剥離試験装置
【課題】90度剥剥離試験を低コストで高精度に行うと共に、従来にない新たな試験方法を含むその他の剥離試験にも対応可能な剥離試験装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る剥離試験装置1は、試験片2が貼着される被貼着面38を備えて支軸34に回動自在に支持される被貼着部材30と、被貼着部材30に貼着された試験片2の一端を把持する把持部材50と、被貼着部材30および把持部材50を相対的に近接離隔させる移動機構20と、移動機構20を制御する制御装置70と、把持部材50に加わる荷重を測定する荷重測定器40と、を備えている。
【解決手段】本発明に係る剥離試験装置1は、試験片2が貼着される被貼着面38を備えて支軸34に回動自在に支持される被貼着部材30と、被貼着部材30に貼着された試験片2の一端を把持する把持部材50と、被貼着部材30および把持部材50を相対的に近接離隔させる移動機構20と、移動機構20を制御する制御装置70と、把持部材50に加わる荷重を測定する荷重測定器40と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば粘着テープ・粘着シートの粘着力や、二つの部材を接着した場合の剥離接着強さ等の試験に用いられる剥離試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着テープ・粘着シートの粘着力(貼着力)や、接着剤等の剥離接着強さを測定する試験方法として、剥離試験が行われている。この剥離試験を行う方法として、例えば90度剥離試験、180度剥離試験、T形剥離試験、浮動ローラ法等がある。このうち、粘着テープ・粘着シートの試験方法については、例えばJIS Z 0237に90度剥離試験および180度剥離試験が規定されており、接着剤の試験方法については、例えばJIS K 6854−1〜4に90度剥離試験、180度剥離試験、T形剥離試験、浮動ローラ法がそれぞれ規定されている。
【0003】
粘着テープ等の粘着力を測定する場合、180度剥離試験では基材の強度や弾性率の影響を大きく受けるため、90度剥離試験によって測定することが望ましいと考えられている。但し、90度剥離試験においては、90度の剥離角度(粘着テープが貼着された試験板と引張られる粘着テープとがなす角度)を試験中一定に保つことが難しいという問題があった。すなわち、90度剥離試験では、試験板に貼着した粘着テープ等の一端を試験板と90度をなす方向に引張り、試験板から引きはがす(剥離する)際の荷重を測定するが、粘着テープを引きはがすにつれて剥離位置が試験板上を横方向に移動するため、剥離角度が変化してしまうという問題があった。
【0004】
このため、JIS Z 0237では、専用のジグを用いることにより、試験板を粘着テープ等の剥離長さだけ横方向にスライドさせる手法が紹介されている(非特許文献1参照)。このジグは、具体的には、粘着テープ等の一端を把持する上部つかみとスライド可能な試験板を備えるジグを把持する下部つかみとの間の距離が拡大するのに伴い、試験板が紐で引張られてスライドするように構成されている。
【0005】
また、粘着テープの剥離と試験板のスライドを機械的に連動させるのではなく、粘着テープ等を貼着した試験板をステッピングモータとボールねじによってスライドさせる手法等も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−113438号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日本工業規格 JIS Z 0237
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記非特許文献1に記載の手法では、粘着テープ等の基材が伸びやすい材質から構成されている場合、引張られた粘着テープ等の伸びによって剥離長さと試験板のスライド距離にズレが生じ、剥離角度を試験中一定に保つことができないという問題があった。このため、測定精度が低下すると共に測定可能な粘着テープ等の種類や剥離速度に制限が生じることとなり、90度剥離試験を粘着テープ等の試験手法として確立することは困難であった。
【0009】
また、上記特許文献1に記載の手法では、粘着テープ等の一端を固定(把持)する固定部と試験板の両方について、移動ガイドや駆動装置を備える必要があり、測定装置が複雑且つ高コストになるという問題があった。また、粘着テープ等の伸びを考慮して試験板を移動させることは可能であるものの、実際には試験時の粘着テープ等の伸びを予測することは困難であり、また、粘着テープ等の伸びや剥離角度を測定してフィードバック制御を行うとしても複雑な測定手法や制御手法が要求されるため、さらに測定装置が複雑且つ高コストになるという問題があった。
【0010】
また、上記特許文献1に記載の手法では、上記非特許文献1に記載の手法とは異なり、剥離角度を90度以外の角度に設定して剥離試験を行うことが可能であるが、試験中の剥離角度が常に固定されるという問題があった。すなわち、剥離角度を試験中任意の比率で変化させるというようなことまでは考慮されていないため、粘着テープ等の粘着性に対して従来にない試験を行い、多様な観点から評価する必要性が生じた場合には対応できないという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、90度剥剥離試験を低コストで高精度に行うと共に、従来にない新たな試験方法を含むその他の剥離試験にも対応可能な剥離試験装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明はまた、試験片が貼着される被貼着面を備えて支軸に回動自在に支持される被貼着部材と、前記被貼着部材に貼着された前記試験片の一端を把持する把持部材と、前記被貼着部材および前記把持部材を相対的に近接離隔させる移動機構と、前記移動機構を制御する制御装置と、前記把持部材に加わる荷重を測定する荷重測定器と、を備えることを特徴とする、剥離試験装置である。
【0013】
(2)本発明はまた、前記把持部材および前記荷重測定器は、固定され、前記移動機構は、前記被貼着部材を前記把持部材に対して近接離隔させる方向に移動させることを特徴とする、上記(1)に記載の剥離試験装置である。
【0014】
(3)本発明はまた、前記支軸を中心に前記被貼着部材を回転させた場合に、前記試験片の前記把持部材に把持された部分の中心と前記被貼着部材の回転中心とを結ぶ直線に対して、前記被貼着面が交差する角度が常に一定となるように、前記被貼着面の形状が設定されていることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の剥離試験装置である。
【0015】
(4)本発明はまた、前記角度は、鋭角または鈍角であることを特徴とする、上記(3)に記載の剥離試験装置である。
【0016】
(5)本発明はまた、前記被貼着面は、前記支軸を中心とする円弧状の曲面から構成されることを特徴とする、上記(3)に記載の剥離試験装置である。
【0017】
(6)本発明はまた、前記制御装置は、前記被貼着部材および前記把持部材の相対的な移動速度を制御することで、前記試験片の剥離速度を、剥離試験ごとに変化させる、または一回の剥離試験中に変化させることを特徴とする、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の剥離試験装置である。
【0018】
(7)本発明はまた、前記支軸を中心に前記被貼着部材を回転させた場合に、前記試験片の前記把持部材に把持された部分の中心と前記被貼着部材の回転中心とを結ぶ直線に対して、前記被貼着面が交差する角度が前記被貼着部材の回転に伴って漸次変化するように、前記被貼着面の形状が設定されていることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の剥離試験装置である。
【0019】
(8)本発明はまた、前記被貼着面は、平面から構成されることを特徴とする、上記(7)に記載の剥離試験装置である。
【0020】
(9)本発明はまた、前記制御装置は、前記被貼着部材および前記把持部材の相対的な移動速度を制御することで、1回の剥離試験中、前記試験片の剥離速度を一定に保持することを特徴とする、上記(7)または(8)に記載の剥離試験装置である。
【0021】
(10)本発明はまた、前記被貼着部材は、前記被貼着面が着脱可能に構成されていることを特徴とする、上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の剥離試験装置である。
【0022】
(11)本発明はまた、前記被貼着面が透明な素材から構成されると共に、前記試験片が前記被貼着面から剥離する部分を前記被貼着面を通して観察可能に配置されたカメラをさらに備えることを特徴とする、上記(1)乃至(10)のいずれかに記載の剥離試験装置である。
【0023】
(12)本発明はまた、前記被貼着面に貼着された前記試験片を前記被貼着面に圧着するための圧着ロールと、前記圧着ロールを移動させて前記被貼着部材に押圧する押圧機構と、をさらに備え、前記制御装置は、前記押圧機構を制御することで、前記圧着ロールの前記被貼着部材への押圧力を調節することを特徴とする、上記(1)乃至(11)のいずれかに記載の剥離試験装置である。
【0024】
(13)本発明はまた、前記荷重測定器は、前記圧着ロールの前記被貼着部材への押圧力を測定することを特徴とする、上記(12)に記載の剥離試験装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明剥離試験装置によれば、90度剥剥離試験を低コストで高精度に行うことが可能であり、さらに、従来にない新たな試験方法を含むその他の剥離試験にも対応することが可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る剥離試験装置の概略図である。
【図2】(a)被貼着部材の一例を示した概略図である。(b)および(c)被貼着部材の他の例を示した概略図である。
【図3】(a)および(b)剥離試験装置による剥離試験の手順の一部を示した図である。
【図4】(a)〜(c)剥離試験における剥離角度を示した図である。
【図5】(a)〜(c)対数螺旋曲線の例を示した図である。
【図6】(a)および(b)被貼着部材の取付け方向を逆にして剥離試験を行う場合を示した図である。
【図7】(a)〜(c)被貼着部材を三角柱状に構成した例を示した図である。
【図8】(a)〜(c)被貼着部材を四角柱状に構成した例を示した図である。
【図9】(a)〜(c)その他の被貼着部材の例を示した図である。
【図10】(a)および(b)その他の被貼着部材の例を示した図である。
