説明

切断装置

【課題】被切断物を保持部材に確実に保持して正確に切断することができる切断装置を提供する。
【解決手段】切断装置は、被切断物の切断前に、ユーザが、被切断物の種類を制御手段に入力するための入力手段と、保持部材がセットされた際に、識別媒体から保持部材の種類を検出する検出手段とを備える。制御手段は、入力手段から入力された保持部材の種類と、検出手段で検出された保持部材の種類とが整合しているか否かを判定する(ステップS16)。そして、制御手段は、判定手段の判定結果に応じた制御を行う(ステップS17〜S20)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断刃と被切断物とを相対的に移動させることで、切断刃が被切断物を切断する切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紙や樹脂等のシート状被切断物を自動的に切断するカッティングプロッタが知られている。前記カッティングプロッタは、前記被切断物を、駆動機構のローラで上下方向から挟んで第1方向へ移動させると共に、切断刃を有するキャリッジを前記第1方向と直交する第2方向へ移動させて被切断物を切断する。
【0003】
この種のカッティングプロッタでは、前記被切断物の種類に応じて、切断刃の被切断物に対する相対移動速度、切断刃の押圧力等の動作条件が夫々設定できるものがある(例えば特許文献1参照)。具体的には、被切断物の上面に、当該被切断物の種別を示すバーコードを付しておき、前記キャリッジには、カッティングプロッタにセットされた被切断物のバーコードを読み取るセンサ部を設ける。そして、セットされた被切断物を切断する前に、センサ部がバーコードを読み取ることで被切断物の種類を検出し、その種類に応じた動作条件を設定する。
また、被切断物を、上面に粘着剤が塗布された粘着層を有するシート状部材(保持部材に相当)に貼り付け、そのシート状部材を第1方向に移動させて被切断物に対して切断を行うカッティングプロッタも公知である(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−246562号公報
【特許文献2】特開2005−205541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のカッティングプロッタによれば、被切断物の種類を検出することで、その種類に応じた動作条件で切断を行うことができる。
また、特許文献1のカッティングプロッタに、特許文献2の保持部材を用いることも考えられる。この場合、被切断物の種類を検出し、その種類の応じた動作条件で切断を行うことができる。しかしながら、被切断物の種類に対して保持部材の粘着層の粘着力が不適切なときには、被切断物が確実に保持されず、切断動作中に保持部材からズレてしまう虞がある。このように、被切断物が保持部材に確実に保持できない場合には、被切断物を正確に切断することができない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被切断物を保持部材に確実に保持して正確に切断することができる切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明の請求項1の切断装置は、切断刃と被切断物とを相対的に移動させることで、前記切断刃が前記被切断物を切断する制御を実行する制御手段を備えた切断装置であって、前記被切断物の種類ごとに複数種類が用意され、前記被切断物を剥離可能に保持する粘着層が設けられた保持部材であって、対応する種類の被切断物を粘着させて保持した状態で前記切断装置にセットされる保持部材と、前記保持部材に設けられ、前記保持部材の種類を特定するための識別媒体と、前記被切断物の切断前に、ユーザが、前記被切断物の種類を前記制御手段に入力するための入力手段と、前記切断装置に前記保持部材がセットされた際に、前記識別媒体から前記保持部材の種類を検出する検出手段と、前記入力手段から入力された前記被切断物の種類と、前記検出手段で検出された前記保持部材の種類とが整合しているか否かを判定する判定手段とを備え、前記制御手段は、前記判定手段の判定結果に応じた制御を行うことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、入力手段から入力された被切断物の種類と、検出手段で検出された保持部材の種類とが整合しているか否かを判定することができる。つまり、ユーザが、被切断物を間違った種類の保持部材に貼り付け、その保持部材を切断装置にセットした場合、判定手段によって、入力手段から入力された被切断物の種類と整合していないことを判定することができる。従って、複数種類の保持部材を用いる構成であっても、判定手段の判定結果に応じた制御が行われることで、被切断物を正確に切断することができる。
【0009】
また、本発明の請求項2の切断装置は、切断刃と被切断物とを相対的に移動させることで、前記切断刃が前記被切断物を切断する制御を実行する制御手段を備えた切断装置であって、前記被切断物の種類ごとに複数種類が用意され、前記被切断物を剥離可能に保持する粘着層が設けられた保持部材であって、対応する種類の被切断物を粘着させて保持した状態で前記切断装置にセットされる保持部材と、前記保持部材に設けられ、前記保持部材の種類を特定するための識別媒体と、前記被切断物の切断前に、ユーザが、前記保持部材の種類を前記制御手段に入力するための入力手段と、前記切断装置に前記保持部材がセットされた際に、前記識別媒体から前記保持部材の種類を検出する検出手段と、前記入力手段から入力された前記保持部材の種類と、前記検出手段で検出された前記保持部材の種類とが整合しているか否かを判定する判定手段とを備え、前記制御手段は、前記判定手段の判定結果に応じた制御を行うことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、入力手段から入力された保持部材の種類と、検出手段で検出された保持部材の種類とが整合しているか否かを判定することができる。つまり、切断装置に間違った種類の保持部材をセットした場合、判定手段によって、入力手段から入力された保持部材の種類と整合していないことを判定することができる。従って、複数種類の保持部材を用いる構成であっても、判定手段の判定結果に応じた制御が行われることで、被切断物を正確に切断することができる。
【0011】
