説明

制電性防音カーペット

【課題】優れた制電性と防音性とを兼備した制電性防音カーペットであって、特には制電性のさらなる改良と軽量化を実現することができる制電性防音カーペットの提供。
【解決手段】表面繊維基材12の裏側に繊維質バッキング19を設けた制電性防音カーペット11であって、前記繊維質バッキング19中に導電性ポリマー20が含まれていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内に敷設されるカーペット、コンピュータのオペレーション用チェアマット、部屋の出入り口に敷設される床面用マット、玄関マット、エレベータ内やエレベータホールの開閉扉前に敷設される床面用マット、あるいは自動車や電車、飛行機などの室内に敷設される床マットに適用される制電性防音カーペットに関する。詳細には優れた制電性と防音性を兼備した制電性防音カーペットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車床面上には、フェルト層や不織布層を有して吸音性能に優れる床カーペットが敷かれている。
【0003】
一方、この床カーペット上に載置される自動車用マットは、一般に不織基布にパイルを打ち込んだ繊維基材と、この繊維基材裏面に形成したバッキング層とから構成されていた。
【0004】
ところが、自動車用マットにおけるバッキング層は、塩化ビニル樹脂などの合成樹脂からなり、遮音層として機能するようになっていたので、この自動車用マットを床カーペット上に載置した場合、風切り音などの車外からの騒音は、自動車用マットのバッキング層によって跳ね返されてしまい、車外からの騒音についての十分な対策がなされていなかった。
【0005】
また、建物の室内や廊下の床面に敷設されるカーペットやマットについても同様に、繊維基材裏面のバッキング層が遮音層となっていて、カーペット上面から伝播する騒音については、これを跳ね返してしまい、十分な吸音対策がなされていなかった。
【0006】
本発明者は、このような事情に鑑み鋭意研究の結果、さらに優れた吸音性能を有する防音カーペットを提供している。
【0007】
この防音カーペットは、「繊維基材の裏面側にバッキング層を形成した防音カーペットであって、当該防音カーペットに、その表裏を貫通する多数の貫通孔を形成したことを特徴とする防音カーペット」を要旨とするものである(特許文献1参照)。
【0008】
また、室内に敷設されるカーペット、コンピュータのオペレーション用チェアマット、部屋の出入り口に敷設される床面用マット、玄関マット、エレベータ内やエレベータホールの開閉扉前に敷設される床面用マット、あるいは自動車や電車、飛行機などの室内に敷設される床マットには、人体に帯電した静電気を吸収除去することで、人体に帯電した静電気に起因する放電現象による人体への電撃ショックを解消することを目的とした制電性シートが提案されている。
【0009】
制電性シートとしては、例えば静電気を放電する機能を持つ放電紙を積層した繊維基材に導電性繊維を含むパイルを打ち込むと共に、繊維基材の放電紙側にバッキング層を形成したものがある(特許文献2参照)。
【0010】
本発明者は、上記防音シート並びに制電性シートに関し、鋭意検討を重ねた結果、優れた制電性と防音性とを兼備した制電性防音シートを提案している。
【0011】
この制電性防音シートは、図5に示すように「導電性繊維4を含み、静電気を空中放電させる繊維基材2の裏面側にバッキング層3を形成した制電性防音シート1において、前記繊維基材2の裏側にバッキング層3を積層するときに、前記バッキング層3上に導電性繊維5を散布すると共に、前記バッキング層3に針を貫通させて多数の貫通孔6を形成すると同時に前記針によって前記貫通孔6内に前記バッキング層3上に散布した導電性繊維5を押し込み、前記貫通孔6内に固定させたこと」を特徴とするものである(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−238730号公報(1〜3頁、図1〜3)
【特許文献2】特開2002−285480号公報(段落番号0002〜0003頁)
【特許文献3】特開2005−278906号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者は、優れた制電性と防音性とを兼備した制電性防音カーペットについて、特には制電性のさらなる改良と軽量化を目的として、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち請求項1記載の発明は、表面繊維基材の裏側に繊維質バッキングまたは穴あき樹脂バッキングを設けた制電性防音カーペットであって、
前記繊維質バッキングまたは穴あき樹脂バッキング中に導電性ポリマーが含まれていることを特徴とする制電性防音カーペットをその要旨とした。
【0014】
