い要請がある。
【0008】
この発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、メイン及びサブの走行台車がレールに対する摩擦力で駆動されるフリクション方式の走行台車を用いた切断装置において、各車輪径の差、又は車輪とレールとの滑り等による走行距離のズレを抑制して、正確な直進が可能な切断装置及び切断装置の台車駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、被加工材を載置する定盤の両側に配置されフリクション駆動により走行するメイン及びサブ走行台車と、前記メイン及びサブ走行台車を連結するビームと、前記ビームに配置された切断手段と、制御部とを備え、前記制御部が前記メイン及びサブ走行台車の走行を制御して、前記被加工材を前記切断手段により切断する切断装置であって、前記メイン及びサブの走行台車は、それぞれ駆動モータと、前記駆動モータにより駆動される駆動輪と、前記走行台車の走行に従動する従動輪と、前記従動輪の回転量を検出する位置検出手段とを備え、前記制御部は、前記位置検出手段が検出した回転量に基づいて前記駆動モータを制御するとともに、前記メイン及びサブの走行台車を所定距離移動させた際に検出された回転量の差に基づき、前記駆動モータの回転を補正する走行距離補正手段を備えることを特徴とする。
【0010】
この発明に係る切断装置によれば、制御部が、位置検出手段が検出した回転量に基づいて駆動モータを駆動する際に、メイン及びサブの走行台車を所定距離移動させて検出した回転量の差に基づいて補正をするので、例えば、車輪の径の差や車輪とレールとの滑りがあっても、メイン及びサブの走行台車の走行距離のズレの発生を抑制して、正確に直進させることができる。その結果、メイン及びサブの走行台車における駆動力伝達にラック/ピニオンを使用することなく、製作コストを削減することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の切断装置であって、前記メイン及びサブ走行台車の少なくともいずれかは、前記駆動モータから前記駆動輪への回転伝達を継断制御する伝達制御手段を備え、前記伝達制御手段により前記駆動モータと前記駆動輪との伝達を断状態とすることで、前記メイン及びサブの走行台車を無負荷にして前記移動距離差を検出するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
この発明に係る切断装置によれば、メイン及びサブ走行台車の少なくともいずれかが備えている伝達制御手段により、駆動モータから駆動輪への伝達を断状態としてメイン及びサブの走行台車を無負荷にして移動可能とした状態で検出した回転量の差に基づいて駆動モータの補正量を決定するので、車輪とレール間のすべりが影響しない正確な補正量を把握することができる。その結果、走行距離のズレを適切に補正することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、被加工材を載置する定盤の両側に配置されフリクション駆動により走行するメイン及びサブ走行台車と、前記メイン及びサブ走行台車を連結するビームと、前記ビームに配置された切断手段と、制御部とを備え、前記制御部が前記メイン及びサブ走行台車の走行を制御して、前記被加工材を前記切断手段により切断する切断装置の制御方法であって、前記メイン及びサブそれぞれの走行台車が、駆動モータと、前記駆動モータにより駆動される駆動輪と、前記走行台車の走行に従動する従動輪と、前記駆動モータから前記駆動輪への回転伝達を継断制御する伝達制御手段と、前記従動輪の回転量を検出する位置検出手段とを備え、前記制御部が、前記位置検出手段が検出した回転量に基づいて前記駆動モータを制御するとともに、前記メイン及びサブの走行台車の走行距離差により前記駆動モータの回転を補正するように構成されている場合に、前記伝達制御手段により前記駆動モータから前記駆動輪への伝達を断状態とすることで前記メイン及びサブの走行台車を無負荷にした状態で、所定距離移動させた際に検出された回転量の差に基づいて補正量を決定することを特徴とする。
【0014】
この発明に係る切断装置の制御方法によれば、伝達制御手段により駆動モータから駆動輪への伝達を断状態として、メイン及びサブの走行台車を無負荷にした状態で所定距離移動させた際に検出した回転量の差に基づいて補正量を決定し、位置検出手段が検出した回転量を上記補正量に基づいて補正して駆動モータを制御するので、メイン及びサブの走行台車の走行距離のズレの発生を抑制して、正確に直進させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の切断装置の制御方法であって、前記補正量を決定する場合に、前記メイン及びサブ双方の走行台車について、前記伝達制御手段により前記駆動モータから前記駆動輪への伝達を断状態としてから前記補正量を決定することを特徴とする。
