説明

剥離性ポリエチレンフィルム

10%〜90重量%のメタロセンで触媒されたポリエチレン(mPE)並びに5%〜40重量%の1,3−ブタジエン・モノマー単位及び60%〜95重量%のスチレン・モノマー単位を含んでなる90%〜10重量%のスチレン−ブタジエン・ブロックコポリマーを含んでなる均質配合物。本発明の配合物は食品包装用途のための剥離性フィルムを製造するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエチレン及びスチレン−ブタジエン・ブロックコポリマーの組成物及び優れた剥離性を有するそれらのフィルムに関する。従ってこれらの組成物は包装、より特定的には食品包装のような、この特性を必要とするフィルムの用途のために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
消費者による容器の容易な開放を提供するために、容器上にヒートシールされた後に、容易に剥離することができる熱成形容器を覆うフィルムを有することは食品包装用途において極めて望ましい。従ってこれらのフィルムは例えば、貯蔵及び/又は運搬期間中にそのどんな誤った開放をも回避しながら容器の容易な開放を提供するのに十分な所望の可剥性をもたなければならない。これらのフィルムはまた、良好な光学的特性及び感覚受容性をもたなければならない。
【0003】
本発明において、フィルムは極めて薄い連続シートと定義され:厚さの上限は約250μmである(非特許文献1参照)。
【0004】
当該技術分野において、可剥性フィルムは、熱成形容器上にヒートシールされた後に、フィルムに何の損傷をも引き起こさず、そして容器の縁上にフィルムの一部を残さずに、柔らかい、規則的な(regular)剥離により容器から手で容易に取り除くことができるフィルムと定義される。
【0005】
特許文献1は以下の成分(a)〜(c):(a)50〜95重量%のスチレン−タイプの炭化水素及び5〜50重量%の共役ジエン−タイプの炭化水素のブロックコポリマー5〜50重量%、(b)エチレン/α−オレフィンのランダムコポリマー5〜50重量%並びに(c)10〜50重量%のスチレン−タイプの炭化水素及び50〜90重量%の共役ジエン−タイプの炭化水素のブロックコポリマー5〜70重量%を、合計50〜100重量%並びに(d)耐衝撃性ポリスチレン0〜50重量%を含んでなる樹脂組成物で製造されたシーラント層を有する透明なヒートシールフィルムを開示している(特許文献1参照)。この文献は可剥性フィルムの課題に対処していない。
【0006】
特許文献2はメタロセンで触媒された線状の低密度ポリエチレン樹脂で製造されたフィルムを開示している。フィルムはシール用途に使用されている。フィルムの可剥性に関しては何も言及されていない(特許文献2参照)。
【0007】
特許文献3はヒートシールフィルムを開示している。シーラント層組成物は(1)ポリエチレン・ホモポリマー、エチレン/α−オレフィン・コポリマー、エチレンビニルアセテート・コポリマー及び/又はエチレン/アクリレート・コポリマー並びに(2)エラストメー、プラストマー、アイオノマー及び/又はカルボキシル−変性ポリエチレン、を含んでなる。これらのフィルムの可剥性に関しては言及されていない(特許文献3参照)。
【0008】
特許文献4は少なくとも1層(ここで前記の層はポリスチレン及び1種以上のエチレンアクリル酸誘導体・コポリマーの配合物を含んでなる)を含んでなるポリスチレン容器のためのヒートシール可能で可剥性フィルムを開示している(特許文献4参照)。
【0009】
特許文献5は20〜60重量パーセントの場合によりゴムで強化されたスチレン樹脂、30〜70パーセントのスチレン−ブタジエン−スチレン・ブロックコポリマー並びに4
〜40パーセントのエチレン及びアクリル酸のコポリマーを含んでなる乳製品容器をシールするために使用することができるシール可能な熱可塑性成形組成物を開示している(特許文献5参照)。
【0010】
当該技術分野で知られた伝統的なヒートシール可能で剥離性フィルムは幾つかの主要な欠点を被むる。実際、これらのフィルムは時々、容器上に余りに強力にシールされるので、何らの損傷も被らずに容易に剥離することができない。
【0011】
