説明

制御棒駆動機構の検出プローブ据付構造

【課題】検出プローブを正規の方位に確実に据え付けて、検出プローブの据付性及び信頼性を向上できること。
【解決手段】制御棒の位置または状態を検出する検出プローブ32、33を、制御棒を駆動する制御棒駆動機構のモータブラケット23に据え付ける制御棒駆動機構の検出プローブ据付構造において、検出プローブ32、33は、径方向に張り出す一対のピン41A、41Bを備え、これらのピンは寸法と形状の少なくとも一方が異なって形成され、モータブラケット23は、検出プローブが貫通可能な貫通孔42を備えると共に、一対のピン41A、41Bのそれぞれに対応して形成された一対の止め溝43A、43Bを貫通孔42の内周面に備え、検出プローブのピン41A、41Bのそれぞれを、モータブラケット23の対応する止め溝43A、43Bに係合可能に案内する係合案内手段44(ガイド溝45A、45B及び円弧溝46A、46B)を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子炉における制御棒の位置または状態を検出する検出プローブ(スクラム位置検出プローブ、分離検出プローブ)を制御棒駆動機構のブラケットに据え付ける制御棒駆動機構の検出プローブ据付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉では、制御棒駆動機構によって炉心に制御棒が挿入されまたは引き抜かれることで、原子炉の起動や停止、炉出力の調整がなされている。このうち、原子炉スクラム(緊急停止)時における制御棒の挿入量を検出するために、制御棒駆動機構にスクラム位置検出プローブ100(図15)が据え付けられている。また、制御棒が炉心にスティックした状態を検出するために、制御棒駆動機構に分離検出プローブ101(図16)が据え付けられている。
【0003】
これらの検出プローブ100、101を制御棒駆動機構のブラケット102(モータブラケット)に据え付ける据付構造が、特許文献1に記載されている。つまり、この据付構造は、検出プローブ100、101の外周に、対向配置された一対のピン103A及び103Bを設け、ブラケット102に形成された貫通孔104の内周面にそれぞれ一対の止め溝105A及び105B、ガイド溝106A及び106Bを設けて構成される。
【0004】
検出プローブ100、101をブラケット102に据え付ける際には、検出プローブ100、101のピン103A、103Bをブラケット102のガイド溝106A、106B内にそれぞれ位置づけた状態で、検出プローブ100、101を貫通孔104に挿入し、この挿入状態でピン103A、103Bをブラケット102の上方に持ち上げた後に、検出プローブ100、101を略90度回動させ、検出プローブ100、101のピン103A、103Bをブラケット102の止め溝105A、105Bに係合させることで、検出プローブ100、101をブラケット102に据え付けている。
【0005】
尚、図15及び図16中の符号107は、検出プローブ100、101の検出部108に内蔵された近接センサである。特に分離検出プローブ101にあっては、図17に示すように、その検出部108が制御棒駆動機構のスプールピース109における据付孔110に挿通されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−225202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述のような従来の検出プローブ100、101の据付構造では、検出プローブ100、101のピン103A、103Bが互いに同一形状で対向配置され、更に、ブラケット102のガイド溝106A、106Bも互いに同一形状で対向配置され、止め溝105A、105Bも互いに同一形状で対向配置されている。このため、検出プローブ100、101をブラケット102に正規の方位である正規の回転位置と、この正規の回転位置から略180度回転した回転位置(非正規の回転位置)とに据え付けることが可能になってしまう。
【0008】
しかし、検出プローブ100、101の近接センサ107は、検出プローブ100、101の軸に対し非対称な形状であるため、検出プローブ100、101が非正規の回転位置に据え付けられた場合には、検出プローブ100、101の検出精度が低下してしまう恐れがある。
【0009】
