説明

制動力測定方法

【課題】タイヤ表面の摩擦係数が通常より小さいときでも試験が可能な制動力測定方法を提供することを課題とする。
【解決手段】図(a)で、前方シリンダ17を伸動させ、前輪測定ローラ23を40mm程度、後輪測定ローラ33に接近させる。(b)に示すように、前輪測定ローラ23と後輪測定ローラ33の間隔が狭くなり、前輪11が前輪前側ローラ21に載り上がる。(c)において、駆動源27により前輪測定ローラ23を車両が前進する方向に回す。(d)において、車両のブレーキ操作を行い、前輪11を停止させる。すると、前輪11により、前輪前側ローラ21が制動され、前輪測定ローラ23が制動される。この制動による負荷が負荷検出器26で検出される。
【効果】前輪11が前輪前側ローラ21に載り上がったので、前輪11と前輪前側ローラ21との摩擦力が増加した。結果、タイヤが濡れたままでも試験が可能になった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキの制動性能を前輪と後輪の各々について測定する制動力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
台上試験機を用いて実施するブレーキの性能試験方法が知られている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。なお、前後左右は運転席を基準に定める。
図8は従来の台上試験機の平面図であり、台上試験機100は、車両の左前輪101を支持する一対の左前輪測定ローラ102と、この左前輪測定ローラ102に作用する負荷を検出する負荷検出器103と、左前輪測定ローラ102を非回転状態にする制動部104と、左前輪測定ローラ102を回す駆動源105とを備え、車両の右前輪106を支持する一対の右前輪測定ローラ107と、この右前輪測定ローラ107に作用する負荷を検出する負荷検出器108と、右前輪測定ローラ107を非回転状態にする制動部109と、右前輪測定ローラ107を回す駆動源110とを備え、車両の左後輪111を支持する一対の左後輪測定ローラ112と、この左後輪測定ローラ112に作用する負荷を検出する負荷検出器113と、左後輪測定ローラ112を非回転状態にする制動部114と、左後輪測定ローラ112を回す駆動源115とを備え、車両の右後輪116を支持する一対の右後輪測定ローラ117と、この右後輪測定ローラ117に作用する負荷を検出する負荷検出器118と、右後輪測定ローラ117を非回転状態にする制動部119と、右後輪測定ローラ117を回す駆動源120とを備える。
【0004】
左右一対の前輪101、106及び左右一対の後輪111、116を、各車輪毎に前記一対の測定ローラ102、107、112、117に跨るように支持させ、測定ローラ102、107、112、117を回転させ、次に車両のブレーキ操作を行い、測定ローラ102、107、112、117に作用する負荷を負荷検出器103、108、113、118で検出し、検出した負荷に基づいて、ブレーキの制動性能を測定する。
【0005】
図9は試験条件と得られる制動力との関係を示すグラフであり、通常の乾燥(ドライ)状態では、制動力は合格値を超えている。一方、気温が低い場合やタイヤ製造時に塗布される離型剤がタイヤ表面に残留している場合、測定ローラとタイヤの間の摩擦係数が著しく下がっているため、得られる制動力が合格値未満となる。
【0006】
対策として、測定ローラに溝を付けて摩擦係数を増すという解決策がある。しかし、溝を設けるとその他の試験項目、例えば高速走行試験に支障がでる。
したがって、タイヤ表面の摩擦係数が通常より小さいときでも試験が可能な制動力測定方法が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−121419公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、タイヤ表面の摩擦係数が通常より小さいときでも試験が可能な制動力測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車両の左右一対の前輪及び左右一対の後輪を、各車輪毎に前記一対の測定ローラに跨るように支持させ、前記測定ローラを回転させ、次に車両のブレーキ操作を行い、前記測定ローラに作用する負荷に基づいて、前進走行状態におけるブレーキの制動性能を前記前輪と前記後輪の各々について測定する制動力測定方法において、
