刈払機
【課題】本発明は刈払機に関し、刈刃の装着作業時に、刈刃が如何なる設置向きであっても刃受け部材から脱落するのを阻止して刈刃の装着作業が迅速かつ確実に行え、安全性を高くしようとする。
【解決手段】ギヤユニット・ケース1内に回転可能に設けられた出力軸2と、出力軸に配挿される刃受け部材4と、出力軸の下端に設けられる螺合手段S,S′により出力軸の下方部に締付、固定される刃押さえ部材7と、により挟持される刈刃8を備え、刈刃が、磁気的吸引手段9により刃受け部材に吸引、保持されて脱落が阻止される。
【解決手段】ギヤユニット・ケース1内に回転可能に設けられた出力軸2と、出力軸に配挿される刃受け部材4と、出力軸の下端に設けられる螺合手段S,S′により出力軸の下方部に締付、固定される刃押さえ部材7と、により挟持される刈刃8を備え、刈刃が、磁気的吸引手段9により刃受け部材に吸引、保持されて脱落が阻止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は刈払機に関し、草木を刈払うものであり、磁気的吸引手段を用いることにより、刈刃の装着作業時に、刈刃が如何なる設置向きであっても刃受け部材から脱落するのを阻止して刈刃の装着作業を容易かつ確実に行うことができ、安全性を高くしようとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、刈払機のような携帯型作業機では、ギヤユニット・ケース内に回転可能に刈刃を回転駆動させるための出力軸を設け、前記出力軸に配挿される刃受け金具と、前記出力軸の下端に設けられた取付ボルトおよび該取付ボルトに螺合されるナットにより前記出力軸の下方部に締付けられる刃押さえ金具と、により刈刃を挟持し、締付、固定しているのが一般的にあった。
【0003】
そして、刈刃の装着作業を行う場合には、出力軸におけるボルトに対するナットの緩締作業を容易にするために、刈払機自体を使用時とは上下逆さにし、その後、回り止め棒をギヤユニット・ケースに設けられた挿通孔内に挿入することにより、回り止め棒の先端部を刃受け金具に設けられた係止穴内に係止して刃受け金具の回り止めを行いながら、ナットによる締付作業時にギヤユニット・ケース、刃受け金具等の共回りを規制するようにされていた(例えば、特許文献参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−275926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に掲載の従来の刈払機での刈刃の装着作業では、ナットを緩めて刃押さえ金具を出力軸から取り外した後に、刈刃を出力軸から挿脱し、装着作業を行わなければならないので、再び刈刃、および刃押さえ金具を出力軸に挿入し、ナットを締付けるまでは、不安定であり、切刃は外れ易く、危険であった。
【0006】
また、特許文献1に掲載の従来の刈払機では、ツーグリップ姿態の操作杆を有する刈払機の場合に、作業場所が平坦ではないと、刈刃の装着作業を行うのに、刈払機を天地逆にすると、刈払機が不安定になり、さらに刈刃が外れ易くなる。このため、刈刃の装着作業は、刈刃が外れないように、慎重に行う必要があり、多くの時間および手間がかかるものであった。
【0007】
本発明は上記従来の欠点を解決するためになされたものであり、刈刃の装着作業時に、刈刃が如何なる設置向きに設置されても刃受け部材から脱落するのを阻止して刈刃の装着作業が迅速かつ確実に行え、安全性が高い刈払機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされ、請求項1に記載の発明は、ギヤユニット・ケース内に回転可能に設けられた出力軸と、前記出力軸に配挿される刃受け部材と、前記出力軸の下端に設けられる螺合手段により前記出力軸の下方部に締付、固定される刃押さえ部材と、により挟持される刈刃を備えた刈払機において、
前記刈刃が、磁気的吸引手段により前記刃受け部材に吸引、保持されて脱落が阻止されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記磁気的吸引手段が、前記刃受け部材の下面に取付けられる第1の磁石であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記磁気的吸引手段が、前記刃受け部材を着磁させて形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項において、前記磁気的吸引手段が、前記刃押さえ部材の上面に前記刃受け部材に対向して取付けられる第3の磁石であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1,2または4の何れか1項において、前記第1の磁石および前記第3の磁石が、前記出力軸を中心に底面同心円的にもしくは平面同心的に複数個が配置されるか、または底面環状もしくは平面環状に形成されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか1の請求項において、前記出力軸が嵌挿可能となる前記刃受け部材の中心部に設けられているボス部の外周に、第2の磁石が配置され、前記第2の磁石が、前記ボス部の上端が接しているころがり軸受手段に対して前記刃受け部材を吸引、保持させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか1の請求項において、前記磁気的吸引手段としての前記第1の磁石、前記第2の磁石、または前記第3の磁石が、ネオジウム磁石により形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れか1の請求項において、前記螺合手段が、前記出力軸の下端に設けられた取付ボルトと、該取付ボルトに螺合されるナットとにより構成されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項9に記載の発明は、請求項1〜8の何れか1の請求項において、前記螺合手段が、前記出力軸の下端に設けられた雌ねじ孔と、該雌ねじ孔内に先端雌ねじ部が螺入される止ボルトとにより構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、ギヤユニット・ケース内に回転可能に設けられた出力軸と、前記出力軸に配挿される刃受け部材と、前記出力軸の下端に設けられる螺合手段により前記出力軸の下方部に締付、固定される刃押さえ部材と、により挟持される刈刃を備えた刈払機において、前記刈刃が、磁気的吸引手段により前記刃受け部材に吸引、保持されて脱落が阻止されるので、刈刃の装着作業時に、刈刃が如何なる設置向きであっても刃受け部材から脱落するのを阻止され、刈刃の装着作業を迅速かつ確実に行うことができ、安全性は高くなる。
