説明

切粉巻き検知装置

【課題】 長尺なシャフト状のワークを切削加工する際に生じて前記ワークに巻回付着する切粉を確実に検知することが可能な切粉巻き検知装置を提供することである。
【解決手段】 切削されるワークWの外径よりわずかに大きな内径を有するセンサリング11と、該センサリングを、前記ワークを嵌装するようにワークの全長に渡って移動する移動手段とを備え、前記センサリングが移動する際に、該センサリングと接触する切粉Kを検知する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械、特に旋盤により切削加工する際に、ワークに巻回して付着する切粉を検知する切粉巻き検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
旋盤によりシャフトのような長尺なワークを切削加工すると、螺旋状の切粉が発生してワークに巻回して付着することがある。
【0003】
ワークに切粉が巻回付着すると、加工精度が悪化する等の加工不良を生じたり、バイト等の加工工具を破損するというトラブルの原因となる。さらには、複数の加工工程を連続して自動搬送しながら行う場合には、搬送される後工程で問題が生じたり、搬送中に搬送停止等のトラブルが発生するという問題も生じる。
【0004】
また、切粉はワークだけでなく切削工具に巻き付くこともあり、この場合でも、加工精度を悪化させたり、工具の破損を招く等のトラブルの原因となっている。
【0005】
そのために、切削工具に巻き付いた切粉を検知してトラブルを未然に防止するとした数値制御式切削加工機械の切粉巻き付き検知装置が既に出願されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、刃物台の工具ホルダ取付け面に切粉排除装置を設けて、切削加工により生じる切粉がワークや工具に絡みつくことを防止するとした数値制御旋盤の刃物台が既に出願されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実公平6−45317号公報(第1−4頁、第2図)
【特許文献2】特開平6−297204号公報(第1−3頁、第9図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
長尺なワークの外表面を所定の径となるように切削すると、螺旋状の切粉が発生し、ワークに巻回して付着する。この螺旋状の切粉は、単に圧縮エアを吹き付ける等の除去操作では完全に排除することは困難である。
【0008】
また、複数の主軸ヘッドを備える旋盤により、複数のワークを同時に切削加工し、次工程に送り出す構成の工作機械においては、ワークの品質や数量確保のために、同時に加工される対のワークを揃えて次工程へ搬送することが望ましい。
【0009】
そのためには、シャフト状の長尺なワークを切削加工した後で、ワーク外周部に付着する切粉の有無を確認し、異常のないワークを、または異常のない対のワークを同時に次工程に搬送することが望まれる。
【0010】
本発明の目的は、上記問題点を解消するために、長尺なシャフト状のワークを切削加工する際に生じて前記ワークに巻回付着する切粉を確実に検知することが可能な切粉巻き検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために請求項1に係る発明は、旋盤加工されるシャフト状のワークに巻回して付着する切粉を検知する切粉巻き検知装置であって、切削される前記ワークの外径よりわずかに大きな内径を有するセンサリングと、該センサリングを、前記ワークを嵌装するようにワークの全長に渡って移動する移動手段とを備え、前記センサリングが移動する際に、該センサリングと接触する前記切粉を検知することを特徴としている。
【0012】
上記の構成を有する請求項1に係る発明によれば、長尺なワークのどの部分に切粉が巻回付着していても、確実に検知することができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記センサリングが接触センサを備えていると共に、前記移動手段が、前記センサリングを保持する保持ブラケットと、前記保持ブラケットを摺動自在に支持するスライドガイドと、前記保持ブラケットを前記ワークの軸方向に移動するシリンダ部材とを備えていることを特徴としている。
【0014】
上記の構成を有する請求項2に係る発明によれば、スライドガイドを介してシリンダ部材により移動する構成としたので、ワークの外径よりわずかに大きな内径を有するセンサリングを、ワークの軸線に沿って正確に摺動可能とし、ワークに付着している切粉を正確に検知することができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、前記センサリングの進行方向の前面に、嵌装する前記ワークの外表面に向けて圧縮エアを噴射する複数のエア噴射ノズルを円周上等配して配設し、圧縮エアを前記ワークの全周に渡って吹き付けた後のワーク表面を探査することを特徴としている。
