説明

剥離補助貼付材及び剥離補助貼付材の使用方法

【課題】粘着シートの粘着剤層に触れることなく、粘着シートを被着面から剥離し、安全に廃棄することのできる剥離補助貼付材を提供する。
【解決手段】剥離補助貼付材は、シート状基材の片面の少なくとも一部に第一の接着層が設けられ、この片面の残りの領域に第二の接着層が設けられていて、第一の接着層と第二の接着層とでシート状基材の片面の実質全領域が占められており、かつ、第一の接着層が、法規制薬物と反応して薬効を消失させる反応性化合物を含有し、第一の接着層の大きさと第二の接着層の大きさとがそれぞれ被着面に貼着される粘着シートの大きさよりも大きい貼付材であって、粘着シートを被着面から剥離することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着面に貼着している粘着シートを剥離除去することができる剥離補助貼付材とその使用方法に関し、例えば、被着面に貼着している貼付製剤を該貼付製剤の経皮吸収性薬物含有粘着剤層に触れることなく被着面から剥離するとともに安全に廃棄するために用いて好適な剥離補助貼付材とその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、人や動物などに医療用薬物を投与するための剤型の一つとして皮膚貼付型の貼付製剤があり、取り扱いが容易なことや適用可能な薬物が拡大してきたことなどにより、近年、注目を集めている。
【0003】
この貼付製剤とは、シート状もしくはフィルム状の支持体の片面に経皮吸収性薬物を含有する粘着剤層を設けた製剤であり、その粘着剤層には、通常、粘着剤層を保護するためのセパレータが積層されている。
【0004】
このような貼付製剤により患者に経皮吸収性薬物を投与する場合、上記セパレータを剥離して粘着剤層を露出させ、その露出した粘着剤層を患者の皮膚に貼着する。このような簡便な作業により皮膚表面に貼り付けられた貼付製剤から、貼着している間中、安定的かつ持続的に経皮吸収性薬物を患者に投与することができる。
【0005】
前記貼付製剤用の経皮吸収性薬物としては、現在では、硝酸イソソルビドやニトログリセリンなどの狭心症治療薬、ツロブテロールなどの高血圧治療薬、リドカインなどの麻酔薬、エストラジオールなどのホルモン薬、そしてモルヒネやフェンタニルなどの麻薬性鎮痛薬、各種ステロイド薬、非ステロイド薬などの特定治療薬が用いられ始めている。これら特定治療薬は、患者以外が吸収することを厳重に防止しなければならない薬物である。すなわち、このような各種治療用薬物は、患者に対しても投与量を厳格に規定しなければならないし、患者以外の者が吸収してしまうことは危険であり、その貼付時にも剥離廃棄時にも、厳重な注意が必要とされている。
【0006】
このように治療用の貼付製剤に含まれる薬物は医薬品であり、各製剤毎に薬物の種類や含有量、適用時間が規定されている。そのため、被着面に貼付した貼付製剤は、所定の時間が経過した後、剥離するか、新しい貼付製剤に貼り替える必要がある。この貼付製剤の剥離作業もしくは貼り替え作業において、貼り替え作業者が貼付製剤の粘着剤層に触れた場合、その粘着剤層に残留している各種薬物が作業者の体内に吸収される虞がある。
【0007】
一般的な湿布剤などを剥がす場合は、湿布剤の周辺部を指でめくり、めくり上がった部分を指でつまんで被着面から剥離し、その後、折り畳んで廃棄するという作業が行われている。しかし、特定の医薬を投与するための貼付製剤の場合に同様の作業をすると、指先で貼付製剤の粘着剤層を触ることになり、粘着剤層中に残留する経皮吸収性薬物が指先から吸収されてしまうことになる。
【0008】
貼付製剤にはセパレータと呼ばれる剥離フィルムが貼られており、このセパレータを剥がして粘着剤層を露出し、皮膚面に貼り付けることになるが、現在、このセパレータには、背割りと呼ばれる切込み線が施されており、粘着剤層に触れることなく、貼付製剤を貼り付けることができるようになっている。しかし、貼付製剤の剥離に関しては、粘着剤層に触れずに剥離することが困難である。
【0009】
貼付製剤の粘着剤層に指が触れないように貼り替え作業を行うために、例えば、手袋やピンセットなどを用いて作業することが一部で行われている。しかし、貼付製剤を剥離する作業は指先の感覚に頼る作業であるため、手袋やピンセットを用いると手際よく作業を行うことが難しく、さらに、ピンセットなどを使った場合には、皮膚をつかんだり、突っついたりすることがある。
【0010】