【0018】
また、本発明の請求項2に記載の発明によれば、請求項1において、前記磁気的吸引手段が、前記刃受け部材の下面に取付けられる第1の磁石であるので、刈刃の装着作業時に、刈刃が如何なる設置向きであっても、刈刃は刃受け部材の下面に取付けられる第1の磁石に吸引、保持されるため、刃受け部材から脱落するのを阻止され、刈刃の装着作業を迅速かつ確実に行うことができ、安全性は高くなる。
【0019】
また、本発明の請求項3に記載の発明によれば、請求項1において、前記磁気的吸引手段が、前記刃受け部材を着磁させて形成されているので、刈刃が如何なる設置向きであっても、刈刃は刃受け部材に吸引、保持されるため、刃受け部材から脱落するのを阻止され、刈刃の装着作業を迅速かつ確実に行うことができ、安全性は高くなる。
【0020】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項において、前記磁気的吸引手段が、前記刃押さえ部材の上面に前記刃受け部材に対向して取付けられる第3の磁石であるので、刈刃の装着作業時に、前記刃受け部材の下面に取付けられる第1の磁石と、前記刃押さえ部材の上面に前記刃受け部材に対向して取付けられる第3の磁石とにより刈刃は吸引、保持されるため、刈刃が如何なる設置位置であっても、脱落するのを阻止され、刈刃の装着作業を迅速かつ確実に行うことができ、安全性は高くなる。
【0021】
また、本発明の請求項5に記載の発明によれば、請求項1,2,または4の何れか1項において、前記第1の磁石および前記第3の磁石が、前記出力軸を中心に底面同心円的もしくは平面同心円的に複数個が配置されるか、または底面環状もしくは平面環状に形成されるので、刈刃の装着作業時に、刃受け部材の下面に、複数個が前記出力軸を中心に底面同心円的に配置されるか、または底面環状に形成される第1の磁石と、刃押さえ部材の上面に前記刃受け部材に対向して複数個が前記出力軸を中心に平面同心円的に配置されるか、又は平面環状に形成される第3の磁石とにより刈刃は、吸引、保持されるため、刈刃が如何なる設置向きであっても、刃受け部材から脱落するのを阻止され、刈刃の装着作業を迅速かつ確実に行うことができ、安全性は高くなる。
【0022】
また、本発明の請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜5の何れか1の請求項において、前記出力軸が嵌挿可能となる前記刃受け部材の中心部に設けられているボス部の外周に、第2の磁石が配置され、前記第2の磁石が、前記ボス部の上端が接しているころがり軸受手段に対して前記刃受け部材を吸引、保持させるので、刃受け部材は第2の磁石に吸引、保持されることにより、ころがり軸受手段に取付けられ、脱落が阻止される。
【0023】
また、本発明の請求項7に記載の発明によれば、請求項1〜6の何れか1の請求項において、前記磁気的吸引手段としての前記第1の磁石、前記第2の磁石、または前記第3の磁石が、ネオジウム磁石により形成されているので、第1の磁石、第2の磁石、または第3の磁石は強力な磁気的吸引力が発揮され、刈刃は第1の磁石、または第3の磁石の吸引、保持により刃受け部材から脱落するのを阻止され、刈刃の装着作業を迅速かつ確実に行うことができ、安全性は高くなる。また、第2の磁石が、ボス部の上端が接しているころがり軸受手段に対して刃受け部材を吸引保持させるので、刃受け部材は第2の磁石に吸引、保持されることにより、ころがり軸受手段に取付けられ、脱落が阻止される。
【0024】
また、本発明の請求項8に記載の発明によれば、請求項1〜7の何れか1の請求項において、前記螺合手段が、前記出力軸の下端に設けられた取付ボルトと、該取付ボルトに螺合されるナットとにより構成されるので、刈刃の装着作業時に、刈刃が如何なる設置向きであっても刃受け部材を介して出力軸に刈刃を構造堅牢に取り付けることができ、安全性は高くなる。
【0025】
また、本発明の請求項9に記載の発明は、請求項1〜8の何れか1の請求項において、前記螺合手段が、前記出力軸の下端に設けられた雌ねじ孔と、該雌ねじ孔内に先端雄ねじ部が螺入される止ボルトとにより構成されるので、刈刃の装着作業時に、刈刃が如何なる設置向きであっても刃受け部材を介して出力軸に刈刃を構造堅牢に取り付けることができ、安全性は高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は本発明の刈払機の実施形態1を示す拡大断面図である。
【図2】図2は同じくツーグリップ姿態の操作杆の刈払機を示す斜視図である。
【図3】図3は同じくハンドル姿態の操作杆の刈払機を示す斜視図である。
【図4】図4は同じく本実施例を構成する刃受け部材を示す拡大底面図である。
【図5】図5は同じく拡大断面図である。
【図6】図6は同じく本実施例を構成する刃受け部材の変形例を示す拡大底面図である。
【図7】図7は同じく拡大断面図である。
【図8】図8は本発明の刈払機の実施形態2を示す拡大断面図である。
【図9】図9は本発明の刈払機の実施形態3を示す拡大断面図である。
【図10】図10は本発明の刈払機の実施形態4を示し、この実施形態4では刈刃を出力軸に締付、固定するための螺合手段の他例を表わす拡大断面図である。
【図11】図11は本発明の刈払機の実施形態5を示す拡大断面図である。
【図12】図12は本実施形態5を構成する刃押さえ部材を示す平面図である。
【図13】図13は同じく刃押さえ部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に従って本発明の実施の最良の形態により、本発明の詳細を説明する。
【0028】
<実施形態1>
本発明の実施形態1は、ギヤユニット・ケース1内に回転可能に設けられた出力軸2と、前記出力軸2に配挿される刃受け部材4と、前記出力軸2の下端に設けた螺合手段Sとして取付ボルト5および該取付ボルト5に螺合されるナット6により前記出力軸2の下方部に締付、固定される刃押さえ部材7と、により挟持される刈刃8を備えた刈払機である点は特許文献1に掲載の従来の刈払機と同様の構成、作用である。
【0029】
しかしながら、本実施形態1では、前記刈刃8が、前記出力軸2の下方に外嵌するクリップ3により出力軸2に止着された前記刃受け部材4に磁気的吸引手段9を取付け、この磁気的吸引手段9により前記刃受け部材4に吸引、保持されて脱落が阻止される。4aは後記周り止め棒11の先端部が係止される係止穴であり、この係止穴4aは前記刃受け部材4の上面に、ギヤユニット・ケース1に設けられた挿通孔1aに合致可能に設けられる。
【0030】
