説明

制震ダンパー効果比較検証装置

【課題】粘弾性体を使用したブレース型の制震ダンパーを構成する制震構造の建物が、振動エネルギーを吸収して建物の揺れを抑えている仕組みを容易に把握することができる制震ダンパー効果比較検証装置を提供する。
【解決手段】制震ダンパー効果比較検証装置20は、箱体22と、箱体22の上に設置された矩形平板形状の振動板23と、振動板23の上に並べて設置された2つの建物模型24及び建物模型25と、箱体22の正面側の側面に取り付けられた2つの手動比較部26及び手動比較部27とを備えている。建物模型24と建物模型25とは同一形状に構成され、いずれもブレース型の制震ダンパー60及び61を構成する制震構造を有している。手動比較部26と手動比較部27とも同一形状に構成されている。相違点は、建物模型24及び手動比較部26には、粘弾性体が使用され、建物模型25及び手動比較部27には、弾性体が使用されている点である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は制震ダンパー効果比較検証装置に関し、特に制震構造の建物が振動エネルギーを吸収する仕組みを説明する制震ダンパー効果比較検証装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動台の上に制震構造の建物模型を設置して、その振動台を振動させて制震構造の建物模型を振動させて、制震構造の建物の耐震性能を学習する共振現象学習装置が提案されている(特許文献1参照)。この装置に設置された制震構造の建物模型は、弾性柱と、弾性柱にピン結合される床材と、弾性柱にピン結合される屋根と、屋根の下面から吊り下げられた付加重量とから構成されている。振動台を水平方向に振動させると、上記付加質量が揺れることにより振動エネルギーが吸収され、制震構造の建物模型の揺れが抑えられる。これをみて、制震構造の建物が地震には有効であることを学習することができるようになっている。
【0003】
ところで、振動台の上に設置された建物模型の制震構造と実際の建物の制震構造とでは、その構成は全く異なっている。例えば、実際の建物の制震構造として、粘弾性体を使用したブレース型の制震ダンパーを構成しているものがある。したがって、住宅購入予定者等に説明する場合、制震構造の一般的な仕組みについては上記装置を利用して、実際の建物の制震構造の仕組みについては、実物大の制震構造の部分模型やカタログを利用している。尚、実物大の制震構造の部分模型を振動させることは現実的ではない。
【特許文献1】特開2000−148004号公報(第9頁、図14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の装置では、振動台の上に設置された建物模型の制震構造と実際の建物の制震構造の構成が全く異なるため、粘弾性体を使用したブレース型の制震ダンパーを構成する制震構造の仕組みや、粘弾性体を使用していることの効果を理解し難い。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、粘弾性体を使用したブレース型の制震ダンパーを構成する制震構造の建物が、振動エネルギーを吸収して建物の揺れを抑えている仕組みを容易に把握することができる制震ダンパー効果比較検証装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、制震構造の建物が振動エネルギーを吸収する仕組みを説明する制震ダンパー効果比較検証装置であって、少なくとも所定の水平方向に振動する振動板と、振動板の上に設置された所定の水平方向に変形可能なほぼ同一形状からなる2つの建物模型とを備え、建物模型の各々は、第1斜材と、第2斜材と、その第1斜材とその第2斜材とを連結する連結部材とを有すると共に所定の水平方向の振動に対して機能するように配置されたブレース型の制震ダンパーを含み、一方の建物模型の第1連結部材には粘弾性体が使用され、他方の前記建物模型の第2連結部材には弾性体が使用されるものである。
【0007】