【図11】剥離試験装置に試験片の剥離部の挙動を観察するためのカメラを備えた例を示した断面図である。
【図12】支軸を上下方向に配置した場合の例を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0028】
まず、本発明の実施の形態に係る剥離試験装置1について説明する。図1は、本実施形態に係る剥離試験装置1の概略図である。
【0029】
同図に示されるように、剥離試験装置1は、基台10と、基台10の上部に配置された移動機構20と、移動機構20上に配置された被貼着部材30と、被貼着部材30に対向するように基台10上に配置された荷重測定器40と、荷重測定器40に接続された把持部材50と、被貼着部材30に隣接して移動機構20上に配置された圧着ロール60と、基台10内部に配置された制御装置70と、を備えて構成されている。
【0030】
基台10は、移動機構20、被貼着部材30、荷重測定器40、把持部材50および圧着ロール60等を支持すると共に、制御装置70を内部に収容する部材である。なお、基台10の形状は特に限定されるものではなく、各部材を適宜に配置して支持できるものであればよい。
【0031】
移動機構20は、ステージ22を水平方向に直線往復移動させるものである。移動機構20は、図示は省略するが、ステージ22の移動をガイドするリニアガイド、およびステッピングモータにより駆動されるボールねじ伝導機構等を備えている。従って、移動機構20は、制御装置70に制御されてステージ22を任意の速度で移動させると共に、任意の位置で停止させることが可能に構成されている。
【0032】
ステージ22上には、被貼着部材30および圧着ロール60が載置されている。そして、移動機構20は、基台10上において把持部材50に対して被貼着部材30を近接離隔させる方向に配置されている。なお、ステッピングモータおよびボールねじ伝導機構に代えて、例えばリニアモータによりステージ22を移動させるように移動機構20を構成してもよい。
【0033】
被貼着部材30は、剥離試験を行う粘着テープ等の試験片2が貼り付けられる部材である。被貼着部材30は、ステージ22上に固定されたブラケット32に、支軸34を介して回動自在に取付けられている。すなわち、被貼着部材30は、ステージ22上において支軸34に支持されると共に、支軸34を中心として自由に回転可能な状態となっている。
【0034】
図2(a)は、被貼着部材30の一例を示した概略図である。この例では、同図に示されるように、被貼着部材30は、支軸を中心軸とする円筒状または円柱状の本体30a、および本体30aの外周に固定される複数の試験板36から構成された部材である。試験板36の外周面は、試験片2が貼り付けられる被貼着面38となっている。
【0035】
この例では、試験板36は、円形断面の筒状の部材を4分割した形状となっている。試験板36は、図示を省略したねじによって、または自身の一部を本体30aに係合させることによって本体30aに着脱可能に固定される。被貼着面38は、円弧状の曲面に構成されている。従って、試験板36が本体30aに固定された状態では、被貼着面38は、支軸34に平行、且つ支軸34を中心とする円弧状の曲面となる。
【0036】
試験板36は、実行する剥離試験の内容に応じて、各種金属、樹脂または木材等の様々な素材から構成することができる。また、試験板36の被貼着面38は、実行する剥離試験の内容に応じて、様々な表面性状にすることができる。本実施形態では、試験板36を被貼着部材30に対して着脱可能に構成することで、多様な試験条件に基づく剥離試験を容易且つ迅速に行うことができるようにしている。
【0037】
なお、試験板36の分割数は4に限定されるものではなく、その他の分割数であってもよい。また、分割するのではなく、試験板36を筒状に構成するようにしてもよい。また、本体30aの形状は円筒状または円柱状に限定されるものではなく、支軸34を中心に回動可能且つ試験板36を固定可能であればその他の形状であってもよい。図2(b)および(c)は、被貼着部材30の他の例を示した概略図である。例えば、同図(b)に示されるように、被貼着部材30の本体30aを1/4円弧状の試験板36を1つ固定可能な形状に構成するようにしてもよいし、同図(c)に示されるように、被貼着部材30の本体30aに1/2円弧状の試験板36を1つ固定可能な形状に構成するようにしてもよい。
【0038】
図1に戻って、荷重測定器40は、試験板36に貼着された試験片2を試験板36から剥離するのに要する荷重(引張り力)を測定するものである。本実施形態では、荷重測定器40をロードセルから構成している。荷重測定器40は、基台10上に設けられた架台12上に固定されており、着力点42が被貼着部材30の支軸34と略同一の高さとなるように配置されている。また、荷重測定器40は制御装置70と電気的に接続されており、出力は制御装置70に送信される。
【0039】
なお、荷重検出器40の力の検出方式は特に限定されるものではなく、ひずみゲージ式、圧電式、容量式、電磁式または音叉式等のいずれであってもよい。また、本実施形態では、荷重測定器40を圧着ロール60の押圧力の測定にも使用するため、荷重測定器40は引張り力と圧縮力の両方を測定可能なものを使用している。
【0040】
把持部材50は、被貼着部材30に貼着された試験片2の貼着されていない一端を把持するものである。把持部材50は、ロッド52を介して荷重測定器40の着力点42に接続されている。本実施形態では、2つの部材の間に試験片2の端部を挟持するように把持部材50を構成している。また、試験片2の把持部材50に把持された部分の中心(把持中心)Aの高さが、被貼着部材30の支軸34の中心(回転中心)Bと略同一の高さとなるように、把持部材50を配置している。従って、把持中心Aと回転中心Bを結ぶ直線Sは略水平方向であり、移動機構20による被貼着部材30の移動方向と略平行となっている。
【0041】
なお、把持部材50の構造は、試験片2の端部を挟持する構造に限定されるものではなく、例えば、試験片2の端部に設けた穴に係止する構造や、ねじによって試験片を固定する構造等、その他の構造であってもよい。
【0042】
圧着ロール60は、試験板36に貼着した試験片2を試験板36に向けて押圧し、圧着させるものである。本実施形態では、圧着ロール60をゴムロールから構成している。圧着ロール60は、ステージ22上に配置されたブラケット62に支軸64を介して回動自在に固定されており、支軸64の中心Cが被貼着部材30の支軸34の中心Bと略同一の高さとなるように配置されている。従って、圧着ロール60の支軸64の中心Cは、把持中心Aと回転中心Bを結ぶ直線S上に位置している。
【0043】
また、ステージ22には、ブラケット62を水平方向に移動させて、圧着ロール60を被貼着部材30に押圧させる押圧機構66が設けられている。押圧機構66は、図示は省略するが、移動機構20と同様に、ブラケット62の移動をガイドするリニアガイド、およびステッピングモータにより駆動されるボールねじ伝導機構等を備えている。
【0044】
制御装置70は、移動機構20および押圧機構66の動作を制御すると共に、荷重測定器40からの出力を荷重の値に変換して出力または記憶するものである。制御装置70は、CPU、ならびにROM、RAMおよびハードディスク等の記憶手段を備えて構成されている。また、図示は省略するが、制御装置70には、剥離試験装置1を操作するための操作パネルや試験結果等の各種情報を出力するための表示パネル等が設けられている。
【0045】
なお、制御装置70を剥離試験装置1とは別体的に構成してもよく、一般的なPCを制御装置として使用してもよい。また、制御装置70を移動機構20および押圧機構66の制御のみに使用し、荷重測定器40からの試験結果の出力は外部のPC等の処理装置に出力するようにしてもよい。
【0046】
次に、剥離試験装置1を用いた剥離試験の手順について説明する。図3(a)および(b)は、剥離試験装置1による剥離試験の手順の一部を示した図である。
【0047】
剥離試験では、まず試験片2を試験板36の被貼着面38に貼着する。このとき、試験板36を被貼着部材30の本体30aに固定した後に試験片2を試験板36に貼着するようにしてもよいし、試験板36を被貼着部材30の本体30aに固定する前に試験片2を試験板36に貼着するようにしてもよい。なお、試験片2の一端は試験板36に貼着せずに把持部材50に把持させる部分とする。
【0048】
次に、同図(a)に示されるように、圧着ロール60を使用して貼着した試験片2を所定の押圧力、例えばJIS Z 0237に規定される20Nの押圧力で試験板36に圧着する。この試験片2の圧着は、押圧機構66により圧着ロール60を被貼着部材30に押圧しながら被貼着部材30を回転させることによって行う。このとき、被貼着部材30の回転は、手動で行ってもよいし、被貼着部材30または圧着ロール60を回転させる専用の駆動機構を設けて自動的に行うようにしてもよい。
【0049】
圧着ロール60の押圧力は、同図(a)に示されるように、被貼着部材30のブラケット32と把持部材50を接続ロッド68で接続することにより、荷重測定器40で測定することができる。制御装置70は、荷重測定器40による測定結果に基づいて、押圧力が一定となるように押圧機構66を制御する。
【0050】
次に、圧着ロール60を開放し、被貼着部材30を回転させて試験片2を把持部材50に近づけ、試験片2の貼着しなかった一端を把持部材50に把持させる。そして、同図(b)に示されるように、移動機構20によって被貼着部材30を把持部材50から離隔する方向に移動させる。このとき、制御装置70は、試験条件に基づいて予め設定された速度で被貼着部材30を移動させるように、移動機構20を制御する。被貼着部材30の移動速度は、試験中一定であってもよいし、変化させてもよい。
【0051】
被貼着部材30の移動に伴い、試験片2は試験板36から徐々に剥離していく。従って、荷重測定器40は、試験片2の試験板36からの剥離に要する力を測定することとなる。荷重測定器40の測定結果は、時系列的なデータとして制御装置70に記憶されると共に、必要であれば表示パネル等に出力される。以上の手順により、1回の剥離試験が終了する。
【0052】
次に、剥離試験装置1による剥離試験における剥離角度について説明する。図4(a)〜(c)は、剥離試験における剥離角度を示した図である。
【0053】
ここで、同図(a)に示されるように、試験片2の試験板36に貼着された部分を貼着部2a、試験板36に貼着されていない部分を引張部2b、貼着部2aと引張部2bの間を剥離部2cとすると、被貼着面38の剥離部2cにおける接線T(支軸34と直交する方向の接線)と引張部2bのなす角度θが剥離角度となる。
【0054】
