説明

切断装置

【課題】切断手段と被搬送物の速度に誤差が生じることに起因する、シートが正確に切断できないといった問題を解決する切断装置を提供する。
【解決手段】被搬送物1を搬送する搬送手段2と、切断手段3と、切断手段3を移動させる移動手段と、切断手段3の被搬送物1に対する相対位置を固定する位置固定手段4と、を備えた切断装置である。搬送方向移動部材5を設け、搬送方向移動部材5に切断手段3及び位置固定手段4を設ける。位置固定手段4の押さえ部41を下方に移動させて被搬送物1を下方に押さえ付けて位置固定し、切断手段3により切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にシートを貼着してなる被搬送物を切断する切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、図9に示すように、搬送方向Aに間隔をあけた複数の基板11に亘ってシート12を貼着してなる被搬送物1を搬送する搬送手段2と、被搬送物1の基板11間に位置するシート12を切断する切断手段3と、切断手段3を移動させる移動手段5’と、を備えた切断装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
従来の切断装置は、切断手段3を被搬送物1の搬送速度と同じ速度で搬送して、搬送方向Aと直交する切断方向Bに切断するのであるが、これにあたっては制御部により、移動手段5’で移動させる切断手段3の移動速度を搬送手段2で搬送する被搬送物1の搬送速度に同期させて、双方の速度を合わせるようにしていた。
【0004】
しかしながら、移動手段5’と搬送手段2は別の駆動手段により独立して駆動しているため、実際の運転上は双方の速度に誤差が生じるものであった。その結果、切断刃がシート12に対して相対的に搬送方向Aと直交する切断方向Bに移動せず蛇行や斜行が発生してしまい、シート12が正確に切断できなかったり、切断刃の側面の摩擦抵抗が大きくなってシート12が切断刃に溶着し切れ味が悪くなったり、切断刃と基板11が接触して切断刃や基板11等の設備が破損したりする、という問題があった。
【特許文献1】特開平06−47697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、シートが正確に切断できなかったり、切断刃の側面の摩擦抵抗が大きくなってシートが切断刃に溶着し切れ味が悪くなったり、切断刃と基板が接触して切断刃や基板等の設備が破損したりするのを防止する切断装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に係る切断装置にあっては、搬送方向Aに間隔をあけた複数の基板11の上面に亘ってシート12を貼着してなる被搬送物1を搬送する搬送手段2と、シートを切断する切断手段3と、切断手段3を移動させる移動手段と、切断手段3の被搬送物1に対する相対位置を固定する位置固定手段4と、制御部と、を備えた切断装置であって、搬送方向Aに移動自在な搬送方向移動部材5を設け、切断手段3を保持し駆動部により駆動されて搬送方向Aと直交する切断方向Bに移動自在な切断手段保持部材7を搬送方向移動部材5に設けて、移動手段を構成し、搬送方向移動部材5に位置固定手段保持部材40を固定すると共に、位置固定手段保持部材40に位置固定駆動部42及び該位置固定駆動部42により上下動する押さえ部41からなる位置固定手段4を設け、基板11の間の間隙に切断手段3が位置する状態で、押さえ部41を下方に移動させて被搬送物1の基板11の上のシート12を下方に押さえ付けて位置固定し、切断手段保持部材7を切断方向Bに移動させて切断手段3により基板11の間のシート12を切断するように制御部により制御して成ることを特徴とするものである。
【0007】
このような構成とすることで、押さえ部41でシート12を押さえ付けて、位置固定手段4と搬送方向移動部材5とを介して切断手段3を被搬送物1に位置固定することができて、切断手段3の移動速度を被搬送物1の搬送速度と完全に一致させることができ、切断刃がシート12に対して相対的に切断方向Bに移動せず蛇行や斜行が発生してしまうのを防止することが可能となる。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、位置固定手段保持部材40に被搬送物1を下方より支持する支持部43aを設け、支持部43aと押さえ部41とで被搬送物1を挟持して成ることを特徴とするものである。
