説明

剥離溶液を用いた感光体コーティングの除去方法

【課題】本発明の目的は、電子写真感光体の基材を傷つけることなく、当該基材上に配置されたコーティング層を容易に除去することが可能な方法を提供することである。
【解決手段】本発明の剥離溶液を用いた感光体コーティングの除去方法は、複数のコーティング層が基材上に配置された電子写真感光体において、複数のコーティング層を電子写真感光体の基材から分離する方法であって、電子写真感光体を、硝酸、フッ化水素酸、塩酸、リン酸、硫酸、シュウ酸、酢酸、炭酸、乳酸、蟻酸、リンゴ酸、フタル酸、又はそれらの混合物を含む剥離溶液に浸漬し、複数のコーティング層を剥離溶液で劣化させ、基材のいかなる部分をも劣化又は腐食させることなく、複数のコーティング層を基材から分離することを含む方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体コーティングが電子写真感光体の基材上に配置された場合に、基材から感光体コーティングを除去する方法に関する。特に、本発明は、基材からコーティングを分離する剥離溶液を、電子写真感光体に施すことを包含する感光体コーティング除去方法を開示するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の1つの態様は、電子写真感光体をリサイクル又は再生するための方法を提供するものである。
【0003】
電子写真において、剛直なドラム形式の感光体用基材は、真直性・真円性、最適な表面反射率・表面粗さ、及び所望の厚さに関して、高い寸法精度で製造されることが求められる。このような寸法精度を得るために、基材表面を、サンドブラスタリング、ガラスビーズホーニング、又はダイアモンドツール等を用いて、高精度に磨く。基材表面を形成したら、少なくとも1つの感光性材料のコーティングを基材に塗布し、電荷発生層及び電荷輸送層を設け、又はこれらを混合して単一層にし、感光体装置の完成品を作製することができる。
【0004】
作製された感光体装置は、複写機又はプリンタ内で良好な電気及び機械性能を有することが期待される。しかし、感光体装置は複写機又はプリンタの品質要求に合わせねばならないが、製造処理が複雑であるために、いくつかの感光体装置で各種欠陥の発生を回避することはできない。欠陥装置は廃棄せねばならない。また、いくつかの感光性装置は使用寿命を制限してきた。感光体装置が機械内で良好に機能することができなくなれば、これも装置の使用寿命の終わりである。この使用済みの感光体装置は、通常、欠陥装置を処理する方法と同じ方法で処分された。装置の処分は、非常にコスト高で多くの環境問題を引き起こし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4775605号明細書
【特許文献2】米国特許第5656407号明細書
【特許文献3】米国特許第5641599号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、例えば、基材組織を傷つけることなく感光性層又はコーティング層を除去して使用できない感光体装置をリサイクルすることで、電子写真感光体を再生するコストを減らす必要がある。これは、感光体製造コストを減らすだけでなく、装置に関連する全ての材料を処分するコストを低減するものである。
即ち、本発明の目的は、電子写真感光体の基材を傷つけることなく、当該基材上に配置されたコーティング層を容易に除去することが可能な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで例示される態様によれば、複数のコーティング層が基材上に配置される場合において、複数のコーティング層を電子写真感光体の基材から分離する方法を提供し、この方法は、電子写真感光体に剥離溶液を作用させて、複数のコーティング層を基材から分離することを包含する。ここで、剥離溶液は、硝酸、フッ化水素酸、塩酸、リン酸、硫酸、シュウ酸、酢酸、炭酸、乳酸、蟻酸、リンゴ酸、フタル酸、又はそれらの混合物であることが好ましい。
なお、画像形成部材、その層及び個々の構成を記載するために使用される用語は、それぞれ、当業者に公知の代替表現と互換的に使用できる。ここで使用される用語は、このような全ての代替表現を網羅することを意図する。
【0008】
ある実施の形態では、電子写真感光体は、基材の少なくとも一方端に粘着固定されたフランジを備え、開示される方法は、フランジを基材から分離することを包含する。
【0009】