試験片2を試験板36から剥離していくと、貼着部2aが短くなり、引張部2bが長くなるため、剥離部2cの位置が試験板36上を移動し、剥離角度θが変化することとなる。このため、本実施形態では、上述のように被貼着部材30を回転自在に配置することで、試験片2が試験板36から剥離した場合に、力のバランスによって自然に被貼着部材30が回転し、剥離部2cが常に把持中心Aと回転中心Bを結ぶ直線S上に位置するようにしている。これにより、剥離試験装置1では、複雑な機構等を備えることなく、剥離試験中の剥離角度θを略一定に保つことができるようになっている。
【0055】
従って、同図(a)に示されるように、被貼着面38を被貼着部材30の回転中心Bを中心とする円弧状に構成した場合には、剥離試験中の剥離角度θを90度に略一定に保つことができる。すなわち、90度剥離試験を高精度に行うことが可能となっている。また、同図(b)および(c)に示されるように、被貼着面38を適宜の曲面から構成することにより、剥離試験中の剥離角度θを90度以外の任意の角度で略一定に保つことが可能となる。
【0056】
例えば、支軸34方向断面が対数螺旋曲線(等角螺旋曲線)となるように、被貼着面38を構成することにより、剥離試験中の剥離角度θを90度以外の任意の角度で略一定に保つことができる。この対数螺旋曲線は、tを媒介変数とする(x,y)座標として次の式で表される。
【数1】
上式において、a、bは定数であり、a>0、b≧0である。なお、b=0の場合、対数螺旋曲線は円(円弧)となる。対数螺旋曲線上の各点における接線の傾きは、次の式で表される。
【数2】
また、対数螺旋曲線上の各点と原点(0,0)を結ぶ直線の傾きは、次の式で表される。
【数3】
従って、原点(0,0)を支軸34の中心(回転中心)Bと設定した場合の剥離角度θは、次の式から求められる。
【数4】
すなわち、剥離角度θは曲線上のいずれの点においても一定となっている。また、bの値を変更することによって、0度〜180度の範囲で任意の剥離角度θを設定することができる。
【0057】
図5(a)〜(c)は、対数螺旋曲線の例を示した図である。同図(a)は、a=1、b=0.5とした場合の対数螺旋曲線であり、剥離角度θは63.43度となる。同図(b)は、a=1、b=1とした場合の対数螺旋曲線であり、剥離角度θは45度となる。同図(c)は、a=1、b=1.5とした場合の対数螺旋曲線であり、剥離角度θは33.69度となる。
【0058】
また、このように、剥離試験中の剥離角度θを90度以外の任意の角度で略一定に保つように被貼着面38を構成した場合、被貼着部材30の回転に伴って回転中心Bから剥離部2cまでの距離が変化するため、移動機構20による被貼着部材30の移動距離に対する被貼着部材30からの試験片2の剥離長さが変化することとなる。この場合、被貼着部材30の移動距離Lmと試験片の剥離長さLpの関係は、次の式で表される。
【数5】
従って、剥離試験中の剥離速度を一定に保った状態で剥離試験を行う場合には、上記数式に基づいて、制御装置70が被貼着部材30の移動速度を適宜に制御するようにすればよい。なお、剥離角度θを90度で一定に保つようにした場合(被貼着面38を円弧状に構成した場合)には、被貼着部材30の移動距離Lmと試験片の剥離長さLpは等しくなる。
【0059】
図6(a)および(b)は、被貼着部材30の取付け方向を逆にして剥離試験を行う場合を示した図である。この場合、同図(a)における剥離角度θに対し、被貼着部材30の取付け方向を逆にした同図(b)における剥離角度はθi=180°−θとなる。このように、剥離試験中の剥離角度θを90度以外の任意の角度で略一定に保つように被貼着面38を構成した場合、被貼着部材30の取付け方向を反転させる、すなわち被貼着部材30に対する試験片2の貼着方向を逆にすることによって、2種類の剥離角度における剥離試験を行うことが可能となっている。
【0060】
なお、被貼着部材30を多角柱状に構成するようにしてもよい。図7(a)〜(c)は被貼着部材30を三角柱状に構成した例を示した図であり、図8(a)〜(c)は被貼着部材30を四角柱状に構成した例を示した図である。
【0061】
これらの例では、被貼着部材30の本体30aが多角柱状に構成され、本体30aの外周の各面にそれぞれ試験板36が固定されている。そして、各試験板36はそれぞれ平板状に構成されており、被貼着面38は平面となっている。
【0062】
図7(a)〜(c)では、被貼着部材30の断面形状を正三角形状とした例を示している。従って、剥離試験開始時の剥離角度θは、同図(a)に示されるように、30度となる。そして、この状態から被貼着部材30を把持部材50から離隔させて試験片2を剥離していくにつれて、同図(b)および(c)に示されるように、剥離角度θが漸次増大していくようになっている。具体的には、被貼着部材30の断面形状を正三角形状とした場合の剥離角度θは、被貼着部材30の回転角度をγとすると、次の式によって表される。
【数6】
そして、この場合、剥離長さLpはγの関数となり、回転中心Bから正三角形の各頂点までの距離をdとすると次の式によって表される。
【数7】
さらに、この場合、被貼着部材30の回転に伴って回転中心Bから剥離部2cまでの距離が変化するため、移動機構20による被貼着部材30の移動距離Lmはγの関数となり、次の式によって表される。
【数8】
図8(a)〜(c)では、被貼着部材30の断面形状を正方形状とした例を示している。従って、剥離試験開始時の剥離角度θは、同図(a)に示されるように、45度となる。そして、この状態から試験片2が剥離していくにつれて、同図(b)および(c)に示されるように、剥離角度θが漸次増大していく。具体的には、被貼着部材30の断面形状を正方形状とした場合の剥離角度θは、被貼着部材30の回転角度をγとすると、次の式によって表される。
【数9】
そして、この場合、剥離長さLpは、回転中心Bから正方形の各頂点までの距離をdとすると次の式によって表される。
【数10】
さらに、この場合、移動機構20による被貼着部材30の移動距離Lmは、次の式によって表される。
【数11】
このように、被貼着部材30を多角柱状に構成した場合、剥離試験中に剥離角度θを漸次変化させることが可能となるため、様々な剥離角度θにおける試験片2の剥離に要する力の測定を、1回の剥離試験において行うことができる。また、ロータリーエンコーダまたはポテンショメータ等を設置して被貼着部材30の回転角度γを測定し、この回転角度γの測定結果および上記各数式に基づいて、制御装置70が被貼着部材30の移動速度を適宜に制御することにより、例えば、剥離角度θの変化率を一定に保った剥離試験や、試験片2の試験板からの剥離速度を一定に保った剥離試験等を行うことができる。
【0063】
図9(a)〜(c)、ならびに図10(a)および(b)は、その他の被貼着部材30の例を示した図である。被貼着部材30は、例えば図9(a)に示されるように、本体30aを多角柱状に構成する代わりに、1つの平板状の試験板36を固定可能な形状に構成するようにしてもよい。また、図9(b)に示されるように、本体30aを円柱または円筒の一部を切欠いた形状とし、この切欠き部分に試験板36を固定するようにしてもよい。
【0064】
被貼着部材30をこのように構成した場合にも、上述した多角柱状の被貼着部材30と同様に、被貼着部材30の回転に伴って剥離角度θが漸次増大することとなる。具体的には、図9(c)に示されるように、剥離試験開始時の初期剥離角度をθs、被貼着部材30の回転角度をγとすると、剥離角度θは次の式によって表される。
【数12】
そして、図9(c)に示されるように、回転中心Bから剥離試験開始時の剥離部2cまでの距離をdとすると、剥離長さLpは次の式によって表される。
【数13】
また、移動機構20による被貼着部材30の移動距離Lmは、次の式によって表される。
【数14】
なお、これらの式においてθsの値を30度または45度とすると、上述の三角柱状または四角柱状の被貼着部材30の場合と同一の式となる。すなわち、これらの式は、被貼着面38を平面状に構成した場合の剥離角度θ、剥離長さLpおよび移動距離Lmの式を一般化したものとなっている。
【0065】
さらに、被貼着部材30は、図10(a)または(b)に示されるように、試験板36の被貼着面38の形状が、被貼着部材30の回転に伴う剥離角度θの変化が任意の変化率となるように設定された曲面から構成されるものであってもよい。
【0066】
このように、本実施形態の剥離試験装置1では、試験板36の被貼着面38の形状を適宜に設定すると共に、制御装置70によって被貼着部材30の移動を適宜に制御することにより、従来にない様々な剥離試験を行うことが可能となっている。
【0067】
図11は、剥離試験装置1に試験片2の剥離部2cの挙動を観察するためのカメラを備えた例を示した断面図である。この例では、同図に示されるように、被貼着部材30の内部において剥離部2cに対向させたカメラ80を支軸34に固定すると共に、試験板36を透明なガラスや樹脂等から構成している。
【0068】
このようにすることで、試験片2を試験板36から剥離する際の剥離部2cの挙動を、試験板36を通して詳細に観察することが可能となり、剥離現象における物理的挙動の解析や研究を行うことができる。また、より多様な観点から試験片2の粘着性等について評価を行うことができる。
【0069】
カメラ80による撮像データは、制御装置70もしくは所定の記憶手段に保存され、必要であれば所定の表示手段に出力される。なお、カメラ80の制御は、制御装置70で行うようにしてもよいし、別の装置を設けるようにしてもよい。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係る剥離試験装置1は、試験片2が貼着される被貼着面38を備えて支軸34に回動自在に支持される被貼着部材30と、被貼着部材30に貼着された試験片2の一端を把持する把持部材50と、被貼着部材30および把持部材50を相対的に近接離隔させる移動機構20と、移動機構20を制御する制御装置70と、把持部材50に加わる荷重を測定する荷重測定器40と、を備えている。
【0071】
このため、複雑な構造や制御装置を備えることなく、剥離試験中における試験片2の剥離角度θを一定に保つことが可能となり、90度剥離試験を始めとする各種剥離試験を高精度に行うことができる。また、剥離試験中の剥離角度θを任意の角度で一定に保つことが可能であるだけでなく、剥離試験中の剥離角度θや剥離速度を任意の変化率で変化させることも可能であるため、従来にない多彩な態様で剥離試験を行うことができる。
【0072】
また、把持部材50および荷重測定器40は、固定され、移動機構20は、被貼着部材30を把持部材50に対して近接離隔させる方向に移動させる。このようにすることで、剥離試験において、荷重測定器を移動させることに起因する荷重方向の変化やノイズ等の影響を排除することができ、剥離試験を高精度に行うことができる。
