説明

制御棒駆動機構ハウジングのフランジ研磨装置

【課題】CRDハウジングのフランジの研磨作業に要する時間を短縮できるCRDハウジングのフランジ研磨装置を提供する。
【解決手段】CRDハウジングのフランジ研磨装置50は、止水装置6、研磨ユニット7及び装着装置51を備える。装着装置51のクランプ治具30によって、止水装置6及び研磨ユニット7がCRDハウジング3のフランジ3aに取り付けられる。止水装置6のスリーブ13、スリーブ13内に配置されたスリーブ12がフランジ3aに形成された段付き凹部3c内に挿入され、CRDハウジング3の内外がOリング
16でシールされる。研磨ユニット7の研磨シート保持装置52は、上面に研磨シート27が取り付けられて押圧バネ34で押されるシート保持ディスク26を有する。空気モータ20の回転によりシート保持ディスク26が回転し、フランジ3aの端面が研磨シート27で研磨される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御棒駆動機構ハウジングのフランジ研磨装置に係り、特に、沸騰水型原子炉に設けられた制御棒駆動機構ハウジングのフランジを研磨するのに好適な制御棒駆動機構ハウジングのフランジ研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉(BWR)は、原子炉圧力容器(以下、RPVという)の底部に、制御棒駆動機構(以下、CRDという)が取り付けられる制御棒駆動機構ハウジング(以下、CRDハウジングという)を設置している。CRDは、CRDハウジングの内側に設けられたサーマルスリーブの内側に挿入される。このCRDは、RPVに内蔵される炉心に出し入れされて原子炉出力を制御する制御棒を操作する機能を有する。
【0003】
BWRの定期検査時には、保守点検のためCRDハウジングからCRDが取り外された後、CRDハウジングの下端部の設けられたフランジ(CRDを取り付けるフランジ)の下面(端面)を研磨する作業が実施される。
【0004】
RPV内には炉水が存在しているが、制御棒の下端部がCRDハウジングの上端部に設けられたシール機構と接触することによって気密が保たれるので、CRDを取り外したCRDハウジングへの炉水の漏洩を防止している。しかしながら、長年の使用によって微量ではあるがそのCRDハウジングの内面を伝わって炉水が下方にしみ出してくる。このため、CRDハウジングのフランジ下面を研磨する際にはサーマルスリーブをCRDハウジングから引き抜き、CRDハウジングの内面との間をOリングでシールする密封治具をCRDハウジング内に挿入した。この密封治具によるシールを行った後、そのフランジの下面の研磨作業を実施した。
【0005】
金属管のフランジを加工する装置として、特開平4−118119号公報に記載された加工装置が知られている。
【0006】
【特許文献1】特開平4−118119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CRDハウジングとサーマルスリーブとの間に設置されたサーマルスリーブキーは強く固着しているために引き抜き難いので、従来は、専用の治具を用いてサーマルスリーブキーを引き抜いた後にサーマルスリーブをCRDハウジングから引き抜いていた。CRDハウジングのフランジ下面の研磨作業が終了した後、サーマルスリーブ及びサーマルスリーブキーをCRDハウジング内に挿入する必要があった。このため、CRDハウジングのフランジ下面の研磨作業に長時間を要していた。特に、サーマルスリーブキー及びサーマルスリーブの引き抜き、及びそれらのCRDハウジングへの装着に長い時間を要していた。
【0008】
本発明の目的は、制御棒駆動機構ハウジングのフランジの研磨作業に要する時間を短縮できる制御棒駆動機構ハウジングのフランジ研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、装着装置と、止水装置と、研磨ユニットとを備え、
装着装置は、制御棒駆動機構ハウジングのフランジに取り付けられるクランプ治具と、支持プレートと、クランプ治具に一端部が取り付けられて外面にネジが形成され、支持プレートに挿入される複数の支持棒と、それぞれの支持棒に取り付けられて支持プレートを締め付ける締め付け装置とを有し、