また、上述の検出プローブ100、101では、これらの検出プローブ100、101に設けられたばね受け111と、検出プローブ100、101に遊嵌された座金112との間にばね113を介在させ、このばね113の付勢力によって、検出プローブ100、101のピン103A、103Bを止め溝105A、105Bに安定的に保持している。このため、例えば地震時には、検出プローブ100、101がブラケット102やスプールピース109に対して軸方向に相対的に位置ずれを発生してしまい、検出プローブ100、101の検出精度に影響を及ぼす恐れがある。
【0010】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、検出プローブを正規の方位に確実に据え付けて、検出プローブの据付性及び信頼性を向上できる制御棒駆動機構の検出プローブ据付構造を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、例えば地震時における検出プローブの軸方向の位置ずれを低減して、検出プローブの検出精度を確保できる制御棒駆動機構の検出プローブ据付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、制御棒の位置または状態を検出する検出プローブを、前記制御棒を駆動する制御棒駆動機構のブラケットに据え付ける制御棒駆動機構の検出プローブ据付構造において、前記検出プローブは、径方向に張り出す複数の張出部を備え、これらの張出部は寸法と形状の少なくとも一方が異なって形成され、前記ブラケットは、前記検出プローブが貫通可能な貫通孔を備えると共に、複数の前記張出部のそれぞれに対応して形成された複数の凹部を前記貫通孔の内周面に備え、前記検出プローブの前記張出部のそれぞれを、前記ブラケットの対応する前記凹部に係合可能に案内する係合案内手段を備えて構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、係合案内手段が、検出プローブにおける寸法と形状の少なくとも一方が異なる張出部のそれぞれを、これらの張出部に対応してブラケットに形成された凹部に係合可能に案内するので、検出プローブをブラケットに据え付ける際に、特定の回転位相でのみ据付を実施できる。この結果、検出プローブを正規の方位に確実に据え付けて、検出プローブの据付性及び信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る制御棒駆動機構の検出プローブ据付構造における第1実施形態が適用された制御棒駆動機構を備える沸騰水型原子炉を示す縦断面図。
【図2】図1の制御棒駆動機構を示す縦断面図。
【図3】図1のスクラム位置検出プローブ、分離検出プローブを示す縦断面図。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図。
【図5】図3の貫通孔の展開図。
【図6】(A)は分離検出プローブのスプールピースとの位置関係を示す縦断面図、(B)は図6(A)のVI部を拡大して示す断面図。
【図7】図3に示す検出プローブ据付構造における第1変形形態を示す断面図。
【図8】図3に示す検出プローブ据付構造における第2変形形態を示す断面図。
【図9】本発明に係る制御棒駆動機構の検出プローブ据付構造における第2実施形態を示す縦断面図。
【図10】図9のX−X線に沿う断面図。
【図11】図9におけるスクラム位置検出プローブ、分離検出プローブの据付手順を示す据付工程図。
【図12】図9の検出プローブ据付構造における第1変形形態を示す図10の一部に対応する断面図。
【図13】図9の検出プローブ据付構造における第2変形形態を示す図9の一部に対応する断面図。
【図14】図9の検出プローブ据付構造における第3変形形態を示す図9に対応する断面図。
【図15】(A)は従来のスクラム位置検出プローブの据付状態を示す縦断面図、(B)は図15(A)のXV−XV線に沿う断面図。
【図16】(A)は従来の分離検出プローブの据付状態を示す縦断面図、(B)は図16(A)のXVI−XVI線に沿う断面図。
【図17】図16の分離検出プローブのスプールピースとの位置関係を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための実施形態を図面に基づき説明する。但し、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
[A]第1実施形態(図1〜図8)