【0073】
また、剥離試験装置1は、支軸34を中心に被貼着部材30を回転させた場合に、試験片2の把持部材50に把持された部分の中心Aと被貼着部材30の回転中心Bとを結ぶ直線Sに対して、被貼着面38が交差する角度(直線Sと接線Tがなす角度)が常に一定となるように、被貼着面38の形状が設定されている。
【0074】
このため、様々な剥離角度θについての剥離試験を高精度に行うことができる。直線Sと接線Tがなす角度は、鋭角または鈍角のいずれも採用することができる。また、被貼着面38を支軸34を中心とする円弧状の曲面から構成すれば、直線Sと接線Tがなす角度が90度となるため、90度剥離試験を高精度に行うことができる。
【0075】
また、制御装置70は、被貼着部材30および把持部材50の相対的な移動速度を制御することで、試験片2の剥離速度を、剥離試験ごとに変化させる、または一回の剥離試験中に変化させる。このため、剥離速度を様々に変化させた態様で剥離試験を行うことが可能となり、試験片2について従来にない多面的な評価を行うことができる。
【0076】
また、剥離試験装置1は、支軸34を中心に被貼着部材30を回転させた場合に、試験片2の把持部材50に把持された部分の中心Aと被貼着部材30の回転中心Bとを結ぶ直線Sに対して、被貼着面38が交差する角度(直線Sと接線Tがなす角度)が被貼着部材30の回転に伴って漸次変化するように、被貼着面38の形状が設定されるようにしてもよい。
【0077】
このようにすることで、剥離試験中に剥離角度θを任意の変化率で漸次変化させることが可能となり、様々な剥離角度θにおける試験片2の剥離に要する力の測定を、1回の剥離試験において行うことができる。また、被貼着面38を、平面から構成すれば、剥離角度θの変化を被貼着部材30の回転角度γに比例させることができる。
【0078】
また、制御装置70は、被貼着部材30および把持部材50の相対的な移動速度を制御することで、1回の剥離試験中、試験片2の剥離速度を一定に保持する。このため、剥離試験中に剥離角度θを変化させた場合であっても、剥離速度を一定に保つことが可能となる。これにより、様々な剥離角度θにおける試験片2の剥離に要する力の測定を1回の剥離試験で行う場合に、剥離速度の変化による影響を排除することが可能となるため、高精度に剥離試験を行うことができる。
【0079】
また、被貼着部材30は、被貼着面38を備える試験板36が着脱可能に構成されている。このため、試験板36を交換することにより、試験片2と試験板36の多種多様な組合せについての剥離試験を迅速かつ効率的に行うことができる。
【0080】
また、剥離試験装置1において、被貼着面38を備える試験板36が透明な素材から構成されると共に、試験片2が被貼着面38から剥離する部分を被貼着面38を通して観察可能に配置されたカメラ80をさらに備えるようにしてもよい。このようにすることで、剥離現象における物理的挙動の解析や研究を行うことが可能となる。
【0081】
また、剥離試験装置1は、被貼着面38に貼着された試験片2を被貼着面38に圧着するための圧着ロール60と、圧着ロール60を移動させて被貼着部材30に押圧する押圧機構66と、をさらに備え、制御装置70は、押圧機構66を制御することで、圧着ロール60の被貼着部材30への押圧力を調節する。このため、試験片2の被貼着面38への圧着を効率的且つ高精度に行うことができる。
【0082】
また、荷重測定器40は、前記圧着ロールの被貼着部材への押圧力を測定する。このため、押圧力測定用の荷重測定器を備える必要が無く、剥離試験装置1のコストを低減することができる。
【0083】
なお、本実施形態では、被貼着部材30、把持部材40および荷重測定器50を水平方向に配置すると共に、被貼着部材30を水平方向に移動させるようにしているが、これに限定されるものではなく、被貼着部材30、把持部材40および荷重測定器50を垂直方向または斜め方向に配置し、これと平行に被貼着部材30を移動させるようにしてもよい。
【0084】
また、移動機構20は、被貼着部材30、把持部材50および加重測定器40のうち被貼着部材30のみを移動させるものに限定されず、被貼着部材30と共に把持部材50および加重測定器40を移動させるものであってもよいし、把持部材50および加重測定器40のみを移動させるものであってもよい。
【0085】
また、圧着ロール60を把持部材50側に配置するようにしてもよい。この場合、把持部材50と圧着ロール60のブラケット62を接続ロッド68で接続することにより、圧着ロール60の押圧力を引張り力として加重測定器40で測定することが可能となる。
【0086】
また、圧着ロール60を移動させる押圧機構66を備えるのではなく、圧着ロール60を基台10に固定し、移動機構20を利用して被貼着部材300を圧着ロール60に押圧するようにしてもよい。
【0087】
また、本実施形態では、被貼着部材30を支持する支軸34を水平方向に配置しているが、これに限定されるものではなく、支軸34を上下方向に配置するようにしてもよい。図12は、支軸34を上下方向に配置した場合の例を示した平面図である。
【0088】
この例では、同図に示されるように、被貼着部材30のブラケット32、および圧着ロール64のブラケット62の形状を変更し、被貼着部材30の支軸34、および圧着ロール64の支軸64を上下方向に配置している。また、これに合わせて把持部材50の向きを変更している。その他の構成は、図1において説明したものと同様である。このようにすることで、被貼着部材30を円筒形状または円柱形状以外の形状とした場合に、重量の不釣り合いによる被貼着部材30の回転が剥離試験に及ぼす影響を排除することが可能となる。
【0089】
また、本実施形態では、試験片2が粘着テープである場合の例についてしたが、本実施形態に係る剥離試験装置1が、接着や溶着等された2つの部材や塗料、メッキ等の剥離試験に適用可能であることはいうまでもない。
【0090】
さらに、本実施形態の剥離試験装置1によれば、例えば紙管等にロール状に巻かれた粘着テープを回転自在にブラケット32に取付けることで、ロール状に巻かれた粘着テープの巻き戻し力の測定を行うことも可能となっている。
【0091】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の剥離試験装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の剥離試験装置は、接着等された各種部材や、塗料、メッキ等の各種剥離試験の分野において幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 剥離試験装置
2 試験片
20 移動機構
30 被貼着部材
34 被貼着部材の支軸
36 試験板
38 被貼着面
40 加重測定器
50 把持部材
60 圧着ロール
66 押圧機構
70 制御装置
80 カメラ
A 試験片の把持部材に把持された部分の中心(把持中心)
B 被貼着部材の支軸の中心(回転中心)
S 把持中心と回転中心とを結ぶ直線
T 被貼着面の剥離部における接線
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば粘着テープ・粘着シートの粘着力や、二つの部材を接着した場合の剥離接着強さ等の試験に用いられる剥離試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着テープ・粘着シートの粘着力(貼着力)や、接着剤等の剥離接着強さを測定する試験方法として、剥離試験が行われている。この剥離試験を行う方法として、例えば90度剥離試験、180度剥離試験、T形剥離試験、浮動ローラ法等がある。このうち、粘着テープ・粘着シートの試験方法については、例えばJIS Z 0237に90度剥離試験および180度剥離試験が規定されており、接着剤の試験方法については、例えばJIS K 6854−1〜4に90度剥離試験、180度剥離試験、T形剥離試験、浮動ローラ法がそれぞれ規定されている。
【0003】
粘着テープ等の粘着力を測定する場合、180度剥離試験では基材の強度や弾性率の影響を大きく受けるため、90度剥離試験によって測定することが望ましいと考えられている。但し、90度剥離試験においては、90度の剥離角度(粘着テープが貼着された試験板と引張られる粘着テープとがなす角度)を試験中一定に保つことが難しいという問題があった。すなわち、90度剥離試験では、試験板に貼着した粘着テープ等の一端を試験板と90度をなす方向に引張り、試験板から引きはがす(剥離する)際の荷重を測定するが、粘着テープを引きはがすにつれて剥離位置が試験板上を横方向に移動するため、剥離角度が変化してしまうという問題があった。
【0004】
このため、JIS Z 0237では、専用のジグを用いることにより、試験板を粘着テープ等の剥離長さだけ横方向にスライドさせる手法が紹介されている(非特許文献1参照)。このジグは、具体的には、粘着テープ等の一端を把持する上部つかみとスライド可能な試験板を備えるジグを把持する下部つかみとの間の距離が拡大するのに伴い、試験板が紐で引張られてスライドするように構成されている。
【0005】
また、粘着テープの剥離と試験板のスライドを機械的に連動させるのではなく、粘着テープ等を貼着した試験板をステッピングモータとボールねじによってスライドさせる手法等も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−113438号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日本工業規格 JIS Z 0237
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記非特許文献1に記載の手法では、粘着テープ等の基材が伸びやすい材質から構成されている場合、引張られた粘着テープ等の伸びによって剥離長さと試験板のスライド距離にズレが生じ、剥離角度を試験中一定に保つことができないという問題があった。このため、測定精度が低下すると共に測定可能な粘着テープ等の種類や剥離速度に制限が生じることとなり、90度剥離試験を粘着テープ等の試験手法として確立することは困難であった。
【0009】
また、上記特許文献1に記載の手法では、粘着テープ等の一端を固定(把持)する固定部と試験板の両方について、移動ガイドや駆動装置を備える必要があり、測定装置が複雑且つ高コストになるという問題があった。また、粘着テープ等の伸びを考慮して試験板を移動させることは可能であるものの、実際には試験時の粘着テープ等の伸びを予測することは困難であり、また、粘着テープ等の伸びや剥離角度を測定してフィードバック制御を行うとしても複雑な測定手法や制御手法が要求されるため、さらに測定装置が複雑且つ高コストになるという問題があった。
