説明

刈り払い作業も行える裾刈機

【課題】 裾刈機体を取り付けた茶園管理機でも長芽用の刈り払い作業が行えるようにした新規な裾刈機を提供する。
【解決手段】 本発明の裾刈機1は、茶畝を跨いで走行する走行機体2と、この走行機体2に取り付けられ、茶株の不要な裾枝を刈り取る裾刈機体3とを具え、裾刈作業が行えるようにした装置であって、裾刈機体3は、裾枝を刈り取る刈刃31の姿勢が適宜変更できるように走行機体2に取り付けられるものであり、刈刃31の姿勢設定により刈り払い作業を行う剪枝機体としても兼用できるようにしたことを特徴とする。また裾刈機体3は、走行機体2に対し、刈刃31の両端部付近が、ともに上下動自在且つ鉛直回動自在に取り付けられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば乗用型の裾刈機に関するものであって、長芽の刈り払い作業も行えるようにした新規な裾刈機に係るものである。
【背景技術】
【0002】
茶畝を跨ぐように走行する走行機体に、適宜の作業機体(ユニット)を取り付けて所望の茶園管理作業を行うようにした茶園管理機が従来より知られており、例えばクローラを具えた走行機体に、作業機体の一形態である摘採機体を搭載した乗用型の摘採機(茶刈機)がよく知られている。
また、他の茶園管理作業としては、例えば秋番茶で芽が長い場合、長芽の頭部を刈る作業(剪枝作業の一種)があり、この場合には、例えば図7に示すように、乗用型の茶園管理機1′の前側(進行方向側)に刈り払い用の剪枝機体3′(後述する裾刈機体3′に対応する作業機体であるため、同一の符号を付す)を取り付けて剪枝作業を行うことが多かった。なお、長芽用の剪枝機体3′は、図示のように刈刃31′が水平に固定設定されるのが一般的である。
また、乗用型の茶園管理機1′としては、例えば図8に示すように、走行機体2′(管理機)の前側に裾刈機体3′を取り付けて裾刈作業が行えるようにした装置もあり、このものは走行機体2′の脚部に、片畝用の裾刈機体3′を各々取り付けて、茶畝Tの両裾(茶株の両裾枝)を一挙に刈り取るものである。
【0003】
そして、このような長芽用の剪枝機体3′と、裾刈機体3′とは、ともに走行機体2′の前方に取り付けられるものでありながら、その作業内容に応じて、作業機体(ユニット)から取り替えなければならず、これが茶農家にとってはコスト負担を招く要因となっていた。
もちろん、乗用型の裾刈機自体は既に案出されているが(例えば特許文献1)、この特許文献1では、作業機体の一つとして裾刈機体を、乗用型の茶園管理機に取り付け得ることが開示され、裾刈機体を取り付けた管理機によって、他の作業も行おうとする発想(思想)は一切開示されていない。逆に言えば、乗用型の裾刈機では、裾刈作業のみを専用に行うという思想が、長年、固定観念化されてきたものと考えられる。
また、従来の長芽用の剪枝機体では、上述したように刈刃が水平に固定設定されているため、刈刃を山形状にして茶園の弧状に近づけて刈り取ることができず、この点でも改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−300808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、裾刈機体(刈刃)の取付姿勢を種々変更できるようにすることで、裾刈機体を取り付けた茶園管理機でも長芽用の刈り払い作業が行えるようにした新規な裾刈機に係るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず請求項1記載の、刈り払い作業も行える裾刈機は、茶畝を跨いで走行する走行機体と、この走行機体に取り付けられ、茶株の不要な裾枝を刈り取る裾刈機体とを具え、裾刈作業が行えるようにした装置において、前記裾刈機体は、裾枝を刈り取る刈刃の姿勢が適宜変更できるように走行機体に取り付けられるものであり、刈刃の姿勢設定により刈り払い作業を行う剪枝機体としても兼用できるようにしたことを特徴として成るものである。
【0007】