図1に示す沸騰水型原子炉では、原子炉圧力容器1内に減速材を兼ねる冷却水2が収容される一方、中央下部に炉心3が配置され、この炉心3が炉心シュラウド4により囲まれている。炉心3には多数の燃料集合体(不図示)が装荷され、4体1組の燃料集合体間に制御棒5が出し入れ自在に収容されている。
【0017】
この沸騰水型原子炉において冷却水2は炉心3内を上方に向かって流れ、その間に炉心3の核分裂連鎖反応により発生する熱を冷却水2に伝達し、冷却水2を加熱している。加熱された冷却水2は水と蒸気の気液二相流となって炉心3の上方へ移動し、炉心3から気水分離器6に案内される。
【0018】
気液二相の冷却水2は気水分離器6で水と蒸気に分離された後、蒸気は、蒸気乾燥器を経て主蒸気配管(共に不図示)から蒸気タービン系に送られて蒸気タービン(不図示)を駆動させる。蒸気タービン系で仕事をした蒸気は、復水器で凝縮され復水となった後、原子炉復水系および給水系を経て原子炉圧力容器1に給水として再び戻される。
【0019】
一方、気水分離器で分離された水はダウンカマ部7を流下し、原子炉復水系および給水系を通って送られてくる給水と混合した状態で炉心3の下部に案内され、再び炉心3に導かれる。
【0020】
また、原子炉圧力容器1の炉心3には、原子炉の起動や停止、炉出力調整のために制御棒5が制御棒駆動機構(以下CRDと記す)8により出し入れされる。CRD8は、原子炉圧力容器1の底部1Aを貫通して延びるCRDハウジング9内に収容される構造物(アセンブリ)であり、CRDハウジング9の下部フランジ9Aにボルト接合により固定される。
【0021】
図2は、図1に示すCRD8の縦断面図であり、電動駆動式のCRD8を示し、下部に電動機10が取り付けられる。電動機10の回転軸11は、ギアカップリング機構12を介してCRD8の駆動軸13に連結される。駆動軸13はボールねじ軸14に回転一体に連結され、このボールねじ軸14にはボールナット15が螺合される。
【0022】
ボールナット15には対をなすローラ16が、ガイドチューブ17の内周面に形成されて軸方向に延びる取付板18を挟持するように設置される。ボールナット15の上方にはドライブピストン19Aが設置され、このドライブピストン19Aは、中空ピストン19上端に設置されたカップリング20を介して制御棒5に連結される。
【0023】
電動機10の駆動により回転軸11および駆動軸13を介してボールねじ軸14が回転し、このボールねじ軸14の回転によりボールナット15が上下動するようになっている。つまり、ボールナット15は、取付板18により回転が規制されて上下動し、このボールナット15の上下動により、中空ピストン19を介して制御棒5が上下動する。この制御棒5の上下動により炉心3への挿入・引抜量が調整され、炉出力がコントロールされる。
【0024】
尚、符号21は電磁ブレーキであり、符号22はシンクロ位置検出器、符号23はモータブラケット、符号24はスプールピースである。スプールピース24はCRDフランジ部27に取り付けられ、このスプールピース24に、モータブラケット23を介して電動機10が取り付けられる。
【0025】
沸騰水型原子炉に緊急事態が発生して原子炉をスクラム(緊急停止)させる場合、CRDハウジング9の下部フランジ9Aに接続されたスクラム挿入配管25から、CRDフランジ部27に形成されたスクラム水入口(注水口)26を介して、ドライブピストン19Aの下面側に高圧駆動水が供給される。この高圧駆動水の供給により、ボールナット15上に設置された中空ピストン19が、ボールナット15から分離して上方に押上げられ、制御棒5を炉心3内に高速で挿入させることで原子炉を緊急停止させる。
【0026】
このスクラム動作時の制御棒5の挿入量を知るために、ドライブピストン19Aにマグネット30が取り付けられると共に、CRDハウジング9の外側に、近接センサ31(図3)を一定間隔で配設したスクラム位置検出プローブ(以下PIPと記す)32が設けられる。中空ピストン19及びドライブピストン19Aの移動に伴うマグネット30の移動を、近接センサ31内のリードスイッチ31Aの開閉状況により検出して、マグネット30の移動速度及び位置、ひいては制御棒5の移動速度及び位置を検知する。
【0027】