ある実施の形態では、剥離溶液を作用させる工程(ステップ)、或いは剥離溶液を施す工程は、電子写真感光体を剥離溶液中に浸漬することを包含する。ある実施の形態では、剥離溶液は硝酸からなる。硝酸は、約5重量%〜約90重量%、又は約35重量%〜約80重量%の濃度を有してもよい。剥離溶液は、さらに、スルファミン酸アンモニウムを含んでもよい。スルファミン酸アンモニウムは、5重量%以下の濃度を有してもよい。剥離溶液は、さらに、酸化剤を含んでもよい。酸化剤は、20重量%以下の濃度を有してもよい。酸化剤は、過酸化水素であってもよい。
【0010】
ある実施の形態では、剥離溶液を作用させる工程において、カソード電流を基材に印加する。また、カソード電流は、10〜100アンペア/平方フィートの密度である。また、電子写真感光体を剥離溶液中に約1分間〜約10時間浸漬することができる。ある実施の形態では、剥離溶液を20℃〜98℃の範囲の温度に維持してもよい。ある実施の形態では、基材の厚さは約0.25〜約5mmである。ある実施の形態では、基材は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、スチール、又は銅から形成される。
【0011】
また、複数のコーティング層は、以下の層:アンダーコート層、電荷発生層、電荷輸送層、オーバーコート層、及び電荷輸送層と電荷発生層とを組み合わせた単一の画像形成層の1以上を含む。複数のコーティング層は、さらに、基材上に配置された粘着性層を含んでもよい。
【0012】
開示する実施の形態は、複数のコーティング層が基材上に配置される場合において、複数のコーティング層を電子写真感光体の基材から分離する方法を提供し、この方法は、電子写真感光体を剥離溶液に浸漬し、ここで剥離溶液は、硝酸、フッ化水素酸、塩酸、リン酸、硫酸、シュウ酸、酢酸、炭酸、乳酸、蟻酸、リンゴ酸、フタル酸、又はそれらの混合物を含み、複数のコーティング層を剥離溶液で劣化させ、複数のコーティング層を基材から分離することを包含する。
【0013】
さらに、開示する実施の形態は、複数のコーティング層が基材上に配置される場合において、複数のコーティング層を電子写真感光体の基材から分離する方法を提供し、この方法は、電子写真感光体を剥離溶液に浸漬し、複数のコーティング層を剥離溶液で劣化させ、基材のいずれの部分をも劣化又は腐食させることなく複数のコーティング層を全体的に基材から分離することを包含する。ここで、剥離溶液は硝酸を含む。
【0014】
また、剥離溶液中に空気をバブリングして、コーティング層及び基材と接触する他の粘着性材料の劣化処理を促進させてもよい。或いは、超音波エネルギーを剥離溶液に印加して、コーティング層及び粘着性材料の劣化を促進してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態である電子写真感光体の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態である電子写真感光体の各層を示す図である。
【0016】
特に記載しない限り、異なる図面中の同じ番号は同一又は類似のものを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は、電子写真感光体の一例を示す図であって、感光体ドラムと各種層の構造を示す。図1に示されるように、電子写真感光体は、筒状感光体ドラム10と、フランジ11、12とを備え、フランジ11、12は、それぞれ感光体ドラム10の各端部の開口に取り付けられている。外側のフランジ11及び内側のフランジ12は、筒状カウンタボア17の端部にエポキシ接着剤を用いて取り付けられる。内側のフランジ12は、ベアリング14、グランドストラップ15、及びドライブギア16から構成される。いくつかの設計では、いずれかのフランジが、グランドストラップ、ドライブギア、及びベアリングを備えてもよく、又は2つのフランジ間、例えば、ベアリングシャフトと接触するバネを有するフランジと、基材内表面と接触するフリクションを有するフランジとの間で機能を分けてもよい。電子写真感光体を構成する部材層13を以下に記載する。図2に部材層13を示す。
【0019】
図2は、各種層を備える典型的な電子写真感光体を示す図である。積層電子写真感光体又は画像形成部材は、少なくとも2つの層を備え、例えば、導電性基材、アンダーコート層、任意の粘着性層、電荷発生層、電荷輸送層、任意のオーバーコート層を備える。多層構造では、感光体の活性層は、アンダーコート層、電荷発生層(CGL)及び電荷輸送層(CTL)である。これらの層間における電荷輸送を促進することで、より良好な感光体機能を提供する。オーバーコート層は、一般的に、機械的耐久性及び耐引っ掻き性を向上させて、感光体装置の寿命を伸ばすために備えられる。
【0020】