前記前輪を前輪前側ローラと前輪後側ローラからなる一対の前輪測定ローラに跨るように支持させ、前記後輪を後輪前側ローラと後輪後側ローラからなる一対の後輪測定ローラに跨るように支持させる第1の工程と、
前記前輪を測定対象とするときには、前記後輪測定ローラを前記前輪測定ローラに接近させることで、前記前輪が前記前輪前側ローラに載り上がるようにし、
前記後輪を測定対象とするときには、前記前輪測定ローラを前記後輪測定ローラから離間させることで、前記後輪が前記後輪前側ローラに載り上がるようにする第2の工程と、
前記前輪測定時には、前記前輪測定ローラを車両が前進する方向へ回転させ、
前記後輪測定時には、前記後輪測定ローラを車両が前進する方向へ回転させる第3の工程と、
前記車両のブレーキ操作を行い、前輪測定時には前記前輪測定ローラに作用する負荷を測定し、後輪測定時には前記後輪測定ローラに作用する負荷を測定する第4の工程とからなることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、車両の左右一対の前輪及び左右一対の後輪を、各車輪毎に前記一対の測定ローラに跨るように支持させ、前記測定ローラを回転させ、次に車両のブレーキ操作を行い、前記測定ローラに作用する負荷に基づいて、後進走行状態におけるブレーキの制動性能を前記前輪と前記後輪の各々について測定する制動力測定方法において、
前記前輪を前輪前側ローラと前輪後側ローラからなる一対の前輪測定ローラに跨るように支持させ、前記後輪を後輪前側ローラと後輪後側ローラからなる一対の後輪測定ローラに跨るように支持させる第1の工程と、
前記前輪を測定対象とするときには、前記後輪測定ローラを前記前輪測定ローラから離間させることで、前記前輪が前記前輪後側ローラに載り上がるようにし、
前記後輪を測定対象とするときには、前記前輪測定ローラを前記後輪測定ローラへ接近させることで、前記後輪が前記後輪後側ローラに載り上がるようにする第2の工程と、
前記前輪測定時には、前記前輪測定ローラを車両が後進する方向へ回転させ、
前記後輪測定時には、前記後輪測定ローラを車両が後進する方向へ回転させる第3の工程と、
前記車両のブレーキ操作を行い、前輪測定時には前記前輪測定ローラに作用する負荷を測定し、後輪測定時には前記後輪測定ローラに作用する負荷を測定する第4の工程とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明は、車両が前進するときの測定方法であり、第2の工程で、前輪が前輪前側ローラに載り上がる、又は後輪が後輪前側ロールに乗り上げるようにした。この状態で制動力測定試験を行うと、制動時に前輪が前輪前側ローラに強く当たり摩擦力が増大する、又は後輪が後輪前側ローラに強く当たり摩擦力が増大する。
結果、タイヤ表面の摩擦係数が通常より小さいときでも試験が可能な制動力測定方法が提供される。
【0012】
請求項2に係る発明は、車両が後進するときの測定方法であり、第2の工程で、前輪が前輪後側ローラに載り上がる、又は後輪が後輪後側ロールに乗り上げるようにした。この状態で制動力測定試験を行うと、制動時に前輪が前輪後側ローラに強く当たり摩擦力が増大する、又は後輪が後輪後側ローラに強く当たり摩擦力が増大する。
結果、タイヤ表面の摩擦係数が通常より小さいときでも試験が可能な制動力測定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る制動力測定装置の平面図である。
【図2】本発明に係る制動力測定装置の左側面図である。
【図3】前進走行状態での前輪に係る制動力を測定する方法を説明する図である。
【図4】モーメント線図である。
【図5】前進走行状態での後輪に係る制動力を測定する方法を説明する図である。
【図6】後進走行状態での前輪に係る制動力を測定する方法を説明する図である。
【図7】後進走行状態での後輪に係る制動力を測定する方法を説明する図である。
【図8】従来の台上試験機の平面図である。
