説明

切断装置

【課題】切断すべき吊ピースやジョイントプレートが設けられた箇所までの運搬が容易で、刃の損傷を抑えて効率よく切断することが可能な切断装置を提供する。
【解決手段】切断装置1は、切断する突起物Pが突設された材料Mに対して取り付けられる取付部2と、この取付部2に対して着脱自在とされ、切断方向に進退動する移動機構3Aを有した移送部3と、この移送部の移動機構3Aに対して着脱自在とされ、材料Mを切断する丸鋸4Bでなる切断機構4Aを有した切断部4と、移動機構3Aと切断機構4Aの駆動を突起物Pに応じて制御する制御部5と、を備えた。
【効果】第1に、各構成を別々に運搬できるので運搬効率が向上すると共に材料への取付作業が容易となる。第2に、刃の損傷と切断速度のバランスを取った最も効率のよい切断が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬や接続のために構造物の鉄筋や鉄骨など(以下「材料」という)に設けられた吊ピースやジョイントプレート(以下「突起物」という)を切断するに際し、該突起物が設けられた箇所までの運搬が容易で、刃の損傷を抑えて効率よく切断することが可能な切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、橋脚など大型の構造物を組み立てて構築する際には、構造物の部材を必要箇所へ運搬するために、ワイヤーロープなどを掛けるための吊ピースが設けられている。また、鉄骨や鉄筋コンクリート構造における鉄骨柱などには、他部材との接続用及び運搬用のジョイントプレート、ガイドピース、吊ピース、エレクションピースが設けられている。
【0003】
上記突起物は、運搬後あるいは接続後に不要となれば除去される。このとき、前記除去手法としては、溶断、切削、切断、などにより行われる。一般的に、溶断する場合は安全性に問題があるうえ、部材が熱損傷する可能性が高いと言われており、また、切削する場合は除去すべき突起物を除去するのに時間がかかると言われている。
【0004】
そこで、昨今では切断による手法が主流となっている。突起物を切断によって除去する装置として例えば以下の特許文献1〜4が知られている。
【特許文献1】特許第3428198号公報
【特許文献2】特開2006−21265号公報
【特許文献3】特開2004−345044号公報
【特許文献4】特開2004−195619号公報
【0005】
特許文献1〜4は、各々特徴点は異なるものの、概略的には、突起物を切断によって除去すべく、全体を突起物が設けられた材料に固定し、切断方向にバンドソーを自動送りする構成とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜4の構成では、全体を一体的に材料に取り付ける構成であったため、重量も嵩も極めて大きく、その結果、材料における突起物が設けられた箇所や切断した突起物の箇所から次の突起物の箇所へ運搬するのが非常に困難であると共に、材料への取り付け取り外しも困難であった。また、特許文献1〜4は、取り付けが困難であることに起因して、あるいは、全体の重量が大きいことに起因して、材料に対する取り付けが不十分な場合があり、高所使用時に落下するという危険が伴っていた。
【0007】
また、全体を一体的に材料に取り付けることに起因して、材料への取り付け方も一定的で、つまり、例えば材料の面に電磁石で取り付ける場合は、その他の例えば鉄柱に抱き巻くといったように取り付けることができず、材料や突起物の状況に対応しにくいといった問題があった。
【0008】
さらに、特許文献1〜4のいずれもがバンドソーによって突起物を切断しつつ、切断方向に自動送りされる構成であるが、バンドソーの重量と嵩が大きいので上記運搬や取り付け取り外しが困難という問題と共に、バンドソーの自動送りが一定であるので、突起物の切断開始当初や硬い突起物の切断時に、バンドソーの損傷が早いといった問題もある。
【0009】
また、バンドソーである点及び一定速度で自動送りする点に起因して、突起物の切断面が歪みやすく、切断中、歪み始めると軌道修正することができないといった不具合があった。
【0010】
本発明が解決しようとする第1の問題点は、特許文献1〜4の構成では材料における突起物が設けられた箇所へ運搬が非常に困難であると共に、材料への取り付け取り外しも困難であった点、及び材料や突起物の状況に対応しにくい点である。
【0011】