このように貼付製剤の剥離作業には、患者本人が行う場合も、家族や看護士などの患者以外の者が行う場合でも、不快感を伴うばかりでなく、薬物の被毒の危険がある。
【0011】
これに対し、従来、被着面から剥離しやすい形状の貼付製剤が提案されている。その貼付製剤は、粘着剤層の一部に非粘着部を形成したものであり、その非粘着部を持ち手とすることにより、剥離作業を容易にすることができると説明されている(特許文献1)。
【0012】
【特許文献1】特開平7−309747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、前記特許文献1に開示の貼付製剤は、非粘着部が皮膚に接着せずに皮膚面から浮き上がった状態になるため、貼着中に、その非粘着部が衣類などに引っ掛かって、不快感を生じさせるばかりでなく、場合によっては、一部あるいは全部が剥がれる虞がある。このように特許文献1に開示の貼付製剤は、剥離性に重きを置いた結果、貼付性が犠牲になっており、貼付製剤として満足できるものではないため、それ以前の貼付製剤を代替するものとなっていない。したがって、貼付製剤の剥離作業に伴う問題は、依然として残されており、その解決が望まれている。
【0014】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、その課題は、粘着シートの粘着剤層に触れることなく、粘着シートを被着面から剥離し、安全に廃棄することのできる剥離補助貼付材とその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意、実験、検討を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の剥離補助貼付材は、シート状基材の片面の少なくとも一部に第一の接着層が設けられ、該片面の残りの領域に第二の接着層が設けられていて、該第一の接着層と該第二の接着層とで前記シート状基材の片面の実質全領域が占められており、かつ、前記第一の接着層が、法規制薬物と反応して薬効を消失させる反応性化合物を含有し、前記第一の接着層の大きさと前記第二の接着層の大きさとがそれぞれ被着面に貼着される粘着シートの大きさよりも大きい貼付材であって、該粘着シートを被着面から剥離することができることを特徴とする。
【0016】
ここで、前記反応性化合物は、この反応性化合物を構成する1分子単位中に少なくとも2個の官能基を有し、該官能基がイソシアネート基、グリシジル基からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0017】
また、前記シート状基材には、前記第一の接着層及び前記第二の接着層側に折り畳み容易とする折り線が形成されていることができる。
【0018】
本発明の剥離補助貼付材は、前記第一の接着層及び前記第二の接着層の表面に、セパレータが設けられていることが好ましい。
また、前記セパレータには、少なくとも1箇所、背割りが施されていることができる。
また、前記セパレータには、前記シート状基材に形成された折り線と対応する位置に折り畳み容易とする折り線が形成されていることができる。
【0019】
本発明において、前記第一の接着層、前記第二の接着層、前記シート状基材、及び/又は、前記セパレータが着色されていることができる。
【0020】
また、前記第二の接着層の前記粘着シート背面に対する接着力は、前記粘着シートの被着面に対する接着力よりも大きい剥離補助貼付材であることが好ましい。
【0021】
また、前記シート状基材は、第一の接着層及び第二の接着層を設ける側の面が粗面化されていることができる。
【0022】
また、前記粘着シートは、経皮吸収性薬物含有粘着剤層が設けられてなる貼付製剤であることができる。
【0023】
本発明において、前記シート状基材と第一の接着層とが積層されている部分を介して、及び/又は、前記シート状基材と第二の接着層とが積層されている部分を介して前記粘着シートを視覚的に確認することができることが好ましい。また、前記シート状基材が実質的に透明であることができる。
【0024】
本発明の剥離補助貼付材の使用方法は、被着面に貼着されている粘着シートを、上記いずれかの剥離補助貼付材を用いて被着面から剥離除去して廃棄するための剥離補助貼付材の使用方法であり、前記剥離補助貼付材の第二の接着層面が、被着面に貼着されている粘着シートの上に重なるように位置合わせする工程と、前記剥離補助貼付材の第二の接着層面を前記粘着シートの上に貼付する工程と、前記剥離補助貼付材を、前記粘着シートと共に、被着面から剥離除去する工程と、前記剥離補助貼付材を折り畳んで、粘着シートの粘着剤層面を第一の接着層面で覆う工程と、前記第一の接着層に含有されている反応性化合物と、前記粘着剤層の薬効成分とが反応して薬効を失活させる工程とを備えていることを特徴とする。