【0016】
この発明に係る切断装置の制御方法によれば、メイン及びサブの走行台車の双方について、伝達制御手段により駆動モータから駆動輪への伝達を断状態としてから補正量を決定するので、走行距離のズレを適切に補正することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明にかかる切断装置及び切断装置の制御方法によれば、メイン及びサブの走行台車間の走行距離差の発生が抑制されるので、メイン及びサブの走行台車を正確に直進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るガス切断装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1及び図2の走行台車の部分を示す正面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る伝達制御手段を示す図であり、(A)は駆動モータが駆動輪と「継」状態を、(B)は駆動モータが駆動輪と「断」状態を示している。
【図5】本発明の一実施形態に係る走行台車の従動輪とエンコーダを示す正面図である。
【図6】一実施形態に係る走行台車の従動輪とエンコーダを示す平面図である。
【図7】図6のVI−VI線に沿う断面図である。
【図8】図7のVII−VIIで示す部分の拡大図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るガス切断装置の制御のためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図9を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1及び図2は、一実施形態に係るガス切断装置を説明する図であり、符号100はガス切断装置(例えば、ガストーチの直進により被加工材を切断するフレームプレーナ)を、符号1は鋼板等の被切断材Wが載置される定盤を示している。
【0020】
ガス切断装置100は、被加工材Wを載置する定盤(切断定盤)1と、定盤1の両側を走行するメイン及びサブの走行台車10、10(メインの走行台車10とサブの走行台車10)と、メイン及びサブの走行台車10、10間に形成されたビーム11と、駆動制御部(制御部)Cとを備え、ビーム11にはガス切断トーチ13が配置され、駆動制御部Cの指示によって、メイン及びサブの走行台車10、10が走行するとともにガス切断トーチ13により被加工材Wを切断するようになっている。
【0021】
定盤1の左右両側には、2本のレール2が平行に配置され、各レール2上には走行台車10が配置されて、フリクション駆動により走行するようになっている。
なお、図1、2において、左側はメインの走行台車10を、右側はメインの走行台車10と左右対称で同一構造とされたサブの走行台車10である。
【0022】
ビーム11は、メイン及びサブの走行台車10、10を連結するフレーム12と、フレーム12の下部に間隔をあけて配置され、先端を下方に向けて設けられた複数のガス切断トーチ13と、これらガス切断トーチ13に可燃ガスを供給する配管部14とを具備している。
【0023】
次に、図3〜図8を参照して、レール2上を走行するメイン及びサブの走行台車10、10について説明する。
メイン及びサブの走行台車10、10のそれぞれは、図3に示すように、レール2上を走行する台車部20と、台車部20上に設けられた車体となるサドル21と、サドル21上に設けられた操作盤22と、操作盤22を操作する操作者Aが乗るための操作ステップ28が設けられている。
【0024】
台車部20は、台車フレーム23と、駆動輪24と、従動輪25とを備えており、駆動輪24と従動輪25は、台車フレーム23に間隔をあけてそれぞれレール2上を走行するように配置され、台車フレーム23上に設けられた駆動機構26により駆動輪24が駆動されるようになっている。
【0025】
駆動機構26は、駆動モータMと、減速機26Aと、駆動ロータ26Bと、伝達制御手段27とを備えており、駆動モータMの回転が、減速機26A及び伝達制御手段27を介して駆動輪24に伝達されるようになっている。