【図9】従来の問題点を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0015】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、制動力測定装置10は、左前輪11L(Lは左を示す添え字。)の周りに配置される左前輪用機構12Lと、右前輪11R(Lは左を示す添え字。)の周りに配置される右前輪用機構12Rと、左後輪13Lの周りに配置される左後輪用機構14Lと、右後輪13Rの周りに配置される右後輪用機構14Rと、車両前後方向へ延びるように敷設されるレール15、15と、これらのレール15、15に移動自在に載せられ左前輪用機構12L及び右前輪用機構12Rを載置する前方移動台16と、この前方移動台16を移動させる前方シリンダ17と、レール15、15に移動自在に載せられ左後輪用機構14L及び右後輪用機構14Rを載置する後方移動台18と、この後方移動台18を移動させる後方シリンダ19とを備える。
【0016】
左前輪用機構12Lは、左前輪11Lの前後に配置され左前輪11Lを支える前輪前側ローラ21Lと前輪後側ローラ22Lとからなる前輪測定ローラ23Lと、前輪前側ローラ21Lと前輪後側ローラ22Lとを連結するチェーン・スプロケットなどの連結部材24と、前輪後側ローラ22Lの軸に連結され前輪測定ローラ23Lを制動させる制動部25Lと、軸に加わる負荷トルクを検出する負荷検出器26Lと、軸を回転させる駆動源27Lとからなる。
【0017】
同様に、右前輪用機構12Rは、右前輪11Rの前後に配置され右前輪11Rを支える前輪前側ローラ21Rと前輪後側ローラ22Rとからなる前輪測定ローラ23Rと、前輪前側ローラ21Rと前輪後側ローラ22Rとを連結する連結部材24と、前輪後側ローラ2Rの軸に連結され前輪測定ローラ23Rを制動させる制動部25Rと、軸に加わる負荷トルクを検出する負荷検出器26Rと、軸を回転させる駆動源27Rとからなる。
【0018】
同様に、左後輪用機構14Lは、左後輪13Lの前後に配置され左後輪13Lを支える後輪前側ローラ31Lと後輪後側ローラ32Lとからなる後輪測定ローラ33Lと、後輪前側ローラ31Lと後輪後側ローラ32Lとを連結する連結部材24と、後輪後側ローラ32Lの軸に連結され後輪測定ローラ33Lを制動させる制動部35Lと、軸に加わる負荷トルクを検出する負荷検出器36Lと、軸を回転させる駆動源37Lとからなる。
【0019】
同様に、右後輪用機構14Rは、右後輪13Rの前後に配置され右後輪13Rを支える後輪前側ローラ31Rと後輪後側ローラ32Rとからなる後輪測定ローラ33Rと、後輪前側ローラ31Rと後輪後側ローラ32Rとを連結する連結部材24と、後輪後側ローラ32Rの軸に連結され後輪測定ローラ33Rを制動させる制動部35Rと、軸に加わる負荷トルクを検出する負荷検出器36Rと、軸を回転させる駆動源37Rとからなる。
【0020】
負荷検出器26L、26R、36L、36Rの情報は、制動力演算部41に集められ、そこで制動力に換算される。
それ以外の機器は、制御部42により制御される。
図から明らかなように、4つの車輪11L、11R、13L、13Rの各々に係る制動力を測定することができる。
【0021】
図2は制動力測定装置10の左側面図であり、車両43の左前輪11L(以下、単に前輪11と記す。)は、左前輪前側ローラ21L(以下、単に前輪前側ローラ21と記す。)と左前輪後側ローラ22L(以下、単に前輪後側ローラ22と記す。)からなる一対の左前輪測定ローラ23L(以下、単に前輪測定ローラ23と記す。)に跨るように支持される。
【0022】
同様に、車両43の左後輪13L(以下、単に後輪13と記す。)は、左後輪前側ローラ31L(以下、単に後輪前側ローラ31と記す。)と左後輪後側ローラ32L(以下、単に後輪後側ローラ32と記す。)からなる一対の左後輪測定ローラ33L(以下、単に後輪測定ローラ33と記す。)に跨るように支持される。
【0023】
前方移動台16は前方シリンダ17により移動され、後方移動台18は後方シリンダ19により移動されるが、前方移動台16と後方移動台18は、一方のみが移動し、他方は静止しているように、移動が制御される。