【0025】
ここで、前記剥離補助貼付材の第二の接着層面を前記粘着シートの上に貼付する工程において、該剥離補助貼付材に積層されているセパレータの一部を除去して部分的に貼付した後、残りのセパレータの少なくとも一部を除去して剥離補助貼付材を粘着シートの上に貼付することができる。
【0026】
また、前記第一の接着層面で覆う工程において、貼着中の残余セパレータを除去しつつ若しくは除去した後、前記補助貼付材を折り畳んで第一の接着層と粘着剤層とを重ね合わせ貼着することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の剥離補助貼付材を用いれば、粘着シートの剥離作業、例えば、貼付製剤等の剥離作業を特定治療薬等が含有されている粘着剤層に触れることなく実施することができ、しかも剥離後は、貼付製剤等の粘着剤層面の全面を覆い、かつ、薬効を確実に失活させることができるので、粘着シートを安全に廃棄することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について説明する。
本発明の剥離補助貼付材は、シート状基材の片面の少なくとも一部に第一の接着層が設けられており、この片面の残りの領域に第二の接着層が設けられていて、該第一の接着層と該第二の接着層とでシート状基材の片面の実質全領域が占められている。また、第一の接着層の大きさは被着面に貼着されている粘着シートの粘着剤層全面を覆うことができる大きさであり、第二の接着層の大きさは粘着シート全面を覆うことができる大きさである。
【0029】
ここで実質全領域とは、片面のほぼ全面に接着層(第一の接着層及び第二の接着層)を有するが、接着層の有する面積に比して僅かな面積部分については、例えばいわゆるドライエッジ(例えば5mm幅以下)等のような部分については、第二の接着層が設けられておらずシート状基材が露出している部分が存在していてもよいことをいう。ただし、例えば被着面に貼着している矩形状の粘着シートの少なくとも4つの角には第二の接着層が設けられている部分を重ねることができるような形態で接着層が設けられていることが好ましい。本発明の剥離補助貼付材は、この粘着シートを被着面から剥離することができる機能を有する。
【0030】
シート状基材の片面の少なくとも一部に設けられている第一の接着層は、法規制薬物等と反応して薬効を消失させる反応性化合物を含有しており、粘着シートを被着面から剥がした後は粘着剤層の全面を覆うように重ねられる。
【0031】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明するが、これら実施形態に限定されるものではない。なお、同一の構成要素については同一の参照番号を付して、これらの説明を省略する。
【0032】
図1の(a)〜(c)に、本発明の第1の実施形態に係る剥離補助貼付材の構成を示す。図1の(a)は、剥離補助貼付材を接着層側から見たときの平面図であり、図1の(b)は第二の接着層の上に粘着シートが粘着剤層を上にして重ねられている状態を示す平面図であり、図1の(c)は図1の(b)の剥離補助貼付材を粘着シートが内側となるように折り曲げた状態を示す図である。
【0033】
本実施形態に係る剥離補助貼付材は、粘着シートを折り曲げることなくそのままの状態で包み込める十分な大きさを有するシート状基材1(図1の(c)参照)の片面の半分に第一の接着層3が形成されており、残りの半分に第二の接着層2が形成されている。また、剥離補助貼付材のほぼ中央には、接着層側に折り畳み容易とする折り線4aが設けられている。
【0034】
ここで、剥離補助貼付材のシート状基材1を構成する材質は、特に限定されないが、第一の接着層や第二の接着層等の接着層中に含有される薬剤を始め可塑剤等の添加剤などの含有成分が透過消失することによる含量低下を生じさせない材質、すなわち、接着層含有成分の透過を防ぐ材質から構成することが好ましい。このようなシート状基材に適した材質としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロース、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、アイオノマー樹脂、アルミニウム箔等の金属箔などが挙げられる。また、シート状基材は、単層フィルムでも良いし、ラミネートフィルムでも良い。