また、図2に示すCRD8には、制御棒5が炉心3にスティックし、中空ピストン19及びドライブピストン19Aがボールナット15から分離した場合に、その分離状態を検出する分離検出プローブ(以下SIPと記す)33が設けられている。このSIP33は、中空ピストン19及びドライブピストン19Aがボールナット15から分離することにより制御棒5の重量が駆動部28から除荷されるため、駆動部28に取り付けられた分離マグネット34がスプリング29の力によって持ち上がり、このときの分離マグネット34の動きを近接センサ35(図3)内のリードスイッチ35Aの開閉状況により検知する。
【0028】
スクラム動作時における制御棒5の移動位置(移動速度)を検出するPIP32と、制御棒5が炉心3にスティックした状態を検出するSIP33は、制御棒駆動機構8におけるモータブラケット23に据え付けられる。
【0029】
PIP32、SIP33は、図3及び図4に示すように、そのボディ40に、径方向に張り出す複数の張出部としての一対のピン41A、41Bを軸対称位置に備える。これらのピン41A及び41Bは、互いに寸法と形状の少なくとも一方が異なって形成され、例えば断面寸法が異なって形成されてボディ40に溶接接合される。
【0030】
モータブラケット23のブラケット上部23Aは、PIP32、SIP33のボディ40が貫通可能な貫通孔42を備える。そして、この貫通項42の内周面には、一対のピン41A、41Bにそれぞれ対応して形成された複数の凹部としての一対の止め溝43A、43Bが、貫通孔42の軸対称位置に設けられる。止め溝43A、43Bは、径方向長さと周方向の幅がピン41A、41Bのそれぞれよりも大きく形成されるが、止め溝43Aは、ピン41Bよりも周方向の幅が小さく形成されている。
【0031】
更に、モータブラケット23のブラケット上部23Aには、PIP32、SIP33のピン41A、41Bのそれぞれを、ブラケット上部23Aの対応する止め溝43A、43Bに係合可能に案内する係合案内手段44を備える。この係合案内手段44は、図4及び図5に示すように、複数(一対)のガイド溝45A、45Bと、複数(一対)の回動溝としての円弧溝46A、46Bとを有して構成される。
【0032】
ガイド溝45A、45Bは、ブラケット上部23Aの貫通孔42の内周面に、この内周面の周方向に沿ってそれぞれ止め溝43A、43Bと略90度離間し、且つ貫通孔42の軸方向全長に亘って形成される。更に、ガイド溝45A、45Bは、止め溝43A、43Bと同様に、ピン41A、41Bのそれぞれに対応して形成され、径方向長さと周方向幅がピン41A、41Bのそれぞれよりも大きく形成されている。
【0033】
また、ガイド溝45Aは、ピン41Bよりも周方向幅が小さく形成されている。このため、PIP32、SIP33は、ピン41Aとガイド溝45Aとが、ピン41Bとガイド溝45Bとがそれぞれ貫通孔42の周方向に一致する回転位相でのみ貫通孔42に挿入可能となる。
【0034】
円弧溝46A、46Bは、ブラケット上部23Aの貫通孔42の内周面に形成され、それぞれが同一のピン41A、41Bに対応して形成されたガイド溝45Aと止め溝43A、ガイド溝45Bと止め溝43Bをそれぞれ連続する。つまり、ブラケット上部23Aの貫通孔42の内周面には、貫通孔42の軸方向上方から見て時計回りの方向に、ガイド溝45Aと止め溝43Aとを連続する円弧溝46Aが、略90度の範囲に亘って、ピン41Aの径方向長さよりも大きな半径で形成されている。更に、ブラケット上部23Aの貫通孔42の内周面には、貫通孔42の軸方向上方から見て時計回りの方向に、ガイド溝45Bと止め溝43Bとを連続する円弧溝46Bが、略90の範囲に亘って、ピン41Bの径方向長さより大きな半径で形成されている。
【0035】
PIP32、SIP33をモータブラケット23のブラケット上部23Aにおける貫通孔42に挿入する際、PIP32、SIP33のピン41A、41Bを、それぞれ対応するガイド溝45A、45Bに挿通させた後、PIP32、SIP33をブラケット上部23Aの上方から見て時計回りに回動させることで、ピン41A、41Bを円弧溝46A、46Bに沿ってそれぞれ移動させ、止め溝43A、43Bのそれぞれに係合するよう案内させる。ブラケット上部23Aの貫通孔42の内周面に形成された円弧溝46A、46Bによって、PIP32、SIP33は、ブラケット上部23Aの上方から見て時計回りの方向の回動のみが許容され、反時計回りの方向の回動が規制される。
【0036】
前記止め溝43A、43Bは、図5に示すように、円弧溝46A、46Bよりも貫通孔42の軸方向に深く形成され、円弧溝46A、46Bに沿って回動されたPIP32、SIP33のピン41A、41Bは、それぞれ止め溝43A、43Bに着座(係合)する。PIP32、SIP33とブラケット上部23Aとの間には、図3に示すように、ピン41A、41Bを止め溝43A、43Bに押圧して安定保持させる保持機構47が設けられている。