【0024】
以上の述べた制動力測定装置10の作用を次に述べる。
図3で前進走行状態での前輪に係る制動力を測定する方法を説明する。
図5で前進走行状態での後輪に係る制動力を測定する方法を説明する。
図6で後進走行状態での前輪に係る制動力を測定する方法を説明する。
図7で後進走行状態での後輪に係る制動力を測定する方法を説明する。
【0025】
図3(a)に示すように、前輪測定ローラ23と後輪測定ローラ33の間隔を、車両43のホイールベースL1と同じに設定し、前輪11を前輪測定ローラ23に跨るように支持させ、後輪13を後輪測定ローラ33に跨るように支持させる(第1の工程)。
【0026】
前方シリンダ17を伸動させ、前輪測定ローラ23をΔL(20〜40mm程度)だけ、後輪測定ローラ33に接近させる。このときには、予め前輪測定ローラ23を回転自在とし、後輪測定ローラ33を非回転状態にしておくことが望ましい。
【0027】
結果、図3(b)に示すように、前輪測定ローラ23と後輪測定ローラ33の間隔がL2(L2=L1−ΔL)となり、前輪11が前輪前側ローラ21に載り上がる(第2の工程)。
以降、(c)、(d)では、前輪測定ローラ23と後輪測定ローラ33の間隔はL2のままとする。
【0028】
図3(c)において、駆動源27により前輪測定ローラ23を車両が前進する方向に回す(第3の工程)。
図3(d)において、車両のブレーキ操作を行い、前輪11を停止させる。すると、前輪11により、前輪前側ローラ21が制動され、前輪測定ローラ23が制動される。この制動による負荷が負荷検出器26で検出される(第4の工程)。
この後、前輪測定ローラ23を元の位置に戻し、(a)に戻る。
【0029】
図3(d)の4部拡大図である図4で、本発明の特徴を説明する。
実施例である図4(a)に示すように、前輪11が前輪前側ローラ21に乗った状態で、前輪前側ローラ21が前輪11を回そうとし、前輪11が制動されている場合を考えると、前輪11に前輪車軸荷重Wt、後輪側から受ける前後力Ft、前輪前側ローラ21から受ける垂直反力Wr、前輪前側ローラ21から受ける推進力Frが働いており、バランスが取られている。
【0030】
上下方向のバランスから、次に述べる(1)式が与えられ、車両前後方向のバランスから(2)式が与えられる。また、摩擦係数がμである摩擦力の関係から(3)式が与えられる。
【0031】
【数1】

【0032】
Frに係る(4)式が導き出された。この(4)式から、前輪車軸荷重Wt及び摩擦係数μが一定でも、推進力Frは前輪前側ローラ21との接触角θによって変化することがわかる。推進力Fr/前輪車軸荷重Wt=見掛け摩擦係数と定義すると。(4)式から、Fr/Wt=μ/(cosθ−μ・sinθ)。
この式をグラフ化した図4(b)に示すように、θに比例して見掛け摩擦係数が増加する。
【0033】
θが変化することで、(4)式に示す推進力Frが変化することがわかった。Frには前後力Ftの関係することが予想される。
そこで、前後力Ftを検討する。
【0034】
【数2】

【0035】
(7)式を図4(c)でグラフ化すると、θが大きくなるほどFtが大きくなり、後輪側から押し戻そうとする力が必要になることがわかる。つまり、実際の車を考えた場合、後輪側がスリップしたりしてFtが大きくなれない場合、Frも大きくとれない。
【0036】
以上の説明から明らかなように、タイヤを制動させたときにローラの回転力により、タイヤに対してその回転方向への力(Fr)がかかる。その力(Fr)に対する反力として、車両を支持しようとする力(Ft)が作用する。この力(Ft)が結果として垂直反力(Wr)を増加させ、タイヤ/ローラ間の摩擦力を増加させる。
【0037】
次に、比較のために、図4(d)で、前輪121が前輪後側ローラ122に車両前側で接している例を説明する。
実施例と同様に、上下方向のバランスから、次に述べる(11)式が与えられ、車両前後方向のバランスから(12)式が与えられる。また、摩擦係数がμである摩擦力の関係から(13)式が与えられる。
【0038】
【数3】

【0039】
上記(4)式と(14)式において、μ、Wt、θは共通である。