止水装置は、上端部に第1フランジ部を有して制御棒駆動機構ハウジングの軸方向に伸び、下端部に支持プレートが取り付けられる第1スリーブと、第1スリーブの軸方向に移動可能に第1スリーブ内に配置され、上端部に第2フランジ部を有する第2スリーブと、第1フランジ部の外周面に装着され、記第2スリーブの前記軸方向への移動によって押圧されるシール部材と、第1スリーブに設けられるスリーブ移動装置とを有し、
研磨ユニットが、止水装置を取り囲み、止水装置の周囲を回転する回転体、及び研磨部材が取り付けられて回転体に係合される研磨部材保持部材を有する研磨部材保持装置と、研磨部材保持装置を回転させる回転装置とを備えていることにある。
【0010】
このような特徴を有する本発明は、装着装置を用いて、制御棒駆動機構ハウジング内にサーマルスリーブを装着した状態で制御棒駆動機構ハウジングのフランジの段付き凹部に止水装置を気密的に嵌合すると共に、研磨ユニットの研磨部材保持装置を回転させて研磨部材により制御棒駆動機構ハウジングのフランジの端面を研磨することができる。サーマルスリーブを制御棒駆動機構ハウジングから引き抜く必要がないので、制御棒駆動機構ハウジングのフランジの端面の研磨作業に要する時間を著しく短縮することができる。
【0011】
好ましくは、研磨部材保持装置が、水平方向に分割可能な分割構造になっている回転体及び研磨部材保持部材を有することが望ましい。回転体及び研磨部材保持部材を分割構造にすることによって、回転体及び研磨部材保持部材を制御棒駆動機構ハウジングのフランジの下方より取り除くことができるので、このフランジよりも下方のスペースが狭い場合でも、そのフランジの研磨状態を容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サーマルスリーブの引き抜き作業が不要になるので、制御棒駆動機構ハウジングのフランジの研磨作業に要する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施例を、以下に説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の好適な一実施例である実施例1の制御棒駆動機構ハウジングのフランジ研磨装置を、図1から図3を用いて説明する。
【0015】
制御棒駆動機構ハウジングのフランジ研磨装置を説明する前に、この装置が適用されるBWRの下部構造の概略を、図4及び図5を用いて説明する。BWRのRPV1内には炉心シュラウド45が配置され、下部炉心支持板46が炉心シュラウド45に設置されている。複数のCRDハウジング3が、RPV1の底部に設けられ、RPV1内からその底部よりも下方に向かって伸びている。CRDハウジング3の下端部にはフランジ3aが設けられている。フランジ3aには、複数の孔3bが形成され、内側には段付き凹部3cが形成されている。
【0016】
サーマルスリーブ4がCRDハウジング3内に配置され、これらはサーマルスリーブキー5によって結合されている。制御棒案内管48が、それぞれのCRDハウジング3の上端部に設置され、下部炉心支持板46まで伸びている。炉心シュラウド45で取り囲まれた炉心49には、複数の燃料集合体(図示せず)が装荷される。制御棒48が各制御棒案内管47内に配置される。
【0017】
少なくともBWRの運転中においては、CRDが各CRDハウジング3に取り付けられており、サーマルスリーブ4の内側に配置される。CRDは、段付き凹部3c内に嵌合され、孔3bに挿入されるボルトによりフランジ3aに取り付けられる。CRDは、制御棒案内管47内に位置する制御棒48に連結されている。制御棒48は、CRDの操作によって、炉心49から引き抜かれ、炉心49内に挿入される。
【0018】
本実施例の制御棒駆動機構ハウジングのフランジ研磨装置について説明する。本実施例のフランジ研磨装置50は、止水装置6、研磨ユニット7及び研磨シート保持装置51を備えている。
【0019】
研磨シート保持装置51は、支持プレート18、複数の支持ボルト(支持棒)28、複数の固定ボルト29及びL字状のクランプ治具30を有する。各支持ボルト28及び各固定ボルト29は、クランプ治具30に取り付けられる。4本の支持ボルト28が貫通している支持プレート18は、ナット19a,19bによって挟まれるようにして各支持ボルト28に取り付けられる。ナット19a,19bは、支持ボルト28に取り付けられて支持プレート18を締め付ける締め付け装置である。