このように構成すると、振動板を振動させたときに、実際の建物の制震構造の構成に近い制震ダンパーを有する建物模型において、弾性体を使用した建物模型と比較して、粘弾性体を使用した建物模型の揺れが小さくなる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、振動板の下に設置される箱体と、箱体に取り付けられ、手動により変形させて粘弾性体及び弾性体の変形態様を比較するほぼ同一形状からなる2つの手動比較部とを更に備え、手動比較部の各々は、把手と、支持板と、その把手とその支持板とを連結する連結部材とを含み、一方の手動比較部の第3連結部材には粘弾性体が使用され、他方の手動比較部の第4連結部材には弾性体が使用されるものである。
【0009】
このように構成すると、手動比較部の各々の把手を同程度に移動させると、弾性体を使用した手動比較部と比較して、粘弾性体を使用した手動比較部はゆっくりと変形前の状態に戻る。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、第1連結部材及び第2連結部材は着脱自在に構成され、建物模型の各々の間で入れ替えることができるものである。
【0011】
このように構成すると、振動板を振動させたときの2つの建物模型の揺れ方も入れ替わる。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項2又は請求項3記載の発明の構成において、第3連結部材及び第4連結部材は着脱自在に構成され、手動比較部の各々の間で入れ替えることができるものである。
【0013】
このように構成すると、手動比較部の各々の把手を同程度に移動させたときの2つの手動比較部の変形前の状態に戻る速さも入れ替わる。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項2から請求項4のいずれかに記載の発明の構成において、前記第1連結部材と前記第3連結部材とを入れ替えることができ、前記第2連結部材と前記第4連結部材とを入れ替えることができるものである。
【0015】
このように構成すると、手動比較部で体感した粘弾性体や弾性体を用いて建物模型の揺れが確認される。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の構成において、建物模型の各々は、正面視矩形形状のフレームと2つの制震ダンパーとを含み、制震ダンパーの各々は、正面視において、フレームを上下に2等分する線を基準に線対称に、上下に分割された矩形形状の対角線に沿って配置されたものである。
【0017】
このように構成すると、制震構造が更に実物に近くなる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、振動板を振動させたときに、実際の建物の制震構造の構成に近い制震ダンパーを有する建物模型において、弾性体を使用した建物模型と比較して、粘弾性体を使用した建物模型の揺れが小さくなる。そのため、振動エネルギーが粘弾性体に吸収されていることがわかる。又、粘弾性体を使用したブレース型の制震ダンパーを構成する制震構造の建物が振動エネルギーを吸収して建物の揺れを抑えることを容易に把握することができる。
【0019】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、手動比較部の各々の把手を同程度に移動させると、弾性体を使用した手動比較部と比較して、粘弾性体を使用した手動比較部はゆっくりと変形前の状態に戻るため、粘弾性体と弾性体との固さや変形態様の相違を直接的に体感することができる。
【0020】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、振動板を振動させたときの2つの建物模型の揺れ方も入れ替わるため、粘弾性体及び弾性体以外の部分により建物模型の揺れが相違していないことを確認することができる。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項2又は請求項3記載の発明の効果に加えて、手動比較部の各々の把手を同程度に移動させたときの2つの手動比較部の変形前の状態に戻る速さも入れ替わるため、粘弾性体及び弾性体以外の部分により手動比較部の変形前の状態に戻る速さが相違していないことを確認することができる。
【0022】
請求項5記載の発明は、請求項2から請求項4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、手動比較部で体感した粘弾性体や弾性体を用いて建物模型の揺れが確認されるため、粘弾性体が振動エネルギーを吸収していることを確実に確認することができる。