請求項3の切断装置は、請求項1又は2の発明において報知手段を備え、前記制御手段は、前記判定手段の判定結果を前記報知手段により報知するように制御することを特徴とする。
請求項4の切断装置では、請求項1から3の何れかの発明において、前記保持部材に設けられる粘着層は、前記切断刃が前記被切断物を切断する際に、当該被切断物が前記保持部材に対して移動不能に保持されるよう被切断物の種類に応じた粘着力を有することを特徴とする。
【0012】
請求項5の切断装置は、請求項1から4の何れかの発明において、前記保持部材は、前記切断装置に対して、所定の向き又はそれとは180度反転させた逆向きの何れかの向きでセットされ、前記識別媒体は、前記保持部材の周縁部に設けられると共に、前記切断装置に対して前記保持部材を何れの向きでセットしても前記検出手段で検出される位置に設けられることを特徴とする。
請求項6の切断装置は、請求項1から5の何れかの発明において、前記検出手段は、前記識別媒体の情報を光学的に読取る光学センサを備えることを特徴とする。
請求項7の切断装置は、請求項1から6の何れかの発明において、前記保持部材には、ユーザが視認することで種類が判別可能なように、標識又色が付与されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の切断装置によれば、入力手段から入力された被切断物の種類と、検出手段で検出された保持部材の種類とが整合しているか否かを判定することができる。つまり、ユーザが、被切断物を間違った種類の保持部材に貼り付け、その保持部材を切断装置にセットした場合、判定手段によって、入力手段から入力された被切断物の種類と整合していないことを判定することができる。従って、複数種類の保持部材を用いる構成であっても、判定手段の判定結果に応じた制御が行われることで、被切断物を正確に切断することができる。
【0014】
請求項2の切断装置によれば、入力手段から入力された保持部材の種類と、検出手段で検出された保持部材の種類とが整合しているか否かを判定することができる。つまり、切断装置に間違った種類の保持部材をセットした場合、判定手段によって、入力手段から入力された保持部材の種類と整合していないことを判定することができる。従って、複数種類の保持部材を用いる構成であっても、判定手段の判定結果に応じた制御が行われることで、被切断物を正確に切断することができる。
【0015】
請求項3の切断装置によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、判定手段の判定結果を報知して、ユーザに、切断装置にセットされた保持部材の種類が適正か否かを知らせることができる。従って、ユーザは、保持部材の種類を間違ってセットしていた場合には、正しい種類の保持部材にセットし直すことができる。
請求項4の切断装置によれば、請求項1から3の何れかに記載の発明の効果に加え、保持部材の粘着層は、切断の際に被切断物が保持部材に対して移動不能に保持されるよう被切断物の種類に応じた粘着力を有する。このため、保持部材における被切断物のズレを確実に防止することができ、被切断物を正確に切断することができる。
【0016】
請求項5の切断装置によれば、請求項1から4の何れかの発明の効果に加え、切断装置に対して保持部材を所定の向きにセットしても、又はそれとは180度反転させた逆向きにセットしても、識別媒体を検出手段で確実に検出することができるので、利便性が向上する。また、識別媒体を保持部材の周縁部に設けたので、被切断物を保持部材に貼り付ける際に、識別媒体が邪魔にならない。
請求項6の切断装置によれば、請求項1から5の何れかの発明の効果に加え、識別媒体の情報を光学センサにより読取ることができる。従って、簡単な構成で、確実且つ容易に識別媒体を検出することができる。
請求項7の切断装置によれば、請求項1から6の何れかの発明の効果に加え、前記保持部材には、標識又は色が付与されているので、ユーザは、保持部材の種類を容易に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態における切断装置の内部構造を示す斜視図
【図2】切断装置の平面図
【図3】カッタホルダの斜視図
【図4】カッタを下降させた状態で示すカッタホルダの正面図
【図5】カッタを上昇させた状態で示すカッタホルダの断面図
【図6】図4のVI−VI線に沿って示すカッタホルダの断面図
【図7】ギヤ部を拡大して示す正面図
【図8】切断時におけるカッタ先端の近傍部の拡大図
【図9】切断時におけるカッタホルダ近傍部の側面図
【図10】電気的構成を示すブロック図
【図11】(a)及び(b)は、複数種類の保持部材と識別媒体を説明するための図
【図12】(a)は保持部材の種類選択テーブルを示す図、(b)は保持部材の種類と対応づけられたスイッチテーブルを示す図
【図13】(a)及び(b)は、被切断物として紙及び布の種類を設定する場合における設定画面を示す図
【図14】保持部材の判定処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図14を参照しながら説明する。
図1に示すように、切断装置1は、筐体としての本体カバー2と、本体カバー2内に配設されたプラテン3と、カッタホルダ5とを備えると共に、カッタホルダ5のカッタ4(図5参照)と被切断物6とを相対的に移動させるための第1及び第2移動手段7,8を備えている。本体カバー2は横長な矩形箱状をなしており、前面部には、プラテン3上面部に被切断物6を保持した保持シート10をセットするための横長な開口部2aが形成されている。尚、以下の説明では、切断装置1に対しユーザが位置する側を前方とし、その反対側を後方とする。そして、前後方向をY方向とし、Y方向と直交する左右方向をX方向とする。
【0019】
本体カバー2の右側には、ユーザに対して必要なメッセージ等の表示を行う表示手段としての液晶ディスプレイ(LCD)9が設けられると共に、ユーザが各種の指示や選択、入力の操作を行うための複数の操作スイッチ65(図10参照)が設けられている。
前記プラテン3は、前後一対の板材3a,3bからなり、上面部が水平面たるXY平面をなすように構成されている。プラテン3には、被切断物6を保持する保持シート10が載置されるようにセットされ、被切断物6の切断の際、保持シート10をプラテン3で受ける。詳しくは後述するが、保持シート10の上面には、左縁部10b及び右縁部10cを除いた部分に粘着剤が塗布された粘着層10aが形成されており、粘着層10aに被切断物6が貼り付けられて保持される。