【0020】
止水装置6は、ボルト9a、ボール弁10、押し込みナット(スリーブ移動装置)11、スリーブ(第2スリーブ)12、スリーブ(第1スリーブ)13、ピン15、Oリング(第1シール部材)16、Oリング(第2シール部材)17及び支持プレート18を有する。
【0021】
スリーブ12はスリーブ13内に配置される。スリーブ13のフランジ部にはピン15が圧入され、このピン15はスリーブ12のフランジ部に設けた小孔に嵌合されることによってスリーブ12とスリーブ13を結合する。スリーブ13はボルト9aによって支持プレート18に取り付けられている。内側に雌ネジが形成された押し込みナット11は、スリーブ12の下端部に形成された雄ネジと噛み合っている。押し込みナット11を締め付けることにより、押し込みナット11は支持プレート18の下面に押し付けられ、スリーブ13の上端部に存在するフランジ部の上端面がスリーブ12の上端部に存在するフランジ部の下面に接触する。支持プレート18は、押し込みナット11によってスリーブ12及び13と一体化される。
【0022】
Oリング16がスリーブ13のフランジ部の側面に設けられた溝内に挿入されている。Oリング17がスリーブ13の内面に設けられた溝内に挿入されている。Oリング16は段付き凹部3cの内面と接触することによってスリーブ13と段付き凹部3cの間のシールを行う。Oリング17はスリーブ12の外面とスリーブ13の内面との間のシールを行う。ボール弁10は、上端部に形成された雄ネジをスリーブ12の下端部の内側に形成された雌ネジと噛み合うことによってスリーブ12に取り付けられる。
【0023】
研磨ユニット7は、研磨シート保持装置(研磨部材保持装置)52及びシート回転装置(研磨部材回転装置)53を有する。研磨シート保持装置52は、テーブル23、ディスク保持器25、シート保持ディスク(研磨部材保持部材)26、大径歯車32、バネ保持器33及び押圧バネ34を有している。ディスク保持器25、シート保持ディスク26、大径歯車32及びバネ保持器33は、止水装置6の周囲を回転する回転体を構成する。バネ保持器33は、スリーブ13を取り囲む環状部材であり、上部の直径が下部よりも大きくなっている。大径歯車32は、バネ保持器33の小径部の外側に配置され、ボルト36でバネ保持器33のフランジ部に取り付けられている。ディスク保持器25は皿ネジ40によってバネ保持器33の大径部の上端部に設置される。シート保持ディスク26は、ディスク保持器25の上方に配置され、下面に下方に向かって伸びるピン35を設置している。このピン35は、ディスク保持器25、及びバネ保持器33の大径部を貫通して形成された貫通孔内に軸方向にスライド可能に挿入されている。押圧バネ34は、バネ保持器33の上部に形成された凹部内に配置され、上端がシート保持ディスク26の下面に接触している。テーブル23の上面に環状のガイド部材31が設けられる。バネ保持器33の小径部の下端部にはガイド部材31と噛み合う環状溝が形成されている。バネ保持器33は、ガイド部材31に沿って回転できる。テーブル23は、支持ボルト28に噛み合った蝶形ナット21によって支持ボルト28の軸方向に沿って上下動できる。ガイド部材31の替りに、滑り軸受及びボールベアリング等を使用してもよい。
【0024】
ディスク保持器25とバネ保持器33とは別体とせず、ディスク保持器25をバネ保持器33と一体に形成することも可能である。また、大径歯車32は、バネ保持器33の小径部に、直接、形成しても良い。
【0025】
シート回転装置53の構成について説明する。シート回転装置53は、空気モータ20及び小径歯車24を有する。空気注入口20aを有する空気モータ20は支持プレート18に取り付けられている。空気モータ20の回転軸54は鉛直方向に伸びている。小径歯車24から下方に向って伸びる回転軸55はカップリング20bによって回転軸55に接続される。回転軸55は、テーブル23に設置されたボールベアリング22によって支持される。小径歯車24は大径歯車32と噛み合う。空気モータ20の替りに電動機を用いてもよい。
【0026】
