説明

創傷包帯

創傷包帯は、所定のパターンに配置された複数の貫通孔を備えた別個の皮膚接着性のエラストマーゲル層を有している。エラストマーゲル層は、吸収性コアの表面に取着されており、変わる皮膚接着特性を有していてよい。エラストマーゲル層を作る方法は、硬化されていないエラストマーゲルを穿孔装置上に適用することと、吸収性コアに適用する前にエラストマーゲルが少なくとも部分的に硬化するようにさせることとを有している。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、創傷包帯に関し、更に詳細には、改良された皮膚接着性および吸収能力を備えた構造を有する創傷包帯並びにこの創傷包帯を製造する方法に関する。
【0002】
従来は、創傷部からの創傷の液体(以下の文では概して滲出液と呼ぶ)と組織とを何らかの吸収材料で吸収することによって創傷を治療するために、様々の起源を有する多様な材料が使用されている。近年は、重合体ベースの創傷治療製品が、水蒸気、酸素透過性、細菌不透過性、および滲出液の吸収などの創傷部の環境的な要因を制御するために、次第に普及してきている。このような創傷治療製品は、体の部分に対する適合性、創傷ベッドへの選択的な接着性、および創傷部を囲む皮膚への接着性を含む特定の要求を満たすように作られ得る。
【0003】
近年では、密閉された、即ち耐湿性の包帯が、創傷の治療、特に圧力の痛みおよび腐敗などにおいて、次第に受け入れられてきている。様々のタイプの構造が、当分野で密閉包帯内で、もしくは、密閉包帯として使用されており、概して、滲出液を受け、吸収し、および保持するための構成部品を有していることが知られている。これらの創傷治療製品は、重合体フォーム、重合体フィルム、微粒子および繊維重合体、ヒドロゲル、および親水コロイドを有していることが典型的である。こうした構成部品の少なくとも1つを有する包帯により、余分な滲出液と有毒成分とを取り除く一方で湿潤環境を与えることによって、創傷の回復が促進される。更に、これは、創傷を第2の細菌感染から保護するためのバリアとして働く。これら公知の密閉創傷包帯が創傷を効果的に処置する一方で、所定の制限もしくは欠点を多く有していることも分かっている。
【0004】
創傷の治療において、創傷包帯の主要な目的の1つが、侵漬を減じるかなくし、創傷の回復処置を容易にするために、包帯の吸収能力の利用を向上させる、即ち、最大にすることである。濡れた創傷の微環境が保持される場合は、滲出液の制御が最も重要である。残念なことに、多くの創傷包帯は、創傷が生じる滲出液の全てを取り除くので、創傷の治療処置もしくはその他の処置で望ましくない“乾燥した”創傷が発生されることが分かっている。このような創傷包帯は、滲出液を不十分に吸収もしくは制御する結果、細菌増殖の危険を増し感染を招く滲出液の貯留を生じることが分かっている。
【0005】
従来技術の多くの創傷包帯は、吸収能力を備えた吸収層を有している。この吸収層は、滲出液を吸収し創傷包帯が数日間の間所定位置に保持され得るようにする親水性の材料を収容していることが典型的である。このような吸収層は、米国特許No.4,373,519および米国特許No.6,566,576に開示された包帯のような親水コロイド粒子を収容する不織布材料もしくはフォーム、もしくは、米国特許No.5,409,472、米国特許No.5,782,787、米国特許No.6,040,492、米国特許No.6,051,747、および米国特許No.6,486,378に開示された包帯におけるような親水性フォーム層を有している場合がある。
【0006】
吸収層包帯は、創傷の滲出液を吸収するように構成されているが、吸収可能な滲出液の量において制限されるという欠点を有していることが多い。吸収剤フォームの最大吸収量に関する制限は、液体を吸収する前のその幾何学的なサイズに直接に関連していることが多い。例えば、親水性フォームは、その元のサイズの12〜15%までのみ膨張可能である。他の欠点としては、液体保持能力の低さにより、所定量の滲出液が吸収剤フォームの包帯の外に“圧迫され”得ることが分かっている。フォーム層、かくして包帯自体から滲出液が圧迫され得ることは、感染の危険をもたらし、創傷の治療の邪魔となり得る。
【0007】
