刺入材用照準合せ装置
【課題】橈骨遠位端部等の骨折の治療を簡易かつ正確に行う。
【解決手段】刺入材14を骨1に対して所定方向に案内するガイド筒15と、このガイド筒に並列で配置され、放射線難透過材からなる照門16aと照星16bとを含んだ照準部16と、照準部をガイド筒に連結する連結部17とを具備した刺入材用照準合せ装置であり、照準部の照門と照星とが、ガイド筒の中心線を含む主平面から平行にずれたオフセット平面に含まれるように形成され、X線の照射による照門と照星との陰影が重複して一本の直線状の陰影線となって現れた際に、ガイド筒に通される刺入材の陰影の縁線が陰影線に接するようにした。陰影線と刺入材の陰影の縁線との位置関係が術者によって明確に視認されることになり、刺入材の骨に対する挿入方向と位置が正確に定められることとなる。従って、骨折の治療を簡易かつ正確に行うことができる。
【解決手段】刺入材14を骨1に対して所定方向に案内するガイド筒15と、このガイド筒に並列で配置され、放射線難透過材からなる照門16aと照星16bとを含んだ照準部16と、照準部をガイド筒に連結する連結部17とを具備した刺入材用照準合せ装置であり、照準部の照門と照星とが、ガイド筒の中心線を含む主平面から平行にずれたオフセット平面に含まれるように形成され、X線の照射による照門と照星との陰影が重複して一本の直線状の陰影線となって現れた際に、ガイド筒に通される刺入材の陰影の縁線が陰影線に接するようにした。陰影線と刺入材の陰影の縁線との位置関係が術者によって明確に視認されることになり、刺入材の骨に対する挿入方向と位置が正確に定められることとなる。従って、骨折の治療を簡易かつ正確に行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橈骨遠位端、脛骨近位端等の長幹骨骨端部の骨折を治療する際に使用することができる刺入材用照準合せ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば人間の腕の橈骨はその遠位端部において骨折しやすい。この骨折の治療には、チタン合金等でできたプレートがインプラントとして用いられる。このプレートは一般に橈骨遠位端部の掌側面に倣う形状に形成され、プレート先端部にはプレートを橈骨に固定するための刺入材であるピン等を通す刺入材挿入孔が複数個形成される。術者は切開創から露出する橈骨遠位端部の掌側面にプレートを当て、このプレートの刺入材挿入孔に刺入材であるスクリュー又はピンを橈骨側へと貫通させ、これによりプレートを橈骨の骨折部位の近傍に固定する。その後、プレートの他の刺入材挿入孔にもスクリュー又はピンを通し、プレートをより強固に橈骨に固定する(例えば、特許文献1参照。)。その後、切開創を縫合し、骨折部位の組織の再生を待つ。
【0003】
上記橈骨遠位端部の骨折を治療する際、プレートに挿入する刺入材の少なくとも一本は橈骨の軟骨下骨に接触させておく必要がある。この刺入材が軟骨下骨から離れていると、術後に橈骨の手関節面が陥没したり、座滅したりし、ピン、スクリュー、プレート等が緩んで骨折の治療が不確実になるおそれがある。刺入材が軟骨下骨から2mm程度離れていると、橈骨の手関節面に陥没が生じると言われている。
【0004】
そこで、従来術者が外科用X線装置によってX線を患部に照射し、モニタを観察しながらプレートの刺入材挿入孔を通して刺入材であるキルシュナー鋼線やドリル刃の刺入方向を正確に定めつつ、骨に下孔を開け、その後、別の刺入材であるスクリューやピンをプレート上から下孔に通して、このスクリューやピンを軟骨下骨に接触させるようにしている。
【0005】
しかし、この治療は細かい作業を必要とし、面倒であり、時間がかかり、熟練を必要とする。そこで、この作業を熟練者、未熟練者の如何を問わず簡易に実施することができるシステムの開発が望まれていたが、近年次のような刺入材用照準合せ装置が提案されるに至った。
【0006】
この刺入材用照準合せ装置は、刺入材を骨に対して所定の方向に案内するガイド筒と、このガイド筒に並列で配置され、放射線難透過材からなる照門と照星とを含んだ照準部と、この照準部をガイド筒に連結する連結部とを具備した構造になっている。照準部の照門と照星は、各々ワイヤを平行に配置することによって形成され、両ワイヤがガイド筒の中心線を含む平面内に含まれるように配置される(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
この刺入材用照準合せ装置を使用して橈骨の遠位端部の骨折を治療する場合は、上述したように、術者が切開創から露出する橈骨遠位端部の掌側面にプレートを当て、さらにガイド筒をプレートの刺入材挿入孔に連通させる。
【0008】
そこで、術者がX線を照準部から患部へと照射しながら、照門と照星との陰影が重複して一本の直線状の陰影線となって現れる向きを見出し、この陰影線を患部の刺入材を通すべき方向及び位置に合わせる。
【0009】
そのうえで、ガイド筒内にキルシュナー鋼線を挿入して橈骨に下孔を穿孔する。このようなキルシュナー鋼線の陰影は上記照準部の陰影線と重なって橈骨内へと侵入する。すなわち、術者はキルシュナー鋼線の陰影の中心に照準部の陰影線が来るように観察しつつキルシュナー鋼線を橈骨内に挿入する。
【0010】
その後、キルシュナー鋼線を引き抜いた跡の下孔にプレートの刺入材挿入孔を通してピンを挿入し、さらにプレートの他の刺入材挿入孔にスクリューやピンを挿入して、プレートを橈骨に固定する。
【0011】
【特許文献1】特開2004−313514号公報
【特許文献2】特許第3280631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の刺入材用照準合せ装置では、照準部の照門と照星が各々ワイヤを平行に配置することによって形成され、両ワイヤがガイド筒の中心線を含む平面内に含まれるように配置される。そのため、術者は、二本のワイヤの陰影が重なることによって生じる一本の陰影線が、キルシュナー鋼線等刺入材の陰影の中心に位置しているか否かを観察しつつ、刺入材を骨折部位に挿入することになる。しかし、照準部の細い陰影線が刺入材の太い陰影の中心に位置するか否かを見分けるのは容易でないので、刺入材の向きはともかく骨内での刺入材の位置は不正確になりやすい。ことに橈骨の骨折の場合は、刺入材を橈骨の軟骨下骨に当接させる必要があるが、照準部の細い陰影線と刺入材の太い陰影とは通常の場合太さが合致していないので、刺入材が軟骨下骨から離れた状態で橈骨に挿入されるおそれがある。
【0013】
また、従来の刺入材用照準合せ装置では、照準部がガイド筒に対し動かないように一体化されているので、刺入材用照準合せ装置の全体を骨上で移動させつつ照準合せを行う必要があり、使い勝手が悪いという問題がある。
【0014】
従って、本発明は刺入材を簡易かつ正確に骨内に位置決めすることができる刺入材用照準合せ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0016】
なお、本発明の理解を容易にするため図面の参照符号を括弧付きで付するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
すなわち、請求項1に係る発明は、刺入材(6,11,14)を骨(1)に対して所定の方向に案内するガイド筒(15)と、このガイド筒(15)に並列で配置され、放射線難透過材からなる照門(16a)と照星(16b)とを含んだ照準部(16)と、この照準部(16)を上記ガイド筒(15)に連結する連結部(17)とを具備した刺入材用照準合せ装置において、上記照準部(16)の照門(16a)と照星(16b)とが、上記ガイド筒(15)の中心線を含む主平面(A)から平行にずれたオフセット平面(B)に含まれるように形成され、放射線の照射による上記照門(16a)と上記照星(16b)との陰影が重複して一本の直線状の陰影線(γ)となって現れた際に、上記ガイド筒(15)に通される刺入材(6,11,14)の陰影(ε)の縁線(ζ)が上記陰影線(γ)に接するようにした刺入材用照準合せ装置を採用する。
【0018】
請求項2に記載されるように、請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記照準部(16)の照門(16a)と照星(16b)が、各々細い線材で形成されたものとすることができる。
【0019】
請求項3に記載されるように、請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記照準部(16)が上記オフセット平面(B)に含まれる薄板(23)を有し、この板(23)の対向する二辺が各々照門(16a)と照星(16b)とされたものとすることができる。
【0020】
請求項4に記載されるように、請求項2又は請求項3に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記照門(16a)と上記照星(16b)のうち少なくとも一方が上記オフセット平面(B)内で屈曲しているものとすることができる。
【0021】
請求項5に記載されるように、請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記照門(16a)及び照星(16b)が二組設けられ、放射線の照射により各組の照門(16a)と照星(16b)の陰影が各々重複して二本の直線状の陰影線(γ1、γ2)となって現れた際に、上記ガイド筒(15)に通される刺入材(6,11,14)の陰影(ε)の両縁線(ζ1、ζ2)が上記二本の陰影線(γ1、γ2)に各々接するようにしたものとすることができる。
【0022】
請求項6に記載されるように、請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記ガイド筒(15)内に内筒(18)が挿入され、上記ガイド筒(15)から上記照準部(16)に至る箇所が上記内筒(18)を支点に回されることにより、上記照準部(16)の照門(16a)と照星(16b)とが合致した後に上記ガイド筒(15)を上記内筒(18)に対して回動不能にロックし得るロック手段(20)が設けられたものとすることができる。
【0023】
請求項7に記載されるように、請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、刺入材がキルシュナー鋼線(14)、ピン(11)、スクリュー(6)又はドリル刃である刺入材用照準合せ装置とすることができる。
【0024】
請求項8に記載されるように、請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記ガイド筒(15)が骨(1)の骨折部に当てられるプレート(5)の刺入材挿入孔(8,9)に対して着脱自在であるものとすることができる。
【0025】
請求項9に記載されるように、請求項6に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記内筒(18)が骨(1)の骨折部に当てられるプレート(5)の刺入材挿入孔(8,9)に対して着脱自在であるものとすることができる。
【0026】
