削り出しエルボの製造方法
【課題】内部に無用の肉がなくて軸直角な断面形状が軸方向の各部において円をなし、かつ、穴面が軸心に沿って緩やかに屈曲した穴を備えるエルボを素材からの削り出しによって製造可能となすことを課題としている。
【解決手段】穴面にアンダーカット部が残された下穴を素材にあける工程、円弧状の切れ刃を備える仕上げ穴径よりも外径の小さなサイドカッタIIを、素材12に対して所定の方向に相対的に傾けた姿勢で自転させながら公転させ、このときの公転を、仕上げ目標の穴面に沿ってカッタが移動するように行なって下穴11−3の一端側の内径を仕上げる工程、
サイドカッタIIを自転させながら公転させて下穴11−3の他端側の内径を仕上げる工程を経てエルボの穴を形成するようにした。
【解決手段】穴面にアンダーカット部が残された下穴を素材にあける工程、円弧状の切れ刃を備える仕上げ穴径よりも外径の小さなサイドカッタIIを、素材12に対して所定の方向に相対的に傾けた姿勢で自転させながら公転させ、このときの公転を、仕上げ目標の穴面に沿ってカッタが移動するように行なって下穴11−3の一端側の内径を仕上げる工程、
サイドカッタIIを自転させながら公転させて下穴11−3の他端側の内径を仕上げる工程を経てエルボの穴を形成するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配管用削り出しエルボ(曲り管)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配管用の金属製エルボには、鋳型で成形した鋳造エルボ、直管を曲げ加工したエルボ、金属板をプレス成形して得た半割り形状の2個の曲がり管材を突合せて溶接一体化した溶接エルボ及び金属素材から切り出した削り出しエルボがある。
【0003】
このうち、削り出しエルボは、例えば、下記特許文献1,2などに取り上げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−41315号公報
【特許文献2】特開2000−343136号(特許第3352052号)公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の削り出しエルボは、素材に対して2方向から穴をあけ、その2つの穴を内部で交差させて内部流路を形成している。従って、例えば、90°エルボについては、内部流路が直角に近いものになり、配管の一部として使用したときの流路抵抗が大きくなる欠点がある。このことは、特許文献2が0009段落で指摘している。
【0006】
この流路抵抗の問題は、穴を緩やかに屈曲させることで解消できるが、そのような形状の穴を持つ削り出しエルボ、中でも、曲り角が90°或はそれ以上で、素材にSUS(ステンレス鋼)、チタン系材料、ニッケル基耐熱合金{ニッケルベースで、鉄、クロム、ニオブ、モリブデン等の合金元素を添加した合金、例えば、スペシャルメタル社(Special Metals Corporation)商品名:インコネル}などの難削材を採用したエルボは、最先端の技術を駆使した5軸加工機や多軸複合加工機を用いても作れないと考えられていた。
【0007】
最先端の機能をもつ加工機を使用すれば、屈曲した穴をある程度のところまでは加工することができる。しかし、通常の加工方法では曲げの内側になる部分の穴面に、加工不可能なアンダーカット部(削り残し部)ができ、それが流体の流れを悪化させることから実用的な製品ができない。そのために、この種のエルボについては、鋳造、曲げ加工、溶接のいずれかで製造されたものが採用されていた。
【0008】
しかしながら、鋳造エルボは、鋳巣などの欠陥が生じやすく、品質面での信頼性確保が難しい。しかも、他のエルボに比べて剛性が低い。
【0009】
また、曲げ加工エルボは、各部の肉厚と強度が均一にならない。曲げの内側よりもむしろ肉厚と強度が必要とされる曲げの外側で管の肉厚と強度が小さくなる傾向があり、パイプの断面形状も高精度が得られていない。
【0010】
さらに、溶接エルボは、溶接接合部の材料組織が変化して応力腐食割れを生じやすいものになり、溶接による大きな歪も避けられない。
【0011】
例えば、飛行機のエンジンの配管、原子力関連施設の配管などについては、極めて厳しい条件をクリアすることが要求され、このような用途では、高品質、高精度、低流路抵抗のエルボが待望される。
【0012】
削り出しエルボは、溶製金属の一体加工品であり、巣や溶接欠陥や歪ができず、品質面での信頼性に優れる。高精度加工機を使用することで寸法精度や形状精度を高めることも可能である。この削り出しエルボの穴を良好に加工することができれば、削り出しエルボの弱点である流路抵抗の問題が解消され、高品質、高精度、低流路抵抗の要求に応えた金属製エルボを実現することができる。
【0013】
そこで、この発明は、内部に無用の肉がなくて軸直角な断面形状が軸方向の各部において円をなし、かつ、穴面が軸心に沿って緩やかに屈曲した穴を備えるエルボを削り出しによって製造可能となすことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、この発明においては、削り出しエルボに設ける穴を、
素材を回転切削工具で2方向から粗加工してその素材に少なくとも完成品のエルボの曲げの内側となる側の穴面にアンダーカット部が残された下穴をあける工程、
円弧状の切れ刃を外周に備える仕上げ穴径よりも外径の小さなサイドカッタを、切り出すエルボの曲げの内側で当該カッタの端面が前記下穴の開口から離反する方向に素材に対して相対的に傾けた姿勢で自転させながら公転させて前記下穴の穴面に切り込ませ、このときの公転を、仕上げ目標の穴面に沿ってカッタが移動するように行なって前記下穴の一端側の内径を仕上げる工程、
前記サイドカッタを前記下穴にその下穴の他端側から挿入し、自転させながら仕上げ目標の穴面に沿うように公転させて前記下穴の他端側の内径を仕上げる工程を経て形成するようにした。前記サイドカッタは、アーバで支持して下穴に入り込ませる。
【0015】
下穴を仕上げ加工するときのサイドカッタの公転は、仕上げ目標の穴をサイドカッタの軸心と直角に切断したときの軸方向の各部における穴の切り口形状(これは、エルボの穴の軸直角断面がカッタの軸心に対して直交する面と平行になる箇所では真円になり、その他の箇所では楕円になる)と相似形の軌道に沿ってなされるようにする。加工機の主軸を予め設定した制御プログラムに従って動かすことでその公転を行なえる。
【0016】
そのサイドカッタによる削り代が多ければ、加工を数回に分けて行う。
【0017】
下穴の仕上げ加工での素材とサイドカッタの相対的な傾きの角度は、例えば、25°程度確保すれば、下穴に残されたアンダーカット部を完全に除去することができる。
【0018】
また、この方法での前記下穴の加工は、先端外周に円弧状の切れ刃を備える外径が下穴の内径よりも小さなミーリングカッタを使用して、
前記素材の隣り合う2面に前記ミーリングカッタをそれぞれ切り込み位置と切り込み深さを変えながら切り込ませてエルボの曲げの内側にエルボの曲り角と同一又はそれに近似した角度で交差したアンダーカット部が存在し、エルボの曲げの外側はエルボの穴の穴面にほぼ沿った形状の通し穴をあける工程、
前記ミーリングカッタを、そのカッタの先端がエルボの曲げの内側に寄る方向に傾斜させて前記アンダーカット部を削り、この動作を前記ミーリングカッタの傾斜角を変えながら数回繰り返して前記アンダーカット部の残存量を減少させる工程を経て行うと好ましい。
