説明

剛体特性同定装置及び剛体特性同定方法

【課題】測定点の数を少なくしつつ、高い精度で剛体特性を同定することができる剛体特性同定装置又は剛体特性同定方法を提供する。
【解決手段】計測対象物の質量及び重心位置を含む剛体特性を同定する剛体特性同定装置は、移動不能な静止部10と、静止部に対して移動可能であって計測対象物Tを含む可動部20と、静止部に対して可動部を自由振動可能に支持する支持手段30と、可動部が振動したときに可動部の固有振動数を算出するのに必要なデータを計測する計測手段40と、支持手段による支持条件及び計測手段によって計測された計測データが入力されると共にこれら支持条件と計測データから算出された固有振動数とに基づいて演算処理を行う解析手段50とを具備する。解析手段は支持手段による支持条件と計測データから算出された固有振動数とに基づいて上記計測対象物の剛体特性を同定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動解析方法及び振動解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン等の複雑な構造物では、その剛体特性(質量、質量中心位置、三つの主慣性モーメント及びこれらに対応する三本の主軸の向き等)はその構造物の運動性能や振動騒音性能及び振動騒音制御の性能を左右する最大因子の一つである。事実、剛体特性の値は、設計支援のための運動解析、振動解析、防振機構設計解析、制御系設計解析等、多岐にわたる動的挙動の解析、設計、最適化を開始するときに最も必要なパラメータである。従って、複雑な構造物の剛体特性を容易に実用的な精度で同定(測定)することは非常に重要である。
【0003】
このような剛体特性の同定法として、本願の発明者らは、「実験的特性行列同定法」と名付けた方法を提案している(特許文献1)。この方法では、計測対象物を弾性体として取り扱っており、バネ等によって計測対象物を柔軟に支持した状態で単点加振多点応答試験を行い、試験によって得られた1次から2次又は3次までの適当な数の共振振動特性から剛体特性を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−350741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記本願発明者の提案した方法では、計測対象物をバネ等によって柔軟に支持した状態で計測を行っているにもかかわらず、計測対象物の剛体特性の同定にあたってはその境界条件を「周辺自由」と近似している。このため、柔軟な弾性体によって支持されていることによる影響や、いわゆる「幾何剛性」が考慮されておらず、剛体特性の同定誤差が比較的大きなものとなってしまっていた。
【0006】
また、上記本願発明者の提案した方法では、複数の測定点において測定を行っている。しかしながら、この場合、弾性変形モードを表現できる程度に測定点の数を多く設定する必要があり、よって同時に計測を行う場合にはその数に合わせた多数のセンサが必要となり、少数のセンサを用いる場合にセンサの取り付け、取り外しを行うことが必要となる。また対象物毎に測定点の座標情報の入力等が必要になるため、測定点の数が多いと加振試験の測定作業にかかる時間が増大する。
【0007】
従って、上記問題点に鑑み、本発明の目的は、測定点の数を少なくしつつ、高い精度で剛体特性を同定することができる剛体特性同定装置又は剛体特性同定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の発明では、計測対象物の質量及び重心位置を含む剛体特性を同定する剛体特性同定装置において、移動不能な静止部と、該静止部に対して移動可能であって計測対象物を含む可動部と、上記静止部に対して可動部を自由振動可能に支持する支持手段と、上記可動部が振動したときに該可動部の固有振動数又は固有角振動数を算出するのに必要なデータを計測する計測手段と、上記支持手段による支持条件及び上記計測手段によって計測された計測データが入力されると共にこれら支持条件と計測データから算出された固有振動数又は固有角振動数とに基づいて演算処理を行う解析手段とを具備し、上記解析手段は上記支持手段による支持条件と上記計測データから算出された固有振動数又は固有角振動数とに基づいて上記計測対象物の剛体特性を同定する、剛体特性同定装置が提供される。
【0009】
上記課題を解決するために、第2の発明では、上記解析手段は、上記計測手段による固有振動数又は固有角振動数の計測値ωと、上記支持手段による支持条件に基づいて算出された剛性行列[K]とに基づいて、下記式(1)を近似的に満たすような剛体質量行列[M]の各成分を同定し、該同定された剛体質量行列[M]の各成分に基づいて剛体特性を同定する。
【数1】

【0010】
第3の発明では、第2の発明において、上記計測手段による固有振動数又は固有角振動数の計測は異なる計測条件で少なくとも三回行われる。
【0011】
第4の発明では、第3の発明において、上記計測条件の変更は上記支持手段による支持条件を変更することによって行われる。
【0012】
第5の発明では、第4の発明において、上記支持手段は、静止部に対して可動部を支持する複数の支持部材を具備し、これら複数の支持部材のうち少なくとも一部が弾性体であり、上記支持条件の変更は、これら複数の支持部材のうちの一部を除去すること、別の支持部材を加えること、上記弾性体の支持部材の弾性係数を変更すること、上記弾性体の支持部材を非弾性体に変更すること、及び一部の支持部材の片側又は両側の取付位置を変更することのうちの少なくともいずれか一つによって行われる。
【0013】
第6の発明では、第3〜第5のいずれか一つの発明において、上記計測条件の変更は、上記可動部のうち計測対象物以外の部分の構成を変更することによって行われる。
【0014】
第7の発明では、第6の発明において、上記可動部の構成の変更は、該可動部のうち計測対象物以外の部分の構成を変更すること、及び該計測対象物以外の部分に対する計測対象物の位置又は姿勢を変更することによって行われる。
【0015】
第8の発明では、第5の発明において、上記剛性行列[K]は、上記支持部材の可動部への取付位置の座標及び上記支持部材の弾性係数に基づいて算出される。
【0016】
第9の発明では、第8の発明において、上記剛性行列[K]は、上記支持部材の可動部への取付位置の座標及び該支持部材の弾性係数に加えて、上記支持部材の静止部への取付位置及び該支持部材の自然状態における長さに基づいて、上記計測対象物の質量及び重心位置の関数として算出される。
【0017】
第10の発明では、第2〜第9のいずれか一つの発明において、上記式(1)を満たすような剛体質量行列[M]の各成分の同定は、上記計測手段による固有振動数又は固有角振動数の計測値ωに基づいて最適化により行われる。
【0018】
第11の発明では、第1〜第10のいずれか一つの発明において、上記可動部はプラットフォームと該プラットフォーム上に載置された計測対象物とを具備し、上記支持手段は上記プラットフォームを支持する。
【0019】
上記課題を解決するために、第12の発明では、移動不能な静止部と、該静止部に対して移動可能であって計測対象物を含む可動部と、上記静止部に対して可動部を自由振動可能に支持する支持手段とを具備する剛体特性同定装置によって、計測対象物の剛体特性を同定する剛体特性同定方法において、上記可動部を自由振動させる工程と、上記可動部が自由振動しているときに可動部の振動の固有振動数又は固有角振動数を計測する工程と、上記支持手段による支持条件と固有振動数又は固有角振動数の計測値とに基づいて上記計測対象物の剛体特性を同定する工程とを具備する。
【0020】
第13の発明では、第12の発明において、上記支持手段による支持条件又は上記可動部のうち計測対象物以外の部分の構成を変更することにより計測条件を変更する工程を更に具備する。
【0021】
第14の発明では、第12又は第13の発明において、上記剛体特性を同定する工程は、固有振動数又は固有角振動数を計測する工程による固有振動数又は固有角振動数の計測値ωと、上記支持手段による支持条件に基づいて算出された剛性行列[K]とに基づいて、下記式(2)を近似的に満たすような剛体質量行列[M]の各成分を同定する工程と、該同定された剛体質量行列[M]の各成分に基づいて剛体特性を同定する工程とを具備する。
【数2】