請求項2記載の発明は、繊維質バッキングが繊維質シートからなり、該繊維質シートの構成繊維間及び構成繊維表面に導電性ポリマーが付着していることを特徴とする請求項1記載の制電性防音カーペットをその要旨とした。
【0015】
請求項3記載の発明は、繊維質バッキングが繊維質シートからなり、該繊維質シートの構成繊維に導電性ポリマーを含む導電性繊維を用いたことを特徴とする請求項1記載の制電性防音カーペットをその要旨とした。
【0016】
請求項4記載の発明は、穴あき樹脂バッキングが発泡樹脂シートからなり、該発泡樹脂シートのシート表面に導電性ポリマーが付着していることを特徴とする請求項1記載の制電性防音カーペットをその要旨とした。
【0017】
請求項5記載の発明は、穴あき樹脂バッキングが発泡樹脂シートからなり、該発泡樹脂シート中に導電性ポリマーが添加されていることを特徴とする請求項1記載の制電性防音カーペットをその要旨とした。
【0018】
請求項6記載の発明は、穴あき樹脂バッキングが発泡樹脂シートからなり、該発泡樹脂シートが導電性ポリマーによって構成されていることを特徴とする請求項1記載の制電性防音カーペットをその要旨とした。
【0019】
請求項7記載の発明は、発泡樹脂シートに孔あけ加工がなされていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の制電性防音カーペットをその要旨とした。
【0020】
請求項8記載の発明は、表面繊維基材が、不織布、紙、織物、編物またはそれらの複合体からなり、該表面繊維基材の構成繊維間及び構成繊維表面に導電性ポリマーが付着していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の制電性防音カーペットをその要旨とした。
【0021】
請求項9記載の発明は、表面繊維基材が、不織布、紙、織物、編物またはそれらの複合体からなり、該表面繊維基材の構成繊維に導電性ポリマーを含む導電性繊維を用いたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の制電性防音カーペットをその要旨とした。
【0022】
請求項10記載の発明は、表面繊維基材に所定のボリュームにパイルが打ち込まれており、前記パイルの構成繊維間及び構成繊維表面に導電性ポリマーが付着していることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の制電性防音カーペットをその要旨とした。
【0023】
請求項11記載の発明は、表面繊維基材に所定のボリュームにパイルが打ち込まれており、前記パイルの構成繊維に導電性ポリマーを含む導電性繊維を用いたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の制電性防音カーペットをその要旨とした。
【0024】
請求項12記載の発明は、繊維質バッキングまたは穴あき樹脂バッキングと表面繊維基材とが接着剤層によって部分接着されており、前記接着剤層に導電性ポリマーが含まれていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の制電性防音カーペットをその要旨とした。
【0025】
請求項13記載の発明は、接着剤層が蜘蛛の巣状に設けたホットメルト樹脂からなることを特徴とする請求項12記載の制電性防音カーペットをその要旨とした。
【0026】
請求項14記載の発明は、導電性ポリマーは炭素添加ポリマーであることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の制電性防音カーペットをその要旨とした。
【0027】
請求項15記載の発明は、導電性ポリマーにおける炭素添加量が10〜35重量%であることを請求項14記載の制電性防音カーペットをその要旨とした。
【0028】
請求項16記載の発明は、導電性ポリマーは、アミノポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフェニレン、及びそれらの誘導体から選ばれる1種若しくは2種以上を含んでいることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の制電性防音カーペットをその要旨とした。
【0029】
請求項17記載の発明は、表面繊維基材の裏面側に、導電性繊維を構成繊維とし、静電気を空中放電する機能を持つ放電紙を配置したことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の制電性防音カーペットをその要旨とした。
【0030】
請求項18記載の発明は、繊維質バッキングまたは穴あき樹脂バッキングに金属フタロシアニン化合物またはそれらの誘導体を含むことを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の制電性防音カーペットをその要旨とした。
【0031】