(14)式の分母(cosθ+μ・sinθ)に比較して、(4)式の分母(cosθ−μ・sinθ)は、2・μ・sinθだけ小さい。分母が小さければ、分数は大きくなるため、(14)式で示す比較例の摩擦力Frより、(4)式で示す実施例の摩擦力Frが、格段に大きくなる。
【0040】
結果、タイヤ表面の摩擦係数が通常より小さいときでも制動力測定が可能となる。
【0041】
次に、図5で前進走行状態での後輪に係る制動力を測定する方法を説明する。
図5(a)に示すように、前輪測定ローラ23と後輪測定ローラ33の間隔を、車両43のホイールベースL1と同じに設定し、前輪11を前輪測定ローラ23に跨るように支持させ、後輪13を後輪測定ローラ33に跨るように支持させる(第1の工程)。
【0042】
後方シリンダ19を縮動させ、後輪測定ローラ33をΔLだけ、前輪測定ローラ23から離す。
【0043】
結果、図5(b)に示すように、前輪測定ローラ23と後輪測定ローラ33の間隔がL3(L3=L1+ΔL)となり、後輪13が後輪前側ローラ31に載り上がる(第2の工程)。
以降、(c)、(d)では、前輪測定ローラ23と後輪測定ローラ33の間隔はL3のままとする。
【0044】
図5(c)において、駆動源37により後輪測定ローラ33を車両が前進する方向に回す(第3の工程)。
図5(d)において、車両のブレーキ操作を行い、後輪13を停止させる。すると、後輪13により、後輪前側ローラ31が制動され、後輪測定ローラ33が制動される。この制動による負荷が負荷検出器36で検出される(第4の工程)。
この後、後輪測定ローラ33を元の位置に戻し、(a)に戻る。
【0045】
次に、図6で後進走行状態での前輪に係る制動力を測定する方法を説明する。
図6(a)に示すように、前輪測定ローラ23と後輪測定ローラ33の間隔を、車両43のホイールベースL1と同じに設定し、前輪11を前輪測定ローラ23に跨るように支持させ、後輪13を後輪測定ローラ33に跨るように支持させる(第1の工程)。
【0046】
前方シリンダ17を縮動させ、前輪測定ローラ23をΔLだけ、後輪測定ローラ33から離す。
【0047】
結果、図6(b)に示すように、前輪測定ローラ23と後輪測定ローラ33の間隔がL3(L3=L1+ΔL)となり、前輪11が前輪後側ローラ22に載り上がる(第2の工程)。
以降、(c)、(d)では、前輪測定ローラ23と後輪測定ローラ33の間隔はL3のままとする。
【0048】
図6(c)において、駆動源27により前輪測定ローラ23を車両が後進する方向に回す(第3の工程)。
図6(d)において、車両のブレーキ操作を行い、前輪11を停止させる。すると、前輪11により、前輪前側ローラ21が制動され、前輪測定ローラ23が制動される。この制動による負荷が負荷検出器26で検出される(第4の工程)。
この後、前輪測定ローラ23を元の位置に戻し、(a)に戻る。
【0049】
次に、図7で後進走行状態での後輪に係る制動力を測定する方法を説明する。
図7(a)に示すように、前輪測定ローラ23と後輪測定ローラ33の間隔を、車両43のホイールベースL1と同じに設定し、前輪11を前輪測定ローラ23に跨るように支持させ、後輪13を後輪測定ローラ33に跨るように支持させる(第1の工程)。
【0050】
後方シリンダ19を伸動させ、後輪測定ローラ33をΔLだけ、前輪測定ローラ23へ接近させる。
結果、図7(b)に示すように、前輪測定ローラ23と後輪測定ローラ33の間隔がL2(L2=L1−ΔL)となり、後輪13が後輪後側ローラ32に載り上がる(第2の工程)。
以降、(c)、(d)では、前輪測定ローラ23と後輪測定ローラ33の間隔はL2のままとする。
【0051】
図7(c)において、駆動源37により後輪測定ローラ33を車両が後進する方向に回す(第3の工程)。
図7(d)において、車両のブレーキ操作を行い、後輪13を停止させる。すると、後輪13により、後輪後側ローラ32が制動され、後輪測定ローラ33が制動される。この制動による負荷が負荷検出器36で検出される(第4の工程)。
この後、後輪測定ローラ33を元の位置に戻し、(a)に戻る。
【0052】
本実施例では、図3、図5〜図7で説明したように、前方シリンダ17と後方シリンダ19を設け、前輪を測定する場合には前方シリンダ17を作動させ、後輪を測定する場合には後方シリンダ19を作動させる。測定部位側のシリンダ17又は19を作動させるために、測定作業が円滑になる。