伝達制御手段27は、駆動モータMからメイン及びサブの走行台車10、10の駆動輪24への回転伝達を、「継」、「断」制御するようになっている。なお、駆動モータMは、メイン及びサブの走行台車10、10と対応してメイン駆動モータMm及びサブ駆動モータMsが設けられ、メイン駆動モータMm及びサブ駆動モータMsに対応して伝達制御手段27が設けられている。
【0026】
伝達制御手段27は、回動支持部27Aと、駆動モータM及び減速機26A、駆動ロータ26Bを載置し一端側が回動支持部27Aに回動可能に支承された支持フレーム27Bと、例えば、ダイヤフラム等により支持フレーム27Bを回動する駆動部材27Cと、駆動部材27Cに抗して支持フレーム27Bの他端側を付勢するバネ等の付勢部材27Dとを備えている。
【0027】
かかる構成により、駆動部材27Cが収縮すると、付勢部材27Dが支持フレーム27Bを回動支持部27A周りに矢印R1方向に回動することで駆動ロータ26Bが駆動輪24と接続されて伝達制御手段27が「継」状態となり、駆動モータMから駆動輪24への回転駆動が伝達されるようになっている。
【0028】
また、伝達制御手段27は、駆動部材27Cが伸張すると、支持フレーム27Bが付勢部材27Dに抗して回動支持部27A周りに矢印R1方向に回動することで駆動ロータ26Bと従動輪25の間に間隙Jが形成されて伝達制御手段27が「継」状態となり、駆動モータMの回転が駆動輪24に伝達されないようになっている。
【0029】
走行距離検出手段30は、図6〜図8に示すように、収納容器となるケーシング31と、従動輪25の回転軸25Aと同軸に固定された従動ギア32と、従動ギア32に噛合された検出ピニオン33と、エンコーダ(パルスジェネレータ)G(以下、メイン/サブのエンコーダGm、Gsという場合がある)とを備え、支持軸34は、ベアリング35を介してケーシング31に回転自在に支持され、検出ピニオン33の回転が支持軸34によりメイン/サブのエンコーダGm、Gsに伝達されるようになっている。
【0030】
メイン/サブのエンコーダGm、Gsは、検出した従動輪25の回転量を操作盤22内の駆動制御部Cにパルス信号として出力し、駆動制御部Cは、メイン/サブのエンコーダGm、Gsからのパルス信号に基づいてメイン及びサブの走行台車10、10の位置(走行距離)を算出し、メイン及びサブの走行台車10、10を予め設定した位置に移動するように駆動モータを駆動するようになっている。この実施形態では、例えば、メインの走行台車10が予め設定した位置となるようにメイン駆動モータMmを駆動し、サブ駆動モータMsには、メイン及びサブの走行台車10、10の従動輪25の回転量差に基づいて補正した信号を出力することで、メイン及びサブの走行台車10、10が同じ距離を走行するようになっている。
【0031】
この実施形態では、メイン/サブのエンコーダGm、Gsが車輪とレール2のすべりの影響を受け難い点で好適なため、メイン/サブのエンコーダGm、Gsがそれぞれ従動輪25の回転を検出する構成としている。
また、車輪表面の汚れや片当たりまたはすべり等により、ローラの検出精度が低下するのを抑制するため、従動輪25と同軸の従動ギア32を取り付け、エンコーダGの軸に組み込んだ検出ピニオン33を、この従動ギア32に噛み合わせて検出する方式とすることが好適である。
【0032】
駆動制御部Cは、図9に示すように、演算部50と、メイン側駆動制御部51と、サブ側駆動制御部52と、補正量計算部52aと、メインのサーボアンプ53と、サブのサーボアンプ54とを備え、メイン及びサブの走行台車10、10の既定距離当たりの走行距離差(d1)に基づいて車輪の回転速度の補正量を決定するようになっている。
演算部50は、メイン側駆動制御部51及びサブ側駆動制御部52に、基準とするメインの駆動モータMmを駆動するためのパルス信号(Vm)を出力するようになっている。
【0033】
メイン側駆動制御部51は、演算部50から出力されたパルスと、メインのエンコーダGmからの回転量検出信号Pmに基づいてメインの台車10の実際の位置を算出し、メイン台車10が所定の位置に移動するまで、メインのサーボアンプ53にメインの駆動モータMmを駆動するためのパルス信号(Vm)を出力するようになっている。メインのサーボアンプ53は、メイン側駆動制御部51からのパルス信号Vmに基づいてメインの駆動モータMmを駆動するようになっている。
【0034】
サブ側駆動制御部52は、演算部50から出力されたパルス(Vm)と、補正量計算部52aから入力されたサブの走行台車10のエンコーダGsに係る補正後の回転量検出フィードバック信号(Pss)に基づいてサブの台車10の実際の位置を算出し、メイン台車10が所定の位置に移動するまで、サブのサーボアンプ54にサブの駆動モータMsを駆動するためのパルス信号(Vs)を出力するようになっている。サブのサーボアンプ54は、サブ側駆動制御部52からのパルス信号Vsに基づいてサブの駆動モータMsを駆動するようになっている。