導電性基材は、各種金属、例えば、アルミニウム、ニッケル、スチール、銅など、又は導電性物質、例えば、炭素、金属パウダー等を充填したポリマー状材料など、又は有機導電性材料であってもよい。ある実施の形態では、導電性基材は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成される。
【0021】
電気的絶縁性又は導電性基材は、柔軟な無端ベルト、ウェブ、剛直な筒、シート等の形態であってもよい。基材層の厚さは、所望強度や経済的問題(コスト)を含む多くの要因に依存する。したがって、ドラム形態において、基材層は、例えば、実質的な厚さが数cm以下で、最小の厚さが1mm以下であってもよい。同様に柔軟なベルト形態の場合は、最終的に電子写真装置に悪影響を与えないならば、例えば、実質的な厚さが約250μmで、最小の厚さが50μm以下であってもよい。ドラム基材の壁厚は、感光体装置の物理的要求を満たすように、少なくとも約0.25mmで製造される。基材の厚さは、例えば、約0.25mm〜約5mm、或いは約0.5mm〜約3mm、或いは約0.9mm〜約1.1mmであるが、基材の厚さはこれらの範囲外でもよい。
【0022】
基材表面は、好適な方法、例えば、ダイアモンド旋削、冶金磨き、ガラスビーズホーニング等、又はダイアモンド旋削に次いで冶金磨き又はガラスビーズホーニングを組み合わせた方法により磨かれて、鏡面仕上げされる。表面反射は、印刷物の中間調領域に合板パターンを出現させ、表面反射率を最小にすることで、この表面反射によって生じる欠陥を取り除くことができる。所定の表面粗さ、例えば、5μmを越えると、装置全体にわたって不所望で不均一な電気特性を引き起こすおそれがあり、劣悪な画像品位につながる。ある実施の形態では、基材の表面粗さは、1μm以下、又は0.5μm以下に制御される。
【0023】
基材層が非導電性である場合には、その表面を導電性コーティング2によって導電性にする必要がある。導電性コーティングの厚さは、光学的透明性、所望の柔軟性の程度、及び経済的要因に依存して、実質的に幅広い範囲にわたって変更してもよい。
【0024】
ある実施の形態では、装置の所望の機械特性を達成するために、粘着性層を導電性基材上に塗布して、画像形成膜と基材との粘着性を改良してもよい。
【0025】
アンダーコート層4は、基材1上に、又は導電性コーティング2がある場合は導電性コーティング2上に設けられる。例えば、アンダーコート層の厚さは、約0.1nm〜約30μm、或いは約1nm〜約20μmである。ブロッキング層は、いずれの好適な常套の技術、例えば、スプレイング、ディップコーティング、ドローバーコーティング、グラビアコーティング、シルクスクリーニング、エアナイフコーティング、リバースロールコーティング、真空蒸着、化学処理等によって塗布されてもよい。薄層を得るのに便利なので、ブロッキング層は、希釈溶液の形態で塗布されて、コーティングの成膜後に、常套の技術、例えば、真空、加熱等によって溶媒が除去される。一般的に、ホールブロッキング層材料と溶媒の重量比が約0.05:100〜約0.5:100であれば、スプレイコーティングで十分対応できる。
【0026】
少なくとも1つの画像形成層9は、粘着性層5又はアンダーコート層4上に形成される。画像形成層9は、当業者に公知であるように、電荷発生と電荷輸送との両方の機能を実行する単一層であってもよいし、複数層、例えば、電荷発生層6、電荷輸送層7、及び任意のオーバーコート層8を備えてもよい。
【0027】
電荷発生層6は、アンダーコート層4に対して塗布してもよい。電荷発生/光導電性材料を含むものであれば、いずれの好適な電荷発生層を用いてもよく、電荷発生/光導電性材料は、例えば、粒子が不活性樹脂等のフィルム形成バインダ中に分散された形態であってもよい。電荷発生材料としては、例えば、アモルファスセレン、三方晶系セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ヒ素、ヒ化セレン、及びそれらの混合物からなる群より選択されるセレン合金等の無機光導電性材料、X型の金属フリーフタロシアニン等の各種フタロシアニン顔料、バナジルフタロシアニン、銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、チタニルフタロシアニン)、キナクリドン、ジブロモアンタンスロン顔料、ベンズイミダゾールペリレン、置換2,4−ジアミノ−トリアジン、多核芳香族キノン、ベンズイミダゾールペリレン等、及びそれらの混合物等の有機光導電性材料が挙げられ、これらがフィルム形成ポリマー状バインダ中に分散される。セレン、セレン合金、ベンズイミダゾールペリレン等、及びそれら混合物は、均一な連続電荷発生層として形成されてもよい。光導電性材料が電荷発生層の特性を向上させ又は低下させる場合には、複数の電荷発生層組成物を用いてもよい。また、必要なら、業界で公知の他の好適な電荷発生材料を用いてもよい。選択される電荷発生材料は、電子写真画像形成法における潜像放射線露光工程時において、約400〜約900nmの間の波長を有する活性放射線に感応して、静電潜像を形成するものが好ましい。例えば、ヒドロキシガリウムフタロシアニンは、約370〜約950nmの波長の光を吸収する。