また請求項2記載の、刈り払いも行える裾刈機は、前記請求項1記載の要件に加え、前記裾刈機体は、走行機体に対し、刈刃の両端部付近が、ともに上下動自在且つ鉛直回動自在に取り付けられることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項3記載の、刈り払い作業も行える裾刈機は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記裾刈機体は、走行機体の前方側に取り付けられ、且つ裾刈機体の後部には、摘採機体など別の作業機体が走行機体に対して取り付けられることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0009】
まず請求項1記載の発明によれば、裾刈機体(刈刃)の姿勢を変更することにより、裾刈機体を剪枝機体としても使用でき、剪枝機体を別途購入、保管する必要がない。すなわち、例えば従来は秋番茶で芽が長い場合、長芽の頭部を刈るために走行機体(乗用型管理機)の前側に剪枝機体を取り付けて刈り払い作業を行っていたが、このような作業を裾刈機体の姿勢変更によって行うことができ、長芽用の剪枝機体は不要となる。このため、走行機体の前方側に取り付けられる作業機体として2種類必要だったものが1台で済み、設備費の低減や保管場所が不要になる等の効果を奏する。
なお、従来の長芽用の剪枝機体は、2ストロークエンジンによる駆動方式が主流であり、作業中、剪枝機体自体に給油を行う必要があったが、裾刈機体は油圧モータによる駆動方式が多く、作業機体自体に給油を行う必要がなく、この点においても効果を奏する。
【0010】
また請求項2記載の発明によれば、裾刈機体の両端部付近が、走行機体に対しともに上下動自在且つ鉛直回動自在に取り付けられるため、刈刃を種々の姿勢に設定することができる。このため左右の刈刃を必ずしも一直線状に設定した刈り払い作業だけでなく、左右の刈刃を山形状に設定した刈り払い作業も行うことができ、茶畝の弧状(摘採面)に合った剪枝も行えるものである。
【0011】
また請求項3記載の発明によれば、走行機体には裾刈機体だけでなく他の作業機体が取り付けられるため、効率の良い茶園管理作業が行える。すなわち、例えば走行機体の前方側では、刈刃の姿勢を変更した裾刈機体で刈り払い作業を行いながら、後方側では摘採機体による摘採作業を行うことができる。もちろん、前方側では裾刈機体により刈り払い作業を行いながら、後方側でも他の剪枝機体により剪枝作業を行うこともでき(浅刈り・剪枝作業を一挙に行うことができ)、作業効率を向上させることができる(全体の作業回数を減らすことができる)。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の裾刈機であって、刈り払い作業を行う剪枝姿勢の一例を示す斜視図(a)、並びに裾刈作業を行う裾刈姿勢の一例を示す斜視図(b)である。
【図2】裾刈機体を走行機体に対して可動状態に取り付ける支持機構を示す説明図である。
【図3】左右の裾刈機体の刈刃を低い位置でほぼフラット状態に設定した剪枝姿勢を三方向から示す説明図である。
【図4】刈刃を山形状に設定した剪枝姿勢を二方向から示す説明図である。
【図5】裾刈機体の駆動端部を脚部フレーム(脚部)の上部に位置させながら、刃先端部を裾枝側に張り出させるようにした裾刈姿勢の一例を示す説明図である。
【図6】裾刈機体を剪枝姿勢から裾刈姿勢に変更する際の途中の様子を示す説明図である。
【図7】従来の長芽用剪枝機(長芽用の剪枝機体を走行機体に取り付けた従来の茶園管理機)を示す説明図である。
【図8】従来の裾刈機(裾刈機体を走行機体に取り付けた従来の茶園管理機)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法を含むものである。
【実施例】
【0014】
本発明の裾刈機1は、一例として図1、2に示すように、茶畝Tを跨ぐように走行する走行機体2と、この走行機体2によって茶畝Tに作用するように支持される裾刈機体3とを具えて成るものである。ここで本発明では、「裾刈機」や「裾刈機体」と言いながらも、裾刈機体3の取り付け方つまり刈刃31の姿勢を適宜変更することにより、同一の裾刈機体3で刈り払い作業(剪枝作業)も行えるようにしたものであり、その意味では剪枝機としても機能するものである。また、このようなことに因み、裾刈機体3(刈刃31)を走行機体2に対し可動状態に取り付ける機構を支持機構4とする。