【0023】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、制震構造が更に実物に近くなるため、実物に近い制震構造の建物模型により振動エネルギーが吸収される仕組みを確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
【0025】
図1はこの発明の第1の実施の形態による制震ダンパー効果比較検証装置の概略構成を示した斜視図である。
【0026】
図1を参照して、制震ダンパー効果比較検証装置20は、箱形状の箱体22と、箱体22の上に設置された矩形平板形状の振動板23と、振動板23の上に並べて設置された2つの建物模型24及び建物模型25と、箱体22の正面側の側面に取り付けられた2つの手動比較部26及び手動比較部27とを備えている。箱体22の内部には、振動板23を所定の水平方向である左右方向(図1で示した矢印方向)に振動させる図示しない振動手段を備えている。この振動手段は、地震を模擬した振動を発生させる。又、この振動手段は、振動周期を調整することができ、所定の建物模型の固有周期に一致させた振動を発生させ、その建物模型に共振現象を発生させることができる。建物模型24と建物模型25とは同一形状に構成され、いずれもブレース型の制震ダンパー60及び61を構成する制震構造を有している。手動比較部26と手動比較部27とも同一形状に構成されている。相違点は、建物模型24及び手動比較部26には、粘弾性体が使用され、建物模型25及び手動比較部27には、弾性体が使用されている点である。そして、粘弾性体が使用されている建物模型24の手前には粘弾性体が使用されている手動比較部26が配置され、弾性体が使用されている建物模型25の手前に弾性体が使用されている手動比較部27が配置されている。
【0027】
制震ダンパー60は、第1斜材34と、第2斜材35と、第1斜材34と第2斜材35とを連結する第1連結部材36とを備え、制震ダンパー61は、第1斜材34と、第2斜材35と、第1斜材34と第2斜材35とを連結する第2連結部材37とを備えている。手動比較部26は、把手38と、支持板39と、把手38と支持板39とを連結する第3連結部材40とを備え、手動比較部27は、把手38と、支持板39と、把手38と支持板39とを連結する第4連結部材41とを備えている。第1連結部材36及び第3連結部材40には粘弾性体が使用され、第2連結部材37及び第4連結部材41には弾性体が使用されている。
【0028】
建物模型24は、矩形平板状の1階床29と、1階床29の上方に配置される矩形平板状の2階床30と、2階床30の上方に配置される切妻形状の屋根31と、それらの角部に配置されると共にそれらを接続する柱28とを備えている。1階床29、2階床30及び屋根31は、平面視において同一の大きさで重なるように設定されている。柱28と、1階床29、2階床30及び屋根31とは、ボルト等の固定具32により固定されて接続されている。1階床29と2階床30の間には、平面視において1階床29を前後方向(図1で示した矢印方向に直交する方向)に2等分する線に沿って、上記制震ダンパー60が組み込まれたダンパーパネル42が設置されている。具体的には、ダンパーパネル42は、1階床29の上面と2階床30の下面の各々に取り付けられた2本のガイド33に位置決めされながら、図示しない取付けネジ等の固定具により1階床29の上面と2階床30の下面に固定されている。ダンパーパネル42の幅は、正面視において、1階床29の幅とほぼ同一の大きさに設定されている。柱28は、可撓性材料からなり垂直に延びる細長い平板状に形成され、広い面が左右方向をむくように配置されている。柱28をこのように配置すると、柱28は、左右方向には屈曲して変形し易く、前後方向には変形しにくくなる。したがって、建物模型24が、左右方向には変形し易く、前後方向には変形しにくくなり、左右方向に変形可能となる。1階床29は、図示しないボルト等の固定具により振動板23に固定され、振動板23と一体的に振動するようになっている。建物模型25は、ダンパーパネル43に組み込まれた制震ダンパー61の第2連結部材37に弾性体が使用されている点以外は、建物模型24と同一の構成となっている。
【0029】