【0020】
前記第1移動手段7は、プラテン3の上面側で保持シート10をY方向(第1方向)へ移動させるものである。即ち、切断装置1における左右の側壁部11a,11bには、プラテン3の板材3a,3bの間に位置させて、駆動ローラ12とピンチローラ13が設けられている。駆動ローラ12とピンチローラ13は、X方向に延びて、側壁部11a,11bに対して回動可能に支持されている。また、駆動ローラ12とピンチローラ13は、前記XY平面に対して平行で、且つ上下方向に並ぶように配置されている。下側が駆動ローラ12で、上側がピンチローラ13である。図2に示すように、右側壁部11bには、駆動ローラ12の右側に位置させて、クランク状の第1取付フレーム14が設けられている。取付フレーム14の外側には、Y軸モータ15が固定されている。Y軸モータ15は例えばステッピングモータから構成され、回転軸15aは第1取付フレーム14を貫通しており、先端部にギヤ部16aを有する。駆動ローラ12の右端部には、ギヤ部16aと噛合するギヤ部16bが固着されており、これらギヤ部16a、16bにより第1減速ギヤ機構16が構成されている。前記ピンチローラ13は、左右の側壁部11a,11bに形成されたガイド溝17b(図1に右側の溝17bのみ図示)により上下方向へ移動可能にガイドされている。左右の側壁部11a,11bには、ガイド溝17bを外側から囲うバネ収容部18a,18bが夫々設けられている。ピンチローラ13は、バネ収容部18a,18bに収容された図示しない圧縮コイルバネにより下方へ付勢されている。ピンチローラ13には、保持シート10の左右両方の縁部10b、10cに接触して押圧する押圧部13aが設けられている。押圧部13aは、ピンチローラ13の他の部分よりも外径が少し大きく形成されている。
【0021】
ここで、駆動ローラ12とピンチローラ13は、前記圧縮コイルバネの付勢力により、保持シート10を上下方向から押圧挟持する(図9参照)。そして、Y軸モータ15を正転駆動、或は逆転駆動させると、その回転運動が第1減速ギヤ機構16を介して駆動ローラ12に伝わることで、保持シート10を被切断物6と共に後方或いは前方へ移動させる。これら駆動ローラ12、ピンチローラ13、Y軸モータ15、第1減速ギヤ機構16、前記圧縮コイルバネ等は、第1移動手段7を構成する。
【0022】
前記第2移動手段8は、カッタホルダ5を支持するキャリッジ19を、X方向(第2方向)へ移動させるものである。詳細には、図1、図2に示すように、左右の側壁部11a,11b間には、後端部に位置させて、左右方向に延びるガイド軸20とガイドフレーム21が配設されている。ガイド軸20は、駆動ローラ12及びピンチローラ13と平行に配設されている。ガイド軸20は、プラテン3の直ぐ上側で、キャリッジ19下部(後述の貫通孔部22)を貫通している。ガイドフレーム21は、前縁部21aと後縁部21bが下方へ折り返された断面コ字状をなしている。前縁部21aはガイド軸20と平行に配設されている。ガイドフレーム21は、前縁部21aでキャリッジ19上部(後述の被ガイド体23,23)をガイドするようになっており、側壁部11a,11bの上端部で螺子21cにより固定されている。
【0023】
図2に示すように、切断装置1の後部には、右側壁部11bに第2取付フレーム24が設けられると共に、左側壁部11aに補助フレーム25が設けられている。第2取付フレーム24には、X軸モータ26及び第2減速ギヤ機構27が配設されている。X軸モータ26は、例えばステッピングモータからなり、第2取付フレーム24における前側の取付片24aの前面部に固定されている。X軸モータ26の回転軸26aは取付片24aを貫通しており、先端部に、第2減速ギヤ機構27と噛合するギヤ部26bを有する。第2減速ギヤ機構27にはプーリ28が設けられており、図2において左側の補助フレーム25にプーリ29が回転自在に取付けられている。これらプーリ28とプーリ29との間には、キャリッジ19の後端部(後述の取付部30)に連結された無端状のタイミングベルト31が掛装されている。
【0024】
ここで、X軸モータ26を正転駆動、或は逆転駆動させると、その回転運動が第2減速ギヤ機構27及びプーリ28を介してタイミングベルト31に伝わることで、キャリッジ19をカッタホルダ5ごと左方或いは右方へ移動させる。こうして、キャリッジ19とカッタホルダ5は、被切断物6を搬送するY方向と直交するX方向に移動する。上記のガイド軸20、ガイドフレーム21、X軸モータ26、第2減速ギヤ機構27、プーリ28,29、タイミングベルト31、キャリッジ19等は、第2移動手段8を構成する。
【0025】
前記カッタホルダ5は、キャリッジ19に対して前面側に配置され、Z方向たる上下方向(第3方向)への移動が可能に支持されている。これらキャリッジ19及びカッタホルダ5の構成について、図3〜図9も参照しながら説明する。
【0026】
図2、図3に示すように、キャリッジ19は、後面側が開放された略矩形箱状をなす。キャリッジ19の上壁部19aには、平面視にて円弧状をなすリブであって、上方へ突出する前後一対の被ガイド体23,23が一体に設けられている。被ガイド体23,23は、ガイドフレーム21の前縁部21aを挟むよう対称的に配置されている。図4にも示すように、キャリッジ19における底壁部19bの下側には、ガイド軸20に挿通される左右一対の貫通孔部22,22が下方へ張出すように形成されている。また、キャリッジ19の底壁部19bには、前記タイミングベルト31に連結される取付部30(図5、図6参照)が後方へ突出するように設けられている。こうして、キャリッジ19は、貫通孔部22,22に挿通されるガイド軸20によって左右方向へ摺動可能に支持されると共に、被ガイド体23,23で挟まれるガイドフレーム21によってガイド軸20の回りに回転しないように支持される。
【0027】