【0035】
本発明においては、シート状基材を通して、あるいはシート状基材と接着層とが積層された部分を通して粘着シートを目視できることが好ましい。本発明においては、シート状基材と第一の接着層又は第二の接着層とが積層されている部分の可視光透過率が日本工業規格JIS K7105に基づいて測定して10%以上であることが好ましい。また、シート状基材は実質的に透明であることが好ましい。ここで実質的に透明とは、無色透明、有色透明のいずれをも含み、シート状基材を通して粘着シート等が視覚的に確認できることをいう。この場合には、例えばシート状基材の可視光透過率は、日本工業規格JIS K7105に基づいて測定して30%以上であることが好ましい。
【0036】
また、シート状基材は着色されていてもよく、あるいは文字、記号、図柄等が印刷されていてもよい。例えば、貼付製剤を回収するために使用される剥離補助貼付材であることが一目で識別できるような表示が付されていてもよい。
【0037】
シート状基材の厚みは、特に限定されないが、粘着シートを剥離する際、厚みが厚い方が取り扱い性において楽であること、さらに折り線を入れる際の加工が容易であることを考慮すると、15μm以上が好ましく、より好ましくは20μm以上、特に好ましくは50μm以上であり、かつ、200μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以下である。
【0038】
このシート状基材は、シート状基材と接着層との間の投錨性(接着力)を向上させるために、さらに多孔性フィルムをラミネートした構成とし、このラミネートフィルムの多孔性フィルム側に接着層を形成することが好ましい。この多孔性フィルムとしては、紙、織布、不織布、機械的穿孔処理を施した樹脂フィルム、あるいは化学的機械的な粗面化及び穿孔処理を施した樹脂フィルムなどが使用可能である。
【0039】
第二の接着層2に用いられる接着剤としては、常温で接着性を有するものであり、皮膚に接触した場合に皮膚にかぶれなどの悪影響が生じない、従来から用いられているアクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、ビニルエステル系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤等の医療用の粘着剤が好ましい。さらには、これらの粘着剤に相溶する液状可塑成分を配合し、これを粘着剤と相溶させることによって、接着層を可塑化し、接着層を皮膚面に貼り付けた時に、皮膚に対してソフトな感触を与え、かつ剥離の際にも皮膚刺激を軽減可能な組成の接着層とすることが好ましい。この液状可塑成分としては、常温で液状を呈し、使用する粘着剤と相溶するものであれば、特に限定されない。具体的には、脂肪酸エステル類、脂肪酸、液状界面活性剤、炭化水素類等が挙げられ、これらの中でも常温で液状のものが用いられる。また、これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0040】
第一の接着層3は反応性化合物を含有する。第一の接着層3は、被着面に貼着している粘着シートが被着面から剥がされた後、粘着シートの粘着剤層5の全面を覆うように重ねられて貼着される。第一の接着層3に含まれる反応性化合物は粘着剤の薬効成分と反応して薬効を消失させ、不活性化させることができるものである。本発明において、反応性化合物は、この反応性化合物を構成する1分子中に少なくとも2個の官能基を有する多官能化合物であることが好ましい。このような官能基としては、イソシアネート基、グリシジル基等が挙げられる。反応性化合物の1分子中に含まれる2以上の官能基は、同一の官能基であっても異なる官能基であってもよい。薬物成分に多官能の反応性化合物が付加すると複雑な化合物が生成され、液体等での抽出等が不可能になる。したがって、薬物成分と反応性化合物とを反応させた後は薬物の効果を確実に失活させることができるので、薬物が例えば麻薬であったとしても薬物の抽出、回収を不可能にすることができる。
【0041】
第一の接着層3には、反応性化合物とは反応しない無官能な粘着剤が含有されている。このような無官能な粘着剤としては、従来から用いられているアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、SIS系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。また、第一の接着層3には反応性化合物と反応しないものであれば、本発明の効果を損なわない範囲内で通常粘着剤に用いられているものを適宜含むこことができ、例えば、第二の接着層2において説明したような液状可塑成分を配合することもできる。