【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、測定点の数を少なくしつつ、高い精度で剛体特性を同定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】剛体特性同定装置の概略図である。
【図2】剛体特性同定装置のフレーム、プラットフォーム及び支持装置の概略斜視図である。
【図3】剛体特性同定装置のフレーム、プラットフォーム及び支持装置の平面図及び側面図である。
【図4】支持条件の変更方法を概略的に示す図である。
【図5】本発明による同定原理を説明するための図である。
【図6】計測対象物以外の可動部の部分の構成の変更方法を概略的に示す図である。
【図7】計測器の出力から得られるパワースペクトルの例を示す図である。
【図8】実施例1における試験状況を示す図である。
【図9】実施例2における試験状況を示す図である。
【図10】実施例3における試験状況を示す図である。
【図11】実施例4における試験状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本実施形態の剛体特性同定装置1の概略図である。図1に示したように、剛体特性同定装置1は、フレーム10と、このフレーム10に対して移動可能であって計測対象物Tを載置可能なプラットフォーム21と、フレーム10に対してプラットフォーム21を自由振動可能に支持する支持装置30と、フレーム10に対してプラットフォーム20が振動しているときにプラットフォーム20の振動の固有振動数又は固有角振動数を算出するのに必要なデータを計測する計測装置40と、上記支持装置30による支持条件及び計測装置40によって計測された計測データ等が入力されると共にこれら支持条件と計測データから算出された固有振動数又は固有角振動数とに基づいて演算処理を行う解析装置50とを具備する。
【0026】
図2は本実施形態の剛体特性同定装置1のフレーム10、プラットフォーム20及び支持装置30の概略斜視図であり、図3(A)及び図3(B)はそれぞれ本実施形態の剛体特性同定装置1のフレーム10、プラットフォーム20及び支持装置30の平面図及び側面図をそれぞれ示している。
【0027】
フレーム10は、例えば、図2及び図3に示したような直方体状となるように形成される。しかしながら、フレーム10は必ずしも直方体状でなく、如何なる形状であってもよい。また、支持装置30を介してプラットフォーム20を支持することができる移動不能な静止部材であれば、如何なる部材であってもよい。したがって、プラットフォーム20が移動(振動)可能であるのに対して移動(振動)不能な静止部材であればフレーム10の代わりに如何なる部材を用いても良い。
【0028】
プラットフォーム20は、図2及び図3に示した例では、ほぼ長方形の平板とされ、このプラットフォーム20上には計測対象物Tが載置される。しかしながら、プラットフォーム20はその上に計測対象物Tを載置することができ且つ支持装置30によって自由振動可能にフレーム10に支持されることができれば、必ずしも長方形でなくてもよく、また平板状でなくてもよい。
【0029】
なお、本明細書では、フレーム10に対して、すなわち静止部に対して移動可能な(振動可能な)部分を可動部21と称する。したがって、プラットフォーム20上に計測対象物Tが載置されている場合にはフレーム10に対してプラットフォーム20及び計測対象物Tが移動可能であることから、可動部21にはプラットフォーム20及び計測対象物Tが含まれることになる。また、後述するようにプラットフォーム20上にはダミーマスが載置される場合があり、この場合には可動部21にはプラットフォーム20及び計測対象物Tに加えてダミーマスが含まれる。さらに、計測装置40がプラットフォーム20に取り付けられてプラットフォーム20等と共に移動(振動)する場合があり、この場合には可動部21にはプラットフォーム20及び計測対象物Tに加えて計測装置40が含まれる。
【0030】
また、本実施形態では、計測対象物Tはプラットフォーム20を介して間接的に支持装置30によって支持されている。しかしながら、プラットフォーム20は必須の構成要素ではなく、プラットフォーム20を用いずに計測対象物Tを支持装置30によって直接的に支持するようにしてもよい。この場合、可動部21にはプラットフォーム20が含まれずに計測対象物Tのみ或いは計測対象物Tとダミーマス、計測装置40が含まれることになる。
【0031】
支持装置30は、フレーム10に対して可動部21を支持する複数の支持部材31a〜31hを具備する(支持部材31a〜31hをまとめて参照番号31で表す)。各支持部材31a〜31hは、その一方の端部がフレーム10に取り付けられると共にその他方の端部が可動部21(図示した例ではプラットフォーム20)に取り付けられる。図2及び図3に示した例では、支持装置30は八つの支持部材31a〜31hを備えている。具体的には、各支持部材31a〜31hは、直方体状のフレーム10の上方角部11とプラットフォーム20の各側部の中央との間に配置される。図3(A)に示したように、直方体状のフレーム10の各角部11にはそれぞれ二つの支持部材31が取付られ、これら二つの支持部材31はそれぞれプラットフォーム20の別の箇所に取付られる。
【0032】
図2及び図3に示した例では、これら複数の支持部材31の全てがバネ32を有している。このため、プラットフォーム20はフレーム10に対して弾性的に、自由振動可能に支持される。なお、これら支持部材31の全てがバネを有している必要はなく、これら支持部材31のうちの少なくとも一部がバネを有していればよい。また、支持部材31は弾性体としてバネを有しているが、必ずしもバネである必要はなく、弾性体であればゴム等の他の部材を有していてもよい。
【0033】
なお、上記実施形態では、支持装置30は八つの支持部材31a〜31hを備えているが、支持部材の個数は八つではなくてもよい。ただし、支持部材は少なくとも3つ以上であることが必要である。また、支持部材31のフレーム10及びプラットフォーム20への取付位置は、各支持部材31の少なくとも一方の取付位置が他のいずれかの支持部材31の取付位置と異なっていれば如何なる位置であってもよく、必ずしも図2及び図3に示した位置でなくてもよい。
【0034】
また、上述したようにフレーム10の代わりに他の静止部材を用いてもよいことや、プラットフォーム20を用いずに計測対象物Tを支持装置30によって直接的に支持するように構成してもよいことを考慮すると、支持装置30或いは各支持部材31は静止部に対して可動部を弾性的に、自由振動可能に支持するものであるということができる。
【0035】
支持装置30は、フレーム10に対するプラットフォーム20の支持条件(すなわち、静止部に対する可動部の支持条件)を変更することができる。支持条件の変更方法としては、例えば図4(A)〜図4(C)に概略的に示した以下のような方法が考えられる。
【0036】
まず、支持条件の変更方法として、図4(A)に示したように支持装置30を構成する支持部材31の数や、支持部材31の取付位置を変更することが挙げられる。すなわち、複数の支持部材31のうちの一部の支持部材を取り除くことや、支持部材を新たに追加すること、或いは各支持部材31のフレーム10若しくはプラットフォーム20に対する又はその両方に対する取付位置を変更することにより、支持条件を変更することができる。例えば、図2及び図3に示した例では八つの支持部材31a〜31hが設けられているが、図4(A)に示したようにこのうち一つ又は複数の支持部材を取り除くことや、或いは新たに支持部材を追加して九つ以上の支持部材によってプラットフォーム20を支持するようにすることにより、支持条件を変更することができる。特に、取り除く対象となる支持部材31を変更すること、追加する支持部材31の追加位置を変更すること、及び取り除く又は追加する支持部材31の個数を変更すること等によって、多数の異なる支持条件とすることができる。
【0037】
支持条件の別の変更方法として、支持部材31のバネ(弾性体)32の弾性係数を変更することが挙げられる。例えば、バネを有する支持部材31のうち少なくとも一つの支持部材31aのバネ31aを、図4(B)に示したように、弾性係数の異なる別のバネ31bに交換することによって支持条件を変更することができる。特に、各支持部材31のバネを弾性係数の異なる複数のバネに交換すること、及びバネの交換を行う支持部材31を変更することによって、多数の異なる支持条件とすることができる。
【0038】
支持条件の更なる別の変更方法として、支持部材31のバネ(弾性体)の有無を変更することが挙げられる。例えば、バネを有する支持部材31のうちの少なくとも一つの支持部材31を、図4(C)に示したようにバネを有さない支持部材に、すなわち単なる紐状部材に交換することや、逆にバネを有さない支持部材をバネを有する支持部材に交換することにより、支持条件を変更することができる。特に、複数の支持部材31においてバネと紐状部材とを交換することによって、多数の異なる支持条件とすることができる。
【0039】
なお、上記支持条件の変更方法を組み合わせてもよい。したがって、例えば、或る支持部材31を取り除くと共に別の支持部材31のバネの弾性係数を変更することによって支持条件を変更するようにしてもよい。また、これら支持条件の変更は、ユーザにより手動で行われてもよいし、支持装置30に支持部材31の交換等を行う支持条件変更機構を設けて自動で行われるようにしてもよい。
【0040】
計測装置40は、例えば支持部材31の一つに取り付けられたひずみゲージ41と、ひずみゲージ41に接続された増幅器42とを有する。図1に示した実施形態では、ひずみゲージ41は、支持部材31の一つとフレーム10との間に配置され、可動部21の振動中に、すなわち可動部の振動中に支持部材31に加わる力を計測し、これを電気信号に変換して出力する。この電気信号は、増幅器43で増幅された後に後述する解析装置50の外部インタフェース部51に入力される。解析装置50では、ひずみゲージ41によって計測された支持部材31に加わる力に基づいて可動部の固有振動数又は固有角振動数が算出される。