販売者は、この制震ダンパー効果比較検証装置20を使用して、粘弾性体を使用したブレース型の制震ダンパーを有する制震構造の仕組みや、粘弾性体を使用することにより振動エネルギーが吸収されている効果を住宅購入予定者等に説明する。振動板23を振動させると、建物模型24及び建物模型25には同一の大きさの振動エネルギーが与えられ、建物模型24及び建物模型25は各々左右方向に振動する。どちらも同一の構成で制震構造を有しているが、建物模型24と建物模型25とでは揺れの大きさや揺れ方が相違する。住宅購入予定者等は、粘弾性体と弾性体とでは、揺れの大きさや揺れ方が相違することを視覚的に把握する。手動比較部26や手動比較部27において、把手38を同程度に移動させると、手動比較部26と手動比較部27とでは、把手38を同程度に移動させるときに必要な力の大きさや変形前の状態に戻る速さが相違する。住宅購入者等は、粘弾性体及び弾性体の性質を直接的に体感する。
【0030】
次に、ダンパーパネル42について説明する。
【0031】
図2は図1で示したダンパーパネルの概略構成を示した正面図であり、図3は、その(1)が図2で示したI―Iラインの断面図であり、その(2)が図2で示したII―IIラインの断面図である。
【0032】
図2及び図3を参照して、ダンパーパネル42は、垂直フレーム45及び水平フレーム46からなる正面視矩形形状のフレーム44と、2つの制震ダンパー60とを備えている。2つの制震ダンパー60の各々は、正面視において、フレーム44を上下に2等分する図2の2点鎖線で示した線を基準に線対称に、上下に分割された矩形形状の対角線に沿って配置されている。上下に配置された2つの制震ダンパー60はフレーム44に取り付けられている位置は異なるが、同一形状である。制震ダンパー60の紙面左側の端部は、上記フレーム44のコーナー部において垂直フレーム45に取り付けられたガセットプレート47を介してフレーム44に接続されている。制震ダンパー60の紙面右側の端部は、垂直フレーム45の中間部分に取り付けられたガセットプレート48を介してフレーム44に接続されている。ガセットプレート48には、2つの制震ダンパー60が接続されている。垂直フレーム45及び水平フレーム46は断面コの字状を有し、開放面が内方となるように配置され、各々の端部が接続されている。フレーム44は、垂直フレーム45の各々の外方側端縁を基準にして紙面上側の水平フレーム46がほぼ水平を保ったまま移動して正面視において平行四辺形となるように変形する。
【0033】
制震ダンパー60は、細長い平板状の第1斜材34及び第2斜材35と、第1斜材34と第2斜材35とを連結する第1連結部材36とを備えている。第1斜材34の紙面左側端部には円形の孔が形成され、その孔にドライベアリング50が両面から差し込まれて取り付けられている。第1斜材34は、ドライベアリング50とガセットプレート47に形成された孔に、ストリッパボルト51を挿通させてワッシャ52を介してナット53に螺合させることにより、ストリッパボルト51の軸を中心に回動可能にガセットプレート47に取り付けられている。第2斜材35も、紙面右側の端部が、ストリッパボルト51が差し込まれる方向を逆にして第1斜材34と同様に回動可能にガセットプレート48に取り付けられている。ガセットプレート47及びガセットプレート48は、垂直フレーム45の内方面に接触させて垂直フレーム45に取り付けられている。
【0034】
第1斜材34と第2斜材35とは、中央側の端部の各々が所定の長さだけ互いに重なるように設定され、第1斜材34と第2斜材35の対向する面がスライドガイド56を介して接続されている。スライドガイド56は、ブロック57とレール58とからなり、両者はその長手方向にスライドするようになっている。第1斜材34にはレール58が、第2斜材35にはブロック57が、その長手方向を第1斜材34及び第2斜材35の長手方向に一致させるように取り付けられている。このような構成とすることで、制震ダンパー60は、スライドガイド56に規制されながら伸縮するようになっている。
【0035】