【0037】
この保持機構47は、PIP32、SIP33のボディ40におけるピン41A、41Bの下方に設けられたばね受け48と、ボディ40に遊嵌された座金49との間にばね50が介在されて構成される。ばね50の付勢力が、座金49をブラケット上部23Aに当接させると共に、ばね受け48を介してPIP32、SIP33を下方に押圧する。この結果、図5に示すように、ピン41A、41Bが止め溝43A、43Bのそれぞれに安定的に保持されて、PIP32、SIP33の回動が拘束される。
【0038】
図6に示すように、スプールピース24には、SIP33の検出部36を挿通する据付孔51が形成され、この据付孔51に、SIP33の軸方向移動を制限するための孔上部52、孔下部53及び段差部54が形成されている。孔上部52は、SIP33の検出部36よりも小径に形成されると共に、SIP33の頂部37を収容可能な直径に形成される。また、孔下部53は、SIP33の検出部36よりも大径に形成されて、この検出部36を収容可能とする。
【0039】
段差部54は、孔上部52と孔下部53との境界に、上方へ向かって先細りのテーパ形状に形成される。この段差部54は、SIP33の検出部36と頂部37との境界部分に形成された上方へ向かう先細り形状のテーパ部38に当接可能に構成される。SIP33のテーパ部38がスプールピース24における据付孔51の段差部54に当接することで、例えば地震時におけるSIP33の軸方向上方への移動が制限される。
【0040】
尚、SIP33の据付状態におけるSIP33のテーパ部38と据付孔51の段差部54との軸方向隙間H(つまりSIP33の軸方向移動可能量)は、SIP33における近接センサ35の感度幅及びSIP33の寸法精度を考慮して約5mm以下に設定される。これにより、SIP33がスプールピース24に対し軸方向に移動する移動量は、分離マグネット34(図2)の上昇移動量(約36mm)を下回る5mm以下に制限することが可能になる。このため、地震時等におけるSIP33に軸方向の位置ずれが生じた場合にも、このSIP33の検出精度への影響を低減することが可能になる。
【0041】
ここで、スプールピース24の据付孔51に段差部54を形成する構成に代えて、図7に示すように、モータブラケット23のブラケット上部23Aに制動部材としての押え板55を設置し、または図8に示すように、PIP32、SIP33のボディ40に他の張出部としての突出部56を設置してもよい。
【0042】
図7に示す押え板55は、PIP32、SIP33のピン41A、41Bがブラケット上部23Aの止め溝43A、43Bにそれぞれ係合された状態で、このピン41A、41Bをブラケット上部23Aとの間で貫通孔42の軸方向に保持するものである。この押え板55は、内径がPIP32、SIP33のピン41A、41Bよりも小さく、貫通孔42と略同一径の挿通孔57を有し、ブラケット上部23Aの切欠部59に、例えばボルト58を用いて取り付けられる。PIP32、SIP33のピン41A、41Bが押え板55またはブラケット上部23Aに当接することで、例えば地震時におけるPIP32、SIP33の軸方向移動が制限される。
【0043】
また、図8に示す突出部56は、PIP32、SIP33のボディ40において、ピン41A、41Bの軸方向下方に固定され、ブラケット上部23Aの貫通孔42の内径よりも大径に設けられる。この突出部56は、PIP32、SIP33をブラケット上部23Aの貫通孔42に挿入させる際にブラケット上部23Aに当接して、PIP32、SIP33の軸方向の据付位置を位置決めすると共に、据え付け後には、例えば地震時等におけるPIP32、SIP33の軸方向移動を制限する。
【0044】
以上のように構成されたことから、本実施の形態によれば、次の効果(1)及び(2)を奏する。
【0045】
(1)図4及び図5に示すように、係合案内手段44(ガイド溝45A、45Bと円弧溝46A、46B)は、PIP32、SIP33における寸法と形状の少なくとも一方が異なるピン41A、41Bのそれぞれを、これらのピン41A、41Bに対応してモータブラケット23のブラケット上部23Aに形成された止め溝43A、43Bに係合可能に案内する。つまり、ブラケット上部23Aのガイド溝45A、45Bは、PIP32、SIP33のピン41A、41Bがそれぞれ貫通孔42の周方向に一致した回転位相で、PIP32、SIP33をブラケット上部23の貫通孔42内に挿入可能とする。
