説明

前後進判定装置

【課題】踏板装置が劣化したときに、簡易に車線の閉鎖を要さずに故障した接点のみを無効化し、残りの正常な接点を用いて前後進判定装置を運用する。
【解決手段】前後進判定部26は、入力ポート記憶部23が記憶する識別情報が示す入力ポート21−1〜21−4に入力された検知信号に基づいて前後進の判定を行う。また、入力ポート記憶部23が記憶する情報は、書き換え部28によって書き換えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車線の幅方向に長手方向を一致させて路面に埋設され、車両による踏下を検知する複数の踏下検知接点を前記車線の進行方向に複数備える踏板装置からの入力に基づいて車両の前後進を判定する前後進判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有料道路等で広く利用されている踏板装置は、車線の幅方向に長手方向を一致させて路面に埋設され、車両による踏下を検知する複数の踏下検知接点が前記車線の進行方向に複数設けられている。そして、車両の通過により複数の踏下検知接点が順に踏下され、当該踏下の順を特定することで、車両の前後進を判定することができる。
【0003】
なお、このような踏板装置は、車両よって踏下されるものであるため、使用を継続することで劣化していく。特に、踏下検知接点を構成する電極同士を離間させるゴムが劣化した場合、車両によって踏下されていないときに踏下を検知してしまうことや、踏下を検知する速度が遅くなってしまうことがある。踏下検知接点の劣化によって踏下の検知タイミングにずれが生じると、車両の前後進の判定の精度が下がってしまう。
【0004】
このような状況を鑑みて、特許文献1には、踏下検知接点が損傷を受けにくく長期に亘って所要機能を安定に発揮できる踏板装置が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の踏板装置を用いたとしても、踏板装置の劣化は生じるため、劣化時には踏板装置の交換を行う必要がある。
【0005】
従来、踏板装置が劣化した場合、車線を閉鎖した上で踏板装置を交換している。しかしながら、故障した踏板装置の代替に用いる踏板装置は、必ずしも現場に用意されているとは限らない。そのため、代替に用いる踏板装置がない場合、故障した接点のみを無効化し、残りの正常な接点を用いて運用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−161194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、故障した接点のみを無効化し、残りの正常な接点を用いて運用するには、車両分離器の端子台に接続された踏板の結線を変更する必要があり、当該作業を実施する際にも、車線を閉鎖する必要がある。そのため、車線の閉鎖を要さずに故障した接点のみを無効化し、残りの正常な接点を用いて運用する簡易な方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、車線の幅方向に長手方向を一致させて路面に埋設され、車両による踏下を検知する踏下検知接点を前記車線の進行方向に複数備える踏板装置からの入力に基づいて車両の前後進を判定する前後進判定装置であって、前記踏板装置に設けられた複数の踏下検知接点からの検知信号の入力を受け付ける複数の入力ポートと、前記踏板装置に設けられた複数の入力ポートのうち前後進の判定に用いる入力ポートの識別情報を記憶する入力ポート記憶部と、管理者から、前後進の判定に用いる入力ポートの識別情報を示す情報の入力を受け付ける管理者入力部と、前記入力ポート記憶部が記憶する情報を、前記管理者入力部が入力した情報に書き換える書き換え部と、前記入力ポート記憶部が記憶する識別情報から2つの識別情報の組み合わせを複数選択する選択部と、前記選択部が選択した組み合わせを構成する2つの識別情報が示すそれぞれの入力ポートに接続された踏下検知接点による踏下検知の前後関係を特定する前後関係特定部と、前記選択部が選択した複数の組み合わせに対する前記前後関係特定部による判定結果に基づいて前記車両の前後進を判定する前後進判定部とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明においては、前記入力ポート記憶部は、前記車両が前進したときに踏下を示す検知信号が入力される順番である踏下順に関連付けて前記踏下検知接点の識別情報を記憶し、前記選択部は、前記入力ポート記憶部が異なる踏下順に関連付けて記憶された2つの識別情報の組み合わせを選択し、前記前後進判定部は、前記前後関係特定部による判定結果のうち、前記選択部によって選択された識別情報に関連付けられた踏下順の前後関係と前記前後関係特定部が特定した前後関係とが一致する判定結果が、前記選択部によって選択された識別情報に関連付けられた踏下順の前後関係と前記前後関係特定部が特定した前後関係とが一致しない判定結果より多い場合に、前記車両が前進していると判定することが好ましい。