【0019】
この方法でのエルボの外径加工は、正面フライスなどによる粗加工とボールエンドミルなどによる仕上げ加工を順番に施す方法で行える。その外径加工は、穴あけ後に行なうと好ましいが、穴あけ前に行なうことも可能である。
【0020】
なお、この発明は、加工が特に難しくなる90°或はそれ以上の曲り角を有する特殊エルボの製造に適用すると特に効果的であるが、90°以下の曲り角を有するエルボの製造にも利用することができる。
【0021】
また、この発明は、削り出しエルボの素材が金属、中でも、先に述べたSUSなどの難削材である場合に特に大きな効果を期待できるが、素材として鉄などの一般的な金属や樹脂が用いられる場合にもその有効性が発揮される。例えば、樹脂製の大径特殊エルボを少量生産する必要が生じたときに金型成形を行うと金型費用が高くつく。このようなときには、要求される形状、サイズのエルボを樹脂の素材ブロックから削り出した方が経済的に有利となる。
【0022】
このほか、この発明では、素材から一体のエルボを削り出すので、エルボの穴をエルボの外径に対して任意の方向に意図的に偏心させたり、管の端部に一体の接続用フランジを形成したりすることもできる。
【0023】
この発明の製造方法は、サイドカッタと素材の相対的な傾き角が許容上限に達するまでは、サイドカッタと素材をエルボの穴が屈曲した位置で穴の曲がり状態に応じて相対的に傾けながら加工し、サイドカッタと素材の相対的な傾き角が許容上限に達した位置から相対的な傾きの角度を固定して上記の方法で一端側の内径を仕上げることも可能である。
【0024】
また、前記サイドカッタとミーリングカッタの前記素材の相対的な傾きは、カッタを固定して素材を動かす方法、素材に対してカッタを動かす方法のどちらで行なってもよい。例えば、素材を、回転割り出し機能を有する回転テーブルに、削り出されるエルボの穴の中心が前記回転テーブルのテーブル面と平行な面上に置かれる状態にセットして回転テーブルを回転させる方法を採れば、素材をミーリングカッタやサイドカッタに対して必要な方向に傾けることができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明の方法の特徴は、素材に粗加工して設けた下穴を、円弧状の切れ刃を備える仕上げ穴径よりも外径の小さなサイドカッタを用いて仕上げ加工することと、この際に、サイドカッタをエルボの曲げの内側で当該カッタの端面が前記下穴の開口から離反する方向に素材に対して相対的に傾けた姿勢にして自転させながら螺旋の軌道上を公転移動させるところにある。
【0026】
素材に対する下穴の加工は、既知の方法で行うことができるが、従来の加工方法では、エルボの曲げの内側の穴面に加工不可能によるアンダーカット部が生じる。そのアンダーカット部を、円弧状の切れ刃を有するサイドカッタを使用して削り取る。
【0027】
サイドカッタの公転がエルボの穴の軸心とほぼ直角な面内で起こるように、当該サイドカッタと前記素材をエルボの穴が屈曲した位置で穴の曲がり状態に応じて相対的に傾けながらサイドカッタを送り込んでエルボの穴の内径を仕上げることができれば比較的楽に真円の穴をあけることができるが、この方法では、例えば90°エルボを製造しようとすると、サイドカッタと素材を最大で相対的に45°傾ける必要があり、両者の干渉が避けられない。
【0028】
この発明では、その問題を回避するために、サイドカッタと素材の相対的な傾き角を小さめ(下穴を軸方向に半分加工しても両者の干渉が起こらない角度)に設定する。その角度は、エルボの穴の内径とサイドカッタを保持したアーバの外径の径差によって変わるが、90°エルボの製造で45°の傾き角を確保するのは不可能であるので、例えば25°程度に設定する。
【0029】
今、素材に対してサイドカッタを相対的に25°傾けたと仮定し、エルボの仕上げ目標の穴をその傾いたサイドカッタの軸直角な端面と平行な面に沿って軸方向の各部で切断すると、穴の切り口はほとんどの箇所で楕円になる。その楕円の形状や大きさは切断点の各部で異なるが、切断点の各部での切り口形状に沿うようにカッタを移動させれば、下穴に残されたアンダーカット部がきれいに除去され、エルボの穴が、軸直角断面において軸方向の各部で真円をなし、かつ、穴面が軸心と平行に緩やかに屈曲した形状に仕上がる。
【0030】
なお、サイドカッタは、この発明の方法での穴仕上げを可能にするために、エルボの穴の直径よりも外径の小さなものを使用する。また、エルボの穴の仕上げ径とサイドカッタを支持したアーバ(これは当然にサイドカッタよりも小径)の外径との径差が大きくなるほどサイドカッタと素材の相対的な傾きの許容角度が大きくなって穴の一端側からの加工可能範囲が広がるが、アーバの外径が細くなりすぎると工具剛性が低下して加工中にカッタがビビリやすくなって加工の安定性や加工精度に悪影響がでるので、アーバの外径はこの点を考慮して設定する。
【0031】
さらに、下穴の一端側からの加工ではエルボの穴の全域を仕上げることができないので、下穴の他端側からも加工を行って下穴を仕上げる。
【0032】
このように、この発明によれば、円弧刃を有するサイドカッタを使用して楕円軌道を公転させながら下穴の仕上げ加工を行うので、従来不可能と考えられていた断面円形で、しかも緩やかに屈曲した穴を有する削り出しエルボを製造することができる。
【0033】
また、削り出し加工であるで、エルボの穴をエルボの外径に対して偏心させて曲げの外側で管の肉厚と強度を大きくしたエルボや、少なくとも一端に直線部が存在するエルボ、更には、両端に接続用のフランジを一体に形成したエルボを製造することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a):この発明の方法で製造する削り出しエルボの一例を示す斜視図、(b):同上のエルボの軸直角断面図
【図2】(a):素材のエルボ削り出し領域の半分を示す斜視図、(b)その半分の削り出し領域の平面図
【図3】(a)〜(d):下穴加工の前段の工程を示す図
【図4】(a)〜(e):下穴加工の後段の工程を示す図
【図5】(a):下穴の一端側を仕上げるときの素材とサイドカッタの姿勢を示す図、(b):一端側を仕上げた下穴の半分を示す斜視図
【図6】(a−1)〜(a−3):下穴の一端側の仕上げ加工でのサイドカッタの公転移動を示す図、(b−1)〜(b−3):サイドカッタの公転移動を(a−1)〜(a−3)に対応させて上から見た図
【図7】(a):下穴の他端側の未仕上げ状態を示す斜視図、(b)下穴の他端側の仕上げ状態を示す斜視図
【図8】(a):この発明の方法で製造する削り出しエルボの他の例を示す斜視図、(b):同上のエルボの軸直角断面図
【図9】この発明の方法で製造する削り出しエルボのさらに他の例を示す斜視図
【図10】この発明の方法で製造する削り出しエルボのさらに他の例を示す斜視図
【図11】(a):この発明の方法で穴と外径の粗加工に利用する回転切削工具の一例をアーバに装着した状態にして示す斜視図、(b):同上の切削工具の側面図
【図12】(a):この発明の方法で穴の仕上げ加工に使用するサイドカッタの一例を示す斜視図、(b):同上のカッタをアーバに装着した状態の側面図