言い換えると、フィルムは貯蔵及び/又は運搬中に容器の開放をもたらす、容器上のヒートシール適性の不足を被る。これは特に容器がポリプロピレン又はポリスチレン樹脂で製造される場合に認められる。
【0012】
従って、手で容易に可剥性でありながら、ポリプロピレン又はポリスチレンで製造された容器上にシールすることができるフィルムを製造する必要がある。
【0013】
本発明の主要な目的は剥離性でありながら、ポリプロピレン又はポリスチレン樹脂で製造された容器上に十分にシールされる、mPE及びスチレン−ブタジエン・ブロックコポリマーの組成物からフィルムを製造することである。
【0014】
更にこれらのフィルムが良好な感覚受容性及び光学特性を達成すれば有利であると考えられる。
【特許文献1】国際公開第01/15897号パンフレット
【特許文献2】欧州特許第1 312 624号明細書
【特許文献3】欧州特許第0 924 062号明細書
【特許文献4】欧州特許第0 538 139号明細書
【特許文献5】国際公開第94/24205号パンフレット
【非特許文献1】Hawley’s Condensed Chemical Dictionary,Twelfth Edition,Rev.by R.J.Lewis,Van Norstrand Reinhold Co.,New York
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、10%〜90重量%のメタロセンで触媒されたポリエチレン(mPE)並びに、5%〜40重量%の1,3−ブタジエン・モノマー単位及び60%〜95重量%のスチレン・モノマー単位を含んでなる、90%〜10重量%のスチレン−ブタジエン・ブロックコポリマー、を含んでなる均質配合物が本発明の1個以上の目的に導くことを発見した。
【0016】
本発明に従うフィルムは主として、消費者が包装製品を見ることが重要な、生鮮食品及び乳製品のような食品包装用途に使用される。
【0017】
容器がポリスチレンで製造される時の1態様に従うと、剥離性フィルムを製造するための配合物は少なくとも40重量%のスチレン−ブタジエン・ブロックコポリマー、好ましくは少なくとも50重量%のスチレン−ブタジエン・ブロックコポリマーを含む。
【0018】
容器がポリプロピレンで製造される時のもう1つの態様に従うと、剥離性フィルムを製造するための配合物は少なくとも40重量%のmPE、好ましくは、少なくとも50重量%のmPEを含む。
【0019】
本発明で使用されるmPEはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン又
は4−メチル−1−ペンテンからなる群から選択されるコモノマーとエチレンのコポリマーであり、ここで好ましいコモノマーは1−ヘキセンである。
【0020】
本発明で使用されるmPEの密度は反応容器中に注入されるコモノマーの量により制御することができる。mPEの密度は0.906g/cm〜0.963g/cm、好ましくは0.910g/cm〜0.960g/cm、もっとも好ましくは0.915g/cm〜0.960g/cmの範囲内にあることができる。
【0021】
本発明中に使用されるmPEのASTM D 1238の条件2.16kg/190℃に従うメルトインデックスMIは反応容器中に注入される水素の量により制御することができる。mPEのメルトインデックスは0.1g/10分〜100g/10分、好ましくは0.2g/10分〜20g/10分、そしてもっとも好ましくは0.3g/10分〜10g/10分の範囲内にあることができる。
【0022】
本発明中に使用されるmPE樹脂は好ましくは、方程式:
【0023】
【数1】

【0024】
[式中、ηは190℃の限定的、ゼロずり粘度であり、そして[η]は135℃のトリクロロベンゼン中の固有粘度である]
により、Macromolecules 2001,34,7362−7367中でR.N.Shroff及びH.Mavridisにより定義されたようなレオロジー長鎖分岐指数、LCBIを有する。LCBIは、以下の一般化クロス方程式、すなわち
【0025】
【数2】

【0026】
[式中、nは物質の剪断減粘性動態の特徴を示す物質の指数則指数であり、tは物質の特徴的緩和時間であり、ηはゼロずり粘度であり、η及びγはそれぞれ測定粘度及びずり速度のデータである]