前記刃受け部材4は、本実施形態1では、金属製の刃受け金具が用いられることにより刈刃8に対する前記磁気的吸引手段9の磁気的吸引をロスなく効率的になすようにしているが、刃受け部材4はこれに限ることなく、例えば合成樹脂により形成されるものであってよい。
【0031】
また、前記刃押さえ部材7は、本実施形態1では、金属製の刃押さえ金具が用いられているが、刃押さえ部材7は金属に限ることなく、例えば合成樹脂により形成されるものであってよい。
【0032】
前記刈刃8は、例えばSKS−5のような鋼材を用いて形成され、その大きさは例えば直径φが例えば230mm、255mmの形式のものがある。
【0033】
前記磁気的吸引手段9が、図示する本実施形態1では、前記刃受け部材4の下面に取付けられる第1の磁石9Aである。この第1の磁石9Aは、本実施形態1では図4に示すように、複数個、例えば3個が前記出力軸2を中心として前記刃受け部材4の下面に底面等角度θ度に設ける取付凹部4b内に嵌入されて接着剤を用いて接着されることにより、3個の第1の磁石9Aは底面同心円的に配置される。なお、第1の磁石9Aは、接着剤を用いずに取付凹部4b内に嵌着されてもよい。前記第1の磁石9Aは、例えばネオジウム磁石により形成され、図示では外形が円柱状のものが示されているが、この第1の磁石9Aの外形は代表的な例示であり、これに限定されるものではなく、例えば三角柱、四角柱、五角柱、六角柱、八角柱のような多角柱であるほか、台形、星形に形成されてもよい。また、磁石9Aは、図6、および図7に示す変形例のように、底面環状に形成されたものでもよい。このように、底面環状の第1の磁石9Aを用いた場合には、3個の円柱状の磁石9Aを用いた場合よりも設置面積が増大されるので、磁石9Aの磁気的吸引力を効率良く発揮するようになる。そして、第1の磁石9Aを前述のように、ネオジウム磁石により形成したのは、例示であり、これに限らず、例えば高透磁率合金よりなるパーマロイ、MK鋼等を用いて形成されるものであってもよい。
【0034】
なお、図中、Aは刈払機、10はツーグリップ姿態の操作杆、10′はハンドル姿態の操作杆、11は回り止め棒である。また、12はベベルギヤ形式の受動歯車、13は軸受材、14は前記ギヤユニット・ケース1の下面に取り付けられる断面円錐台形状のスカート部材、Eはエンジンを示す。
【0035】
本実施形態1は以上の構成からなり、刈刃8の装着作業を行う場合には、先ず、出力軸2における取付ボルト5に対してナット6を例えばスパナ、またはラチエット等の工具を用いて螺退させて緩め、取付ボルト5からナット6、および刃押さえ部材7を取り去る。
【0036】
この際、回り止め棒11をギヤユニット・ケース1に設けられた挿通孔1a内に挿入することにより、回り止め棒11の先端部を刃受け部材4に設けられた係止穴4a内に係止して刃受け部材4の回り止めを行いながら、ナット6による緩め作業時のギヤユニット・ケース1、刃受け部材4,刃押さえ部材7等に対する共回りを規制する。
【0037】
しかしながら、本実施形態1は以上の構成からなり、ギヤユニット・ケース1内には、前記刃受け部材4の下面に磁気的吸引手段9としての第1の円柱状の磁石9Aが複数個、例えば3個が出力軸2を中心に底面同心円的に配列されているので、上記特許文献1に掲載の刈刃の装着作業では、ナットを緩めて刃押さえ金具を出力軸から取り外してから、再び刈刃、および刃押さえ金具を出力軸に挿入し、ナットを締付けるまでは、不安定であり、刈刃は外れ易く、危険であるのとは異なり、刈刃8が上下方向、左右方向、および前後方向の如何なる設置向きであっても、刈刃8は刃受け部材4の下面に同心円的に取付けられる第1の磁石9Aに吸引、保持されるため、刃受け部材4から脱落されるのが阻止される。このため、刈払機Aを上下逆さまにして地面に置く必要はなく、刈刃8の装着作業を省略化することができる。そして、図2に示すように、ツーグリップ姿態の操作杆10の刈払機Aであっても、上下逆さまにして地面に置かないで済むから、慎重さを要さず、安定に刈刃8の装着作業を行うことができる。
【0038】
この際、第1の磁石9Aは、本実施形態1では前記出力軸2を中心として例えばネオジウム磁石により形成された図4に示すような3個の第1の磁石9Aが、前記刃受け部材4の下面に底面等角度θ度、即ち、底面120度毎に設ける取付凹部4b内に、嵌入されて接着剤を用いて接着されることにより、底面同心円的に配置されているので、前記刈刃8は、例えばSKS−5のような鋼材を用いて形成されて、その大きさは例えば直径φが例えば230mm、255mmの形式の場合にも、刃受け部材4の底面に同心円的に配置された3個の第1の磁石9Aにより、刃受け部材4に充分な磁気的吸引力により吸引・保持することができる。
【0039】
試験によると、直径φが上記のように、例えば230mmもの長さの刈刃8の重量は300〜400gであり、ネオジウム磁石により形成された3個の第1の磁石9Aを刃受け部材4の底面に同心円的に配置した本実施形態1の刈払機では、第1の磁石9Aが前記重量の3倍もの磁気的吸引力を発揮して吸引・保持される。また、刈刃8の直径φが例えば255mmのものの重量は400〜500gであり、ネオジウム磁石により図6、および図7に示すような底面環状に形成された本実施形態1の変形例では、第1の磁石9Aはその4〜5倍もの磁気的吸引力により刈刃8を確実に吸引・保持できることがわかった。
【0040】
また、第1の磁石9Aは、図6、および図7に示す変形例のように、底面環状に形成されたものを用いた場合には、3個の円柱状の磁石9Aを用いた場合よりも磁石9の設置面積が増大されることにより、磁石9Aの磁気的吸引力が増し、安定に保持できる。
【0041】
そして、第1の磁石9Aに対する古い刈刃8の磁気的な吸引、保持を脱してから、新しい刈刃8を出力軸2にクリップ3により止着されて脱落が阻止されている刃受け部材4の第1の磁石9Aに吸引、保持させ、図において刈刃8の下面から出力軸2の取付ボルト5に刃押さえ部材7を嵌入し、取付ボルト5にナット6を螺合することにより、刈刃8を刃受け部材4と刃押さえ部材7との間に挟持し、締付、固定し、刈刃8の装着作業を完了する。上記のような手順操作により、刈刃8の装着作業を迅速かつ確実に行うことができ、安全性は高くなる。
【0042】
<実施形態2>
図8は本発明の刈払機Aの実施形態2である。この実施形態2では、前記磁気的吸引手段9が、前記刃受け部材4を着磁させることにより第1の磁石9Aが形成されている。
【0043】
そして、本実施形態2では、磁気的吸引手段9が、前記刃受け部材4を着磁させて形成されているので、第1の磁石9Aを刃受け部材4とは個別に設けられている前記実施形態1とは異なり、部品点数が前記実施形態1より省略化され、刈刃8が如何なる設置向きであっても、刈刃8は刃受け部材4に吸引、保持されるため、刃受け部材4から脱落するのが阻止され、刈刃8の装着作業を迅速かつ確実に行うことができ、安全性は高くなる点が前記実施形態1と異なる構成、作用であるほか、前記実施形態1と同様の構成、作用である。