フランジ研磨装置50を用いた、CRDハウジング3のフランジ3aの端面(下面)の研磨方法を以下に説明する。CRDハウジング3のフランジ3aの端面を研磨する際には、既にCRDがCRDハウジング3から取り外されている。
【0027】
まず、装着装置51を用いて、フランジ研磨装置50をCRDハウジング3に取り付ける。この取り付け作業を、図2を用いて具体的に説明する。各支持ボルト28が取り付けられたクランプ治具30が、フランジ3aの上面の上に置かれる。固定ボルト29がフランジ3aの下方から孔3b内に挿入されてクランプ治具30に係合される。この固定ボルト29の係合は、固定ボルト29の下端部に形成された六角形の穴に六角断面のL形棒レンチを挿入して固定ボルト29を回転させることにより行われる。研磨ユニット7は予め組み立てられており、研磨ユニット7のテーブル23に形成された各貫通孔内に支持ボルト28を挿入する。蝶形ナット21が下方より支持ボルト28に噛み合される。テーブル23は支持ボルト28と噛み合っている蝶形ナット21によって支持される。ナット19aが、各支持ボルト28に係合され、蝶形ナット21よりも下方に位置させる。各支持ボルト28を、予め一体化された止水装置6の支持プレート18に形成された各貫通孔内に挿入する。ナット19bを支持ボルト28に取り付ける。
【0028】
このとき、止水装置6のスリーブ12及び13は、段付き凹部3c内に到達していない。支持プレート18の上面がナット19aの下面に当たるまで、ナット19bを締め付ける。図3(A)に示すように、スリーブ13のフランジ部の下面Sと、フランジ3の下端面Rとがほぼ同一の高さになったとき、ナット19aを回転させて下面Sの高さの微調整を行う。下面Sが適切な高さになったとき、ナット19bを固く締め付けることにより、止水装置6が支持ボルト28を介してフランジ3に固定される。このとき、スリーブ12のフランジ部の傾斜面がハウジング3の段付き凹部3cの傾斜面と接触した状態になっており、押し込みナット11を固く締め付けると、図3(B)の状態になる。
【0029】
図3(A)のように、スリーブ12のフランジ部の下面とスリーブ13の上端面とが接触していないとき、スリーブ13の半径方向においてOリング16の外側面と段付き凹部3cの内面の間にわずかな隙間が存在する。押し込みナット11を締め付けると、押し込みナット11の上端面が支持プレート18の下面に接触する。押し込みナット11をさらに締め付けると、スリーブ12が下方に引っ張られて図3(B)に示すようにスリーブ12のフランジ部の下面とスリーブ13のフランジ部の上面が接触する。同時に、Oリング16が、上下方向に潰されてスリーブ13の半径方向に広がって、段付き凹部3cの内面に接触する。これにより、CRDハウジング3の内外が確実に気密シールされる。
【0030】
研磨シート(研磨部材)27がシート保持ディスク26の上面に取り付けられている。研磨シート27は、両面に係止効果を有する接着シートをシート保持ディスク26の上面に装着し、この接着シートに貼り付けられる。各蝶形ナット21を締め付けることによって、テーブル23が上昇される。やがて、研磨シート27がCRDハウジング3のフランジ3aの端面に接触する。この時点で、テーブル23の上昇が停止される。上方に向かう押し付け力が押圧バネ34によってシート保持ディスク2に作用するので、研磨シート27がフランジ3aの端面に押し付けられる。
【0031】
空気モータ20がボルト9bによって支持プレート18に取り付けられる。小径歯車24の回転軸55がカップリング20bに連結される。以上により、フランジ3aの端面を研磨するための準備が完了する。
【0032】
空気モータ20は、空気注入口20aから圧搾空気を注入することによって駆動され、回転軸54を回転させる。回転軸54の回転力は、回転軸55を介して小径歯車24に伝えられる。小径歯車24の回転によって大径歯車32が回転される。大径歯車32の回転数は小径歯車24の回転数よりも少なくなっている。バネ保持器33及びディスク保持器25も回転される。シート保持ディスク26に取り付けられているピン35がディスク保持器25に形成された貫通孔内に挿入されているので、ディスクシート保持ディスク26もバネ保持器33及びディスク保持器25と共に回転される。このため、フランジ3aの端面が接触している研磨シート27によって研磨される。