又、第1斜材34より前方において、第1斜材34と第2斜材35とは第1連結部材36を介して連結されている。第1斜材34の中央側上面には上保持部材54が取り付けられ、第2斜材35の中央側下面には下保持部材55が取り付けられている。上保持部材54及び下保持部材55は、各々の両端に正面視ほぼJ字状のひっかかり部が形成されている。下保持部材55は、第2斜材35と接触する部分が断面視において鉤状に構成され、第1斜材34と第2斜材35とがスライドしたときに、第1斜材34の下面と下保持部材55の上面が干渉しないようになっている。第1連結部材36は、対向するように配置される矩形平板状のプレート49及びプレート49とそれらの長手方向の中心線に沿って配置され、それらを接続する矩形平板状の粘弾性体である粘弾性ゴム62とからなり、断面倒立H状に構成されている。第1連結部材36のプレート49が上保持部材54及び下保持部材55に形成された上記ひっかかり部の溝に前後方向(図2の紙面と貫通する方向)から嵌め込まれている。このようにして、第1連結部材36は制震ダンパー60に取り付けられ、そして、第1連結部材36は、制震ダンパー60から着脱自在となっている。
【0036】
建物模型25に取り付けられているダンパーパネル43は、制震ダンパー61の第2連結部材37に弾性体が使用されている点以外は、ダンパーパネル42と同一の構成となっている。図2で示したように、第2連結部材37は、第1連結部材36と同一の形状を有しており、一対のプレート49・49と、それらを接続する弾性体である弾性ゴム63とから構成されている。
【0037】
ダンパーパネル42・43が上記のように構成されているため、実際の建物の制震構造の構成に近い制震ダンパーを有する建物模型24・25において、揺れの大きさや揺れ方を確認することができる。
【0038】
次に、手動比較部26について説明する。
【0039】
図4は図1で示した手動比較部の概略構成を示した正面図であり、図5は図1で示した手動比較部の概略構成を示した平面図であり、図6は図4及び図5で示したVI―VIラインの断面図である。
【0040】
図4、図5及び図6を参照して、手動比較部26は、箱体22の側面に沿って延びるように箱体22に取り付けられた矩形平板状の背板65と、背板65の上部から水平に前方に延びるように接続された厚みのある矩平板状の支持板39と、支持板39と背板65とに直交するように所定の間隔をあけて接続される矩形から一角が大きく面取りされた平板状の2つの補強板66とを備えている。補強板66は、支持板39が鉛直荷重を受けた場合に、支持板39が手前に傾斜するのを防止するために取り付けられている。更に、手動比較部26は、把手38と、把手38と上記支持板39とを連結する第3連結部材40と、把手38と上記支持板39とを接続するスライドガイド71とを備えている。
【0041】
把手38は、長手方向を左右方向に合わせて配置された断面矩形形状を有した棒状からなる棒状部76と、軸方向を前後方向に合わせて棒状部76の両端に各々接続された円柱状の円柱状部75とを備えている。棒状部76の下面と支持板39の上面がスライドガイド71を介して接続されている。スライドガイド71は、ブロック72とレール73とからなり、両者はその長手方向にスライドするようになっている。棒状部76にはレール58が、支持板39にはブロック57が、その長手方向を棒状部76の長手方向に一致させるように取り付けられている。このような構成とすることで、把手38は、スライドガイド71に規制されながら左右方向にスライドするようになっている。
【0042】
又、把手38より前方において、把手38と支持板39とは第3連結部材40を介して連結されている。把手38の棒状部76の中央手前側側面には上保持部材67が取り付けられ、支持板39の中央手前側上面には下保持部材68が取り付けられている。上保持部材67及び下保持部材68は、各々の両端に平面視ほぼコの字状のひっかかり部が形成されている。上保持部材67と支持板39との間にはクリアランスが設けられ、把手38がスライドしたときに、上保持部材67の下面と支持板39の上面が干渉しないようになっている。第3連結部材40は、対向するように配置される矩形平板状のプレート49及びプレート49とそれらの長手方向の中心線に沿って配置され、それらを接続する矩形平板状の粘弾性体である粘弾性ゴム62とからなり、断面倒立H状に構成されている。第3連結部材40のプレート49が上保持部材67及び下保持部材68に形成された上記ひっかかり部の溝に上下方向(図5の紙面と貫通する方向)から嵌め込まれている。このようにして、第3連結部材40は手動比較部26に取り付けられ、そして、第3連結部材40は、手動比較部26から着脱自在となっている。
【0043】