そして、第2の問題点は、特許文献1〜4の構成では、バンドソーの自動送りが一定であったため、突起物の切断開始当初や硬い突起物の切断によりバンドソーがすぐに損傷する点、及び突起物の切断面が歪みやすく、切断中、歪み始めると軌道修正することができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するため、本発明の切断装置は、切断する突起物が突設された材料に対して取り付けられる取付部と、この取付部に対して着脱自在とされ、切断方向に進退動する移動機構を有した移送部と、この移送部の前記移動機構に対して着脱自在とされ、材料を切断する丸鋸でなる切断機構を有した切断部と、これら取付部、移送部、切断部とは電気・信号線を介して別体とされ、前記移動機構と切断機構の駆動を前記突起物に応じて制御する制御部と、を備えることとした。
【0013】
また、本発明の切断装置は、上記構成において、取付部が材料や突起物の形状などの状況に対応できるように複数用意され、これらを選択的に取付可能としたり、制御部が突起物の寸法や材質に応じて切断機構と移動機構の各々の速度を調整としたり、切断機構に、溝掘り用のチップを有した丸鋸を採用してもよい。
【発明の効果】
【0014】
従来は、突起物の切断そのものの時間よりも、重量も嵩も大きい全構成が一体とされた切断装置の運搬や材料への取り付け及び材料からの取り外しに要する時間の方がはるかに長く、これにより全体の作業時間が長時間となっていた。
【0015】
本発明に係る切断装置は、取付部、移送部、切断部、及び制御部を分割しているから、それぞれを別々に運搬したり、先に取付部だけを材料に取り付けてからこの取付部に対して移送部を又は切断部と予め一体とした移送部を、該取付部に取り付ければよくなる。
【0016】
したがって、材料における突起物が設けられた箇所までの運搬は容易となり、また、材料に対する取り付け、取り外しの作業も分割された取付部、移送部、切断部毎に個々に行うことができるから、容易となり、結果として作業効率は格段に向上する。
【0017】
また、本発明は、取付部が材料や突起物の形状などの状況に対応できるように複数用意され、これらを選択的に取付可能とする場合は、上記において、複数種の取付部のみを運搬しておけば、材料に取り付けた取付部に対して移送部及び切断部を取り替えればよくなる。
【0018】
こうすれば、全構成が一体とされた切断装置を材料や突起物の形状などの状況に対応して用意したり、全体を逐一運搬する必要がなくなる。つまり、材料や突起物の形状などの状況に対応した取付部だけを運搬しておけば、突起物を切断する箇所において、予め取付部を設けておけば、作業時には移送部及び切断部の付け替えで対応が可能となるから、作業効率はさらに格段に向上する。よって、材料に対して十分な取り付けが可能となり、高所使用時に取り付けの困難性と全体の重量に起因する落下危険性は低くなる。
【0019】
また、本発明は、制御部が突起物の寸法や材質に応じて切断機構と移動機構の各々の速度を調整する場合は、切断機構である丸鋸の刃の損傷と切断速度とのバランスを取ることが可能となる。
【0020】
こうすれば、丸鋸の刃と突起物の寸法や材質との関係から、刃の寿命を考慮し過ぎて移送部による送り速度や切断部による回転速度を過剰に遅くして切断効率を著しく低下させることがなく、逆に切断効率を考慮し過ぎて移送部による送り速度や切断部による回転速度を過剰に速くして刃の寿命を短命化することがなくなる。
【0021】
また、本発明は、切断機構に、溝掘り用のチップを有した丸鋸を採用する場合、そのチップにより刃先の損傷の少ない切削に近い手法で切断という手法が可能となる。
【0022】
こうすれば、切断効率は切断手法よりは若干遅くなることがあっても、切削手法よりは速く、刃(チップ)の寿命が長寿命化されるので、刃の取り替え頻度、取り替え作業、突起物の切断作業全体において、突起物の切断自体に関係のない作業に要する手間やコストを劇的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、図1〜図11に示す以下の形態により実施可能である。図1〜図8は第1形態の、図9〜図11は第2形態の、切断装置を示す。なお、第2形態の切断装置は、第1形態と異なる構成についてのみ説明し、重複する説明は省略する。
【0024】
(第1形態)