【0010】
また、上記特許文献1に記載の手法では、上記非特許文献1に記載の手法とは異なり、剥離角度を90度以外の角度に設定して剥離試験を行うことが可能であるが、試験中の剥離角度が常に固定されるという問題があった。すなわち、剥離角度を試験中任意の比率で変化させるというようなことまでは考慮されていないため、粘着テープ等の粘着性に対して従来にない試験を行い、多様な観点から評価する必要性が生じた場合には対応できないという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、90度剥剥離試験を低コストで高精度に行うと共に、従来にない新たな試験方法を含むその他の剥離試験にも対応可能な剥離試験装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明はまた、試験片が貼着される被貼着面を備えて支軸に回動自在に支持される被貼着部材と、前記被貼着部材に貼着された前記試験片の一端を把持する把持部材と、前記被貼着部材および前記把持部材を相対的に近接離隔させる移動機構と、前記移動機構を制御する制御装置と、前記把持部材に加わる荷重を測定する荷重測定器と、を備えることを特徴とする、剥離試験装置である。
【0013】
(2)本発明はまた、前記把持部材および前記荷重測定器は、固定され、前記移動機構は、前記被貼着部材を前記把持部材に対して近接離隔させる方向に移動させることを特徴とする、上記(1)に記載の剥離試験装置である。
【0014】
(3)本発明はまた、前記支軸を中心に前記被貼着部材を回転させた場合に、前記試験片の前記把持部材に把持された部分の中心と前記被貼着部材の回転中心とを結ぶ直線に対して、前記被貼着面が交差する角度が常に一定となるように、前記被貼着面の形状が設定されていることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の剥離試験装置である。
【0015】
(4)本発明はまた、前記角度は、鋭角または鈍角であることを特徴とする、上記(3)に記載の剥離試験装置である。
【0016】
(5)本発明はまた、前記被貼着面は、前記支軸を中心とする円弧状の曲面から構成されることを特徴とする、上記(3)に記載の剥離試験装置である。
【0017】
(6)本発明はまた、前記制御装置は、前記被貼着部材および前記把持部材の相対的な移動速度を制御することで、前記試験片の剥離速度を、剥離試験ごとに変化させる、または一回の剥離試験中に変化させることを特徴とする、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の剥離試験装置である。
【0018】
(7)本発明はまた、前記支軸を中心に前記被貼着部材を回転させた場合に、前記試験片の前記把持部材に把持された部分の中心と前記被貼着部材の回転中心とを結ぶ直線に対して、前記被貼着面が交差する角度が前記被貼着部材の回転に伴って漸次変化するように、前記被貼着面の形状が設定されていることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の剥離試験装置である。
【0019】
(8)本発明はまた、前記被貼着面は、平面から構成されることを特徴とする、上記(7)に記載の剥離試験装置である。
【0020】
(9)本発明はまた、前記制御装置は、前記被貼着部材および前記把持部材の相対的な移動速度を制御することで、1回の剥離試験中、前記試験片の剥離速度を一定に保持することを特徴とする、上記(7)または(8)に記載の剥離試験装置である。
【0021】
(10)本発明はまた、前記被貼着部材は、前記被貼着面が着脱可能に構成されていることを特徴とする、上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の剥離試験装置である。
【0022】
(11)本発明はまた、前記被貼着面が透明な素材から構成されると共に、前記試験片が前記被貼着面から剥離する部分を前記被貼着面を通して観察可能に配置されたカメラをさらに備えることを特徴とする、上記(1)乃至(10)のいずれかに記載の剥離試験装置である。
【0023】
(12)本発明はまた、前記被貼着面に貼着された前記試験片を前記被貼着面に圧着するための圧着ロールと、前記圧着ロールを移動させて前記被貼着部材に押圧する押圧機構と、をさらに備え、前記制御装置は、前記押圧機構を制御することで、前記圧着ロールの前記被貼着部材への押圧力を調節することを特徴とする、上記(1)乃至(11)のいずれかに記載の剥離試験装置である。
【0024】
(13)本発明はまた、前記荷重測定器は、前記圧着ロールの前記被貼着部材への押圧力を測定することを特徴とする、上記(12)に記載の剥離試験装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明剥離試験装置によれば、90度剥剥離試験を低コストで高精度に行うことが可能であり、さらに、従来にない新たな試験方法を含むその他の剥離試験にも対応することが可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る剥離試験装置の概略図である。
【図2】(a)被貼着部材の一例を示した概略図である。(b)および(c)被貼着部材の他の例を示した概略図である。
【図3】(a)および(b)剥離試験装置による剥離試験の手順の一部を示した図である。
【図4】(a)〜(c)剥離試験における剥離角度を示した図である。
【図5】(a)〜(c)対数螺旋曲線の例を示した図である。
【図6】(a)および(b)被貼着部材の取付け方向を逆にして剥離試験を行う場合を示した図である。
【図7】(a)〜(c)被貼着部材を三角柱状に構成した例を示した図である。
【図8】(a)〜(c)被貼着部材を四角柱状に構成した例を示した図である。
【図9】(a)〜(c)その他の被貼着部材の例を示した図である。
【図10】(a)および(b)その他の被貼着部材の例を示した図である。
【図11】剥離試験装置に試験片の剥離部の挙動を観察するためのカメラを備えた例を示した断面図である。
【図12】支軸を上下方向に配置した場合の例を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0028】
まず、本発明の実施の形態に係る剥離試験装置1について説明する。図1は、本実施形態に係る剥離試験装置1の概略図である。
【0029】
同図に示されるように、剥離試験装置1は、基台10と、基台10の上部に配置された移動機構20と、移動機構20上に配置された被貼着部材30と、被貼着部材30に対向するように基台10上に配置された荷重測定器40と、荷重測定器40に接続された把持部材50と、被貼着部材30に隣接して移動機構20上に配置された圧着ロール60と、基台10内部に配置された制御装置70と、を備えて構成されている。
【0030】
基台10は、移動機構20、被貼着部材30、荷重測定器40、把持部材50および圧着ロール60等を支持すると共に、制御装置70を内部に収容する部材である。なお、基台10の形状は特に限定されるものではなく、各部材を適宜に配置して支持できるものであればよい。
【0031】
移動機構20は、ステージ22を水平方向に直線往復移動させるものである。移動機構20は、図示は省略するが、ステージ22の移動をガイドするリニアガイド、およびステッピングモータにより駆動されるボールねじ伝導機構等を備えている。従って、移動機構20は、制御装置70に制御されてステージ22を任意の速度で移動させると共に、任意の位置で停止させることが可能に構成されている。
【0032】
ステージ22上には、被貼着部材30および圧着ロール60が載置されている。そして、移動機構20は、基台10上において把持部材50に対して被貼着部材30を近接離隔させる方向に配置されている。なお、ステッピングモータおよびボールねじ伝導機構に代えて、例えばリニアモータによりステージ22を移動させるように移動機構20を構成してもよい。
【0033】
被貼着部材30は、剥離試験を行う粘着テープ等の試験片2が貼り付けられる部材である。被貼着部材30は、ステージ22上に固定されたブラケット32に、支軸34を介して回動自在に取付けられている。すなわち、被貼着部材30は、ステージ22上において支軸34に支持されると共に、支軸34を中心として自由に回転可能な状態となっている。
【0034】
図2(a)は、被貼着部材30の一例を示した概略図である。この例では、同図に示されるように、被貼着部材30は、支軸を中心軸とする円筒状または円柱状の本体30a、および本体30aの外周に固定される複数の試験板36から構成された部材である。試験板36の外周面は、試験片2が貼り付けられる被貼着面38となっている。
【0035】
この例では、試験板36は、円形断面の筒状の部材を4分割した形状となっている。試験板36は、図示を省略したねじによって、または自身の一部を本体30aに係合させることによって本体30aに着脱可能に固定される。被貼着面38は、円弧状の曲面に構成されている。従って、試験板36が本体30aに固定された状態では、被貼着面38は、支軸34に平行、且つ支軸34を中心とする円弧状の曲面となる。
【0036】
試験板36は、実行する剥離試験の内容に応じて、各種金属、樹脂または木材等の様々な素材から構成することができる。また、試験板36の被貼着面38は、実行する剥離試験の内容に応じて、様々な表面性状にすることができる。本実施形態では、試験板36を被貼着部材30に対して着脱可能に構成することで、多様な試験条件に基づく剥離試験を容易且つ迅速に行うことができるようにしている。
【0037】
なお、試験板36の分割数は4に限定されるものではなく、その他の分割数であってもよい。また、分割するのではなく、試験板36を筒状に構成するようにしてもよい。また、本体30aの形状は円筒状または円柱状に限定されるものではなく、支軸34を中心に回動可能且つ試験板36を固定可能であればその他の形状であってもよい。図2(b)および(c)は、被貼着部材30の他の例を示した概略図である。例えば、同図(b)に示されるように、被貼着部材30の本体30aを1/4円弧状の試験板36を1つ固定可能な形状に構成するようにしてもよいし、同図(c)に示されるように、被貼着部材30の本体30aに1/2円弧状の試験板36を1つ固定可能な形状に構成するようにしてもよい。
【0038】