請求項10に記載されるように、請求項8又は請求項9に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記骨が橈骨(1)であり、この橈骨(1)の遠位端部に当てられたプレート(5)に上記ガイド筒(15)又は上記内筒(18)が連結され、放射線の照射時に上記照準部(16)の照門(16a)と照星(16b)が重なったことによる一本の陰影線(γ)が橈骨(1)の軟骨下骨(1a)に接する位置に合わされると、上記ガイド筒(15)又は上記内筒(18)から上記プレート(5)の刺入材挿入孔(8)を通って橈骨(1)へと挿入される刺入材(6,11,14)の陰影(ε)の縁線(ζ)が上記陰影線(γ)に接触し、この刺入材(6,11,14)はその外周部が上記軟骨下骨(1a)に接触した状態で停止するようにしたものとすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、刺入材(6,11,14)を骨(1)に対して所定の方向に案内するガイド筒(15)と、このガイド筒(15)に並列で配置され、放射線難透過材からなる照門(16a)と照星(16b)とを含んだ照準部(16)と、この照準部(16)を上記ガイド筒(15)に連結する連結部とを具備した刺入材用照準合せ装置において、上記照準部(16)の照門(16a)と照星(16b)とが、上記ガイド筒(15)の中心線を含む主平面(A)から平行にずれたオフセット平面(B)に含まれるように形成され、放射線の照射による上記照門(16a)と上記照星(16b)との陰影が重複して一本の直線状の陰影線(γ)となって現れた際に、上記ガイド筒(15)に通される刺入材(6,11,14)の陰影(ε)の縁線(ζ)が上記陰影線(γ)に接するようにしたものであるから、照準部(16)の陰影線(γ)と刺入材(6,11,14)の陰影(ε)の縁線(ζ)との位置関係が術者によって明確に視認されることになり、刺入材(6,11,14)の骨(1)に対する挿入方向はもちろんのこと、刺入材(6,11,14)の骨(1)内での位置が正確に定められることとなる。従って、骨折の治療を簡易かつ正確に行うことができる。
【0028】
ことに、橈骨遠位端部の骨折の治療では、ピン、スクリュー等の刺入材(6,11,14)を橈骨(1)の軟骨下骨(1a)に接触するように刺入する必要があるが、本発明によれば、照準部(16)による一本の直線状の陰影線(γ)を軟骨下骨(1a)に接触させたうえで、刺入材(6,11,14)をガイド筒(15)から橈骨(1)内に挿入すると、この刺入材(6,11,14)の陰影(ε)はその縁線(ζ)が陰影線(γ)に接するようにして橈骨(1)内に進行し、刺入材(6,11,14)の外周部は軟骨下骨(1a)に正確に接触することとなる。従って、術後の橈骨手関節面の陥没、挫滅、刺入材の緩み等が防止され、橈骨遠位端部の骨折の治療効果が向上することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0030】
<実施の形態1>
図1及び図2に示すように、人間の左手橈骨1の遠位端部における骨折の治療が行われるものとして説明する。図1及び図2中、符号2は橈骨1に隣り合う尺骨、符号3は左手首、符号4は掌をそれぞれ示す。
【0031】
図示例では、骨折の整復にインプラントであるプレート5が用いられている。
【0032】
左手橈骨1へのプレート5の取り付けは、図1に示すように、プレート5が左手橈骨1の遠位端部に当てられ、部分的にスクリュー6又はピンがプレート5の刺入材挿入孔7から橈骨1に向かって挿入されることから開始される。その後、図2に示すように、プレート5の残りの全刺入材挿入孔8,9,10あるいは必要とされる刺入材挿入孔に図16に示すような各種のスクリュー6やピン11がプレート5から橈骨1に向かって挿入されることにより、プレート5が橈骨1に完全に固定される。
【0033】
この左手用のプレート5は、図1、図2、図15及び図16に示すように、左手の橈骨1における遠位端部の掌側面における輪郭に倣ったような形状に形成され、橈骨1の遠位端側に当てられる略三角形の展延部5aと、展延部5aの一隅側から橈骨1の本体側へと伸びる略長方形の幹板部5bとを具備する。
【0034】
プレート5は、その全体がステンレス鋼、チタン合金鋼等で一体成形される。
【0035】
略三角形の展延部5aの一辺は橈骨1の遠位端縁に沿うように伸び、この一辺に沿って多数個の刺入材挿入孔8,9が複数列で設けられる。この実施の形態1では、外側の列では四個の刺入材挿入孔8,9が並び、内側の列では二個の刺入材挿入孔9が並んでいる。また、図16に示すように、展延部5aは橈骨1の遠位端部における掌側面の傾斜に倣うように幹板部5bに対して緩傾斜で反り返っている。刺入材挿入孔7,8,9,10には骨折の形態によってそのすべてに又は選択的にピン11又はスクリュー6が橈骨1に向かって通される。これらのピン11又はスクリュー6によってプレート5が橈骨1の遠位端部の骨折部位に固定される。
【0036】
図15及び図16に示すように、展延部5aの刺入材挿入孔8,9には、ピン11の頭に形成された雄ネジ11aが螺合する雌ネジ8a,9aが形成される。この雌雄ネジ8a,9a,11aの螺合によって、橈骨1に対するピン11の向き及び位置が正確に定められる。ピン11に代えてスクリューが挿入される場合もあり、その場合はスクリューの頭に雌ネジ8a,9aと螺合する雄ネジが形成される。
【0037】
長方形の幹板部5bにも、図15及び図16に示すように、スクリュー6又はピンを橈骨1に向かって通すための各種の刺入材挿入孔7,10が形成される。これらの刺入材挿入孔7,10にもスクリュー6又はピンが橈骨1に向かって通されることによって、プレート5が橈骨1に強固に固定される。
【0038】
その他、プレート5を橈骨1に位置決めする等のために刺入材である各種キルシュナー鋼線を通す小孔12が、必要に応じてプレート5の所望箇所に形成される。
【0039】
なお、図1、図2、図3及び図15に示したプレート5は左手橈骨用のものであるが、右手橈骨用のプレート13は、図17に示すように、左手用のプレート5と対称的に形成される。図17中、左手橈骨用プレート5に対応する箇所は、同じ符号を付して示す。
【0040】
この実施の形態1において、刺入材用照準合せ装置は、図1に示すように、プレート5の最も尺骨2に寄った位置にある刺入材挿入孔8に刺入材であるキルシュナー鋼線14を通す際に用いられる。後述するように、キルシュナー鋼線14が通された跡の下孔に略同じ径のピン11が通される。
【0041】
このピン11は、図3に示すように、橈骨1の遠位端部における軟骨下骨1aに接するように橈骨1内に挿入する必要がある。このピン11が図3中、二点鎖線で示すように軟骨下骨1aから離れていると、上述したように、術後に橈骨1の手関節面が陥没したり、挫滅したりし、ピン11、スクリュー6、プレート5等が緩んで骨折の治療が不確実になるおそれがある。このピン11は軟骨下骨1aから例えば2mm以内の位置精度で橈骨1内に埋め込む必要がある。
【0042】
図1、図4〜図10に示すように、この刺入材用照準合せ装置は、キルシュナー鋼線14等の刺入材を橈骨1に対して所定の方向に案内するガイド筒15と、このガイド筒15に並列で配置され、放射線難透過材からなる照門16aと照星16bとを含んだ照準部16と、この照準部16を上記ガイド筒15に連結する連結部17とを具備する。
【0043】
刺入材としては、この実施の形態では、図2に示すピンを通すための下孔を橈骨に形成するべく、図1及び図5に示すようなキルシュナー鋼線14が用いられるものとして説明する。この下孔が正確な方向及び位置に形成されると、図3に示すように、刺入材であるピン11が同じく正確な方向及び位置に挿入され、ピン11の外周部が骨折した橈骨1の遠位端部の軟骨下骨1aに接触することとなる。
【0044】
なお、刺入材としてキルシュナー鋼線14に代えてピン、スクリュー、ドリル刃等を用い、これらの刺入材をこの刺入材用照準合せ装置によって橈骨1その他の骨に侵入させることも可能である。
【0045】
ガイド筒15は、この実施の形態1では、円筒として形成され、図5及び図6に示すように、その中心孔内に内筒18が挿入される。ガイド筒15と内筒18は、相対的にスライド及び回動が自在である。
【0046】
図5及び図18に示すように、内筒18の外周面は、ガイド筒15の中心孔の内周面と略同径に形成され、内筒18の内周面は、キルシュナー鋼線14と略同径に形成される。このため、内筒18はガイド筒15内でがたつくことなくスライド及び回動が可能であり、キルシュナー鋼線14は内筒18内でがたつくことなくスライド及び回動が可能である。
【0047】
内筒18の上部には、後述するロック手段によるロック性能を高めるためにローレット切り等によって粗面部18aが形成される。内筒18の下部には、プレート5の刺入材挿入孔8,9の雌ネジ8a,9aに螺合する雄ネジ18bが形成される。
【0048】
図4及び図8に示すように、ガイド筒15の上端には、アーム状の連結部17の一端が固定される。連結部17の一端にはガイド筒15の中心孔に連通する孔17aが形成され、この孔17aの近傍にロック手段が設けられる。
【0049】
ロック手段は、連結部17の一端をその外面から孔17a内へと貫通する溝17bと、溝17b内に回動可能に支軸19で保持されたレバー片20とを備える。レバー片20の先端にはカム21が設けられ、レバー片20が支軸19を支点にして回動すると、カム21が上記孔17aに対し出没するようになっている。図5中、レバー片20が二点鎖線の位置へと回されると、カム21が内筒18の孔内に入って粗面部18aに当たり、これによりガイド筒15は内筒18に対して回動不能かつスライド不能にロックされる。また、レバー片20が実線の位置へと回されると、カム21が溝17b内に没して粗面部18aから離れ、これによりガイド筒15は内筒18に対して回動可能かつスライド可能にアンロックされる。
【0050】
図5に示すように、内筒18の雄ネジ18bがプレート5の刺入材挿入孔8の雌ネジ8aに螺合した状態で、ロック手段がアンロックされると、刺入材用照準合せ装置は内筒18を中心にしてプレート5の上方で回動可能となる。ロック手段がロックされると、刺入材用照準合せ装置は回動不能になり、内筒18の回りの所望位置に固定される。
【0051】
図1、図4〜図6に示すように、連結部17の他端には、照準部16が固定される。連結部17で連結されることによって、照準部16はガイド筒15に略平行に並んだ状態でガイド筒15と一体化される。図1及び図5に示すように、連結部17はガイド筒15側がプレート5に連結された状態で、プレート5の上方をプレート5と平行に梁状に伸びる。連結部17の他端はプレート5の周縁から外れる位置へと伸び、その他端から照準部はプレート5の下方へと略板状に伸びる。
【0052】
照準部16は、放射線易透過材からなる透視体で包まれる。放射線易透過材はX線等の放射線を容易に透過するものであり、放射線易透過材としては樹脂のほか、カーボン、アルミニウムを用いることができる。放射線易透過材は具体的には樹脂であり、照準部16はこの樹脂によって全体として板状に形成され、ガイド筒15の伸び方向に平行に平坦に延びる。
【0053】
図1、図4〜図6、及び図10に示すように、照準部16は、照門16aと照星16bとを具備する。この実施の形態1では、照門16aと照星16bが各々細いワイヤ等の線材で形成され、透視体である樹脂内に埋設される。線材はステンレス鋼等の放射線難透過材で作られる。
【0054】
図6に示すように、照門16aと照星16bは、ガイド筒15の中心線を含む主平面Aから平行にずれたオフセット平面Bに含まれるように設けられる。図6中、符号δはオフセット平面Bのオフセット量を示す。
