説明

刈払機

【課題】刈払作業において操作棹2を左側に振り切ったときに左手を楽な向きと角度をとることを可能とする枢動式のグリップノブを備えた刈払機を提供する。
【解決手段】操作棹2に取り付けられる両端が鉛直方向に立ち上がって形成されるU字状のハンドル5を備えた刈払機20において、ハンドル5の端部に作業者が把持するノブ状に形成されたグリップノブ9が鉛直軸に対して平行な略上下方向の軸周りに回転自在に設けられていることにより、作業者はグリップノブ9を把持する手首の角度を維持したまま左方向への刈払作業を行うことができる。これにより、刈払作業において操作棹を左側に振り切ったときに左手を楽な向きに角度をとることが可能となり、楽に刈払作業を行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作棹の先端に設けた刈刃を駆動源により回転駆動して雑草や下草等の被切断物を刈り払う携帯式の刈払機に関する。
【背景技術】
【0002】
田畑の畦道や山林等に生えた雑草や下草などを刈り払うために、携帯式の刈払機が使用されている。刈払機は中空棒状に形成された操作棹を備えており、操作棹の先端にはギヤケースが取り付けられ、このギヤケースから突出する出力軸に刈刃が取り付けられている。操作棹の後端には駆動源が取り付けられ、刈刃はこの駆動源により回転駆動される。駆動源としてはエンジンや電動モータ等が用いられ、駆動源の回転は操作棹の内部に収容された伝達軸とギヤケース内に収容されたベベルギヤ対とを介して出力軸に伝達される。このような刈払機としては、駆動源を背負い架台に搭載するようにした背負い式、操作棹に取り付けられたループ状のベルトを肩に掛けるようにした肩掛け式とがある。図6は従来のエンジンを搭載した肩掛け式の刈払機220であり、この刈払機220の刈払作業の状態を図7に示す。図7に示すように、作業者は肩掛ベルト8を肩に掛け、刈払機本体220を作業者の右側に肩から吊り下げる形で保持し、図3に示すハンドル5の端部に設けられているグリップ6a,6bを握り、このグリップ6a,6bを介して、予備動作として操作棹を右方向に振り、次に操作棹を左方向に振るとき、操作棹先端にて回転駆動する刈刃4にて被削物を切断し刈り取る。この往復動作を繰り返すことにより刈払作業を行なう。このような刈払機においては、作業者の負担軽減のため特許文献1に示すようにハンドル形状を工夫したものが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−331454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のエンジン刈払機のU字形状の両手ハンドル5では図8に示すように、先端の手で握るグリップ6は、グリップ6の軸を回転軸10として刈払作業時に操作棹2を左右に振る方向と同じ向きに枢動できない構造となっている。図9に従来のエンジン刈払機220での刈払作業における、刈刃4を左側に振った状態の図を示す。刈払作業においては、作業者は一般的に操作棹の左側に位置するため、従来の操作棹に固定されるタイプの左手側グリップ6bを握った状態で操作棹を左側に振り切った場合、両手ハンドル5は左側のグリップ6bが作業者の胴体左側に近くなってしまい、左側のグリップ6bを握った左手首の角度が大きくなり作業がし辛いという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、刈払作業において操作棹2を左側に振り切ったときに左手を楽な向きと角度をとることを可能とする枢動式のグリップノブを備えた刈払機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の刈払機は、長尺状の操作棹と、操作棹の先端で回転可能に設けられる刈刃と、刈刃を駆動する動力源と、操作棹に取り付けられる両端が上方に立ち上がって形成されるU字状のハンドルを備え、ハンドルの端部には、作業者が把持するグリップ部が設けられており、グリップ部は、略上下方向の軸周りに回転自在に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、刈払作業において操作棹を左側に振り切ったときに左手を楽な向きに角度をとることが可能となり、楽に刈払作業を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のエンジンを搭載したエンジン刈払機の全体図。
【図2】本発明による枢動式グリップノブの構造図。
【図3】本発明による枢動式グリップノブの使用状況図。
【図4】本発明の変形例であるボールジョイント構造の枢動式グリップノブの構造図。
【図5】本発明の変形例であるボールジョイント構造の枢動式グリップノブの動作図。
【図6】従来の内燃エンジンを搭載したエンジン刈払機の全体図。
【図7】従来のエンジン刈払機の刈払作業図。
【図8】従来の両手ハンドルのグリップの断面図。