【0033】
研磨シート27によるフランジ3aの端面の研磨が所定時間行われた後、空気モータ20の回転が停止される。その後、蝶形ナット21を緩めてテーブル23を支持ボルト28に沿って下降させる。このようにして、研磨ユニット7が下降され、研磨シート27がフランジ3aの端面から離れる。作業員は、研磨された、フランジ3aの端面を観察し、測定治具を用いた測定により、研磨されたフランジ3aの端面の研磨の状態を確認する。この研磨状態が規定値を満足していない場合には、蝶形ナット21を締め付けて研磨ユニット7を上昇させて研磨シート27によるフランジ3aの端面の研磨を再度実施する。
【0034】
研磨状態が規定値を満足した場合には、そのフランジ3aの端面の研磨作業が終了する。空気モータ20を支持プレート18から取り外し、テーブル23を下降させる。固定ボルト29を緩めて外し、クランプ治具30に噛み合っている支持ボルト28と共に、止水装置部6及び研磨ユニット7を、そのフランジ3aから取り外す。取り外された止水装置6、研磨ユニット7及び装着装置51は、前述のように、研磨作業を実施する、他のCRDハウジング3のフランジ3aに取り付けられる。このフランジ3aに対する研磨作業が行われる。このようにして、RPV1に設けられたCRDハウジング3のフランジ3aの端面の研磨作業が順次行われる。
【0035】
本実施例は、装着装置51を用いて、CRDハウジング3のフランジ3aの段付き凹部3cに止水装置6を気密的に嵌合すると共に、研磨ユニット7をフランジ3aに装着し、回転装置53により研磨シート27を回転させてフランジ3aの端面を研磨するので、サーマルスリーブ4をCRDハウジング3から引き抜く必要がなく、CRDハウジング3のフランジ3aの端面を効率良く研磨することができる。すなわち、本実施例は、CRDハウジング3内にサーマルスリーブ4を装着した状態で、フランジ3aの端面を効率良く研磨することができる。したがって、RPV1に設けられたCRDハウジング3のフランジ3aの端面の研磨作業に要する時間が、著しく短縮される。
【0036】
本実施例は、スリーブ12をスリーブ13内に軸方向に摺動可能に配置し、Oリング16がスリーブ13のフランジ部の側面に設けられた溝内に挿入されてスリーブ12のフランジ部に接触しており、スリーブ12を軸方向に摺動させる押し込みナット11がスリーブ12に取り付けられているので、スリーブ12,13の各フランジ部が段付き凹部3c内に挿入された状態で、Oリング16を段付き凹部3cの内面に密着させることができる。このため、Oリング16によって、CRDハウジング3内外の気密性を確保することができる。
【0037】
止水装置6によってCRDハウジング3の内外の気密性を保つことができるので、CRDハウジング3の上端部に設けられたシール機構から炉水がCRDハウジング3内に漏洩した場合でも、CRDハウジング3のフランジ3aの端面が漏洩した炉水で濡れないので、研磨シート27によるフランジ3aの端面の研磨を良好に行うことができる。この漏洩した炉水はスリーブ12内に溜まる。その研磨作業が終了して止水装置6をCRDハウジング3から取り外す前にボール弁10が開放され、その溜まっている炉水がボール弁10を通して外部に排出される。止水装置6は、その後、CRDハウジング3から取り外される。
【0038】
研磨作業後に研磨シート保持装置52を下降させて研磨シート27をフランジ3aの端面から離すことができるので、フランジ3aの端面の研磨状態を容易に確認することができる。
【実施例2】
【0039】
本発明の他の実施例である実施例2のCRDハウジング3のフランジ研磨装置を、図6及び図7を用いて説明する。
【0040】
実施例1のCRDハウジング3のフランジ研磨装置50は、フランジ3aの研磨状態を確認するとき、テーブル23を下降させて研磨シート27をフランジ3aの端面から距離L(図2参照)だけ離す操作が必要である。しかしながら、フランジ3aの下方スペースが少ない場合には、研磨シート27をフランジ3aの端面から距離Lだけ下方に離すことができない。この結果、研磨作業終了後においてフランジ3aの端面の観察等を行う場合には、止水装置6及び研磨ユニット7をフランジ3aから取り外す必要があり、研磨状態が規定値を満足しない場合にはそれらをフランジ3aに、再度、装着しなければならない。この再装着は非常に煩わしい作業となる。