請求項19記載の発明は、繊維質バッキングまたは穴あき樹脂バッキングの裏面に制電性防音カーペットを敷設する床面を係止する係止部が突出していることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の制電性防音カーペットをその要旨とした。
【発明の効果】
【0032】
本発明の制電性防音カーペットにあっては、制電性を付与する材料として導電性ポリマーを採用し、前記導電性ポリマーを繊維質バッキングまたは穴あき樹脂バッキング中に含ませたことから、制電性のさらなる改良と軽量化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の制電性防音カーペットを図面に示した好ましい実施の形態に従ってさらに詳しく説明する。本発明の制電性防音カーペットは、室内に敷設されるカーペット、コンピュータのオペレーション用チェアマット、部屋の出入り口に敷設される床面用マット、玄関マット、エレベータ内やエレベータホールの開閉扉前に敷設される床面用マット、あるいは自動車や電車、飛行機などの室内に敷設される床マットに好適に使用することができる。
【0034】
本発明の制電性防音カーペットには、表面繊維基材の裏側に繊維質バッキングを設けたものと、表面繊維基材の裏側に穴あき樹脂バッキングを設けたものとがある。図1に示す制電性防音カーペット11は、表面繊維基材12の裏側に繊維質バッキング13を設けた形態を示すものであり、該表面繊維基材12には、例えばポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維、或いはポリビニルアルコール系繊維から選ばれる1種若しくは2種以上を構成繊維とする不織布、紙、織物、編物、或いはそれらを組み合わせた複合体を用いることができる。このため、制電性防音カーペット11に当たった音は、表面繊維基材12の構成繊維間を通過する過程で該構成繊維と衝突を繰り返し、このときに音のエネルギーが熱エネルギーとして変換され、音の減衰がなされるようになっている。
【0035】
図1に示す形態では、表面繊維基材12としてポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のオレフィン系繊維を構成繊維とする不織布を採用した。尚、繊維基材の素材や構造は特に限定されず、当該制電性防音カーペットの用途や使用状態を考慮して適宜決定すればよい。
【0036】
また表面繊維基材12は導電性繊維を含ませることで静電気を空中放電するようにすこともできる。導電性繊維を含む表面繊維基材12の形態としては、後述するように、表面繊維基材12に導電性繊維18を含むパイル13aを打ち込んだ形態、或いは繊維基材12の裏面側に放電紙15を積層一体化させた形態を挙げることができる。
【0037】
表面繊維基材12にパイルをタフトした形態としては、導電性繊維18を含むパイル13aと導電性繊維18を含まないパイル13bの2種をタフトしたものを好ましい例として挙げることができる。パイル13a、13bとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの合成繊維、綿、羊毛などの天然繊維、レーヨンなどの半合成繊維を単独で、若しくは複数種組み合わせて混紡し、撚糸して所定の太さ(例えば1800〜4000デシテックス程度)にした糸からなるものを挙げることができる。この糸が表面繊維基材12に所定のボリューム(例えば1インチ間に5〜10本の割合)となるようにタフトされている。
【0038】
尚、図面に示す形態では、導電性繊維18を含むパイル13aと導電性繊維18を含まないパイル13bを表面繊維基材12にタフトした例を示したが、これに限らず、パイルのすべてを導電性繊維18を含むパイルとするなど、自由に変更することができる。
【0039】
上記表面繊維基材12にパイルをタフトした形態を採る場合、パイルの抜け止めを目的として接着剤層14を形成するとよい。接着剤層14は、例えばウレタン系湿気硬化型接着剤やホットメルト接着剤などからなる。尚、表面繊維基材12の裏面に後述する放電紙15やフェルト層17を設ける場合、接着剤層14はパイルの抜け止めと共に表面繊維基材12に放電紙15又はフェルト層17を接合する接合手段となる。この場合、接着剤層14は、表面繊維基材12を透過した音が通過することができるようドット状、ネット状、線状あるいは円状など部分接着可能なものを用いるとよい。図示の例では、ホットメルト接着剤からなる蜘蛛の巣状のものであって、接着時の熱およびまたは圧力で薄膜化されるものを用いた。
【0040】
部分接着可能な接着剤層14を採用した場合、放電紙15又はフェルト層17と表面繊維基材12とが部分接着されることになる。このため、接着剤層14により放電紙15又はフェルト層17と表面繊維基材12とが接着されると、放電紙15又はフェルト層17と表面繊維基材12との間には接着剤層14によって接着される部分と、接着されない部分とが形成されることになる。接着される部分は放電紙15又はフェルト層17と表面繊維基材12との剥離を防止するように作用する。接着されない部分は放電紙15又はフェルト層17と表面繊維基材12との間に隙間を形成し、この隙間内並びに放電紙15又はフェルト層17内を表面繊維基材12を透過した音が通過する過程で、音のエネルギーが熱エネルギーとして変換され、音の減衰がなされるようになっている。