【0041】
なお、上記実施形態では、計測装置40の計測器としてひずみゲージ41が用いられているが、計測装置40の計測データに基づいて可動部21の固有振動数又は固有角振動数を算出することができれば、加速度計、渦電流やレーザ光線を利用した非接触変位計、レーザドップラ速度計等、如何なる計測器を用いてもよい。また、最終的に固有振動数又は固有角振動数を算出するという観点からは計測器は複数の支持部材31のうち一つのみに設ければよいが、計測精度を高めるために複数の支持部材31に計測器を設けてもよい。なお、以下の説明では、計測装置40の計測データに基づいて可動部21の固有角振動数を算出する場合を例にとって説明する。
【0042】
解析装置50は、解析装置50の外部の機器との接続箇所である外部インタフェース部51と、リムーバブルメディアへの書き込み等を行うリムーバブルメディア装置(RM装置)52と、リムーバブルメディア装置52を制御するリムーバブルメディア制御部(RM制御部)53と、ユーザからの入力を受け付ける入力装置54と、入力装置54を制御する入力制御部55と、ディスプレイ等への出力を行う出力装置56と、出力装置56を制御する出力制御部57と、各種演算処理を行う中央処理装置58と、記憶装置59と、これら外部インタフェース部51、リムーバブルメディア制御部53、入力制御部55、出力制御部57、中央処理装置58、記憶装置59等を相互に接続するバス60とを具備する。
【0043】
外部インタフェース部51は、計測装置40から入力された信号をバス60に出力する。リムーバブルメディア装置52では、リムーバブルメディア61に記録されたプログラム(例えば、後述する同定処理を行うプログラム)等を解析装置50にインストールしたり、解析結果をリムーバブルメディア61に記録したりすることができる。なお、リムーバブルメディア61としては、FD、CD、DVD、MO等、如何なる記憶媒体を用いてもよい。
【0044】
入力装置54は、キーボード、マウス及びデジタイザ等の入力機器であり、入力制御部55によって制御される。この入力装置54により、ユーザは支持装置30による各種支持条件(例えば、各支持部材31の長さ、各支持部材31のバネ32の弾性係数、各支持部材31のフレーム10への取付位置の座標、各支持部材31のプラットフォーム20への取付位置の座標等)を入力することができる。出力装置56は、ディスプレイやプリンタ等の出力機器であり、入力装置54に入力された各種データ、プログラム実行のためのメニュー、解析結果等が出力される。
【0045】
中央処理装置58は、バス60を介して、外部インタフェース部51、リムーバブルメディア制御部53、入力制御部55、出力制御部57及び記憶装置59と接続され、これら制御部等に指示を与え、また、記憶装置59に格納された各プログラムに従いフーリエ変換や同定処理等の各処理を行う。また、記憶装置59は、RAM(ランダムアクセスメモリ)やROM(リードオンリメモリ)等から構成され、プログラムや各プログラム実行中の一時的なデータ、解析結果等が格納される。
【0046】
このように構成された剛体特性同定装置1では、計測対象物Tの剛体特性(すなわち、計測対象物Tの質量mu、重心の位置{ζGu}、主慣性モーメントλ及び慣性主軸の向き{c})の同定が行われる。以下では、このように構成された剛体特性導体装置1によって行われる剛体特性の同定処理について説明する。
【0047】
まず、解析装置50の入力装置54を介して支持装置30の各支持部材31の支持条件が入力される。具体的には、各支持部材31の長さlp、各支持部材31の弾性係数ks、各支持部材31のプラットフォーム20(すなわち可動部21)への取付位置の座標ζa,p、各支持部材31のフレーム10への取付位置の座標ζ’b,pが入力される。なお、記号pはp番目の支持部材を意味する記号であり、したがってlpはp番目の支持部材31の長さを意味する。
【0048】
ここで、各支持部材31のプラットフォーム20への取付位置の座標ζa,sを入力する際の座標系と各支持部材31のフレーム10への取付位置の座標ζ’b,sを入力する際の座標系とは異なる座標系が用いられる。図5に示したように、各支持部材31のプラットフォーム20への取付位置の座標ζa,sを入力する際にはプラットフォーム20又は可動部21に基づいた(すなわち、プラットフォーム20又は可動部21と共に振動する)座標系O-xyzが用いられ、以下ではこの座標系における座標を表す際にはζ(ダッシュ無し)で表す。一方、各支持部材31のフレーム10への取付位置の座標ζ’b,sを入力する際にはフレーム10に基づいた(すなわち、プラットフォーム20又は可動部21が振動しても移動しない)座標系O'-x'y'z'が用いられ、以下ではこの座標系における座標を表す際にはζ’(ダッシュ有り)で表す。
【0049】
また、本実施形態では、支持装置30による支持条件に加えて、可動部21の構成を変更することができる。したがって、本実施形態では、支持装置30による支持条件に加えて、可動部21の構成に関するパラメータについても入力が行われる。
【0050】
ここで、可動部21の構成の変更は、計測対象物T以外の可動部21の部分の構成を変更することや、計測対象物Tのプラットフォーム20上の計測対象物Tの位置及び姿勢を変更することによって行われる。
【0051】
計測対象物T以外の可動部21の部分の構成の変更は、例えば、計測対象物T以外の可動部21の部分の質量及び重心位置の変更を変更することによって行われ、具体的には、例えば、図6に示したようにプラットフォーム20上の所定位置にダミーマス(質量体)22を載置したり、その載置位置や姿勢、載置されるダミーマスの質量等を変更することが挙げられる。したがって、この場合、解析装置50には、支持装置30による支持条件に加えて、計測対象物T以外の可動部21の部分(例えば、プラットフォーム20、ダミーマス22、及び計測装置40がプラットフォーム20等と共に振動する場合には計測装置40)の質量及び重心位置も入力される。また、計測対象物Tのプラットフォーム20上の計測対象物Tの位置及び姿勢を変更した場合には、これら位置及び姿勢間の相対的な関係(例えば、異なる二つの位置座標の各成分間の差等)が入力される。
【0052】
なお、固有角振動数の計測は、支持装置30による支持条件並びに可動部21の構成を変更して複数回行われる。以下では、支持装置30による支持条件並びに可動部21の構成によって定まる、或る計測が行われる際の条件を計測条件と称する。したがって、固有角振動数の計測は異なる計測条件で複数回行われるといえる。
【0053】
これら各種計測条件を入力した後に、プラットフォーム20上の適当な位置に計測対象物Tが載置され、その後、手動で又は自動的にプラットフォーム20が、すなわち可動部21が振動せしめられる。プラットフォーム20を手動で振動させる場合には例えばユーザにより手でプラットフォーム20が押される。一方、プラットフォーム20を自動的に振動させる場合には例えばプラットフォーム20を何らかの方法によって持ち上げてから離すことによって行われる。
【0054】
計測対象物Tが載置されたプラットフォーム20が振動せしめられると、計測装置40のひずみゲージ41によって支持部材31に加わる力が検出される。ひずみゲージ41の出力は増幅器42及び外部インタフェース部51を介して解析装置50に入力される。解析装置50では、ひずみゲージ41によって検出された時間的に変化する力をフーリエ変換することによって、図7に示したような振動数に対するパワースペクトルが求められる。図7の横軸目盛は振動数[Hz]としているがこのパワースペクトルの複数のピークは可動部21の固有角振動数を表していることと同等であり、図7に示した例ではω'1〜ω'6の6つの固有角振動数が計測されているとみなせる。このようにして計測された固有角振動数は計測条件と関連付けて記憶装置59に記憶される。
【0055】
なお、以下では第q番目の計測条件において計測された第s番目の固有角振動数をωsqで表す。各計測条件において計測され得る固有角振動数は最大で6つであるため、sは1〜6である。
【0056】
固有角振動数の計測が完了すると、計測条件を変更して再度固有角振動数の計測が行われる。計測条件の変更は、例えば上述したような支持条件の変更や、計測対象物T以外の可動部21の部分の質量、重心位置を変更すること等によって行われる。
【0057】
このように計測条件が変更されると、その後再び計測条件の入力、プラットフォーム20の振動及び固有角振動数の計測が行われる。このような計測は、後述するような理由で少なくとも3回行われ、各計測条件において計測された固有角振動数は、計測条件と関連付けて記憶装置59に記憶される。
【0058】
その後、記憶装置59に記憶された計測条件と各計測条件において計測された固有角振動数とに基づいて、下記に示したような同定原理に基づいて解析装置50により計測対象物Tの剛体特性が同定せしめられる。
【0059】
なお、上記説明では毎回計測条件の入力が行われている。しかしながら、最初の計測対象物Tの計測を複数の計測条件で行った後、その後の別の計測対象物Tの計測を行う際には、最初の計測対象物Tの計測を行った際と同じ複数の計測条件で計測を行うことが可能であり、したがって二つ目以降の計測対象物Tの計測を行う際には計測条件の入力をしなくてもよい。或いは、予め複数の計測条件を記憶装置59に記憶させ、記憶された計測条件において計測を行えば、計測条件の入力を行う必要はない。
【0060】
次に、本実施形態の剛体特性同定装置1によって行われる同定処理についての基本的な原理について説明する。本実施形態では、図5に概略的に示したように、計測対象物T及びプラットフォーム20等を含む可動部21は複数の支持部材31によって自由振動可能に支持される。このように自由振動可能に支持された可動部21を一つの剛体と仮定すると、自由振動時には微少な減衰のみしか行われないため、可動部21の振動時における運動方程式(並進と回転の両者成分をもった運動方程式)は下記式(3)のように表される。
【数3】