【0035】
ここで、補正量計算部52aは、サブのエンコーダGsからの回転量検出信号Psに基づいてフィードバック信号(Pss)を算出するようになっている。
ここで、フィードバック信号(Pss)は、サブの走行台車10を既定距離を走行させた場合の走行距離(Ls)と、そのときのメインの走行台車10の従動輪25とサブの走行台車10の従動輪25との走行距離差(dl)に基づく以下の算出式により導かれる。
Pss=Ps×((dl/Ls)+1)
【0036】
また、サブ側駆動制御部52は、サブ側サーボアンプ54へのパルス信号(Vs)を演算部50が出力したパルス信号(Vm)及び以下の算出式に基づいて算出するようになっている。
Vs=Vm/((dl/Ls)+1)
【0037】
メインの走行台車10に対するサブの走行台車10の補正量、すなわちメインの駆動モータMmに対するサブの駆動モータMsの補正量は、次のように取得する。
【0038】
まず、メイン及びサブの走行台車10、10を既定距離だけ移動し、メイン/サブのエンコーダGm、Gsそれぞれの回転量、及びメイン/サブの走行台車10、10の従動輪25の車輪径から移動距離(メイン:Lm、サブ:Ls)を算出する。メイン及びサブの走行台車10、10の上記計測のための移動は、手動で行うことが好適であるが、外部に設けた駆動手段や、駆動モータMにより移動させることもできる。
【0039】
次に、メイン/サブの走行台車10、10の移動距離(メイン:Lm、サブ:Ls)から走行距離差(dl)を求め、サブの走行台車10の移動距離(Ls)、走行距離差(dl)に基づいて、メインの駆動モータMmへの出力を基準とするサブの駆動モータMsの出力を補正するための上記二つの算出式が得られる。
ここで、例えば、駆動制御部Cは、サブの走行台車10の移動距離(Ls)及び走行距離差(dl)をメモリ(不図示)に格納して、上記算出式に適用して、フィードバック信号(Pss)、サブ側サーボアンプ54へのパルス信号(Vs)を算出するようになっている。
【0040】
メイン/サブの走行台車10、10の移動距離(メイン:Lm、サブ:Ls)及び走行距離差(d1)を計測する際には、駆動制御部Cは、メイン及びサブの走行台車10、10のうち少なくともいずれか一方、好適には双方の伝達制御手段27を「断」状態として、メイン及びサブの走行台車10、10を無負荷にして相互間の位置ズレが生じないようにすることが好適である。
【0041】
ガス切断装置100によれば、駆動制御部Cが、駆動モータMを駆動してメイン及びサブの走行台車10、10を走行させる際に、メイン及びサブの走行台車10、10を既定距離移動させて検出した走行距離差(d1)と対応する回転量の差に基づいてサブの駆動モータMsの回転を補正するので、例えば、メイン及びサブの走行台車10、10の走行距離のズレの発生を抑制して、正確に直進させることができる。その結果、メイン及びサブの走行台車における駆動力伝達にラック/ピニオンを使用することなく、製作コストを削減することができる。
【0042】
また、伝達制御手段27を「断」状態にして各側の走行台車10、10を無負荷にすることで、メイン及びサブ走行台車10、10が相対移動可能となり、メイン及びサブ走行台車10、10が駆動モータMの回転抵抗の影響を受けて相互間の位置ズレが発生するのを解消することができる。その結果、メイン及びサブ走行台車10、10を走行させて補正量を定めるので、補正量を正確に把握することができる。
【0043】
また、切断装置100によれば、メイン及びサブの走行台車10、10の双方について、伝達制御手段27により駆動モータMから駆動輪24への伝達を「断」状態としてから補正量を決定するので、駆動輪24とレール2間にすべりがあっても、すべりの影響がない正確な補正量を把握することができる。その結果、走行距離のズレを適切に補正することができる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、切断装置がガス切断装置である場合について説明したが、プラズマ切断装置、レーザ切断装置等、ガス切断装置以外の切断装置に適用してもよい。
また、上記実施の形態においては、メイン及びサブの走行台車10、10がそれぞれ伝達制御手段27を備える場合について説明したが、伝達制御手段27を設けるかどうかは任意に設定することができる。
【0045】