【0010】
また、本発明においては、前記管理者入力部は、前記踏下順と前記入力ポートの識別情報とを関連付けた情報の入力を受け付け、前記書き換え部は、前記管理者入力部が受け付けた情報に含まれる全ての踏下順において、当該踏下順に関連付けられた識別情報が示す入力ポートに接続された踏下検知接点が、当該踏下順より小さい踏下順に関連付けられた識別情報が示す入力ポートに接続された踏下検知接点より進行方向後方に設けられたものでない場合であり、かつ前記踏下順に関連付けられた識別情報全てが同一の入力ポートを示すものでない場合に、前記入力ポート記憶部が記憶する情報を前記管理者入力部が受け付けた情報に書き換えることが好ましい。
【0011】
また、本発明においては、前記入力ポート記憶部が記憶する情報は、前記前後進判定装置の電源が遮断されたときに削除されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前後進判定装置の前後進判定部は、入力ポート記憶部が記憶する識別情報が示す入力ポートに入力された検知信号に基づいて前後進の判定を行う。また、入力ポート記憶部が記憶する情報は、前後進判定装置の書き換え部によって書き換えることができるため、管理者は、簡易に車線の閉鎖を要さずに故障した接点のみを無効化し、残りの正常な接点を用いて前後進判定装置を運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による前後進判定システムの構成を示す概略ブロック図である。
【図2】入力ポート記憶部が記憶する情報の例を示す図である。
【図3】前後進の判定に用いる踏下検知接点を変更する動作を示すフローチャートである。
【図4】前後進判定装置による前後進判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態による前後進判定システムの構成を示す概略ブロック図である。
前後進判定システムは、踏板装置10の上を通過した車両が前進したのか後進したのかを判定するシステムであり、踏板装置10と前後進判定装置20とを備える。
【0015】
踏板装置10は、車線の幅方向に長手方向を一致させて路面に埋設され、車両による踏下を検知する複数の踏下検知接点11−1〜11−4(以下、踏下検知接点11−1〜11−4を総称する場合、踏下検知接点11と呼ぶ)が車線の進行方向に複数設けられている。
踏下検知接点11は、絶縁性ゴムなどの絶縁性弾性部材により一体成形された角筒状ケースの中空部内に上下に所定間隙を隔てて第1の接点と第2の接点とを対向して設けたものであり、第1の接点と第2の接点とが接触することで、車両による踏下を検知する。なお、踏下検知接点11は、進行方向後方から、11−1、11−2、11−3、11−4の順に設けられている。
【0016】
前後進判定装置20は、車両分離器に搭載され、入力ポート21−1〜21−4(以下、入力ポート21−1〜21−4を総称する場合、入力ポート21と呼ぶ)、検知情報入力部22、入力ポート記憶部23、選択部24、前後関係特定部25、前後進判定部26、管理者入力部27、書き換え部28を備える。
入力ポート21は、踏下検知接点11の個数だけ設けられ、ケーブル等によって接続された踏下検知接点11からの検知信号の入力を受け付ける。なお、踏下検知接点11は、進行方向後方に設置されたものほど識別子の値(符号における「−」の右の数値)が小さい入力ポート21に接続される。つまり、入力ポート21−1は踏下検知接点11−1に接続され、入力ポート21−2は踏下検知接点11−2に接続され、入力ポート21−3は踏下検知接点11−3に接続され、入力ポート21−4は踏下検知接点11−4に接続される。
検知情報入力部22は、入力ポート21を介して踏下検知接点11それぞれから検知信号を入力する。
【0017】
図2は、入力ポート記憶部23が記憶する情報の例を示す図である。
入力ポート記憶部23は、図2に示すように、複数の入力ポート21のうち前後進の判定に用いる踏下検知接点11に接続された入力ポート21の識別情報(入力ポート21の符号)を、車両が前進したときに踏下検知接点11が踏下される順番である踏下順に関連付けて記憶する。なお、入力ポート記憶部23が記憶する踏下順と識別情報との組み合わせの数は、入力ポート21の個数と等しい。また、入力ポート記憶部23は、踏下順を主キーとして「1」から連番に記憶する。
【0018】