【0028】
ここで示される光導電体用の多くのチタニルフタロシアニン、又はオキシチタンフタロシアニンは、800nm付近の近赤外光を吸収する光発生顔料として知られており、他の顔料、例えば、ヒドロキシガリウムフタロシアニンに比べて、改良された感応性を有するものである。一般的に、チタニルフタロシアニンは、主に、タイプI、II、III、X、及びIVの5つの結晶形態を有することが知られている。
【0029】
いずれの好適な不活性樹脂材料を電荷発生層6のバインダとして使用してもよい。有機樹脂バインダは、熱可塑性及び熱硬化性樹脂、例えば、1以上のポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルホン、ポリブタジエン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、アミノ樹脂、酸化フェニレン樹脂、テレフタル酸樹脂、エポキシ樹脂、フェノール性樹脂、ポリスチレンとアクリロニトリルのコポリマー、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマー、アクリレートコポリマー、アルキド樹脂、セルロース性フィルムフォーマ、ポリ(アミドイミド)、スチレン−ブタジエンコポリマー、塩化ビニリデン/塩化ビニルコポリマー、酢酸ビニル/塩化ビニリデンコポリマー、スチレン−アルキド樹脂等を含む。他のフィルム形成ポリマーバインダは、PCZ−400(ポリ(4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−1−1−シクロヘキサン)であり、これは40,000の粘度平均分子量を有し、三菱ガス化学社(東京、日本)から入手可能である。
【0030】
電荷発生材料は、樹脂状バインダ組成物中に様々な量で存在してもよい。一般的に、少なくとも約5体積%〜約90体積%以下の電荷発生材料を、少なくとも約10体積%〜約95体積%以下の樹脂状バインダ中に分散させ、より好ましくは、少なくとも約20体積%〜約60体積%以下の電荷発生材料を、少なくとも約40体積%〜約80体積%以下の樹脂状バインダ組成物中に分散させる。
【0031】
ある実施の形態では、電荷発生層6の厚さは、約10nm〜5μm、或いは約20nm〜1μmである。
【0032】
電荷輸送層7は、電荷輸送材料が電気的に不活性なフィルム形成ポリマー、例えば、ポリカーボネート中に溶解又は分子レベルで分散してなるものでもよい。いずれの好適な電荷輸送又は電気的に活性な材料を電荷輸送層に用いてもよい。電荷輸送材料という表現は、電荷発生層で光発生させたフリーの電荷を、輸送層を越えて輸送し、感光体膜表面に到達させることができる分子として定義される。典型的な電荷輸送分子には、例えば、ピラゾリン(例えば、1−フェニル−3−(4’−ジエチルアミノスチリル)−5−(4’’−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン)、トリアリールアミン(例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン)、ヒドラゾン(例えば、N−フェニル−N−メチル−3−(9−エチル)カルバジルヒドラゾン及び4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,2−ジフェニルヒドラゾン)、オキサジアゾール(例えば、2,5−ビス(4−N,N’−ジエチルアミノフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール)、及びスチルベン等がある。
【0033】
電荷輸送層の厚さは、約0.5μm〜約50μm、或いは電荷輸送層の厚さは約15μm〜約35μmである。
【0034】