により米国特許出願第6114486号明細書中に記載されたようなレオロジー曲線(複素粘性率振動数)の最小2乗分析による最良適合(best fitting)から計算される。動的レオロジー分析は窒素下で190℃で実施され、歪振幅は10%である。結果はASTM D 4440に従って報告される。
【0027】
本発明で使用されるmPEのLCBIは少なくとも0.14より大きく、好ましくは0.50より大きく、より好ましくは1より大きく、更により好ましくは2より大きい。
【0028】
1態様に従うと、本発明で使用されるスチレン−ブタジエン・ブロックコポリマーは5%〜40重量%の1,3−ブタジエン・モノマー単位及び60%〜95重量%のスチレン・モノマー単位、好ましくは15%〜30重量%の1,3−ブタジエン・モノマー単位及び70%〜85重量%のスチレン・モノマー単位を含んでなる透明な高スチレンのスチレン−ブタジエン・ブロックコポリマーである。本発明において使用することができる透明なスチレン−ブタジエン・ブロックコポリマーの例としてはPhillips Petr
oleumからのK resin(R)及びBASFからのStyrolux(R)を挙げることができる。
【0029】
もう1つの態様に従うと、本発明で使用されるスチレン−ブタジエン・ブロックコポリマーは、双方ともASTM D 1003に従って測定されると91%の透過率及び3%のヘイズを有し、好ましくは、ASTM D 1003に従って測定されると91%の透過率及び2%のヘイズを有する。
【0030】
更にもう1つの態様に従うと、本発明で使用されるスチレン−ブタジエン・ブロックコポリマーは、ASTM D 790に従って1000MPaの曲げ弾性率、ASTM D
638に従って20MPaの引っ張り強さ、ASTM D 256Aに従って20J/mの23℃におけるノッチ付きアイゾット衝撃値、好ましくは、ASTM D 790に従って1200MPaの曲げ弾性率、ASTM D 638に従って25MPaの引っ張り強さ及びASTM D 256Aに従って20J/mの23℃におけるノッチ付きアイゾット衝撃値を有する。
【0031】
本発明により要求されるmPEを製造するために使用される触媒系はメタロセン成分、好ましくは、架橋メタロセン成分を含んでなる。架橋メタロセン成分は一般式:
R”(CR’MQz−2
[式中、(CR’)はシクロペンタジエニル又は置換シクロペンタジエニルであり、各R’は同一であるか又は異なりそして水素又は炭化水素基(例えば、アルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール又は、1〜20個の炭素原子を含むアリールアルキル基)であり、そして/又は2個の炭素原子が一緒になってC−Cリングを形成し、R”は置換又は未置換C−Cアルキリデン基、ジアルキル又はジアリールゲルマニウム又はシリコン又はアルキルホスフィン又は2個の(CR’)リングを架橋するアミン基であり、Qは炭化水素基(例えば、アリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリール又は、1〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル基、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基)又はハロゲンであり、相互に同一でも異なってもよく、kは4であり、Zは遷移金属の原子価であり、そしてMはグループIVb、Vb又はVIbの遷移金属、好ましくはグループIVbの遷移金属、もっとも好ましくはジルコニウムである]
の、当該技術分野で知られた任意の架橋メタロセン成分であることができる。
【0032】
1つの好ましい態様に従うと、架橋メタロセン触媒はエチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウム・ジクロリドである。
【0033】
本発明により必要とされるポリエチレンを製造するために使用されるメタロセン触媒は気相、溶液、スラリー又は高圧重合中に使用することができる。
【0034】