図3、図4、図5、図9等に示すように、キャリッジ19の前壁部19cには、前方へ延出する上下一対の支持部32a,32bが一体に設けられている。キャリッジ19には、支持部32a,32bを夫々貫通する左右一対の支持軸33a,33bが上下動自在に支持されている。キャリッジ19内には、例えばステッピングモータからなるZ軸モータ34が、後方から収容されるように配置されている。Z軸モータ34の回転軸34aは(図3、図9参照)、キャリッジ19の前壁部19cを貫通しており、先端部にギヤ部35を有する。また、図5、図6、図9に示すように、キャリッジ19には、その前壁部19c中央からやや下寄りの部位を前後に貫通するギヤ軸37が設けられている。ギヤ軸37には、前壁部19cの前側で前記ギヤ部35に噛合するギヤ部38が回転可能に装着されると共に、ギヤ軸37前端部の止め輪(図示略)により抜け止めされている。ギヤ部38とギヤ部35で第3減速機構41を構成する(図3、図9参照)。
【0028】
ギヤ部38には、図7に示すように、渦巻き溝42が形成されている。渦巻き溝42は、第1端部42aから第2端部42bへ向って右方向に旋回するにつれ中心に近づく渦巻き状をなすカム溝である。渦巻き溝42には、詳しくは後述するが、カッタホルダ5と一体的に上下移動する係合ピン43が係合する(図5、図6参照)。ここで、Z軸モータ34を正転駆動、或は逆転駆動させると、ギヤ部35を介してギヤ部38が回転する。ギヤ部38が回転することにより、渦巻き溝42に係合する係合ピン43が上下方向に摺動する。これに伴い、カッタホルダ5を支持軸33a,33bごと上方或いは下方へ昇降させる。この場合、カッタホルダ5は、係合ピン43が渦巻き溝42の第1端部42aに位置した上昇位置(図5、図7参照)と、係合ピン43が第2端部42bに位置した下降位置(図6、図7参照)との間で移動する。上記の渦巻き溝42を有する第3減速機構41、Z軸モータ34、係合ピン43、支持部32a,32b、支持軸33a,33b等は、カッタホルダ5を上下方向へ移動させる第3移動手段44を構成する。
【0029】
カッタホルダ5は、前記支持軸33a,33bに設けられるホルダ本体45と、カッタ4(切断刃)を有してホルダ本体45に上下動可能に保持される可動筒部46とを備えると共に、被切断物6を押圧するための押圧装置47を備えている。
即ち、図3、図4、図5、図9等に示すように、ホルダ本体45は、上端部45aと下端部45bが後方へ折り返され全体としてコ字状をなしている。ホルダ本体45の上端部45aと下端部45bは、支持軸33a,33bの上下両端部に夫々固定された止め輪48により、支持軸33a,33bに対し移動不能に固定されている。図5、図6に示すように、支持軸33bの中間部には、前記係合ピン43が後向きに設けられた連結部材49が固着されている。こうして、ホルダ本体45、支持軸33a,33b、係合ピン43、及び連結部材49は一体的に構成され、カッタホルダ5は、前記第3移動手段44により係合ピン43に連動して上下方向へ移動する。また、支持軸33a,33bには、支持部32a上面とホルダ本体45の上端部45aとの間に、付勢部材たる圧縮コイルバネ50が夫々外装されている。圧縮コイルバネ50の付勢力により、カッタホルダ5全体がキャリッジ19側に対して上方へ弾性付勢されている。
また、図4に示すように、ホルダ本体45の下端部45bには、右側に位置して後述する光学センサ66が設けられている。光学センサ66は、ホルダ本体45に対して一体的に設けられており、前記保持シート10の種類を検出する。
【0030】
図3、図4に示すように、ホルダ本体45における中間部には、可動筒部46や押圧装置47等を取付けるための取付部材51,52が螺子54a,54bにより夫々固定されている。下側の取付部材52には、可動筒部46を上下動可能に支持する筒状部52a(図5参照)が設けられている。可動筒部46は、筒状部52aの内周面に摺接する径寸法に設定され、その上端部には、筒状部52aの上端で支持されるフランジ部46aが径方向外側へ張出すように形成されている。フランジ部46aの上端面にはバネ受け部46bが設けられている。図5、図6に示すように、上側の取付部材51と可動筒部46のバネ受け部46bとの間には、圧縮コイルバネ53が配設されている。圧縮コイルバネ53は、可動筒部46(カッタ4)を下方の被切断物6側に付勢する一方、カッタ4に被切断物6側から上方への力が作用すると、当該付勢力に抗して可動筒部46の上方への移動を許容する。
【0031】
可動筒部46には、その軸線方向に延びるカッタ4が貫通するように配設されている。詳細には、カッタ4は、可動筒部46よりも長尺な丸棒状のカッタ軸4bと、そのカッタ軸4bの下端部に形成された刃部4aとを一体に有する。図8に示すように、刃部4aは略三角形状をなし、最下端の刃先4cが、カッタ軸4bの中心軸線Oから距離dだけオフセット(偏心)した位置に形成されている。カッタ4は、可動筒部46内部の上下両端部に配設された軸受55(図5参照)により、上下方向の中心軸線O(Z軸)を中心に回動自在に保持されている。こうして、カッタ4は、被切断物6の表面たるXY平面に対して直交するZ方向から刃先4cが圧接する。また、カッタ4は、カッタホルダ5が下降位置へ移動された時に、図8に示すように刃先4cが保持シート10上の被切断物6を貫通し、且つプラテン3の板材3b上面に到達しない高さに設定してある。一方、カッタ4は、カッタホルダ5が上昇位置へ移動されることに伴い、刃先4cも上方へ移動して被切断物6から離間する(図5参照)。
【0032】
前記取付部材52には、筒状部52aの下端部周縁に、3つのガイド孔部52b〜52d(図3、図4、図5、図9参照)が等間隔で形成されている。そして、筒状部52aの下側には、ガイド孔部52b〜52dに挿通される3つのガイド棒56b〜56dを有する押圧部材56が配置されている。押圧部材56の下面側は、浅底な鉢(ボウル)状(或は緩やかな円形椀状)をなす押圧部本体56aとされており、周縁上部には、等間隔をなす前記ガイド棒56b〜56dが一体に設けられている。押圧部材56は、ガイド孔部52b〜52dにてガイド棒56b〜56dがガイドされることにより、上下方向への移動が可能である。押圧部本体56aの中央部には、上下方向に延びて前記刃部4aを下方へ突出させるための貫通孔56eが形成されている。そして、押圧部本体56aの下端面は、刃部4aの周囲で被切断物6に接触する接触部56fとされている。接触部56fは、円環上をなす水平な平坦面であって、被切断物6に対して面接触する。接触部56fは、例えばテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂で構成されることで、比較的摩擦係数が低く、被切断物6に対して滑り易くなっている。
【0033】