【0016】
上記の構成を有する請求項3に係る発明によれば、ワークに付着した切削油やゴミ、および除去容易な切粉等を圧縮エアの吹き付けにより除去することができるので、ワークの外径よりわずかに大きな内径を有するセンサリングを前記ワークに嵌装させても、導電性を有する切削油が前記センサリングに接触して誤反応することがない。そのために、除去困難な螺旋状に巻回した切粉の有無を正確に検知することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ワークの外径よりわずかに大きな内径を有するセンサリングを、ワークを嵌装するようにワークの全長に渡って移動して、前記ワークに巻回して付着している切粉を検知する構成としているので、長尺なシャフト状のワークの外周部に付着する切粉がどこにあっても、この切粉を確実に検知することが可能な切粉巻き検知装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る切粉巻き検知装置の実施の形態について、図1から図5に基づいて詳細に説明する。
【0019】
まず、図1および図2にもとづき、切粉巻き検知装置1について説明する。本実施例に係る切粉巻き検知装置は、センサリングを一個だけ備える単独型の切粉巻き検知装置の場合も、一対二個備える切粉巻き検知装置の場合もあるが、ここではセンサリング11を一対二個備える切粉巻き検知装置1について説明する。
【0020】
前記切粉巻き検知装置1は、センサリング11とセンサリング11を移動する移動手段とを備えている。また、前記移動手段は、前記センサリング11をそれぞれ備える検知手段2(2A、2B)を一体的に保持する保持ブラケット3と、前記保持ブラケット3を摺動自在に支持するスライドガイド4と、前記保持ブラケット3を移動するシリンダ部材5とを備えた構成である。
【0021】
前記センサリング11は、ワークチャックTに支持されているワークWに接離自在であると共に、ワークの外径より大きな内径D1を有している。そのために、図1に示すように、ワークWから離間した位置Aと、ワークW方向に移動して前記ワークチャックTに接近した位置Bとの間を矢印C方向に往復自在な構成とされている。
【0022】
前記保持ブラケット3は、検知手段2A、2Bを一体的に装着している。それぞれの検知手段はそれぞれ、センサリング11と、該センサリング11を保持するリングブラケット12と、ホルダ13を備えており、このホルダ13がそれぞれ前記保持ブラケット3に固着されている。つまり、保持ブラケット3はホルダ13を介してセンサリング11を保持する構成である。
【0023】
また、それぞれのホルダ13が互いに保持するそれぞれのセンサリング11の離間ピッチPを、後述する左右一対のワークWの間隔P1に合致した寸法に正しく調整されて、前記ホルダ13が止めネジ30により固定されている。そのために、シリンダ5によりスライドガイド4にガイドされながら摺動移動させられて、ワークWを嵌装するように往復移動可能とされている。
【0024】
そのために、左右一対の二本のワークWに付着した切粉を探査する際に、前記一対のセンサリング11を前記ワークWに接近する方向に前進移動して、二本のワークWを同時に嵌装して前記ワークWの全長に渡って探査し、前記センサリング11と前記ワークに巻回して付着している切粉Kを検知することができる。
【0025】
前記センサリング11は金属等の導電性物質を検知するセンサ体であればよいが、本実施の形態においては、金属製のセンサリング11に、接触センサ10を固着する構成としている。また、金属製のセンサリング11を保持するリングブラケット12およびホルダ13は非導電性の樹脂製としている。そのために、前記センサリング11に導電性を有する異物が接触すると、電気抵抗が変化し、この変化を前記接触センサ10を介して検出することで、異物特に金属性の切粉の有無を検知するセンサ体とすることができる。
【0026】
もちろん、前記センサリング11自体を接触センサとして製造することも可能であるが、探査するワークWの外径に応じた内径を有する接触センサを予め用意しておく必要があり、不便である。そのために、所定の内径に機械加工された金属製リングに接触センサ10を固着した構成のセンサリング11とすれば、ワークWの外径に応じた内径の金属製リングを用意すればよく、簡単に対応可能となり好適である。
【0027】
図2中の6はベースであり、該ベース6の両側部に固設されたスライドガイド4に、スライドブロック31を介して保持ブラケット3が装着されている。そのために、前記保持ブラケット3に装着されると共にセンサリング11を備える検知手段2が、前記スライドガイド4に沿って摺動する構成である。また、摺動して移動している検知手段2に接続されるケーブル8は、屈曲自在な構成であるケーブルガイド7内を挿通している。
【0028】