第1形態では、例えば橋梁構築のための材料Mを運搬するための吊ピース(突起物P)を除去する例を示す。切断装置1は、図1に示すように、次の構成とされている。2は、切断する突起物Pが突設された材料Mに対して取り付けられる取付部である。この取付部2は、図2に示すように、例えば平面視コ字状のフレーム2Aを備えている。
【0025】
このフレーム2Aは、上記のとおり本形態においては平面視コ字状とされ、対向する水平辺間に、垂直辺と平行な補強材が設けられている。そして、フレーム2Aの、下面には複数で小型の電磁石2Bが設けられている。また、フレーム2Aの複数適所には表裏面を貫通したねじ孔2Caが設けられており、本形態においてはこのねじ孔2Caにより取付機構2Cが構成されている。
【0026】
電磁石2Bは、本形態の場合、フレーム2Aが平面視コ字状であるので、対向辺部に各々2個、対向辺端を両端とする接続辺部に6個、の計10個設けている。例えば、この電磁石2Bは、1個につき約330kgの垂直荷重を有するから、総計すると取付部2で発揮される垂直加重は約3.3tとなる。本形態の切断装置1全体の重量は100kgを超えないので、この取り付けの強度としては十分である。なお、本形態における取付部2のみの重量は、約42kgである。
【0027】
したがって、本形態における取付部2は、小型ながら複数の電磁石2Bを所定間隔を空けて設けているので、単位面積当たりの垂直荷重を低下させることなく全体の軽量化を図ることができる。例えば3.3t程度の垂直荷重が必要とされる場合、1個で目的とする垂直荷重を発揮する電磁石を採用する場合、70cmの高さ、60cmの直径とされた円筒形の標準的なもので重さが約400kgといった極めて重くかつ大きいものを採用しなくてはならない。
【0028】
上記に対し、本発明の取付部2は、例えば330kgの垂直荷重を有する電磁石を10個、それも全体の固定に関して必要となる部位にそれらを配置しているから、全体重量が小型の電磁石2Bを複数設け、かつ同垂直加重を発揮して、約42kgなので、大幅な小型軽量化を図ることが可能であり、運搬効率も良くなる。
【0029】
さらに、取付部2は材料Mに対して取付方向が変更可能であるので、材料Mの突起物Pの切断方向について自由度が高く、また、電磁石2Bは取付部2のフレーム2Aに対して自由にレイアウトが可能であるので、固定すべき箇所には重点的に電磁石2Bを集合させたり、垂直荷重を分散させるべく電磁石2Bを等間隔で配置したり、材料Mや突起物Pの形状に合わせた取り付けが可能となる。
【0030】
また、取付部2における取付機構2Cは、後述の移送部3を着脱自在とするものであり、上記のとおり、本形態の場合はフレーム2Aの複数適所にねじ孔2Caを設けることで構成されている。ねじ孔2Caに対しては、移送部3からボルト3abを螺入することで、取付部2に対して該移送部3を取り付ける(後述)。
【0031】
このように取付機構2Cは、ねじ孔2Caをフレーム2Aに複数設けておくことで、移送部3をフレーム2A上にレイアウト自由に取り付けることが可能となり、突起物Pの切断方向に応じて柔軟に取り付けるよう対応させることができる。
【0032】
つまり、本発明の切断装置1は、フレーム2Aの形状を材料Mに応じたものとしたり、取付機構2Cを備えると共に小型の電磁石2Bを配置自由に備えているので、材料Mへの取付自由度が柔軟となり、また、取付部2の材料Mへの取付状況が変更された場合においても該取付部2だけの対応で移送部3や切断部4をそのまま適応させることができる。
【0033】
図3に示す、3は、取付部2に対して着脱自在とされ、切断方向に進退動する移動機構3Aと、後述する切断部4を着脱自在に取り付ける着脱機構3Bとを有した移送部である。移動機構3Aは、図3に示すように、上記取付機構2Cに取り付けられる基板3aを有している。
【0034】
この基板3aには、上述した取付部2の取付機構2Cすなわちフレーム2Aに形成されたねじ孔2Caに対応するよう、複数の孔3aaが形成されている。したがって、取付部2に対する移送部3の取り付けは、移送部3の基板3aの孔3aaを介して、取付機構2Cのねじ孔2Caに向けてボルト3abを螺入して行う。
【0035】
また、基板3a上にはレール3bが設けられ、このレール3bに沿って移動台3cが移動する。また、基板3a上には、該基板3aの長尺方向の両端においてスクリュー螺子3dが回動自在に枢支されていると共に、このスクリュー螺子3dの一方端部にモータ3eが接続されている。