図3、図4、図5、図9等に示すように、押圧部本体56aの周縁上部には、前方へ延出する案内部56gが一体に設けられている。案内部56gは、接触部56fに対して前側で且つ上方に位置し、当該接触部56f側へ後方に向けて下方に傾斜した傾斜面56gaを含んで構成されている。これにより、被切断物6を保持した保持シート10が、カッタホルダ5に対して後方へ移動する際、案内部56gは、被切断物6を接触部56fに対して引っ掛からないように下側へ案内する。
【0034】
前記取付部材52には、筒状部52aの前側であって案内部56gの上方に位置してソレノイド57用の前側取付部52eが一体に設けられている。ソレノイド57は、押圧部材56を上下動させて被切断物6を押圧するためのアクチュエータであり、押圧部材56並びに後述の制御回路61と共に押圧装置47(押圧手段)を構成する。ソレノイド57は、前側取付部52eに下向きに取付けられており、プランジャ57aの先端部は案内部56g上面に固定されている。詳しくは後述するように、カッタホルダ5の下降位置でソレノイド57が駆動されると、プランジャ57aと共に押圧部材56が下方へ移動して被切断物6を所定の押圧力で押圧する(図9参照)。これに対して、ソレノイド57の非駆動時には、プランジャ57aが上方に位置して押圧部材56が被切断物6に対する押圧力を解除する。ソレノイド57の非駆動状態でカッタホルダ5が上昇位置へ移動されると(図5の2点鎖線参照)、押圧部材56が被切断物6から完全に離間する。
【0035】
さて、前記保持シート10は、被切断物6の種類ごとに複数種類が用意されており、当該保持シート10の種類を特定するための識別マーク60を備える。また、前記保持シート10には、ユーザが視認することで種類を判別できるように、標識59が付与されている。保持シート10、識別マーク60、及び標識59について図11、図12も参照しながら説明する。
図1、図11に示すように、保持シート10は、例えば、合成樹脂材料からなり、平板矩形状に形成されている。保持シート10は、カッタ4と対向する位置に配置される。保持シート10の片面(上面)には、周縁部である左右両縁部10b,10cを除いた部分に粘着剤が塗布された粘着層10a(図8参照)が形成されている。
【0036】
保持シート10は、対応する種類の被切断物6を粘着層10aに粘着させることで剥離可能に保持する。ここで、粘着層10aは、カッタ4で被切断物6を切断する際に、当該被切断物6を移動不能に保持する粘着力を有する。具体的には、図11、図12(a)に例示するように、被切断物6としてケント紙やはがきを切断する場合、これらを移動不能に保持するための最適な粘着力に設定された保持シート10Aが用いられる。また、被切断物6として画用紙やエンボス紙を切断する場合、これらを移動不能に保持するための最適な粘着力に設定された保持シート10Bが用いられる。つまり、ケント紙やはがきと、画用紙やエンボス紙とでは、表面の凹凸の度合い(平滑度)や曲がり難さ(剛度)等の紙質が異なる。このため、粘着層10aの粘着力は、夫々の被切断物6の特性に応じた粘着力に設定され、且つ、夫々の被切断物6を粘着層10aから剥がす際に、被切断物6が破れてしまうことがない粘着力であるように設定してある。
【0037】
この他、詳しい図示は省略するが、被切断物6として布を使用する場合には、フェルトやデニムを移動不能に保持する最適な粘着力に設定された保持シート10C、ブロードやシーチングを移動不能に保持する最適な粘着力に設定された保持シート10D等、複数種類の保持シート10が用意されている(図12(a)参照)。つまり、フェルトやデニムと、ブロードやシーチングとでは、布厚や伸縮特性等の布質が異なることから、粘着層10aの粘着力は、夫々の布質に応じた粘着力に設定されている。こうして、上記した複数種類(例えば4種類)の保持シート10A〜10Dは、粘着層10aの粘着力の弱い順に「10A<10B<10C<10D」の関係にある。このように、被切断物6の種類A〜Dに応じた粘着層10aの粘着力が、保持シート10A〜10Dごとに設定してある。ここで、保持シート10の種類は、上記4種類に限定されるものではないことは、言うまでもない。
【0038】
前記識別マーク60(識別媒体に相当)は、保持シート10A〜10Dごとに異なるマークである。図11に、保持シート10A,10Bに設けられた識別マーク60A,60Bの一例を示す。識別マーク60は、保持シート10に所謂バーコード状に印刷されたマークである。図11(a)に示すように、識別マーク60Aは1本の黒線(バー)からなり、図11(b)に示すように、識別マーク60Bは2本の黒線(バー)からなる。また、図示はしないが、保持シート10Cに設けられた識別マーク60Cは3本の黒線(バー)からなり、保持シート10Dに設けられた識別マーク60Dは4本の黒線(バー)からなる。図11(a)に示す識別マーク60Aは、種類Aに対応するもので、保持シート10Aの上面(表面)の左縁部10bの手前側(紙面下方)と、右縁部10cの奥側(紙面上方)に夫々設けられる。これらの識別マーク60Aは、切断装置1に対して保持シート10Aを所定の向き(図1参照)、又はそれとは180度反転させた逆向きの何れかの向きでセットしても、光学センサ66で検出される位置に設けられる。即ち、識別マーク60Aは、保持シート10Aの中心点(この場合、保持シート10Aの対角線の交点)に対して点対称となる位置に設けられている。他の保持シート10B〜10Dについても、保持シート10Aと同じ位置に、当該種類B〜Dに対応する識別マーク60が夫々印刷されている(図11(b)の識別マーク60B参照)。
【0039】
次に、標識59について説明する。標識59は、ユーザが視認することで保持シート10の種類を判別する為のものである。図11に示すように、標識59は、保持シート10の左右両縁部10b,10cの略中央位置に付与されている。本実施形態の場合は、標識59として、保持シート10Aには「A」、保持シート10Bには「B」の文字が印刷されている。また、上述したように、保持シート10は、図11に示す向きから180度反転させた向きにおいても切断装置1にセットすることが可能なので、左縁部10bに印刷されている文字は、上下(天地)が反対にしてある。また、図示はしないが、保持シート10C、10Dも同様に、夫々対応する文字が印刷されている。ここで、標識59は、文字の代わりに、数字、記号、模様、図形、目印等であってもよい。また、標識59の位置は、図11に示す位置に限定するものではなく、標識59の個数についても2個に限定するものではない。また、識別マーク60が標識59を兼用する構成であってもよい。