【0044】
<実施形態3>
図9は本発明の刈払機の実施形態3である。この実施形態3では、前記出力軸2が嵌挿可能となる前記刃受け部材4の中心部に設けられている略円筒状のボス部4cの外周に、第2の磁石9Bが配置され、前記第2の磁石9Bが、前記ボス部4cの上端4c1が接しているころがり軸受手段20に対して前記刃受け部材4を吸引保持させている。
【0045】
そして、本実施形態3では、前記第2の磁石9Bが、ネオジウム磁石により形成されているので、前記第2の磁石9Bは強力な磁気的吸引力が発揮され、この第2の磁石9Bが、ボス部4cの上端4c1が接しているころがり軸受手段20に対して刃受け部材4を吸引保持させることにより、刃受け部材4は第2の磁石9Bにより、ころがり軸受手段20に吸引・保持され、脱落が阻止される点が前記実施形態1,2と異なる構成、作用であるほかは前記実施形態1,2と同様の構成、作用である。なお、磁石9Bは、環状に一体的に形成されるものであっても、複数個の個別のものであってもよい。また、前記ころがり軸受手段20としては、図示ではボールベアリングが使用される。
【0046】
<実施形態4>
図10は本発明の刈払機の実施形態4である。この実施形態4では、刈刃8を刃受け部材4と、刃押さえ部材7とで挟持し、締付、固定するための前記螺合手段S′が、前記実施形態1では出力軸2の下端に設けられた取付ボルト5と、該取付ボルト5に螺合されるナット6とにより形成されているのとは異なり、前記出力軸2の下端に設けられた雌ねじ孔6′Aと、該雌ねじ孔6′A内に先端雄ねじ部5′Aが螺入される止ボルト5′とにより構成されることにより、刈刃8の装着作業時に、刈刃8が如何なる設置向きであっても刃受け部材4を介して刈刃8を螺合手段S′により構造堅牢に取り付けることができ、安全性は高くなる。そして、本実施形態4では、前記雌ねじ孔6′Aと、該雌ねじ孔6′A内に螺入される止ボルト5′の先端雌ねじ部5′Aとの設置長さを充分に確保することにより刈刃8に対して大きな締付力が得られるようにした点が前記実施形態1と異なる構成、作用であるほかは、前記実施形態1と同様の構成、作用である。
【0047】
<実施形態5>
図11乃至図13は本発明の刈払機の実施形態5である。
【0048】
前記実施形態1では、図4に示すように、第1の磁石9Aを複数個、例えば3個が出力軸2を中心として刃受け部材4の下面に底面等角度θに設けた取付凹部4b内に嵌入されて接着剤を用いて接着した3個の第1の磁石9Aが底面同心円的に配置されることにより、刈刃8の装着作業時に、ナット6を緩めて刃押さえ部材7を外した場合に、刈刃8を第1の磁石9Aに吸引、保持させて不用意に外れにくくしているが、本実施形態5では、刃受け部材4に対向する刃押え部材7の対向面に第3の磁石9Cを複数個、例えば2個設ける構成により、刈刃8の装着作業時に刃受け部材4の下面に設けた第1の磁石9Aに刈刃8を吸引、保持させて不用意な刈刃8の外れを無くすと共に、反対側(図11において下方から)は刃受け部材4に対向する刃押え部材7の対向する上面に2個設けられた第3の磁石9Cの吸引、保持により刈刃8が上下方向、左右方向、および前後方向の如何なる設置向きになっても不用意に外れることなく、刈刃8の装着が容易かつ確実に行え、また、第3の磁石9Cにより、刃押さえ部材7が刈刃8を介して刃受け部材4に吸引、保持されることにより出力軸2に対するナット6を緩め、再びナット6を螺合して刃押さえ部材7を取付ける場合の刈刃8の脱落を防止するようにした点が前記実施形態1とは異なる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、刈刃の装着作業時に、刈刃が如何なる設置向きであっても刃受け部材から脱落するのを阻止して刈刃の装着作業が迅速かつ確実に行え、安全性が高いという用途・機能に適する。
【符号の説明】
【0050】
1 ギヤユニット・ケース
2 出力軸
3 クリップ
4 刃受け部材
5 取付ボルト
6 ナット
7 刃押さえ部材
8 刈刃
9 磁気的吸引手段
9A 第1の磁石
9B 第2の磁石
9C 第3の磁石
11 周り止め棒
20 ころがり軸受手段
S 螺合手段
S′ 螺合手段
【技術分野】
【0001】
本発明は刈払機に関し、草木を刈払うものであり、磁気的吸引手段を用いることにより、刈刃の装着作業時に、刈刃が如何なる設置向きであっても刃受け部材から脱落するのを阻止して刈刃の装着作業を容易かつ確実に行うことができ、安全性を高くしようとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、刈払機のような携帯型作業機では、ギヤユニット・ケース内に回転可能に刈刃を回転駆動させるための出力軸を設け、前記出力軸に配挿される刃受け金具と、前記出力軸の下端に設けられた取付ボルトおよび該取付ボルトに螺合されるナットにより前記出力軸の下方部に締付けられる刃押さえ金具と、により刈刃を挟持し、締付、固定しているのが一般的にあった。
【0003】
そして、刈刃の装着作業を行う場合には、出力軸におけるボルトに対するナットの緩締作業を容易にするために、刈払機自体を使用時とは上下逆さにし、その後、回り止め棒をギヤユニット・ケースに設けられた挿通孔内に挿入することにより、回り止め棒の先端部を刃受け金具に設けられた係止穴内に係止して刃受け金具の回り止めを行いながら、ナットによる締付作業時にギヤユニット・ケース、刃受け金具等の共回りを規制するようにされていた(例えば、特許文献参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−275926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に掲載の従来の刈払機での刈刃の装着作業では、ナットを緩めて刃押さえ金具を出力軸から取り外した後に、刈刃を出力軸から挿脱し、装着作業を行わなければならないので、再び刈刃、および刃押さえ金具を出力軸に挿入し、ナットを締付けるまでは、不安定であり、切刃は外れ易く、危険であった。
【0006】
また、特許文献1に掲載の従来の刈払機では、ツーグリップ姿態の操作杆を有する刈払機の場合に、作業場所が平坦ではないと、刈刃の装着作業を行うのに、刈払機を天地逆にすると、刈払機が不安定になり、さらに刈刃が外れ易くなる。このため、刈刃の装着作業は、刈刃が外れないように、慎重に行う必要があり、多くの時間および手間がかかるものであった。
【0007】