【0042】
第一の接着層3及び第二の接着層2は、それぞれ、シート状基材1の片面の半分の領域一面に接着層用粘着剤等を用いて形成されたものでもよいし、あるいは、波状、線状、ドット状等の形状で設けられたものでもよい。
【0043】
第一の接着層及び第二の接着層の厚みは、それぞれ、粘着シートの支持体および皮膚面への接着性や、取り扱い性を考慮すると、好ましくは、20μm〜200μmであり、より好ましくは40μm〜150μmである。
【0044】
第二の接着層の接着力は、剥離しようとする粘着シートの被着面に対する接着力よりも大きい。第一の接着層の接着力は、粘着シートの粘着剤層との接着を保持できる程度の接着力でよい。使用に当たって、第二の接着層が、粘着シートの支持体面へだけでなく被着面にも接触することを考慮すると、第二の接着層の接着力は、粘着シートの被着面からの剥離が可能な範囲で、できるだけ小さく設定することが好ましい。この場合、被着面が人体の皮膚等である場合には、皮膚刺激の少ない範囲で設定することが好ましいが、皮膚の乾燥状態などの皮膚面の状態には個人差があるので、例えば、好適な第二の接着層の接着力としては、日本工業規格JIS Z−0237による測定で、0.1〜0.6N/cm、より好ましくは0.2〜0.4N/cmである。ただし、試験板は35mm幅、150mm長さ、2mm厚さのフェノール樹脂製のものを用いる。
【0045】
シート状基材の形状は、特に限定されるものではないが、剥離しようとする貼付製剤の形状に応じて設計されることが好ましい。図1の(a)〜(c)に示す実施形態においては、シート状基材の形状は長方形であり、シート状基材の半分の形状が粘着シートの形状と類似しており、これらの形状はほぼ相似形である。
【0046】
また、シート状基材の寸法は、第一の接着層が被着体に貼着されている粘着シートの粘着剤層を覆うことができる大きさであり、第二の接着層が粘着シートの支持体を覆うことができる大きさであればよい。第二の接着層の寸法設定は、剥離操作するときに、作業者の指が粘着シートの粘着剤層、例えば、貼付製剤の薬剤含有粘着剤層等に触れないようにするためであり、また、第一の接着層の寸法設定は、粘着シートの粘着剤の薬効成分と十分に反応させるように接触面積を最大にするためである。図1の(a)〜(c)に示す実施形態においては、シート状基材1の寸法は、この半分の大きさが粘着シートの大きさより大きく、シート状基材1を半分に折り畳んだ時に粘着シートを包み込むことができる大きさである。
【0047】
また、本発明の剥離補助貼付材は、剥離後の貼付製剤等の粘着シートを安全に廃棄可能とすることも目的としている。そのような廃棄を考慮すると、シート状基材の半分の大きさが、粘着シートの1.2倍以上の面積に設定することが望ましい。例えば粘着シートが貼付製剤である場合には、粘着シートの寸法が大小数種類の定型寸法に設定されていることが多い。したがって、各定形寸法を基準にその1.2倍以上の面積となるように、定量的設定が可能である。
【0048】
剥離補助貼付材は、一方の面の一部に設けられている第二の接着層2が、被着体の被着面に貼着されている粘着シートの背面(支持体面上)に粘着シートの全体を覆うように重ねられて貼付された後、剥離される。剥離後の剥離補助貼付材を、粘着シートの粘着剤層5の側から見ると図1の(b)に示すものとなる。剥離補助貼付材の第二の接着層2の上に貼付された粘着シートは、剥離補助貼付材の第二の接着層2の接着力が適当な範囲に設定されていれば、剥離補助貼付材を被着面から剥がす際に共に剥離される。すなわち、上述したように第二の接着層2の粘着シートの背面(図2における支持体4)に対する接着力は、粘着シートにおける粘着剤層5の被着面に対する接着力よりも大きいことが必要である。また、図1の(b)に示すように、剥離補助貼付材の第二の接着層2の一部は被着面に貼付されるので、被着面が皮膚等である場合には、皮膚等の角質に損傷を与えないような接着力であることが好ましい。
【0049】