また、標識59を付与する代わりに、保持シート10の種類毎に異なる色を付与してもよい。この場合、保持シート10の全体に色を付与してもよいし、保持シート10の一部に色を付与してもよい。そして、標識59と色の両方を、保持シート10に付与してもよいことは言うまでもない。
【0040】
次に、切断装置1の制御系の構成について図10のブロック図を参照しながら説明する。
切断装置1全体の制御を司る制御回路(制御手段)61は、コンピュータ(CPU)を主体に構成されており、記憶手段としてROM62、RAM63、外部メモリ64が接続されている。ROM62には、切断動作を制御するための切断制御プログラムや、後述するスイッチテーブル、保持シート10A〜10Dの種類選択テーブル等が記憶されている。外部メモリ64には、複数種類の切断データが記憶され、RAM63には、各種処理に必要なデータやプログラムが一時的に記憶される。
【0041】
制御回路61には、Y軸モータ15、X軸モータ26、Z軸モータ34、ソレノイド57を夫々駆動する駆動回路67,68,69,70が接続されている。制御回路61は、切断制御プログラムの実行により前記切断データに基づいて、Y軸モータ15、X軸モータ26、Z軸モータ34、ソレノイド57を制御し、保持シート10上の被切断物6に対する切断動作を自動で実行させる。
【0042】
また、制御回路61には、前述した各種の操作スイッチ65(以下、単に操作スイッチ65と称する)や光学センサ66が接続されると共に、液晶ディスプレイ9が接続されている。ここで、図示はしないが、光学センサ66は、光を照射する発光部と光を受ける受光部を備える反射型のセンサである。そして、保持シート10が切断装置1にセットされたとき、発光部は識別マーク60に対して光を照射する。一方、受光部は、その反射光を受光する。上記のように識別マーク60は所謂バーコードであって、反射光の強弱に基づいて黒線(バー)の本数を検出することができる。具体的には、受光部における反射光の受光量に基づいて検出信号が出力される。制御回路61は、検出信号に基づき黒線(バー)の本数を判定し、判定結果(スイッチデータ。図12(b)参照)から、前記スイッチテーブルを参照して保持シート10A〜10Dの種類A〜Dを特定する。こうして、制御回路61と光学センサ66は、識別マーク60から保持シート10の種類を検出する検出手段として構成されている。図12(b)は、ROM62に記憶されたスイッチテーブルを例示している。同図に示すように、スイッチテーブルでは、例えば保持シート10A〜10Dの種類A〜Dと、光学センサ66からの検出信号により判定した4つのスイッチデータとを対応づけて格納してある。
【0043】
ユーザは、液晶ディスプレイ9の表示を見ながら操作スイッチ65を操作することによって、所望する形状の切断データを選択するための入力と、被切断物6の種類を選択するための入力を行う。図13(a)、(b)は、液晶ディスプレイ9における被切断物6の種類設定画面を例示している。
【0044】
即ち、図13(a)に示すように、種類設定画面101の上側と下側には、被切断物6の種類の大分類設定領域102と、小分類設定領域103が設けられている。ユーザは、操作スイッチ65の操作により、大分類設定領域102に表示された紙の種類又は布の種類のうち何れかを選択して、その分類に属する種類を小分類設定領域103に表示させる。具体的には、図13(a)の大分類設定領域102では「紙」を選択し(同図の太枠参照)、小分類設定領域103では、「ケント紙」、「はがき」、「画用紙」、及び「エンボス紙」のうちの何れかを選択的に表示させることで、紙の種類を入力する。図13(b)の大分類設定領域102では「布」を選択し(同図の太枠参照)、小分類設定領域103では、「フェルト」、「デニム」、「ブロード」、及び「シーチング」のうちの何れかを選択的に表示させることで、布の種類を入力する。
【0045】
前記ROM62には、図12(a)に示すように、「ケント紙」、「はがき」、「画用紙」、「エンボス紙」、「フェルト」、「デニム」、「ブロード」、及び「シーチング」を、保持シート10A〜10Dの種類A〜Dと対応付けた種類選択テーブルが記憶されている。そして、制御回路61は、種類選択テーブルを参照して、ユーザにより入力された紙の種類又は布の種類に対応する保持シート10A〜10Dの種類A〜Dを特定する。上記した操作スイッチ65及び液晶ディスプレイ9は、ユーザが被切断物6の種類を制御回路61に入力するための入力手段に相当する。
【0046】
尚、液晶ディスプレイ9の前面に、透明電極からなる複数のタッチキーを有するタッチパネルを設け、前記タッチキーの入力操作に基づいて、被切断物6の種類を入力するようにしてもよい。また、詳しくは後述するが、ユーザが、被切断物6の種類を入力する代わりに、保持シート10A〜10Dの種類A〜Dを入力するように構成してもよい。
詳しくは以下の作用説明で述べるように、制御回路61は、前記入力手段からの入力に基づく被切断物6の種類又は保持シート10A〜10Dの種類A〜Dと、光学センサ66で検出された保持シート10A〜10Dの種類とが整合しているか否かを判定する判定手段として機能する。また、液晶ディスプレイ9は、前記判定手段が判定した判定結果を、切断開始前に表示画面によりユーザに予め報知する報知手段に相当する。
【0047】
次に、切断装置1における切断開始時の具体的な処理手順について、図14も参照しながら説明する。図14のフローチャートは、制御回路61が実行するプログラムの処理の流れを示しており、図中の符号Si(i=11、12、13・・・)は各ステップを示している。
【0048】
ユーザは、切断する被切断物6と、被切断物6の種類に対応した保持シート10を用意し、保持シート10の粘着層10aにその被切断物6を貼り付ける。そして、ユーザは、操作スイッチ65を操作することによって、例えば外部メモリ64に記憶されている切断データの中から所望の切断データを選択すると共に、セットした被切断物6の種類を入力する(ステップS11)。例えば、ケント紙用の保持シート10Aを用いる場合には、液晶ディスプレイ9の種類設定画面101(図13(a)参照)で「ケント紙」を表示させることで、その種類を入力する。制御回路61は、図12(a)に示す種類選択テーブルを参照して、「ケント紙」に対応する保持シート10Aの種類Aを特定する(ステップS12)。