図1に戻って、荷重測定器40は、試験板36に貼着された試験片2を試験板36から剥離するのに要する荷重(引張り力)を測定するものである。本実施形態では、荷重測定器40をロードセルから構成している。荷重測定器40は、基台10上に設けられた架台12上に固定されており、着力点42が被貼着部材30の支軸34と略同一の高さとなるように配置されている。また、荷重測定器40は制御装置70と電気的に接続されており、出力は制御装置70に送信される。
【0039】
なお、荷重検出器40の力の検出方式は特に限定されるものではなく、ひずみゲージ式、圧電式、容量式、電磁式または音叉式等のいずれであってもよい。また、本実施形態では、荷重測定器40を圧着ロール60の押圧力の測定にも使用するため、荷重測定器40は引張り力と圧縮力の両方を測定可能なものを使用している。
【0040】
把持部材50は、被貼着部材30に貼着された試験片2の貼着されていない一端を把持するものである。把持部材50は、ロッド52を介して荷重測定器40の着力点42に接続されている。本実施形態では、2つの部材の間に試験片2の端部を挟持するように把持部材50を構成している。また、試験片2の把持部材50に把持された部分の中心(把持中心)Aの高さが、被貼着部材30の支軸34の中心(回転中心)Bと略同一の高さとなるように、把持部材50を配置している。従って、把持中心Aと回転中心Bを結ぶ直線Sは略水平方向であり、移動機構20による被貼着部材30の移動方向と略平行となっている。
【0041】
なお、把持部材50の構造は、試験片2の端部を挟持する構造に限定されるものではなく、例えば、試験片2の端部に設けた穴に係止する構造や、ねじによって試験片を固定する構造等、その他の構造であってもよい。
【0042】
圧着ロール60は、試験板36に貼着した試験片2を試験板36に向けて押圧し、圧着させるものである。本実施形態では、圧着ロール60をゴムロールから構成している。圧着ロール60は、ステージ22上に配置されたブラケット62に支軸64を介して回動自在に固定されており、支軸64の中心Cが被貼着部材30の支軸34の中心Bと略同一の高さとなるように配置されている。従って、圧着ロール60の支軸64の中心Cは、把持中心Aと回転中心Bを結ぶ直線S上に位置している。
【0043】
また、ステージ22には、ブラケット62を水平方向に移動させて、圧着ロール60を被貼着部材30に押圧させる押圧機構66が設けられている。押圧機構66は、図示は省略するが、移動機構20と同様に、ブラケット62の移動をガイドするリニアガイド、およびステッピングモータにより駆動されるボールねじ伝導機構等を備えている。
【0044】
制御装置70は、移動機構20および押圧機構66の動作を制御すると共に、荷重測定器40からの出力を荷重の値に変換して出力または記憶するものである。制御装置70は、CPU、ならびにROM、RAMおよびハードディスク等の記憶手段を備えて構成されている。また、図示は省略するが、制御装置70には、剥離試験装置1を操作するための操作パネルや試験結果等の各種情報を出力するための表示パネル等が設けられている。
【0045】
なお、制御装置70を剥離試験装置1とは別体的に構成してもよく、一般的なPCを制御装置として使用してもよい。また、制御装置70を移動機構20および押圧機構66の制御のみに使用し、荷重測定器40からの試験結果の出力は外部のPC等の処理装置に出力するようにしてもよい。
【0046】
次に、剥離試験装置1を用いた剥離試験の手順について説明する。図3(a)および(b)は、剥離試験装置1による剥離試験の手順の一部を示した図である。
【0047】
剥離試験では、まず試験片2を試験板36の被貼着面38に貼着する。このとき、試験板36を被貼着部材30の本体30aに固定した後に試験片2を試験板36に貼着するようにしてもよいし、試験板36を被貼着部材30の本体30aに固定する前に試験片2を試験板36に貼着するようにしてもよい。なお、試験片2の一端は試験板36に貼着せずに把持部材50に把持させる部分とする。
【0048】
次に、同図(a)に示されるように、圧着ロール60を使用して貼着した試験片2を所定の押圧力、例えばJIS Z 0237に規定される20Nの押圧力で試験板36に圧着する。この試験片2の圧着は、押圧機構66により圧着ロール60を被貼着部材30に押圧しながら被貼着部材30を回転させることによって行う。このとき、被貼着部材30の回転は、手動で行ってもよいし、被貼着部材30または圧着ロール60を回転させる専用の駆動機構を設けて自動的に行うようにしてもよい。
【0049】
圧着ロール60の押圧力は、同図(a)に示されるように、被貼着部材30のブラケット32と把持部材50を接続ロッド68で接続することにより、荷重測定器40で測定することができる。制御装置70は、荷重測定器40による測定結果に基づいて、押圧力が一定となるように押圧機構66を制御する。
【0050】
次に、圧着ロール60を開放し、被貼着部材30を回転させて試験片2を把持部材50に近づけ、試験片2の貼着しなかった一端を把持部材50に把持させる。そして、同図(b)に示されるように、移動機構20によって被貼着部材30を把持部材50から離隔する方向に移動させる。このとき、制御装置70は、試験条件に基づいて予め設定された速度で被貼着部材30を移動させるように、移動機構20を制御する。被貼着部材30の移動速度は、試験中一定であってもよいし、変化させてもよい。
【0051】
被貼着部材30の移動に伴い、試験片2は試験板36から徐々に剥離していく。従って、荷重測定器40は、試験片2の試験板36からの剥離に要する力を測定することとなる。荷重測定器40の測定結果は、時系列的なデータとして制御装置70に記憶されると共に、必要であれば表示パネル等に出力される。以上の手順により、1回の剥離試験が終了する。
【0052】
次に、剥離試験装置1による剥離試験における剥離角度について説明する。図4(a)〜(c)は、剥離試験における剥離角度を示した図である。
【0053】
ここで、同図(a)に示されるように、試験片2の試験板36に貼着された部分を貼着部2a、試験板36に貼着されていない部分を引張部2b、貼着部2aと引張部2bの間を剥離部2cとすると、被貼着面38の剥離部2cにおける接線T(支軸34と直交する方向の接線)と引張部2bのなす角度θが剥離角度となる。
【0054】
試験片2を試験板36から剥離していくと、貼着部2aが短くなり、引張部2bが長くなるため、剥離部2cの位置が試験板36上を移動し、剥離角度θが変化することとなる。このため、本実施形態では、上述のように被貼着部材30を回転自在に配置することで、試験片2が試験板36から剥離した場合に、力のバランスによって自然に被貼着部材30が回転し、剥離部2cが常に把持中心Aと回転中心Bを結ぶ直線S上に位置するようにしている。これにより、剥離試験装置1では、複雑な機構等を備えることなく、剥離試験中の剥離角度θを略一定に保つことができるようになっている。
【0055】
従って、同図(a)に示されるように、被貼着面38を被貼着部材30の回転中心Bを中心とする円弧状に構成した場合には、剥離試験中の剥離角度θを90度に略一定に保つことができる。すなわち、90度剥離試験を高精度に行うことが可能となっている。また、同図(b)および(c)に示されるように、被貼着面38を適宜の曲面から構成することにより、剥離試験中の剥離角度θを90度以外の任意の角度で略一定に保つことが可能となる。
【0056】
例えば、支軸34方向断面が対数螺旋曲線(等角螺旋曲線)となるように、被貼着面38を構成することにより、剥離試験中の剥離角度θを90度以外の任意の角度で略一定に保つことができる。この対数螺旋曲線は、tを媒介変数とする(x,y)座標として次の式で表される。
【数1】
上式において、a、bは定数であり、a>0、b≧0である。なお、b=0の場合、対数螺旋曲線は円(円弧)となる。対数螺旋曲線上の各点における接線の傾きは、次の式で表される。
【数2】
また、対数螺旋曲線上の各点と原点(0,0)を結ぶ直線の傾きは、次の式で表される。
【数3】
従って、原点(0,0)を支軸34の中心(回転中心)Bと設定した場合の剥離角度θは、次の式から求められる。
【数4】
すなわち、剥離角度θは曲線上のいずれの点においても一定となっている。また、bの値を変更することによって、0度〜180度の範囲で任意の剥離角度θを設定することができる。
【0057】
図5(a)〜(c)は、対数螺旋曲線の例を示した図である。同図(a)は、a=1、b=0.5とした場合の対数螺旋曲線であり、剥離角度θは63.43度となる。同図(b)は、a=1、b=1とした場合の対数螺旋曲線であり、剥離角度θは45度となる。同図(c)は、a=1、b=1.5とした場合の対数螺旋曲線であり、剥離角度θは33.69度となる。
【0058】
また、このように、剥離試験中の剥離角度θを90度以外の任意の角度で略一定に保つように被貼着面38を構成した場合、被貼着部材30の回転に伴って回転中心Bから剥離部2cまでの距離が変化するため、移動機構20による被貼着部材30の移動距離に対する被貼着部材30からの試験片2の剥離長さが変化することとなる。この場合、被貼着部材30の移動距離Lmと試験片の剥離長さLpの関係は、次の式で表される。
【数5】
従って、剥離試験中の剥離速度を一定に保った状態で剥離試験を行う場合には、上記数式に基づいて、制御装置70が被貼着部材30の移動速度を適宜に制御するようにすればよい。なお、剥離角度θを90度で一定に保つようにした場合(被貼着面38を円弧状に構成した場合)には、被貼着部材30の移動距離Lmと試験片の剥離長さLpは等しくなる。
【0059】
図6(a)および(b)は、被貼着部材30の取付け方向を逆にして剥離試験を行う場合を示した図である。この場合、同図(a)における剥離角度θに対し、被貼着部材30の取付け方向を逆にした同図(b)における剥離角度はθi=180°−θとなる。このように、剥離試験中の剥離角度θを90度以外の任意の角度で略一定に保つように被貼着面38を構成した場合、被貼着部材30の取付け方向を反転させる、すなわち被貼着部材30に対する試験片2の貼着方向を逆にすることによって、2種類の剥離角度における剥離試験を行うことが可能となっている。
【0060】
なお、被貼着部材30を多角柱状に構成するようにしてもよい。図7(a)〜(c)は被貼着部材30を三角柱状に構成した例を示した図であり、図8(a)〜(c)は被貼着部材30を四角柱状に構成した例を示した図である。
【0061】
これらの例では、被貼着部材30の本体30aが多角柱状に構成され、本体30aの外周の各面にそれぞれ試験板36が固定されている。そして、各試験板36はそれぞれ平板状に構成されており、被貼着面38は平面となっている。
【0062】