把手38の棒状部76の中央奥側側面には後方に突出した四角柱状の突出部材69が取り付けられている。一方、支持板39の上面には、上記突出部材69を所定の間隔をあけて左右から挟むように四角柱状のストッパー部材70・70が立設されている。このように構成されているため、把手38がスライドガイド71に規制される範囲を超えてスライドしようとしても、突出部材69がストッパー部材70に当接して、把手38は所定の範囲を超えてスライドしないようになっている。したがって、手動比較部26から第3連結部材が取り外されているときに、把手38がスライドして手動比較部26から脱落してしまうことを防止することができる。
【0044】
建物模型25の手前に取り付けられている手動比較部27は、第4連結部材41に弾性体が使用されている点以外は、手動比較部26と同一の構成となっている。図5で示したように、第4連結部材41は、第3連結部材40と同一の形状を有しており、一対のプレート49・49と、それらを接続する弾性体である弾性ゴム63とから構成されている。更に、第1連結部材36と第3連結部材40とは同一の形状を有し、第2連結部材37と第4連結部材41とは同一の形状を有している。したがって、建物模型24・25及び手動比較部26・27において、第1連結部材36、第2連結部材37、第3連結部材40及び第4連結部材41はいずれも入れ替えることができるようになっている。
【0045】
手動比較部26・27が上記のように同一に構成されているため、粘弾性ゴム62及び弾性ゴム63の固さや変形態様の相違を直接的に体感しながら確認することができる。
【0046】
次に、建物模型24が振動してダンパーパネル42が変形した状態について説明する。
【0047】
図7は図1で示したダンパーパネルが変形した状態を示した正面図であり、図2に対応した図である。
【0048】
図7を参照して、建物模型24が右方向に変形した場合のダンパーパネル42の変形状態を示している。ダンパーパネル42のフレーム44全体は正面視平行四辺形に変形している。垂直フレーム45・45が図7の矢印で示した方向に、垂直フレーム45・45の下方外方端縁を支点として傾斜している。上側の水平フレーム46は、図7の矢印で示した方向に、ほぼ水平を維持しながら、垂直フレーム45・45の上方外方端縁を支点として移動している。フレーム44がこのように変形している状態では、下側の制震ダンパー60は引張する力を受けるため粘弾性ゴム62を正面視平行四辺形に変形させながら伸び、上側の制震ダンパー60は圧縮する力を受けるため粘弾性ゴム62を正面視平行四辺形に変形させながら縮んでいる。このとき、スライドガイド56のブロック57とレール58も制震ダンパー60の各々の伸縮に合わせてスライドしている。制震ダンパー60はスライドガイド56に規制されて伸縮するため、第1斜材34と第2斜材35の接続部分で屈曲することなく直線状態が維持される。垂直フレーム45・45が傾斜するのに合わせて、ガセットプレート47及びガセットプレート48も傾斜する。制震ダンパー60の各々は、傾斜したガセットプレート47及びガセットプレート48に対して、ストリッパボルト51の各々の軸を中心にして回動している。図7の矢印で示した方向と反対方向に力を受けてダンパーパネル42が変形した場合は、下側の制震ダンパー60が圧縮する力を受けるため縮み、上側の制震ダンパー60が引張する力を受けるため伸びることとなる。弾性ゴム63が使用される制震ダンパー61が組み込まれたダンパーパネル43も、同一の振動エネルギーを与えた場合は変形量や変形速度は相違するが、同一形状に構成されているためダンパーパネル42と同様に変形する。
【0049】
次に、手動により把手38を移動させて手動比較部26を変形させた状態について説明する。
【0050】
図8は図1で示した手動比較部が変形した状態を示した平面図であり、図5に対応した図である。
【0051】
図8を参照して、図8で示した矢印の方向に所定の力で把手38を移動させている。第3連結部材の粘弾性ゴム62は平面視平行四辺形に変形している。支持板39に固定されたブロック72がレール73をスライドすることにより、把手38は、スライドガイド71に移動する方向を規制されながら移動している。把手38は図8で示した矢印の方向と反対の方向にも同様に移動させることができる。変形量や変形速度は相違するが弾性ゴム63が使用されている手動比較部27も手動比較部26と同様に変形させることができる。住宅購入予定者等は、手動比較部26及び手動比較部27の各々の把手38を同程度の力で移動させて、あるいは、同程度に移動させて、粘弾性ゴム62と弾性ゴム63との固さや変形態様の相違を直接的に体感しながら確認することができる。尚、手動比較部26及び手動比較部27の各々の把手38を同程度に移動させると、弾性ゴム63を使用した手動比較部27と比較して、粘弾性ゴム62を使用した手動比較部26は、粘弾性ゴム62の粘りの作用でゆっくりと変形前の状態に戻る。弾性ゴム63を使用した手動比較部27は、弾性ゴム63のバネの作用で瞬間的に変形前の状態に戻る。