【図13】この発明の方法で外径の仕上げ加工に使用するボールエンドミルの一例を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面に基づいて、この発明の削り出しエルボの製造方法の実施の形態を説明する。
【0036】
先ず、この発明の方法で使用する回転切削工具の一例を図11〜図13に示す。図11に示す切削工具は、カッタボディ1の先端外周に、円弧状の切れ刃2を周方向に間隔をあけて複数設けた市販の刃先交換式のミーリングカッタ(正面フライス)Iであり、これでエルボの素材に設ける下穴とエルボの外径の粗加工を行う。その粗加工は、切れ刃2を着脱自在の丸駒チップで構成した図示のミーリングカッタIをアーバ3に取り付けて行うと高能率加工が行えて好ましいが、正面フライス以外のミーリングカッタ、例えば、ラジアスエンドミルやボールエンドミルなどで行うことも可能である。
【0037】
図12は、カッタボディ4の外周に円弧状の切れ刃5を周方向に間隔をあけて複数設けたサイドカッタIIであり、これでエルボの素材に設けた下穴の仕上げ加工を行う。図示のサイドカッタIIは、着脱自在の丸駒チップで切れ刃5を構成した市販品のカッタを、アーバに強固に固定できるように改良したものであって、特注品のアーバ6の先端に装着して使用する。このサイドカッタIIは、外径が仕上げ加工する下穴の穴径よりも小さい。また、アーバ6の外径はそのサイドカッタIIの外径よりもさらに小さい。
【0038】
図13は、市販品の刃先交換式ボールエンドミルIIIであり、例示の方法は、この刃先交換式ボールエンドミルIIIやそれに代わるソリッドボールエンドミルでエルボの外径を仕上げる。
【0039】
この発明の方法で製造する削り出しエルボの一例を図1に示す。図示のエルボ10は、フランジなしの90°エルボであり、軸心が所定の曲率で滑らかに屈曲した穴11を有している。
【0040】
上記の切削工具を使用した図1の90°エルボ10の製造を例に挙げて以下の説明を行う。図2の12は、角ブロック状に加工されたエルボの素材である。加工状況を理解しやすくするために、その素材12を半分に切断した断面の図にし、カッタも簡略化した図にしている。
【0041】
ここでは、素材12を、加工機の回転テーブル(図示せず)に対して、削り出されるエルボ10の穴の中心Oがその回転テーブルのテーブル面(これは回転中心の軸に対して直角)と平行な面上に置かれる状態にセットし、後述するカッタと素材12の相対傾斜を回転テーブルの回転によって行う。
【0042】
加工機の主軸(図示せず)にミーリングカッタIをセットし、図3(a)に示すように、このミーリングカッタIを素材12のA面に対して切り込み位置と切り込み深さを変えながら軸方向に送りをかけて切り込ませ、曲げの外側では穴面のアンダーカット部が少ない図3(b)のような止まり穴11−1をあける。
【0043】
次に、図3(c)に示すように、素材12のA面に対して直交したB面を、ミーリングカッタIの先端に対面させ、この状態でミーリングカッタIをA面に穴をあけたときと同様に切り込み位置と切り込み深さを変えながらB面に軸方向に送りをかけて切り込ませ、この加工で生じる穴を先行加工した止まり穴に連通させて曲げの内側に穴径方向に盛り上がったアンダーカット部13が存在する通し穴11−2を得る。
【0044】
この状況では、アンダーカット部13の残存量が多過ぎて図12のサイドカッタIIでは仕上げ加工でのアンダーカット部の完全除去ができない。そこで、図4(a)に示すように、素材12をミーリングカッタIに対してそのカッタIの先端がエルボの曲げの内側に寄る方向にθ°傾斜させ、この状態でミーリングカッタIを切り込み位置を変えながら軸方向に送り込んでアンダーカット部13の一部を削り取る。
【0045】
この動作を、ミーリングカッタIと素材12の相対的な傾きの角度を少しずつ増加させながら数回繰り返し、アンダーカット部13の残存量を充分に減少させる。この加工での素材12とミーリングカッタIの相対的な傾きの角度は、素材の材質に応じてカッタの切削負担が過剰にならないように設定する。評価試験では、図4の(a)のθを15°、図4(b)のθ1を25°、図4(c)のθ2を35°、図4(d)のθ3を45°に設定したが、これに限定されるものではない。
【0046】
このアンダーカット部13の除去は、通し穴11−2の両端から加工しても構わないが、
多くのケースでは通し穴11−2の一端側からの加工のみで事足り、この場合、作業工数が少なくて済む。
【0047】
以上の工程を経ると、素材12に対して図4(e)に示すような下穴11−3が形成される。そこで、加工機の主軸に装着した工具を図12のサイドカッタIIに取り替え、このサイドカッタIIを使用して下穴11−3の仕上げ加工を実施する。
【0048】
その仕上げ加工は、サイドカッタIIを、図5(a)に示すように、切り出すエルボ10の曲げの内側でサイドカッタIIの端面が下穴11−3の開口から離反する方向に素材12に対して相対的に角度θ4傾け、その姿勢でサイドカッタIIを自転させながら公転させて下穴11−3の穴面に切り込ませる。そして、このときのサイドカッタIIの公転を、仕上げ目標の穴面に沿ってカッタが螺旋軌道を移動するように行う。ここではサイドカッタIIと素材の相対傾斜の角度θ4を常時一定に保つと考えるが、このことは必須の要件ではない。
【0049】
図6の(a−1)〜(a−3)及び(b−1)〜(b−3)は、サイドカッタIIを自転させながら軸方向に送りをかけつつ半時計方向に公転させる状態を表している。その公転は、送りをかけながらの公転であるので、サイドカッタIIが螺旋の軌道を移動するものになる。
【0050】
また、削り出される前のエルボ10の軸直角断面が素材12に対してサイドカッタIIの軸心と直角な端面(角度θ4傾いたサイドカッタの端面)と平行になる位置{図5(a)のY−Y線に沿った位置}では、エルボの穴11の切り口が真円になり、図5(a)のX−X線やZ−Z線などに沿ったその他の位置では、エルボの穴11の軸直角断面での切り口が楕円になる。しかも、その楕円の切り口は、穴11の軸直角切断点の各部において大きさや形状が異なるものになる。サイドカッタIIは、仕上げ目標の穴面、つまり、軸方向各部の切り口の穴断面に沿うように公転での移動を行なわせる。
【0051】
例示の加工方法の場合、Z−Z線を越えた位置(穴の他端側)での仕上げは、穴の曲げの外側でのみカッタを軸方向各部の切り口の穴断面に沿うように動かしてアーバ6が素材と干渉しないようにしている。下穴の一端側からの仕上げ加工は穴の半分を加工できればよいので、曲げの内側ではカッタを切り口の穴断面に無理に沿わせる必要はない。
【0052】
なお、このときの削り代が大きければ、加工を数回に分けて行って1回当たりの加工負担を軽くする。削り残し部を数回に分けて少しずつ削り取って最終加工で目標内径に仕上げる方法を採れば、切削負荷が過大にならず、加工の安定性と加工精度が高まる。
【0053】
この移動制御を伴ったサイドカッタでの加工により、下穴11−3に残されたアンダーカット部の大部分が除去されて下穴の一端側の内径が仕上がる。
【0054】
下穴の一端側からの加工では、穴形状による加工規制が生じて図5(b)のように下穴の全域を仕上げることができないので、この後に、下穴11−3の他端側からも加工を行って穴を仕上げる。サイドカッタIIを図7(a)に示すように下穴11−3の他端側に配置し、上記と同様の作業を行って(上記同一条件の移動制御を行なうことは必ずしも必要ではない)アンダーカット部13の残存部を削り取る。