以下、走行機体2、裾刈機体3、支持機構4について説明する。
【0015】
まず走行機体2について説明する。このものは、茶畝Tを跨いで畝間(畝地)を接地走行するものであり、走行方向から見て概ね門型状に形成されたフレーム21を骨格部材とする。このフレーム21は、畝地上に立ち上げ状態に形成される脚部フレーム21Aと、この脚部フレーム21Aを繋ぐ連結フレーム21Bと、脚部フレーム21Aに対し昇降動自在に取り付けられる昇降ブラケット21Cとを具えて成るものである。そして、脚部フレーム21Aの下端には一例としてクローラを適用した走行体22が設けられる。もちろん、この走行体22は、このようなクローラに限らず、畝地を過剰に押し付けないような空気タイヤ、あるいは双方を適用した形態(例えば前側に空気タイヤ、後側にクローラを適用した形態)等が適宜採り得る。
【0016】
また連結フレーム21Bの上部には、裾刈機1(走行機体2)に乗車した作業者が座る操縦者用シート23、操縦桿24、裾刈機1の制御や操作等を行うためのコントロールボックス25を設けるものである。また、連結フレーム21Bの上部には、例えばディーゼルエンジン等を適用した原動機26を搭載するものであり、一例として、この原動機26により図示を省略する油圧ポンプを駆動し、この油圧ポンプにより供給される作動油によって前記走行体22の駆動や、後述する裾刈機体3の刈刃31の駆動、更には前記昇降ブラケット21Cの昇降動を担うシリンダ(図示略)等の駆動を行うものである。なお、走行機体2としては、フレーム幅が茶畝Tの幅寸法に応じて適宜変更できる構造のものでも構わない。
また、上述したように、走行機体2には、裾刈機体3を可動状態に保持する部材(支持機構4の構成部材)が設けられるが、これについては支持機構4としてまとめて説明する。
【0017】
次に、裾刈機体3について説明する。裾刈機体3は、本来、例えば茶畝T間の通路を確保すべく、茶株の不要な裾枝を刈り取るものであり、通常の裾刈姿勢(刈刃31の姿勢)は、図1(b)や図5に示すように、一般的な裾刈機と同様に、脚部フレーム21Aの上方から裾枝に向けて刈刃31を張り出す姿勢である。
また、ここでは裾刈機体3として片畝用のユニットが適用され、これが左右の脚部フレーム21Aに装着されるものである。因みに両畝用のユニット(裾刈機体)とは、畝地上に位置する脚部フレーム21Aから左右両側の茶畝T(裾枝)に刈刃31を張り出すタイプのものである。
なお、本発明では、上述したように裾刈機体3(刈刃31)の姿勢を変更することで、従来は裾刈専用機であった裾刈機1(裾刈機体3)で長芽用の刈り払い作業も行えるようにしたものであり、この刈り払い作業を行う剪枝姿勢の一つとして、例えば図3に示すように、刈刃31をほぼ水平に設定した姿勢が挙げられる。そして、裾刈機体3について便宜的に表裏をいう場合には、この図3の状態を基準とし、本図3において裾刈機体3の上側をオモテ側とする。
【0018】
以下、裾刈機体3について更に詳細に説明する。裾刈機体3は、バリカンタイプの刈刃31と、刈刃31を往復駆動するための油圧モータ32とを主要部材として成り、これらがフレーム部材(これを刈刃フレーム33とする)によって支持される。
油圧モータ32は、刈刃フレーム33の端部に設けられるものであり(こちらを駆動端部32Eとする)、裾刈作業を行う際には、図5に示すように、油圧モータ32(駆動端部32E)側を上方に位置させ、刈刃31の先端側を下方(畝裾)に張り出すように位置させるものである。ここで、刈刃31の先端側を上記駆動端部32Eに対して刃先端部31Eとする。また油圧モータ32には、変速機構を具えるのが一般的である。
因みに油圧モータ32には、刈刃31をほぼ水平に設定した状態(刈り払い作業を行う場合の一姿勢)において、そのオモテ側(上側)から作動油を供給するためのパイプが接続される。
【0019】