選択部24は、入力ポート記憶部23が隣接する2つの踏下順に関連付けて記憶する識別情報の組み合わせを複数選択する。つまり、選択部24は、踏下順「1」に関連付けられた識別情報と踏下順「2」に関連付けられた識別情報の組み合わせ、踏下順「2」に関連付けられた識別情報と踏下順「3」に関連付けられた識別情報の組み合わせ、踏下順「3」に関連付けられた識別情報と踏下順「4」に関連付けられた識別情報の組み合わせを選択する。
【0019】
前後関係特定部25は、検知情報入力部22が入力した検知信号のうち選択部24によって選択された識別情報が示す入力ポート21に入力された検知信号を比較し、車両の踏下の前後関係を特定する。
前後進判定部26は、選択部24が選択した識別情報に関連付けて入力ポート記憶部23に記憶されている踏下順の前後関係と、前後関係特定部25が特定した前後関係とを比較することで、車両が前進したか後進したかを判定する。
管理者入力部27は、管理者から入力ポート記憶部23に記録する情報の入力を受け付ける。入力ポート記憶部23に記録する情報とは、すなわち踏下順毎に入力ポート21の識別情報を関連付けた情報である。
【0020】
書き換え部28は、前後進判定装置20が起動したとき、図2(A)に示す情報を入力ポート記憶部23に記録する。なお、起動時における踏下順と識別情報との関連付けは、初期値として図2(A)に示す組み合わせが予め定められている。
また、書き換え部28は、入力ポート記憶部23が記憶する情報を管理者入力部27が入力した情報に書き換える。なお、図2(B)に示すように、書き換え部28は、入力ポート記憶部23に同じ識別情報(図2では「21−2」)を重複して記憶することを許容する。これにより、踏板装置10の劣化によってある踏下検知接点11(例えば踏下検知接点11−1)が故障した場合にも、当該劣化した踏下検知接点11−1に接続される入力ポート21−1の代替として、残りの他の踏下検知接点11に接続される入力ポート21を用いて処理を継続させることができる。
【0021】
他方、書き換え部28は、図2(C)に示すように、ある踏下順に関連付けられた識別情報が示す入力ポート21に接続される踏下検知接点11が、当該踏下順より小さい踏下順に関連付けられた識別情報が示す入力ポート21に接続される踏下検知接点11より進行方向後方に設けられているような情報に書き換えることを許容しない。図2(C)の例を用いると、踏下順「2」に関連付けられた識別情報が示す入力ポート21−2に接続される踏下検知接点11−2は、当該踏下順より小さい踏下順「1」に関連付けられた識別情報が示す入力ポート21−4に接続される踏下検知接点11−4より進行方向後方に設けられている。そのため、図2(C)に示す情報への書き換えは許容されない。これは、踏下順と実際の設置の並びとの間に矛盾が生じて前後進判定部26による判定の誤りが生じることを防ぐためである。
また、書き換え部28は、図2(D)に示すように、全ての踏下順に関連付けられた識別情報を同一の識別情報に書き換えることを許容しない。これは、全ての踏下順の組み合わせにおいて前後関係特定部25が前後関係を特定できなくなってしまうことを防ぐためである。
【0022】
次に、本実施形態による前後進判定装置20の動作について説明する。
図3は、前後進の判定に用いる踏下検知接点11を変更する動作を示すフローチャートである。
前後進判定装置20が起動すると、書き換え部28は、予め定められた初期値の情報(図2(A))を、入力ポート記憶部23に記録する(ステップS1)。次に、書き換え部28は、管理者入力部27が管理者から前後進の判定に用いる入力ポート21の識別情報とその踏下順とを示す情報の入力を受け付けたか否かを判定する(ステップS2)。
【0023】
管理者入力部27が管理者から前後進の判定に用いる入力ポート21の識別情報とその踏下順とを示す情報の入力を受け付けた場合(ステップS2:YES)、書き換え部28は、管理者入力部27が受け付けた情報において隣接する2つの踏下順に関連付けられた識別情報を読み出す。なお、本実施形態において隣接する2つの踏下順は、踏下順「1」と踏下順「2」、踏下順「2」と踏下順「3」、踏下順「3」と踏下順「4」の3通りの組み合わせがある。書き換え部28は、当該3通りの組み合わせのそれぞれに対して、以下に示すステップS4の処理を実行する(ステップS3)。
【0024】