【0055】
以上で、エルボの穴11が、軸直角断面において軸方向の各部で真円をなし、かつ、穴面が軸心と平行に緩やかに屈曲した形状に仕上がる。
【0056】
例示の製造方法では、この後にエルボの外径を図11のミーリングカッタIを使用して粗加工し、その後、さらに、図13のボールエンドミルIIIを使用して外径を仕上げ加工する。以上で所望の削り出しエルボが完成する。
【0057】
なお、エルボの外径加工は、穴あけ後に行なうと穴加工時の素材の保持安定性を高めやすく、外径面の傷つき防止も図れて好ましいが、穴をあける前に行なうこともできる。
【0058】
また、ミーリングカッタIやサイドカッタIIの素材12に対する相対的な傾きは、カッタを装着した加工機の主軸を傾ける方法で行うこともできる。
【0059】
さらに、加工機の制御が少し複雑になるが、サイドカッタIIを下穴11−3に切り込ませて自転させながら公転させ、その移動が完成品のエルボに設ける穴の軸心とほぼ直角な面内で起こるようにサイドカッタIIと素材12をエルボの穴11が屈曲した位置で穴の曲がり状態に応じて相対的に傾けながら下穴11−3の一端側の内径を穴の一端側から他端側に向って途中まで加工し、サイドカッタIIと素材12の相対的な傾き角が許容上限に達した位置から相対的な傾きの角度を固定して下穴11−3の一端側の内径の仕上げ工程を実行しても発明の目的が達成される。
【0060】
このほか、この発明の方法は、削り出し加工であるので、エルボの穴11の中心O1をエルボの外径中心O2に対して偏心させて曲げの外側で管の肉厚と強度を大きくした図8(a),(b)に示すようなエルボ10や、少なくとも一端側に直線部14を有する図9に示すようなエルボ、或は、両端に接続用のフランジ15を一体に加工した図10に示すようなエルボを製造することも可能である。
【実施例】
【0061】
内径φ190mm、中心の曲げ半径φ200mm、肉厚10mmの90°エルボをこの発明の方法で試作した。エルボの素材は、加工方法を実証する試験であるので、木材を使用した。
【0062】
また、回転切削工具は、図11のミーリングカッタIとして、外径φ50mm、円弧切れ刃のR半径8mm、刃数4の丸駒チップ装着刃先交換式正面フライスを、図12のサイドカッタIIとして、外径φ127mm、円弧切れ刃のR半径6mm、刃数5の丸駒チップ装着刃先交換式側フライスを、図13のボールエンドミルIIIとして、外径φ30mmのボールエンドミルをそれぞれ使用した。
【0063】
加工機は、出願人が保有しているCNC横中グリ盤を使用した。そのCNC横中グリ盤
は、分割割り出し精度が1/10000度と言う世界最高水準の回転テーブルを備えており、その回転テーブルに素材をセットし、素材とカッタの相対的な傾きをその回転テーブルで制御する方法で行った。
【0064】
加工は、図3〜図7で説明した手順に従って行なった。サイドカッタによる下穴の仕上げ加工は、削り残されている切削領域を2mm刻みで加工していき、最終的に削り残し0で仕上げる方法を採った。その結果、穴の内部に削り残し部が全く、穴は真円で穴面がエルボの軸心と平行になっており、しかも、管の各部の肉厚{図1(b)の断面の各部の肉厚t}が均一な削り出しエルボを得ることができた。
【0065】
上述したような高精度の割り出し精度を有する回転テーブルを備えた加工機を使用することで、サイドカッタの公転が途中までは完成品のエルボに設ける穴の軸心とほぼ直角な面内で起こるようにサイドカッタと素材をエルボの穴の曲がり状態に応じて相対的に傾けながら下穴の内径を仕上げ加工し、サイドカッタと素材の相対的な傾き角が許容上限に達した位置から相対的な傾きの角度を固定して楕円の軌道上を公転させる方法での高精度加工も問題なく行える。
【符号の説明】
【0066】
I ミーリングカッタ
II サイドカッタ
III ボールエンドミル
1,4 カッタボディ
2,5 切れ刃
3,6 アーバ
10 エルボ
11 穴
11−1 止まり穴
11−2 通し穴
11−3 下穴
12 素材
13 アンダーカット部
14 直線部
15 フランジ
A,B 素材の直交した面
t 管厚
【技術分野】
【0001】
この発明は、配管用削り出しエルボ(曲り管)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配管用の金属製エルボには、鋳型で成形した鋳造エルボ、直管を曲げ加工したエルボ、金属板をプレス成形して得た半割り形状の2個の曲がり管材を突合せて溶接一体化した溶接エルボ及び金属素材から切り出した削り出しエルボがある。
【0003】
このうち、削り出しエルボは、例えば、下記特許文献1,2などに取り上げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−41315号公報
【特許文献2】特開2000−343136号(特許第3352052号)公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の削り出しエルボは、素材に対して2方向から穴をあけ、その2つの穴を内部で交差させて内部流路を形成している。従って、例えば、90°エルボについては、内部流路が直角に近いものになり、配管の一部として使用したときの流路抵抗が大きくなる欠点がある。このことは、特許文献2が0009段落で指摘している。
【0006】
この流路抵抗の問題は、穴を緩やかに屈曲させることで解消できるが、そのような形状の穴を持つ削り出しエルボ、中でも、曲り角が90°或はそれ以上で、素材にSUS(ステンレス鋼)、チタン系材料、ニッケル基耐熱合金{ニッケルベースで、鉄、クロム、ニオブ、モリブデン等の合金元素を添加した合金、例えば、スペシャルメタル社(Special Metals Corporation)商品名:インコネル}などの難削材を採用したエルボは、最先端の技術を駆使した5軸加工機や多軸複合加工機を用いても作れないと考えられていた。
【0007】
最先端の機能をもつ加工機を使用すれば、屈曲した穴をある程度のところまでは加工することができる。しかし、通常の加工方法では曲げの内側になる部分の穴面に、加工不可能なアンダーカット部(削り残し部)ができ、それが流体の流れを悪化させることから実用的な製品ができない。そのために、この種のエルボについては、鋳造、曲げ加工、溶接のいずれかで製造されたものが採用されていた。
【0008】
しかしながら、鋳造エルボは、鋳巣などの欠陥が生じやすく、品質面での信頼性確保が難しい。しかも、他のエルボに比べて剛性が低い。
【0009】
また、曲げ加工エルボは、各部の肉厚と強度が均一にならない。曲げの内側よりもむしろ肉厚と強度が必要とされる曲げの外側で管の肉厚と強度が小さくなる傾向があり、パイプの断面形状も高精度が得られていない。
【0010】
さらに、溶接エルボは、溶接接合部の材料組織が変化して応力腐食割れを生じやすいものになり、溶接による大きな歪も避けられない。
【0011】
例えば、飛行機のエンジンの配管、原子力関連施設の配管などについては、極めて厳しい条件をクリアすることが要求され、このような用途では、高品質、高精度、低流路抵抗のエルボが待望される。
【0012】