【0061】
ここで、式(3)において、{x}は、可動部21に基づいた座標系O-xyzにおける、可動部21のx方向の並進変位δx、y方向の並進変位δy、z方向の並進変位δz、x軸回りの回転変位δθx、y軸回りの回転変位δθy、z軸回りの回転δθzを縦に並べてできるベクトルを表している。また、{f}は、可動部21に基づいた座標系O-xyzにおける、可動部21に加わるx方向の力fx、y方向の力fy、z方向の力fz、x軸回りの力のモーメントtx、y軸回りの力のモーメントty、z軸回りの力のモーメントtzを縦に並べてできるベクトルを表している(下記式(4)参照)。また、{d2x/dt2}は変位を表すベクトル{x}の二階微分、すなわち可動部21の加速度を表すベクトルである。なお、本明細書では、行列を[]で、ベクトルを{}で表す。
【数4】

【0062】
また、上記式(3)における[Mq]は6行6列の剛体質量行列であり、[Kq]は6行6列の剛性行列である。なお、上述したようにqは計測条件の番号を表しているため、[Mq]及び[Kq]はそれぞれq番目の計測条件における剛体質量行列及び剛性行列を示している。以下、これら剛体質量行列[Mq]及び剛性行列[Kq]について説明する。
【0063】
まず、剛体質量行列[Mq]について説明する。
剛体質量行列[Mq]は、可動部21の剛体特性(質量、重心位置、主慣性モーメント、慣性主軸の向き)によって定まる行列であり、下記式(5)のように表される。
【数5】

【0064】
上記式(5)において、mは可動部21の質量であり、計測対象物Tの質量をmu、計測対象物T以外の可動部21の部分(すなわち、プラットフォーム20、ダミーマス22、計測器41等)の質量をmvとすると、下記式(6)により表される。
【数6】