この形態の剥離補助貼付材を用いて粘着シートを被着面から剥離するには、第二の接着層2で粘着シートの支持体6の全面を覆うように被着面に貼付された後引き剥がし操作をすればよい。なお、ここでは剥離補助貼付材の第一の接着層面まで被着体に貼着する必要はない。すなわち、粘着シート全体を覆うように剥離補助貼付材を貼着できればよく、粘着シートの貼着に寄与していない残りの半分の第一の接着層3の領域は貼着する必要はない。この残りの部分の適当な個所を指等で掴んで引き剥がし操作をしてもよいし、あるいは、第二の接着層2の一部を被着面から引き剥がし、その引き剥がし部分を指等で掴んで引き剥がし操作をしてもよい。
【0050】
このようにすれば粘着シートともども剥離補助貼付材を被着面から剥がすことができ、剥離した後は、折れ曲がりやすくなっているほぼ剥離補助貼付材の中央部の折り線4aで剥離補助貼付材を2つに折り畳めば、図1の(c)に示す状態となる。ここでは、粘着シートの周縁部分で封緘されて封緘部7が形成され、粘着シートは折り畳まれない状態で粘着剤層の全面が剥離補助貼付材の第一の接着層3と接触し貼着されて剥離補助貼付材の内部に包み込まれている。また、このように剥離補助貼付材に折り線4aが付されていれば、容易に接着層側に折り畳むことができる。しかも、封緘部7は第一の接着層3と第二の接着層2とが接着して形成されるので、強固な封緘が実現される。この実施形態の剥離補助貼付材を用いて粘着シートの剥離廃棄を行えば、粘着シートの粘着剤層に触れることなく安全に廃棄することが可能である。しかも、第一の接着層3に含有される反応性化合物が粘着剤の薬効成分と反応して薬効を消失せしめているので、反応終了後の粘着シートは取扱いに注意を払う必要はなくなる。
【0051】
なお、剥離補助貼付材のシート状基材と第一の接着層及び/又は第二の接着層とが積層された部分を通して粘着シートを目視することができれば、粘着シートの支持体の全面を覆うように重ねる際に、また、粘着剤層の全面を覆うように重ねる際に目で容易に確認することができるので便利である。
【0052】
したがって、例えば、粘着シートが経皮吸収性薬物含有粘着剤層が設けられて成る貼付製剤であっても、薬物含有粘着剤層に手、指等が触れることなく、安全に廃棄することができる。なお、剥離補助貼付材を折り畳んだ状態で内部に閉じ込められた粘着シートを視覚的に認識することができれば、粘着シートの状態が確認できるのでより安全に取扱うことができる。
【0053】
図1の(c)に示す剥離補助貼付材を2つ折りにした状態の断面図を図2に示す。シート状基材1の片面に第一の接着層3と第二の接着層2とを有する剥離補助貼付材の内部に、支持体6の上に粘着剤層5を有する粘着シートが、粘着剤層5と第一の接着層3とが接触する状態で内包されている。
【0054】
本発明において、剥離補助貼付材は使用時まで接着層表面を保護するために、接着層表面にセパレータが重ねられていることが好ましい。図3は、接着層表面にセパレータを有する剥離補助貼付材をセパレータ側から見た平面図である。図3に示すように、セパレータ8には背割り4bが形成されていることが好ましい。このようなセパレータ8を有する剥離補助貼付材を用いて粘着シートを被着面から剥がす場合には、例えば、まず、剥離補助貼付材の第二の接着層2が設けられている右半分の領域が粘着シート全面を覆うように重ね、背割りされたセパレータ8の右端の部分(剥離補助貼付材の1/4の領域を覆うセパレータ)を除去して第二の接着層2が粘着シートの半分の領域を覆うように貼付する。その後、中央のセパレータ8を除去して第二の接着層2を貼付すれば、剥離除去貼付材のほぼ半分の領域、すなわち第二の接着層が粘着シートの全面を覆うように貼付することができる。なお、左端のセパレータ8(剥離補助貼付材の左半分の第一の接着層領域を覆うセパレータ)は剥離作業の際にはつけたままにしておき、剥離作業が終わった段階でこのセパレータを除去してもよく、このセパレータを除去しつつ、あるいは、除去した後、折り線4aで折り畳んで内部に粘着シートを包埋した状態で廃棄を行ってもよい。
【0055】
本発明においては、セパレータ8には背割りの替わりに折り線が付されていてもよく、例えば、中央部分に折り線が付されていれば、先ず右側部分のセパレータを折り線に沿って折り曲げて第二の接着層部分を露出させて粘着シートの支持体上に貼着し、剥離補助貼付材を粘着シートと共に被着体から剥がした後、第一の接着層表面を覆っているセパレータを除去して粘着剤層面に重ねて廃棄してもよい。
【0056】
本発明に用いられるセパレータ8としては、例えば、表面に剥離処理が施された紙、プラスチックフィルム等が挙げられる。具体的には、ポリエチレンコート上質紙、ポリオレフィンコートグラシン紙、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられ、接着層等と接する面にシリコーン樹脂、フッ素樹脂、テフロン樹脂等が塗布等されて剥離処理が施されている。