削り出しエルボは、溶製金属の一体加工品であり、巣や溶接欠陥や歪ができず、品質面での信頼性に優れる。高精度加工機を使用することで寸法精度や形状精度を高めることも可能である。この削り出しエルボの穴を良好に加工することができれば、削り出しエルボの弱点である流路抵抗の問題が解消され、高品質、高精度、低流路抵抗の要求に応えた金属製エルボを実現することができる。
【0013】
そこで、この発明は、内部に無用の肉がなくて軸直角な断面形状が軸方向の各部において円をなし、かつ、穴面が軸心に沿って緩やかに屈曲した穴を備えるエルボを削り出しによって製造可能となすことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、この発明においては、削り出しエルボに設ける穴を、
素材を回転切削工具で2方向から粗加工してその素材に少なくとも完成品のエルボの曲げの内側となる側の穴面にアンダーカット部が残された下穴をあける工程、
円弧状の切れ刃を外周に備える仕上げ穴径よりも外径の小さなサイドカッタを、切り出すエルボの曲げの内側で当該カッタの端面が前記下穴の開口から離反する方向に素材に対して相対的に傾けた姿勢で自転させながら公転させて前記下穴の穴面に切り込ませ、このときの公転を、仕上げ目標の穴面に沿ってカッタが移動するように行なって前記下穴の一端側の内径を仕上げる工程、
前記サイドカッタを前記下穴にその下穴の他端側から挿入し、自転させながら仕上げ目標の穴面に沿うように公転させて前記下穴の他端側の内径を仕上げる工程を経て形成するようにした。前記サイドカッタは、アーバで支持して下穴に入り込ませる。
【0015】
下穴を仕上げ加工するときのサイドカッタの公転は、仕上げ目標の穴をサイドカッタの軸心と直角に切断したときの軸方向の各部における穴の切り口形状(これは、エルボの穴の軸直角断面がカッタの軸心に対して直交する面と平行になる箇所では真円になり、その他の箇所では楕円になる)と相似形の軌道に沿ってなされるようにする。加工機の主軸を予め設定した制御プログラムに従って動かすことでその公転を行なえる。
【0016】
そのサイドカッタによる削り代が多ければ、加工を数回に分けて行う。
【0017】
下穴の仕上げ加工での素材とサイドカッタの相対的な傾きの角度は、例えば、25°程度確保すれば、下穴に残されたアンダーカット部を完全に除去することができる。
【0018】
また、この方法での前記下穴の加工は、先端外周に円弧状の切れ刃を備える外径が下穴の内径よりも小さなミーリングカッタを使用して、
前記素材の隣り合う2面に前記ミーリングカッタをそれぞれ切り込み位置と切り込み深さを変えながら切り込ませてエルボの曲げの内側にエルボの曲り角と同一又はそれに近似した角度で交差したアンダーカット部が存在し、エルボの曲げの外側はエルボの穴の穴面にほぼ沿った形状の通し穴をあける工程、
前記ミーリングカッタを、そのカッタの先端がエルボの曲げの内側に寄る方向に傾斜させて前記アンダーカット部を削り、この動作を前記ミーリングカッタの傾斜角を変えながら数回繰り返して前記アンダーカット部の残存量を減少させる工程を経て行うと好ましい。
【0019】
この方法でのエルボの外径加工は、正面フライスなどによる粗加工とボールエンドミルなどによる仕上げ加工を順番に施す方法で行える。その外径加工は、穴あけ後に行なうと好ましいが、穴あけ前に行なうことも可能である。
【0020】
なお、この発明は、加工が特に難しくなる90°或はそれ以上の曲り角を有する特殊エルボの製造に適用すると特に効果的であるが、90°以下の曲り角を有するエルボの製造にも利用することができる。
【0021】
また、この発明は、削り出しエルボの素材が金属、中でも、先に述べたSUSなどの難削材である場合に特に大きな効果を期待できるが、素材として鉄などの一般的な金属や樹脂が用いられる場合にもその有効性が発揮される。例えば、樹脂製の大径特殊エルボを少量生産する必要が生じたときに金型成形を行うと金型費用が高くつく。このようなときには、要求される形状、サイズのエルボを樹脂の素材ブロックから削り出した方が経済的に有利となる。
【0022】
このほか、この発明では、素材から一体のエルボを削り出すので、エルボの穴をエルボの外径に対して任意の方向に意図的に偏心させたり、管の端部に一体の接続用フランジを形成したりすることもできる。
【0023】
この発明の製造方法は、サイドカッタと素材の相対的な傾き角が許容上限に達するまでは、サイドカッタと素材をエルボの穴が屈曲した位置で穴の曲がり状態に応じて相対的に傾けながら加工し、サイドカッタと素材の相対的な傾き角が許容上限に達した位置から相対的な傾きの角度を固定して上記の方法で一端側の内径を仕上げることも可能である。
【0024】
また、前記サイドカッタとミーリングカッタの前記素材の相対的な傾きは、カッタを固定して素材を動かす方法、素材に対してカッタを動かす方法のどちらで行なってもよい。例えば、素材を、回転割り出し機能を有する回転テーブルに、削り出されるエルボの穴の中心が前記回転テーブルのテーブル面と平行な面上に置かれる状態にセットして回転テーブルを回転させる方法を採れば、素材をミーリングカッタやサイドカッタに対して必要な方向に傾けることができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明の方法の特徴は、素材に粗加工して設けた下穴を、円弧状の切れ刃を備える仕上げ穴径よりも外径の小さなサイドカッタを用いて仕上げ加工することと、この際に、サイドカッタをエルボの曲げの内側で当該カッタの端面が前記下穴の開口から離反する方向に素材に対して相対的に傾けた姿勢にして自転させながら螺旋の軌道上を公転移動させるところにある。
【0026】
素材に対する下穴の加工は、既知の方法で行うことができるが、従来の加工方法では、エルボの曲げの内側の穴面に加工不可能によるアンダーカット部が生じる。そのアンダーカット部を、円弧状の切れ刃を有するサイドカッタを使用して削り取る。
【0027】
サイドカッタの公転がエルボの穴の軸心とほぼ直角な面内で起こるように、当該サイドカッタと前記素材をエルボの穴が屈曲した位置で穴の曲がり状態に応じて相対的に傾けながらサイドカッタを送り込んでエルボの穴の内径を仕上げることができれば比較的楽に真円の穴をあけることができるが、この方法では、例えば90°エルボを製造しようとすると、サイドカッタと素材を最大で相対的に45°傾ける必要があり、両者の干渉が避けられない。
【0028】
この発明では、その問題を回避するために、サイドカッタと素材の相対的な傾き角を小さめ(下穴を軸方向に半分加工しても両者の干渉が起こらない角度)に設定する。その角度は、エルボの穴の内径とサイドカッタを保持したアーバの外径の径差によって変わるが、90°エルボの製造で45°の傾き角を確保するのは不可能であるので、例えば25°程度に設定する。
【0029】
今、素材に対してサイドカッタを相対的に25°傾けたと仮定し、エルボの仕上げ目標の穴をその傾いたサイドカッタの軸直角な端面と平行な面に沿って軸方向の各部で切断すると、穴の切り口はほとんどの箇所で楕円になる。その楕円の形状や大きさは切断点の各部で異なるが、切断点の各部での切り口形状に沿うようにカッタを移動させれば、下穴に残されたアンダーカット部がきれいに除去され、エルボの穴が、軸直角断面において軸方向の各部で真円をなし、かつ、穴面が軸心と平行に緩やかに屈曲した形状に仕上がる。
【0030】