【0055】
これにより、図1に示すように、X線を照射しつつ内筒18を中心にして照準部16を回動させると、図11に示すように、照門16aと照星16bの両陰影線α、βがずれて現れていたのが、図12又は図13に示すように、いずれかの位置において照門16aと照星16bの両陰影α、βが重複して一本の直線状の陰影線γとなって現れる。これは図示しないモニタ画面によって術者が視認可能である。照門16aと照星16bは図示例ではガイド筒15の中心線に平行な直線となって伸びているが、上記オフセット平面B内にあれば、傾斜していても、屈曲していてもよい。
【0056】
照門16aと照星16bの両陰影が重複した一本の直線状の陰影線γを術者が視認した際、図12に示すようにこの一本の陰影線γが軟骨下骨1aから離れた位置にあるものとすれば、術者は刺入材用照準合せ装置とプレート5とを橈骨1上で少しばかり移動させることによって、図13に示すようにこの一本の陰影線γを破線で示す軟骨下骨1aの陰影に接触させる。そこで、図14に示すようにガイド筒15に刺入材であるキルシュナー鋼線14を通すと、キルシュナー鋼線14の陰影εの縁線ζが上記陰影線γに接しながら橈骨1内へと侵入する。このキルシュナー鋼線14はその外周部が上記軟骨下骨1aに接触した状態で停止する。
【0057】
図14に示す例では、キルシュナー鋼線14の陰影εの縁線ζに、上記照準部16の照門16aと照星16bによる一本の陰影線γが重なり合うように、照門16aと照星16bが形成される。
【0058】
なお、オフセット量δは、主平面Aとオフセット平面Bとの間の距離であって、図6、図14等では、オフセット平面Bは照門16aと照星16bの各中心線を含む面として表したが、照門16aと照星16bの太さが無視できない場合は、図14に示すように、照門16aと照星16bの両外周部に接する面をオフセット平面B1としてオフセット量δ1を決定するのが望ましい。これにより、キルシュナー鋼線14の外周部を軟骨下骨1aに更に好適に接触させることができる。
【0059】
このキルシュナー鋼線14によって、橈骨1内には軟骨下骨1aに接するように下孔が形成され、キルシュナー鋼線14が抜き取られた後にこの下孔へとピン11又はスクリュー6が挿入されると、ピン11又はスクリュー6は軟骨下骨1aに接触することになる。
【0060】
図4乃至図6に示すように、照準部16には術者が照門16aと照星16bの位置を目視で確認することができるように覗き孔22が必要に応じて設けられる。
【0061】
なお、必要に応じて内筒18を省略し、ガイド筒15の下端に内筒18の下端における雄ネジ18bと同様な雄ネジを形成して、この雄ネジをプレート5の刺入材挿入穴8,9の雌ネジ8a,9aに螺合させるようにしてもよい。この場合は、刺入材はガイド筒15のみによって骨へと案内されることになる。
【0062】
次に、上記構成の刺入材用照準合せ装置の作用について説明する。
【0063】
(1)図1乃至図3に示すように、左手の橈骨1の遠位端部に生じた骨折を治療するものとして説明する。
【0064】
まず、図1に示すように、術者によって左手の手首3が切開され、切開創3a内に左手橈骨用プレート5が挿入され、橈骨1の遠位端部に当てられる。
【0065】
そして、図1及び図16に示すように、プレート5の幹板部5bにおける略中央の長円形の刺入材挿入孔7にスクリュー6が挿入され、プレート5が橈骨1に緩く留められる。この状態でプレート5は橈骨1上で少しばかり移動可能である。
【0066】
(2)術者によって内筒18の雄ネジ18bがプレート5における最も尺骨2に寄った刺入材挿入孔8の雌ネジ8aに螺入され、プレート5上に起立状態で固定される。
【0067】
この内筒18に、図1、図5、図6及び図8に示すようにガイド筒15が被せられる。これにより、刺入材用照準合せ装置が内筒18を中心にして回動可能にプレート5上に保持される。
【0068】
(3)術者が、図1に示すように、X線を照準部16の手前から患者の左手に向かって照射し、内筒18を中心にして照準部16を少しずつ回動させながら、その透視画像をモニタによって観察する。このX線の透視と透視画像の観察は、図示しない外科用X線装置によって行われる。
【0069】
(4)X線による照準部16の透視画像において、照準部16の照門16aと照星16bとが当初例えば図11のような二本の陰影線α、βとなって現れる。この場合、図11の右側の陰影線αが照門16aに対応し、左側の陰影線βが照星16bに対応する。
【0070】
(5)術者がさらに照準部16を少しずつ回動させると、例えば図12に示すように、照門16aと照星16bの両陰影線α、βが重複してモニタ上に一本の真っ直ぐな陰影線γとなって現れる。
【0071】
(6)照門16aと照星16bの両陰影が重複した一本の直線状の陰影線γが術者によって視認されると、ロック手段のレバー片20が術者によってロック操作される。これにより、ガイド筒15から照準部16に至る部分が内筒18及びプレート5に対し回動不能に固定される。その結果、陰影線γが一本に保持され、照準が合った状態が維持される。
【0072】
(7)図12に示すように、通常の場合、一本の陰影線γは軟骨下骨1aから多少離れた位置に現れる。そこで、術者がモニタを見ながら刺入材用照準合せ装置とプレート5とを橈骨1上で少しばかり移動させ、図13に示すように一本の陰影線γを軟骨下骨1aの陰影に接触させる。図1に示したように、プレート5はスクリュー6によって橈骨1に緩く留められており、かつ、このスクリュー6は長孔である刺入材挿入孔7に通されているので、刺入材用照準合せ装置とプレート5は橈骨1上で多少移動することが可能である。
【0073】
(8)図13の状態を維持しつつ、図14に示すように、術者が刺入材であるキルシュナー鋼線14を内筒内に通す。この場合、キルシュナー鋼線14は後に挿入される刺入材であるピン11又はスクリュー6と略同径のものが使用される。
【0074】
(9)キルシュナー鋼線14が内筒18内から橈骨1内へと挿入されると、図14に示すように、モニタに表れるキルシュナー鋼線14の陰影εはその縁線ζが上記陰影線γに接するようにして橈骨1内へと侵入する。
【0075】
従って、刺入材であるキルシュナー鋼線14の外周部は軟骨下骨1aに接触した状態で停止することとなる。
【0076】
このキルシュナー鋼線14はその後橈骨1から抜き取られ、その跡にピン11又はスクリュー6を通すための下孔が開口する。
【0077】
(10)術者によって刺入材用照準合せ装置がプレート5から取り外され、プレート5の刺入材挿入孔8からピン11又はスクリュー6が橈骨1内に挿入される。ピン11又はスクリュー6は上記下孔に案内されて橈骨1内に入り込み、その外周部が橈骨1の遠位端部の軟骨下骨1aに接触する。
【0078】
このピン11は、図16に示すように、その頭部の雄ネジ11aがプレート5の刺入材挿入孔8の雌ネジ8a内にねじ込まれることにより、プレート5に対し固定される。
【0079】
(11)他のピン11又はスクリュー6が、刺入材用照準合せ装置の使用によって、あるいは刺入材用照準合せ装置を使用することなく、他の刺入材挿入孔9,10から橈骨1内に挿入される。また、最初にプレート5の刺入材挿入孔7から橈骨1に挿入されたスクリュー6が締め付けられる。これにより、図2に示す如く、プレート5が橈骨1の骨折を生じた遠位端部に動かないように固定される。
【0080】
図3中、実線で示すように、刺入材であるピン11の外周部が軟骨下骨1aに接触しているので、手術後における橈骨手関節面の陥没、挫滅、刺入材の緩み等が防止され、橈骨遠位端部の骨折の治療効果が向上することとなる。
【0081】
(12)最後に切開創3aが縫合され、手術が終了する。
【0082】
なお、右手の橈骨の遠位端部に骨折が生じた場合は、図17に示すような右手用のプレート13が使用され、上記したと同様な手術により右手橈骨の骨折部に固定される。ただし、その場合は、図6中照準部の照門16a及び照星16bが、ガイド筒15の中心線を含む主平面を挟んで反対側に仮想されるオフセット平面内に設けられた刺入材用照準合せ装置が用いられる。
【0083】
<実施の形態2>
図19に示すように、この実施の形態2の刺入材用照準合せ装置では、照準部16の照門16aと照星16bとによる一本の陰影線γと、刺入材であるキルシュナー鋼線14の陰影εの縁線ζとが重なり合わないように、照門16aと照星16bが形成される。また、照門16aと照星16bは実施の形態1の場合よりも、より細く形成される。
【0084】
この刺入材用照準合せ装置を使用して、キルシュナー鋼線14で橈骨1に軟骨下骨1aに接するように下孔を形成し、キルシュナー鋼線14を抜き取った跡の下孔へとピン11又はスクリュー6を挿入すると、ピン11又はスクリュー6の外周部が軟骨下骨1aに接触することになる。
【0085】
この実施の形態2では、照門16aと照星16bとが重なった一本の陰影線γの太さ分だけキルシュナー鋼線14の外周部が軟骨下骨1aから離れるので、照門16aと照星16bはなるべく細く形成される。
【0086】
なお、実施の形態2において、実施の形態1と同じ部分には同じ符号を用いて示し、重複した説明を省略する。
【0087】
<実施の形態3>
図20及び図21に示すように、この実施の形態3の刺入材用照準合せ装置では、照準部16の照門16aと照星16bとがオフセット平面Bに含まれる薄い板23で形成され、この板23の対向する二辺が各々照門16aと照星16bとされる。
【0088】
なお、図21及び図22に示すように、オフセット量δ1である主平面Aとオフセット平面Bとの間の距離は、上記板23のオフセット側の面をオフセット平面B1としてオフセット量δ1が決定される。これにより、キルシュナー鋼線14の外周部を軟骨下骨1aに更に好適に接触させることができる。
【0089】
この刺入材用照準合せ装置を使用する場合は、図1に示すように、放射線であるX線が照射され、上記板23の対向する一方の辺である照門16aと他方の辺である照星16bの両陰影線α、βが重複して一本の直線状の陰影線γとなってモニタ上に現れるように、刺入材用照準合せ装置がプレート5に固定した内筒18の回りで回される。そして、ロック手段のレバー片20が操作され、内筒18にガイド筒15がロックされる。
【0090】
その後、刺入材用照準合せ装置とプレート5とが橈骨1上で少しばかり移動させられ、図22に示すように、上記一本の陰影線γが軟骨下骨1aの陰影に接触せしめられる。そこで、内筒18に刺入材であるキルシュナー鋼線14が通されると、キルシュナー鋼線14の陰影εの縁線ζが上記陰影線γに接しながら橈骨1内へと侵入する。このキルシュナー鋼線14はその外周部が上記軟骨下骨1aに接触した状態で停止する。
【0091】
このキルシュナー鋼線14によって、橈骨1内には軟骨下骨1aに接するように下孔が形成され、キルシュナー鋼線14が抜き取られた後にこの下孔へとピン11又はスクリュー6が挿入されると、ピン11又はスクリュー6は軟骨下骨1aに接触することになる。
【0092】
なお、実施の形態3において、実施の形態1,2と同じ部分には同じ符号を用いて示し、重複した説明を省略する。
【0093】
<実施の形態4>
図23に示すように、この実施の形態4の刺入材用照準合せ装置では、照準部16が実施の形態3と同様にオフセット平面B1に含まれる薄い板で形成されるが、実施の形態3における板が長方形であるのに対し、この実施の形態4の板24は三角形に形成される。すなわち、板24の一辺は実施の形態3と同様に直線の照門16aとなっているが、他方の辺は屈曲線となっており、ここに三角形の頂角が形成され、この頂角と屈曲線とが照星16bとなっている。