【0065】
なお、可動部21に基づいた座標系O-xyzにおける可動部21の重心座標を表すベクトル{ζG}は、ζG,xを可動部21の重心のx座標、ζG,yを可動部の重心のy座標、ζG,zを可動部の重心のz座標とすると下記式(7)のように表すことができる。さらに、座標系O-xyzにおける可動部21の重心座標{ζG}は、計測対象物Tの重心座標を{ζGu}、計測対象物T以外の可動部21の部分の重心座標を{ζGv}とすると、下記式(8)のように表すことができる。
【数7】

【数8】

【0066】
また、上記式(5)において、[I]は3行3列の単位行列、[ζG×は可動部21の重心に関する行列、[Θ]は可動部21の慣性テンソルを表す行列であり、それぞれ下記式(9)、(10)、(11)によって表される。
【数9】

【数10】

【数11】

【0067】
ここで、上記式(7)におけるζG,x、ζG,y、ζG,zは可動部21の重心のx、y、z座標をそれぞれ表している。また、上記式(7)及び本明細書において[ ]×との表記は、ベクトル同士の外積を行列とベクトルとの乗算に変換するものであり、{a}×{b}=[{a}]×{b}である。したがって、例えば{a}を成分がa1,a2,a3であるベクトルとすると、[{a}]×は下記式(12)で表される。
【数12】

【0068】
慣性テンソル[Θ]は式(13)のように表すことができる。ここで、[Θu]と[Θv]はそれぞれ計測対象物Tとそれ以外の可動部21とに関する座標系O-xyzの原点についての慣性テンソルである。
【数13】

【0069】
一方、上記式(11)におけるIxx、Iyy、Izzは、座標系O-xyzにおけるx軸回り、y軸回り、z軸回りの回転慣性をそれぞれ表現する慣性モーメントであり、Iyx、Izx、Izyは、座標系O-xyzにおけるx軸とy軸、x軸とz軸、y軸とz軸間の回転慣性の連成度合いをそれぞれ表現する慣性乗積である。
【0070】
したがって、式(3)における剛体質量行列[Mq]は、可動部21の質量m、重心座標{ζG}及び慣性テンソル[Θ]を表す行列であるといえる。
【0071】
ここで、上記式(3)における可動部21の剛体質量行列[Mq]を求めることができれば、可動部21の剛体特性を求めることができる。具体的には、可動部21の剛体特性のうち質量及び重心座標は上記式(5)のm及び[{ζG}]×から直接的に求められる。一方、可動部21の剛体特性のうち主慣性モーメント及び慣性主軸の向きは上記式(5)の慣性テンソル[Θ]から求められる。
【0072】
すなわち、慣性テンソル(3行3列)について、下記式(14)の標準的固有値問題を解いて算出された三つの固有値が可動部21の3つの主慣性モーメントの値、それらに対応して得られる長さ1に正規化された固有ベクトルがそれぞれの主慣性モーメントに対応する慣性主軸の方向余弦ベクトル(慣性主軸の向きを表す)である。すなわち、式(14)の固有値問題の解として下記式(15)が得られる。
【数14】

【数15】

【0073】
したがって、上記式(3)において剛体質量行列[Mq]を求めることができれば、可動部21の剛体特性(質量、重心座標、主慣性モーメント及び慣性主軸の向き)を求めることができる。
【0074】
一方、可動部21のうち計測対象物T以外の可動部21の部分の剛体特性は予め計算によって又は実験的に求められている。したがって、可動部分21の剛体特性を求めることができれば、その結果、計測対象物Tの剛体特性を求めることができる。したがって、本実施形態の同定処理では、上記式(3)の剛体質量行列[Mq]の各成分を求め、求めた成分に基づいて計測対象物Tの剛体特性を求めているといえる。
【0075】
次に、剛性行列[Kq]について説明する。
上記式(3)における剛性行列[Kq]は、可動部21の質量m及び重心座標{ζG}に応じて変化する。しかしながら、上述したように計測対象物Tの質量mu及び重心座標{ζGu}は未知数であるため、可動部21の質量m及び重心座標{ζG}も未知数である。このため、本実施形態では、剛性行列[Kq]は可動部21の質量m及び重心座標ζGの関数として求められる。
【0076】
剛性行列[Kq]を求めるにあたって、まず、可動部21が静的平衡状態にあるとき、すなわち可動部21が振動していない状態にあるときのフレーム10に対する可動部21の相対位置が算出される。ここで、可動部21が静的平衡状態にあるときのフレーム10に対する可動部21の相対位置は、可動部21の質量m及び重心座標{ζG}に応じて、すなわち計測対象物Tの質量mu及び重心座標{ζGu}に応じて変化する。そこで、可動部21が静的平衡状態にあるときのフレーム10に対する可動部21の相対位置は、可動部21の質量m及び重心座標{ζG}の関数として求められる。
【0077】
ここで、上述したように、各支持部材31の可動部21(プラットフォーム20)への取付位置の座標{ζa,s}は可動部21に基づいた(すなわち、可動部21と共に振動する)座標系O-xyzで表され、各支持部材31のフレーム10への取付位置の座標{ζ’b,s}はフレーム10に基づいた(すなわち、可動部21が振動しても移動しない)座標系O'-x'y'z'で表される。そこで、本実施形態では、可動部21が静的平衡状態にあるときの可動部21の相対位置を算出するにあたり、可動部21が静的平衡状態にあるときの可動部21に基づいた座標系O-xyzに対するフレーム10に基づいた座標系O'-x'y'z'の相対位置{xO'}及びこれら座標系の向きの違い{θ}が算出される。
【0078】
ここで、可動部21の力学的エネルギ関数V({xO'}、{θ})は相対位置{xO'}及び向き{θ}の関数として下記式(16)のように表され、このエネルギ関数が最小となるような相対位置{xO'}及び向き{θ}が、可動部21が静的平衡状態にあるときの可動部21に基づいた座標系O-xyzに対するフレーム10に基づいた座標系O'-x'y'z'の相対位置{xO'}及び向き{θ}を表している。
【0079】
【数16】

上記式(16)においてNpは支持部材31の総数を示している。また、式(16)においてVe,pは複数ある支持部材31のうちのp番目の支持部材31に蓄えられた弾性エネルギを示しており、下記式(17)によって表される。
【数17】

【0080】
なお、上記式(17)においてkpはp番目の支持部材31の弾性係数、lpはp番目の支持部材31の自然状態における長さ、{ζba,p}はp番目の支持部材31のフレーム10への取付位置からプラットフォーム20への取付位置までを示すベクトルである。このベクトル{ζba,p}は下記式(18)により表される。
【数18】

【0081】
上記式(18)中の{ζa,p}は座標系O-xyzにおけるp番目の支持部材31のプラットフォーム20への取付位置の座標、{ζ’b,p}は座標系O'-x'y'z'におけるp番目の支持部材31のフレーム10への取付位置の座標である。このように、{ζa,p}と{ζ’b,p}とは異なる座標系で表されているため、上記式(18)ではこれら座標系の相対位置{xO'}及び向き{θ}を用いてs番目の支持部材31のフレーム10への取付位置の座標{ζ’b,p}を座標系O-xyzで表すように変換操作が行われている。なお、式(18)中の[R({θ})]は下記式(19)で表される。式(19)中のθx、θy、θzはそれぞれ上記ベクトル{θ}の成分である。
【数19】