【0052】
次に、建物模型24及び建物模型25の振動態様について説明する。
【0053】
図9は図1で示した建物模型が振動している状態を模式的に示した正面図である。
【0054】
図9を参照して、振動板23を図9で示した矢印の方向に振動させると、建物模型24及び建物模型25には同一の振動エネルギーが与えられる。建物模型24及び建物模型25は図9の2点鎖線で示したように、左右に揺れながら振動する。ところが、粘弾性ゴム62が使用されている建物模型24は、弾性ゴム63を使用している建物模型25と比較して、粘弾性ゴム62の粘りの作用で揺れ幅が小さくなっている。建物模型24と建物模型25とは同一形状に構成されているため、振動エネルギーが粘弾性ゴム62に吸収されていることがわかる。
【0055】
以上から制震ダンパー効果比較検証装置20では、実際の建物の制震構造の構成に近い制震ダンパー60・61を有する建物模型24・25において、建物模型24・25の揺れ方を視覚的に確認することができる。そして、粘弾性ゴム62を使用したブレース型の制震ダンパーを有する制震構造の住宅等の建物が、地震から発生する振動エネルギーを吸収して建物の揺れを抑えることを容易に把握することができる。又、建物模型24・25が実物に近い制震構造を有しているため、粘弾性体を使用したブレース型の制震ダンパー60を有する制震構造の仕組みや粘弾性ゴム62が振動エネルギーを吸収していることを容易に把握することができる。
更に、第1連結部材36と第2連結部材37とを建物模型24・25の間で入れ替えると、振動板23を振動させたときの2つの建物模型24・25の揺れ方も入れ替わるため、粘弾性ゴム62及び弾性ゴム63以外の部分により建物模型の揺れが相違していないことを確認することができる。
【0056】
更に、第3連結部材40と第4連結部材41とを手動比較部26・27の間で入れ替えると、手動比較部26・27の各々の把手38を同程度に移動させたときの2つの手動比較部26・27の変形前の状態に戻る速さも入れ替わるため、粘弾性ゴム62及び弾性ゴム63以外の部分により手動比較部26・27の変形前の状態に戻る速さが相違していないことを確認することができる。
【0057】
更に、第1連結部材36と第3連結部材40とを入れ替えることができ、第2連結部材37と第4連結部材41とを入れ替えることができるため、手動比較部26・27で体感した粘弾性ゴム62や弾性ゴム63を用いて建物模型24・25の揺れを確認することができる。そのため、粘弾性ゴム62が振動エネルギーを吸収していることを確実に確認することができる。
【0058】
尚、上記の実施の形態では、2つの建物模型や2つの手動比較部は各々同一形状に構成されているが、粘弾性ゴムと弾性体ゴムとで建物模型の揺れ方や手動比較部の変形態様が相違することを確認することができれば、形状に多少の相違があってもよくほぼ同一形状であればよい。
【0059】
又、上記の実施の形態では、1つの建物模型に2つの制震ダンパーが使用されているが、必ずしもこのように構成されている必要はなく、1つの建物模型に1つ又は3つ以上の制震ダンパーが使用されてもよい。
【0060】
更に、上記の実施の形態では、上下に配置された制震ダンパーが同一形状に構成されているが、制震ダンパーの部品構成が同一であれば、上下に配置された制震ダンパーの例えば長さ等の形状が異なってもよい。
【0061】
更に、上記の実施の形態では、建物模型は上記形状に構成されているが、粘弾性ゴムと弾性ゴムとについて揺れ方の相違を確認することができれば、他の形状であってもよい。
【0062】
更に、上記の実施の形態では、手動比較部は上記形状に構成されているが、把手と支持板と把手と支持板とを連結する連結部材とを備えて、粘弾性ゴムと弾性ゴムとについて固さや変形態様の相違を確認することができれば、他の形状であってもよい。