【0046】
更に、ブラケット上部23Aの円弧溝46A、46Bは、ガイド溝45A、45Bにそれぞれ位置づけられたPIP32、SIP33のピン41A、41Bを、貫通孔42の上方から見て時計回りの方向にのみ90度回動させることを可能として、それぞれをブラケット上部23Aの止め溝43A、43Bに係合させるよう案内する。
【0047】
これらの結果、PIP32、SIP33は、特定の回転位相でのみブラケット上部23Aに据え付けられることになるので、正規の方位に確実に据え付けられることになる。このため、PIP32、SIP33の据付性及び検出の信頼性を向上させることができる。
【0048】
(2)図6に示すように、スプールピース24の据付孔51に形成された段差部54が、SIP33のテーパ部38に当接可能に構成されて、SIP33の軸方向移動が制限される。また、図7に示すように、ブラケット上部23Aに設置された押え板55あるいはブラケット上部23AがPIP32、SIP33のピン41A、41Bに当接し、または、図8に示すように、PIP32、SIP33に設置された突出部56がブラケット上部23Aに当接し、これらによってPIP32、SIP33の軸方向移動が制限される。これらの結果、例えば地震時等において、PIP32、SIP33とブラケット上部23Aとの軸方向の相対的な位置ずれを抑制できるので、PIP32、SIP33の検出精度を良好に確保できる。
【0049】
[B]第2実施形態(図9〜図14)
図9は、本発明に係る制御棒駆動機構の検出プローブ据付構造における第2実施形態を示す縦断面図である。図10は、図9のX−X線に沿う断面図である。この第2実施形態において、前記第1実施形態と同様な部分については、同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0050】
PIP32、SIP33は、径方向に張り出す複数(例えば一対)の張出部61A、61Bを軸対称位置に備える。これらの張出部61A、61Bは、寸法と形状の少なくとも一方が異なって、本実施形態では断面形状が異なって形成されている。また、モータブラケット23のブラケット上部23Aには、貫通孔42が形成されると共に、この貫通孔42の内周面に複数(一対)の凹部としての切欠部62A、62Bが、軸対称位置に形成されている。
【0051】
この切欠部62A、62Bは、張出部61A、61Bにそれぞれ対応して形成される。つまり、切欠部62A、62Bは、径方向長さ及び周方向幅が張出部61A、61Bよりも大きく形成されて、張出部61A、61Bをそれぞれ収容可能とする。更に、切欠部62Aの周方向幅は、張出部61Bの周方向幅よりも小さく形成されている。
【0052】
本実施形態では、PIP32、SIP33の張出部61A、61Bのそれぞれをブラケット上部23Aの切欠部62A、62Bに係合可能に案内する係合案内手段63を有する。この係合案内手段63は、PIP32、SIP33のボディ40内に配設されて、先端部分で張出部61A、61Bを一体に支持する支持体64と、この支持体64に弾性力を付与する弾性体65とを有して構成される。
【0053】
弾性体65の弾性力によって支持体64が変位し、張出部61A、61BをPIP32、SIP33の径方向外方へ張り出させ、またはPIP32、SIP33内に収納させる。張出部61A、61Bの収納は、支持体64に一体化されてPIP32、SIP33のボディ40から外側へ膨出した押込部66に径方向内側へ荷重を加え、弾性体65を圧縮変形させることで実施する。
【0054】
弾性体65は、図9及び図10にはコイルばね65Aの場合を示すが、図12に示すように板ばね65Bであってもよい。板ばね65Bを弾性体65として用いる場合には、コイルばね65Aの場合に比べ、板ばね65Bに圧縮荷重を加えた状態で板ばね65Bが径方向外方に拡がるので、PIP32、SIP33のボディ40内に確保できるスペースが拡大し、その分ボディ40の内部構造物の寸法に余裕を持たせることが可能になる。
【0055】