【0041】
表面繊維基材12が放電紙15を含む形態を採る場合。放電紙15には、炭素繊維、金属繊維、導電性セラミックス繊維等の導電性繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維、パルプ、ポリビニルアルコールなどの熱可塑性バインダーを使用して抄紙して成り、その紙表面には導電性繊維の一部が突出しているものを用いるのが望ましい。このような放電紙15としては、例えば導電性繊維を3〜15重量%、アクリル繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維を20〜70重量%(前記導電性繊維及び合成繊維の繊度は、ともに1ないし5d、繊維長は3〜20mm)、残部木材パルプ及び繊維状の熱可塑性バインダーを上記範囲内の比率で混合し、この混合物を叩解機を通して更に細断して均一な混合物とした後、湿式抄紙法によって製造されたものがある。この放電紙13の1平方センチメートル当りには、50本以上の導電性繊維(図示しない)が同放電紙13表面より垂直方向或いは斜め方向に不規則に突出し、この突出部より静電気が空中放電するようになっている。
【0042】
また図1に示す形態では、上記放電紙15の内側に接着剤層16を介してフェルト層17を設けている。尚、接着剤層16は、上述の接着剤層14と同じであるためここでの説明は割愛する。フェルト層17は、例えばポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維、或いはポリビニルアルコール系繊維から選ばれる1種若しくは2種以上を構成繊維とするものを用いることができる。図示の例では、ポリオレフィン系繊維を構成繊維とするフェルトを用いた。上述した表面繊維基材12の裏側に繊維質バッキング19が設けられている。
【0043】
繊維質バッキング19は、前記表面繊維基材12の裏側で該表面繊維基材12の形態を保持するものであり、該不織布、織物、編物、紙、フェルト、或いはそれらを組み合わせた複合体などの繊維質シートからなる。繊維質シートは、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維、或いはポリビニルアルコール系繊維から選ばれる1種若しくは2種以上を構成繊維としたものが好ましい。
【0044】
図1に示す制電性防音カーペット11は、繊維質バッキング19中に導電性ポリマー20が含まれている。繊維質バッキング19中に導電性ポリマー20を含むことで、該制電性防音カーペット11における静電気のキャパシタは飛躍的に増大し、人体に帯電した静電気を瞬時に除去できるという効果を奏することになる。また、制電性防音カーペットに制電性を付与する付与手段として、導電性ポリマー20は鉄や銅といった金属類に比べてきわめて軽量であることから、制電性防音カーペットの軽量化により効果的である。
【0045】
このような作用効果を奏する導電性ポリマー20としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタンなどのベース中に、アミノポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフェニレン、それらの誘導体、及び炭素から選ばれる1種若しくは2種以上の導電性付与剤を添加したものを挙げることができる。
【0046】
導電性ポリマー20における導電性付与剤の添加としては5〜60重量%、好ましくは10〜35重量%、最適には15〜30重量%である。導電性付与剤の添加が5重量%を下回るとき、十分な導電性を得ることができず、導電性付与剤の添加が60重量%を上回るときには、上回る分だけの性能を得ることができず不経済となる恐れがある。 導電性ポリマー20の含有形態としては、繊維質バッキング19をなす繊維質シートに導電性ポリマー20を塗布又は含浸することで、繊維質シートの構成繊維間及び構成繊維表面に導電性ポリマー20を付着させた形態を挙げることができる。
【0047】
また別の含有形態としては、繊維質シートの構成繊維の全部又は一部を導電性ポリマー20を含む導電性繊維とした形態を挙げることができる。導電性ポリマー20を含む導電性繊維としては、例えば構成繊維の紡糸過程で繊維の構成成分として導電性ポリマー20を含ませたもの、或いは構成繊維に導電性ポリマー20を塗布又は含浸することで、繊維表面に導電性ポリマー20からなる層(又は部分)を形成したものを挙げることができる。
【0048】
