説明

前田モデルIII

【課題】毎年大量に発生する使用済PC製鉄道枕木を埋め戻し材料として再利用するための、安全で環境保全に十分留意した工法について提供する。
【解決手段】繊維製蛇篭に使用済PC製鉄道枕木そのものを投入し、その蛇篭を窪地へ沈床させる。繊維製蛇篭に1本約250kgの使用済PC製鉄道枕木を32本詰めて海底に沈床させる。土木工学の見地より繊維製蛇篭の強度上の安全性を確保する。工事、施工は、既往の土木技術に裏付けられた安全な工法を採用する。また、環境に留意し、生態系、水産系の専門家が安全上必要な指標を設ける。前田モデルIIIを推進させる事によって、今日までつながりがなかった陸と海で発生している問題の解決を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
使用済コンクリート製二次製品のストック再利用
【背景技術】
【0002】
持続可能な社会の形成を目指し、廃棄コンクリートの再利用の研究は積極的に行われているが、現在の技術においてはコンクリートに含まれる砂利などの骨材をセメントからきれいに分離することが難しく、年間数億トン生産するコンクリートの骨材として再利用するには至っておらず、主に道路の路盤材に限られて再利用している。
【発明の開示】

【発明が解消しようとする課題】
[継続的に発生する使用済PC製鉄道枕木の再利用現状]PC製鉄道枕木は、安全基準に規定された耐用年以内に取替えており、毎年数万本の単位で使用済廃棄材としてストックされている。木製の枕木からPC製に変更された枕木は、鉄道軌道の全長から勘案して、今後100年にわたって毎年数万本継続的に取替える計画となっている。
JRはじめ鉄道各社は、毎年発生する使用済PC製鉄道枕木を有効に再利用する方策を考え、破砕施設を建設したものの、道路のインフラ整備が一段落している日本においては道路の路盤材の需要も少なく、コンクリートの骨材として再利用する技術研究が継続的になされているが、未だ研究室内の実験レベルで実用化には至っていないため産業廃棄物として買取ってもらい、処分しているのが現状である。
【課題を解決するための手段】
[使用済PC製鉄道枕木のそのまま利用と臨港地帯の窪地]四方を海に囲まれた日本全国で、昭和30年代から臨港地帯において建設した埋立工業用地の浚渫窪地が海底に点在しており、その数ははっきりしていないが、窪地の大きさは、直径約25mの深さ30mで、この窪地には、生活排水や工業排水が淀み、生活排水や工業排水から発生する硫化水素水の貧酸素状態が危険な濃度となっており、時折潮流や風向きに誘発されて窪地の水が海水面に浮遊して「青潮」の被害が各地で発生している。この窪地に今後継続的に廃棄処分される使用済PC製鉄道枕木を埋め戻し材料として再利用することで、陸と海を結びゼロエミッションの実現を可能とする工法である。
[PC製鉄道枕木を繊維製蛇篭に詰めて浚渫窪地に沈床させる]平成6年9月に発生した東京湾の青潮は、近隣漁場の魚介類の死滅による漁業者へ大きな被害を与えた。現在、窪地の水質改良を高密度酸素供給技術により具体化する実験や、産業副産物の二次加工材の投与による効果などが検討されているが、実験研究段階で具体的な方策に至っていない。前田モデルIIIは、河川の根固め工法で実証されている繊維製蛇篭に使用済PC製鉄道枕木そのものを投入し、その蛇篭を窪地へ沈床させるという工法である。繊維製蛇篭は、繊維製品製造企業が普遍的に製作しており、一般的に供給可能な商品であり、現在8tまで耐強度のある繊維製蛇篭が製造されている。海の消波ブロックの単体重量が一般的に0.5tから(最大で80tまで)規格化されていることから勘案すれば、8tの耐強度は代替になりうる工法と言え、繊維製蛇篭に1本約250kgの使用済PC製鉄道枕木を32本詰めて海底に沈床させることで既往のブロックと同様に波に対する抵抗力が十分期待できる。また数百tの橋梁構造物を海上輸送し、橋脚や橋桁を海上で工事をする技術を勘案すれば、工事上の問題もないといえる。但し、使用済PC製鉄道枕木は長年鉄道の軌道を支保し、何らかの物質で汚染されている可能性があるため、汚染物質が海中に流出する環境対策を施す必要がある。安全上必要な数値を生態系、水産系の専門家が担当して指標を設け、高圧洗浄後ケミカルチェックによってその指標に適合する使用済PC製鉄道枕木を選定して使用することとする。
【発明の効果】
[発生現場の近隣場所で工事を行なう]鉄道各社の全国に分散している機関区で今後継続的に集結される使用済PC製鉄道枕木を最短距離で結び、日本全国の臨港地帯の海底に存在しているこの窪地で再利用することは、経済合理性も高く、実現を阻止する重大な問題点が少ない。産業廃棄物として買取ってもらい、処分しているのが現状である。
【特許を実施するための最良の形態】
[窪地の容積の少量にて継続的に沈床させる]窪地の硫化水素水の貧酸素状態が危険な濃度となっており、施工に際しては、一箇所に集中せず、分散的に沈床させ、窪地から流出する沈殿水を海底の塩水と薄め合って生態系に害を及ぼさない配慮をした実施計画を立案する。
【実施例】
なし
【産業上の利用可能性】
[使用済PC製鉄道枕木の安全確認]PC製鉄道枕木を海中に投与する際の環境対策は、安全上必要な数値を生態系、水産系の専門家が担当し、長年鉄道の軌道を支保し、汚染された物質を高圧洗浄他ケミカルチェックによる安全設計基準を設ける。
[繊維製蛇篭の強度]繊維製蛇篭の強度は、土木工学の見地より安全性を確保する。
[海上工事]海上の工事については、現行の海洋工事に従事する技術保持企業が請負うことで実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】[PC製枕木、繊維製蛇篭、海上工事イメージ]
【図2】[港湾内の窪地地図]
【符号の説明】
なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製蛇篭に使用済PC製鉄道枕木そのものを投入し、その蛇篭を窪地へ沈床させる再利用法
【請求項2】
土木工学の見地より強度上の安全性を確保した繊維製蛇篭を利用する工法
【請求項3】
環境に留意し、生態系、水産系の専門家が安全上必要な指標を設け、それに適合した使用済PC製鉄道枕木を利用する工法

【図1】
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【公開番号】特開2010−89065(P2010−89065A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283697(P2008−283697)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(508263523)株式会社エコイーゼル (5)
【Fターム(参考)】