本発明は上記従来の欠点を解決するためになされたものであり、刈刃の装着作業時に、刈刃が如何なる設置向きに設置されても刃受け部材から脱落するのを阻止して刈刃の装着作業が迅速かつ確実に行え、安全性が高い刈払機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされ、請求項1に記載の発明は、ギヤユニット・ケース内に回転可能に設けられた出力軸と、前記出力軸に配挿される刃受け部材と、前記出力軸の下端に設けられる螺合手段により前記出力軸の下方部に締付、固定される刃押さえ部材と、により挟持される刈刃を備えた刈払機において、
前記刈刃が、磁気的吸引手段により前記刃受け部材に吸引、保持されて脱落が阻止されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記磁気的吸引手段が、前記刃受け部材の下面に取付けられる第1の磁石であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記磁気的吸引手段が、前記刃受け部材を着磁させて形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項において、前記磁気的吸引手段が、前記刃押さえ部材の上面に前記刃受け部材に対向して取付けられる第3の磁石であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1,2または4の何れか1項において、前記第1の磁石および前記第3の磁石が、前記出力軸を中心に底面同心円的にもしくは平面同心的に複数個が配置されるか、または底面環状もしくは平面環状に形成されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか1の請求項において、前記出力軸が嵌挿可能となる前記刃受け部材の中心部に設けられているボス部の外周に、第2の磁石が配置され、前記第2の磁石が、前記ボス部の上端が接しているころがり軸受手段に対して前記刃受け部材を吸引、保持させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか1の請求項において、前記磁気的吸引手段としての前記第1の磁石、前記第2の磁石、または前記第3の磁石が、ネオジウム磁石により形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れか1の請求項において、前記螺合手段が、前記出力軸の下端に設けられた取付ボルトと、該取付ボルトに螺合されるナットとにより構成されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項9に記載の発明は、請求項1〜8の何れか1の請求項において、前記螺合手段が、前記出力軸の下端に設けられた雌ねじ孔と、該雌ねじ孔内に先端雌ねじ部が螺入される止ボルトとにより構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、ギヤユニット・ケース内に回転可能に設けられた出力軸と、前記出力軸に配挿される刃受け部材と、前記出力軸の下端に設けられる螺合手段により前記出力軸の下方部に締付、固定される刃押さえ部材と、により挟持される刈刃を備えた刈払機において、前記刈刃が、磁気的吸引手段により前記刃受け部材に吸引、保持されて脱落が阻止されるので、刈刃の装着作業時に、刈刃が如何なる設置向きであっても刃受け部材から脱落するのを阻止され、刈刃の装着作業を迅速かつ確実に行うことができ、安全性は高くなる。
【0018】
また、本発明の請求項2に記載の発明によれば、請求項1において、前記磁気的吸引手段が、前記刃受け部材の下面に取付けられる第1の磁石であるので、刈刃の装着作業時に、刈刃が如何なる設置向きであっても、刈刃は刃受け部材の下面に取付けられる第1の磁石に吸引、保持されるため、刃受け部材から脱落するのを阻止され、刈刃の装着作業を迅速かつ確実に行うことができ、安全性は高くなる。
【0019】
また、本発明の請求項3に記載の発明によれば、請求項1において、前記磁気的吸引手段が、前記刃受け部材を着磁させて形成されているので、刈刃が如何なる設置向きであっても、刈刃は刃受け部材に吸引、保持されるため、刃受け部材から脱落するのを阻止され、刈刃の装着作業を迅速かつ確実に行うことができ、安全性は高くなる。
【0020】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項において、前記磁気的吸引手段が、前記刃押さえ部材の上面に前記刃受け部材に対向して取付けられる第3の磁石であるので、刈刃の装着作業時に、前記刃受け部材の下面に取付けられる第1の磁石と、前記刃押さえ部材の上面に前記刃受け部材に対向して取付けられる第3の磁石とにより刈刃は吸引、保持されるため、刈刃が如何なる設置位置であっても、脱落するのを阻止され、刈刃の装着作業を迅速かつ確実に行うことができ、安全性は高くなる。
【0021】
また、本発明の請求項5に記載の発明によれば、請求項1,2,または4の何れか1項において、前記第1の磁石および前記第3の磁石が、前記出力軸を中心に底面同心円的もしくは平面同心円的に複数個が配置されるか、または底面環状もしくは平面環状に形成されるので、刈刃の装着作業時に、刃受け部材の下面に、複数個が前記出力軸を中心に底面同心円的に配置されるか、または底面環状に形成される第1の磁石と、刃押さえ部材の上面に前記刃受け部材に対向して複数個が前記出力軸を中心に平面同心円的に配置されるか、又は平面環状に形成される第3の磁石とにより刈刃は、吸引、保持されるため、刈刃が如何なる設置向きであっても、刃受け部材から脱落するのを阻止され、刈刃の装着作業を迅速かつ確実に行うことができ、安全性は高くなる。
【0022】
また、本発明の請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜5の何れか1の請求項において、前記出力軸が嵌挿可能となる前記刃受け部材の中心部に設けられているボス部の外周に、第2の磁石が配置され、前記第2の磁石が、前記ボス部の上端が接しているころがり軸受手段に対して前記刃受け部材を吸引、保持させるので、刃受け部材は第2の磁石に吸引、保持されることにより、ころがり軸受手段に取付けられ、脱落が阻止される。
【0023】
また、本発明の請求項7に記載の発明によれば、請求項1〜6の何れか1の請求項において、前記磁気的吸引手段としての前記第1の磁石、前記第2の磁石、または前記第3の磁石が、ネオジウム磁石により形成されているので、第1の磁石、第2の磁石、または第3の磁石は強力な磁気的吸引力が発揮され、刈刃は第1の磁石、または第3の磁石の吸引、保持により刃受け部材から脱落するのを阻止され、刈刃の装着作業を迅速かつ確実に行うことができ、安全性は高くなる。また、第2の磁石が、ボス部の上端が接しているころがり軸受手段に対して刃受け部材を吸引保持させるので、刃受け部材は第2の磁石に吸引、保持されることにより、ころがり軸受手段に取付けられ、脱落が阻止される。