【図9】従来のエンジン刈払機の刈払作業の動作図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態について、図1〜図3を用いて詳細に説明する。
【0010】
図1は内燃エンジンを搭載したエンジン刈払機の全体図。図2はエンジン刈払機の刈払作業の動作図。図3はハンドルのグリップの断面図である。
【0011】
図1に示す刈払機20は携帯式の刈払機であり、例えば、田畑の畦道や山林等に生えた雑草や下草などを刈り払う際に使用される。この刈払機20は内燃エンジン1を駆動源として搭載し、操作棹2を有しており、この操作棹2はアルミニウム等により長尺の中空棒状の部材として形成されている。刈払機20は内燃エンジン1の回転出力を内燃エンジン1と先端工具4間を繋ぐ操作棹内部の図示しない駆動軸により伝達している。操作棹2の先端にはギヤケース3が取り付けられ、このギヤケース3から突出する出力軸(駆動軸)にカッターとも呼ばれる刈刃4が取り付けられている。この操作棹先端のギヤケース3に取付金具によって取り付けられた刈刃4等の先端工具を回転駆動させ、被削物を切断および刈取る構造となっている。操作棹2の長手方向中間にはアルミニウム製のパイプにより形成されたU字形状のハンドル5が取り付けられ、作業者は肩掛バンド8を肩に掛けるとともにハンドル5を把持することにより、刈払機20を携帯して、草の刈り払い作業を行うことができる。
【0012】
刈払機20のハンドル5は、U字形状に形成され、操作棹2の長手方向中間に中央の水平部5aがブラケット2aを介して操作棹2に直交する方向となるよう固定される。ハンドル5は、両端部がブラケット2aに取り付けられる水平部5aに対して角度がついて、水平部5a及び操作棹2の延びる方向と直交する鉛直方向、即ち使用状態における重力方向の上方に向かって屈曲して立ち上がる左側ハンドル5bと右側ハンドル5cとを有しており、水平部5aと左側ハンドル5b、右側ハンドル5cは一体となっている。左側ハンドル5bと右側ハンドル5cの端部には、ゴムやプラスチックのような樹脂材等の滑り難い材質にて形成された握り易い形状のグリップ部6a,6bが設けられている。グリップ部のうち右側ハンドル5cに設けられたグリップ部6aには、エンジン1の出力を制御可能なスロットルレバー16がグリップ部6a,6bを把持した状態で操作可能に設けられている。
【0013】
また、操作棹2にはハンドル5の取付位置より若干後方側であり、刈払機20の前後方向における重心位置に肩掛ベルト取付金具7が取り付けられている。刈払作業では、作業者が肩掛ベルト8を肩に掛け、刈払機20本体を作業者の右側に肩から吊り下げる形で保持し、両手ハンドル5端部のグリップ6a,6bを握り、操作棹2を左右に振ることにより、操作棹先端にて回転駆動する刈刃4にて被削物を切断し刈り取ることができる。なお往復動作において、被削物を切断するのは左方向のみであり、これは刈刃4の回転方向が反時計回りのため、刈刃4の左側のみで被削物の切断および刈取るためである。
【0014】
図3に示すように、本発明によるエンジン刈払機20の枢動式グリップノブ9は、外縁部が丸められた高さの低い円筒型の形状となっており、中心に回転穴19が穿設されている。また左側ハンドル5bの端部に固定されたグリップ6bの上部には、回転軸10が突出する形で固定されている。また、グリップノブ9の中心の回転穴19は、回転軸10に対して若干の隙間を有して形成され、グリップノブ9は中心の回転穴19にグリップ6b上部の回転軸10が遊びをもった状態で挿し通されているとともに、回転軸10の上部にてねじ作用により嵌められたナット11によって回転軸10から外れないようになっている。このため、グリップノブ9は両手ハンドル5の左側のグリップ6bの上部でグリップ及び操作棹2と同軸に枢動自在となっている。
【0015】
上記構成において作業者は両手ハンドル5の左側のグリップ6bの上部のグリップノブ9を上から左手で握り作業を行なった場合、図7に示すように、操作棹2を左方向に振り切ったときにおいても、左手で握ったグリップノブ9がグリップ6b上で枢動するため、左手の向きや角度は変わることがない。
【0016】
以上、説明した実施の形態においては、操作棹2に取り付けられる両端が鉛直方向に立ち上がって形成されるU字状のハンドル5を備えた刈払機20において、ハンドル5の端部に作業者が把持するノブ状に形成されたグリップノブ9が鉛直軸に対して平行な略上下方向の軸周りに回転自在に設けられていることにより、作業者はグリップノブ9を把持する手首の角度を維持したまま左方向への刈払作業を行うことができる。尚、グリップノブ9は、回転軸上の端部を掌で覆うように把持できるよう構成されているから、掌を地面方向に向けた状態でグリップ9を把持することが可能となり、作業性が良い。また、ハンドル5の端部には、グリップノブ9と軸方向に隣接した下方に固定グリップ6bが設けられているため、作業者は状況に応じて回転するグリップノブ9と固定されたグリップ6bとを選択して用いることが可能となる。
【0017】
図4は本発明の変形例である枢動式グリップノブ109の使用状況図。図5は本発明の変形例であるボールジョイント構造の枢動式グリップノブ109の動作図である。