【0094】
また、図24に示すように、オフセット量δ1である主平面Aとオフセット平面Bとの間の距離は、上記板24のオフセット側の面をオフセット平面B1としてオフセット量δ1が決定される。これにより、キルシュナー鋼線14の外周部を軟骨下骨1aに更に好適に接触させることができる。
【0095】
この刺入材用照準合せ装置を使用する場合は、図1に示すように、放射線であるX線が照射され、上記板24の直線状の照門16aと三角形の頂角である照星16bの両陰影線α、βが重複して一本の直線状の陰影線γとなってモニタ上に現れるように、刺入材用照準合せ装置がプレート5に固定した内筒18の回りで回される。
【0096】
刺入材用照準合せ装置がプレート5上で回されると、図24中、破線で示すように、照準部16の三角形板24の高さが変化し、照準が合うに連れて三角形が低くなることから、照準合せが容易になる。
【0097】
照門16aと照星16bの両陰影が重複して一本の直線状の陰影線γとなってモニタ上に現れると、ロック手段のレバー片20が操作され内筒18にガイド筒15がロックされる。
【0098】
その後、刺入材用照準合せ装置とプレート5とが橈骨1上で少しばかり移動させられることによって、図24に示すように、上記一本の陰影線γが軟骨下骨1aの陰影に接触せしめられる。そこで、内筒18に刺入材であるキルシュナー鋼線14が通されると、キルシュナー鋼線14の陰影εの縁線ζが上記陰影線γに接しながら橈骨1内へと侵入する。このキルシュナー鋼線14はその外周部が上記軟骨下骨1aに接触した状態で停止する。
【0099】
このキルシュナー鋼線14によって、橈骨1内には軟骨下骨1aに接するように下孔が形成され、キルシュナー鋼線14が抜き取られた後にこの下孔へとピン11又はスクリュー6が挿入されると、ピン11又はスクリュー6は軟骨下骨1aに接触することになる。
【0100】
なお、上記照星16bを形成する板24の屈曲線は、三角形の頂角のごとき直線が交差するようなものに限らず、円弧等の曲線であってもよい。また、照門16aも同様な屈曲線としてもよい。
【0101】
その他、実施の形態4において、実施の形態1〜3と同じ部分には同じ符号を用いて示し、重複した説明を省略する。
【0102】
<実施の形態5>
この実施の形態5の刺入材用照準合せ装置では、実施の形態2で示した照準部16におけると同様な照門16a及び照星16bが二組平行に設けられ、図25に示すように、放射線の照射により二組の照門16aと照星16bの陰影が各々重複して二本の直線状の陰影線γ1、γ2となって現れた際に、ガイド筒15に通される刺入材であるキルシュナー鋼線14の陰影εの両縁線ζ1、ζ2が上記二本の陰影線γ1、γ2に各々接するようになっている。
【0103】
照門16aと照星16bの両陰影が各々重複した二本の直線状の陰影線γ1、γ2を術者が視認した際、一方の陰影線γ1が軟骨下骨1aから離れた位置にあるものとすれば、術者は刺入材用照準合せ装置とプレート5とを橈骨1上で少しばかり移動させることによって、図25に示すように、一方の陰影線γ1を軟骨下骨1aの陰影に接触させる。そこで、ガイド筒15に刺入材であるキルシュナー鋼線14を通すと、キルシュナー鋼線14の陰影εにおける両側の縁線ζ1、ζ2が上記二本の陰影線γ1、γ2に各々接しながら橈骨1内へと侵入する。このキルシュナー鋼線14はその外周部が上記軟骨下骨1aに接触した状態で停止する。
【0104】
この刺入材用照準合せ装置を使用して、キルシュナー鋼線14で橈骨1に軟骨下骨1aに接するように下孔を形成し、キルシュナー鋼線14を抜き取った跡の下孔へとピン11又はスクリュー6を挿入すると、ピン11又はスクリュー6の外周部が軟骨下骨1aに接触することになる。
【0105】
このように直線状の陰影線γ1、γ2が二本形成されるようにすると、刺入材用照準合せ装置を左手橈骨1の骨折を治療する場合と右手橈骨の骨折を治療する場合の双方に使用することができる。
【0106】
この実施の形態5において、二組の照門16a及び照星16bは、実施の形態2と同様に各々細いワイヤ等の線材で形成され、透視体である樹脂内に埋設されるが、実施の形態3,4のいずれかの形態のものを採用することもでき、また、実施の形態2〜4の照門16a及び照星16bを取り混ぜて採用することもできる。
【0107】
その他、実施の形態5において、実施の形態1〜4と同じ部分には同じ符号を用いて示し、重複した説明を省略する。
【0108】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば上記実施の形態1〜5では橈骨の遠位端部の骨折治療について説明したが、脛骨の近位端部等その他の部位の骨折治療にも適用可能である。また、手術の手順も適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施の形態1に係る刺入材用照準合せ装置を左手橈骨の遠位端部と共に示す斜視図である。
【図2】プレートを左手橈骨の遠位端部に固定した状態を示す斜視図である。
【図3】図2中、III−III線矢視図である。
【図4】刺入材用照準合せ装置の部分切欠正面図である。
【図5】刺入材用照準合せ装置を使用状態で示す部分切欠正面図である。
【図6】図5中、VI−VI線矢視図である。
【図7】刺入材用照準合せ装置の平面図である。
【図8】刺入材用照準合せ装置の左側面図である。
【図9】刺入材用照準合せ装置をプレートに連結した状態で示す平面図である。
【図10】刺入材用照準合せ装置の右側面図である。
【図11】刺入材用照準合せ装置の照準部の陰影線を照準合せ前の状態で示す図3と同じ方向から見た図である。
【図12】刺入材用照準合せ装置の照準部の陰影線を照準合せ後の状態で示す図3と同じ方向から見た図である。
【図13】図12で現れた一本の陰影線を橈骨遠位端部の軟骨下骨に接触させた状態で示す図3と同じ方向から見た図である。
【図14】刺入材用照準合せ装置によってキルシュナー鋼線を橈骨遠位端部に刺入する状態を示す図3と同じ方向から見た図である。
【図15】左手用プレートの平面図である。
【図16】図15中、XVI−XVI線矢視図である。
【図17】右手用プレートの平面図である。
【図18】内筒の正面図である。
【図19】本発明の実施の形態2に係る刺入材用照準合せ装置を示す図14と同様な図である。
【図20】本発明の実施の形態3に係る刺入材用照準合せ装置を使用状態で示す部分切欠正面図である。
【図21】図20中、XXI−XXI線矢視図である。
【図22】実施の形態3に係る刺入材用照準合せ装置によってキルシュナー鋼線を橈骨遠位端部に刺入する状態を示す図3と同じ方向から見た図である。
【図23】本発明の実施の形態4に係る刺入材用照準合せ装置を使用状態で示す部分切欠正面図である。
【図24】実施の形態4に係る刺入材用照準合せ装置によって照準合せする状態と、キルシュナー鋼線を橈骨遠位端部に刺入する状態とを示す図3と同じ方向から見た図である。
【図25】実施の形態5に係る刺入材用照準合せ装置によってキルシュナー鋼線を橈骨遠位端部に刺入する状態を示す図3と同じ方向から見た図である。
【符号の説明】
【0110】
1…橈骨
1a…軟骨下骨
5…プレート
6…スクリュー
8,9…刺入材挿入孔
11…ピン
14…キルシュナー鋼線
15…ガイド筒
16…照準部
16a…照門
16b…照星
17…連結部
18…内筒
19…アーム
20…レバー片
23…薄板
A…主平面
B…オフセット平面
γ…陰影線
γ1、γ2…陰影線
ε…刺入材の陰影
ζ…縁線
ζ1、ζ2…縁線
【技術分野】
【0001】
本発明は、橈骨遠位端、脛骨近位端等の長幹骨骨端部の骨折を治療する際に使用することができる刺入材用照準合せ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば人間の腕の橈骨はその遠位端部において骨折しやすい。この骨折の治療には、チタン合金等でできたプレートがインプラントとして用いられる。このプレートは一般に橈骨遠位端部の掌側面に倣う形状に形成され、プレート先端部にはプレートを橈骨に固定するための刺入材であるピン等を通す刺入材挿入孔が複数個形成される。術者は切開創から露出する橈骨遠位端部の掌側面にプレートを当て、このプレートの刺入材挿入孔に刺入材であるスクリュー又はピンを橈骨側へと貫通させ、これによりプレートを橈骨の骨折部位の近傍に固定する。その後、プレートの他の刺入材挿入孔にもスクリュー又はピンを通し、プレートをより強固に橈骨に固定する(例えば、特許文献1参照。)。その後、切開創を縫合し、骨折部位の組織の再生を待つ。
【0003】
上記橈骨遠位端部の骨折を治療する際、プレートに挿入する刺入材の少なくとも一本は橈骨の軟骨下骨に接触させておく必要がある。この刺入材が軟骨下骨から離れていると、術後に橈骨の手関節面が陥没したり、座滅したりし、ピン、スクリュー、プレート等が緩んで骨折の治療が不確実になるおそれがある。刺入材が軟骨下骨から2mm程度離れていると、橈骨の手関節面に陥没が生じると言われている。
【0004】
そこで、従来術者が外科用X線装置によってX線を患部に照射し、モニタを観察しながらプレートの刺入材挿入孔を通して刺入材であるキルシュナー鋼線やドリル刃の刺入方向を正確に定めつつ、骨に下孔を開け、その後、別の刺入材であるスクリューやピンをプレート上から下孔に通して、このスクリューやピンを軟骨下骨に接触させるようにしている。
【0005】
しかし、この治療は細かい作業を必要とし、面倒であり、時間がかかり、熟練を必要とする。そこで、この作業を熟練者、未熟練者の如何を問わず簡易に実施することができるシステムの開発が望まれていたが、近年次のような刺入材用照準合せ装置が提案されるに至った。
【0006】
この刺入材用照準合せ装置は、刺入材を骨に対して所定の方向に案内するガイド筒と、このガイド筒に並列で配置され、放射線難透過材からなる照門と照星とを含んだ照準部と、この照準部をガイド筒に連結する連結部とを具備した構造になっている。照準部の照門と照星は、各々ワイヤを平行に配置することによって形成され、両ワイヤがガイド筒の中心線を含む平面内に含まれるように配置される(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
この刺入材用照準合せ装置を使用して橈骨の遠位端部の骨折を治療する場合は、上述したように、術者が切開創から露出する橈骨遠位端部の掌側面にプレートを当て、さらにガイド筒をプレートの刺入材挿入孔に連通させる。
【0008】
そこで、術者がX線を照準部から患部へと照射しながら、照門と照星との陰影が重複して一本の直線状の陰影線となって現れる向きを見出し、この陰影線を患部の刺入材を通すべき方向及び位置に合わせる。
【0009】
そのうえで、ガイド筒内にキルシュナー鋼線を挿入して橈骨に下孔を穿孔する。このようなキルシュナー鋼線の陰影は上記照準部の陰影線と重なって橈骨内へと侵入する。すなわち、術者はキルシュナー鋼線の陰影の中心に照準部の陰影線が来るように観察しつつキルシュナー鋼線を橈骨内に挿入する。
【0010】
その後、キルシュナー鋼線を引き抜いた跡の下孔にプレートの刺入材挿入孔を通してピンを挿入し、さらにプレートの他の刺入材挿入孔にスクリューやピンを挿入して、プレートを橈骨に固定する。
【0011】