【0041】
実施例2のCRDハウジング3のフランジ研磨装置50Aはそのような問題を解消することができる。すなわち、フランジ研磨装置50Aは研磨ユニット7に半割り構造を採用することによってフランジ3aの下方のスペースが少ない場合でも、止水装置6を取り外すことなくフランジ3aの端面の研磨状態を確認することができる。フランジ研磨装置50Aは、フランジ研磨装置50において研磨ユニット7の替りに反割り構造を採用した研磨ユニット7Aを用いている。
【0042】
本実施例のフランジ研磨装置50Aの構成のうち、実施例1のフランジ研磨装置50と異なる構成を、以下に説明する。研磨ユニット7Aは、研磨シート保持装置52A及びシート回転装置53を有する。本実施例で用いられるシート回転装置53はフランジ研磨装置50のその装置と同じ構成である。研磨シート保持装置52Aは、図7に示すように、テーブル23、ディスク保持器25、シート保持ディスク26、大径歯車32及びバネ保持器33は半割り構造になっている。研磨シート保持装置52Aはテーブル支持台38も備えている。
【0043】
半割り構造のバネ保持器33は、半割り構造の大径歯車32にボルト36によって取り付けられている。押圧バネ34がバネ保持器33の上部に形成された凹部内に挿入されている。半割り構造のディスク保持器25は皿ネジ40によってバネ保持器33に取り付けられている。半割り構造のシート保持ディスク26の下面に設けられたピン35が半割り構造のディスク保持器25及びバネ保持器33にそれぞれ形成された貫通孔内に挿入されている。バネ保持器33の小径部の下端部に形成された半円の溝内に、半割り構造のテーブル23に形成された半円のガイド部材31が挿入されている。半割り構造のテーブル23には、半割の端面から水平方向に伸びる2つの切り欠き57が大径歯車32の外側で平行に形成されている。それぞれの切り欠き57内には、後述するように、支持ボルト28がそれぞれ挿入される。半割りの研磨シート27がそれぞれ半割り構造のシート保持ディスク26の上面に貼り付けられている。研磨シート保持装置52Aの片側の構成(以下、半割り構成体という)は、以上のようになっている。研磨シート保持装置52Aの残りの半割り構成体も同様な構成である。2つの半割り構成体は、各バネ保持器33に設けられた結合器37a,37bを連結することによって一体に結合される。
【0044】
実施例1と同様に、装着装置51がCRDハウジング3のフランジ3aに取り付けられ、止水装置6のスリーブ12,13の各フランジ部が段付き凹部3c内に挿入されている。CRDハウジング3の内外は、Oリング16によって気密が保たれている。この状態で、研磨シート保持装置52Aの2つの半割り構成体が、フランジ3aの下方であって支持ボルト28が存在しない位置で、水平方向に180°反対方向からスリーブ13に向かって挿入される。このとき、2つの半割り構成体の各テーブル23に形成された各切り欠き57内に支持ボルト28がそれぞれ挿入される。挿入されたそれぞれの半割り構成体の各テーブル23は、下方に配置されるテーブル支持台38にボルト39によって着脱可能に取り付けられる。各テーブル23は、各支持ボルト28に取り付けられた蝶形ナット21によって支持されている。空気モータ20が支持プレート18に取り付けられ、回転軸55がカップリング20bに連結される。
【0045】
各支持ボルト28に噛み合った蝶形ナット21が締め付けられるとテーブル23が上昇し、研磨シート27がフランジ3aの端面に接触する。空気モータ20が回転し、その回転力が回転軸55、小径歯車24及び大径歯車32を介してバネ保持器33に伝えられる。バネ保持器33が回転し、シート保持ディスク26及び研磨シート27が回転する。フランジ3aの端面が研磨シート27によって研磨される。研磨が終了した後、蝶形ナット21が緩められ、研磨シート27がフランジ3aの端面から離される。
【0046】