書き換え部28は、隣接する2つの踏下順に関連付けられた識別情報を読み出すと、値が大きい方の踏下順に関連付けられた識別情報の識別子(識別情報の「−」の右側の数値)が、値が小さい方の踏下順に関連付けられた識別情報の識別子より小さいか否かを判定する(ステップS4)。本実施形態において踏下検知接点11は、進行方向後方に設置されたものほど識別子の値が小さい入力ポート21に接続されている。そのため、値が大きい方の踏下順に関連付けられた識別情報の識別子が、値が小さい方の踏下順に関連付けられた識別情報の識別子より小さいということは、値が大きい方の踏下順に関連付けられた識別情報が示す入力ポート21に接続された踏下検知接点11が、値が小さい方の踏下順より小さい踏下順に関連付けられた識別情報が示す入力ポート21に接続された踏下検知接点11より進行方向後方に設けられたものであるということを示す。
【0025】
書き換え部28は、ステップS4の処理をステップS3で読み出した3通りの組み合わせのそれぞれに対して実行すると、ステップS4において、値が大きい方の踏下順に関連付けられた識別情報の識別子が、値が小さい方の踏下順に関連付けられた識別情報の識別子より小さいと判定されたものがあったか否かを判定する(ステップS5)。値が大きい方の踏下順に関連付けられた識別情報の識別子が、値が小さい方の踏下順に関連付けられた識別情報の識別子より小さいと判定されたものが1つ以上あった場合(ステップS5:YES)、書き換え部28は、管理者による入力エラーであると判定し、管理者入力部27が受け付けた情報を入力ポート記憶部23に記録しない。これにより、踏下順と実際の踏下検知接点11の並びとの間に矛盾が生じて前後進判定部26による判定の誤りが生じることを防ぐことができる。
【0026】
他方、全ての組み合わせにおいて、値が大きい方の踏下順に関連付けられた識別情報の識別子が、値が小さい方の踏下順に関連付けられた識別情報の識別子より大きい、または同じであると判定された場合(ステップS5:NO)、書き換え部28は、管理者入力部27が受け付けた情報において各踏下順に関連付けられた識別情報が全て同じ値を示すか否かを判定する(ステップS6)。管理者入力部27が受け付けた情報において識別情報が全て同じ値である場合(ステップS6:YES)、書き換え部28は、管理者による入力エラーであると判定し、管理者入力部27が受け付けた情報を入力ポート記憶部23に記録しない。これにより、全ての踏下順の組み合わせにおいて前後関係特定部25が前後関係を特定できなくなってしまうことを防ぐことができる。
他方、管理者入力部27が受け付けた情報において異なる識別情報が1つでも存在する場合(ステップS6:NO)、書き換え部28は、入力ポート記憶部23が記憶する情報を、管理者入力部27が受け付けた情報に書き換える(ステップS7)。
【0027】
ステップS2で管理者入力部27が管理者から前後進の判定に用いる入力ポート21の識別情報を示す情報の入力を受け付けていない場合(ステップS2:NO)、ステップS5またはステップS6で入力ポート記憶部23が記憶する情報の書き換えを行わなかった場合(ステップS5:YES、ステップS6:YES)、またはステップS7で入力ポート記憶部23が記憶する情報の書き換えを行った場合、前後進判定装置20は、管理者による操作や割り込み処理などにより、外部から処理の終了要求を入力したか否かを判定する(ステップS8)。前後進判定装置20は、外部から終了要求を入力していないと判定した場合(ステップS8:NO)、ステップS2に戻り、管理者による情報の入力があるか否かを判定する。他方、前後進判定装置20は、外部から終了要求を入力したと判定した場合(ステップS8:YES)、前後進判定装置20は、電源を遮断し、処理を終了する。
【0028】
上述した処理により、前後進判定装置20は、管理者による入力の誤りを排除して、入力ポート記憶部23に情報を記録することができる。
なお、前後進判定装置20は、処理終了時に電源を遮断するが、このとき入力ポート記憶部23が記憶していた情報は消去される。これにより、保守で操作した設定と実際の機器の設定との間に差異が生じ、誤った設定となることを防止することができる。また、前後進判定装置20の基板を他の前後進判定装置20に入れ替えても、前回設定した情報が残ることで誤った設定となることを防止することができる。なお、入力ポート記憶部23が記憶する情報の削除は、電源の遮断時に書き換え部28などが実行することで実現しても良いが、入力ポート記憶部23を揮発性メモリで構成することで実現することもできる。
【0029】
次に、本実施形態による前後進判定装置20による前後進判定処理について説明する。
図4は、前後進判定装置20による前後進判定処理を示すフローチャートである。