実施の形態は、複数のコーティング層を電子写真感光体の基材から分離する方法を提供する。電子写真感光体が感光体ドラムの端部に配置されたフランジを有する場合には、実施の形態は、複数のコーティング層及び1以上のフランジを電子写真感光体の基材から分離する方法を提供する。この方法は、電子写真感光体に剥離溶液をさらして(作用させて)、複数のコーティング層及び/又はフランジを電子写真感光体から分離することを包含する。ある実施の形態では、この方法は、電子写真感光体を剥離溶液に浸漬し、複数のコーティング層を電子写真感光体から分離することを包含する。
【0035】
画像形成部材の他の層には、例えば、任意のオーバーコート層8がある。必要により、任意のオーバーコート層8を電荷輸送層7上に配置して、画像形成部材表面を保護するとともに耐磨耗性を改良してもよい。実施の形態では、オーバーコート層8は、約0.1μm〜約10μm、又は約1μm〜約10μm、或いは約3μmの厚さを有してもよい。これらのオーバーコーティング層には、例えば、電気的に絶縁性又は僅かに半導電性の熱可塑性有機ポリマー又は無機ポリマーが含まれる。例えば、オーバーコート層は、樹脂中に粒子添加剤を含む分散体から作成されてもよい。オーバーコート層に好適な粒子添加剤としては、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム)、非金属酸化物(例えば、シリカ又は低表面エネルギーのポリテトラフルオロエチレン(PTFE))、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適な樹脂としては、光発生層及び/又は電荷輸送層に好適であるとして上で記載されるもの、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマー、カルボキシル変性塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー、ヒドロキシル変性塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー、カルボキシル及びヒドロキシル変性塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリスルホン、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、アミノ樹脂、酸化フェニレン樹脂、テレフタル酸樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、フェノール性樹脂、ポリスチレン及びアクリロニトリルコポリマー、ポリ−N−ビニルピロリジノン、アクリレートコポリマー、アルキド樹脂、セルロース性フィルムフォーマ、ポリ(アミドイミド)、スチレン−ブタジエンコポリマー、塩化ビニリデン−塩化ビニルコポリマー、酢酸ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、スチレン−アルキド樹脂、ポリビニルカルバゾール、及びそれらの組み合わせがある。オーバーコート層は、連続で少なくとも約0.5μm〜10μm以下の厚さを有してもよく、或いは少なくとも約2μm〜6μm以下の厚さを有してもよい。
【0036】
ここで提供される剥離溶液は、感光体コーティング層(粘着性層を含む感光体に含まれる層)を劣化させ、基材にフランジを取り付けている残留接着剤(残留フランジ接着剤)の粘着性を弱める。ある実施の形態では、剥離溶液は、実質的に又は完全に残留フランジ接着剤を除去する。実施の形態では、剥離溶液は、基材表面に必要最小限の効果を与え、いかなる基材の露出部分をも害さない。なぜなら、剥離溶液は、基材を形成する成分を溶解しないからである。また、剥離溶液は、基材又はカウンタボアの寸法特性にも影響を与えない。
【0037】
剥離溶液は、酸を含む。剥離溶液に用いられる酸としては、これに限定されないが、硝酸、フッ化水素酸、塩酸、リン酸、硫酸、シュウ酸、酢酸、炭酸、乳酸、蟻酸、リンゴ酸、フタル酸、及びそれらの混合物がある。ある実施の形態では、剥離溶液は硝酸を含む。酸の濃度は、一般的に、約1重量%〜約90重量%の範囲内である。ある実施の形態では、酸の濃度は、約10重量%〜約80重量%、又は30重量%〜約70重量%、又は45重量%〜約65重量%、又は約65重量%である。
【0038】
剥離溶液は、共溶媒を含んでいてもよく、これは剥離溶液の約1重量%〜約70重量%の範囲の濃度で存在してもよい。共溶媒の例には、例えば、水、メタノール及びエタノール、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、キシレン、及びそれらの混合物がある。
【0039】
いくつかの場合には、毒性の酸性ガス、一酸化窒素(NO)及び二酸化窒素(NO2)を含む窒素酸化物(NOx)が、電子写真感光体と剥離溶液との接触処理時に形成され得る。