なお、サイドカッタは、この発明の方法での穴仕上げを可能にするために、エルボの穴の直径よりも外径の小さなものを使用する。また、エルボの穴の仕上げ径とサイドカッタを支持したアーバ(これは当然にサイドカッタよりも小径)の外径との径差が大きくなるほどサイドカッタと素材の相対的な傾きの許容角度が大きくなって穴の一端側からの加工可能範囲が広がるが、アーバの外径が細くなりすぎると工具剛性が低下して加工中にカッタがビビリやすくなって加工の安定性や加工精度に悪影響がでるので、アーバの外径はこの点を考慮して設定する。
【0031】
さらに、下穴の一端側からの加工ではエルボの穴の全域を仕上げることができないので、下穴の他端側からも加工を行って下穴を仕上げる。
【0032】
このように、この発明によれば、円弧刃を有するサイドカッタを使用して楕円軌道を公転させながら下穴の仕上げ加工を行うので、従来不可能と考えられていた断面円形で、しかも緩やかに屈曲した穴を有する削り出しエルボを製造することができる。
【0033】
また、削り出し加工であるで、エルボの穴をエルボの外径に対して偏心させて曲げの外側で管の肉厚と強度を大きくしたエルボや、少なくとも一端に直線部が存在するエルボ、更には、両端に接続用のフランジを一体に形成したエルボを製造することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a):この発明の方法で製造する削り出しエルボの一例を示す斜視図、(b):同上のエルボの軸直角断面図
【図2】(a):素材のエルボ削り出し領域の半分を示す斜視図、(b)その半分の削り出し領域の平面図
【図3】(a)〜(d):下穴加工の前段の工程を示す図
【図4】(a)〜(e):下穴加工の後段の工程を示す図
【図5】(a):下穴の一端側を仕上げるときの素材とサイドカッタの姿勢を示す図、(b):一端側を仕上げた下穴の半分を示す斜視図
【図6】(a−1)〜(a−3):下穴の一端側の仕上げ加工でのサイドカッタの公転移動を示す図、(b−1)〜(b−3):サイドカッタの公転移動を(a−1)〜(a−3)に対応させて上から見た図
【図7】(a):下穴の他端側の未仕上げ状態を示す斜視図、(b)下穴の他端側の仕上げ状態を示す斜視図
【図8】(a):この発明の方法で製造する削り出しエルボの他の例を示す斜視図、(b):同上のエルボの軸直角断面図
【図9】この発明の方法で製造する削り出しエルボのさらに他の例を示す斜視図
【図10】この発明の方法で製造する削り出しエルボのさらに他の例を示す斜視図
【図11】(a):この発明の方法で穴と外径の粗加工に利用する回転切削工具の一例をアーバに装着した状態にして示す斜視図、(b):同上の切削工具の側面図
【図12】(a):この発明の方法で穴の仕上げ加工に使用するサイドカッタの一例を示す斜視図、(b):同上のカッタをアーバに装着した状態の側面図
【図13】この発明の方法で外径の仕上げ加工に使用するボールエンドミルの一例を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面に基づいて、この発明の削り出しエルボの製造方法の実施の形態を説明する。
【0036】
先ず、この発明の方法で使用する回転切削工具の一例を図11〜図13に示す。図11に示す切削工具は、カッタボディ1の先端外周に、円弧状の切れ刃2を周方向に間隔をあけて複数設けた市販の刃先交換式のミーリングカッタ(正面フライス)Iであり、これでエルボの素材に設ける下穴とエルボの外径の粗加工を行う。その粗加工は、切れ刃2を着脱自在の丸駒チップで構成した図示のミーリングカッタIをアーバ3に取り付けて行うと高能率加工が行えて好ましいが、正面フライス以外のミーリングカッタ、例えば、ラジアスエンドミルやボールエンドミルなどで行うことも可能である。
【0037】
図12は、カッタボディ4の外周に円弧状の切れ刃5を周方向に間隔をあけて複数設けたサイドカッタIIであり、これでエルボの素材に設けた下穴の仕上げ加工を行う。図示のサイドカッタIIは、着脱自在の丸駒チップで切れ刃5を構成した市販品のカッタを、アーバに強固に固定できるように改良したものであって、特注品のアーバ6の先端に装着して使用する。このサイドカッタIIは、外径が仕上げ加工する下穴の穴径よりも小さい。また、アーバ6の外径はそのサイドカッタIIの外径よりもさらに小さい。
【0038】
図13は、市販品の刃先交換式ボールエンドミルIIIであり、例示の方法は、この刃先交換式ボールエンドミルIIIやそれに代わるソリッドボールエンドミルでエルボの外径を仕上げる。
【0039】
この発明の方法で製造する削り出しエルボの一例を図1に示す。図示のエルボ10は、フランジなしの90°エルボであり、軸心が所定の曲率で滑らかに屈曲した穴11を有している。
【0040】
上記の切削工具を使用した図1の90°エルボ10の製造を例に挙げて以下の説明を行う。図2の12は、角ブロック状に加工されたエルボの素材である。加工状況を理解しやすくするために、その素材12を半分に切断した断面の図にし、カッタも簡略化した図にしている。
【0041】
ここでは、素材12を、加工機の回転テーブル(図示せず)に対して、削り出されるエルボ10の穴の中心Oがその回転テーブルのテーブル面(これは回転中心の軸に対して直角)と平行な面上に置かれる状態にセットし、後述するカッタと素材12の相対傾斜を回転テーブルの回転によって行う。
【0042】
加工機の主軸(図示せず)にミーリングカッタIをセットし、図3(a)に示すように、このミーリングカッタIを素材12のA面に対して切り込み位置と切り込み深さを変えながら軸方向に送りをかけて切り込ませ、曲げの外側では穴面のアンダーカット部が少ない図3(b)のような止まり穴11−1をあける。
【0043】
次に、図3(c)に示すように、素材12のA面に対して直交したB面を、ミーリングカッタIの先端に対面させ、この状態でミーリングカッタIをA面に穴をあけたときと同様に切り込み位置と切り込み深さを変えながらB面に軸方向に送りをかけて切り込ませ、この加工で生じる穴を先行加工した止まり穴に連通させて曲げの内側に穴径方向に盛り上がったアンダーカット部13が存在する通し穴11−2を得る。
【0044】
この状況では、アンダーカット部13の残存量が多過ぎて図12のサイドカッタIIでは仕上げ加工でのアンダーカット部の完全除去ができない。そこで、図4(a)に示すように、素材12をミーリングカッタIに対してそのカッタIの先端がエルボの曲げの内側に寄る方向にθ°傾斜させ、この状態でミーリングカッタIを切り込み位置を変えながら軸方向に送り込んでアンダーカット部13の一部を削り取る。
【0045】
この動作を、ミーリングカッタIと素材12の相対的な傾きの角度を少しずつ増加させながら数回繰り返し、アンダーカット部13の残存量を充分に減少させる。この加工での素材12とミーリングカッタIの相対的な傾きの角度は、素材の材質に応じてカッタの切削負担が過剰にならないように設定する。評価試験では、図4の(a)のθを15°、図4(b)のθ1を25°、図4(c)のθ2を35°、図4(d)のθ3を45°に設定したが、これに限定されるものではない。
【0046】
このアンダーカット部13の除去は、通し穴11−2の両端から加工しても構わないが、
多くのケースでは通し穴11−2の一端側からの加工のみで事足り、この場合、作業工数が少なくて済む。
【0047】
以上の工程を経ると、素材12に対して図4(e)に示すような下穴11−3が形成される。そこで、加工機の主軸に装着した工具を図12のサイドカッタIIに取り替え、このサイドカッタIIを使用して下穴11−3の仕上げ加工を実施する。
