説明

切替装置

【課題】走行および旋回の駆動源が高温の溶銑または溶滓の影響を受けることがない切替装置の提供。
【解決手段】定位置で旋回するターンテーブル4と、ターンテーブル4上に設けられたレール9aと、溶銑または溶滓を受ける容器が載置され、レール9a上を走行可能な走行台車3と、ターンテーブル4を遠隔位置に配置された駆動源により旋回させる旋回手段5と、走行台車3を遠隔位置に配置された駆動源によりターンテーブル4上のレール9aに対して進退させるとともに、走行台車3がターンテーブル4上に進行した際のターンテーブル4の旋回中心位置で、走行台車3に回転自在に連結された進退手段6とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉設備の鋳床において溶銑または溶滓の流れを一方向から他方向に切り替える切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉設備の鋳床において、溶銑または溶滓の流れを一方向から他方向に切り替える切替装置がある。図11に示すように、切替装置20は、主に樋等の溶銑または溶滓を受ける容器21と、この容器21が載置される走行台車22とにより構成される。走行台車22には、容器21が載置され、この容器21を溶銑または溶滓の流れの切り替えのために旋回させるターンテーブル23と、ターンテーブル23を回転させる駆動源としてのモータ24と、走行台車22を走行させる駆動源としてのモータ25とを有する。
【0003】
このような従来の切替装置20では、旋回と走行の両方の駆動源であるモータ24,25が走行台車22に搭載されている。また、例えば特許文献1に記載のコークバケットの回転装置においても、走行台車上にバケットが載置され、このバケットを電動機にて旋回するようになっている。なお、特許文献1には、走行台車の駆動源については記載されていないが、走行台車上にモータが搭載されているものと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭62−34986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高炉設備の鋳床においては、溶銑または溶滓は1500℃以上の高温状態であるため、溶銑または溶滓を受ける容器21および走行台車22の周辺もかなりの高温となる。そのため、モータ24,25等の給電線や動力配管を含めた駆動源が高温雰囲気に曝され、設備寿命、信頼性や保守性に悪影響を及ぼすことになる。
【0006】
そこで、本発明においては、走行および旋回の駆動源が高温の溶銑または溶滓の影響を受けることがない切替装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の切替装置は、定位置で旋回するターンテーブルと、ターンテーブル上に設けられたレールと、溶銑または溶滓を受ける容器が載置され、レール上を走行可能な走行台車と、ターンテーブルを遠隔位置に配置された駆動源により旋回させる旋回手段と、走行台車を遠隔位置に配置された駆動源によりターンテーブル上のレールに対して進退させるとともに、走行台車がターンテーブル上に進行した際のターンテーブルの旋回中心位置で、走行台車に回転自在に連結された進退手段とを有するものである。
【0008】
本発明の切替装置によれば、進退手段によって走行台車を遠隔位置に配置された駆動源によりターンテーブル上のレールに対して進退させることができるとともに、走行台車をターンテーブル上のレールに進行させてターンテーブルを旋回させる際には、進退手段が走行台車に対してターンテーブルの旋回中心位置で回転自在に連結されているので、旋回手段によって走行台車をターンテーブルとともに遠隔位置に配置された駆動源により旋回させることができる。
【0009】
また、旋回手段は、流体圧により動作するシリンダピストン装置を駆動源とし、そのピストンロッドの先端部が、ターンテーブルに対してその旋回中心位置から離れた位置に回転自在に連結されたものであることが望ましい。これにより、駆動源としてのシリンダピストン装置を遠隔位置に配置して、そのピストンロッドを伸縮させることにより、ターンテーブルを旋回させることができる。
【0010】
また、進退手段は、流体圧により動作するシリンダピストン装置を駆動源とし、そのピストンロッドの先端部が、ターンテーブルの旋回中心位置で走行台車に対して回転自在に連結された構成とすることができる。これにより、駆動源としてのシリンダピストン装置を遠隔位置に配置して、そのピストンロッドを伸縮させることにより、走行台車を走行させることができる。
【0011】