【0009】
このような構成とすることで、被搬送物1を押さえ部41で片側からのみから押さえ付けると、被搬送物1が撓んで押さえ部41と被搬送物1との間に摩擦力が充分に発生せず、位置固定が確実に行われないような場合でも、上下両側から挟持して被搬送物1が撓むのを防止し、位置固定が確実に行われる。
【0010】
また請求項3に係る切断装置にあっては、搬送方向Aに間隔をあけた複数の基板11の上面に亘ってシート12を貼着してなる被搬送物1を搬送する搬送手段2と、シートを切断する切断手段3と、切断手段3を移動させる移動手段と、切断手段3の被搬送物1に対する相対位置を固定する位置固定手段4と、制御部と、を備えた切断装置であって、搬送方向Aに移動自在な搬送方向移動部材5を設け、切断手段3を保持し駆動部により駆動されて搬送方向Aと直交する切断方向Bに移動自在な切断手段保持部材7を搬送方向移動部材5に設けて、移動手段を構成し、搬送方向移動部材5に位置固定手段保持部材40を固定すると共に、位置固定手段保持部材40に位置固定駆動部42及び該位置固定駆動部42により上下動し基板11の搬送方向Aの順方向側の端部に引掛けるフック44からなる位置固定手段4を設け、基板11の間の間隙に切断手段3が位置する状態で、フック44を上又は下に移動させて基板11の搬送方向Aの順方向側の端部に引掛けて位置固定し、切断手段保持部材7を切断方向Bに移動させて切断手段3により基板11の間のシート12を切断するように制御部により制御して成ることを特徴とするものである。
【0011】
このような構成とすることで、フック44を基板11の搬送方向Aの順方向側の端部に引掛けて、位置固定手段4と搬送方向移動部材5とを介して切断手段3を被搬送物1に位置固定することができて、切断手段3の移動速度を被搬送物1の搬送速度と完全に一致させることができ、切断刃がシート12に対して相対的に切断方向Bに移動せず蛇行や斜行が発生してしまうのを防止することが可能となる。
【0012】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に係る発明において、被搬送物1の基板11の間の間隙を検知する間隙検知手段8を設け、間隙検知手段8からの検知信号を受けて搬送方向駆動手段6を駆動させるように制御部により制御して成ることを特徴とするものである。
【0013】
このような構成とすることで、容易に基板11の間の間隙に切断刃を位置させる制御が可能となる。
【0014】
また、請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に係る発明において、搬送方向駆動手段6として、駆動部61と、該駆動部61により駆動され搬送方向Aに自在に移動する移動体62と、搬送方向移動部材5の搬送方向A両側に位置するように移動体62にそれぞれ固定され、移動体62の搬送方向Aの順方向又は逆方向への移動に伴い搬送方向移動部材5を押圧する押圧体63と、を設けて成ることを特徴とするものである。
【0015】
このような構成とすることで、搬送方向移動部材5に搬送方向Aの順方向又は逆方向への駆動力の付与と前記駆動力をなくすことが容易に行える。
【0016】
また、請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に係る発明において、搬送方向移動部材5に搬送方向Aの順方向又は逆方向への駆動力を付与可能な搬送方向駆動手段6を設け、位置固定するにあたり搬送方向駆動手段6を駆動して搬送方向移動部材5を被搬送物1の搬送速度と略同じ速度で移動させ、位置固定した後、搬送方向駆動手段6による搬送方向移動部材5の駆動を停止することを特徴とするものである。
【0017】
切断手段3を被搬送物1に位置固定するにあたり、切断手段3と被搬送物1との相対速度が大きいと、接触面に大きな摩擦力や衝撃力がかかって切断手段3や被搬送物1が破損する惧れがあるが、上記のようにすることで、切断手段3や被搬送物1が破損する惧れがない。
【0018】
また、請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に係る発明において、切断手段3を切断手段保持部材7に対して上下動可能に保持して成ることを特徴とするものである。
【0019】