図7(a)〜(c)では、被貼着部材30の断面形状を正三角形状とした例を示している。従って、剥離試験開始時の剥離角度θは、同図(a)に示されるように、30度となる。そして、この状態から被貼着部材30を把持部材50から離隔させて試験片2を剥離していくにつれて、同図(b)および(c)に示されるように、剥離角度θが漸次増大していくようになっている。具体的には、被貼着部材30の断面形状を正三角形状とした場合の剥離角度θは、被貼着部材30の回転角度をγとすると、次の式によって表される。
【数6】
そして、この場合、剥離長さLpはγの関数となり、回転中心Bから正三角形の各頂点までの距離をdとすると次の式によって表される。
【数7】
さらに、この場合、被貼着部材30の回転に伴って回転中心Bから剥離部2cまでの距離が変化するため、移動機構20による被貼着部材30の移動距離Lmはγの関数となり、次の式によって表される。
【数8】
図8(a)〜(c)では、被貼着部材30の断面形状を正方形状とした例を示している。従って、剥離試験開始時の剥離角度θは、同図(a)に示されるように、45度となる。そして、この状態から試験片2が剥離していくにつれて、同図(b)および(c)に示されるように、剥離角度θが漸次増大していく。具体的には、被貼着部材30の断面形状を正方形状とした場合の剥離角度θは、被貼着部材30の回転角度をγとすると、次の式によって表される。
【数9】
そして、この場合、剥離長さLpは、回転中心Bから正方形の各頂点までの距離をdとすると次の式によって表される。
【数10】
さらに、この場合、移動機構20による被貼着部材30の移動距離Lmは、次の式によって表される。
【数11】
このように、被貼着部材30を多角柱状に構成した場合、剥離試験中に剥離角度θを漸次変化させることが可能となるため、様々な剥離角度θにおける試験片2の剥離に要する力の測定を、1回の剥離試験において行うことができる。また、ロータリーエンコーダまたはポテンショメータ等を設置して被貼着部材30の回転角度γを測定し、この回転角度γの測定結果および上記各数式に基づいて、制御装置70が被貼着部材30の移動速度を適宜に制御することにより、例えば、剥離角度θの変化率を一定に保った剥離試験や、試験片2の試験板からの剥離速度を一定に保った剥離試験等を行うことができる。
【0063】
図9(a)〜(c)、ならびに図10(a)および(b)は、その他の被貼着部材30の例を示した図である。被貼着部材30は、例えば図9(a)に示されるように、本体30aを多角柱状に構成する代わりに、1つの平板状の試験板36を固定可能な形状に構成するようにしてもよい。また、図9(b)に示されるように、本体30aを円柱または円筒の一部を切欠いた形状とし、この切欠き部分に試験板36を固定するようにしてもよい。
【0064】
被貼着部材30をこのように構成した場合にも、上述した多角柱状の被貼着部材30と同様に、被貼着部材30の回転に伴って剥離角度θが漸次増大することとなる。具体的には、図9(c)に示されるように、剥離試験開始時の初期剥離角度をθs、被貼着部材30の回転角度をγとすると、剥離角度θは次の式によって表される。
【数12】
そして、図9(c)に示されるように、回転中心Bから剥離試験開始時の剥離部2cまでの距離をdとすると、剥離長さLpは次の式によって表される。
【数13】
また、移動機構20による被貼着部材30の移動距離Lmは、次の式によって表される。
【数14】
なお、これらの式においてθsの値を30度または45度とすると、上述の三角柱状または四角柱状の被貼着部材30の場合と同一の式となる。すなわち、これらの式は、被貼着面38を平面状に構成した場合の剥離角度θ、剥離長さLpおよび移動距離Lmの式を一般化したものとなっている。
【0065】
さらに、被貼着部材30は、図10(a)または(b)に示されるように、試験板36の被貼着面38の形状が、被貼着部材30の回転に伴う剥離角度θの変化が任意の変化率となるように設定された曲面から構成されるものであってもよい。
【0066】
このように、本実施形態の剥離試験装置1では、試験板36の被貼着面38の形状を適宜に設定すると共に、制御装置70によって被貼着部材30の移動を適宜に制御することにより、従来にない様々な剥離試験を行うことが可能となっている。
【0067】
図11は、剥離試験装置1に試験片2の剥離部2cの挙動を観察するためのカメラを備えた例を示した断面図である。この例では、同図に示されるように、被貼着部材30の内部において剥離部2cに対向させたカメラ80を支軸34に固定すると共に、試験板36を透明なガラスや樹脂等から構成している。
【0068】
このようにすることで、試験片2を試験板36から剥離する際の剥離部2cの挙動を、試験板36を通して詳細に観察することが可能となり、剥離現象における物理的挙動の解析や研究を行うことができる。また、より多様な観点から試験片2の粘着性等について評価を行うことができる。
【0069】
カメラ80による撮像データは、制御装置70もしくは所定の記憶手段に保存され、必要であれば所定の表示手段に出力される。なお、カメラ80の制御は、制御装置70で行うようにしてもよいし、別の装置を設けるようにしてもよい。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係る剥離試験装置1は、試験片2が貼着される被貼着面38を備えて支軸34に回動自在に支持される被貼着部材30と、被貼着部材30に貼着された試験片2の一端を把持する把持部材50と、被貼着部材30および把持部材50を相対的に近接離隔させる移動機構20と、移動機構20を制御する制御装置70と、把持部材50に加わる荷重を測定する荷重測定器40と、を備えている。
【0071】
このため、複雑な構造や制御装置を備えることなく、剥離試験中における試験片2の剥離角度θを一定に保つことが可能となり、90度剥離試験を始めとする各種剥離試験を高精度に行うことができる。また、剥離試験中の剥離角度θを任意の角度で一定に保つことが可能であるだけでなく、剥離試験中の剥離角度θや剥離速度を任意の変化率で変化させることも可能であるため、従来にない多彩な態様で剥離試験を行うことができる。
【0072】
また、把持部材50および荷重測定器40は、固定され、移動機構20は、被貼着部材30を把持部材50に対して近接離隔させる方向に移動させる。このようにすることで、剥離試験において、荷重測定器を移動させることに起因する荷重方向の変化やノイズ等の影響を排除することができ、剥離試験を高精度に行うことができる。
【0073】
また、剥離試験装置1は、支軸34を中心に被貼着部材30を回転させた場合に、試験片2の把持部材50に把持された部分の中心Aと被貼着部材30の回転中心Bとを結ぶ直線Sに対して、被貼着面38が交差する角度(直線Sと接線Tがなす角度)が常に一定となるように、被貼着面38の形状が設定されている。
【0074】
このため、様々な剥離角度θについての剥離試験を高精度に行うことができる。直線Sと接線Tがなす角度は、鋭角または鈍角のいずれも採用することができる。また、被貼着面38を支軸34を中心とする円弧状の曲面から構成すれば、直線Sと接線Tがなす角度が90度となるため、90度剥離試験を高精度に行うことができる。
【0075】
また、制御装置70は、被貼着部材30および把持部材50の相対的な移動速度を制御することで、試験片2の剥離速度を、剥離試験ごとに変化させる、または一回の剥離試験中に変化させる。このため、剥離速度を様々に変化させた態様で剥離試験を行うことが可能となり、試験片2について従来にない多面的な評価を行うことができる。
【0076】
また、剥離試験装置1は、支軸34を中心に被貼着部材30を回転させた場合に、試験片2の把持部材50に把持された部分の中心Aと被貼着部材30の回転中心Bとを結ぶ直線Sに対して、被貼着面38が交差する角度(直線Sと接線Tがなす角度)が被貼着部材30の回転に伴って漸次変化するように、被貼着面38の形状が設定されるようにしてもよい。
【0077】
このようにすることで、剥離試験中に剥離角度θを任意の変化率で漸次変化させることが可能となり、様々な剥離角度θにおける試験片2の剥離に要する力の測定を、1回の剥離試験において行うことができる。また、被貼着面38を、平面から構成すれば、剥離角度θの変化を被貼着部材30の回転角度γに比例させることができる。
【0078】
また、制御装置70は、被貼着部材30および把持部材50の相対的な移動速度を制御することで、1回の剥離試験中、試験片2の剥離速度を一定に保持する。このため、剥離試験中に剥離角度θを変化させた場合であっても、剥離速度を一定に保つことが可能となる。これにより、様々な剥離角度θにおける試験片2の剥離に要する力の測定を1回の剥離試験で行う場合に、剥離速度の変化による影響を排除することが可能となるため、高精度に剥離試験を行うことができる。
【0079】
また、被貼着部材30は、被貼着面38を備える試験板36が着脱可能に構成されている。このため、試験板36を交換することにより、試験片2と試験板36の多種多様な組合せについての剥離試験を迅速かつ効率的に行うことができる。
【0080】
また、剥離試験装置1において、被貼着面38を備える試験板36が透明な素材から構成されると共に、試験片2が被貼着面38から剥離する部分を被貼着面38を通して観察可能に配置されたカメラ80をさらに備えるようにしてもよい。このようにすることで、剥離現象における物理的挙動の解析や研究を行うことが可能となる。
【0081】
また、剥離試験装置1は、被貼着面38に貼着された試験片2を被貼着面38に圧着するための圧着ロール60と、圧着ロール60を移動させて被貼着部材30に押圧する押圧機構66と、をさらに備え、制御装置70は、押圧機構66を制御することで、圧着ロール60の被貼着部材30への押圧力を調節する。このため、試験片2の被貼着面38への圧着を効率的且つ高精度に行うことができる。
【0082】
また、荷重測定器40は、前記圧着ロールの被貼着部材への押圧力を測定する。このため、押圧力測定用の荷重測定器を備える必要が無く、剥離試験装置1のコストを低減することができる。
【0083】
なお、本実施形態では、被貼着部材30、把持部材40および荷重測定器50を水平方向に配置すると共に、被貼着部材30を水平方向に移動させるようにしているが、これに限定されるものではなく、被貼着部材30、把持部材40および荷重測定器50を垂直方向または斜め方向に配置し、これと平行に被貼着部材30を移動させるようにしてもよい。
【0084】
また、移動機構20は、被貼着部材30、把持部材50および加重測定器40のうち被貼着部材30のみを移動させるものに限定されず、被貼着部材30と共に把持部材50および加重測定器40を移動させるものであってもよいし、把持部材50および加重測定器40のみを移動させるものであってもよい。
【0085】
また、圧着ロール60を把持部材50側に配置するようにしてもよい。この場合、把持部材50と圧着ロール60のブラケット62を接続ロッド68で接続することにより、圧着ロール60の押圧力を引張り力として加重測定器40で測定することが可能となる。