このような裾刈機体3は、走行機体2(脚部フレーム21A)の前方側に取り付けられるものであり、その後方、例えば走行機体2の中段や後段部分には、茶葉の摘採を行う摘採機体や浅刈り等を行う剪枝機体などの他の作業機体が取り付けられ、裾刈作業と他の管理作業を一挙に行うことが可能である。もちろん、走行機体2の前方側に裾刈機体3のみを取り付け、中段部分等には何も作業機体を取り付けないことも可能であり、この場合には裾刈作業もしくは剪枝作業(裾刈機体3による刈り払い作業)だけを単独で行うことになる。
ここで図3〜図6に示す実施例では、走行機体2の中段部分に、摘採機体を設けた裾刈機1(管理機)を示しており、図中符号「3」、「31」(括弧付き)が、各々、摘採機体と、その刈刃を示している。また、摘採機体(3)を走行機体2に搭載するには、摘採機体(3)を前記昇降ブラケット21Cに取り付け、摘採機体(3)を上下動自在に形成するものである。
更に、走行機体2に摘採機体(3)を搭載した場合、これに付随して摘採茶葉を収容する収容部も設けるものであり、これには例えば前記昇降ブラケット21Cに、はね上げ式の収容台を取り付け、この台上にセットした茶袋に摘採茶葉を収容(風送)する形態が挙げられる。
【0020】
以下、裾刈機体3を走行機体2に対し可動状態に取り付ける支持機構4について説明する。支持機構4は、裾刈機体3の駆動端部32Eと刃先端部31Eとの両端部付近を、走行機体2に対しともに昇降動自在及び回動自在に支持する機構であり、これにより裾刈機体3(刈刃31)の姿勢を種々変更できるようにしている。ここで支持機構4は、駆動端部32E側と刃先端部31E側と大別され、更にこれらが各々、裾刈機体3側と走行機体2側とに区分され(計4つ)、これら4つの機構を区別したい場合に4A、4B、4C、4Dと符号を付すものである。
まず支持機構4Aすなわち駆動端部32E側における裾刈機体3での支持部材について説明する。裾刈機体3の駆動端部32Eには、一例として図2に示すように、裾刈機体3を走行機体2に接続するための丸棒状のロッド41が、刈刃フレーム33から延びるように設けられる。このためロッド41は、裾刈機1の後方側、換言すれば脚部フレーム21Aに向かって延びるように設けられる。ここで前記ロッド41を丸棒状に形成したのは、裾刈機体3をほぼ一定の鉛直面内において回動自在(鉛直回動自在)とするためである。
【0021】
次に、支持機構4Bすなわち駆動端部32E側における走行機体2での支持部材について説明する。支持機構4Bは、支持機構4Aと対を成すものであり、脚部フレーム21A(前側脚部)に沿って、その前方側にほぼ鉛直に設けられた脚部支柱42を主要部材とする。この脚部支柱42は、一例として図2に示すように、角パイプ状に形成され、その上下両端が、走行機体2の脚部フレーム21Aから前方側に張り出した連結部材42aによって固定されるものである。また、脚部支柱42には、裾刈機体3(駆動端部32E)の高さが種々変更できるように、複数の取付孔42bが形成されている。
そして脚部支柱42には、昇降ブラケット43が昇降動自在に取り付けられ、この昇降ブラケット43は、前記脚部支柱42に外嵌めされる昇降スリーブ43aと、前記ロッド41が着脱自在に嵌め込まれる回動スリーブ43bとを具えて成り、これらが接続体43cによって連結されて成るものである。
【0022】
以下、昇降スリーブ43aと回動スリーブ43bとについて更に詳細に説明する。昇降スリーブ43aは、例えば図示のように角筒状に形成されるものであり、これは上述した走行機体2の脚部支柱42(角パイプ状)に外嵌めされることで、裾刈機体3を昇降動自在とするものである。また、このため昇降スリーブ43aには、ネジや蝶ボルト等の固定手段43dを設けておき、一旦設定した昇降スリーブ43a(つまり裾刈機体3)の高さを維持できるようにするものである。
また回動スリーブ43bは、例えば図示のように円筒状に形成され、ここに上述した裾刈機体3のロッド41が内挿され、内側に位置する丸棒状のロッド41と、外側に位置する円筒状の回動スリーブ43bとの回転スベリによって裾刈機体3を、ほぼ一定の鉛直面内で回動自在(鉛直回動自在)とするものである。
【0023】