このような構成とすることで、万一、押さえ部41によるシート12の押圧不足等により正確に位置固定されず、切断刃が基板11の間の間隙に位置せず基板11が存在する箇所に位置している場合に、切断刃が基板11に乗り上げて切断手段3を上方に逃がすことができて、切断手段3や基板11等の設備が破損するのを防止することが可能となり、また、作業者が手作業でシート12を切断することで、切断装置を停止することなく連続的に切断を継続することが可能となる。
【0020】
また、請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明において、切断手段3の上下動のストロークの下限にそれ以上の下動を阻止するストッパを設けると共に、切断手段3を下方に付勢する付勢手段75を設けて成ることを特徴とするものである。
【0021】
このような構成とすることで、切断手段3を上昇させる異常な力がかからない限り、切断手段3をストロークの下限の正常な切断位置に位置させることが可能となる。
【0022】
また、請求項9に係る発明は、請求項8に係る発明において、切断手段3を、外周縁に切断刃を備えた略円板状の回転刃31と、該回転刃31を両方向に回転可能な回転駆動部32と、で構成し、回転刃31の下半部をシート12と同じ高さに位置させ、回転刃31の回転方向を、切断手段3が移動する方向と回転刃31の下端の回転方向とが逆になるように制御部により制御して成ることを特徴とするものである。
【0023】
このような構成とすることで、回転刃31の基板11と接触する切断刃の移動方向Bと、回転刃31と相対的に移動する基板11の移動方向Bとが同じで、基板11に対する接触する切断刃の速度が小さくなって、回転刃31の基板11から受ける抵抗が小さく乗り上げが容易となる。
【0024】
また、請求項10に係る発明は、請求項9に係る発明において、回転刃31が基板11に乗り上げる異常の際の切断手段3の上昇を検知する異常検知手段76を設けると共に、異常検知手段76が異常を検知した時に異常を報知する異常報知手段77を設けて成ることを特徴とするものである。
【0025】
このような構成とすることで、回転刃31が基板11に乗り上げる異常を検知してこれを作業者に報知することが可能となり、その後も連続的に切断を継続することができる。
【0026】
また、請求項11に係る発明は、請求項1乃至10のいずれか一項に係る発明において、切断手段3が切断刃を備えると共に、切断刃に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段33を設けて成ることを特徴とするものである。
【0027】
このような構成とすることで、摩擦熱の発生を抑制し、シート12が溶着して切断刃に付着するのを防止する。
【0028】
また、請求項12に係る発明は、請求項1乃至11のいずれか一項に係る発明において、切断手段3が切断刃を備えると共に、切断刃を冷却する冷却手段34を設けて成ることを特徴とするものである。
【0029】
このような構成とすることで、摩擦熱により回転刃31の温度が上昇して、シート12が回転刃31に溶着するのを防止する。
【発明の効果】
【0030】
本発明にあっては、切断手段の移動速度を搬送手段で搬送する被搬送物の搬送速度に完全に一致させることができるため、シートが正確に切断できなかったり、切断刃の側面の摩擦抵抗が大きくなってシートが切断刃に溶着し切れ味が悪くなったり、切断刃と基板が接触して切断刃や基板等の設備が破損したりするのを防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0032】
切断装置は、図2の概略斜視図に示すように、被搬送物1を搬送する搬送手段2と、切断手段3と、切断手段3を移動させる移動手段と、切断手段3の被搬送物1に対する相対位置を固定する位置固定手段4と、で基本的な部分が構成されるもので、まず、これらの基本的な構成について図1乃至図4に基づいて説明する。
【0033】
切断対象は、基板11に貼着したシート12であり、被搬送物1の搬送方向Aに間隔をあけて複数の基板11を並設し、この複数の基板11の上面に亘って長尺のシート12を接着剤で貼着して被搬送物1を構成している。
【0034】
被搬送物1を搬送する搬送手段2は、図1に示すように、搬送方向Aに複数並設したローラ21と、ローラ21の一部または全部を回転駆動させるモータ等からなる駆動手段(図示せず)と、で主体が構成され、駆動手段にてローラ21を回転駆動させて、ローラ21上に載置された被搬送物1を搬送するものである。
【0035】