【0086】
また、圧着ロール60を移動させる押圧機構66を備えるのではなく、圧着ロール60を基台10に固定し、移動機構20を利用して被貼着部材300を圧着ロール60に押圧するようにしてもよい。
【0087】
また、本実施形態では、被貼着部材30を支持する支軸34を水平方向に配置しているが、これに限定されるものではなく、支軸34を上下方向に配置するようにしてもよい。図12は、支軸34を上下方向に配置した場合の例を示した平面図である。
【0088】
この例では、同図に示されるように、被貼着部材30のブラケット32、および圧着ロール64のブラケット62の形状を変更し、被貼着部材30の支軸34、および圧着ロール64の支軸64を上下方向に配置している。また、これに合わせて把持部材50の向きを変更している。その他の構成は、図1において説明したものと同様である。このようにすることで、被貼着部材30を円筒形状または円柱形状以外の形状とした場合に、重量の不釣り合いによる被貼着部材30の回転が剥離試験に及ぼす影響を排除することが可能となる。
【0089】
また、本実施形態では、試験片2が粘着テープである場合の例についてしたが、本実施形態に係る剥離試験装置1が、接着や溶着等された2つの部材や塗料、メッキ等の剥離試験に適用可能であることはいうまでもない。
【0090】
さらに、本実施形態の剥離試験装置1によれば、例えば紙管等にロール状に巻かれた粘着テープを回転自在にブラケット32に取付けることで、ロール状に巻かれた粘着テープの巻き戻し力の測定を行うことも可能となっている。
【0091】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の剥離試験装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の剥離試験装置は、接着等された各種部材や、塗料、メッキ等の各種剥離試験の分野において幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 剥離試験装置
2 試験片
20 移動機構
30 被貼着部材
34 被貼着部材の支軸
36 試験板
38 被貼着面
40 加重測定器
50 把持部材
60 圧着ロール
66 押圧機構
70 制御装置
80 カメラ
A 試験片の把持部材に把持された部分の中心(把持中心)
B 被貼着部材の支軸の中心(回転中心)
S 把持中心と回転中心とを結ぶ直線
T 被貼着面の剥離部における接線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片が貼着される被貼着面を備えて支軸に回動自在に支持される被貼着部材と、
前記被貼着部材に貼着された前記試験片の一端を把持する把持部材と、
前記被貼着部材および前記把持部材を相対的に近接離隔させる移動機構と、
前記移動機構を制御する制御装置と、
前記把持部材に加わる荷重を測定する荷重測定器と、を備えることを特徴とする、
剥離試験装置。
【請求項2】
前記把持部材および前記荷重測定器は、固定され、
前記移動機構は、前記被貼着部材を前記把持部材に対して近接離隔させる方向に移動させることを特徴とする、
請求項1に記載の剥離試験装置。
【請求項3】
前記支軸を中心に前記被貼着部材を回転させた場合に、前記試験片の前記把持部材に把持された部分の中心と前記被貼着部材の回転中心とを結ぶ直線に対して、前記被貼着面が交差する角度が常に一定となるように、前記被貼着面の形状が設定されていることを特徴とする、
請求項1または2に記載の剥離試験装置。
【請求項4】
前記角度は、鋭角または鈍角であることを特徴とする、
請求項3に記載の剥離試験装置。
【請求項5】
前記被貼着面は、前記支軸を中心とする円弧状の曲面から構成されることを特徴とする、
請求項3に記載の剥離試験装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記被貼着部材および前記把持部材の相対的な移動速度を制御することで、前記試験片の剥離速度を、剥離試験ごとに変化させる、または一回の剥離試験中に変化させることを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれかに記載の剥離試験装置。
【請求項7】
前記支軸を中心に前記被貼着部材を回転させた場合に、前記試験片の前記把持部材に把持された部分の中心と前記被貼着部材の回転中心とを結ぶ直線に対して、前記被貼着面が交差する角度が前記被貼着部材の回転に伴って漸次変化するように、前記被貼着面の形状が設定されていることを特徴とする、
請求項1または2に記載の剥離試験装置。
【請求項8】
前記被貼着面は、平面から構成されることを特徴とする、
請求項7に記載の剥離試験装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記被貼着部材および前記把持部材の相対的な移動速度を制御することで、1回の剥離試験中、前記試験片の剥離速度を一定に保持することを特徴とする、
請求項7または8に記載の剥離試験装置。
【請求項10】
前記被貼着部材は、前記被貼着面が着脱可能に構成されていることを特徴とする、
請求項1乃至9のいずれかに記載の剥離試験装置。
【請求項11】
前記被貼着面が透明な素材から構成されると共に、前記試験片が前記被貼着面から剥離する部分を前記被貼着面を通して観察可能に配置されたカメラをさらに備えることを特徴とする、
請求項1乃至10のいずれかに記載の剥離試験装置。
【請求項12】
前記被貼着面に貼着された前記試験片を前記被貼着面に圧着するための圧着ロールと、
前記圧着ロールを移動させて前記被貼着部材に押圧する押圧機構と、をさらに備え、
前記制御装置は、前記押圧機構を制御することで、前記圧着ロールの前記被貼着部材への押圧力を調節することを特徴とする、
請求項1乃至11のいずれかに記載の剥離試験装置。
【請求項13】
前記荷重測定器は、前記圧着ロールの前記被貼着部材への押圧力を測定することを特徴とする、
請求項12に記載の剥離試験装置。
【請求項1】
試験片が貼着される被貼着面を備えて支軸に回動自在に支持される被貼着部材と、
前記被貼着部材に貼着された前記試験片の一端を把持する把持部材と、
前記被貼着部材および前記把持部材を相対的に近接離隔させる移動機構と、
前記移動機構を制御する制御装置と、
前記把持部材に加わる荷重を測定する荷重測定器と、を備えることを特徴とする、
剥離試験装置。
【請求項2】
前記把持部材および前記荷重測定器は、固定され、
前記移動機構は、前記被貼着部材を前記把持部材に対して近接離隔させる方向に移動させることを特徴とする、
請求項1に記載の剥離試験装置。
【請求項3】
前記支軸を中心に前記被貼着部材を回転させた場合に、前記試験片の前記把持部材に把持された部分の中心と前記被貼着部材の回転中心とを結ぶ直線に対して、前記被貼着面が交差する角度が常に一定となるように、前記被貼着面の形状が設定されていることを特徴とする、
請求項1または2に記載の剥離試験装置。
【請求項4】
前記角度は、鋭角または鈍角であることを特徴とする、
請求項3に記載の剥離試験装置。
【請求項5】
前記被貼着面は、前記支軸を中心とする円弧状の曲面から構成されることを特徴とする、
請求項3に記載の剥離試験装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記被貼着部材および前記把持部材の相対的な移動速度を制御することで、前記試験片の剥離速度を、剥離試験ごとに変化させる、または一回の剥離試験中に変化させることを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれかに記載の剥離試験装置。
【請求項7】
前記支軸を中心に前記被貼着部材を回転させた場合に、前記試験片の前記把持部材に把持された部分の中心と前記被貼着部材の回転中心とを結ぶ直線に対して、前記被貼着面が交差する角度が前記被貼着部材の回転に伴って漸次変化するように、前記被貼着面の形状が設定されていることを特徴とする、
請求項1または2に記載の剥離試験装置。
【請求項8】
前記被貼着面は、平面から構成されることを特徴とする、
請求項7に記載の剥離試験装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記被貼着部材および前記把持部材の相対的な移動速度を制御することで、1回の剥離試験中、前記試験片の剥離速度を一定に保持することを特徴とする、
請求項7または8に記載の剥離試験装置。
【請求項10】
前記被貼着部材は、前記被貼着面が着脱可能に構成されていることを特徴とする、
請求項1乃至9のいずれかに記載の剥離試験装置。
【請求項11】
前記被貼着面が透明な素材から構成されると共に、前記試験片が前記被貼着面から剥離する部分を前記被貼着面を通して観察可能に配置されたカメラをさらに備えることを特徴とする、
請求項1乃至10のいずれかに記載の剥離試験装置。
【請求項12】
前記被貼着面に貼着された前記試験片を前記被貼着面に圧着するための圧着ロールと、
前記圧着ロールを移動させて前記被貼着部材に押圧する押圧機構と、をさらに備え、
前記制御装置は、前記押圧機構を制御することで、前記圧着ロールの前記被貼着部材への押圧力を調節することを特徴とする、
請求項1乃至11のいずれかに記載の剥離試験装置。
【請求項13】
前記荷重測定器は、前記圧着ロールの前記被貼着部材への押圧力を測定することを特徴とする、
請求項12に記載の剥離試験装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−281574(P2010−281574A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132758(P2009−132758)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【特許番号】特許第4532593号(P4532593)
【特許公報発行日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000162504)協和界面科学株式会社 (10)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【特許番号】特許第4532593号(P4532593)
【特許公報発行日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000162504)協和界面科学株式会社 (10)
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