【0024】
また、本発明の請求項8に記載の発明によれば、請求項1〜7の何れか1の請求項において、前記螺合手段が、前記出力軸の下端に設けられた取付ボルトと、該取付ボルトに螺合されるナットとにより構成されるので、刈刃の装着作業時に、刈刃が如何なる設置向きであっても刃受け部材を介して出力軸に刈刃を構造堅牢に取り付けることができ、安全性は高くなる。
【0025】
また、本発明の請求項9に記載の発明は、請求項1〜8の何れか1の請求項において、前記螺合手段が、前記出力軸の下端に設けられた雌ねじ孔と、該雌ねじ孔内に先端雄ねじ部が螺入される止ボルトとにより構成されるので、刈刃の装着作業時に、刈刃が如何なる設置向きであっても刃受け部材を介して出力軸に刈刃を構造堅牢に取り付けることができ、安全性は高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は本発明の刈払機の実施形態1を示す拡大断面図である。
【図2】図2は同じくツーグリップ姿態の操作杆の刈払機を示す斜視図である。
【図3】図3は同じくハンドル姿態の操作杆の刈払機を示す斜視図である。
【図4】図4は同じく本実施例を構成する刃受け部材を示す拡大底面図である。
【図5】図5は同じく拡大断面図である。
【図6】図6は同じく本実施例を構成する刃受け部材の変形例を示す拡大底面図である。
【図7】図7は同じく拡大断面図である。
【図8】図8は本発明の刈払機の実施形態2を示す拡大断面図である。
【図9】図9は本発明の刈払機の実施形態3を示す拡大断面図である。
【図10】図10は本発明の刈払機の実施形態4を示し、この実施形態4では刈刃を出力軸に締付、固定するための螺合手段の他例を表わす拡大断面図である。
【図11】図11は本発明の刈払機の実施形態5を示す拡大断面図である。
【図12】図12は本実施形態5を構成する刃押さえ部材を示す平面図である。
【図13】図13は同じく刃押さえ部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に従って本発明の実施の最良の形態により、本発明の詳細を説明する。
【0028】
<実施形態1>
本発明の実施形態1は、ギヤユニット・ケース1内に回転可能に設けられた出力軸2と、前記出力軸2に配挿される刃受け部材4と、前記出力軸2の下端に設けた螺合手段Sとして取付ボルト5および該取付ボルト5に螺合されるナット6により前記出力軸2の下方部に締付、固定される刃押さえ部材7と、により挟持される刈刃8を備えた刈払機である点は特許文献1に掲載の従来の刈払機と同様の構成、作用である。
【0029】
しかしながら、本実施形態1では、前記刈刃8が、前記出力軸2の下方に外嵌するクリップ3により出力軸2に止着された前記刃受け部材4に磁気的吸引手段9を取付け、この磁気的吸引手段9により前記刃受け部材4に吸引、保持されて脱落が阻止される。4aは後記周り止め棒11の先端部が係止される係止穴であり、この係止穴4aは前記刃受け部材4の上面に、ギヤユニット・ケース1に設けられた挿通孔1aに合致可能に設けられる。
【0030】
前記刃受け部材4は、本実施形態1では、金属製の刃受け金具が用いられることにより刈刃8に対する前記磁気的吸引手段9の磁気的吸引をロスなく効率的になすようにしているが、刃受け部材4はこれに限ることなく、例えば合成樹脂により形成されるものであってよい。
【0031】
また、前記刃押さえ部材7は、本実施形態1では、金属製の刃押さえ金具が用いられているが、刃押さえ部材7は金属に限ることなく、例えば合成樹脂により形成されるものであってよい。
【0032】
前記刈刃8は、例えばSKS−5のような鋼材を用いて形成され、その大きさは例えば直径φが例えば230mm、255mmの形式のものがある。
【0033】
前記磁気的吸引手段9が、図示する本実施形態1では、前記刃受け部材4の下面に取付けられる第1の磁石9Aである。この第1の磁石9Aは、本実施形態1では図4に示すように、複数個、例えば3個が前記出力軸2を中心として前記刃受け部材4の下面に底面等角度θ度に設ける取付凹部4b内に嵌入されて接着剤を用いて接着されることにより、3個の第1の磁石9Aは底面同心円的に配置される。なお、第1の磁石9Aは、接着剤を用いずに取付凹部4b内に嵌着されてもよい。前記第1の磁石9Aは、例えばネオジウム磁石により形成され、図示では外形が円柱状のものが示されているが、この第1の磁石9Aの外形は代表的な例示であり、これに限定されるものではなく、例えば三角柱、四角柱、五角柱、六角柱、八角柱のような多角柱であるほか、台形、星形に形成されてもよい。また、磁石9Aは、図6、および図7に示す変形例のように、底面環状に形成されたものでもよい。このように、底面環状の第1の磁石9Aを用いた場合には、3個の円柱状の磁石9Aを用いた場合よりも設置面積が増大されるので、磁石9Aの磁気的吸引力を効率良く発揮するようになる。そして、第1の磁石9Aを前述のように、ネオジウム磁石により形成したのは、例示であり、これに限らず、例えば高透磁率合金よりなるパーマロイ、MK鋼等を用いて形成されるものであってもよい。
【0034】
なお、図中、Aは刈払機、10はツーグリップ姿態の操作杆、10′はハンドル姿態の操作杆、11は回り止め棒である。また、12はベベルギヤ形式の受動歯車、13は軸受材、14は前記ギヤユニット・ケース1の下面に取り付けられる断面円錐台形状のスカート部材、Eはエンジンを示す。
【0035】
本実施形態1は以上の構成からなり、刈刃8の装着作業を行う場合には、先ず、出力軸2における取付ボルト5に対してナット6を例えばスパナ、またはラチエット等の工具を用いて螺退させて緩め、取付ボルト5からナット6、および刃押さえ部材7を取り去る。
【0036】
この際、回り止め棒11をギヤユニット・ケース1に設けられた挿通孔1a内に挿入することにより、回り止め棒11の先端部を刃受け部材4に設けられた係止穴4a内に係止して刃受け部材4の回り止めを行いながら、ナット6による緩め作業時のギヤユニット・ケース1、刃受け部材4,刃押さえ部材7等に対する共回りを規制する。
【0037】