【0063】
更に、上記の実施の形態では、第1連結部材、第2連結部材、第3連結部材及び第4連結部材が着脱自在に構成されているが、着脱自在でなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明の第1の実施の形態による制震ダンパー効果比較検証装置の概略構成を示した斜視図である。
【図2】図1で示したダンパーパネルの概略構成を示した正面図である。
【図3】その(1)が図2で示したI―Iラインの断面図であり、その(2)が図2で示したII―IIラインの断面図である。
【図4】図1で示した手動比較部の概略構成を示した正面図である。
【図5】図1で示した手動比較部の概略構成を示した平面図である。
【図6】図4及び図5で示したVI―VIラインの断面図である。
【図7】図1で示したダンパーパネルが変形した状態を示した正面図である。
【図8】図1で示した手動比較部が変形した状態を示した平面図である。
【図9】図1で示した建物模型が振動している状態を模式的に示した正面図である。
【符号の説明】
【0065】
20 制震ダンパー効果比較検証装置
22 箱体
23 振動板
24,25 建物模型
26,27 手動比較部
34 第1斜材
35 第2斜材
36 第1連結部材
37 第2連結部材
38 把手
39 支持板
40 第3連結部材
41 第4連結部材
44 フレーム
60,61 制震ダンパー
62 粘弾性ゴム
63 弾性ゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制震構造の建物が振動エネルギーを吸収する仕組みを説明する制震ダンパー効果比較検証装置であって、
少なくとも所定の水平方向に振動する振動板と、
前記振動板の上に設置された前記所定の水平方向に変形可能なほぼ同一形状からなる2つの建物模型とを備え、
前記建物模型の各々は、第1斜材と、第2斜材と、その第1斜材とその第2斜材とを連結する連結部材とを有すると共に前記所定の水平方向の振動に対して機能するように配置されたブレース型の制震ダンパーを含み、
一方の前記建物模型の第1連結部材には粘弾性体が使用され、他方の前記建物模型の第2連結部材には弾性体が使用される、制震ダンパー効果比較検証装置。
【請求項2】
前記振動板の下に設置される箱体と、
前記箱体に取り付けられ、手動により変形させて粘弾性体及び弾性体の変形態様を比較するほぼ同一形状からなる2つの手動比較部とを更に備え、
前記手動比較部の各々は、把手と、支持板と、その把手とその支持板とを連結する連結部材とを含み、
一方の前記手動比較部の第3連結部材には粘弾性体が使用され、他方の前記手動比較部の第4連結部材には弾性体が使用される、請求項1記載の制震ダンパー効果比較検証装置。
【請求項3】
前記第1連結部材及び前記第2連結部材は着脱自在に構成され、前記建物模型の各々の間で入れ替えることができる、請求項1又は請求項2記載の制震ダンパー効果比較検証装置。
【請求項4】
前記第3連結部材及び前記第4連結部材は着脱自在に構成され、前記手動比較部の各々の間で入れ替えることができる、請求項2又は請求項3記載の制震ダンパー効果比較検証装置。
【請求項5】
前記第1連結部材と前記第3連結部材とを入れ替えることができ、前記第2連結部材と前記第4連結部材とを入れ替えることができる、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の制震ダンパー効果比較検証装置。
【請求項6】
前記建物模型の各々は、正面視矩形形状のフレームと2つの前記制震ダンパーとを含み、
前記制震ダンパーの各々は、正面視において、前記フレームを上下に2等分する線を基準に線対称に、上下に分割された矩形形状の対角線に沿って配置された、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の制震ダンパー効果比較検証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−151199(P2009−151199A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330526(P2007−330526)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】