切断手段3は、図1、図3に示すように、外周縁に切断刃を備えた略円板状の回転刃31と、回転刃31を回転させるモータ等からなる回転駆動部32と、で主体が構成される。回転刃31と回転駆動部32は回転刃ブラケット30に固定してあり、回転刃31の向きを一定に保持している。回転刃31は、回転軸を搬送方向Aと平行に設置して切断刃を搬送方向Aに直交させ、切断対象を搬送方向Aと直交する方向(切断方向B)に切断するものである。回転駆動部32は、回転刃31を正方向、逆方向のいずれにも回転駆動させることができる。
【0036】
また、図4に示すように、回転刃ブラケット30には、回転刃31に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段33としての潤滑剤噴霧ノズルと、回転刃31を冷却する冷却手段34として冷却空気を噴出するエアノズルとが設けてある。潤滑剤噴霧ノズルは、定期的に回転刃31にシリコンスプレー等の潤滑剤を噴霧して潤滑剤切れを起こさないようにすることで、摩擦熱の発生を抑制し、シート12が溶着して回転刃31に付着するのを防止している。またエアノズルは、常時回転刃31に冷却された空気を噴出することで、摩擦熱により回転刃31の温度が上昇して、シート12が回転刃31に溶着するのを防止している。
【0037】
切断手段3を移動させる移動手段は、図1に示すように、切断手段3を搬送方向Aに移動させる搬送方向移動手段と、切断手段3を切断方向Bに移動させる切断方向移動手段と、で主体が構成される。
【0038】
搬送方向移動手段は、搬送方向Aに沿って設置されるスライドガイド50と、スライドガイド50にガイドされて搬送方向Aに移動する搬送方向スライダ51と、搬送方向移動部材5に搬送方向Aの順方向又は逆方向への駆動力を付与する搬送方向駆動手段6と、で主体が構成される。
【0039】
スライドガイド50は、搬送方向Aから見て下方に開口するコ字状又はロ字状をした枠体Fにより支持される。枠体Fは、搬送方向Aに間隔をあけて少なくとも二つ設置してあり、枠体Fの上横枠の切断方向Bの両端部近傍の下面にスライドガイド50を固定することで、長手方向が搬送方向Aと平行になるように両枠体F間に架設している。
【0040】
本実施形態では、スライドガイド50は、図1(a)に示すように搬送方向Aに見た断面が矩形状をしていて、両側の側面に搬送方向Aを長手方向とする係合溝(特に図示せず)が形成してある。また各スライドガイド50に装着される搬送方向スライダ51は、搬送方向Aに見て上方に開口する略コ字状をしていて、搬送方向Aの長さはスライドガイド50よりも短いものであり、両側の内側面に搬送方向Aを長手方向とする係合突部(特に図示せず)が突設してある。そして、搬送方向スライダ51の係合突部をスライドガイド50の係合溝に係合させて、搬送方向スライダ51がスライドガイド50にスライド自在となるように装着してある。なお、スライドガイド50と搬送方向スライダ51は前述した形態に限定されず、搬送方向スライダ51がスライドガイド50に対して移動自在となればよく、ガイドレールとランナであってもよい。搬送方向スライダ51には、一体となって移動する搬送方向移動部材5が固定してある。
【0041】
搬送方向移動部材5は、長尺の棒状や中空部材等の部材からなり、長手方向の両端部の近傍をそれぞれ両搬送方向スライダ51の下面に固定することで、長手方向が切断方向Bと平行になるように搬送方向スライダ51間に架設している。
【0042】
搬送方向移動部材5には、特に図示しないが切断方向Bを長手方向とするスライドガイドが形成してあると共に、スライドガイドには切断方向スライダ70が装着してある。切断方向スライダ70は、図1(a)に示すように切断方向Bの長さが搬送方向移動部材5の切断方向Bの長さよりも短く形成してあり、切断方向Bにスライド自在となっている。前記スライドガイドと切断方向スライダ70は、上述したスライドガイド50と搬送方向スライダ51と同様の形態であるが、切断方向スライダ70がスライドガイドに対して移動自在であればどのような形態でもよい。
【0043】
また図示しないが、切断方向スライダ70を駆動する切断方向駆動手段が設けてあり、前記切断方向駆動手段は、例えば切断方向スライダ70にモータ等の駆動部により回転駆動されるピニオンを設けると共に、スライドガイドの長手方向にラックを設けて構成したり、その他の構成であってもよく特に限定されない。切断方向駆動手段と、上記切断方向スライダ70及びスライドガイドとで切断方向移動手段が構成される。
【0044】