【0018】
ボールジョイント構造においては、回転軸110上部を球状とし、球形に嵌合する球状凹部113を回転穴部に凹設された上下に分割構造のグリップノブ109にて、回転軸110上部の球部112が遊嵌するように上下から挟み込まれ、グリップノブ109を構成する上下の部品同士は接着剤またはネジによって接着されている。
【0019】
図4に示すボールジョイント構造のグリップノブ109においては、図5に示すようにエンジン刈払機の枢動式グリップノブにおいて回転軸先端の形状を球形とし、球形に嵌合する形状の凹みを設けたグリップノブ109を球状の軸先端に遊嵌するよう構成されている。回転軸110の球部112に遊嵌されたグリップノブ109は回転軸110を中心として枢動するだけではなく、上下方向の首振り動作も可能としている。これによりグリップ6bの中心軸を中心とした枢動動作だけではなく、上下方向に首振り動作も可能となるため、左手の向きや角度の自由度が大きくなる。尚、本実施形態ではハンドル5b側に球面状の凸状部112を設け、グリップノブ側に凸状部を球形に保持する凹部113を設ける構成としたが、グリップノブ109側に球面上の凸状部を設け、ハンドル側に凸状部を保持する凹部を設けるようにしてもよい。
【0020】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、本実施形態では回転するグリップノブ9を左側ハンドル5bのみに設ける構成としたが、右側ハンドル5cにも設けるようにしても良い。また、本実施形態では、左側ハンドル5bの軸端にグリップノブ9を設けると共に、グリップノブ9の回転中心軸が左側ハンドル5bの延びる方向と一致するように構成されていたが、それぞれの軸が傾斜していても良い。即ち、右側ハンドル5c及び左側ハンドル5bは鉛直方向に対して傾斜して立ち上がる構成となっているため、グリップノブ9は若干傾斜した鉛直方向軸を中心として回転することとなっているが、これに対してグリップノブ9の取付部で更に角度をつけ、より鉛直方向に沿った軸周りにグリップノブ9が回転可能に構成されていてもよい。さらに、前記実施の形態においては、駆動源としてエンジン1が用いられているが、駆動源として電動モータを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0021】
1…内燃エンジン、2…操作棹、3…ギヤケース、4…刈刃、5…両手ハンドル、
6…グリップ、7…肩掛ベルト取付金具、8…肩掛ベルト、9…グリップノブ、10…回転軸、11…ナット、112…球部、113…球状凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の操作棹と、
前記操作棹の先端で回転可能に設けられる刈刃と、前記刈刃を駆動する動力源と、
前記操作棹に取り付けられる両端が上方に立ち上がって形成されるU字状のハンドルを備え、
前記ハンドルの端部には、作業者が把持するグリップ部が設けられており、
前記グリップ部は、略上下方向の軸周りに回転自在に設けられていることを特徴とする刈払機。
【請求項2】
前記グリップ部は、回転軸上を作業者が掌で覆って把持可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の刈払機。
【請求項3】
前記グリップ部は、扁平な円板状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の刈払機。
【請求項4】
前記グリップ部は、前記ハンドルの軸端部を中心として、傾倒自在に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載の刈払機。
【請求項5】
前記グリップ部もしくは前記ハンドルの何れか一方は球面状の凸状部を備え、他方に前記球状部と遊嵌可能に設けられる凹部を備えて設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち何れか1項に記載の刈払機。
【請求項6】
前記ハンドルの端部には、前記グリップ部に隣接して固定グリップが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうち何れか1項に記載の刈払機。
【請求項7】
前記グリップ部は、前記操作棹を中心として、前記ハンドルの左側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち何れか1項に記載の刈払機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−78268(P2013−78268A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218713(P2011−218713)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】