【0036】
移動台3cは、その下面に上記レール3bに嵌るガイド3fと、スクリュー螺子3dが螺入される螺入部3gが設けられている。また、移動台3cには、後述する切断部4を取り付けるための着脱機構3Bが設けられていると共に、切断部4における切断部位を露出するための開口3hが形成されている。
【0037】
着脱機構3Bは、切断部4を着脱自在に取り付けるためのものであり、本形態では、移動台3cにおける後述する切断部4の変換器4bを載置する部位の四隅にねじ孔3Baが形成されることで構成されている。ねじ孔3Baに対しては、後述する切断部4からボルト4bbを螺入することで、移送部3に対して該切断部4を取り付ける(後述)。
【0038】
移動機構2Aは、モータ3eの回転駆動に伴うスクリュー螺子3dの回転により、移動台3c(切断部4)が進退移動する。したがって、スクリュー螺子3dの螺子ピッチを細かくしてモータ3eの回転速度を可変とすることで、移動台3cの移動速度、すなわち切断速度を調整し得る。この移動台3cの移動速度については後述する。
【0039】
本形態における移送部3自体は、重量が約25kgであるが、移送部3自体は、上記着脱機構3Bにより切断部4を分割することができると共に、取付部2とは取付機構2Cにより分割することもできるから、切断箇所まで運搬するに際して、最も効率的な分割を選択することができる。
【0040】
図4に示す、4は、移動台3cの着脱機構3Bにより着脱自在とされ、突起物Pを切断する切断機構4Aを有した切断部である。切断機構4Aは、図4に示すように、本例では、モータ4aと、このモータ4aの出力軸の方向を直角に変換する変換器4bと、この変換器4bの出力軸4cに設けられる、図4(b)に示す丸鋸4Bとを有している。
【0041】
本形態では、上記変換器4bの筐体(ケース)において、上述した移送部3の着脱機構3Bすなわち移動台3cに形成されたねじ孔3Baに対応する4個の孔4baが形成されている。したがって、移送部3に対する切断部4の取り付けは、切断部4の孔4baを介して、着脱機構3Bのねじ孔2Baに向けてボルト4bbを螺入して行う。
【0042】
本発明では、切断部4において、突起物Pを切断する切断機構4Aの具体的構成として特に図4(b)及び図5に示す丸鋸4Bを採用している。この理由は、次のとおりである。従来は、この種の突起物Pを切断するにはバンドソーが用いられていており、丸鋸自体が一般的ではなかった。
【0043】
丸鋸を用いた突起物Pの切断装置は、材料Mに固定的に取り付けて使用するものではなく、いわゆる手で把持して使用するハンディタイプにおいて存在している。丸鋸を用いた突起物Pの切断装置がハンディタイプにおいて存在していた理由は、材料Mに固定的に取り付けて使用する切断装置に一般的に採用されていなかった理由でもある。
【0044】
すなわち、材料Mに切断装置を固定的に取り付けなければならないほどの突起物Pとは、寸法や厚みが大きく、また材質としては硬いため、(ハンディタイプの)工作機械用に用いられる丸鋸は、切断することができないか、できたとしても刃の損傷が著しく早かったり、1つの突起物Pの全体を切断する前に損傷してしまうからである。
【0045】
したがって、本願において切断対象としている寸法や厚みが大きく、また硬い突起物Pを切断するには、通常の工作機械用の丸鋸を採用することは考えられず、バンドソーを用いることが主流となっていたのである。しかしながら、バンドソーを用いた切断装置は、全体構成が大がかりとなるほか、従来技術で挙げた問題があり、いずれにおいても、刃の損傷と切断効率とのバランスを維持して最適に切断することができなかった。
【0046】
そこで、本発明者は、従来とは全く別の観点、すなわち「掘る」という手法で突起物Pを除去すること、及びそのような刃を用いれば、軽量かつ小型で刃の損傷が少なく、また、高速で突起物Pを除去可能であることを見出した。
【0047】
すなわち、丸鋸4Bは、通常の切断用の刃ではなく、平面部位に対して上方から溝のような切欠を形成するために、すくい上げるように表面を削り取る刃4Ba(チップ)が設けられており、突起物Pの一方面から他方面へ向けて貫通する溝を形成するように突起物Pを切断する。
【0048】
この丸鋸4Bを用いることで、バンドソーで切断するよりは切断時間が若干遅くなるデメリットがあるものの、切断速度と刃4Baの損傷とのバランスが取れることによるメリット、及びその他切断面が水平で仕上げが不要である等のメリットを得ることができる。