検知情報入力部22は、入力ポート21を介して踏下検知接点11から検知信号の入力を受け付ける(ステップS11)。次に、選択部24は、入力ポート記憶部23が隣接する2つの踏下順に関連付けて記憶する識別情報の組み合わせを読み出す。なお、選択部24が読み出す組み合わせは、踏下順「1」に関連付けられた識別情報と踏下順「2」に関連付けられた識別情報の組み合わせ、踏下順「2」に関連付けられた識別情報と踏下順「3」に関連付けられた識別情報の組み合わせ、踏下順「3」に関連付けられた識別情報と踏下順「4」に関連付けられた識別情報の3通りである。前後進判定装置20は、当該3通りの組み合わせのそれぞれに対して、以下に示すステップS13、S14の処理を実行する(ステップS12)。
【0030】
前後関係特定部25は、選択部24が選択した組み合わせを構成する識別情報が示す入力ポート21から入力したそれぞれの検知信号を比較し、何れの入力ポート21から入力した検知信号が早く踏下の検知を示すかを特定する(ステップS13)。次に、前後進判定部26は、選択部24が選択した組み合わせを構成する識別情報に関連付けられた踏下順の前後関係と、前後関係特定部25が特定した前後関係とが一致するか否かを判定する(ステップS14)。例えば、踏下順「1」の入力ポート21から入力した検知信号が踏下順「2」の入力ポート21から入力した検知信号より早く踏下の検知を示した場合、前後進判定部26は、踏下順の前後関係と前後関係特定部25が特定した前後関係とが一致すると判定することとなる。なお、踏下順「1」の入力ポート21から入力した検知信号と踏下順「2」の入力ポート21から入力した検知信号とが同時に踏下の検知を示した場合、前後進判定部26は、当該判定結果を前後関係の一致不一致の判定に用いない。
【0031】
前後進判定部26は、ステップS13、ステップS14の処理を、ステップS12で読み出した3通りの組み合わせのそれぞれに対して実行すると、ステップS14において、選択部24によって選択された識別情報に関連付けられた踏下順の前後関係と前後関係特定部25が特定した前後関係とが一致する判定結果と、選択部24によって選択された識別情報に関連付けられた踏下順の前後関係と前後関係特定部25が特定した前後関係とが一致しない判定結果との何れが多いかを判定する(ステップS15)。
【0032】
前後進判定部26は、ステップS14において、選択部24によって選択された識別情報に関連付けられた踏下順の前後関係と前後関係特定部25が特定した前後関係とが一致する判定結果が、選択部24によって選択された識別情報に関連付けられた踏下順の前後関係と前後関係特定部25が特定した前後関係とが一致しない判定結果より多いと判定した場合(ステップS15:一致>不一致)、車両が前進したと判定する(ステップS16)。
【0033】
他方、前後進判定部26は、ステップS14において、選択部24によって選択された識別情報に関連付けられた踏下順の前後関係と前後関係特定部25が特定した前後関係とが一致する判定結果が、選択部24によって選択された識別情報に関連付けられた踏下順の前後関係と前後関係特定部25が特定した前後関係とが一致しない判定結果より少ないと判定した場合(ステップS15:一致<不一致)、車両が後進したと判定する(ステップS17)。
【0034】
また、前後進判定部26は、ステップS14において、選択部24によって選択された識別情報に関連付けられた踏下順の前後関係と前後関係特定部25が特定した前後関係とが一致する判定結果が、選択部24によって選択された識別情報に関連付けられた踏下順の前後関係と前後関係特定部25が特定した前後関係とが一致しない判定結果と同数であると判定した場合(ステップS15:一致=不一致)、車両が前進も後進もせずに停滞していると判定する(ステップS18)。
【0035】
このように、本実施形態によれば、前後進判定部26は、入力ポート記憶部23が記憶する識別情報が示す入力ポート21に入力された検知信号に基づいて前後進の判定を行う。また、入力ポート記憶部23が記憶する情報は、書き換え部28によって書き換えることができるため、管理者は、簡易に車線の閉鎖を要さずに故障した接点のみを無効化し、残りの正常な接点を用いて前後進判定装置20を運用することができる。
【0036】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、本実施形態では、ステップS12において選択部24が、隣接する2つの踏下順に関連付けられた識別情報の組み合わせを読み出す例を用いて説明したが、これに限られず、選択部24は、隣接する・隣接しないに関わらず、異なる2つの踏下順に関連付けられた識別情報の組み合わせを読み出すようにしても良い。
【0037】
また、本実施形態では、ステップS15で前後関係が一致する判定結果が一致しない判定結果と同数である場合のみ車両が停滞していると判定する場合を説明したが、これに限られない。例えば、前後関係が一致する判定結果が一致しない判定結果との差が所定の閾値(例えば1)以下である場合に、車両が停滞していると判定するようにしても良い。