【0057】
セパレータ8の厚みは特に限定されるものではないが、取り扱い性や背割り加工等の加工性の点を考慮すると、10μm以上100μm以下であることが好ましく、15μm以上75μm以下であることが更に好ましい。
【0058】
本発明の剥離補助貼付材は、図4に示すように、剥離回収すべき粘着シートの2倍よりも大きくてもよい。図4の(a)は、本発明の第2の実施形態に係る剥離補助貼付材を示す図であり、第二の接着層2の上に粘着シートを重ねた状態を示す図である。ここでは、右側に第二の接着層2が設けられており、中央部分に第一の接着層3が設けられており、左側に第二の接着層2が設けられていることが好ましい。このように粘着シートの大きさよりもかなり大きい形状で、このような構成で接着層が設けられていれば、粘着シートの上に第二の接着層2を重ねて貼着し、右側の折り線で曲げて畳み込めば粘着剤層面と第一の接着層3とが接触状態になり、更に左側の折り線で曲げて帯状に畳み込めば封緘を更に完全なものとすることができる。
【0059】
図4の(a)に示す形態の剥離補助貼付材は、図4の(b)に示すように、第一の接着層3が右端に位置し、第二の接着層が中央部分と左端部分に位置していてもよい。
【0060】
本発明によれば、粘着シートの粘着剤層が被着面に貼着している接着強度よりも高い接着性を発揮する接着層を有する剥離補助貼付材を、剥離しようとする粘着シートに重ね貼りし、その後、剥離補助貼付材をつかんで、被着面から引き剥がす操作をすれば、剥離補助貼付材とともに粘着シートを容易に被着面から剥離することができる。また、この剥離補助貼付材のシート状基材は剥離しようとする粘着シートの全部を覆うことのできる寸法に形成されているので、剥離操作中に粘着シートの粘着剤層に指先を触れることなく剥離作業を終えることができ、しかも剥離した粘着シートをシート状基材により包み込むことにより安全に廃棄することができる。また、薬物成分等と反応して薬効を失活させることができ、かつ、剥離後に薬物等を抽出、回収することを容認しない安全性に優れたものである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の剥離補助貼付材を用いれば、貼付製剤の剥離作業を特定治療薬が含有されている粘着剤層に触れることなく実施することができ、しかも剥離後は、貼付製剤を包み込むことができ、貼付製剤を安全に廃棄することができる。そのため、本発明の剥離補助貼付材は、特定治療薬含有粘着剤層を有する貼付製剤の剥離、廃棄に有用であり、貼付製剤を用いた治療において作業の安全性と効率化を同時に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る剥離補助貼付材を示す平面図であり、(a)はこの剥離補助貼付材を接着層側から見た図であり、(b)はさらに粘着シートを重ねた状態を示す図であり、(c)は(b)の剥離補助貼付材を2つ折りにした状態を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る剥離補助貼付材に粘着シートを重ねて2つに折り畳んだ状態の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る剥離補助貼付材の接着層面にセパレータが積層された状態のものを、セパレータ側から見たときの平面図である。
【図4】(a)は本発明の第2の実施形態に係る剥離補助貼付材を示す図であり、粘着シートを重ねた状態を示す図であり、また、(b)は(a)の変形態様を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 シート状基材
2 第二の接着層
3 第一の接着層
4a 折り線
4b 背割り
5 粘着剤層
6 支持体
7 封緘部
8 セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材の片面の少なくとも一部に第一の接着層が設けられ、該片面の残りの領域に第二の接着層が設けられていて、該第一の接着層と該第二の接着層とで前記シート状基材の片面の実質全領域が占められており、かつ、前記第一の接着層が、法規制薬物と反応して薬効を消失させる反応性化合物を含有し、前記第一の接着層の大きさと前記第二の接着層の大きさとがそれぞれ被着面に貼着される粘着シートの大きさよりも大きい貼付材であって、該粘着シートを被着面から剥離することができることを特徴とする剥離補助貼付材。