切断方向スライダ70には、図1に示すように、切断手段3を保持する切断手段保持部材7が固定してある。切断手段保持部材7は、図1、図3に示すように、切断方向Bから見て略逆L字状をしたブラケット71の上横片及び側縦片の側面に、搬送方向Aから見て略矩形状の板部72の上辺及び一側辺をそれぞれ固定して構成してあり、その上横片を切断方向スライダ70の下端に固定してある。板部72には上記回転刃ブラケット30を上下にスライド自在にガイドする縦スライドガイド73が設けてあると共に、回転刃ブラケット30の上端部には、前記縦スライドガイド73に装着される縦スライダ74が固定してあり、回転刃ブラケット30は上下にスライド自在となっている。縦スライドガイド73は、下端にストッパ(図示せず)が設けてあり、縦スライダ74のそれ以上の下動を阻止している。また、回転刃ブラケット30の上面と切断手段保持部材7の上横片の下面との間に、切断手段3を下方に付勢する付勢手段75としてのばねが設けてあり、このばねにより回転刃ブラケット30を下方に付勢している。従って、回転刃ブラケット30は、外力がかかっていない限りストロークの下限に位置していて、この状態での回転刃31の高さは、該回転刃31の下半部がローラ21上に載置された被搬送物1のシート12と同じ高さとなるように設定している。また、板部72には切断手段3の上昇を検知する異常検知手段76として、縦スライダ74のストロークの下限からの上昇を検知するリミットスイッチが設けてあり、回転刃ブラケット30が上方に移動して縦スライダ74が前記位置に到達した時にこれを検知する。
【0045】
また搬送方向移動部材5には、図1に示すように、位置固定手段4を保持する位置固定手段保持部材40が固定してある。位置固定手段保持部材40は、切断方向Bに見て略逆L字状をしたブラケット71で、その上横片を搬送方向移動部材5の搬送方向Aを向く面から搬送方向Aに突出させ、上横片の突出端から側縦片を下方に垂下しており、切断方向スライダ70、切断手段保持部材7及びその固定部品との干渉を回避している。そして、前記側縦片の下端部に、上下動自在な押さえ部41を備えた位置固定駆動部42が設けてある。位置固定駆動部42は、空気圧による直動アクチュエータ等が好適に用いられるが、モータでもよく特に限定されない。押さえ部41は、位置固定駆動部42から突没自在に下方に向けて突出する出力軸の下端に設けてあり、シート12の上面を下方に押圧するものである。押さえ部41のシート12押圧面となる下面には、静止摩擦係数が大きくシート12を傷つけないゴム等の部材が設けてある。この押さえ部41と位置固定駆動部42とで位置固定手段4が構成してある。
【0046】
搬送方向駆動手段6は、図1に示すように、駆動部61と、駆動部61の駆動力で移動する移動体62と、移動体62に固定され搬送方向移動部材5を押圧する押圧体63と、で構成される。
【0047】
駆動部61はモータであり、枠体Fの上横枠に固定される。移動体62は、駆動部61により搬送方向Aに移動するもので、搬送方向Aを長手方向とする長尺の棒状をしたものである。この移動体62は、長手方向にラックが形成してあると共に、駆動部61のモータの出力軸にピニオンが設けてあって、ラックに噛み合ったピニオンの回転により、移動体62が搬送方向移動部材5の上方を搬送方向Aに移動自在となっている。
【0048】
移動体62には、搬送方向移動部材5の搬送方向A両側に押圧体63が固定してある。押圧体63は、図1(b)に示すように、移動体62の下面に、搬送方向Aに搬送方向移動部材5の搬送方向Aの長さよりも長い間隔をあけて、搬送方向Aに見て搬送方向移動部材5と重なるように、搬送方向Aの逆方向側の押圧体63aと順方向側の押圧体63bとがそれぞれ垂下してある。逆方向側の押圧体63aは、移動体62が順方向に移動する時に、搬送方向移動部材5の逆方向を向く面に当接して、搬送方向移動部材5を順方向に押圧して加速させ、これとは逆に順方向側の押圧体63bは、移動体62が逆方向に移動する時に、搬送方向移動部材5の順方向を向く面に当接して、搬送方向移動部材5を逆方向に押圧して加速させるものである。
【0049】
本実施形態では、図1に示すように、被搬送物1の基板11の間の間隙を検知する間隙検知手段8を備えている。間隙検知手段8は、搬送手段2のローラ21の上面、すなわちローラ21に載置されて搬送される被搬送物1の基板11の下面よりも下方に配設されるもので、例えば測距センサが好適に用いられるが特に限定されない。
【0050】