【0040】
少量のスルファミン酸アンモニウム、イミダゾール誘導体、グアニジン誘導体、アミン、及びその混合物を剥離溶液に添加して、剥離処理の効果を変えることなく、NOxの放出を抑制することができる。添加されるスルファミン酸アンモニウム、イミダゾール誘導体、グアニジン誘導体、アミン、及びそれらの混合物の量は、一般的に、約10重量%以下である。典型的に、この量は5重量%以下、例えば、3重量%、又は1重量%、又は0.5重量%、又は0.1重量%、又は0重量%である。ある実施の形態では、スルファミン酸アンモニウムを剥離溶液に添加する。例えば、スルファミン酸アンモニウムの量は、約10重量%以下、又は約5重量%以下である。
【0041】
酸化剤を剥離溶液に添加して、コーティング層及び基材と接触する他の粘着性材料の劣化処理を促進する機能を果たすガスの気泡を発生させてもよい。酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過炭酸ナトリウム、過炭酸カルシウム、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、過酸化カルバミド、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、硝酸鉄(III)、及びそれらの混合物がある。ある実施の形態では、剥離溶液は過酸化水素を含む。酸化剤の含有量は、一般的に、20重量%以下、より好ましくは、10重量%以下であり、或いは約0重量%〜10重量%の範囲である。
【0042】
また、剥離溶液中にガスの気泡を発生させる別の手法を本発明に適用してもよい。例えば、剥離溶液中に空気をバブリングすることは、剥離溶液中に酸化剤を添加するのと同じ効果があるものと考えられる。又はオゾン発生器を用いて剥離溶液中にオゾンを発生させてもよい。
【0043】
或いは、剥離溶液にガスの気泡を発生させるのに加えて、振動エネルギー、例えば、超音波エネルギーを剥離溶液に印加し、コーティング層及び粘着性材料の破壊を促進してもよい。ある実施の形態では、超音波浴をコーティング除去処理時に使用してもよく、超音波浴は熱と振動を提供して、コーティング層及び粘着性材料の破壊を促進する。
【0044】
本発明の方法は、カソード電流を用いてもよく、これを基材に印加することができる。即ち、剥離溶液に浸漬した基材に対して、カソード電流を印加する。カソード電流は、基材の表面上に水素ガスを発生させ、この水素ガスはコーティング及び粘着性材料に容易に浸透して基材表面の金属酸化物を減らし、これによってコーティングの粘着性をより早急に劣化させ、コーティング及び粘着性材料の除去を促進する。ある実施の形態では、カソード電流をアルミニウム基材に印加する。さらなる実施の形態では、カソード電流をアルミニウム基材に印加し、アルミニウム基材表面の酸化アルミニウムを減少させる。典型的に、カソード電流密度は、10〜100アンペア/平方フィートの範囲であり、これは剥離溶液の温度と酸濃度に非常に依存する。
【0045】
剥離溶液の温度を室温又は、室温以下に維持してもよい。また、剥離溶液の温度を上げて、コーティング層の溶解又は劣化を改良し、フランジと基材との接触を維持している粘着性材料の凝集力を低減してもよい。例えば、剥離溶液の温度は20℃〜98℃、或いは35℃〜85℃の範囲内に維持される。一般的に、剥離溶液の温度は、感光体コーティングの除去処理速度に影響する。
【0046】
コーティング及び粘着性材料の粘着力を劣化させるのに必要な時間、即ち電子写真感光体に剥離溶液を施す時間は変化し、これは、前述の要因のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせに依存する。この要因には、例えば、硝酸濃度、スルファミン酸アンモニウム濃度、酸化剤濃度又はバブリングガスの流速、超音波エネルギーの存在、剥離溶液の温度、カソード電流の存在とその密度がある。一般的に言えば、剥離溶液の温度が高く、酸濃度が高く、酸化剤濃度が高く、超音波エネルギーが存在し、又はカソード電流が存在するほど、電子写真感光体に剥離溶液を施す際のコーティング及び粘着性材料の粘着力を劣化させるための時間は短くなる。温度は、浸漬時間の長さに影響する最も強い要因である。電子写真感光体を剥離溶液に浸漬する時間は、典型的に、約1分間〜約10時間の範囲内である。ある実施の形態では、電子写真感光体を剥離溶液に浸漬する時間は、約5分間〜約2時間である。別の実施の形態では、電子写真感光体を剥離溶液に浸漬する時間は、約1時間以下である。
【0047】