【0082】
一方、上記式(16)においてVgは可動部21に加わる重力エネルギを表しており、下記式(20)で表される。
【数20】

式(20)中、{fG}は座標系O'-x'y'z'における重力の方向及び大きさを示すベクトルであり、下記式(21)で表される。なお、式(21)中の{n’g}は座標系O'-x'y'z'における重力の方向を示す単位ベクトルである。
【数21】

【0083】
そして、上記式(16)を最小化して得られた位置{xO'}及び向き{θ}に基づいて、より詳細にはこのようにして得られた位置{xO'}及び向き{θ}を上記式(18)に代入することによって得られるベクトル{ζba,p}と上記式(21)で得られる{fG}を用いて、下記式(22)によって剛性行列[Kq]が算出される。なお、上記式(22)における{Tp}、{Jp}、{fp}はそれぞれ下記式(23)、(24)、(25)によって表される。
【数22】

【数23】

【数24】

【数25】

【0084】
剛性行列[Kq]は、可動部21が静的平衡状態から微少な並進及び回転変位したときに可動部21に加わる力を表す行列である。ここで、各支持部材31から可動部21に加わる力の方向は可動部21の振動に伴って変化するが、本実施形態では上記式(22)からわかるように、可動部21の振動に伴う各支持部材31から可動部21に加わる力の方向の変化を考慮して、剛性行列[Kq]が算出される。
【0085】
ここで、上記式(16)〜(25)から分かるように、剛性行列[Kq]の算出にあたっては未知数である可動部21の質量m及び重心座標{ζG}が必要となる。逆に考えると、剛性行列[Kq]は可動部21の質量m及び重心座標{ζG}の関数であるということができる。
【0086】
なお、可動部21の質量m及び重心座標{ζG}は、計測対象物T以外の可動部21の部分の質量mv及び重心座標{ζGV}が予め分かっていることから、計測対象物Tの質量mu及び重心の座標{ζGu}が分かれば求めることができる。ここで、計測対象物Tの質量mu及び重心の座標{ζGu}は、計測対象物Tの主慣性モーメントや慣性主軸の向きに比べて、本発明よる方法以外の方法によっても比較的容易に求めることができる。したがって、計測対象物Tの質量mu及び重心の座標{ζGu}を、したがって可動部21の質量m及び重心座標{ζG}を予め算出し、剛性行列[Kq]の各成分を予め特定してもよい。これにより、剛性行列[Kq]が可動部21の質量m及び重心座標{ζG}の関数とならないため、可動部21及び計測対象物Tの同定処理を簡素化することができる。
【0087】
再び上記式(3)に戻る。
時間領域の微分方程式で表されている上記式(3)は、ラプラス変換により下記式(26)に示したように周波数領域の方程式に変換することができる。式(26)において、{Ψ(ω)}は、式(3)のベクトル{x}をラプラス変換したものであり、周波数ωの関数である。
【数26】

【0088】
上記式(26)に示した系の固有値及び固有ベクトルは下記式(27)の固有値問題を解くことによって得られる。式(27)において、固有ベクトル{ψsq}(6行1列)はq番目の計測時における第s次の剛体モードのモード形を表し、固有値ωsq2はq番目の計測時における第s次の剛体モードにおける固有角振動数の二乗を表している。
【数27】

【0089】
上記式(27)の固有値問題の固有値(すなわち、固有角振動数が求められる)の解は下記式(28)を解くことによって得られる。
【数28】

上記式(28)において、[Mq-1[Kq]は、10個の未知数(すなわち、可動部21の質量m、可動部21の重心位置の座標ζGx、ζGy、ζGz、慣性モーメントIxx、Iyy、Izz、及び慣性乗積Iyx、Izx、Izy)を含んでいる。
【0090】
ところで、上述したように、計測装置40を用いた固有角振動数の計測においては、各計測条件において最大で6つの固有角振動数が計測され、これらをω’sqとして表す(s=1,...,6;q=1,...,Nq)。このようにして計測によって得られた固有角振動数ω’sqを上記式(28)に代入することで、各計測条件毎に6つの等式を得ることができる。したがって、固有角振動数の計測をNq回行うと、最大で6×Nq個の等式を得ることができる。
【0091】
したがって、これら最大で6×Nq個の等式を解くことによって、[Mq-1[Kq]の10個の未知数を求めることができる。具体的には、計測によって求められた最大で6×Nq個の固有角振動数ω’sqを用いて、下記式(29)及び(30)に示す最適化問題を解くことによって上述した10個の未知数が求められる。最適化手法としては、ニュートンラプソン法、ガウスニュートン法、Levenberg-Marquardt法等様々な最適化手法を用いることができる。なお、式(30)において[I]は6行6列の単位行列であり、{r}は剛体特性の各パラメータを組合せたベクトルを示している(したがって、{r}の成分は、m、ζGx、ζGy、ζGz、Ixx、Iyy、Izz、Iyx、Izx、Izy)。
【数29】

【数30】

【0092】
具体的には、最初に上記10個の未知数について適当な値を代入し、その後、これら代入した未知数の値を少しずつ変化させて反復計算を行い、最終的に上記式(30)の右辺の全ての行列式の解が最小となるような値をこれら未知数の値として同定する。これにより、可動部21の質量m、可動部21の重心位置の座標ζGx、ζGy、ζGz、慣性モーメントIxx、Iyy、Izz、及び慣性乗積Iyx、Izx、Izyが同定され、これら同定された値に基づいて計測対象物Tの剛体特性が求められる。
【0093】
なお、上述したように、式(27)において未知数は10個である。一方、一つの計測条件で計測を行うことにより最大で6個の固有角振動数が得られ、よって6つの等式を得ることができる。したがって、異なる計測条件において2回の計測を行えば最大で12個の等式が得られ、この等式の数が未知数の数よりも多いことから、異なる計測条件で最低2回の計測条件で計測を行えば上記式(27)から10個の未知数を同定することができるとも考えられる。しかしながら、上述したようにして得られた等式は全てが独立した等式とはなっておらず、よって2回の計測では上記10個の未知数を同定することができない。したがって、本実施形態では、最低3回の計測を行うことが必要である。
【0094】
なお、上記式(29)及び(30)による同定精度は必ずしも十分に高くなく、発明者らの経験上、上記式(30)よりも、上記式(30)をω’sqで割った下記式(32)を用いて、下記式(31)及び(32)に基づいて最適化を行う方が同定精度が高い。これは数値計算上の問題に起因している。
【数31】

【数32】

【0095】
ここで、計測された固有角振動数ω’sqには誤差が分散して含まれていると考えられる。このため、上記未知数の同定を高い精度で行うためには、[Mq-1[Kq]の固有値の平方根である理論的な固有角振動数ωsqを計測された固有角振動数ω’sqに最小二乗法的手法でフィッティングさせるのが好ましい。理論的な固有角振動数ωsqのフィッティングは下記式(33)及び(34)によって行われる。
【数33】