また、間隙検知手段8からの検知信号を受け、搬送方向駆動手段6の駆動部61、切断方向駆動手段の駆動部、切断手段3の回転駆動部32の駆動を制御する電子回路からなる制御部を備えている。以下、切断装置の動作について説明する。
【0051】
間隙検知手段8が被搬送物1の基板11の間の間隙を検知すると、搬送方向駆動手段6の駆動部61を駆動して移動体62を順方向に移動させ、逆方向側の押圧体63aで搬送方向移動部材5を押圧して、搬送方向移動部材5を順方向に移動させる。搬送方向駆動手段6の移動体62の速度を被搬送物1の搬送速度と同じに設定しておくことで、実際に厳密に同じ速度にはならないものの、搬送方向移動部材5の速度を被搬送物1の搬送速度と略同じ速度にする。ここで、間隙検知時の移動体62の待機位置、加速、移動距離、前記速度を予め設定しておく。待機位置は、移動体62のストロークの搬送方向Aの逆方向側の端部とする。また、切断手段保持部材7を切断方向Bのいずれかの端部に位置させて切断方向駆動手段を停止することで、回転刃31と被搬送物1との干渉を回避し、また、切断手段3の回転駆動部32を停止する。
【0052】
次に、位置固定駆動部42を駆動して押さえ部41を下方に移動させて、被搬送物1の基板11の上のシート12を下方に押さえ付けると共に、搬送方向駆動手段6による駆動を停止し、押圧体63による搬送方向移動部材5の押圧を停止する。シート12と略同じ速度で移動する押さえ部41をシート12に押さえ付けることで、押さえ部41とシート12との間に摩擦力が働いて押さえ部41とシート12とが同じ速度となり、搬送方向移動部材5は、搬送方向駆動手段6力からの駆動力がなくなり慣性で移動しているのみであるため、押さえ部41、位置固定駆動部42、位置固定手段保持部材40を介してシート12と同じ速度になる。この時、基板11の間の間隙に回転刃31が位置するように、上記待機位置、加速、移動距離、速度を設定するものである。
【0053】
次に、切断手段3の回転駆動部32を駆動すると共に、切断方向駆動手段の駆動部61を駆動して、回転刃31によりシート12を切断する。切断手段3の回転刃31は、切断方向Bの一端から他端にかけて移動しながら回転するが、この時の回転刃31の回転方向は、切断手段3が移動する方向と回転刃31の下端の回転方向とが逆になるようにするもので、これについては後述する。この時の回転刃31の平面視における移動軌跡は図5のイとなる。
【0054】
回転刃31が切断方向Bの他端に到達すると、シート12の切断が終わり(既に切断し終わっていてもよい)、切断方向駆動手段の駆動部及び回転駆動部32を停止する。
【0055】
次に、位置固定駆動部42を駆動して押さえ部41を上方に移動させて、押さえ部41を被搬送物1の基板11の上のシート12から離す。そして、搬送方向駆動手段6の駆動部61を駆動して移動体62を逆方向に移動させ、順方向側の押圧体63bで搬送方向移動部材5を押圧して、搬送方向移動部材5を逆方向に移動させ、移動体62を待機位置に戻す。この時の回転刃31の平面視における移動軌跡は図5のロとなる。
【0056】
次に、間隙検知手段8が次の基板1間の間隙を検知すると、搬送方向駆動手段6の駆動部61を駆動して、搬送方向移動部材5を順方向に移動させ、以降は上述した動作と、切断手段保持部材7の進行方向が切断方向Bにおいて逆になる点、回転刃31の回転方向が逆になる点を除き、同じ動作となる。この切断時の回転刃31の平面視における移動軌跡は図5のハとなり、移動体62を待機位置に戻す時の移動軌跡は二となる。
【0057】
また万一、位置固定手段4の押さえ部41によるシート12の押圧不足等により正確に位置固定されず、回転刃31が回転すると共に切断手段3が切断方向Bに移動を始めた際に、回転刃31が基板11の間の間隙に位置しておらず、回転刃31に対応する位置に基板11が存在する場合、回転刃31が基板11に乗り上げて回転刃ブラケット30が上昇する。すなわち、回転刃31の回転方向ホは、図6に示すように、その下端の回転方向が切断手段3の移動方向(切断方向B)と逆になるため、移動する切断手段3を基準として、回転刃31の基板11と接触する切断刃の移動方向Bと、回転刃31と相対的に移動する基板11の移動方向Bとが同じで、基板11に対する接触する切断刃の速度が小さくなって、基板11を切断したりせずに乗り上げ易くなる。回転刃31が基板11に乗り上げると、回転刃ブラケット30がばねに抗して上昇し、リミットスイッチがこれを検知し、制御部が異常報知手段77(図1参照)に異常を報知させる。異常報知手段77としては、発光したりブザーによる報知音を発するものが好適に用いられるが、特に限定されない。異常の報知を受けて、作業者が手作業でシート12を切断することで、切断装置を停止することなく、連続的に切断を継続することが可能となる。なお制御部は、異常の報知と共に回転刃31の回転停止等の措置をとってもよい。