尚、上述した表面繊維基材12が、導電性繊維18を含むパイル13aをタフトしたものであったり、該表面繊維基材12の裏側に放電紙15を設けたものであったりした場合、静電気のキャパシタはさらに増大すると共に、パイル13aに含まれる導電性繊維18並びに放電紙15からの空中放電効果によって、該制電性防音カーペット11に人体から接地され蓄積された静電気が空中放電されて、静電気のキャパシタはより増すことになり、より効果的な静電気の除去がなされるようになる。また、パイル13aに含まれる導電性繊維18及び放電紙15による静電気の空中放電はコロナ放電であることから、静電気の除去の他に電磁波も吸収されることになる。
【0049】
また、制電性防音カーペット11における繊維質バッキング19は、裏面に該制電性防音カーペット11を敷設する床面を係止する係止部が突出した形態を採ることもできる。図1に示す形態では、繊維質バッキングの裏面側に、二重織物を表織物と裏織物とに分離した織物の表織物又は裏織物を一体化し、前記表織物又は裏織物を構成する糸のカット端21を係止部とした。
【0050】
次に、図2に示す制電性防音カーペットについて説明する。図2に示す制電性防音カーペット31は、表面繊維基材32の裏側に穴あき樹脂バッキング39を設けたものである。尚、図2に示す制電性防音カーペット31における表面繊維基材32、導電性繊維38を含むパイル33a、導電性繊維38を含まないパイル33b、放電紙35、フェルト層37、接着剤層34、36については、図1に示す制電性防音カーペット11と同じであるため、ここでの説明は割愛する。
【0051】
穴あき樹脂バッキング39は、該制電性防音カーペットの補強および保形を行う目的で、表面繊維基材32の裏側に形成されるものである。図2に示す例において、穴あきバッキング39は発泡樹脂からなり、その構造は、表面繊維基材32を通過した音が該穴あき樹脂バッキング39内の微細孔を通して通過する過程で音の減衰がなされるよう連続気泡型構造となっている。
【0052】
穴あき樹脂バッキング39を構成する樹脂としては、例えばスチレンーブタンジエンースチレン共重合体、アクリルニトリルーブタジエン系共重合体、ウレタン樹脂等の高分子、スチレンーブタンジエンゴム、アクリルニトリルーブタンジエンゴム、ブタンジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等のゴム性高分子、またはこれらを複数種混合したものなどを挙げることができる。また、上記樹脂には必要に応じて充填剤、発泡剤、増粘剤、分散剤を加えることができる。
【0053】
充填剤としては、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルローズ、タルク、水酸化アルミニウム、酸化アンチモンなどが例示できる。発泡剤としては、例えば脂肪酸石けん、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、高級アルコール硫酸エステルナトリウム、Nーオクタデシルスルホコハク酸モノアミドジナトリウムなどが挙げられる。増粘剤としては、例えばポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルローズ、ポリビニルアルコール、カゼイン、発酵多糖類などが挙げられるが、好ましくは低分子量のポリアクリル酸ソーダである。分散剤としては、例えばトリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダなどが例示できる。
【0054】
表面繊維基材32の裏側に設けた穴あき樹脂バッキング39は、多数の貫通孔41と共に該制電性防音カーペット31を床面に敷設したとき、床面を係止する係止部として機能する多数のズレ止め用のスパイク42を有している。穴あき樹脂バッキング39への貫通孔41の形成(孔あけ加工)とスパイク42の形成は、例えば図2及び図3に示すようにピン43と凹部44をロール表面に突設したピン付きロール45と、ロール表面にゴム層46を設け、前記ピン付きロール45を押圧する押圧ロール47とを用いて行うことができる。すなわち、これらピン付きロール45と押圧ロール46との間に、加熱によって半ゲル化状態とした発泡樹脂シート48と表面繊維基材32とを合わせて挿入することにより行うことができる。この場合、発泡樹脂シート48に貫通孔41とスパイク42を形成して穴あき樹脂バッキング39を製造するのと同時に穴あき樹脂バッキング39と表面繊維基材32とを圧着もなされるようになっている。
【0055】
またピン付きロール45内には冷水が流通し、ロール表面が冷却されるようになっているため、穴あき樹脂バッキング39がピン付きロール45に押圧ロール47によって押圧されることにより冷却され、該ピン付きロール45のピン43及び凹部44によって形成された貫通孔41及びスパイク42の形状が固定されるようになっている。
【0056】
図3に示すピン付きロール45におけるピン43は、図2に示す穴あき樹脂バッキング39の貫通孔41に対応する形状を有するものである。このピン43を図3に示すように、発泡樹脂シート48側から貫通させることで、得られるバッキング39には、開口方向に向かって径大となる円錐状をなしており、孔上部に鋭角な傾斜面を有する貫通孔41が穿孔されるようになる。