【数34】

【0096】
なお、上記式(34)では、理論的な固有角振動数ωsqと計測された固有角振動数ω’sqのとの対応関係を合わせて計算を行う必要がある。ところが、上記未知数が全く不明である状態においては、[Mq-1[Kq]の固有値の平方根である理論的な固有角振動数ωsqと計測された固有角振動数ω’sqとの対応関係は不明であるため、計測によって求められた固有角振動数ωsqを直接的に式(34)に代入して最適化を行うことはできない。したがって、上記式(29)及び式(30)によって上記未知数を予め求め、これら求められた未知数に基づいて算出された理論的な固有角振動数ωsqを初期値として上記式(33)及び(34)による最適化を行うのが好ましい。これにより、可動部21の、したがって計測対象物Tの剛体特性の同定精度を高めることができる。
【0097】
次に、解析装置50で行われる同定処理について説明する。解析装置50で行われる同定処理は上述したような基本原理に基づいて行われる。
【0098】
まず、計測対象物Tの剛体特性(計測対象物Tの質量mu、重心の位置{ζGu}、主慣性モーメントλ及び慣性主軸の向き{c})の初期値の組合せがランダムに複数個生成される。ただし、初期値の生成は、例えば重心の位置は計測対象物Tを包囲する直方体の内部に位置する等の物理的な制約条件を考慮して行われる。
【0099】
次いで、Nk個(例えば1000個)生成された剛体特性の初期値の組合せrk(k=1,...,Nk)を上記式(30)の又は式(32)に代入し、これら複数の剛体特性の初期値の組合せのうちf({rk})又はg({rk})が最小となるNl組(例えば、10組)の組合せrl(l=1,...,Nl)が選定される。
【0100】
次いで、上述したように選定された各初期値の組合せrlを上記式(29)及び(30)又は上記式(31)及び(32)に代入して、最適化を行う。理想的な場合、これらNl組の初期値の組合せrl全てにおいて上記式(29)及び(30)又は上記式(31)及び(32)の最適化問題の解が同一又はほぼ同一となる。
【0101】
このようにして求められた上記式(29)及び(30)又は上記式(31)及び(32)の最適化問題の解が、上記式(33)及び(34)の最適化問題の初期値として用いられる。この最適化問題を解くことにより最終的な可動部21の剛体特性が算出され、その後、計測対象物Tの剛体特性が算出される。
【0102】
なお、上記式(29)及び(30)又は上記式(31)及び(32)による最適化によって得られたNl組の解のうち一部の解が同一にならない場合、その一部の最適化問題の解が大域的最小点ではなく局所的最小点となっているものと考えられる。したがって、局所的最小点となっている最適化問題の解は除去され、残りの最適化問題の解が上記式(33)及び(34)の最適化問題の初期値として用いられる。
【0103】
以下に上述したような手法により計測対象物Tの剛体特性を同定することの利点について説明する。
【0104】
例えば上記特許文献1に示した剛体特性の同定手法では、計測対象物をバネ等によって柔軟に支持した状態で計測を行っているにもかかわらず、計測対象物の剛体特性の同定にあたってはその支持境界条件を「周辺自由」と近似している。これに対して、本実施形態では、計測対象物を含む可動部21の支持境界条件を、「周辺自由」と近似せず、支持装置30の各支持部材31の弾性係数や取付位置を利用して計算式に盛り込んでいる(特に、上記式(22))。このため、計測対象物Tの剛体特性の同定精度を高いものとすることができる。また、上述したように式(22)では、可動部21の振動に伴う各支持部材31から可動部21に加わる力の方向の変化が考慮されており、すなわち「幾何剛性」が考慮されている。したがって、このことによっても計測対象物Tの剛体特性の同定精度を高いものとすることができる。
【0105】
また、本実施形態では、上述したように、計測対象となるパラメータが固有角振動数のみである。このため、計測器41は一つだけ設ければよく、また計測器41としては振動の周期を計測することができれば如何なる計測器を用いてもよい。このため、剛体特性同定装置1全体を安価なものとすることができる。
【0106】
さらに、計測器41によって振動の周期を計測するにあたっては、計測器41によって検出されるパラメータの絶対値(例えば、ひずみゲージであれば力の値)を正確に求める必要がなく、よって計測器41のキャリブレーションを正確に行う必要がない。したがって、剛体特性同定装置1による同定を短時間で行うことができる。
【0107】
また、本実施形態の剛体特性同定装置1によれば、フレーム10、プラットフォーム20の大きさを変えるだけで、小さな計測対象物(例えば情報機器、精密機械、その部品等)から大きな計測対象物(例えば、大型車両、コンテナ、大型船舶用エンジン、航空機等)まで様々ものに適用可能である。このため、例えば計測対象物を能動的にスイングさせて同定を行うような従来の同定装置にくらべて利用範囲が極めて広いといえる。
【0108】
なお、本明細書で用いられている記号の意味を以下にまとめる。
[]:行列
{}:ベクトル
p:p番目の支持部材
q:q番目の計測
s:固有角振動数の次数
p:支持部材の総数
q:総計測回数
[Mq]:q番目の計測時における可動部の剛体質量行列
[Kq]:q番目の計測時における剛性行列
p:p番目の支持部材の弾性係数
p:p番目の支持部材の自然状態における長さ
-xyz:プラットフォーム20又は可動部21に基づいた座標系
O'-x'y'z':フレーム10に基づいた座標系
{ζa,p}:O-xyz座標系におけるp番目の支持部材のプラットフォーム20への取付座標
{ζ’b,p}:O’-x'y'z'座標系におけるp番目の支持部材のフレーム10への取付座標
{n’g}:O’-x'y'z'座標系における重力の向き
【実施例】
【0109】
〈実施例1〉
計測対象物を図8に示したような矩形のアルミニウム製フレームT1(1.7×1.5×0.05m)とし、プラットフォームを用いずに計測対象物T1を支持部材により直接支持する。すなわち、可動部21は計測対象物T1のみとする。支持部材31として8つのバネ付きストラップS1〜S8を用い、固有振動数の計測は加速度センサによって行う。計測条件の変更はバネ付きのストラップS1をバネ無しのストラップS1’に交換することによって行う。このような実験条件で上述した同定手法を用いた場合の同定結果を表1に示す。
【表1】

【0110】
表1における真の値は計測対象のアルミニウム製フレームT1の形状から計算によって求めたものである。また、誤差のうちg({r})は上記式(31)及び式(32)によってアルミニウム製フレームT1の剛体特性を同定した場合における真の値に対する同定結果の誤差を、h({r})は上記式(33)及び式(34)によってアルミニウム製フレームT1の剛体特性を同定した場合における真の値に対する同定結果の誤差をそれぞれ表している。また、h({r})欄内の括弧書きは真の値に対する誤差の割合を示している。表1からわかるように、同定結果の誤差はいずれも1%以下である。
【0111】
〈実施例2〉
次に、計測対象物を、図9に示したように、矩形のアルミニウム製フレームT21の角部上に1.87kgの円柱質量体T22を載置したものT2とする。また、プラットフォームを用いずに計測対象物T2を支持部材により直接支持する。支持部材31として8つのバネ付きストラップS1〜S8を用い、固有振動数の計測は加速度センサによって行う。計測条件の変更はバネ付きのストラップS1をバネ無しのストラップS1’に交換することによって行う。このような実験条件で上述した同定手法を用いた場合の計測対象物T2についての同定結果を表2に示す。
【表2】