【0049】
すなわち、通常の丸鋸のデメリットは解消され、硬くかつ厚みのある突起物Pを切断するに際して好適となる。また、バンドソーに較べて小型化も軽量化も可能となると共に、刃4Baのみの交換が可能であるから、全体を交換するよりは安価となる。
【0050】
なお、本例における切断部4は重量が約19kgであるが、本発明の切断装置1は、取付部2と移送部3と切断部4とが着脱自在の別体とされているから、材料Mにおける突起物Pが特設された箇所まで、全部を分割して運搬するのか、あるいは、取付部2に移送部3を取り付けて切断部4を別体で運搬するのか、又は取付部2を別体として移送部3に切断部4を取り付けて運搬するのか、は適宜自由である。
【0051】
図6に示す、5は、取付部2、移送部3、切断部4とは電気・信号線を介して別体とされた制御部である。この制御部5は、取付部2においては電磁石2Bを、移動機構3Aにおいてはモータ3eを、切断機構4Aにおいてはモータ4aを、各々オン・オフ制御するほか、操作パネルにおいて各種制御を行う。
【0052】
制御部5における操作パネルには、全体の通電オン・オフの確認用の電源ランプ5aと、取付部2における電磁石2Bの通電確認用の電磁石電源ランプ5bと、移動機構3Aにおけるモータ3eの移動モータ電源ランプ5cと、該モータ3eの回転方向確認用の正転ランプ5d及び逆転ランプ5eと、切断機構4Aにおけるモータ4aの通電確認用の切断モータ電源ランプ5fと、を有している。
【0053】
また、制御部5の操作パネルには、取付部2の電磁石2Bの通電用の入スイッチ5g及び切スイッチ5h並びに消磁スイッチ5iと、移動機構3Aのモータ3eの通電用の入スイッチ5j及び切スイッチ5k並びに正逆スイッチ5lと、切断機構4Aのモータ4aの入スイッチ5m及び切スイッチnと、を有している。
【0054】
さらに、制御部5の内部には、移動機構3Aのモータ3eに接続した移動モータ用インバータ5Aと、切断機構4Aのモータ4aに接続した切断モータ用インバータ5Bを備えている。
【0055】
制御部5は、移動機構3Aにおいてはモータ3eを、切断機構4Aにおいてはモータ4aを、突起物Pの例えば材質や厚み及び切断方向の長さなどに応じて制御する。この制御は、入力条件に基づいて以下の関係に基づく自動演算により出力が制御されるようにしてもよいし、手動で調整制御するようにしてもよい。
【0056】
制御部5は、移動機構3Aによる送り速度と、切断機構4Aによる切断速度とを、最適に制御する。最適とは、丸鋸4dの刃4eの損傷を最小限に抑え、かつ作業速度を低下させずに、切断する突起物Pを最短で切断することができるという意味である。
【0057】
つまり、作業時間を短縮するために、移動機構3Aの送り速度を早くしたり、切断機構4Aの丸鋸4Bの回転速度を早くすれば、刃4Baが早く損傷してしまう。逆に、刃4Baの損傷を抑制するために、移動機構3Aの送り速度を遅くしたり、切断機構4Aの丸鋸4Bの回転速度を遅くすれば、作業時間は長期化してしまう。
【0058】
例えば、図7の「切断速度」線は、移動機構3Aにおけるモータ3eの移動モータ用インバータ5Aの周波数と切断速度(移動機構3Aによる切断部4の送り速度)との関係を示しており、周波数を高くすれば、モータ3eが高速回転するから、切断速度を増加させることができることを示している。
【0059】
ここで、「材料切断」線は、例えばJIS SS400の鋼材とした場合の突起物Pの厚み(硬さ)及び切断速度と、モータ3eの周波数との関係を示しており、突起物Pの厚みが増せば、周波数を高くしても切断に時間を要し、切断速度が低下することが判る。
【0060】
つまり、突起物Pの厚み(硬さ)に対して、モータ3eの周波数を高くしても、丸鋸4Bの刃4Baの損傷が早くなるだけで、切断速度が早くなるわけではない。ここで、切断速度と丸鋸4Bの刃4Baの損傷の抑制とをバランス良く保つには、図8に示す切断機構4Aにおけるモータ4aの切断モータ用インバータ5Bの周波数と、前記移動モータ用インバータ5Aの周波数との関係を適切に保てばよい。
【0061】
したがって、移動モータ用インバータ5Aの周波数と、切断モータ用インバータ5Bの周波数と、の関係を、図8に示すような(例えば、切断モータ用周波数=移動モータ用周波数×1/4+55で表される)比例直線状とすることで、丸鋸4Bの刃4Baの損傷の抑制して最大限の切断速度にて突起物Pを切断することができる。