【0049】
一方、切断装置1において、被切断物6の切断開始前の状態では、カッタホルダ5が上昇位置に移動されている(図5参照)。この状態で、ユーザは、被切断物6を保持した保持シート10を、切断装置1の開口部2aからセットする(ステップS13)。制御回路61は、セットされた保持シート10の識別マーク60を光学センサ66により読み取る(ステップS14)。この場合、識別マーク60は、保持シート10の中心位置(中心点)に対して点対称である位置に印刷されている。このため、ステップS13でセットされた保持シート10が所定の向き、又はそれとは180度反転させた逆向きであっても、光学センサ66は識別マーク60を読み取ることができる。
【0050】
次いで、制御回路61は、光学センサ66からの検出信号に基づく前記スイッチデータから、ROM62に記憶されたスイッチテーブルを参照して保持シート10の種類A〜Dを特定する(ステップS15)。そして、制御回路61は、ステップS11で入力されたユーザ入力に基づく被切断物6の種類と、ステップS14で光学センサ66を介して検出された保持シート10の種類A〜Dとが整合しているか否かを判定する(ステップS16)。
【0051】
制御回路61は、ステップS16で被切断物6の種類と保持シート10の種類が整合していないと判断した場合(Yes)、種類が違っている旨のエラーメッセージ(図示しない報知画面)を液晶ディスプレイ9に表示して、ユーザに報知する(ステップS17)。また同時に、保持シート10上の被切断物6に対する切断を開始するか否かのメッセージを液晶ディスプレイ9に表示する。そして、ユーザがそのまま切断を開始しても良いと判断し操作スイッチ65を入力した場合、制御回路61は、操作スイッチ65からの信号、つまり切断開始の指示を受けて(ステップS18にてYes、ステップS19)、切断動作を開始する(ステップS20)。他方、ユーザによる切断開始の指示が無い場合(ステップS18にてNo)、被切断物6の切断を行うことなく、保持シート10を手前側へ搬送して排出し、この処理を終了する。
【0052】
前記ステップS16で被切断物6の種類と保持シート10の種類とが整合すると判断した場合(No)、ユーザによる切断開始の指示を受けて、切断動作を開始する(ステップS19、S20)。切断動作にあっては、先ず、カッタ4の刃先4cを被切断物6の切断開始点に移動させるべく、Y軸モータ15及びX軸モータ26を駆動させ、カッタ4と被切断物6を相対移動させる。そして、切断開始点上にカッタ4を移動させた状態で、ソレノイド57の駆動により、押圧部材56で被切断物6を押圧する。また、Z軸モータ34の駆動により、カッタホルダ5を下降位置に移動させて、カッタ4の刃先4cを被切断物6の切断開始点に貫通させる。そして、前記切断データに基づいてY軸モータ15及びX軸モータ26を駆動させることで、カッタ4と被切断物6とを相対的に移動させて被切断物6を切断する。
【0053】
切断時においてカッタ4の相対移動に伴い、カッタ4が被切断物6から抵抗力を受ける。このとき、前記ステップS16又はS18の判断ステップを経て、被切断物6を保持するのに最適の保持シート10が用いられていることに加え、ソレノイド57の駆動により被切断物6に対する接触部56fでの押圧力が作用する。このため、保持シート10における粘着層10aの粘着力と接触部56fの押圧力とにより、被切断物6が保持シートに対して移動することが無いよう、確実に保持される。また、切断の際、押圧部材56は被切断物6に対して相対移動するが、接触部56fが低摩擦係数の材料で構成されているため、接触部56fと被切断物6との間で生じる摩擦力を極力低減させることができる。
【0054】
被切断物6の切断が終了すると、ユーザは、保持シート10から被切断物6を剥がす。この場合、保持シート10における粘着層10aの粘着力は、前述のように被切断物6に応じた値に設定されているため、容易に剥がすことができる。
【0055】
以上のように本実施形態の切断装置1において、保持シート10は、被切断物6の種類ごとに複数種類が用意され、対応する種類の被切断物6を粘着により保持する。また、制御回路61は、ユーザによる操作スイッチ65の入力に基づく被切断物6の種類と、光学センサ66で検出された保持シート10の種類とが整合しているか否かを判定する判定手段として機能すると共に、その判定結果に応じた制御を行う。
これによれば、被切断物6を、その種類に応じた保持シート10で保持することができ、保持シート10における被切断物6の切断時のズレを防止することができる。また、被切断物6を間違った種類の保持シート10に貼り付け、その保持シート10を切断装置1にセットした場合、判定手段によって、ユーザが入力した被切断物6の種類と整合していないことを判定することができる。従って、複数種類の保持シート10を用いる構成であっても、判定手段の判定結果に応じた制御が行われることで、被切断物を正確に切断することができる。
【0056】
前記制御回路61は、前記判定手段の判定結果を、液晶ディスプレイ9を制御して表示画面により報知する。これによれば、判定手段の判定結果を報知して、ユーザに保持シート10の種類が適正か否かを知らせることができる。従って、ユーザは、保持シート10の種類を間違ってセットしていた場合には、正しい種類の保持シート10にセットし直すことができる。
【0057】
前記保持シート10に設けられる粘着層10aは、カッタ4が被切断物6を切断する際に、当該被切断物6が保持シート10に対して移動不能に保持されるよう被切断物6の種類に応じた粘着力を有する。このため、保持シート10における被切断物6のズレを確実に防止することができ、被切断物6を正確に切断することができる。
【0058】
前記保持シート10は、切断装置1に対して、所定の向き、又はそれとは180度反転させた逆向きの何れかの向きでセットされ、識別マーク60は、保持シート10の周縁部に設けられると共に、切断装置1に対して保持シート10を何れの向きでセットしても光学センサ66で検出される位置に設けられる。このため、保持シート10をセットする向きに制約が無いので、利便性が向上する。また、識別マーク60を保持シート10の周縁部に設けたので、被切断物6を保持シート10に貼り付ける際に、識別マーク60が邪魔にならない。
前記検出手段は、識別マーク60の情報を光学的に読取る光学センサを備える。従って、簡単な構成で、確実且つ容易に識別媒体を検出することができる。