【0048】
その仕上げ加工は、サイドカッタIIを、図5(a)に示すように、切り出すエルボ10の曲げの内側でサイドカッタIIの端面が下穴11−3の開口から離反する方向に素材12に対して相対的に角度θ4傾け、その姿勢でサイドカッタIIを自転させながら公転させて下穴11−3の穴面に切り込ませる。そして、このときのサイドカッタIIの公転を、仕上げ目標の穴面に沿ってカッタが螺旋軌道を移動するように行う。ここではサイドカッタIIと素材の相対傾斜の角度θ4を常時一定に保つと考えるが、このことは必須の要件ではない。
【0049】
図6の(a−1)〜(a−3)及び(b−1)〜(b−3)は、サイドカッタIIを自転させながら軸方向に送りをかけつつ半時計方向に公転させる状態を表している。その公転は、送りをかけながらの公転であるので、サイドカッタIIが螺旋の軌道を移動するものになる。
【0050】
また、削り出される前のエルボ10の軸直角断面が素材12に対してサイドカッタIIの軸心と直角な端面(角度θ4傾いたサイドカッタの端面)と平行になる位置{図5(a)のY−Y線に沿った位置}では、エルボの穴11の切り口が真円になり、図5(a)のX−X線やZ−Z線などに沿ったその他の位置では、エルボの穴11の軸直角断面での切り口が楕円になる。しかも、その楕円の切り口は、穴11の軸直角切断点の各部において大きさや形状が異なるものになる。サイドカッタIIは、仕上げ目標の穴面、つまり、軸方向各部の切り口の穴断面に沿うように公転での移動を行なわせる。
【0051】
例示の加工方法の場合、Z−Z線を越えた位置(穴の他端側)での仕上げは、穴の曲げの外側でのみカッタを軸方向各部の切り口の穴断面に沿うように動かしてアーバ6が素材と干渉しないようにしている。下穴の一端側からの仕上げ加工は穴の半分を加工できればよいので、曲げの内側ではカッタを切り口の穴断面に無理に沿わせる必要はない。
【0052】
なお、このときの削り代が大きければ、加工を数回に分けて行って1回当たりの加工負担を軽くする。削り残し部を数回に分けて少しずつ削り取って最終加工で目標内径に仕上げる方法を採れば、切削負荷が過大にならず、加工の安定性と加工精度が高まる。
【0053】
この移動制御を伴ったサイドカッタでの加工により、下穴11−3に残されたアンダーカット部の大部分が除去されて下穴の一端側の内径が仕上がる。
【0054】
下穴の一端側からの加工では、穴形状による加工規制が生じて図5(b)のように下穴の全域を仕上げることができないので、この後に、下穴11−3の他端側からも加工を行って穴を仕上げる。サイドカッタIIを図7(a)に示すように下穴11−3の他端側に配置し、上記と同様の作業を行って(上記同一条件の移動制御を行なうことは必ずしも必要ではない)アンダーカット部13の残存部を削り取る。
【0055】
以上で、エルボの穴11が、軸直角断面において軸方向の各部で真円をなし、かつ、穴面が軸心と平行に緩やかに屈曲した形状に仕上がる。
【0056】
例示の製造方法では、この後にエルボの外径を図11のミーリングカッタIを使用して粗加工し、その後、さらに、図13のボールエンドミルIIIを使用して外径を仕上げ加工する。以上で所望の削り出しエルボが完成する。
【0057】
なお、エルボの外径加工は、穴あけ後に行なうと穴加工時の素材の保持安定性を高めやすく、外径面の傷つき防止も図れて好ましいが、穴をあける前に行なうこともできる。
【0058】
また、ミーリングカッタIやサイドカッタIIの素材12に対する相対的な傾きは、カッタを装着した加工機の主軸を傾ける方法で行うこともできる。
【0059】
さらに、加工機の制御が少し複雑になるが、サイドカッタIIを下穴11−3に切り込ませて自転させながら公転させ、その移動が完成品のエルボに設ける穴の軸心とほぼ直角な面内で起こるようにサイドカッタIIと素材12をエルボの穴11が屈曲した位置で穴の曲がり状態に応じて相対的に傾けながら下穴11−3の一端側の内径を穴の一端側から他端側に向って途中まで加工し、サイドカッタIIと素材12の相対的な傾き角が許容上限に達した位置から相対的な傾きの角度を固定して下穴11−3の一端側の内径の仕上げ工程を実行しても発明の目的が達成される。
【0060】
このほか、この発明の方法は、削り出し加工であるので、エルボの穴11の中心O1をエルボの外径中心O2に対して偏心させて曲げの外側で管の肉厚と強度を大きくした図8(a),(b)に示すようなエルボ10や、少なくとも一端側に直線部14を有する図9に示すようなエルボ、或は、両端に接続用のフランジ15を一体に加工した図10に示すようなエルボを製造することも可能である。
【実施例】
【0061】
内径φ190mm、中心の曲げ半径φ200mm、肉厚10mmの90°エルボをこの発明の方法で試作した。エルボの素材は、加工方法を実証する試験であるので、木材を使用した。
【0062】
また、回転切削工具は、図11のミーリングカッタIとして、外径φ50mm、円弧切れ刃のR半径8mm、刃数4の丸駒チップ装着刃先交換式正面フライスを、図12のサイドカッタIIとして、外径φ127mm、円弧切れ刃のR半径6mm、刃数5の丸駒チップ装着刃先交換式側フライスを、図13のボールエンドミルIIIとして、外径φ30mmのボールエンドミルをそれぞれ使用した。
【0063】
加工機は、出願人が保有しているCNC横中グリ盤を使用した。そのCNC横中グリ盤
は、分割割り出し精度が1/10000度と言う世界最高水準の回転テーブルを備えており、その回転テーブルに素材をセットし、素材とカッタの相対的な傾きをその回転テーブルで制御する方法で行った。
【0064】
加工は、図3〜図7で説明した手順に従って行なった。サイドカッタによる下穴の仕上げ加工は、削り残されている切削領域を2mm刻みで加工していき、最終的に削り残し0で仕上げる方法を採った。その結果、穴の内部に削り残し部が全く、穴は真円で穴面がエルボの軸心と平行になっており、しかも、管の各部の肉厚{図1(b)の断面の各部の肉厚t}が均一な削り出しエルボを得ることができた。
【0065】
上述したような高精度の割り出し精度を有する回転テーブルを備えた加工機を使用することで、サイドカッタの公転が途中までは完成品のエルボに設ける穴の軸心とほぼ直角な面内で起こるようにサイドカッタと素材をエルボの穴の曲がり状態に応じて相対的に傾けながら下穴の内径を仕上げ加工し、サイドカッタと素材の相対的な傾き角が許容上限に達した位置から相対的な傾きの角度を固定して楕円の軌道上を公転させる方法での高精度加工も問題なく行える。
【符号の説明】
【0066】
I ミーリングカッタ
II サイドカッタ
III ボールエンドミル
1,4 カッタボディ
2,5 切れ刃
3,6 アーバ
10 エルボ
11 穴
11−1 止まり穴
11−2 通し穴
11−3 下穴
12 素材
13 アンダーカット部
14 直線部
15 フランジ
A,B 素材の直交した面
t 管厚
【特許請求の範囲】
【請求項1】
削り出しエルボ(10)に設ける穴(11)を、
素材(12)を回転切削工具で2方向から粗加工してその素材(12)に少なくとも完成品のエルボの曲げの内側となる側の穴面にアンダーカット部(13)が残された下穴(11−3)をあける工程、