【特許文献1】特開2004−313514号公報
【特許文献2】特許第3280631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の刺入材用照準合せ装置では、照準部の照門と照星が各々ワイヤを平行に配置することによって形成され、両ワイヤがガイド筒の中心線を含む平面内に含まれるように配置される。そのため、術者は、二本のワイヤの陰影が重なることによって生じる一本の陰影線が、キルシュナー鋼線等刺入材の陰影の中心に位置しているか否かを観察しつつ、刺入材を骨折部位に挿入することになる。しかし、照準部の細い陰影線が刺入材の太い陰影の中心に位置するか否かを見分けるのは容易でないので、刺入材の向きはともかく骨内での刺入材の位置は不正確になりやすい。ことに橈骨の骨折の場合は、刺入材を橈骨の軟骨下骨に当接させる必要があるが、照準部の細い陰影線と刺入材の太い陰影とは通常の場合太さが合致していないので、刺入材が軟骨下骨から離れた状態で橈骨に挿入されるおそれがある。
【0013】
また、従来の刺入材用照準合せ装置では、照準部がガイド筒に対し動かないように一体化されているので、刺入材用照準合せ装置の全体を骨上で移動させつつ照準合せを行う必要があり、使い勝手が悪いという問題がある。
【0014】
従って、本発明は刺入材を簡易かつ正確に骨内に位置決めすることができる刺入材用照準合せ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0016】
なお、本発明の理解を容易にするため図面の参照符号を括弧付きで付するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
すなわち、請求項1に係る発明は、刺入材(6,11,14)を骨(1)に対して所定の方向に案内するガイド筒(15)と、このガイド筒(15)に並列で配置され、放射線難透過材からなる照門(16a)と照星(16b)とを含んだ照準部(16)と、この照準部(16)を上記ガイド筒(15)に連結する連結部(17)とを具備した刺入材用照準合せ装置において、上記照準部(16)の照門(16a)と照星(16b)とが、上記ガイド筒(15)の中心線を含む主平面(A)から平行にずれたオフセット平面(B)に含まれるように形成され、放射線の照射による上記照門(16a)と上記照星(16b)との陰影が重複して一本の直線状の陰影線(γ)となって現れた際に、上記ガイド筒(15)に通される刺入材(6,11,14)の陰影(ε)の縁線(ζ)が上記陰影線(γ)に接するようにした刺入材用照準合せ装置を採用する。
【0018】
請求項2に記載されるように、請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記照準部(16)の照門(16a)と照星(16b)が、各々細い線材で形成されたものとすることができる。
【0019】
請求項3に記載されるように、請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記照準部(16)が上記オフセット平面(B)に含まれる薄板(23)を有し、この板(23)の対向する二辺が各々照門(16a)と照星(16b)とされたものとすることができる。
【0020】
請求項4に記載されるように、請求項2又は請求項3に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記照門(16a)と上記照星(16b)のうち少なくとも一方が上記オフセット平面(B)内で屈曲しているものとすることができる。
【0021】
請求項5に記載されるように、請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記照門(16a)及び照星(16b)が二組設けられ、放射線の照射により各組の照門(16a)と照星(16b)の陰影が各々重複して二本の直線状の陰影線(γ1、γ2)となって現れた際に、上記ガイド筒(15)に通される刺入材(6,11,14)の陰影(ε)の両縁線(ζ1、ζ2)が上記二本の陰影線(γ1、γ2)に各々接するようにしたものとすることができる。
【0022】
請求項6に記載されるように、請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記ガイド筒(15)内に内筒(18)が挿入され、上記ガイド筒(15)から上記照準部(16)に至る箇所が上記内筒(18)を支点に回されることにより、上記照準部(16)の照門(16a)と照星(16b)とが合致した後に上記ガイド筒(15)を上記内筒(18)に対して回動不能にロックし得るロック手段(20)が設けられたものとすることができる。
【0023】
請求項7に記載されるように、請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、刺入材がキルシュナー鋼線(14)、ピン(11)、スクリュー(6)又はドリル刃である刺入材用照準合せ装置とすることができる。
【0024】
請求項8に記載されるように、請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記ガイド筒(15)が骨(1)の骨折部に当てられるプレート(5)の刺入材挿入孔(8,9)に対して着脱自在であるものとすることができる。
【0025】
請求項9に記載されるように、請求項6に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記内筒(18)が骨(1)の骨折部に当てられるプレート(5)の刺入材挿入孔(8,9)に対して着脱自在であるものとすることができる。
【0026】
請求項10に記載されるように、請求項8又は請求項9に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記骨が橈骨(1)であり、この橈骨(1)の遠位端部に当てられたプレート(5)に上記ガイド筒(15)又は上記内筒(18)が連結され、放射線の照射時に上記照準部(16)の照門(16a)と照星(16b)が重なったことによる一本の陰影線(γ)が橈骨(1)の軟骨下骨(1a)に接する位置に合わされると、上記ガイド筒(15)又は上記内筒(18)から上記プレート(5)の刺入材挿入孔(8)を通って橈骨(1)へと挿入される刺入材(6,11,14)の陰影(ε)の縁線(ζ)が上記陰影線(γ)に接触し、この刺入材(6,11,14)はその外周部が上記軟骨下骨(1a)に接触した状態で停止するようにしたものとすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、刺入材(6,11,14)を骨(1)に対して所定の方向に案内するガイド筒(15)と、このガイド筒(15)に並列で配置され、放射線難透過材からなる照門(16a)と照星(16b)とを含んだ照準部(16)と、この照準部(16)を上記ガイド筒(15)に連結する連結部とを具備した刺入材用照準合せ装置において、上記照準部(16)の照門(16a)と照星(16b)とが、上記ガイド筒(15)の中心線を含む主平面(A)から平行にずれたオフセット平面(B)に含まれるように形成され、放射線の照射による上記照門(16a)と上記照星(16b)との陰影が重複して一本の直線状の陰影線(γ)となって現れた際に、上記ガイド筒(15)に通される刺入材(6,11,14)の陰影(ε)の縁線(ζ)が上記陰影線(γ)に接するようにしたものであるから、照準部(16)の陰影線(γ)と刺入材(6,11,14)の陰影(ε)の縁線(ζ)との位置関係が術者によって明確に視認されることになり、刺入材(6,11,14)の骨(1)に対する挿入方向はもちろんのこと、刺入材(6,11,14)の骨(1)内での位置が正確に定められることとなる。従って、骨折の治療を簡易かつ正確に行うことができる。
【0028】
ことに、橈骨遠位端部の骨折の治療では、ピン、スクリュー等の刺入材(6,11,14)を橈骨(1)の軟骨下骨(1a)に接触するように刺入する必要があるが、本発明によれば、照準部(16)による一本の直線状の陰影線(γ)を軟骨下骨(1a)に接触させたうえで、刺入材(6,11,14)をガイド筒(15)から橈骨(1)内に挿入すると、この刺入材(6,11,14)の陰影(ε)はその縁線(ζ)が陰影線(γ)に接するようにして橈骨(1)内に進行し、刺入材(6,11,14)の外周部は軟骨下骨(1a)に正確に接触することとなる。従って、術後の橈骨手関節面の陥没、挫滅、刺入材の緩み等が防止され、橈骨遠位端部の骨折の治療効果が向上することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0030】
<実施の形態1>
図1及び図2に示すように、人間の左手橈骨1の遠位端部における骨折の治療が行われるものとして説明する。図1及び図2中、符号2は橈骨1に隣り合う尺骨、符号3は左手首、符号4は掌をそれぞれ示す。
【0031】
図示例では、骨折の整復にインプラントであるプレート5が用いられている。
【0032】
左手橈骨1へのプレート5の取り付けは、図1に示すように、プレート5が左手橈骨1の遠位端部に当てられ、部分的にスクリュー6又はピンがプレート5の刺入材挿入孔7から橈骨1に向かって挿入されることから開始される。その後、図2に示すように、プレート5の残りの全刺入材挿入孔8,9,10あるいは必要とされる刺入材挿入孔に図16に示すような各種のスクリュー6やピン11がプレート5から橈骨1に向かって挿入されることにより、プレート5が橈骨1に完全に固定される。
【0033】
この左手用のプレート5は、図1、図2、図15及び図16に示すように、左手の橈骨1における遠位端部の掌側面における輪郭に倣ったような形状に形成され、橈骨1の遠位端側に当てられる略三角形の展延部5aと、展延部5aの一隅側から橈骨1の本体側へと伸びる略長方形の幹板部5bとを具備する。
【0034】
プレート5は、その全体がステンレス鋼、チタン合金鋼等で一体成形される。
【0035】
略三角形の展延部5aの一辺は橈骨1の遠位端縁に沿うように伸び、この一辺に沿って多数個の刺入材挿入孔8,9が複数列で設けられる。この実施の形態1では、外側の列では四個の刺入材挿入孔8,9が並び、内側の列では二個の刺入材挿入孔9が並んでいる。また、図16に示すように、展延部5aは橈骨1の遠位端部における掌側面の傾斜に倣うように幹板部5bに対して緩傾斜で反り返っている。刺入材挿入孔7,8,9,10には骨折の形態によってそのすべてに又は選択的にピン11又はスクリュー6が橈骨1に向かって通される。これらのピン11又はスクリュー6によってプレート5が橈骨1の遠位端部の骨折部位に固定される。
【0036】
図15及び図16に示すように、展延部5aの刺入材挿入孔8,9には、ピン11の頭に形成された雄ネジ11aが螺合する雌ネジ8a,9aが形成される。この雌雄ネジ8a,9a,11aの螺合によって、橈骨1に対するピン11の向き及び位置が正確に定められる。ピン11に代えてスクリューが挿入される場合もあり、その場合はスクリューの頭に雌ネジ8a,9aと螺合する雄ネジが形成される。
【0037】
長方形の幹板部5bにも、図15及び図16に示すように、スクリュー6又はピンを橈骨1に向かって通すための各種の刺入材挿入孔7,10が形成される。これらの刺入材挿入孔7,10にもスクリュー6又はピンが橈骨1に向かって通されることによって、プレート5が橈骨1に強固に固定される。
【0038】