また、進退手段は、モータを駆動源とし、このモータの回転軸に連結された駆動ギアと、この駆動ギアおよび従動ギアに掛けられ、その両先端部が、ターンテーブルの旋回中心位置で走行台車に対して回転自在に連結されたチェーンとから構成されるものとすることができる。これにより、駆動源としてのモータを遠隔位置に配置し、このモータを回転させることで、このモータの回転軸に連結された駆動ギアに掛けられたチェーンにより、走行台車を走行させることができる。
【発明の効果】
【0012】
(1)定位置で旋回するターンテーブルと、ターンテーブル上に設けられたレールと、溶銑または溶滓を受ける容器が載置され、レール上を走行可能な走行台車と、ターンテーブルを遠隔位置に配置された駆動源により旋回させる旋回手段と、走行台車を遠隔位置に配置された駆動源によりターンテーブル上のレールに対して進退させるとともに、走行台車がターンテーブル上に進行した際のターンテーブルの旋回中心位置で、走行台車に回転自在に連結された進退手段とを有することにより、駆動源が遠隔位置に配置された進退手段および旋回手段により走行台車を走行および旋回させることができるので、走行および旋回の駆動源が高温の溶銑または溶滓の影響を受けることがない切替装置が得られ、装置寿命、信頼性および保守性が改善される。
【0013】
(2)旋回手段が流体圧により動作するシリンダピストン装置を駆動源とし、そのピストンロッドの先端部が、ターンテーブルに対してその旋回中心位置から離れた位置に回転自在に連結されたものであることにより、高温でない遠隔位置に配置したシリンダピストン装置のピストンロッドの伸縮という簡単な構成によりターンテーブルを旋回させることができ、設備費の抑制および保守性の改善が可能となる。
【0014】
(3)進退手段が流体圧により動作するシリンダピストン装置を駆動源とし、そのピストンロッドの先端部が、ターンテーブルの旋回中心位置で走行台車に対して回転自在に連結された構成とすることにより、高温でない遠隔位置に配置したシリンダピストン装置のピストンロッドの伸縮という簡単な構成により走行台車を走行させることができ、設備費の抑制および保守性の改善が可能となる。
【0015】
(4)進退手段がモータを駆動源とし、このモータの回転軸に連結された駆動ギアと、この駆動ギアおよび従動ギアに掛けられ、その両先端部が、ターンテーブルの旋回中心位置で走行台車に対して回転自在に連結されたチェーンとから構成されるものとすることにより、高温でない遠隔位置に配置したモータの回転という簡単な構成により走行台車を走行させることができ、設備費の抑制および保守性の改善が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態における切替装置の斜視図である。
【図2】図1の切替装置の正面図である。
【図3】図2のA部拡大図である。
【図4】図3のB−B矢視図である。
【図5】図3のC−C矢視図である。
【図6】通常使用時の走行台車位置を示す概略平面図である。
【図7】通常使用時の旋回切替位置を示す概略平面図である。
【図8】容器取替時の走行台車位置を示す概略平面図である。
【図9】本発明の切替装置の別の実施形態を示す平面図である。
【図10】図9の切替装置の正面図である。
【図11】従来の切替装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の実施の形態における切替装置の斜視図、図2は図1の切替装置の正面図、図3は図2のA部拡大図、図4は図3のB−B矢視図、図5は図3のC−C矢視図である。
【0018】
図1および図2に示すように、本発明の実施の形態における切替装置1は、高炉設備の鋳床において溶銑または溶滓の流れを一方向から他方向に切り替えるものであって、溶銑または溶滓を受ける容器2が載置される走行台車3と、定位置で旋回するターンテーブル4と、ターンテーブル4を旋回させる旋回手段5と、走行台車3をターンテーブル4上に対して進退させる進退手段6とを有する。
【0019】
走行台車3は、ターンテーブル4上に設けられた第1レール9aおよびターンテーブル4外に設けられた第2レール9b上で走行可能な複数の車輪3aを備えている。進退手段6は、駆動源として油圧などの流体圧により動作するシリンダピストン装置6aを備えている。シリンダピストン装置6aは、容器2内に受ける高温の溶銑または溶滓の影響を受けない遠隔位置に固定されている。
【0020】