円弧状の切れ刃(5)を外周に備える仕上げ穴径よりも外径の小さなサイドカッタ(II)を、切り出すエルボの曲げの内側で当該カッタの端面が前記下穴(11−3)の開口から離反する方向に素材(12)に対して相対的に一定角度(θ4)傾けた姿勢で自転させながら公転させて前記下穴(11−3)の穴面に切り込ませ、このときの公転を、カッタが仕上げ目標の穴面に沿って移動するように行って前記下穴(11−3)の一端側の内径を仕上げる工程、
前記サイドカッタ(II)を前記下穴(11−3)にその下穴の他端側から挿入し、自転させながら仕上げ目標の穴面に沿うように公転させて前記下穴(11−3)の他端側の内径を仕上げる工程を経て形成する削り出しエルボの製造方法。
【請求項2】
前記サイドカッタ(II)を前記下穴(11−3)に切り込ませて自転させながら公転させ、その移動が完成品のエルボに設ける穴の軸心とほぼ直角な面内で起こるように当該サイドカッタ(II)と前記素材(12)を前記エルボの穴が屈曲した位置で穴の曲がり状態に応じて相対的に傾けながら前記エルボの穴の一端側の内径を穴の開口側から途中まで加工し、
前記サイドカッタ(II)と素材(12)の相対的な傾き角が許容上限に達した位置から相対的な傾きの角度を固定して前記下穴(11−3)の一端側の内径の仕上げ工程を実行する請求項1に記載の削り出しエルボの製造方法。
【請求項3】
前記下穴(11−3)の加工を、
先端外周に円弧状の切れ刃(2)を備える外径が下穴の内径よりも小さなミーリングカッタ(I)を使用して、
前記素材(12)の隣り合う2面(A,B)に前記ミーリングカッタ(I)をそれぞれ切り込み位置と切り込み深さを変えながら切り込ませてエルボの曲げの内側にエルボの曲り角と同一又はそれに近似した角度で交差したアンダーカット部(13)が存在し、エルボの曲げの外側はエルボの穴(11)の穴面にほぼ沿った形状の通し穴(11−2)をあける工程、
前記ミーリングカッタ(I)を、そのカッタの先端がエルボの曲げの内側に寄る方向に傾斜させて前記アンダーカット部(13)を削り、この動作を前記ミーリングカッタ(I)の傾斜角を変えながら数回繰り返して前記アンダーカット部(13)の残存量を減少させる工程、
を経て行う請求項1又は2に記載の削り出しエルボの製造方法。
【請求項4】
前記素材(12)を、回転割り出し機能を有する回転テーブルに、削り出されるエルボの穴の中心が前記回転テーブルのテーブル面と平行な面上に置かれる状態にセットし、前記回転テーブルを回転させて前記素材(12)を前記ミーリングカッタ(I)及び前記サイドカッタ(II)に対して必要な方向に傾ける請求項1〜3のいずれかに記載の削り出しエルボの製造方法。
【請求項5】
前記素材(12)が金属の難削材である請求項1〜4のいずれかに記載の削り出しエルボの製造方法。
【請求項6】
前記エルボの穴(11)を、エルボの外径に対してエルボの曲げの外側でエルボの肉厚が大きくなる方向に偏心させる請求項1〜5のいずれかに記載の削り出しエルボの製造方法。
【請求項1】
削り出しエルボ(10)に設ける穴(11)を、
素材(12)を回転切削工具で2方向から粗加工してその素材(12)に少なくとも完成品のエルボの曲げの内側となる側の穴面にアンダーカット部(13)が残された下穴(11−3)をあける工程、
円弧状の切れ刃(5)を外周に備える仕上げ穴径よりも外径の小さなサイドカッタ(II)を、切り出すエルボの曲げの内側で当該カッタの端面が前記下穴(11−3)の開口から離反する方向に素材(12)に対して相対的に一定角度(θ4)傾けた姿勢で自転させながら公転させて前記下穴(11−3)の穴面に切り込ませ、このときの公転を、カッタが仕上げ目標の穴面に沿って移動するように行って前記下穴(11−3)の一端側の内径を仕上げる工程、
前記サイドカッタ(II)を前記下穴(11−3)にその下穴の他端側から挿入し、自転させながら仕上げ目標の穴面に沿うように公転させて前記下穴(11−3)の他端側の内径を仕上げる工程を経て形成する削り出しエルボの製造方法。
【請求項2】
前記サイドカッタ(II)を前記下穴(11−3)に切り込ませて自転させながら公転させ、その移動が完成品のエルボに設ける穴の軸心とほぼ直角な面内で起こるように当該サイドカッタ(II)と前記素材(12)を前記エルボの穴が屈曲した位置で穴の曲がり状態に応じて相対的に傾けながら前記エルボの穴の一端側の内径を穴の開口側から途中まで加工し、
前記サイドカッタ(II)と素材(12)の相対的な傾き角が許容上限に達した位置から相対的な傾きの角度を固定して前記下穴(11−3)の一端側の内径の仕上げ工程を実行する請求項1に記載の削り出しエルボの製造方法。
【請求項3】
前記下穴(11−3)の加工を、
先端外周に円弧状の切れ刃(2)を備える外径が下穴の内径よりも小さなミーリングカッタ(I)を使用して、
前記素材(12)の隣り合う2面(A,B)に前記ミーリングカッタ(I)をそれぞれ切り込み位置と切り込み深さを変えながら切り込ませてエルボの曲げの内側にエルボの曲り角と同一又はそれに近似した角度で交差したアンダーカット部(13)が存在し、エルボの曲げの外側はエルボの穴(11)の穴面にほぼ沿った形状の通し穴(11−2)をあける工程、
前記ミーリングカッタ(I)を、そのカッタの先端がエルボの曲げの内側に寄る方向に傾斜させて前記アンダーカット部(13)を削り、この動作を前記ミーリングカッタ(I)の傾斜角を変えながら数回繰り返して前記アンダーカット部(13)の残存量を減少させる工程、
を経て行う請求項1又は2に記載の削り出しエルボの製造方法。
【請求項4】
前記素材(12)を、回転割り出し機能を有する回転テーブルに、削り出されるエルボの穴の中心が前記回転テーブルのテーブル面と平行な面上に置かれる状態にセットし、前記回転テーブルを回転させて前記素材(12)を前記ミーリングカッタ(I)及び前記サイドカッタ(II)に対して必要な方向に傾ける請求項1〜3のいずれかに記載の削り出しエルボの製造方法。
【請求項5】
前記素材(12)が金属の難削材である請求項1〜4のいずれかに記載の削り出しエルボの製造方法。
【請求項6】
前記エルボの穴(11)を、エルボの外径に対してエルボの曲げの外側でエルボの肉厚が大きくなる方向に偏心させる請求項1〜5のいずれかに記載の削り出しエルボの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−269416(P2010−269416A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124104(P2009−124104)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【特許番号】特許第4491538号(P4491538)
【特許公報発行日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(309016913)野田金型有限会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【特許番号】特許第4491538号(P4491538)
【特許公報発行日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(309016913)野田金型有限会社 (1)
【Fターム(参考)】
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