図3に示すように、センサリング11の内径D1はワークWの外径D2よりもわずかに大きな径とされており、本実施の形態においてはその隙間Eを1mm程度に設定している。そのために、旋盤の切削加工により螺旋状の切粉が発生してワークWに巻回して付着すると、円周上のいずれかの部分において、前記切粉の一部が前記隙間Eを越えて突出することになり、この突出した切粉がセンサリング11に接触する。
【0029】
また、センサリング11を保持するリングブラケット12の前記センサリング11の進行方向の前面に、嵌装するワークWの外表面に向けて圧縮エアを噴射する複数のエア噴射ノズル14(14a、14b、14c、14d)を円周上等配して配設している。
【0030】
前記の複数のエア噴射ノズル14から圧縮エアを矢印14A方向に噴射して、ワークWの全周に渡って吹き付けながら、検知手段2を移動しワーク表面を探査し、ワークWに付着した切粉Kを検知する構成としている。そのため、ワークWに付着した切削油やゴミ、および除去容易な切粉等を圧縮エアの吹き付けにより除去することができ、除去困難な螺旋状に巻回した切粉Kの有無を正確に検知することができる。
【0031】
さらに、導電性を有する切削油を吹き飛ばすので、前記センサリング11に導電性を有する切削油が接触して誤検知することを防止する構成となり、さらに正確な切粉巻き検知装置とすることができる。
【0032】
15はエア噴射ノズル14に圧縮エアを供給するエア配管である。また、本実施の形態においては前記エア噴射ノズル14を円周上に4個設けたが、この数量には限定されず、3個でも6個でもよく、探査するワークWの円周上を隈なく吹き付け可能な数量であればよい。ただ、ワークWの円周上を隈なく吹き付けるためには、複数のエア噴射ノズルを円周上等配して設けることが好ましい。
【0033】
上記のような構成としているので、本発明に係わる切粉巻き検知装置1によれば、シャフト状のワークWを切削加工する際に、ワークWのどの部分に切粉Kが巻回付着していても、前記切粉Kを確実に検知することができる。
【0034】
次に、図4および図5により本発明に係わる切粉巻き検知装置1の全体構成について詳細に説明する。図4は装置全体の平面図を示し、図5は側面図を示している。
【0035】
本実施の形態に係わる切粉巻き検知装置1は、一対二個のセンサリング11を有する検知装置であって、二本のそれぞれのワークWに付着した切粉Kを同時に探査することができる。また、それぞれのワークWはそれぞれの根元側をワークチャックTに間隔P1離間して保持されており、前記根元側とは反対側は自由端となっているので、この自由端側から前記根元側に向けてセンサリング11を挿入することができる。この時に、前記センサリング11をそれぞれ備える検知手段2A、2Bの離間ピッチPが前記間隔P1と等しくなるようにして、止めネジ30により固定しているのは前述した通りである。
【0036】
また、ベース6上の両端部にスライドガイド4をそれぞれ設置して、この二本のスライドガイド4を跨ぐようにして、両側に配設されるスライドブロック31を介して保持ブラケット3を装着している。そのために、前記保持ブラケット3は、その両端部をガイドされながら、スライドガイド4上をスライドする構成であり、前記ベース6上を正確に水平移動することができる。
【0037】
また、前記ベース6上の一端側にシリンダ部材5を設置すると共に、該シリンダ部材5のロッド50を、前記保持ブラケット3の一端に設ける取付部材32に固定している。そのために、シリンダ部材5を駆動することで、検知手段2を備える保持ブラケット3を前記ワークWの全長に渡って、図中に示す位置Aから位置Bまでガタツクことなく走査することができる。
【0038】
さらに、センサリング11がワークチャックTに衝突しないように、前記ロッド50の引き戻し部にダンパ51とストッパ52を装着している。
【0039】
そのために、前記センサリング11を備える保持ブラケット3を高速移動しても、前記取付部材32が先ず前記ダンパ51に当接して衝撃を緩和し、ブレーキを掛けられながら前記ストッパ52により停止する。つまり、前記ストッパ52の設置位置を調節することで、前記保持ブラケット3の停止位置を規定可能であり、前記センサリング11を前記ワークチャックTのごく近くまで移動させることができる。
【0040】
センサリング11に固着される接触センサ10にはケーブル8が接続されており、該ケーブル8は屈曲自在なケーブルガイド7を経由して、配線管9に挿通している。そのために、ケーブル8を備える接触センサ10であっても、保持ブラケット3と共に自由に水平移動することができる。
【0041】
さらに、エア噴射ノズルに接続されるエア配管15も前記ケーブルガイド7を経由して配管される弾性チューブとしているので、前記保持ブラケット3の水平移動に追随し、所定のエア噴射を行うことができる。
【0042】