なお回動スリーブ43bにも、ネジや蝶ボルト等の固定手段43eを設けておき、一旦設定した裾刈機体3の姿勢(回動状態)を、ネジやボルトの締め付けによって維持することが好ましい。
また、裾刈機体3のロッド41には、回動スリーブ43bに挿入した後、ロッド41の抜け止めを図るピン等の抜け防止手段41aを設けることが好ましい。
以上述べたように、ロッド41が回動スリーブ43b内で回動自在に保持され、昇降スリーブ43aが脚部支柱42を上下動自在に取り付けられるため、結果として裾刈機体3は、駆動端部32E側が鉛直回動自在及び昇降動自在に形成されるものである。
因みに、上記昇降スリーブ43a、回動スリーブ43b、接続体43cは、いずれかを左右方向(茶畝Tの幅方向)に調整自在に形成することが可能である。
【0024】
次に、支持機構4Cすなわち刃先端部31E側における裾刈機体3での支持部材について説明する。
刃先端部31E側では、支持機構4Cとして刈刃フレーム33の上部から、側面視「く」の字状のブラケット45が取り付けられ、このブラケット45に、後述する回動ステー48が接続されるものであり、図中符号45aは、これらを接続するための取付孔である(一例として長円状に形成)。
【0025】
次に、支持機構4Dすなわち刃先端部31E側における走行機体2での支持部材について説明する。支持機構4Dは、支持機構4Cと対を成すものであり、一例として図2に示すように、走行機体2(連結フレーム21B)の前方中央部に立設されたセンターポール46と、ここに昇降動自在に取り付けられた昇降ブラケット47とを具えて成るものである。
昇降ブラケット47は、例えばセンターポール46に外嵌めされる昇降スリーブ47aを、板状のブラケット本体47bと接合して成るものであり、昇降ブラケット47(ブラケット本体47b)には、クランプネジ47c等が設けられ、これにより昇降ブラケット47をセンターポール46にネジ止めすることで、一旦、高さ調整を行った昇降ブラケット47の高さ位置(つまり裾刈機体3の刃先端部31E側の高さ)を維持・固定するものである。なお、センターポール46には、多くのメネジ状の取付孔46aを開口しておき(図3参照)、高さ位置の調整が細かく行えるようにすることが好ましい。
また、昇降ブラケット47(ブラケット本体47b)には、一対の回動ステー48が、リンク状に接続され(一例として「ハ」の字状)、これら回動ステー48の下端部に上記裾刈機体3の刃先端部31E側を支持するブラケット45が回動自在に取り付けられる。
なお一対の回動ステー48の上端、つまり昇降ブラケット47(ブラケット本体47b)との接続は、ブラケット本体47bの手前側と奥側(管理機の前方側と後方側)とに、互い違い状に接続される。
【0026】
以上述べたように、昇降ブラケット47がセンターポール46に対し上下動自在に形成され、且つ回動ステー48の両端部がブラケット45と昇降ブラケット47とに対しともに回動自在に接続されるため、結果として裾刈機体3は、刃先端部31E側も昇降動自在及び鉛直回動自在に形成されるものである。そして、トータルでは、裾刈機体3の駆動端部32E側及び刃先端部31E側との双方が、昇降動自在及び鉛直回動自在に形成されるものであり、これにより裾刈機体3(刈刃31)を様々な姿勢に設定できるものである。
なお、例えば図3に示すように、昇降ブラケット47に回動ステー48との接続孔49を高さ違いで複数形成しておけば、接続孔49の位置(高さ)を変更することでも、裾刈機体3の刃先端部31E(ブラケット45)の高さ位置を適宜調整することが可能である。因みに、図3では昇降ブラケット47と回動ステー48との接続を低い位置の接続孔49で行っており、図4では高い位置の接続孔49で接続した状態で図示している。もちろん、このような高さ違いの接続孔49は、必ずしも昇降ブラケット47に形成するのではなく、回動ステー48に形成しておいても何ら構わないものである。