【0112】
表2における真の値は計測対象物T2の形状から計算によって求めたものである。表2からわかるように、同定結果の誤差はいずれも1%程度以下である。
【0113】
〈実施例3〉
次に、計測対象物を、図10に示したように、矩形のアルミニウム製のフレームT1とし、プラットフォームを用いずに計測対象物T1を支持部材により直接支持する。支持部材31として8つのバネ付きストラップS1〜S8を用い、固有振動数の計測は加速度センサによって行う。計測条件の変更は1.87kgの円柱質量体(ダミーマス)Dの載置位置を、アルミニウム製フレームT1の四つの角部間で変更することによって行われる。このような実験条件で上述した同定手法を用いた場合の計測対象物T1についての同定結果を表3に示す。表3における真の値は計測対象物T1の形状から計算によって求めたものである。表3からわかるように、同定結果の誤差はいずれも1%程度以下である。
【表3】

【0114】
〈実施例4〉
次に、計測対象物を、図11に示したように、矩形のアルミニウム製のプレートT3とし、プラットフォームを用いずに計測対象物T3を支持部材により直接支持する。支持部材として8つのバネ付きストラップS1〜S8を用い、固有振動数の計測は力センサによって行う。計測条件の変更は支持部材の一部S1を除去することによって行う。このような実験条件で上述した同定手法を用いた場合の計測対象物T3についての同定結果を表4に示す。表4における真の値は計測対象物T3の形状から計算によって求めたものである。表4からわかるように、同定結果の誤差はいずれも1%程度以下である。
【表4】

【符号の説明】
【0115】
1 剛体特性同定装置
10 フレーム(静止部)
20 プラットフォーム
21 可動部
30 支持装置
31 支持部材
32 バネ
40 計測装置
50 解析装置
51 外部インタフェース部
52 リムーバブルメディア装置
54 入力装置
56 出力装置
58 中央処理装置
59 記憶装置
T 計測対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物の質量及び重心位置を含む剛体特性を同定する剛体特性同定装置において、
移動不能な静止部と、該静止部に対して移動可能であって計測対象物を含む可動部と、上記静止部に対して可動部を自由振動可能に支持する支持手段と、上記可動部が振動したときに該可動部の固有振動数又は固有角振動数を算出するのに必要なデータを計測する計測手段と、上記支持手段による支持条件及び上記計測手段によって計測された計測データが入力されると共にこれら支持条件と計測データから算出された固有振動数又は固有角振動数とに基づいて演算処理を行う解析手段とを具備し、
上記解析手段は上記支持手段による支持条件と上記計測データから算出された固有振動数又は固有角振動数とに基づいて上記計測対象物の剛体特性を同定する、剛体特性同定装置。
【請求項2】
上記解析手段は、上記計測手段による固有振動数又は固有角振動数の計測値ωと、上記支持手段による支持条件に基づいて算出された剛性行列[Kq]とに基づいて、下記式(1)を近似的に満たすような剛体質量行列[Mq]の各成分を同定し、該同定された剛体質量行列[M]の各成分に基づいて剛体特性を同定する、請求項1に記載の剛体特性同定装置。
【数1】

【請求項3】
上記計測手段による固有振動数又は固有角振動数の計測は異なる計測条件で少なくとも三回行われる、請求項2に記載の剛体特性同定装置。
【請求項4】
上記計測条件の変更は上記支持手段による支持条件を変更することによって行われる、請求項3に記載の剛体特性同定装置。
【請求項5】
上記支持手段は、静止部に対して可動部を支持する複数の支持部材を具備し、これら複数の支持部材のうち少なくとも一部が弾性体であり、上記支持条件の変更は、これら複数の支持部材のうちの一部を除去すること、別の支持部材を加えること、上記弾性体の支持部材の弾性係数を変更すること、上記弾性体の支持部材を非弾性体に変更すること、及び一部の支持部材の片側又は両側の取付位置を変更することのうちの少なくともいずれか一つによって行われる、請求項4に記載の剛体特性同定装置。
【請求項6】
上記計測条件の変更は、上記可動部の構成を変更することによって行われる、請求項3〜5のいずれか1項に記載の剛体特性同定装置。
【請求項7】
上記可動部の構成の変更は、該可動部のうち計測対象物以外の部分の構成を変更すること、及び該計測対象物以外の部分に対する計測対象物の位置又は姿勢を変更することによって行われる、請求項6に記載の剛体特性同定装置。
【請求項8】
上記剛性行列[K]は、上記支持部材の可動部への取付位置の座標及び上記支持部材の弾性係数に基づいて算出される、請求項5に記載の剛体特性同定装置。
【請求項9】
上記剛性行列[K]は、上記支持部材の可動部への取付位置の座標及び該支持部材の弾性係数に加えて、上記支持部材の静止部への取付位置及び該支持部材の自然状態における長さに基づいて、上記計測対象物の質量及び重心位置の関数として算出される、請求項8に記載の剛体特性同定装置。
【請求項10】
上記式(1)を満たすような剛体質量行列[M]の各成分の同定は、上記計測手段による固有振動数又は固有角振動数の計測値ωに基づいて最適化により行われる、請求項2〜9のいずれか1項に記載の剛体特性同定装置。
【請求項11】
上記可動部はプラットフォームと該プラットフォーム上に載置された計測対象物とを具備し、上記支持手段は上記プラットフォームを支持する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の剛体特性同定装置。
【請求項12】
移動不能な静止部と、該静止部に対して移動可能であって計測対象物を含む可動部と、上記静止部に対して可動部を自由振動可能に支持する支持手段とを具備する剛体特性同定装置によって、計測対象物の剛体特性を同定する剛体特性同定方法において、
上記可動部を自由振動させる工程と、上記可動部が自由振動しているときに可動部の振動の固有振動数又は固有角振動数を計測する工程と、上記支持手段による支持条件と固有振動数又は固有角振動数の計測値とに基づいて上記計測対象物の剛体特性を同定する工程とを具備する、剛体特性同定方法。
【請求項13】
上記支持手段による支持条件又は上記可動部の構成を変更することにより計測条件を変更する工程を更に具備する、請求項12に記載の剛体特性同定方法。
【請求項14】
上記剛体特性を同定する工程は、固有振動数又は固有角振動数を計測する工程による固有振動数又は固有角振動数の計測値ωと、上記支持手段による支持条件に基づいて算出された剛性行列[K]とに基づいて、下記式(2)を近似的に満たすような剛体質量行列[M]の各成分を同定する工程と、該同定された剛体質量行列[M]の各成分に基づいて剛体特性を同定する工程とを具備する、請求項12又は13に記載の剛体特性同定方法。
【数2】


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−18092(P2012−18092A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156100(P2010−156100)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】