抗酸化剤、静電気抑制剤、防曇剤、抗−UV剤及びアンチブロッキング剤(antiblocking)又はスリップ添加剤のような標準的添加剤もまた本発明に従う配合物に添加することができる。所望される場合は、処理補助剤も添加することができる。
【0035】
本発明はまた、注型、ブロー成形又は塗膜(共)押し出し法により単層又は多層フィルムを製造するための本発明に従う均質配合物の使用を提供する。フィルムが多層フィルムである時は、少なくとも可剥性でなければならず、そして容器上にシールされる層が本発明の配合物に従って製造される。
【0036】
本発明は更に、
a)10%〜90重量%のmPE及び
5%〜40重量%の1,3−ブタジエン・モノマー単位及び60%〜95重量%のスチレ
ン・モノマー単位を含んでなる90%〜10重量%のスチレン−ブタジエン・ブロックコポリマー、
を含んでなる均質配合物を調製し、
b)段階aの配合物を注型、ブロー成形又は塗膜(共)押し出しする、
段階を含んでなる剥離性フィルムを製造する方法を提供する。
【0037】
本発明はまた、更に本発明に従う配合物から製造される剥離性フィルムを提供する。
【0038】
本発明はまた更に食品包装用途のための本発明に従う配合物から製造される剥離性フィルムの使用を提供する。
【0039】
本明細書中の前記に説明された配合物から生成される可剥性フィルムはまた、積層フィルム及びバリヤーフィルムの製造に使用することもできる。
【0040】
本発明に従って製造されるすべてのフィルムは、可剥性であるが、フィルムに何の損傷をも引き起こさずに、ポリプロピレン又はポリスチレン樹脂で製造された熱成形容器上に良好なシール適性を提供する。本発明に従う配合物で製造されるフィルムの剥離挙動は柔らかく、規則的である。フィルムはまた良好な感覚受容性及び光学的特性を有する。
[実施例]
【0041】
1.重合法及び製品の組成
本発明の配合物中に使用されるmPE(R1)の重合を液体−全スラリー(liquid−full slurry)ループ反応容器内で実施した。エチレンを触媒と一緒に1−ヘキセンとともに注入した。イソブタンを希釈剤として使用した。使用したメタロセン触媒は架橋メタロセンエチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウム・ジクロリドであった。
【0042】
ラジカル重合により製造された2種の低密度ポリエチレン樹脂、R2及びR3と比較した樹脂R1に関するデータは表1にまとめる。
【0043】
【表1】

【0044】
密度はASTM D 1505法に従って23℃で測定され、メルトインデックスはASTM D 1238法の条件190℃/2.16Kgに従って測定された。
【0045】
樹脂R1は0.60の長鎖分岐指数、LCBIを示した。R1のLCBIはASTM D 4440に従って測定された複素粘性率に一般化クロス方程式を当てはめることにより決定した。
2.配合物の調製
本発明に従う配合物B1を
・50重量%のmPE(R1)及び
・スチレン・モノマー単位の量が77.4重量%であり、1,3−ブタジエン・モノマー
単位の量が22.6重量%である、Atofinaにより販売される商標Finaclear(R)530として知られる透明なスチレン−ブタジエン・ブロックコポリマー50重量%、
を混合することにより調製した。
【0046】
Finaclear(R)530はまた、以下:
・ASTM D 1895−Bに従って0.62g/cmの23℃におけるかさ密度、・ASTM D 1238Gに従って11g/10分の200℃/5kgにおけるメルト・フロー・インデックス、
・ASTM D 1525に従って82℃の10N、50/時間のビカットA軟化点、
・ASTM D 648に従って67℃の120℃/時間、0.46MPaの加熱たわみ温度HDT、
・ASTM D 1003に従って91%の透過率、
・ASTM D 1003に従って2%のヘイズ、
・ASTM D 790に従って1200MPaの曲げ弾性率、
・ASTM D 638に従って25MPaの引っ張り強さ、
・ASTM D 638に従って200%を超える破断時の伸び、
・ASTM D 256Aに従って24J/mの−30℃におけるノッチ付きアイゾット 衝撃値及び
・ASTM D 256Aに従って20J/mの+23℃におけるノッチ付きアイゾット 衝撃値