【0057】
また、穴あき樹脂バッキング39の貫通孔41の形成(孔あけ加工)と、穴あき樹脂バッキング39と表面繊維基材32の圧着は、図4(a)〜(f)に示す多数のピン49を設けた型50を有するフラットプレス機51を用いて行うこともできる。
【0058】
図示の例では、型50表面には、多数のピン49と該制電性防音カーペット31を敷設する床面を係止する係止部として機能するズレ止め用のスパイク42を形成する凹部52が形成されており(図4(a)参照)、この型50内にゾル状の発泡樹脂を流し込み(図4(b)参照)、次いで、型50をバーナー53によって加熱して前記発泡樹脂を半ゲル化し(図4(c)参照)、次いで、半ゲル化された発泡樹脂上に表面繊維基材32を置き(図4(d)参照)、その後、押型54によって前記表面繊維基材32と発泡樹脂とを押圧することで、多数の貫通孔41とズレ止め用のスパイク42を有する穴あき樹脂バッキング39の形成と、穴あき樹脂バッキング39と表面繊維基材32の圧着が同時になされるようになっている(図4(e)参照)。こうして得られた制電性吸音カーペット31は、型50が冷水又は冷風55によって冷やされることで、前記穴あき樹脂バッキング39における多数の貫通孔41とズレ止め用のスパイク42の形状が固定されるようになっている(図4(f)参照)。
【0059】
こうして貫通孔41が穿孔された穴あき樹脂バッキング39を有する制電性吸音カーペット31にあっては、表面繊維基材32を通過してバッキング39に到達した音が、このバッキング39の連続気泡構造をなす内部を通過する過程で、さらに多数の貫通孔41を構成する各孔壁面に衝突を繰り返し、やがて孔の開口から飛び出していく過程で、音の減衰がなされるようになっている。
【0060】
また、図2に示す制電性吸音カーペット31における穴あき樹脂バッキング39には、導電性ポリマー40が含まれている。穴あき樹脂バッキング39中に導電性ポリマー40を含むことで、該制電性防音カーペット31における静電気のキャパシタは飛躍的に増大し、人体に帯電した静電気を瞬時に除去できるという効果を奏することになる。また、制電性防音カーペットに制電性を付与する付与手段として、導電性ポリマー40は鉄や銅といった金属類に比べてきわめて軽量であることから、制電性防音カーペットの軽量化により効果的である。
【0061】
このような作用効果を奏する導電性ポリマー40としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタンなどのベース中に、アミノポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフェニレン、それらの誘導体、及び炭素から選ばれる1種若しくは2種以上の導電性付与剤を添加したものの他、穴あき樹脂バッキング39を構成する樹脂、例えばスチレンーブタンジエンースチレン共重合体、アクリルニトリルーブタジエン系共重合体、ウレタン樹脂等の高分子、スチレンーブタンジエンゴム、アクリルニトリルーブタンジエンゴム、ブタンジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等のゴム性高分子、またはこれらを複数種混合したものをベースとして、このベースにアミノポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフェニレン、それらの誘導体、及び炭素から選ばれる1種若しくは2種以上の導電性付与剤を添加したものを挙げることができる。
【0062】
導電性ポリマー40における導電性付与剤の添加としては5〜60重量%、好ましくは10〜35重量%、最適には15〜30重量%である。導電性付与剤の添加が5重量%を下回るとき、十分な導電性を得ることができず、導電性付与剤の添加が60重量%を上回るときには、上回る分だけの性能を得ることができず不経済となる恐れがある。
【0063】
尚、上述の導電性ポリマー20、40は表面繊維基材12、32にも含ませることができる。その含有形態としては、該表面繊維基材12、32に導電性ポリマー20、40を塗布又は含浸することで、該表面繊維基材12、32の構成繊維間及び構成繊維表面に導電性ポリマー20、40を付着させる形態、該表面繊維基材12、32の構成繊維の全部又は一部を導電性ポリマー20、40を含む導電性繊維とした形態を挙げることができる。導電性ポリマー20、40を含む導電性繊維としては、例えば構成繊維の紡糸過程で繊維の構成成分として導電性ポリマー20、40を含ませたもの、或いは構成繊維に導電性ポリマー20、40を塗布又は含浸することで、繊維表面に導電性ポリマー20、40からなる層(又は部分)を形成したものを挙げることができる。
【0064】