その他、プレート5を橈骨1に位置決めする等のために刺入材である各種キルシュナー鋼線を通す小孔12が、必要に応じてプレート5の所望箇所に形成される。
【0039】
なお、図1、図2、図3及び図15に示したプレート5は左手橈骨用のものであるが、右手橈骨用のプレート13は、図17に示すように、左手用のプレート5と対称的に形成される。図17中、左手橈骨用プレート5に対応する箇所は、同じ符号を付して示す。
【0040】
この実施の形態1において、刺入材用照準合せ装置は、図1に示すように、プレート5の最も尺骨2に寄った位置にある刺入材挿入孔8に刺入材であるキルシュナー鋼線14を通す際に用いられる。後述するように、キルシュナー鋼線14が通された跡の下孔に略同じ径のピン11が通される。
【0041】
このピン11は、図3に示すように、橈骨1の遠位端部における軟骨下骨1aに接するように橈骨1内に挿入する必要がある。このピン11が図3中、二点鎖線で示すように軟骨下骨1aから離れていると、上述したように、術後に橈骨1の手関節面が陥没したり、挫滅したりし、ピン11、スクリュー6、プレート5等が緩んで骨折の治療が不確実になるおそれがある。このピン11は軟骨下骨1aから例えば2mm以内の位置精度で橈骨1内に埋め込む必要がある。
【0042】
図1、図4〜図10に示すように、この刺入材用照準合せ装置は、キルシュナー鋼線14等の刺入材を橈骨1に対して所定の方向に案内するガイド筒15と、このガイド筒15に並列で配置され、放射線難透過材からなる照門16aと照星16bとを含んだ照準部16と、この照準部16を上記ガイド筒15に連結する連結部17とを具備する。
【0043】
刺入材としては、この実施の形態では、図2に示すピンを通すための下孔を橈骨に形成するべく、図1及び図5に示すようなキルシュナー鋼線14が用いられるものとして説明する。この下孔が正確な方向及び位置に形成されると、図3に示すように、刺入材であるピン11が同じく正確な方向及び位置に挿入され、ピン11の外周部が骨折した橈骨1の遠位端部の軟骨下骨1aに接触することとなる。
【0044】
なお、刺入材としてキルシュナー鋼線14に代えてピン、スクリュー、ドリル刃等を用い、これらの刺入材をこの刺入材用照準合せ装置によって橈骨1その他の骨に侵入させることも可能である。
【0045】
ガイド筒15は、この実施の形態1では、円筒として形成され、図5及び図6に示すように、その中心孔内に内筒18が挿入される。ガイド筒15と内筒18は、相対的にスライド及び回動が自在である。
【0046】
図5及び図18に示すように、内筒18の外周面は、ガイド筒15の中心孔の内周面と略同径に形成され、内筒18の内周面は、キルシュナー鋼線14と略同径に形成される。このため、内筒18はガイド筒15内でがたつくことなくスライド及び回動が可能であり、キルシュナー鋼線14は内筒18内でがたつくことなくスライド及び回動が可能である。
【0047】
内筒18の上部には、後述するロック手段によるロック性能を高めるためにローレット切り等によって粗面部18aが形成される。内筒18の下部には、プレート5の刺入材挿入孔8,9の雌ネジ8a,9aに螺合する雄ネジ18bが形成される。
【0048】
図4及び図8に示すように、ガイド筒15の上端には、アーム状の連結部17の一端が固定される。連結部17の一端にはガイド筒15の中心孔に連通する孔17aが形成され、この孔17aの近傍にロック手段が設けられる。
【0049】
ロック手段は、連結部17の一端をその外面から孔17a内へと貫通する溝17bと、溝17b内に回動可能に支軸19で保持されたレバー片20とを備える。レバー片20の先端にはカム21が設けられ、レバー片20が支軸19を支点にして回動すると、カム21が上記孔17aに対し出没するようになっている。図5中、レバー片20が二点鎖線の位置へと回されると、カム21が内筒18の孔内に入って粗面部18aに当たり、これによりガイド筒15は内筒18に対して回動不能かつスライド不能にロックされる。また、レバー片20が実線の位置へと回されると、カム21が溝17b内に没して粗面部18aから離れ、これによりガイド筒15は内筒18に対して回動可能かつスライド可能にアンロックされる。
【0050】
図5に示すように、内筒18の雄ネジ18bがプレート5の刺入材挿入孔8の雌ネジ8aに螺合した状態で、ロック手段がアンロックされると、刺入材用照準合せ装置は内筒18を中心にしてプレート5の上方で回動可能となる。ロック手段がロックされると、刺入材用照準合せ装置は回動不能になり、内筒18の回りの所望位置に固定される。
【0051】
図1、図4〜図6に示すように、連結部17の他端には、照準部16が固定される。連結部17で連結されることによって、照準部16はガイド筒15に略平行に並んだ状態でガイド筒15と一体化される。図1及び図5に示すように、連結部17はガイド筒15側がプレート5に連結された状態で、プレート5の上方をプレート5と平行に梁状に伸びる。連結部17の他端はプレート5の周縁から外れる位置へと伸び、その他端から照準部はプレート5の下方へと略板状に伸びる。
【0052】
照準部16は、放射線易透過材からなる透視体で包まれる。放射線易透過材はX線等の放射線を容易に透過するものであり、放射線易透過材としては樹脂のほか、カーボン、アルミニウムを用いることができる。放射線易透過材は具体的には樹脂であり、照準部16はこの樹脂によって全体として板状に形成され、ガイド筒15の伸び方向に平行に平坦に延びる。
【0053】
図1、図4〜図6、及び図10に示すように、照準部16は、照門16aと照星16bとを具備する。この実施の形態1では、照門16aと照星16bが各々細いワイヤ等の線材で形成され、透視体である樹脂内に埋設される。線材はステンレス鋼等の放射線難透過材で作られる。
【0054】
図6に示すように、照門16aと照星16bは、ガイド筒15の中心線を含む主平面Aから平行にずれたオフセット平面Bに含まれるように設けられる。図6中、符号δはオフセット平面Bのオフセット量を示す。
【0055】
これにより、図1に示すように、X線を照射しつつ内筒18を中心にして照準部16を回動させると、図11に示すように、照門16aと照星16bの両陰影線α、βがずれて現れていたのが、図12又は図13に示すように、いずれかの位置において照門16aと照星16bの両陰影α、βが重複して一本の直線状の陰影線γとなって現れる。これは図示しないモニタ画面によって術者が視認可能である。照門16aと照星16bは図示例ではガイド筒15の中心線に平行な直線となって伸びているが、上記オフセット平面B内にあれば、傾斜していても、屈曲していてもよい。
【0056】
照門16aと照星16bの両陰影が重複した一本の直線状の陰影線γを術者が視認した際、図12に示すようにこの一本の陰影線γが軟骨下骨1aから離れた位置にあるものとすれば、術者は刺入材用照準合せ装置とプレート5とを橈骨1上で少しばかり移動させることによって、図13に示すようにこの一本の陰影線γを破線で示す軟骨下骨1aの陰影に接触させる。そこで、図14に示すようにガイド筒15に刺入材であるキルシュナー鋼線14を通すと、キルシュナー鋼線14の陰影εの縁線ζが上記陰影線γに接しながら橈骨1内へと侵入する。このキルシュナー鋼線14はその外周部が上記軟骨下骨1aに接触した状態で停止する。
【0057】
図14に示す例では、キルシュナー鋼線14の陰影εの縁線ζに、上記照準部16の照門16aと照星16bによる一本の陰影線γが重なり合うように、照門16aと照星16bが形成される。
【0058】
なお、オフセット量δは、主平面Aとオフセット平面Bとの間の距離であって、図6、図14等では、オフセット平面Bは照門16aと照星16bの各中心線を含む面として表したが、照門16aと照星16bの太さが無視できない場合は、図14に示すように、照門16aと照星16bの両外周部に接する面をオフセット平面B1としてオフセット量δ1を決定するのが望ましい。これにより、キルシュナー鋼線14の外周部を軟骨下骨1aに更に好適に接触させることができる。
【0059】
このキルシュナー鋼線14によって、橈骨1内には軟骨下骨1aに接するように下孔が形成され、キルシュナー鋼線14が抜き取られた後にこの下孔へとピン11又はスクリュー6が挿入されると、ピン11又はスクリュー6は軟骨下骨1aに接触することになる。
【0060】
図4乃至図6に示すように、照準部16には術者が照門16aと照星16bの位置を目視で確認することができるように覗き孔22が必要に応じて設けられる。
【0061】
なお、必要に応じて内筒18を省略し、ガイド筒15の下端に内筒18の下端における雄ネジ18bと同様な雄ネジを形成して、この雄ネジをプレート5の刺入材挿入穴8,9の雌ネジ8a,9aに螺合させるようにしてもよい。この場合は、刺入材はガイド筒15のみによって骨へと案内されることになる。
【0062】
次に、上記構成の刺入材用照準合せ装置の作用について説明する。
【0063】
(1)図1乃至図3に示すように、左手の橈骨1の遠位端部に生じた骨折を治療するものとして説明する。
【0064】
まず、図1に示すように、術者によって左手の手首3が切開され、切開創3a内に左手橈骨用プレート5が挿入され、橈骨1の遠位端部に当てられる。
【0065】
そして、図1及び図16に示すように、プレート5の幹板部5bにおける略中央の長円形の刺入材挿入孔7にスクリュー6が挿入され、プレート5が橈骨1に緩く留められる。この状態でプレート5は橈骨1上で少しばかり移動可能である。
【0066】
(2)術者によって内筒18の雄ネジ18bがプレート5における最も尺骨2に寄った刺入材挿入孔8の雌ネジ8aに螺入され、プレート5上に起立状態で固定される。
【0067】
この内筒18に、図1、図5、図6及び図8に示すようにガイド筒15が被せられる。これにより、刺入材用照準合せ装置が内筒18を中心にして回動可能にプレート5上に保持される。
【0068】
(3)術者が、図1に示すように、X線を照準部16の手前から患者の左手に向かって照射し、内筒18を中心にして照準部16を少しずつ回動させながら、その透視画像をモニタによって観察する。このX線の透視と透視画像の観察は、図示しない外科用X線装置によって行われる。
【0069】
(4)X線による照準部16の透視画像において、照準部16の照門16aと照星16bとが当初例えば図11のような二本の陰影線α、βとなって現れる。この場合、図11の右側の陰影線αが照門16aに対応し、左側の陰影線βが照星16bに対応する。
【0070】
(5)術者がさらに照準部16を少しずつ回動させると、例えば図12に示すように、照門16aと照星16bの両陰影線α、βが重複してモニタ上に一本の真っ直ぐな陰影線γとなって現れる。
【0071】
(6)照門16aと照星16bの両陰影が重複した一本の直線状の陰影線γが術者によって視認されると、ロック手段のレバー片20が術者によってロック操作される。これにより、ガイド筒15から照準部16に至る部分が内筒18及びプレート5に対し回動不能に固定される。その結果、陰影線γが一本に保持され、照準が合った状態が維持される。
【0072】
(7)図12に示すように、通常の場合、一本の陰影線γは軟骨下骨1aから多少離れた位置に現れる。そこで、術者がモニタを見ながら刺入材用照準合せ装置とプレート5とを橈骨1上で少しばかり移動させ、図13に示すように一本の陰影線γを軟骨下骨1aの陰影に接触させる。図1に示したように、プレート5はスクリュー6によって橈骨1に緩く留められており、かつ、このスクリュー6は長孔である刺入材挿入孔7に通されているので、刺入材用照準合せ装置とプレート5は橈骨1上で多少移動することが可能である。