また、上記実施の形態においては、メイン及びサブの走行台車10、10の既定距離当たりの走行距離差(dl)に基づき、駆動輪24の回転速度を補正するようにしたが、これに限定されず、メイン及びサブの走行台車10、10の既定距離当たり(例えば、10m)の走行距離と、基準となる実際の距離(=10m)との差分をそれぞれ求め、その差分が縮小されるように、メイン及びサブの双方の駆動モータMに対する回転量の補正を行うように構成してもよい。
【0046】
また、上記実施形態においては、伝達制御手段が、駆動ロータ27Bと駆動輪24との離間、接触により、駆動モータMの回転伝達を制御する場合について説明したが、クラッチ等、周知の伝達制御手段を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、メイン及びサブの走行台車間の走行距離差の発生を抑制して、正確に走行させることができるので、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
2 レール
10 走行台車
13 ガス切断トーチ(切断手段)
24 駆動輪
25 従動輪
26 駆動機構
27 伝達制御手段
30 走行距離検出手段
100 ガス切断装置
C 駆動制御部(制御部)
G エンコーダ(位置検出手段)
M 駆動モータ
W 鋼板(被切断材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材を載置する定盤の両側に配置されフリクション駆動により走行するメイン及びサブ走行台車と、前記メイン及びサブ走行台車を連結するビームと、前記ビームに配置された切断手段と、制御部と、を備え、
前記制御部が前記メイン及びサブ走行台車の走行を制御して、前記被加工材を前記切断手段により切断する切断装置であって、
前記メイン及びサブの走行台車は、それぞれ駆動モータと、前記駆動モータにより駆動される駆動輪と、前記走行台車の走行に従動する従動輪と、前記従動輪の回転量を検出する位置検出手段と、を備え、
前記制御部は、
前記位置検出手段が検出した回転量に基づいて前記駆動モータを制御するとともに、前記メイン及びサブの走行台車を所定距離移動させた際に検出された回転量の差に基づき、前記駆動モータの回転を補正する走行距離補正手段を備えることを特徴とする切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の切断装置であって、
前記メイン及びサブ走行台車の少なくともいずれかは、前記駆動モータから前記駆動輪への回転伝達を継断制御する伝達制御手段を備え、
前記伝達制御手段により前記駆動モータと前記駆動輪との伝達を断状態とすることで、前記メイン及びサブの走行台車を無負荷にして前記移動距離差を検出するように構成されていることを特徴とする切断装置。
【請求項3】
被加工材を載置する定盤の両側に配置されフリクション駆動により走行するメイン及びサブ走行台車と、前記メイン及びサブ走行台車を連結するビームと、前記ビームに配置された切断手段と、制御部とを備え、前記制御部が前記メイン及びサブ走行台車の走行を制御して、前記被加工材を前記切断手段により切断する切断装置の制御方法であって、
前記メイン及びサブそれぞれの走行台車が、駆動モータと、前記駆動モータにより駆動される駆動輪と、前記走行台車の走行に従動する従動輪と、前記駆動モータから前記駆動輪への回転伝達を継断制御する伝達制御手段と、前記従動輪の回転量を検出する位置検出手段とを備え、前記制御部が、前記位置検出手段が検出した回転量に基づいて前記駆動モータを制御するとともに、前記メイン及びサブの走行台車の走行距離差により前記駆動モータの回転を補正するように構成されている場合に、
前記伝達制御手段により前記駆動モータから前記駆動輪への伝達を断状態とすることで前記メイン及びサブの走行台車を無負荷にした状態で、所定距離移動させた際に検出された回転量の差に基づいて補正量を決定することを特徴とする切断装置の制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の切断装置の制御方法であって、
前記補正量を決定する場合に、前記メイン及びサブ双方の走行台車について、前記伝達制御手段により前記駆動モータから前記駆動輪への伝達を断状態としてから前記補正量を決定することを特徴とする切断装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−240073(P2012−240073A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111357(P2011−111357)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000150981)日酸TANAKA株式会社 (33)