PIP32、SIP33をブラケット上部23Aに据え付ける際には、まず、図11(A)及び(B)に示すように、押込部66に径方向内側の荷重を加えて、張出部61A、61BをPIP32、SIP33のボディ40内に収納させる。この収納状態で、PIP32、SIP33をブラケット上部23Aの貫通孔42内に挿入し、ボディ40に設置された突出部56をブラケット上部23Aに当接させて位置決めする。次に、図11(C)に示すように、張出部61A、61Bがそれぞれに対応する切欠部62A、62Bに至ったときに、これらの張出部61A、61Bを弾性体65の弾性力により外方へ張り出させ、切欠部62A、62Bのそれぞれに係合させる。
【0056】
また、図9にも示すように、モータブラケット23のブラケット上部23Aに設置された押え板55は、貫通孔42と略同一径に形成された挿通孔57を有する。つまり、この挿通孔57の内径は、弾性体65に圧縮荷重が作用しない状態における張出部61A、61Bの最大外径よりも小さく設定されている。この押え板55は、PIP32、SIP33の張出部61A、61Bがブラケット上部23Aの切欠部62A、62Bにそれぞれ係合された状態で、この張出部61A、61Bをブラケット上部23Aとの間で貫通孔42の軸方向に保持する。PIP32、SIP33の張出部61A、61Bが押え板55またはブラケット上部23Aに当接することで、例えば地震時におけるPIP32、SIP33の軸方向の移動が制限される。
【0057】
この押え板55は、ボルト58によりブラケット上部23Aの切欠部59に固定されるが、図13(A)に示すように、切欠部59に締りばめによって、または図13(B)に示すように、切欠部59に溶接によって固定されてもよい。図13(B)の符号67は溶接箇所を示す。
【0058】
以上のように構成されたことから、本実施の形態によれば、次の効果(3)及び(4)を奏する。
【0059】
(3)PIP32、SIP33内に配置された支持体64に、寸法と形状の少なくとも一方が互いに異なる一対の張出部61A、61Bが設けられ、モータブラケット23のブラケット上部23Aにおける貫通孔42の内周面に、張出部61A、61Bに対応して切欠部62A、62Bがそれぞれ形成され、支持体64に弾性力を付与する弾性体65が、張出部61A、61BをPIP32、SIP33の外方向へ張り出させ、またはPIP32、SIP33内へ収納させるように構成されている。
【0060】
従って、張出部61A、61BをPIP32、SIP33内に収納した状態で、このPIP32、SIP33をブラケット上部23Aの貫通孔42内へ挿入し、張出部61A、61Bを、ブラケット上部23Aにおける対応する切欠部62A、62Bに至ったときに、弾性体65の作用でPIP32、SIP33の外方へ張り出させて切欠部62A、62Bに係合させるよう案内する。
【0061】
この結果、PIP32、SIP33を、特定の回転位相でのみモータブラケット23のブラケット上部23Aに据え付けることが可能になるので、PIP32、SIP33を正規の方位に確実に据え付けて、このPIP32、SIP33の据付性及び信頼性を向上させることができる。
【0062】
(4)PIP32、SIP33の張出部61A、61Bが、モータブラケット23のブラケット上部23Aと、このブラケット上部23Aに設置された押え板55とに、貫通孔42の軸方向において当接可能に配置されている。このため、例えば地震時において、PIP32、SIP33とブラケット上部23Aとの軸方向の相対的な位置ずれを抑制できるので、PIP32、SIP33の検出精度を良好に確保できる。
【0063】
尚、本第2実施形態においては、図14に示すように、突出部56に代えて、第1実施形態における保持機構47(ばね受け48、座金49、ばね50)を用いてもよい。この場合には、座金49がモータブラケット23のブラケット上部23Aに当接することで、PIP32、SIP33の据付時の位置決めが実現できる。更に、PIP32、SIP33の張出部61A、61Bがブラケット上部23Aの切欠部62A、62Bに係合された状態でばね50の付勢力により、張出部61A、61Bを切欠部62A、62B内に安定して保持することができる。
【0064】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。
【符号の説明】
【0065】
5 制御棒
8 制御棒駆動機構
23 モータブラケット
23A ブラケット上部
32 スクラム位置検出プローブ(PIP)
33 分離検出プローブ(SIP)
36 検出部
41A、41B ピン(張出部)
42 貫通孔
43A、43B 止め溝(凹部)
44 係合案内手段
45A、45B ガイド溝
46A、46B 円弧溝(回動溝)