また、センターポール46、脚部支柱42、連結部材42a等の部材は、フレーム21(脚部フレーム21A、連結フレーム21B)に対し着脱自在に設けることが好ましく、これは走行機体2や走行機体2上の送風機等のメンテナンス時には、これらを一旦フレーム21から取り外すことで、メンテナンス作業が行い易くなり、当該作業も確実に行えるためである。また、上記各部材をフレーム21に着脱自在とした場合には、摘採作業時に、これらの部材をフレーム21に取り付けたまま摘採作業を行っても構わないが、摘採作業のみを行う期間中は、上記各部材をフレーム21から取り外しておくことも可能である。
【0027】
本発明の裾刈機1は、以上述べた基本構造を有するものであり、以下、この裾刈機1の態様について説明する。なお、説明にあたっては、本発明の裾刈機1を剪枝機として使用した際の裾刈機体3(刈刃31)の姿勢(剪枝姿勢)と、本機を本来の裾刈機として使用した際の姿勢(裾刈姿勢)とについて説明した後、剪枝姿勢から裾刈姿勢に変更する変換態様について説明する。
【0028】
図3は、剪枝姿勢の一例を示すものであり、茶畝Tよりやや上方で刈刃31をほぼ水平に設定した姿勢(仕様)であり、言わば従来の秋番茶で芽が長い場合に長芽の頭部を刈っていた姿勢に相当する。
この場合、同図3に示すように、駆動端部32E側では昇降ブラケット43が脚部支柱42の比較的低い位置で支持され、また刃先端部31E側でも昇降ブラケット47がセンターポール46の比較的低い位置で支持される。もちろん、刈刃31をフラットに設定する上記剪枝姿勢にあっては、その高さは作業内容(目的)に応じて種々の変更が可能である。
【0029】
図4は、剪枝姿勢の他の例を示すものであり、茶畝Tの上面の弧状にほぼ沿うように、刈刃31を山形状に設定した実施例である。この場合、図3に示す剪枝姿勢に対し、駆動端部32E側では昇降ブラケット43の高さ位置をほとんど変更せず、刃先端部31E側の昇降ブラケット47の高さを幾らか上昇させるものである。もちろん、ここでは駆動端部32E及び刃先端部31Eとの双方が鉛直回動自在に支持されるため、いずれか一方を上下動させても、つじつまを合わせるように両端部が適宜回動し、刈刃31の山形姿勢を実現するものである。また、刈刃31を山形状に設定する上記剪枝姿勢にあっても、両端部の高さや角度は、作業内容に応じて種々の変更が可能である。
【0030】
図5は、裾刈姿勢の一例を示すものであり、この場合、例えば駆動端部32E側では昇降ブラケット43を脚部支柱42の最も高い位置で支持し、刃先端部31E側では、回動ステー48とブラケット45との接続を解除して下方に下げ、刈刃31の先端を茶畝Tの裾枝に幾らか張り出させるものであり、これが通常の裾刈姿勢(図8)に相当する。なお、図5では、ブラケット45との接続が断たれた回動ステー48が垂れ下がり、下端が連結フレーム21Bよりも突出するように描いたが、昇降ブラケット47を上昇させればこの状況は回避でき、回動ステー48の下端が目的の作業を阻害するおそれは全くないものである。もちろん、刈刃31を裾刈姿勢に設定する場合にあっても、駆動端部32E側の支持高さや刈刃31先端の裾枝への張出角度等は、種々の変更が可能である。
【0031】
次に、裾刈機体3(刈刃31)を剪枝姿勢から裾刈姿勢に変換する態様について説明する。
(1)変換態様1
この変換態様は、刃先端部31Eの支持を解除し、これを下向きに回動させる態様である。この場合、例えば図6に示すように、まず両端部での支持を高い位置に設定(変更)した後、刃先端部31Eの支持だけを解除して、刃先端部31Eを下方に回動させ、図5に示すような裾刈姿勢にするものである。
ここで、本変換態様にあっては、裾刈姿勢時に、裾枝方向に張り出す刈刃31の先端側を走行体22のフレーム等に固定することが好ましく、これには例えば回動ステー48に接続されていたブラケット45を一旦、刈刃フレーム33から外し、これを刈刃フレーム33のウラ側に取り付けて、裾刈姿勢をとった刈刃31の刃先端部31Eの固定を図ることが可能である。もちろん、裾枝方向に張り出した刈刃31の固定を図るブラケットとしては、必ずしも回動ステー48に接続されていたブラケット45を流用する必要はなく、別のブラケットを使っても何ら構わない。
因みに、剪枝姿勢において回動ステー48に接続されていたブラケット45は、取付孔45aが長孔状であるために、これを裾刈姿勢において走行体22のフレーム等に固定する際に使用しても(多少の取付誤差が生じても)、充分に取り付け得ると考えられる。