本発明のある実施の形態によれば、複数のコーティング層、及びフランジを基材に取り付ける粘着性材料の粘着力を劣化させる際に、電子写真感光体を剥離溶液内に配置し、約5分間〜約5時間浸漬させてもよい。剥離溶液浸漬後、基材から複数のコーティング層を剥ぎ取ることによって、又は複数のコーティング層を削り取ることによって、複数のコーティング層を基材から分離してもよい。フランジが存在するなら、剥ぎ取る、削り取る、及び除去する動作を手作業で、又は道具、例えば、カミソリ、ドクターブレード、スカイブ、ブラシ、洗浄パッドを用いて行うことで、フランジを基材から分離してもよい。フランジを、回しながら引っ張る力をグリッパに与えることによって、又は一方端にバー又はロッドを差し込むことにより衝撃を与えることによって、除去してもよい。コーティング層を部分的に又は完全に劣化させてもよい。典型的には、フランジを部分的に劣化させ、剥離溶液浸漬後に再使用できなくてもよい。
本発明を以下の実施例及び比較例を参照してさらに詳細に記載する。ここで使用される「部」及び「%」は全て、特に記載しない限り、重量部及び重量%を意味する。
【実施例】
【0048】
本発明のいくつかの例示的剥離溶液条件を以下の実施例で検討した。
【0049】
コーティング欠陥があったために、アンダーコート層、電荷発生層及び電荷輸送層を備えるアルミニウム基材からなるドラム形式の電子写真感光体を製造ラインから抜き取り、55%の硝酸と0%の過酸化水素を含有する剥離溶液に浸漬した。剥離溶液の温度を55℃に維持した。浸漬時間(1時間以下)経過後には、全てのコーティング層は劣化しアルミニウム基材から取り除かれた。洗浄及び乾燥後、洗浄されたドラムは検出可能な寸法変化を有さなかった。
【0050】
ゼロックス感光体ドラム(30mm直径×355mm)を455gの濃硝酸(即ち、70%の硝酸)に1時間浸漬した。硝酸の温度を60℃〜70℃に維持した。35分の浸漬時間経過後には、アンダーコート層、電荷発生層、及び保護オーバーコート層を含む電荷輸送層は劣化し、アルミニウム基材から取り除かれた。洗浄及び乾燥後、基材は寸法変化を示さなかった。
【0051】
感光体の使用寿命が終了したために、フランジを備える電子写真感光体ドラムをゼロックス複写機から取り外し、65%の硝酸と1%のスルファミン酸アンモニウムを含有する剥離溶液に浸漬した。剥離溶液の温度を80℃に維持した。1時間の浸漬時間経過後には、アンダーコート層、電荷発生層及び電荷輸送層、及び保護オーバーコート層は劣化し、アルミニウム基材から取り除かれた。フランジも手で簡単に取り除かれた。洗浄及び乾燥後、基材は測定可能な寸法変化を示さなかった。
【符号の説明】
【0052】
1 基材、2 導電性コーティング、4 アンダーコート層、5 粘着性層、6 電荷発生層、7 電荷輸送層、8 オーバーコート層、9 画像形成層、10 感光体ドラム、11、12 フランジ、13 部材層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコーティング層が基材上に配置された電子写真感光体において、複数のコーティング層を電子写真感光体の基材から分離する方法であって、
硝酸を含む剥離溶液を電子写真感光体に作用させて、
複数のコーティング層を基材から分離することを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
剥離溶液を作用させる工程で、カソード電流を基材に印加することを含み、
当該カソード電流が10〜100アンペア/平方フィートの密度である方法。
【請求項3】
複数のコーティング層が基材上に配置された電子写真感光体において、複数のコーティング層を電子写真感光体の基材から分離する方法であって、
電子写真感光体を、硝酸、フッ化水素酸、塩酸、リン酸、硫酸、シュウ酸、酢酸、炭酸、乳酸、蟻酸、リンゴ酸、フタル酸、又はそれらの混合物を含む剥離溶液に浸漬し、
複数のコーティング層を剥離溶液で劣化させ、
基材のいかなる部分をも劣化又は腐食させることなく、複数のコーティング層を基材から分離することを含む方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
剥離溶液中の酸は、約5重量%〜約90重量%の濃度を有する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−2829(P2011−2829A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132934(P2010−132934)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】