【0038】
なお、本実施形態では、管理者入力部27が管理者から踏下順と入力ポート21の識別情報とを関連付けた情報の入力を受け付け、書き換え部28が入力された情報に対するチェックを行う場合を説明したが、これに限られない。例えば、管理者入力部27が管理者から前後進の判定に用いない入力ポート21の識別情報の入力を受け付け、書き換え部28が当該入力に基づいて、入力ポート記憶部23が記憶する情報を、上述したステップS5、ステップS6の条件を満たす情報に書き換えるようにしても良い。
【0039】
上述の前後進判定装置20は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0040】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0041】
10…踏板装置 11−1〜11−4、11…踏下検知接点 20…前後進判定装置 21−1〜21−4、21…入力ポート 22…検知情報入力部 23…入力ポート記憶部 24…選択部 25…前後関係特定部 26…前後進判定部 27…管理者入力部 28…書き換え部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車線の幅方向に長手方向を一致させて路面に埋設され、車両による踏下を検知する踏下検知接点を前記車線の進行方向に複数備える踏板装置からの入力に基づいて車両の前後進を判定する前後進判定装置であって、
前記踏板装置に設けられた複数の踏下検知接点からの検知信号の入力を受け付ける複数の入力ポートと、
前記踏板装置に設けられた複数の入力ポートのうち前後進の判定に用いる入力ポートの識別情報を記憶する入力ポート記憶部と、
管理者から、前後進の判定に用いる入力ポートの識別情報を示す情報の入力を受け付ける管理者入力部と、
前記入力ポート記憶部が記憶する情報を、前記管理者入力部が入力した情報に書き換える書き換え部と、
前記入力ポート記憶部が記憶する識別情報から2つの識別情報の組み合わせを複数選択する選択部と、
前記選択部が選択した組み合わせを構成する2つの識別情報が示すそれぞれの入力ポートに接続された踏下検知接点による踏下検知の前後関係を特定する前後関係特定部と、
前記選択部が選択した複数の組み合わせに対する前記前後関係特定部による判定結果に基づいて前記車両の前後進を判定する前後進判定部と
を備えることを特徴とする前後進判定装置。
【請求項2】
前記入力ポート記憶部は、前記車両が前進したときに踏下を示す検知信号が入力される順番である踏下順に関連付けて前記踏下検知接点の識別情報を記憶し、
前記選択部は、前記入力ポート記憶部が異なる踏下順に関連付けて記憶された2つの識別情報の組み合わせを選択し、
前記前後進判定部は、前記前後関係特定部による判定結果のうち、前記選択部によって選択された識別情報に関連付けられた踏下順の前後関係と前記前後関係特定部が特定した前後関係とが一致する判定結果が、前記選択部によって選択された識別情報に関連付けられた踏下順の前後関係と前記前後関係特定部が特定した前後関係とが一致しない判定結果より多い場合に、前記車両が前進していると判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の前後進判定装置。
【請求項3】
前記管理者入力部は、
前記踏下順と前記入力ポートの識別情報とを関連付けた情報の入力を受け付け、
前記書き換え部は、
前記管理者入力部が受け付けた情報に含まれる全ての踏下順において、当該踏下順に関連付けられた識別情報が示す入力ポートに接続された踏下検知接点が、当該踏下順より小さい踏下順に関連付けられた識別情報が示す入力ポートに接続された踏下検知接点より進行方向後方に設けられたものでない場合であり、かつ前記踏下順に関連付けられた識別情報全てが同一の入力ポートを示すものでない場合に、前記入力ポート記憶部が記憶する情報を前記管理者入力部が受け付けた情報に書き換える
ことを特徴とする請求項2に記載の前後進判定装置。
【請求項4】
前記入力ポート記憶部が記憶する情報は、前記前後進判定装置の電源が遮断されたときに削除される
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の前後進判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−203859(P2012−203859A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70770(P2011−70770)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】