【0058】
また他の実施形態として、図7に示すように、位置固定手段保持部材40に被搬送物1を下方より支持する支持部43aを設け、支持部43aと押さえ部41とで被搬送物1を挟持してもよい。位置固定手段保持部材40に、搬送方向Aから見て略L字状をした連設部材43を設け、連設部材43の下片を支持部43aとしている。
【0059】
被搬送物1を押さえ部41で片側からのみから押さえ付けると、被搬送物1が撓んで押さえ部41と被搬送物1との間に摩擦力が充分に発生せず、位置固定が確実に行われないような場合でも、上下両側から挟持して被搬送物1が撓むのを防止し、位置固定が確実に行われる。
【0060】
また更に他の実施形態として、図8に示すように、位置固定手段4として、上記押さえ部41及び位置固定駆動部42の代わりに、位置固定手段保持部材40に基板11の搬送方向Aの順方向側の端部に引掛けるフック44を設けてもよい。この場合、搬送方向駆動手段6を駆動して搬送方向移動部材5を被搬送物1の搬送速度と略同じ速度で移動させ、基板11の間の間隙に切断手段3が位置する状態で、フック44を基板11の搬送方向Aの順方向側の端部に引掛けると共に搬送方向駆動手段6による搬送方向移動部材5の駆動を停止し、切断手段3によりシート12を切断する。
【0061】
本実施形態では、フック44を基板11の端部に引掛けるため、位置固定手段4と搬送方向移動部材5とを介して切断手段3の移動速度を被搬送物1の搬送速度と完全に一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の切断装置の一実施形態を示し、(a)は搬送方向から見た正面図であり、(b)は搬送方向と直交する切断方向から見た側面図である。
【図2】同上の切断装置の全体概略斜視図である。
【図3】同上の切断手段を保持した切断手段保持部材の詳細な側面図である。
【図4】同上の切断手段に設けた潤滑剤供給手段及び冷却手段の位置を示す正面図である。
【図5】回転刃の移動軌跡を説明する平面図である。
【図6】(a)(b)は回転刃の基板への乗り上げを概略説明する正面図である。
【図7】他の実施形態を示し、(a)は搬送方向から見た正面図であり、(b)は搬送方向と直交する切断方向から見た側面図である。
【図8】更に他の実施形態を示し、(a)は搬送方向から見た正面図であり、(b)は搬送方向と直交する切断方向から見た側面図である。
【図9】従来の切断装置の全体概略斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
1 被搬送物
11 基板
12 シート
2 搬送手段
3 切断手段
30 回転刃ブラケット
31 回転刃
32 回転駆動部
4 位置固定手段
40 位置固定手段保持部材
41 押さえ部
42 位置固定駆動部
5 搬送方向移動部材
50 スライドガイド
51 搬送方向スライダ
6 搬送方向駆動手段
62 移動体
63 押圧体
7 切断手段保持部材
70 切断方向スライダ
73 縦スライドガイド
74 縦スライダ
75 付勢手段
76 異常検知手段
8 間隙検知手段
A 搬送方向
B 切断方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に間隔をあけた複数の基板の上面に亘ってシートを貼着してなる被搬送物を搬送する搬送手段と、シートを切断する切断手段と、切断手段を移動させる移動手段と、切断手段の被搬送物に対する相対位置を固定する位置固定手段と、制御部と、を備えた切断装置であって、搬送方向に移動自在な搬送方向移動部材を設け、切断手段を保持し駆動部により駆動されて搬送方向と直交する切断方向に移動自在な切断手段保持部材を搬送方向移動部材に設けて、移動手段を構成し、搬送方向移動部材に位置固定手段保持部材を固定すると共に、位置固定手段保持部材に位置固定駆動部及び該位置固定駆動部により上下動する押さえ部からなる位置固定手段を設け、基板の間の間隙に切断手段が位置する状態で、押さえ部を下方に移動させて被搬送物の基板の上のシートを下方に押さえ付けて位置固定し、切断手段保持部材を切断方向に移動させて切断手段により基板の間のシートを切断するように制御部により制御して成ることを特徴とする切断装置。