シリンダピストン装置6aのピストンロッド6bの先端部(回転支持部6c)は、図3および図4に示すように、走行台車3の中心位置に固定された円柱状のピン3bにより、走行台車3に対して回転自在に連結されている。また、回転支持部6cとピン3bとの連結部分にブッシュや転がり軸受を用いることで、回転抵抗を抑えることが可能である。なお、ピン3bの中心位置は、走行台車3がターンテーブル4上に進行して通常使用位置にあるときのターンテーブル4の旋回中心位置と一致している。
【0021】
ターンテーブル4は、土台7(図2参照。)上に設けられた固定レール8上で走行可能な複数の車輪4aを備えている。固定レール8は平面視で円状または円弧状に形成されており、ターンテーブル4は複数の車輪4aが固定レール8上で走行することにより、定位置で旋回するようになっている。また、ターンテーブル4の旋回中心位置にピン4bを設け、このピン4bは固定レール8の中心位置に設けられた回転支持部8aに回転自在に連結されることで、後述する旋回手段5のシリンダピストン装置5aの伸縮によってターンテーブル4が固定レール8から脱線することを抑えることが可能である。
【0022】
旋回手段5は、駆動源として油圧などの流体圧により動作するシリンダピストン装置5aを備えている。シリンダピストン装置5aは、容器2内に受ける高温の溶銑または溶滓の影響を受けない遠隔位置に固定されている。シリンダピストン装置5aのピストンロッド5bの先端部(回転支持部)5cは、図3および図5に示すように、ターンテーブル4の旋回中心位置から離れた位置に固定された円柱状のピン4cにより、ターンテーブル4に対して回転自在に連結されている。
【0023】
上記構成の切替装置1では、進退手段6のシリンダピストン装置6aのピストンロッド6bを伸縮させると、走行台車3は、第1レール9aおよび第2レール9b上を走行し、これらを乗り継ぐことにより、ターンテーブル4上に対して進退する。また、走行台車3がターンテーブル4上の通常使用位置にあるとき、走行台車3のピン3bの中心位置はターンテーブル4の旋回中心位置と一致しているので、旋回手段5のシリンダピストン装置5aのピストンロッド5bを伸長させると、ターンテーブル4が旋回し、このターンテーブル4上の走行台車3も旋回する。
【0024】
次に、上記切替装置1の運用について図6〜図8を参照して説明する。図6は通常使用時の走行台車位置を示す概略平面図、図7は通常使用時の旋回切替位置を示す概略平面図、図8は容器取替時の走行台車位置を示す概略平面図である。
【0025】
まず、走行台車3を走行させる際には、図6に示すように旋回手段5のシリンダピストン装置5aのピストンロッド5bは縮退させた状態となっている。このとき、第1レール9aおよび第2レール9bは平行な二直線上に並んでおり、走行台車3は第1レール9aと第2レール9bとを乗り継ぐことが可能となっている。
【0026】
この状態において、進退手段6のシリンダピストン装置6aのピストンロッド6bを伸長させると、走行台車3は第2レール9bから第1レール9aへと乗り継いで、ターンテーブル4上に配置される。このとき、走行台車3上の容器2(図示は省略している。)は、A方向(例えば、溶滓であれば水砕方向)に溶銑または溶滓を流すことができるようになっている。
【0027】
ここで、図7に示すように、旋回手段5のシリンダピストン装置5aのピストンロッド5bを伸長させると、走行台車3のピン3bの中心位置はターンテーブル4の旋回中心位置と一致しているので、走行台車3に対して回転自在に連結されたピストンロッド6bの回転支持部6cの位置はそのままで、走行台車3上の容器2および走行台車3はターンテーブル4とともに旋回する。これにより、容器2は、B方向(例えば、溶滓であればドライピット方向)に溶銑または溶滓を流すことができるようになる。
【0028】
また、容器2の取替時には、図6に示す状態から進退手段6のシリンダピストン装置6aのピストンロッド6bを縮退させると、図8に示すように走行台車3は第1レール9aから第2レール9bへと乗り継いで、ターンテーブル4外へ配置される。
【0029】
以上のように、本実施形態における切替装置1では、駆動源であるシリンダピストン装置6a,5aが遠隔位置に配置された進退手段6および旋回手段5により走行台車3を走行および旋回させることができるので、シリンダピストン装置6a,5aが高温の溶銑または溶滓の影響を受けることがなく、装置寿命、信頼性および保守性が改善される。
【0030】
特に、この切替装置1では、旋回手段5および進退手段6が流体圧により動作するシリンダピストン装置5a,6aを駆動源として高温でない遠隔位置に固定されたものであるため、特殊なホース、ロータリージョイントやケーブルベア等は不要であり、ピストンロッド5b,6aの伸縮という簡単な構成によりターンテーブル4を旋回させることができるので、設備費の抑制および保守性の改善が可能である。