しかしながら、本実施形態1は以上の構成からなり、ギヤユニット・ケース1内には、前記刃受け部材4の下面に磁気的吸引手段9としての第1の円柱状の磁石9Aが複数個、例えば3個が出力軸2を中心に底面同心円的に配列されているので、上記特許文献1に掲載の刈刃の装着作業では、ナットを緩めて刃押さえ金具を出力軸から取り外してから、再び刈刃、および刃押さえ金具を出力軸に挿入し、ナットを締付けるまでは、不安定であり、刈刃は外れ易く、危険であるのとは異なり、刈刃8が上下方向、左右方向、および前後方向の如何なる設置向きであっても、刈刃8は刃受け部材4の下面に同心円的に取付けられる第1の磁石9Aに吸引、保持されるため、刃受け部材4から脱落されるのが阻止される。このため、刈払機Aを上下逆さまにして地面に置く必要はなく、刈刃8の装着作業を省略化することができる。そして、図2に示すように、ツーグリップ姿態の操作杆10の刈払機Aであっても、上下逆さまにして地面に置かないで済むから、慎重さを要さず、安定に刈刃8の装着作業を行うことができる。
【0038】
この際、第1の磁石9Aは、本実施形態1では前記出力軸2を中心として例えばネオジウム磁石により形成された図4に示すような3個の第1の磁石9Aが、前記刃受け部材4の下面に底面等角度θ度、即ち、底面120度毎に設ける取付凹部4b内に、嵌入されて接着剤を用いて接着されることにより、底面同心円的に配置されているので、前記刈刃8は、例えばSKS−5のような鋼材を用いて形成されて、その大きさは例えば直径φが例えば230mm、255mmの形式の場合にも、刃受け部材4の底面に同心円的に配置された3個の第1の磁石9Aにより、刃受け部材4に充分な磁気的吸引力により吸引・保持することができる。
【0039】
試験によると、直径φが上記のように、例えば230mmもの長さの刈刃8の重量は300〜400gであり、ネオジウム磁石により形成された3個の第1の磁石9Aを刃受け部材4の底面に同心円的に配置した本実施形態1の刈払機では、第1の磁石9Aが前記重量の3倍もの磁気的吸引力を発揮して吸引・保持される。また、刈刃8の直径φが例えば255mmのものの重量は400〜500gであり、ネオジウム磁石により図6、および図7に示すような底面環状に形成された本実施形態1の変形例では、第1の磁石9Aはその4〜5倍もの磁気的吸引力により刈刃8を確実に吸引・保持できることがわかった。
【0040】
また、第1の磁石9Aは、図6、および図7に示す変形例のように、底面環状に形成されたものを用いた場合には、3個の円柱状の磁石9Aを用いた場合よりも磁石9の設置面積が増大されることにより、磁石9Aの磁気的吸引力が増し、安定に保持できる。
【0041】
そして、第1の磁石9Aに対する古い刈刃8の磁気的な吸引、保持を脱してから、新しい刈刃8を出力軸2にクリップ3により止着されて脱落が阻止されている刃受け部材4の第1の磁石9Aに吸引、保持させ、図において刈刃8の下面から出力軸2の取付ボルト5に刃押さえ部材7を嵌入し、取付ボルト5にナット6を螺合することにより、刈刃8を刃受け部材4と刃押さえ部材7との間に挟持し、締付、固定し、刈刃8の装着作業を完了する。上記のような手順操作により、刈刃8の装着作業を迅速かつ確実に行うことができ、安全性は高くなる。
【0042】
<実施形態2>
図8は本発明の刈払機Aの実施形態2である。この実施形態2では、前記磁気的吸引手段9が、前記刃受け部材4を着磁させることにより第1の磁石9Aが形成されている。
【0043】
そして、本実施形態2では、磁気的吸引手段9が、前記刃受け部材4を着磁させて形成されているので、第1の磁石9Aを刃受け部材4とは個別に設けられている前記実施形態1とは異なり、部品点数が前記実施形態1より省略化され、刈刃8が如何なる設置向きであっても、刈刃8は刃受け部材4に吸引、保持されるため、刃受け部材4から脱落するのが阻止され、刈刃8の装着作業を迅速かつ確実に行うことができ、安全性は高くなる点が前記実施形態1と異なる構成、作用であるほか、前記実施形態1と同様の構成、作用である。
【0044】
<実施形態3>
図9は本発明の刈払機の実施形態3である。この実施形態3では、前記出力軸2が嵌挿可能となる前記刃受け部材4の中心部に設けられている略円筒状のボス部4cの外周に、第2の磁石9Bが配置され、前記第2の磁石9Bが、前記ボス部4cの上端4c1が接しているころがり軸受手段20に対して前記刃受け部材4を吸引保持させている。
【0045】
そして、本実施形態3では、前記第2の磁石9Bが、ネオジウム磁石により形成されているので、前記第2の磁石9Bは強力な磁気的吸引力が発揮され、この第2の磁石9Bが、ボス部4cの上端4c1が接しているころがり軸受手段20に対して刃受け部材4を吸引保持させることにより、刃受け部材4は第2の磁石9Bにより、ころがり軸受手段20に吸引・保持され、脱落が阻止される点が前記実施形態1,2と異なる構成、作用であるほかは前記実施形態1,2と同様の構成、作用である。なお、磁石9Bは、環状に一体的に形成されるものであっても、複数個の個別のものであってもよい。また、前記ころがり軸受手段20としては、図示ではボールベアリングが使用される。
【0046】
<実施形態4>
図10は本発明の刈払機の実施形態4である。この実施形態4では、刈刃8を刃受け部材4と、刃押さえ部材7とで挟持し、締付、固定するための前記螺合手段S′が、前記実施形態1では出力軸2の下端に設けられた取付ボルト5と、該取付ボルト5に螺合されるナット6とにより形成されているのとは異なり、前記出力軸2の下端に設けられた雌ねじ孔6′Aと、該雌ねじ孔6′A内に先端雄ねじ部5′Aが螺入される止ボルト5′とにより構成されることにより、刈刃8の装着作業時に、刈刃8が如何なる設置向きであっても刃受け部材4を介して刈刃8を螺合手段S′により構造堅牢に取り付けることができ、安全性は高くなる。そして、本実施形態4では、前記雌ねじ孔6′Aと、該雌ねじ孔6′A内に螺入される止ボルト5′の先端雌ねじ部5′Aとの設置長さを充分に確保することにより刈刃8に対して大きな締付力が得られるようにした点が前記実施形態1と異なる構成、作用であるほかは、前記実施形態1と同様の構成、作用である。
【0047】
<実施形態5>
図11乃至図13は本発明の刈払機の実施形態5である。
【0048】