を特徴として示す。
【0047】
対照配合物B2を50重量%のR2及び50重量%のFinaclear(R)530を混合することにより調製した。
【0048】
対照配合物B3を50重量%のR3及び50重量%のFinaclear(R)530を混合することにより調製した。
3.フィルム調製
フィルムは、樹脂R1からなる基層上に支持された配合物B1、B2又はB3からなるシール層を含んでなるブロー成形共押し出しフィルムであった。フィルムの全厚さは50μmであった。シール層の厚さは7μmであった。配合物B1、B2又はB3及びポリエチレン樹脂R1をCollin装置上で共押し出しし、フィルムにブロー成形した。
【0049】
配合物B1、B2又はB3に対する押し出しパラメーターは以下:
−押し出し温度:200℃
−ダイス温度:210℃
−スクリューの直径に対する長さの比率(L/D):25
であった。
【0050】
樹脂R1に対する押し出しパラメーターは以下:
−押し出し温度:210℃
−ダイス温度:210℃
−スクリューの直径に対する長さの比率(L/D):25
であった。
【0051】
フィルムを50mmのダイス、2.55の膨張比、1.2mmのダイス・ギャップ及び10℃の冷却空気温度を特徴とするブロー成形フィルムライン装置上でブロー成形した。
【0052】
フィルムF1を本発明に従う配合物B1から調製した。フィルムF2及びF3を対照配
合物B2及びB3から調製した。
【0053】
次にフィルムF1、F2及びF3をポリスチレンの乳製品容器上に170℃及び175℃で、そしてポリプロピレンの乳製品容器上に165℃及び170℃でヒートシールした。シール時間は1秒であり、シール圧力は3.5バール〜4バールの間からなった。シール機のシールバーとフィルムの間でシールする期間中、12μmの厚さのポリエチレンテレフタレートのフォイルを使用した。ヒートシール後、乳製品容器を50%の相対湿度下で23℃に維持した。
4.フィルムの特性
4.1剥離強さ
容器からフィルムのシール層を分離するために必要な力として定義される剥離強さを90°の剥離角度及び100mm/分の剥離速度でダイナモメター(dynamometer)で測定した。Newton(N)で表わされる剥離強さ(S2)を測定し、3種の試料の平均を基礎にした。剥離強さの外に、容器を最初に開けるために要する強さ(S1)及び、剥離後に容器からフィルムを完全に剥ぎ取るために要する強さ(S3)もまたNewton(N)で報告され、3試料の平均を基礎にされている。
【実施例1】
【0054】
本実施例においては、フィルムF1、F2及びF3をポリスチレン乳製品容器上に170℃及び175℃でシールした。S1、S2及びS3は表2に示される。
【0055】
【表2】

【0056】
本実施例はフィルムF1、F2及びF3がポリスチレンの乳製品容器に接着することを示す。そのシール層が本発明に従う配合物で製造されたフィルムF1の接着はシール温度を175℃に上昇させることにより改善することができたが他方、対照フィルムはこの温度で溶融し、破損した。
【実施例2】
【0057】
本実施例においてフィルムF1、F2及びF3はポリプロピレンの乳製品容器上に165℃及び170℃でシールされた。Newton(N)における幾つかの強さS1、S2及びS3を表IIIに示す。
【0058】
【表3】

【0059】
本発明に従う配合物で製造されたフィルムF1は対照配合物で製造されたものよりポリプロピレンの乳製品容器上により良い接着を示す。ポリプロピレンの乳製品容器上の対照フィルムF2及びF3の接着は低すぎるために容器の密封を確保しない。接着はヒートシール温度を上昇させることにより改善することができなかった。本実施例は本発明に従う配合物で製造されたフィルムの接着がシール層と容器の間に結合層(tie layer)のどんな使用をも回避するのに十分であることを示す。
4.2剥離性特性
実施例1及び2のフィルムの剥離性を評価した。
【0060】
ポリスチレンの乳製品容器上で、170又は175℃でシールされた後の本発明に従う配合物で製造されたフィルムの剥離性は優秀である。実際、剥離は規則的で、柔らかくそして容器の縁全体に沿って清浄であり、基層上に残るシール可能層に何の損傷をも引き起こさない。
【0061】