【0032】
(2)変換態様2
また、他の変換態様としては、剪枝姿勢において右側(操縦者から見て)にあった裾刈機体3(刈刃31)を走行機体2から一旦取り外し、裾刈姿勢においては左側に位置させるサイドチェンジ方式も可能である。この場合、もちろん剪枝姿勢において左側にあった裾刈機体3(刈刃31)は、裾刈姿勢においては右側に位置させるものである。
この方式では、例えば図6に示した状態(両端部での支持を高い位置に設定した状態)から、刃先端部31E及び可動端部32Eの支持を両方解除して、左右を交換するのが一般的と考えられる。また、この方式では、剪枝姿勢において回動ステー48に接続されていたブラケット45が、サイドチェンジによって走行体22のフレーム側に向くため、ブラケット45をそのまま刈刃フレーム33から取り外すことなく、走行体22のフレーム等との固定を図ることが可能である。
なお、図1に示す「3R」/「3L」は、本方式を採用した場合に、剪枝姿勢において右側/左側にあった裾刈機体3が、裾刈姿勢では左側/右側にサイドチェンジしたことを示すものである。
【符号の説明】
【0033】
1 裾刈機(茶園管理機)
2 走行機体
3 裾刈機体(摘採機体)
4 支持機構

2 走行機体
21 フレーム
21A 脚部フレーム
21B 連結フレーム
21C 昇降ブラケット
22 走行体
23 操縦者用シート
24 操縦桿
25 コントロールボックス
26 原動機

3 裾刈機体
3R 裾刈機体(剪枝姿勢で右)
3L 裾刈機体(剪枝姿勢で左)
31 刈刃
31E 刃先端部
32 油圧モータ
32E 駆動端部
33 刈刃フレーム(フレーム部材)

4 支持機構
4A 支持機構(駆動端部/裾刈機体)
4B 支持機構(駆動端部/走行機体)
4C 支持機構(刃先端部/裾刈機体)
4D 支持機構(刃先端部/走行機体)

4A 支持機構(駆動端部/裾刈機体)
41 ロッド
41a 抜け防止手段

4B 支持機構(駆動端部/走行機体)
42 脚部支柱
42a 連結部材
42b 取付孔
43 昇降ブラケット
43a 昇降スリーブ
43b 回動スリーブ
43c 接続体
43d 固定手段
43e 固定手段

4C 支持機構(刃先端部/裾刈機体)
45 ブラケット
45a 取付孔

4D 支持機構(刃先端部/走行機体)
46 センターポール
46a 取付孔
47 昇降ブラケット
47a 昇降スリーブ
47b ブラケット本体
47c クランプネジ
48 回動ステー
49 取付孔

T 茶畝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶畝を跨いで走行する走行機体と、
この走行機体に取り付けられ、茶株の不要な裾枝を刈り取る裾刈機体とを具え、
裾刈作業が行えるようにした装置において、
前記裾刈機体は、裾枝を刈り取る刈刃の姿勢が適宜変更できるように走行機体に取り付けられるものであり、刈刃の姿勢設定により刈り払い作業を行う剪枝機体としても兼用できるようにしたことを特徴とする、刈り払い作業も行える裾刈機。
【請求項2】
前記裾刈機体は、走行機体に対し、刈刃の両端部付近が、ともに上下動自在且つ鉛直回動自在に取り付けられることを特徴とする請求項1記載の、刈り払い作業も行える裾刈機。
【請求項3】
前記裾刈機体は、走行機体の前方側に取り付けられ、且つ裾刈機体の後部には、摘採機体など別の作業機体が走行機体に対して取り付けられることを特徴とする請求項1または2記載の、刈り払い作業も行える裾刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−200194(P2011−200194A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72474(P2010−72474)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000104375)カワサキ機工株式会社 (30)
【Fターム(参考)】