【0031】
また、この切替装置1では、走行台車3を第1レール9aと第2レール9bとの乗り継ぎによりターンテーブル4上とターンテーブル4外とを正確な位置で走行させて、ターンテーブル4上で旋回させることが可能となっている。
【0032】
次に、本発明の切替装置の別の実施形態について説明する。図9は本発明の切替装置の別の実施形態を示す平面図、図10は図9の切替装置の正面図である。なお、図9および図10において、上記実施形態と同一の構成部分については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0033】
図9および図10に示す切替装置10では、上記切替装置1の進退手段6に代えて、モータ11aを駆動源とする進退手段11を備える。進退手段11は、モータ11aの回転軸に連結された駆動ギア11bと、駆動ギア11bに対してターンテーブル4の旋回中心位置の反対側に軸支された従動ギア11cと、従動ギア11bおよび従動ギア11cに掛け渡されたチェーン11dとを備える。
【0034】
チェーン11dの両先端部は、上記切替装置1のピストンロッド6bの回転支持部6cと同様に、走行台車3の中心位置に固定された円柱状のピン3bに対して回転自在に支持された回転支持部11eに連結されている。なお、駆動源であるモータ11aは、高温の溶銑または溶滓の影響を受けることがない遠隔位置に固定されている。
【0035】
この構成においても、モータ11aを回転させることで、このモータ11aの回転軸に連結された駆動ギア11bに掛けられたチェーン11dにより、前述と同様に走行台車3を進退させることが可能である。これにより、前述の切替装置1と同様に、駆動源であるモータ11aが遠隔位置に配置された進退手段11により走行台車3を走行させることができるので、モータ11aが高温の溶銑または溶滓の影響を受けることがなく、装置寿命、信頼性および保守性が改善される。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の切替装置は、高炉設備の鋳床において溶銑または溶滓の流れを一方向から他方向に切り替える装置として有用である。
【符号の説明】
【0037】
1,10 切替装置
2 容器
3 走行台車
3a 車輪
3b ピン
4 ターンテーブル
4a 車輪
4b ピン
5 旋回手段
5a シリンダピストン装置
5b ピストンロッド
6,11 進退手段
6a シリンダピストン装置
6b ピストンロッド
6c 回転支持部
7 土台
8 固定レール
8a 回転支持部
9a 第1レール
9b 第2レール
11a モータ
11b 駆動ギア
11c 従動ギア
11d チェーン
11e 回転支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定位置で旋回するターンテーブルと、
前記ターンテーブル上に設けられたレールと、
溶銑または溶滓を受ける容器が載置され、前記レール上を走行可能な走行台車と、
前記ターンテーブルを遠隔位置に配置された駆動源により旋回させる旋回手段と、
前記走行台車を遠隔位置に配置された駆動源により前記ターンテーブル上のレールに対して進退させるとともに、前記走行台車が前記ターンテーブル上に進行した際の前記ターンテーブルの旋回中心位置で、前記走行台車に回転自在に連結された進退手段と
を有する切替装置。
【請求項2】
前記旋回手段は、流体圧により動作するシリンダピストン装置を駆動源とし、そのピストンロッドの先端部が、前記ターンテーブルに対してその旋回中心位置から離れた位置に回転自在に連結されたものである請求項1記載の切替装置。
【請求項3】
前記進退手段は、流体圧により動作するシリンダピストン装置を駆動源とし、そのピストンロッドの先端部が、前記ターンテーブルの旋回中心位置で前記走行台車に対して回転自在に連結されたものである請求項1または2に記載の切替装置。
【請求項4】
前記進退手段は、モータを駆動源とし、このモータの回転軸に連結された駆動ギアと、この駆動ギアおよび従動ギアに掛けられ、その両先端部が、前記ターンテーブルの旋回中心位置で前記走行台車に対して回転自在に連結されたチェーンとから構成される請求項1または2に記載の切替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−180575(P2012−180575A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45516(P2011−45516)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】