上記のような構成としているので、二個のセンサリング11を備える切粉巻き検知装置であっても、それぞれのワークチャックに装着される二本のワークWを嵌装するようにして、前記検知手段2を、ワークWの軸線方向に沿って正確にまた平行に移動して切粉を検知することができる。そのために、前述したように、ワークWの径よりも僅かに大きな内径のセンサリング11を、二本のワークWに沿って走査していくことが可能となり、ワークWに付着した切粉Kを確実に検知することができる。
【0043】
もちろん、ワークWを一本毎に加工して搬送する際に、単独の前記センサリング11を備えると共に、前記センサリングを保持する保持ブラケットと、前記保持ブラケットを摺動自在に支持するスライドガイドと、前記保持ブラケットを前記ワークの軸方向に移動するシリンダ部材とを備える移動手段を用いて、前記ワークWに付着した切粉Kを検知することもできる。
【0044】
所定形状に切削加工されるそれぞれのワークWは、図示されない搬送手段により次工程へ搬送されていく。もし、ワークWに付着した切粉Kを検知すると、排出手段(不図示)を用いて排出し、作業者により検査、修復するようにしている。また、二本同時に加工して搬送する工程の場合には、正常な製品を二本毎に処理していくことが肝要である。
【0045】
そのために、同時に切削加工したワークWのいずれか一方のワークWにでも不良があれば、そのまま次工程へ搬送できない。また、加工形状に不良がなくても、前述したような切粉KがワークW表面に巻回して付着していると、次工程の加工精度が悪化する虞や、加工工具を損傷する虞があるので、形状不良の場合と同様にそのまま次工程へ搬送しないほうがよい。
【0046】
本実施の形態においては、前述した通り、同時に加工した二本のワークWの周囲に付着した切粉Kを、ワークWの全長に渡って同時に探査し、いずれか一方のワークWにでも切粉Kが付着していることを検知した時には、二本のワークWを図示しない排出手段により同時に排出する構成とした。
【0047】
また、排出部へ排出された二本のワークWは、所定時間毎に巡回する作業者の手により検査、修復されて次工程へ同時に送り出されて、その後の加工を継続すればよい。
【0048】
上記のように、本発明に係わる切粉巻き検知装置によれば、接触センサを備えるセンサリングを、スライドガイドを介してシリンダ部材により移動する構成としたので、ワークの外径よりわずかに大きな内径を有するセンサリングであっても、ワークの軸線に沿って正確に摺動可能とし、ワークに付着している切粉を正確に検知することができる。
【0049】
さらに、複数のノズルから圧縮エアを噴射しながら、ワークの全周に近接して、ワークの全長に渡って探査するので、ワークWに付着した切削油やゴミ、および除去容易な切粉等を除去した後で、除去困難な螺旋状に巻回した切粉Kのみを、誤動作することなく正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る切粉巻き検知装置の作用を示す概略側面図である。
【図2】本発明に係る切粉巻き検知装置の全体正面図である。
【図3】ワークに嵌装したセンサリングの状態を示す拡大断面図である。
【図4】本発明に係る切粉巻き検知装置全体の概要を示す平面図である。
【図5】本発明に係る切粉巻き検知装置全体の概要を示す側面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 切粉巻き検知装置
2、2A、2B 検知手段
3 保持ブラケット(移動手段)
4 スライドガイド(移動手段)
5 シリンダ部材(移動手段)
11 センサリング
14 エア噴射ノズル
D1 内径(センサリングの)
D2 外径(ワークの)
K 切粉
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋盤加工されるシャフト状のワークに巻回して付着する切粉を検知する切粉巻き検知装置であって、
切削される前記ワークの外径よりわずかに大きな内径を有するセンサリングと、該センサリングを、前記ワークを嵌装するようにワークの全長に渡って移動する移動手段とを備え、前記センサリングが移動する際に、該センサリングと接触する前記切粉を検知することを特徴とする切粉巻き検知装置。
【請求項2】
前記センサリングが接触センサを備えていると共に、前記移動手段が、前記センサリングを保持する保持ブラケットと、前記保持ブラケットを摺動自在に支持するスライドガイドと、前記保持ブラケットを前記ワークの軸方向に移動するシリンダ部材とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の切粉巻き検知装置。
【請求項3】
前記センサリングの進行方向の前面に、嵌装する前記ワークの外表面に向けて圧縮エアを噴射する複数のエア噴射ノズルを円周上等配して配設し、圧縮エアを前記ワークの全周に渡って吹き付けた後のワーク表面を探査することを特徴とする請求項1または2に記載の切粉巻き検知装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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