【請求項2】
前記反応性化合物を構成する1分子単位中に少なくとも2個の官能基を有し、該官能基がイソシアネート基、グリシジル基からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の剥離補助貼付材。
【請求項3】
前記シート状基材には、前記第一の接着層及び前記第二の接着層側に折り畳み容易とする折り線が形成されていることを特徴とする請求項1又2記載の剥離補助貼付材。
【請求項4】
前記第一の接着層及び前記第二の接着層の表面に、セパレータを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の剥離補助貼付材。
【請求項5】
前記セパレータには、少なくとも1箇所、背割りが施されていることを特徴とする請求項4記載の剥離補助貼付材。
【請求項6】
前記セパレータには、前記シート状基材に形成された折り線と対応する位置に折り畳み容易とする折り線が形成されていることを特徴とする請求項4記載の剥離補助貼付材。
【請求項7】
前記第一の接着層、前記第二の接着層、前記シート状基材、及び/又は、前記セパレータが着色されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の剥離補助貼付材。
【請求項8】
前記第二の接着層の前記粘着シート背面に対する接着力が、前記粘着シートの被着面に対する接着力よりも大きい剥離補助貼付材であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の剥離補助貼付材。
【請求項9】
前記シート状基材は、第一の接着層及び第二の接着層を設ける側の面が粗面化されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の剥離補助貼付材。
【請求項10】
前記粘着シートが、経皮吸収性薬物含有粘着剤層が設けられてなる貼付製剤であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の剥離補助貼付材。
【請求項11】
前記シート状基材と第一の接着層とが積層されている部分を介して、及び/又は、前記シート状基材と第二の接着層とが積層されている部分を介して前記粘着シートを視覚的に確認することができることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の剥離補助貼付材。
【請求項12】
前記シート状基材が実質的に透明であることを特徴とする請求項11記載の剥離補助貼付材。
【請求項13】
被着面に貼着されている粘着シートを、請求項1から12のいずれか1項記載の剥離補助貼付材を用いて被着面から剥離除去して廃棄するための剥離補助貼付材の使用方法であり、
前記剥離補助貼付材の第二の接着層面が、被着面に貼着されている粘着シートの上に重なるように位置合わせする工程と、
前記剥離補助貼付材の第二の接着層面を前記粘着シートの上に貼付する工程と、
前記剥離補助貼付材を、前記粘着シートと共に、被着面から剥離除去する工程と、
前記剥離補助貼付材を折り畳んで、粘着シートの粘着剤層面を第一の接着層面で覆う工程と、
前記第一の接着層に含有されている反応性化合物と、前記粘着剤層の薬効成分とが反応して薬効を失活させる工程と
を備えていることを特徴とする剥離補助貼付材の使用方法。
【請求項14】
前記剥離補助貼付材の第二の接着層面を前記粘着シートの上に貼付する工程において、該剥離補助貼付材に積層されているセパレータの一部を除去して部分的に貼付した後、残りのセパレータの少なくとも一部を除去して剥離補助貼付材を粘着シートの上に貼付することを特徴とする請求項13記載の剥離補助貼付材の使用方法。
【請求項15】
前記第一の接着層面で覆う工程において、貼着中の残余セパレータを除去しつつ若しくは除去した後、前記補助貼付材を折り畳んで第一の接着層と粘着剤層とを重ね合わせ貼着することを特徴とする請求項13又は14記載の剥離補助貼付材の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−265128(P2006−265128A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82895(P2005−82895)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】