【請求項2】
位置固定手段保持部材に被搬送物を下方より支持する支持部を設け、支持部と押さえ部とで被搬送物を挟持して成ることを特徴とする請求項1記載の切断装置。
【請求項3】
搬送方向に間隔をあけた複数の基板の上面に亘ってシートを貼着してなる被搬送物を搬送する搬送手段と、シートを切断する切断手段と、切断手段を移動させる移動手段と、切断手段の被搬送物に対する相対位置を固定する位置固定手段と、制御部と、を備えた切断装置であって、搬送方向に移動自在な搬送方向移動部材を設け、切切断手段を保持し駆動部により駆動されて搬送方向と直交する切断方向に移動自在な切断手段保持部材を搬送方向移動部材に設けて、移動手段を構成し、搬送方向移動部材に位置固定手段保持部材を固定すると共に、位置固定手段保持部材に位置固定駆動部及び該位置固定駆動部により上下動し基板の搬送方向の順方向側の端部に引掛けるフックからなる位置固定手段を設け、基板の間の間隙に切断手段が位置する状態で、フックを上又は下に移動させて基板の搬送方向の順方向側の端部に引掛けて位置固定し、切断手段保持部材を切断方向に移動させて切断手段により基板の間のシートを切断するように制御部により制御して成ることを特徴とする切断装置。
【請求項4】
被搬送物の基板の間の間隙を検知する間隙検知手段を設け、間隙検知手段からの検知信号を受けて搬送方向駆動手段を駆動させるように制御部により制御して成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の切断装置。
【請求項5】
搬送方向駆動手段として、駆動部と、該駆動部により駆動され搬送方向に自在に移動する移動体と、搬送方向移動部材の搬送方向両側に位置するように移動体にそれぞれ固定され、移動体の搬送方向の順方向又は逆方向への移動に伴い搬送方向移動部材を押圧する押圧体と、を設けて成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の切断装置。
【請求項6】
搬送方向移動部材に搬送方向の順方向又は逆方向への駆動力を付与可能な搬送方向駆動手段を設け、位置固定するにあたり搬送方向駆動手段を駆動して搬送方向移動部材を被搬送物の搬送速度と略同じ速度で移動させ、位置固定した後、搬送方向駆動手段による搬送方向移動部材の駆動を停止することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の切断装置。
【請求項7】
切断手段を切断手段保持部材に対して上下動可能に保持して成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の切断装置。
【請求項8】
切断手段の上下動のストロークの下限にそれ以上の下動を阻止するストッパを設けると共に、切断手段を下方に付勢する付勢手段を設けて成ることを特徴とする請求項7記載の切断装置。
【請求項9】
切断手段を、外周縁に切断刃を備えた略円板状の回転刃と、該回転刃を両方向に回転可能な回転駆動部と、で構成し、回転刃の下半部をシートと同じ高さに位置させ、回転刃の回転方向を、切断手段が移動する方向と回転刃の下端の回転方向とが逆になるように制御部により制御して成ることを特徴とする請求項8記載の切断装置。
【請求項10】
回転刃が基板に乗り上げる異常の際の切断手段の上昇を検知する異常検知手段を設けると共に、異常検知手段が異常を検知した時に異常を報知する異常報知手段を設けて成ることを特徴とする請求項9記載の切断装置。
【請求項11】
切断手段が切断刃を備えると共に、切断刃に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段を設けて成ることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の切断装置。
【請求項12】
切断手段が切断刃を備えると共に、切断刃を冷却する冷却手段を設けて成ることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−125535(P2010−125535A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300165(P2008−300165)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)