【0062】
本例では、制御部5の内部における移動モータ用インバータ5Aの周波数と、切断モータ用インバータ5Bの周波数とを、予め設定した例を示したが、例えば、突起物Pの厚みや材料を入力することで、適切な周波数を演算して制御するようにしてもよい。
【0063】
上記構成の切断装置1は、まず、切断すべき突起物Pが特設された箇所へ最も運搬しやすい分割状態で、取付部2、移送部3、切断部4を運搬する。運搬しやすい分割状態とは、例えば取付部2と、移送部3、切断部4を各々別々又は一体に、あるいは取付部2及び移送部3と、切断部4とを別々に、又は取付部2と、移送部3及び切断部4とを別々に、といった状態である。
【0064】
運搬後、取付部2を材料Mに取り付ける。このとき、制御部5においては内部のメイン電源をオンにして、電源ランプ5aの点灯(オン)を確認して、電磁石2Bの入スイッチ5gを操作して電磁石2Bをオンにする。
【0065】
その後、取付部2に対して分割されていれば移送部3を、移送部3に対して同じく分割されていれば切断部4を取り付け、切断装置1を構成する。このとき、突起物Pに対する丸鋸4dの位置等を調整する。
【0066】
材料Mに対して切断装置1が取り付けられた後、突起物Pの材料と厚みに基づいて、制御部5の移動モータ用インバータ5Aと切断モータ用インバータ5Bの各周波数を設定しする。
【0067】
その後、切断機構4Aのモータ4aの入スイッチ5mを操作し、正逆スイッチ5lを操作して移動機構3Aの送り動作を設定し、切断モータ電源ランプ5fの点灯(オン)を確認して、移動機構3Aのモータ3eの入スイッチ5jを操作し、該モータ3eの正転ランプ5d又は逆転ランプ5eの点灯(動作方向のオン)を確認する。
【0068】
以上により、丸鋸4Bが刃4Baが突起物Pを溝を掘るように切断しつつ、切断部4が移送部3により切断方向に送られ、切断が完了する。
【0069】
このように、本形態(本発明)の切断装置1は、取付部2に対して移送部3が着脱自在とされ、かつ、移送部3に対して切断部4が着脱自在とされ、また、制御部5はこれらから別体とされているから、取付部2、移送部3、切断部4を、分けて別個に切断を要する箇所まで運搬することで運搬作業が容易となる。
【0070】
また、切断装置1は、少なくとも取付部2だけを複数運搬しておいて、ある突起物Pを切断中に他の突起物Pの箇所における材料Mに対して(同種又は下記他種の)取付部2を取り付け、先の突起物Pの切断後に、移送部3と切断部4を当該先の突起物Pにおける取付部2から外して、他の突起物Pに既に取り付けられた取付部2に装着するといったこともできる。
【0071】
こうすることで、切断を要する作業現場における切断装置1の運搬作業が容易となるほか、切断装置の材料Mへの取り付けセッティングの時間が先の突起物Pの切断中に並行して行うことができ、全体の時間短縮を図ることができる。
【0072】
さらに、制御部5は、切断部4の切断機構4Aにおけるモータ4aと、移送部3の移動機構3Aにおけるモータ3eとの駆動周波数を、突起物Pの材質や厚みなどに応じて調整できるから、切断面が歪むことがなく、仮に歪み始めても軌道修正が容易である共に、刃の損傷を抑制した状態で適切かつ最速の切断速度を得ることができる。
【0073】
(第2形態)
図9及び図10、図11に示す第2形態では、例えば鉄骨柱(材料M)同士を接続するためのエレクションピース(突起物P)を除去する例を示す。第2形態は、取付部2において、電磁石2Bを省略し、代わりにバンド2Dを設けた点が、第1形態の構成と異なる。なお、このバンド2Dを採用した第2形態では、制御部5における電磁石2B関係の回路も当然に省略される。
【0074】
バンド2Dは、例えばH字状の対向平行辺間に補強部材を設けたフレーム2Aの幅方向片側ずつ合計2本有し、バンド2Dの両端が基板3aの長尺方向の両端部に各々設けられている。また、バンド2Dは、締緩自在とされるが、一度締め付けた場合は、金具を操作しなければ緩めることができない構成とされている。
【0075】
このようにすることで、電磁石2Bを省略分だけさらに重量を軽く(取付部2のみの重さは約12kg)とすることができ、また、電磁石2Bが全て接触できないような細い柱状の材料M、あるいは平坦でない又は複雑な形状である場合にも、図10に示すようにバンド2Dにより材料Mに抱きつかせることができれば、確実に取り付けることができる。