また、表面繊維基材12、32に所定のボリュームにパイル13a、13b、33a、33bを打ち込む場合、前記パイル13a、13b、33a、33bの構成繊維間及び構成繊維表面に導電性ポリマー20、40が付着している形態や、表面繊維基材12、32に所定のボリュームに打ち込まれるパイル13a、13b、33a、33bの構成繊維に導電性ポリマー20、40を含む導電性繊維を用いる形態を採ることもできる。
【0065】
また、導電性ポリマー20、40は、フェルト層17、37や接着剤層14、16、34、36にも含ませることもできる。
【0066】
このように、繊維質バッキング19、穴あき樹脂バッキング39の他に、該制電性防音カーペット11、31を構成する表面繊維基材12、32、パイル13a、13b、33a、33b、フェルト層17、37、或いは接着剤層14、16、34、36に導電性ポリマー20、40を含ませることで、該制電性防音カーペット11、31の静電気のキャパシタは飛躍的に向上し、人体に帯電した静電気はより効果的に除去されることになる。
【0067】
また、本発明の制電性防音カーペット11、31における繊維質バッキング19又は穴あき樹脂バッキング39は、下記化学式に示す金属フタロシアニン化合物またはそれらの誘導体を含む形態を採ることもできる。尚、式中の金属Mは、Fe、Co、Mn、Ti、V、Ni、Cu、Zn、Mo、W、Osから選択される金属)である。
【0068】
【化1】

【0069】
フタロシアニン化合物またはそれらの誘導体を含む形態としては、繊維質バッキング19の繊維質シートの構成繊維として、フタロシアニン化合物またはそれらの誘導体をを担持した天然繊維、合成繊維、半合成繊維または再生繊維を混紡したもの、または穴あき樹脂バッキング39を構成する樹脂中に、フタロシアニン化合物またはそれらの誘導体をを担持した天然繊維、合成繊維、半合成繊維または再生繊維を配合したものが挙げられる。フタロシアニン化合物またはそれらの誘導体は、消臭、抗アレルギー機能に優れており、該フタロシアニン化合物またはそれらの誘導体を含むことで、得られる制電性防音カーペットは、消臭、抗アレルギー機能を持つことになる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の制電性防音カーペットを示す要部拡大断面図である。
【図2】本発明の制電性防音カーペットの別例を示す要部拡大断面図である。
【図3】図2に示す制電性防音カーペットを製造する製造装置を示す模式図である。
【図4(a)】図2に示す制電性防音カーペットを製造する製造装置であって、多数のピンと凹部を有する型を示す模式図である。
【図4(b)】図2に示す制電性防音カーペットを製造する製造装置であって、型内に樹脂を流し込んだ状態を示す模式図である。
【図4(c)】図2に示す制電性防音カーペットを製造する製造装置であって、型内に樹脂を加熱して半ゲル化させた状態を示す模式図である。
【図4(d)】図2に示す制電性防音カーペットを製造する製造装置であって、型内の半ゲル化させた樹脂上に表面繊維基材を置いた状態を示す模式図である。
【図4(e)】図2に示す制電性防音カーペットを製造する製造装置であって、型内の半ゲル化させた樹脂上に置いた表面繊維基材を押型で押圧することで、多数の貫通孔とズレ防止用スパイクとを有する穴あき樹脂バッキングの形成と穴あき樹脂バッキングと表面繊維基材の圧着を同時に行った状態を示す模式図である。
【図4(f)】図2に示す制電性防音カーペットを製造する製造装置であって、型を冷却することで、穴あき樹脂バッキングに形成した多数の貫通孔とズレ防止用スパイクの形状を固定した状態を示す模式図である。
【図5】従来の制電性防音カーペットを示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0071】
12、32・・・表面繊維基材
13a、13b、33a、33b・・・パイル
14、16、34、36・・・接着剤層
19・・・繊維質バッキング
20、40・・・導電性ポリマー
39・・・穴あき樹脂バッキング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面繊維基材の裏側に繊維質バッキングまたは穴あき樹脂バッキングを設けた制電性防音カーペットであって、
前記繊維質バッキングまたは穴あき樹脂バッキング中に導電性ポリマーが含まれていることを特徴とする制電性防音カーペット。
【請求項2】
繊維質バッキングが繊維質シートからなり、該繊維質シートの構成繊維間及び構成繊維表面に導電性ポリマーが付着していることを特徴とする請求項1記載の制電性防音カーペット。
【請求項3】
繊維質バッキングが繊維質シートからなり、該繊維質シートの構成繊維に導電性ポリマーを含む導電性繊維を用いたことを特徴とする請求項1記載の制電性防音カーペット。
【請求項4】
穴あき樹脂バッキングが発泡樹脂シートからなり、該発泡樹脂シートのシート表面に導電性ポリマーが付着していることを特徴とする請求項1記載の制電性防音カーペット。
【請求項5】