ポリスチレンの乳製品容器上に170℃でシールされた後に対照配合物で製造されたフィルムが剥離されると、シール層が容器の縁の幾つかの部分に残留することが観察される。実際、基層からのシール可能層の剥離が存在する。容器の縁の他の部分にはフィルムの破れが認められる。175℃でシールされると、フィルムの全体的破損が起る。
【0062】
ポリプロピレンの乳製品容器上で、165℃でシールされた後の本発明に従う配合物で製造されたフィルムの剥離性は規則的で、柔らかい。同一条件下の、対照配合物で製造されたフィルムの剥離性は弱すぎる。更に乳製品容器の縁上の幾つかの部分にはフィルムの破れが存在する。
【0063】
ポリプロピレンの乳製品容器上に170℃でヒートシールされた後のフィルムの剥離性に関して、本発明に従う配合物で製造されたフィルムの剥離性は柔らかく、規則的なままである。対照配合物R3/SBSで製造されたフィルムの剥離性は引っ張る動作について不規則で弱すぎる。この場合、更に乳製品容器の縁上の幾つかの部分にフィルムの破損を認める。
4.3感覚受容性
7人による味覚パネル試験を、本発明の配合物から又は対照配合物から製造された8グラムのペレットと4時間接触させた250mlの水に対してAfnor認可NF114、2001年、1月、2.5.2に従って実施した。次にペレットを水から分離した。次に
前記の水を1/3、1/2及び2/3の新鮮な水で更に希釈して、4種の試料を得た。各試料につき味を検出した。ペレットから分離された水に対してパネルが味を検出しなかった時にゼロの評価を与えることができる。ペレットから分離された後に、1/3の新鮮水で更に希釈された水に対してパネルが味を検出した時には0.5の評価を与えることができる。ペレットから分離した後に1/2の新鮮水で更に希釈された水に対してパネルが味を検出した時には1の評価を与えられ、そしてペレットから分離後に、2/3の新鮮水で更に希釈された水に対して味を検出した時には2の評価を与えることができる。結果は表IVに示す。
【0064】
【表4】

【0065】
4.4光学特性
フィルムF1、F2及びF3の光学的特性を測定し、表Vに与える。光沢をASTM D−2457に従ってByk−Gardnerマイクロ−光沢反射率計で45°の角度で測定し、ヘイズをASTM D−1003に従ってByk−Gardner Hazegard(R)装置で測定した。
【0066】
【表5】

【0067】
ヘイズはシール可能な層として本発明に従う配合物を含んでなるフィルムで改善される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10%〜90重量%のメタロセンで触媒されたポリエチレン(mPE)並びに、5%〜40重量%の1,3−ブタジエン・モノマー単位及び60%〜95重量%のスチレン・モノマー単位を含んでなる、90%〜10重量%のスチレン−ブタジエン・ブロックコポリマー、を含んでなる均質配合物。
【請求項2】
メタロセンが架橋メタロセン触媒である請求項1記載の均質配合物。
【請求項3】
双方ともASTM D 1003に従って測定されたとき、スチレン−ブタジエン・ブロックコポリマーが91%の透過率及び3%のヘイズを有する請求項1又は請求項2記載の均質配合物。
【請求項4】
a)請求項1、2又は3に定義されたような均質配合物を調製し、
b)段階aの均質配合物を注型、ブロー成形又は塗膜(共)押し出しする、
段階を含んでなる可剥性フィルムを製造する方法。
【請求項5】
請求項4の方法に従って製造された可剥性フィルム。
【請求項6】
可剥性フィルムを製造するための請求項1、2又は3に定義されたような均質配合物の使用。
【請求項7】
食品包装の用途のための請求項5記載のフィルムの使用。

【公表番号】特表2009−513745(P2009−513745A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518222(P2006−518222)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051388
【国際公開番号】WO2005/005540
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】