説明

削孔の深さ計測器及び深さ計測方法

【課題】 測定が容易であり、しかも測定精度を向上できる削孔の深さ計測器及び深さ計測方法を提供する。
【解決手段】 削孔の深さを計測するために用いられる削孔の深さ計測器であり、削孔に挿入するシャフトと、超音波センサと数値制御機器を内蔵する操作部で構成され、予め入力されたシャフトの長さと超音波センサにより計測された数値に基づき演算された、削孔の基本表面下の深さを数値化して表示部に表示する削孔の深さ計測器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として橋梁などの補修・耐震補強工事における、削孔の深さを監理するための削孔の深さ計測器及び深さ計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁の耐震補強工事などをRC工法により行う場合には、深さ計測器などを用いて削孔の深さを計測し、削孔状態を監理するのが一般的である。
【0003】
以下、従来の深さ計測器と計測方法の一例を、図2に示して説明する。この深さ計測器は、計測する削孔Gに挿入されて最深部に到達した状態で、少なくとも一端が削孔Gの基本表面16より突出するシャフト6であり、シャフトには、長手方向に単位目盛りが刻まれた標尺14が取り付けられている。
【0004】
先端を起点として単位目盛りが刻まれたシャフト6により削孔Gの基本表面下の深さ(基本表面16と削孔最深部の距離)Dを計測する場合には、先ず、計測する削孔にシャフト6の先端が削孔の最深部に到達するまで挿入される。計測者はシャフト6に取り付けられた標尺14の目盛りを、基本表面16の孔口部において読み取り記録する。
【0005】
シャフト6の長さを予め特定することにより、単位目盛りの起点となる先端部が削孔Gの基本表面より突出した状態の場合には、シャフト6の先端から削孔の基本表面までの距離Hを基本表面の孔口部において読み取り、次に、シャフト6の長さLから前記距離Hを減算して、削孔Gの基本表面下の深さDを求めることができる。
【特許文献1】特開2001‐116550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の深さ計測器では、削孔の施行状態、周囲の環境等により標尺の目盛りを読み取るのが容易でない場合、特に読み取り誤差を生じ易いという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、削孔状況に関わることなく測定が容易であり、しかも測定精度を向上できる削孔の深さ計測器及び深さ計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、削孔の深さを計測するために用いられる削孔の深さ計測器であって、例えば、図1に示すように、少なくとも削孔に挿入されたシャフトの先端が削孔の最深部に到達した状態で、シャフトの他端が削孔の基本表面より突出するシャフトと、このシャフトの一端を接続する基準面8を有するとともに、超音波センサ12と数値制御機器を内蔵する操作部4で構成され、予め入力されたシャフトの長さと超音波センサにより計測された数値に基づき演算された、削孔の基本表面下の深さを数値化して、操作部4に内蔵するメモリーなどの記録媒体に記録するとともに表示部に表示することを特徴とする削孔の深さ計測器である。
【0009】
この請求項1記載の発明によれば、削孔に挿入されるシャフトの一端が少なくとも削孔の基本表面より突出するため、操作部4の基準面と基準面に相対する削孔の基本表面との距離Hを操作部4の基準面に設置された超音波センサにより測定することができ、この測定結果とシャフトの長さとの関係により、削孔の基本表面下の深さを導き出すことができる。また、シャフトが削孔に挿入されることにより操作部が安定し、基準面の上下動は少ない。従って、操作部に設けられた基準面と、この基準面に相対する削孔の基本表面との距離を容易に測定でき、測定精度を向上することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の削孔の深さ計測器において、シャフトは、長手方向に単位目盛りが刻まれた標尺が取り付けられてなることを特徴とする構成とした。
【0011】
この請求項2記載の発明によれば、シャフトの長手方向に単位目盛りが刻まれた標尺が取り付けられることで、削孔の深さを近似値で認知することが容易となり、これにより超音波センサを含む数値制御機器の誤作動など不慮の事態も早期に知ることができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の削孔の深さ計測器を用いた、削孔の深さ計測方法であって、例えば、図1に示すように、操作部4に設置された超音波センサにより計測された基準面と、この基準面に相対する削孔の基本表面との距離をH、シャフトの長さをLとして、削孔の基本表面下の深さDを次式(1)
D=L−H・・・(1)
により演算する工程を有する削孔の深さ計測方法である。
【0013】
この請求項3記載の発明によれば、測定工程において、操作部4に設置された超音波センサにより操作部4の基準面と、この基準面に相対する削孔の基本表面との距離Hが測定され、演算工程において、基準面と削孔の基本表面との距離H、シャフトの長さLをそれぞれ上記式(1)に代入することにより、削孔の基本表面下の深さDが演算される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の削孔の深さ計測器及び深さ計測方法により、削孔状況に関わることなく測定が容易で、しかも測定精度を向上できる削孔の深さ計測器及び深さ計測方法を提供することができ、操作部4に内蔵するメモリーなどの記録媒体に記録された測定結果はパソコンに呼び込んでデータ監理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について、図1の図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る削孔の深さ計測器の一実施形態を示す説明図である。