47 保持機構
48 ばね受け
49 座金
50 ばね
51 据付孔
52 孔上部
53 孔下部
54 段差部
55 押え板(制動部材)
56 突出部(他の張出部)
61A、61B 張出部
62A、62B 切欠部(凹部)
63 係合案内手段
64 支持体
65 弾性体
65A コイルばね
65B 板ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御棒の位置または状態を検出する検出プローブを、前記制御棒を駆動する制御棒駆動機構のブラケットに据え付ける制御棒駆動機構の検出プローブ据付構造において、
前記検出プローブは、径方向に張り出す複数の張出部を備え、これらの張出部は寸法と形状の少なくとも一方が異なって形成され、
前記ブラケットは、前記検出プローブが貫通可能な貫通孔を備えると共に、複数の前記張出部のそれぞれに対応して形成された複数の凹部を前記貫通孔の内周面に備え、
前記検出プローブの前記張出部のそれぞれを、前記ブラケットの対応する前記凹部に係合可能に案内する係合案内手段を備えて構成されたことを特徴とする制御棒駆動機構の検出プローブ据付構造。
【請求項2】
前記係合案内手段は、ブラケットの貫通孔の内面に、この内面の周方向に沿って凹部と離間し且つ前記貫通孔の軸方向全長に亘って設けられると共に、張出部のそれぞれに対応して形成された複数のガイド溝と、
前記貫通孔の内面に形成され、それぞれが同一の張出部に対応して形成された前記ガイド溝と前記凹部とを連続する回動溝とを有し、
前記張出部を、対応するガイド溝内に通過させた後、このガイド溝に連続する前記回動溝に沿って移動させることで前記凹部に係合させるよう案内することを特徴とする請求項1に記載の制御棒駆動機構の検出プローブ据付構造。
【請求項3】
前記係合案内手段は、検出プローブ内に配設されて複数の張出部を支持する支持体と、
この支持体に弾性力を付与し、前記張出部を前記検出プローブ外へ張り出させ、または前記検出プローブ内に収納させる弾性体とを有し、
前記張出部を検出プローブ内に収納した状態で、この検出プローブをブラケットの貫通孔に挿入し、前記張出部を、前記ブラケットにおける対応する凹部に至ったときに前記弾性体の弾性力により前記検出プローブから張り出させて前記凹部に係合させるよう案内することを特徴とする請求項1に記載の制御棒駆動機構の検出プローブ据付構造。
【請求項4】
前記ブラケットには、検出プローブの張出部が前記ブラケットの凹部に係合された状態で、前記張出部を前記ブラケットとの間で保持して前記検出プローブの軸方向移動を制限する制動部材が設置されたことを特徴とする請求項1に記載の制御棒駆動機構の検出プローブ据付構造。
【請求項5】
前記検出プローブには、この検出プローブをブラケットの貫通孔に挿入する際に前記ブラケットに当接可能な他の張出部が、張出部の軸方向下方に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の制御棒駆動機構の検出プローブ据付構造。
【請求項6】
前記制御棒駆動機構のスプールピースには、検出プローブの検出部を挿通する据付孔が形成され、この据付孔は、孔上部が前記検出部よりも小径に、孔下部が前記検出部よりも大径に形成され、
この据付孔における前記孔上部と前記孔下部の段差部分が前記検出部に当接することで、前記検出プローブの軸方向移動が制限されるよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の制御棒駆動機構の検出プローブ据付構造。
【請求項7】
前記検出プローブとブラケットとの間には、前記検出プローブの張出部がブラケットの凹部に係合された状態で、この張出部を前記凹部に押圧して安定保持させる保持機構が配設されたことを特徴とする請求項1に記載の制御棒駆動機構の検出プローブ据付構造。
【請求項8】
前記弾性体が、検出プローブ内に配設されたコイルばねまたは板ばねであることを特徴とする請求項3に記載の制御棒駆動機構の検出プローブ据付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−167929(P2012−167929A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26493(P2011−26493)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】