【0053】
しかし、図2において、前方シリンダ17と後方シリンダ19の一方を省くことは可能である。
例えば、後方シリンダ19を省いたときには、前方シリンダ17及び前方移動台16を用いて、図5や図7に示す間隔がL3を造り出す。後方移動台18は移動させる必要がないので、簡単になる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、四輪車の前後車輪に関する制動力測定に好適である。
【符号の説明】
【0055】
10…制動力測定装置、11…前輪、11L…左前輪、11R…右前輪、13…後輪、13L…左後輪、13R…右後輪、21…前輪前側ロール、22…前輪後側ロール、23…前輪測定ロール、26、36…負荷検出器、31…後輪前側ロール、32…後輪後側ロール、33…後輪測定ロール、41…制動力演算部、43…車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右一対の前輪及び左右一対の後輪を、各車輪毎に前記一対の測定ローラに跨るように支持させ、前記測定ローラを回転させ、次に車両のブレーキ操作を行い、前記測定ローラに作用する負荷に基づいて、前進走行状態におけるブレーキの制動性能を前記前輪と前記後輪の各々について測定する制動力測定方法において、
前記前輪を前輪前側ローラと前輪後側ローラからなる一対の前輪測定ローラに跨るように支持させ、前記後輪を後輪前側ローラと後輪後側ローラからなる一対の後輪測定ローラに跨るように支持させる第1の工程と、
前記前輪を測定対象とするときには、前記後輪測定ローラを前記前輪測定ローラに接近させることで、前記前輪が前記前輪前側ローラに載り上がるようにし、
前記後輪を測定対象とするときには、前記前輪測定ローラを前記後輪測定ローラから離間させることで、前記後輪が前記後輪前側ローラに載り上がるようにする第2の工程と、
前記前輪測定時には、前記前輪測定ローラを車両が前進する方向へ回転させ、
前記後輪測定時には、前記後輪測定ローラを車両が前進する方向へ回転させる第3の工程と、
前記車両のブレーキ操作を行い、前輪測定時には前記前輪測定ローラに作用する負荷を測定し、後輪測定時には前記後輪測定ローラに作用する負荷を測定する第4の工程とからなることを特徴とする制動力測定方法。
【請求項2】
車両の左右一対の前輪及び左右一対の後輪を、各車輪毎に前記一対の測定ローラに跨るように支持させ、前記測定ローラを回転させ、次に車両のブレーキ操作を行い、前記測定ローラに作用する負荷に基づいて、後進走行状態におけるブレーキの制動性能を前記前輪と前記後輪の各々について測定する制動力測定方法において、
前記前輪を前輪前側ローラと前輪後側ローラからなる一対の前輪測定ローラに跨るように支持させ、前記後輪を後輪前側ローラと後輪後側ローラからなる一対の後輪測定ローラに跨るように支持させる第1の工程と、
前記前輪を測定対象とするときには、前記後輪測定ローラを前記前輪測定ローラから離間させることで、前記前輪が前記前輪後側ローラに載り上がるようにし、
前記後輪を測定対象とするときには、前記前輪測定ローラを前記後輪測定ローラへ接近させることで、前記後輪が前記後輪後側ローラに載り上がるようにする第2の工程と、
前記前輪測定時には、前記前輪測定ローラを車両が後進する方向へ回転させ、
前記後輪測定時には、前記後輪測定ローラを車両が後進する方向へ回転させる第3の工程と、
前記車両のブレーキ操作を行い、前輪測定時には前記前輪測定ローラに作用する負荷を測定し、後輪測定時には前記後輪測定ローラに作用する負荷を測定する第4の工程とからなることを特徴とする制動力測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−242152(P2012−242152A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110207(P2011−110207)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)