【0016】
この実施の形態の削孔の深さ計測器2は、図1に示すように、計測する削孔Gに挿入されるシャフト6と、このシャフトの一端を接続する基準面8を有し超音波センサ12と数値制御機器を内蔵する操作部4で構成される。
【0017】
[シャフト]
シャフト6は、例えば、アルミ管等の軽金属或いはプラスチックにより形成される。これらの素材は軽量化を図ることにより持ち運びを容易にするものであり、操作部4を支持するのに十分な強度と腐食や損傷に耐え得るものであれば特に限定されるものではなく、形状においても円筒形であることを特に特定するものではない。
【0018】
シャフト6の長さは、少なくとも削孔に挿入されたシャフトの先端が削孔の最深部に到達した状態で、シャフトの他端が削孔の基本表面より突出することを要件としており、測定される削孔の深さより長尺のシャフトが必要となる。削孔の深さは個別に特定されることを考慮して長さの異なる数種類のシャフトを携え、測定される削孔の深さに即応してシャフトの長さを選定することが肝要である。この場合、シャフトを継ぎ足すことに拠っても測定される削孔に適した長さのシャフトを得ることができる。
【0019】
この長さの特定されたシャフト6が操作部4の基準面に正しく装着されてシャフトの長さLが固定される。
【0020】
[操作部]
操作部4には、削孔の深さ測定に際して基本表面に相対する位置に基準面が設けられ、この基準面にシャフト6を装着するシャフト接続部と超音波センサ12が配置される。
【0021】
予め入力されたシャフトの長さと超音波センサにより計測された数値に基づき演算された、削孔の基本表面下の深さを数値化してメモリーなどの記録媒体に蓄積する数値制御機器は操作部4に内蔵され、削孔の基本表面下の深さは数値化して操作部4の見易い位置に設けられた表示部に表示される。
【0022】
次に、本発明の削孔の深さ計測器2を用いた削孔Gの深さ計測方法について説明する。
【0023】
図1に示すように、本発明の削孔の深さ計測器2の操作部4に設けられた基準面には、想定される削孔の深さより長めのシャフトが装着されており、削孔に挿入されたシャフトの先端が削孔の最深部に到達した状態で、操作部4に装着されたシャフトの一端がが削孔の基本表面より突出している。
【0024】
数値制御機器による計測は、シャフトの全長Lを入力すると共に超音波センサ12を起動させることで開始され、計測と演算の結果を操作部4に内蔵するメモリーなどの記録媒体に記録するとともに、予め入力されたシャフトの長さと超音波センサにより計測された数値に基づき演算された削孔の基本表面下の深さが、数値化されて表示部に表示されることで完了する。
【0025】
削孔の基本表面下の深さDは、シャフトの長さをLから超音波センサ12により計測された操作部4の基準面と、この基準面に相対する削孔の基本表面との距離Hを差し引く演算工程で明らかにされ数値化されて表示部に表示される。
【0026】
以上のように、この実施の形態の削孔の深さ計測器2によれば、削孔の基本表面下の深さDが数値化されて表示部に表示されるので、測定工程に時間と人員を費やすことなく、削孔の施行位置、施行方向に関わらず削孔の深さを計測し、削孔状態を監理することが容易なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る削孔の深さ計測器の一実施形態を示す説明図である。
【図2】従来の削孔の深さ計測器の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0028】
2 削孔の深さ計測器
4 操作部
6 シャフト
8 基準面
10 標尺
12 超音波センサ
16 基本表面
G 削孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔の深さを計測するために用いられる削孔の深さ計測器であって、少なくとも削孔に挿入されたシャフトの先端が削孔の最深部に到達した状態で、シャフトの他端が削孔の基本表面より突出するシャフトと、このシャフトの一端を接続する基準面を有するとともに、超音波センサと数値制御機器を内蔵する操作部で構成され、入力されたシャフトの長さと超音波センサにより計測された数値に基づき演算された、削孔の基本表面下の深さを数値化して表示部に表示することを特徴とする削孔の深さ計測器。
【請求項2】
前記シャフトは、長手方向に単位目盛りが刻まれた標尺が取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の削孔の深さ計測器。
【請求項3】
請求項1に記載の削孔の深さ計測器を用いた、削孔の深さ計測方法であって、超音波センサの内蔵された操作部に設けられた基準面と、この基準面に相対する削孔の基本表面との距離をH、シャフトの長さをLとして、削孔の基本表面下の深さDを次式(1)
D=L−H・・・(1)
により演算する工程を有する削孔の深さ計測方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−122087(P2008−122087A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302840(P2006−302840)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(397010446)有限会社中島工業 (28)
【出願人】(306040344)株式会社栗山組 (2)
【出願人】(306040687)奥田スチール株式会社 (1)
【出願人】(502350434)