【0073】
(8)図13の状態を維持しつつ、図14に示すように、術者が刺入材であるキルシュナー鋼線14を内筒内に通す。この場合、キルシュナー鋼線14は後に挿入される刺入材であるピン11又はスクリュー6と略同径のものが使用される。
【0074】
(9)キルシュナー鋼線14が内筒18内から橈骨1内へと挿入されると、図14に示すように、モニタに表れるキルシュナー鋼線14の陰影εはその縁線ζが上記陰影線γに接するようにして橈骨1内へと侵入する。
【0075】
従って、刺入材であるキルシュナー鋼線14の外周部は軟骨下骨1aに接触した状態で停止することとなる。
【0076】
このキルシュナー鋼線14はその後橈骨1から抜き取られ、その跡にピン11又はスクリュー6を通すための下孔が開口する。
【0077】
(10)術者によって刺入材用照準合せ装置がプレート5から取り外され、プレート5の刺入材挿入孔8からピン11又はスクリュー6が橈骨1内に挿入される。ピン11又はスクリュー6は上記下孔に案内されて橈骨1内に入り込み、その外周部が橈骨1の遠位端部の軟骨下骨1aに接触する。
【0078】
このピン11は、図16に示すように、その頭部の雄ネジ11aがプレート5の刺入材挿入孔8の雌ネジ8a内にねじ込まれることにより、プレート5に対し固定される。
【0079】
(11)他のピン11又はスクリュー6が、刺入材用照準合せ装置の使用によって、あるいは刺入材用照準合せ装置を使用することなく、他の刺入材挿入孔9,10から橈骨1内に挿入される。また、最初にプレート5の刺入材挿入孔7から橈骨1に挿入されたスクリュー6が締め付けられる。これにより、図2に示す如く、プレート5が橈骨1の骨折を生じた遠位端部に動かないように固定される。
【0080】
図3中、実線で示すように、刺入材であるピン11の外周部が軟骨下骨1aに接触しているので、手術後における橈骨手関節面の陥没、挫滅、刺入材の緩み等が防止され、橈骨遠位端部の骨折の治療効果が向上することとなる。
【0081】
(12)最後に切開創3aが縫合され、手術が終了する。
【0082】
なお、右手の橈骨の遠位端部に骨折が生じた場合は、図17に示すような右手用のプレート13が使用され、上記したと同様な手術により右手橈骨の骨折部に固定される。ただし、その場合は、図6中照準部の照門16a及び照星16bが、ガイド筒15の中心線を含む主平面を挟んで反対側に仮想されるオフセット平面内に設けられた刺入材用照準合せ装置が用いられる。
【0083】
<実施の形態2>
図19に示すように、この実施の形態2の刺入材用照準合せ装置では、照準部16の照門16aと照星16bとによる一本の陰影線γと、刺入材であるキルシュナー鋼線14の陰影εの縁線ζとが重なり合わないように、照門16aと照星16bが形成される。また、照門16aと照星16bは実施の形態1の場合よりも、より細く形成される。
【0084】
この刺入材用照準合せ装置を使用して、キルシュナー鋼線14で橈骨1に軟骨下骨1aに接するように下孔を形成し、キルシュナー鋼線14を抜き取った跡の下孔へとピン11又はスクリュー6を挿入すると、ピン11又はスクリュー6の外周部が軟骨下骨1aに接触することになる。
【0085】
この実施の形態2では、照門16aと照星16bとが重なった一本の陰影線γの太さ分だけキルシュナー鋼線14の外周部が軟骨下骨1aから離れるので、照門16aと照星16bはなるべく細く形成される。
【0086】
なお、実施の形態2において、実施の形態1と同じ部分には同じ符号を用いて示し、重複した説明を省略する。
【0087】
<実施の形態3>
図20及び図21に示すように、この実施の形態3の刺入材用照準合せ装置では、照準部16の照門16aと照星16bとがオフセット平面Bに含まれる薄い板23で形成され、この板23の対向する二辺が各々照門16aと照星16bとされる。
【0088】
なお、図21及び図22に示すように、オフセット量δ1である主平面Aとオフセット平面Bとの間の距離は、上記板23のオフセット側の面をオフセット平面B1としてオフセット量δ1が決定される。これにより、キルシュナー鋼線14の外周部を軟骨下骨1aに更に好適に接触させることができる。
【0089】
この刺入材用照準合せ装置を使用する場合は、図1に示すように、放射線であるX線が照射され、上記板23の対向する一方の辺である照門16aと他方の辺である照星16bの両陰影線α、βが重複して一本の直線状の陰影線γとなってモニタ上に現れるように、刺入材用照準合せ装置がプレート5に固定した内筒18の回りで回される。そして、ロック手段のレバー片20が操作され、内筒18にガイド筒15がロックされる。
【0090】
その後、刺入材用照準合せ装置とプレート5とが橈骨1上で少しばかり移動させられ、図22に示すように、上記一本の陰影線γが軟骨下骨1aの陰影に接触せしめられる。そこで、内筒18に刺入材であるキルシュナー鋼線14が通されると、キルシュナー鋼線14の陰影εの縁線ζが上記陰影線γに接しながら橈骨1内へと侵入する。このキルシュナー鋼線14はその外周部が上記軟骨下骨1aに接触した状態で停止する。
【0091】
このキルシュナー鋼線14によって、橈骨1内には軟骨下骨1aに接するように下孔が形成され、キルシュナー鋼線14が抜き取られた後にこの下孔へとピン11又はスクリュー6が挿入されると、ピン11又はスクリュー6は軟骨下骨1aに接触することになる。
【0092】
なお、実施の形態3において、実施の形態1,2と同じ部分には同じ符号を用いて示し、重複した説明を省略する。
【0093】
<実施の形態4>
図23に示すように、この実施の形態4の刺入材用照準合せ装置では、照準部16が実施の形態3と同様にオフセット平面B1に含まれる薄い板で形成されるが、実施の形態3における板が長方形であるのに対し、この実施の形態4の板24は三角形に形成される。すなわち、板24の一辺は実施の形態3と同様に直線の照門16aとなっているが、他方の辺は屈曲線となっており、ここに三角形の頂角が形成され、この頂角と屈曲線とが照星16bとなっている。
【0094】
また、図24に示すように、オフセット量δ1である主平面Aとオフセット平面Bとの間の距離は、上記板24のオフセット側の面をオフセット平面B1としてオフセット量δ1が決定される。これにより、キルシュナー鋼線14の外周部を軟骨下骨1aに更に好適に接触させることができる。
【0095】
この刺入材用照準合せ装置を使用する場合は、図1に示すように、放射線であるX線が照射され、上記板24の直線状の照門16aと三角形の頂角である照星16bの両陰影線α、βが重複して一本の直線状の陰影線γとなってモニタ上に現れるように、刺入材用照準合せ装置がプレート5に固定した内筒18の回りで回される。
【0096】
刺入材用照準合せ装置がプレート5上で回されると、図24中、破線で示すように、照準部16の三角形板24の高さが変化し、照準が合うに連れて三角形が低くなることから、照準合せが容易になる。
【0097】
照門16aと照星16bの両陰影が重複して一本の直線状の陰影線γとなってモニタ上に現れると、ロック手段のレバー片20が操作され内筒18にガイド筒15がロックされる。
【0098】
その後、刺入材用照準合せ装置とプレート5とが橈骨1上で少しばかり移動させられることによって、図24に示すように、上記一本の陰影線γが軟骨下骨1aの陰影に接触せしめられる。そこで、内筒18に刺入材であるキルシュナー鋼線14が通されると、キルシュナー鋼線14の陰影εの縁線ζが上記陰影線γに接しながら橈骨1内へと侵入する。このキルシュナー鋼線14はその外周部が上記軟骨下骨1aに接触した状態で停止する。
【0099】
このキルシュナー鋼線14によって、橈骨1内には軟骨下骨1aに接するように下孔が形成され、キルシュナー鋼線14が抜き取られた後にこの下孔へとピン11又はスクリュー6が挿入されると、ピン11又はスクリュー6は軟骨下骨1aに接触することになる。
【0100】
なお、上記照星16bを形成する板24の屈曲線は、三角形の頂角のごとき直線が交差するようなものに限らず、円弧等の曲線であってもよい。また、照門16aも同様な屈曲線としてもよい。
【0101】
その他、実施の形態4において、実施の形態1〜3と同じ部分には同じ符号を用いて示し、重複した説明を省略する。
【0102】
<実施の形態5>
この実施の形態5の刺入材用照準合せ装置では、実施の形態2で示した照準部16におけると同様な照門16a及び照星16bが二組平行に設けられ、図25に示すように、放射線の照射により二組の照門16aと照星16bの陰影が各々重複して二本の直線状の陰影線γ1、γ2となって現れた際に、ガイド筒15に通される刺入材であるキルシュナー鋼線14の陰影εの両縁線ζ1、ζ2が上記二本の陰影線γ1、γ2に各々接するようになっている。
【0103】
照門16aと照星16bの両陰影が各々重複した二本の直線状の陰影線γ1、γ2を術者が視認した際、一方の陰影線γ1が軟骨下骨1aから離れた位置にあるものとすれば、術者は刺入材用照準合せ装置とプレート5とを橈骨1上で少しばかり移動させることによって、図25に示すように、一方の陰影線γ1を軟骨下骨1aの陰影に接触させる。そこで、ガイド筒15に刺入材であるキルシュナー鋼線14を通すと、キルシュナー鋼線14の陰影εにおける両側の縁線ζ1、ζ2が上記二本の陰影線γ1、γ2に各々接しながら橈骨1内へと侵入する。このキルシュナー鋼線14はその外周部が上記軟骨下骨1aに接触した状態で停止する。
【0104】
この刺入材用照準合せ装置を使用して、キルシュナー鋼線14で橈骨1に軟骨下骨1aに接するように下孔を形成し、キルシュナー鋼線14を抜き取った跡の下孔へとピン11又はスクリュー6を挿入すると、ピン11又はスクリュー6の外周部が軟骨下骨1aに接触することになる。
【0105】
このように直線状の陰影線γ1、γ2が二本形成されるようにすると、刺入材用照準合せ装置を左手橈骨1の骨折を治療する場合と右手橈骨の骨折を治療する場合の双方に使用することができる。
【0106】
この実施の形態5において、二組の照門16a及び照星16bは、実施の形態2と同様に各々細いワイヤ等の線材で形成され、透視体である樹脂内に埋設されるが、実施の形態3,4のいずれかの形態のものを採用することもでき、また、実施の形態2〜4の照門16a及び照星16bを取り混ぜて採用することもできる。
【0107】
その他、実施の形態5において、実施の形態1〜4と同じ部分には同じ符号を用いて示し、重複した説明を省略する。
【0108】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば上記実施の形態1〜5では橈骨の遠位端部の骨折治療について説明したが、脛骨の近位端部等その他の部位の骨折治療にも適用可能である。また、手術の手順も適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施の形態1に係る刺入材用照準合せ装置を左手橈骨の遠位端部と共に示す斜視図である。
【図2】プレートを左手橈骨の遠位端部に固定した状態を示す斜視図である。
【図3】図2中、III−III線矢視図である。
【図4】刺入材用照準合せ装置の部分切欠正面図である。
【図5】刺入材用照準合せ装置を使用状態で示す部分切欠正面図である。
【図6】図5中、VI−VI線矢視図である。
【図7】刺入材用照準合せ装置の平面図である。