【0076】
もちろん、先に(移送部3、切断部4とは別体で)取付部2だけを材料Mに取り付けることができるから、バンド2Dを採用した本第2形態も、従来の切断装置に較べて作業性が劣ることはなく、容易かつ確実に材料Mにバンド2Dを用いて切断装置1を取り付けることができる。
【0077】
なお、第2形態では細い柱状の材料Mに取り付ける場合を想定したが、その逆に太い柱状の材料Mに取り付ける場合は、電磁石2Bを省略した本第2形態のフレーム2Aのバンド2Dに代えて、図11に示すように、材料Mの取付部2を設ける側とその裏面側に台座2Eを介して該両台座2Eを長ボルト2Eaやワイヤーで締め付けることで取り付けるようにしてもよい。この場合は、フレーム2Aに一方の台座2Eを取り付けておく必要がある。
【0078】
以上説明した構成の他、付加的に、例えば、取付部2、移送部3、切断部4、制御部5を別々に分割した状態で、一体的に載置して、運搬することが可能な運搬具を用いることで、さらに容易に切断装置1の移動が可能となる。また、こうした運搬具において、少なくとも取付部2を載置した状態で昇降移動及び水平移動可能な構成を採用することで、該運搬具から直接取付部2を材料Mに昇降微調整をしたうえで取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】(a)(b)は、本発明の第1形態の切断装置の全体概略斜視図である。
【図2】(a)(b)は、本発明の第1形態の切断装置における取付部の概略斜視図である。
【図3】(a)(b)は、本発明の第1形態の切断装置における移送部の概略斜視図である。
【図4】(a)(b)は、本発明の第1形態の切断装置における切断部の概略斜視図である。
【図5】本発明の第1形態の切断装置における切断部の丸鋸を示す図である。
【図6】(a)(b)は、本発明の第1形態の切断装置における制御部の概略斜視図である。
【図7】本発明の第1形態の切断装置における制御手法を説明するための図である。
【図8】本発明の第1形態の切断装置における制御手法を説明するための図である。
【図9】本発明の第2形態の切断装置における取付部の概略斜視図である。
【図10】本発明の第2形態の切断装置を材料に取り付けた状況を示す図である。
【図11】本発明の第2形態の他の例による切断装置を材料に取り付けた状況を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1 切断装置
2 取付部
2A フレーム
2B 電磁石
2C 取付機構
2D バンド
2E 台座
2Ea 長ボルト
3 移送部
3A 移動機構
3B 着脱機構
4 切断部
4A 切断機構
4B 丸鋸
4Ba 刃
5 制御部
5A 移動モータ用インバータ
5B 切断モータ用インバータ
M 材料
P 突起物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断する突起物が突設された材料に対して取り付けられる取付部と、この取付部に対して着脱自在とされ、切断方向に進退動する移動機構を有した移送部と、この移送部の前記移動機構に対して着脱自在とされ、前記材料を切断する丸鋸でなる切断機構を有した切断部と、これら取付部、移送部、切断部とは電気・信号線を介して別体とされ、前記移動機構と切断機構の駆動を前記突起物に応じて制御する制御部と、を備えたことを特徴とする切断装置。
【請求項2】
取付部が、材料や突起物の形状などの状況に対応できるように複数用意され、選択的に取付可能であることを特徴とする請求項1記載の切断装置。
【請求項3】
制御部が、突起物の寸法や材質に応じて切断機構と移動機構の各々の速度を調整することを特徴とする請求項1又は2記載の切断装置。
【請求項4】
切断機構に、溝掘り用のチップを有した丸鋸を採用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−5754(P2010−5754A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168943(P2008−168943)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(308006081)株式会社光和電器製作所 (1)
【Fターム(参考)】