結合器37a、37bの結合を解除すると共にボルト39を緩め、2つの半割り構造体を、水平方向において反対側に移動させ、フランジ3aの下方より引き出す。これにより、フランジ3aの端面と支持プレート18との間に空間ができるので、フランジ3aの端面の研磨状態の観察及び測定治具の挿入が可能になり、研磨された部分の確認を容易に行うことができる。フランジ3aの端面の研磨状態が規定値を満足していない場合には、2つの半割り構造体をフランジ3aの下方において前述の研磨する状態に組み立てる。蝶形ナット21を締め付けて研磨ユニット7を上昇させて研磨シート27によるフランジ3aの端面の研磨を再度実施する。研磨状態が規定値を満足したときに、研磨作業が終了する。
【0047】
本実施例は、実施例1で生じる効果のうちフランジ3aの端面の研磨状態の確認を除いた以外の効果を得ることができる。さらに、本実施例は、研磨シート保持装置52Aが分離可能な2つの半割り構成体を含んでいるので、CRDハウジング3のフランジ3aの下方のスペースが狭い場合でも、止水装置6を取り外さずにフランジ3aの研磨状態を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1のCRDハウジングのフランジ研磨装置の構成図である。
【図2】図1に示すCRDハウジングのフランジ研磨装置の研磨前の状態を示す説明図である。
【図3】図2のIII部の拡大図であり、(A)押し込みナットの仮締め付け状態を示す説明図、(B)は押し込みナットを完全に締め付けた状態を示す説明図である。
【図4】図1に示すCRDハウジングのフランジ研磨装置による研磨作業が適用される、原子炉圧力容器の底部の縦断面図である。
【図5】図4のV部の拡大図である。
【図6】本発明の他の実施例である実施例2のCRDハウジングのフランジ研磨装置の構成図である。
【図7】図6に示す研磨シート保持装置の分解図である。
【符号の説明】
【0049】
1…原子炉圧力容器、3…制御棒駆動機構ハウジング、3a…フランジ、3c…段付き凹部、6…止水装置、7…研磨ユニット、11…押し込みナット、12,13…スリーブ、16,17…Oリング、18…支持プレート、20…空気モータ、23…テーブル、24…小径歯車、25…ディスク保持器、26…シート保持ディスク、27…研磨シート、28…支持ボルト、30…クランプ治具、32…大径歯車、33…バネ保持器、34…押しバネ、38…テーブル支持台、50,50A…制御棒駆動機構ハウジングのフランジ研磨装置、51…装着装置、52,52A…研磨シート保持装置、53…シート回転装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着装置と、止水装置と、研磨ユニットとを備え、
前記装着装置は、制御棒駆動機構ハウジングのフランジに取り付けられるクランプ治具と、支持プレートと、前記クランプ治具に一端部が取り付けられて外面にネジが形成され、前記支持プレートに挿入される複数の支持棒と、それぞれの前記支持棒に取り付けられて前記支持プレートを締め付ける締め付け装置とを有し、
前記止水装置は、上端部に第1フランジ部を有して前記制御棒駆動機構ハウジングの軸方向に伸び、下端部に前記支持プレートが取り付けられる第1スリーブと、前記第1スリーブの軸方向に移動可能に前記第1スリーブ内に配置され、上端部に第2フランジ部を有する第2スリーブと、前記第1フランジ部の外周面に装着され、前記第2スリーブの前期軸方向への移動によって押圧されるシール部材と、前記第1スリーブに設けられるスリーブ移動装置とを有し、
前記研磨ユニットが、前記止水装置を取り囲み、前記止水装置の周囲を回転する回転体、及び研磨部材が取り付けられて前記回転体に係合される研磨部材保持部材を有する研磨部材保持装置と、前記研磨部材保持装置を回転させる回転装置とを備えていることを特徴とする制御棒駆動機構ハウジングのフランジ研磨装置。
【請求項2】
前記研磨部材保持装置に含まれる前記回転体及び前記研磨部材保持部材が、水平方向に分割可能な分割構造になっている請求項1に記載の制御棒駆動機構ハウジングのフランジ研磨装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−198368(P2009−198368A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41321(P2008−41321)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【出願人】(000230940)日本原子力発電株式会社 (130)