前記実施形態1では、図4に示すように、第1の磁石9Aを複数個、例えば3個が出力軸2を中心として刃受け部材4の下面に底面等角度θに設けた取付凹部4b内に嵌入されて接着剤を用いて接着した3個の第1の磁石9Aが底面同心円的に配置されることにより、刈刃8の装着作業時に、ナット6を緩めて刃押さえ部材7を外した場合に、刈刃8を第1の磁石9Aに吸引、保持させて不用意に外れにくくしているが、本実施形態5では、刃受け部材4に対向する刃押え部材7の対向面に第3の磁石9Cを複数個、例えば2個設ける構成により、刈刃8の装着作業時に刃受け部材4の下面に設けた第1の磁石9Aに刈刃8を吸引、保持させて不用意な刈刃8の外れを無くすと共に、反対側(図11において下方から)は刃受け部材4に対向する刃押え部材7の対向する上面に2個設けられた第3の磁石9Cの吸引、保持により刈刃8が上下方向、左右方向、および前後方向の如何なる設置向きになっても不用意に外れることなく、刈刃8の装着が容易かつ確実に行え、また、第3の磁石9Cにより、刃押さえ部材7が刈刃8を介して刃受け部材4に吸引、保持されることにより出力軸2に対するナット6を緩め、再びナット6を螺合して刃押さえ部材7を取付ける場合の刈刃8の脱落を防止するようにした点が前記実施形態1とは異なる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、刈刃の装着作業時に、刈刃が如何なる設置向きであっても刃受け部材から脱落するのを阻止して刈刃の装着作業が迅速かつ確実に行え、安全性が高いという用途・機能に適する。
【符号の説明】
【0050】
1 ギヤユニット・ケース
2 出力軸
3 クリップ
4 刃受け部材
5 取付ボルト
6 ナット
7 刃押さえ部材
8 刈刃
9 磁気的吸引手段
9A 第1の磁石
9B 第2の磁石
9C 第3の磁石
11 周り止め棒
20 ころがり軸受手段
S 螺合手段
S′ 螺合手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤユニット・ケース内に回転可能に設けられた出力軸と、前記出力軸に配挿される刃受け部材と、前記出力軸の下端に設けられる螺合手段により前記出力軸の下方部に締付、固定される刃押さえ部材と、により挟持される刈刃を備えた刈払機において、
前記刈刃が、磁気的吸引手段により前記刃受け部材に吸引、保持されて脱落が阻止されることを特徴とする刈払機。
【請求項2】
前記磁気的吸引手段が、前記刃受け部材の下面に取付けられる第1の磁石であることを特徴とする請求項1に記載の刈払機。
【請求項3】
前記磁気的吸引手段が、前記刃受け部材を着磁させて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の刈払機。
【請求項4】
前記磁気的吸引手段が、前記刃押さえ部材の上面に前記刃受け部材に対向して取付けられる第3の磁石であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の刈払機。
【請求項5】
前記第1の磁石および前記第3の磁石が、前記出力軸を中心に底面同心円的もしくは平面同心円的に複数個が配置されるか、または底面環状もしくは平面環状に形成されることを特徴とする請求項1,2,または4の何れか1項に記載の刈払機。
【請求項6】
前記出力軸が嵌挿可能となる前記刃受け部材の中心部に設けられているボス部の外周に、第2の磁石が配置され、前記第2の磁石が、前記ボス部の上端が接しているころがり軸受手段に対して前記刃受け部材を吸引、保持させることを特徴とする請求項1〜5の何れか1の請求項に記載の刈払機。
【請求項7】
前記磁気的吸引手段としての前記第1の磁石、前記第2の磁石、または前記第3の磁石が、ネオジウム磁石により形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1の請求項に記載の刈払機。
【請求項8】
前記螺合手段が、前記出力軸の下端に設けられた取付ボルトと、該取付ボルトに螺合されるナットとにより構成されることを特徴とする請求項1〜7の何れか1の請求項に記載の刈払機。
【請求項9】
前記螺合手段が、前記出力軸の下端に設けられた雌ねじ孔と、該雌ねじ孔内に先端雄ねじ部が螺入される止ボルトとにより構成されることを特徴とする請求項1〜8の何れか1の請求項に記載の刈払機。
【請求項1】
ギヤユニット・ケース内に回転可能に設けられた出力軸と、前記出力軸に配挿される刃受け部材と、前記出力軸の下端に設けられる螺合手段により前記出力軸の下方部に締付、固定される刃押さえ部材と、により挟持される刈刃を備えた刈払機において、
前記刈刃が、磁気的吸引手段により前記刃受け部材に吸引、保持されて脱落が阻止されることを特徴とする刈払機。
【請求項2】
前記磁気的吸引手段が、前記刃受け部材の下面に取付けられる第1の磁石であることを特徴とする請求項1に記載の刈払機。
【請求項3】
前記磁気的吸引手段が、前記刃受け部材を着磁させて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の刈払機。
【請求項4】
前記磁気的吸引手段が、前記刃押さえ部材の上面に前記刃受け部材に対向して取付けられる第3の磁石であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の刈払機。
【請求項5】
前記第1の磁石および前記第3の磁石が、前記出力軸を中心に底面同心円的もしくは平面同心円的に複数個が配置されるか、または底面環状もしくは平面環状に形成されることを特徴とする請求項1,2,または4の何れか1項に記載の刈払機。
【請求項6】
前記出力軸が嵌挿可能となる前記刃受け部材の中心部に設けられているボス部の外周に、第2の磁石が配置され、前記第2の磁石が、前記ボス部の上端が接しているころがり軸受手段に対して前記刃受け部材を吸引、保持させることを特徴とする請求項1〜5の何れか1の請求項に記載の刈払機。
【請求項7】
前記磁気的吸引手段としての前記第1の磁石、前記第2の磁石、または前記第3の磁石が、ネオジウム磁石により形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1の請求項に記載の刈払機。
【請求項8】
前記螺合手段が、前記出力軸の下端に設けられた取付ボルトと、該取付ボルトに螺合されるナットとにより構成されることを特徴とする請求項1〜7の何れか1の請求項に記載の刈払機。
【請求項9】
前記螺合手段が、前記出力軸の下端に設けられた雌ねじ孔と、該雌ねじ孔内に先端雄ねじ部が螺入される止ボルトとにより構成されることを特徴とする請求項1〜8の何れか1の請求項に記載の刈払機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−75173(P2010−75173A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110418(P2009−110418)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(390030465)株式会社新宮商行 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(390030465)株式会社新宮商行 (4)
【Fターム(参考)】
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