前記複数種類の保持シート10には、標識59又は異なる色が付与されているので、ユーザは、保持シート10の種類を容易に判別することができる。
【0059】
また、図14に示すフローチャートにおいて、一部の処理を以下のように変更することも可能である。即ち、ステップS11で、被切断物6の種類を入力する代わりに、保持シート10の種類(種類A〜D)を入力する。そして、ステップ16で、ステップS11で入力された保持シート10の種類と、ステップS14で検出された保持シート10の種類とが整合しているか否かを判定する。この場合においても、被切断物6を間違った種類の保持シート10に貼り付け、その保持シート10を切断装置1にセットした場合、判定手段によって、ユーザが入力した保持シート10の種類と整合していないことを判定することができる。従って、複数種類の保持シート10を用いる構成であっても、判定手段の判定結果に応じた制御が行われることで、被切断物6を正確に切断することができる。
【0060】
尚、本発明は上記しかつ図面に示す実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。
本発明は、カッティングプロッタとしての切断装置1に限られず、切断機能を備えた各種の装置に適用できるものである。本実施形態では、保持シート10における粘着層10aの粘着力によって、被切断物6を移動不能に保持できることから、ソレノイド57を含む押圧手段を省略してもよい。
前記入力手段は、操作スイッチ65や液晶ディスプレイ9に限定するものではなく、前記タッチパネルを用いる等、ユーザによる被切断物6の種類又は保持シート10の種類の入力が可能であればよい。報知手段としては、前記判定手段の判定結果をブザーの鳴動により報知してもよいし、スピーカを設けて音声を出力することにより報知してもよい。
【0061】
識別媒体は、識別マーク60に限定するものではなく、保持シート10の種類を特定すべく、検出手段による読み取りが可能に構成されていればよい。例えば、識別媒体としては、保持シート10の上面に当該シート10の種類ごとに異ならせた凹凸部や切欠部であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 切断装置
4 切断刃
6 被切断物
9 報知手段、入力手段
10 保持部材
10a 粘着層
60 識別媒体
61 制御手段、検出手段、判定手段
65 入力手段
66 検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断刃と被切断物とを相対的に移動させることで、前記切断刃が前記被切断物を切断する制御を実行する制御手段を備えた切断装置であって、
前記被切断物の種類ごとに複数種類が用意され、前記被切断物を剥離可能に保持する粘着層が設けられた保持部材であって、対応する種類の被切断物を粘着させて保持した状態で前記切断装置にセットされる保持部材と、
前記保持部材に設けられ、前記保持部材の種類を特定するための識別媒体と、
前記被切断物の切断前に、ユーザが、前記被切断物の種類を前記制御手段に入力するための入力手段と、
前記切断装置に前記保持部材がセットされた際に、前記識別媒体から前記保持部材の種類を検出する検出手段と、
前記入力手段から入力された前記被切断物の種類と、前記検出手段で検出された前記保持部材の種類とが整合しているか否かを判定する判定手段とを備え、
前記制御手段は、前記判定手段の判定結果に応じた制御を行うことを特徴とする切断装置。
【請求項2】
切断刃と被切断物とを相対的に移動させることで、前記切断刃が前記被切断物を切断する制御を実行する制御手段を備えた切断装置であって、
前記被切断物の種類ごとに複数種類が用意され、前記被切断物を剥離可能に保持する粘着層が設けられた保持部材であって、対応する種類の被切断物を粘着させて保持した状態で前記切断装置にセットされる保持部材と、
前記保持部材に設けられ、前記保持部材の種類を特定するための識別媒体と、
前記被切断物の切断前に、ユーザが、前記保持部材の種類を前記制御手段に入力するための入力手段と、
前記切断装置に前記保持部材がセットされた際に、前記識別媒体から前記保持部材の種類を検出する検出手段と、
前記入力手段から入力された前記保持部材の種類と、前記検出手段で検出された前記保持部材の種類とが整合しているか否かを判定する判定手段とを備え、
前記制御手段は、前記判定手段の判定結果に応じた制御を行うことを特徴とする切断装置。
【請求項3】
報知手段を備え、
前記制御手段は、前記判定手段の判定結果を前記報知手段により報知するように制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の切断装置。
【請求項4】
前記保持部材に設けられる粘着層は、前記切断刃が前記被切断物を切断する際に、当該被切断物が前記保持部材に対して移動不能に保持されるよう被切断物の種類に応じた粘着力を有することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の切断装置。
【請求項5】
前記保持部材は、前記切断装置に対して、所定の向き又はそれとは180度反転させた逆向きの何れかの向きでセットされ、
前記識別媒体は、前記保持部材の周縁部に設けられると共に、前記切断装置に対して前記保持部材を何れの向きでセットしても前記検出手段で検出される位置に設けられることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の切断装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記識別媒体の情報を光学的に読取る光学センサを備えることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の切断装置。
【請求項7】
前記保持部材には、ユーザが視認することで種類が判別可能なように、標識又は色が付与されていることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−206232(P2012−206232A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75576(P2011−75576)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】