穴あき樹脂バッキングが発泡樹脂シートからなり、該発泡樹脂シート中に導電性ポリマーが添加されていることを特徴とする請求項1記載の制電性防音カーペット。
【請求項6】
穴あき樹脂バッキングが発泡樹脂シートからなり、該発泡樹脂シートが導電性ポリマーによって構成されていることを特徴とする請求項1記載の制電性防音カーペット。
【請求項7】
発泡樹脂シートに孔あけ加工がなされていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の制電性防音カーペット。
【請求項8】
表面繊維基材が、不織布、紙、織物、編物またはそれらの複合体からなり、該表面繊維基材の構成繊維間及び構成繊維表面に導電性ポリマーが付着していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の制電性防音カーペット。
【請求項9】
表面繊維基材が、不織布、紙、織物、編物またはそれらの複合体からなり、該表面繊維基材の構成繊維に導電性ポリマーを含む導電性繊維を用いたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の制電性防音カーペット。
【請求項10】
表面繊維基材に所定のボリュームにパイルが打ち込まれており、前記パイルの構成繊維間及び構成繊維表面に導電性ポリマーが付着していることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の制電性防音カーペット。
【請求項11】
表面繊維基材に所定のボリュームにパイルが打ち込まれており、前記パイルの構成繊維に導電性ポリマーを含む導電性繊維を用いたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の制電性防音カーペット。
【請求項12】
繊維質バッキングまたは穴あき樹脂バッキングと表面繊維基材とが接着剤層によって部分接着されており、前記接着剤層に導電性ポリマーが含まれていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の制電性防音カーペット。
【請求項13】
接着剤層が蜘蛛の巣状に設けたホットメルト樹脂からなることを特徴とする請求項12記載の制電性防音カーペット。
【請求項14】
導電性ポリマーは炭素添加ポリマーであることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の制電性防音カーペット。
【請求項15】
導電性ポリマーにおける炭素添加量が10〜35重量%であることを請求項14記載の制電性防音カーペット。
【請求項16】
導電性ポリマーは、アミノポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフェニレン、及びそれらの誘導体から選ばれる1種若しくは2種以上を含んでいることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の制電性防音カーペット。
【請求項17】
表面繊維基材の裏面側に、導電性繊維を構成繊維とし、静電気を空中放電する機能を持つ放電紙を配置したことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の制電性防音カーペット。
【請求項18】
繊維質バッキングまたは穴あき樹脂バッキングに金属フタロシアニン化合物またはそれらの誘導体を含むことを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の制電性防音カーペット。
【請求項19】
繊維質バッキングまたは穴あき樹脂バッキングの裏面に制電性防音カーペットを敷設する床面を係止する係止部が突出していることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の制電性防音カーペット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図4(d)】
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【図4(e)】
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【図4(f)】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−106365(P2009−106365A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279293(P2007−279293)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000149664)株式会社大和 (35)
【出願人】(592083993)株式会社八千代 (34)
【出願人】(592084004)株式会社祥永 (34)
【Fターム(参考)】