【図8】刺入材用照準合せ装置の左側面図である。
【図9】刺入材用照準合せ装置をプレートに連結した状態で示す平面図である。
【図10】刺入材用照準合せ装置の右側面図である。
【図11】刺入材用照準合せ装置の照準部の陰影線を照準合せ前の状態で示す図3と同じ方向から見た図である。
【図12】刺入材用照準合せ装置の照準部の陰影線を照準合せ後の状態で示す図3と同じ方向から見た図である。
【図13】図12で現れた一本の陰影線を橈骨遠位端部の軟骨下骨に接触させた状態で示す図3と同じ方向から見た図である。
【図14】刺入材用照準合せ装置によってキルシュナー鋼線を橈骨遠位端部に刺入する状態を示す図3と同じ方向から見た図である。
【図15】左手用プレートの平面図である。
【図16】図15中、XVI−XVI線矢視図である。
【図17】右手用プレートの平面図である。
【図18】内筒の正面図である。
【図19】本発明の実施の形態2に係る刺入材用照準合せ装置を示す図14と同様な図である。
【図20】本発明の実施の形態3に係る刺入材用照準合せ装置を使用状態で示す部分切欠正面図である。
【図21】図20中、XXI−XXI線矢視図である。
【図22】実施の形態3に係る刺入材用照準合せ装置によってキルシュナー鋼線を橈骨遠位端部に刺入する状態を示す図3と同じ方向から見た図である。
【図23】本発明の実施の形態4に係る刺入材用照準合せ装置を使用状態で示す部分切欠正面図である。
【図24】実施の形態4に係る刺入材用照準合せ装置によって照準合せする状態と、キルシュナー鋼線を橈骨遠位端部に刺入する状態とを示す図3と同じ方向から見た図である。
【図25】実施の形態5に係る刺入材用照準合せ装置によってキルシュナー鋼線を橈骨遠位端部に刺入する状態を示す図3と同じ方向から見た図である。
【符号の説明】
【0110】
1…橈骨
1a…軟骨下骨
5…プレート
6…スクリュー
8,9…刺入材挿入孔
11…ピン
14…キルシュナー鋼線
15…ガイド筒
16…照準部
16a…照門
16b…照星
17…連結部
18…内筒
19…アーム
20…レバー片
23…薄板
A…主平面
B…オフセット平面
γ…陰影線
γ1、γ2…陰影線
ε…刺入材の陰影
ζ…縁線
ζ1、ζ2…縁線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺入材を骨に対して所定の方向に案内するガイド筒と、このガイド筒に並列で配置され、放射線難透過材からなる照門と照星とを含んだ照準部と、この照準部を上記ガイド筒に連結する連結部とを具備した刺入材用照準合せ装置において、上記照準部の照門と照星とが、上記ガイド筒の中心線を含む主平面から平行にずれたオフセット平面に含まれるように形成され、放射線の照射による上記照門と上記照星との陰影が重複して一本の直線状の陰影線となって現れた際に、上記ガイド筒に通される刺入材の陰影の縁線が上記陰影線に接するようにしたことを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記照準部の照門と照星が、各々細い線材で形成されたことを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記照準部が上記オフセット平面に含まれる薄板を有し、この板の対向する二辺が各々照門と照星とされたことを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記照門と上記照星のうち少なくとも一方が上記オフセット平面内で屈曲していることを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項5】
請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記照門及び照星が二組設けられ、放射線の照射により各組の照門と照星の陰影が各々重複して二本の直線状の陰影線となって現れた際に、上記ガイド筒に通される刺入材の陰影の両縁線が上記二本の陰影線に各々接するようにしたことを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項6】
請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記ガイド筒内に内筒が挿入され、上記ガイド筒から上記照準部に至る箇所が上記内筒を支点に回されることにより、上記照準部の照門と照星とが合致した後に上記ガイド筒を上記内筒に対して回動不能にロックし得るロック手段が設けられたことを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項7】
請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、刺入材がキルシュナー鋼線、ドリル刃、スクリュー又はピンであることを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項8】
請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記ガイド筒が骨の骨折部に当てられるプレートの刺入材挿入孔に対して着脱自在であることを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項9】
請求項6に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記内筒が骨の骨折部に当てられるプレートの刺入材挿入孔に対して着脱自在であることを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記骨が橈骨であり、この橈骨の遠位端部に当てられたプレートに上記ガイド筒又は上記内筒が連結され、放射線の照射時に上記照準部の照門と照星が重なったことによる一本の陰影線が橈骨の軟骨下骨に接する位置に合わされると、上記ガイド筒又は上記内筒から上記プレートの刺入材挿入孔を通って橈骨へと挿入される刺入材の陰影の縁線が上記陰影線に接触し、この刺入材はその外周部が上記軟骨下骨に接触した状態で停止するようにしたことを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項1】
刺入材を骨に対して所定の方向に案内するガイド筒と、このガイド筒に並列で配置され、放射線難透過材からなる照門と照星とを含んだ照準部と、この照準部を上記ガイド筒に連結する連結部とを具備した刺入材用照準合せ装置において、上記照準部の照門と照星とが、上記ガイド筒の中心線を含む主平面から平行にずれたオフセット平面に含まれるように形成され、放射線の照射による上記照門と上記照星との陰影が重複して一本の直線状の陰影線となって現れた際に、上記ガイド筒に通される刺入材の陰影の縁線が上記陰影線に接するようにしたことを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記照準部の照門と照星が、各々細い線材で形成されたことを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記照準部が上記オフセット平面に含まれる薄板を有し、この板の対向する二辺が各々照門と照星とされたことを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記照門と上記照星のうち少なくとも一方が上記オフセット平面内で屈曲していることを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項5】
請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記照門及び照星が二組設けられ、放射線の照射により各組の照門と照星の陰影が各々重複して二本の直線状の陰影線となって現れた際に、上記ガイド筒に通される刺入材の陰影の両縁線が上記二本の陰影線に各々接するようにしたことを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項6】
請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記ガイド筒内に内筒が挿入され、上記ガイド筒から上記照準部に至る箇所が上記内筒を支点に回されることにより、上記照準部の照門と照星とが合致した後に上記ガイド筒を上記内筒に対して回動不能にロックし得るロック手段が設けられたことを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項7】
請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、刺入材がキルシュナー鋼線、ドリル刃、スクリュー又はピンであることを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項8】
請求項1に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記ガイド筒が骨の骨折部に当てられるプレートの刺入材挿入孔に対して着脱自在であることを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項9】
請求項6に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記内筒が骨の骨折部に当てられるプレートの刺入材挿入孔に対して着脱自在であることを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の刺入材用照準合せ装置において、上記骨が橈骨であり、この橈骨の遠位端部に当てられたプレートに上記ガイド筒又は上記内筒が連結され、放射線の照射時に上記照準部の照門と照星が重なったことによる一本の陰影線が橈骨の軟骨下骨に接する位置に合わされると、上記ガイド筒又は上記内筒から上記プレートの刺入材挿入孔を通って橈骨へと挿入される刺入材の陰影の縁線が上記陰影線に接触し、この刺入材はその外周部が上記軟骨下骨に接触した状態で停止するようにしたことを特徴とする刺入材用照準合せ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2010−110552(P2010−110552A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287698(P2008−287698)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【特許番号】特許第4272697号(P4272697)
【特許公報発行日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000193612)瑞穂医科工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【特許番号】特許第4272697号(P4272697)
【特許公報発行日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000193612)瑞穂医科工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】
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