公知の包帯の更なる欠点は、創傷と接触した吸収層による滲出液の吸収により、巻かれた包帯の中心部が膨張し、創傷を押圧することである。連続した膨張により、特に“硬化”硬化が生じ得る創傷包帯の縁部において、皮膚接着層が創傷部の外部の皮膚から分離され得る。この創傷包帯の過度の膨張は、更に、包帯の外周から滲出液の漏れを生じ得る。これによって、病原微生物の侵入区域を生じ、創傷部の浸漬を更に促進する。
【0008】
従来的には、滲出液が包帯に浸透するのを防ぐために吸収層に取着された液体不透過性フィルムを有する裏面層が、提供されている。液体の吸収時には、吸収性コアが膨張するにつれて、包帯の巻き上がりを生じさせることなく裏面層がこの吸収層の膨張部を収容しなくてはならないという困難が生じる。この問題に対する計画的な解決法が、吸収性コアが膨張するときに果たされ得る薄い伸縮性のあるシートで形成された裏面層を開示している米国特許No.4,738,257に説明されている。しかしながら、液体不透過性のプラスチックフィルムは、吸収層の膨張と調和する形で十分に伸張するようには形成されることができない。従って、膨張する吸収層の影響を弱めるフィルムが、包帯の縁部に上述したような巻き上がりを生じ得ないことが分かっている。他の提案された解決法は、吸収剤フォームコアに取着されフォームコアが膨張するとほぼ平らにされる複数のしわを有している裏面層を備えた創傷包帯を開示する米国特許No.6,040,492で示されている。裏面層がフォームコアの膨張部を収容できる一方で、この創傷包帯の液体の吸収は、フォームコアそれ自体の膨張可能性によって制限されている。従って、フォームコアの制限された吸収能力により、包帯はしょっちゅう取り替えられなくてはならない。
【0009】
理想的には、創傷包帯は、毒性でなく、単なる最小のアレルゲン性の反応のみを誘発しながら、創傷部に接着され得るように、実際に接着性でなくてはならない。更に、創傷包帯は、適当な水分透過率を与えながら、周囲の環境から細菌が創傷に入るのを防ぐことができなくてはならない。
【0010】
しかしながら、多くの公知の密閉の包帯が、包帯を皮膚に固定するために使用されている圧力感応接着層(例えば高い特別な接着性を有するアクリラート接着剤)のみを当てにするしかないという欠点を有することが分かっている。典型的には、接着剤のみを備えた創傷包帯は、創傷から取り外されるときに、包帯の中心部を創傷から剥ぎ取りやすく、この結果、組織の治療を損ない得る。
【0011】
創傷がシリコーンゲルの層でコーティングされた表面に接触する形の吸収剤フォームコアを有する創傷包帯が市販されている。シリコーンゲルは、ランダムに吸収剤フォームの孔隙の壁部の一部にしわをよせ、ランダムに形成された複数の孔を形成する。これらの孔は、硬化されていないシリコーンゲルがフォームコアに塗布されたときに、毛管作用によって形成される。このアプローチの1つの欠点は、シリコーンゲルが幾つかの孔隙を閉じる可能性があることである。もう1つの欠点は、孔が、滲出液がフォームコア中に吸収されるのを妨げる局所的な領域を招くようにランダムに形成されていることである。応用例によっては、創傷包帯の選択された領域で滲出液の吸収を増すように、この領域により多くの密集した孔を与えることが望ましいかもしれないが、このアプローチは、所定のパターンの孔の構成を含むことができない。更に、このアプローチのもう1つの欠点は、シリコーン層の表面の粗さが、コーティングされるフォームの表面に大きく左右されることであり、皮膚に装着される滑らかなシリコーン層を得ることが望ましい場合には、このアプローチは、そのような滑らかなシリコーン層を与えることができない。
【0012】
シリコーン製造の分野での進歩により、Ossur hf of Reykavik,Icelanおよび本発明の譲受人が、優れた柔らかさと優しい皮膚の接触とを与えて固有の皮膚治療成分を有し得る皮膚接触に合わせたシリコーン製品を製造できるようになった。特に、このようなシリコーン製造により、快適さの向上と、Ossur hfの専売特許のシリコーン技術を使用した優れた耐久性と密接さとを有する補綴サスペンションライナーの緩衝作用とが、進歩される。Ossur hfのシリコーン技術を極薄の多孔性かつ接着性のシリコーンシートを製造するために応用することにより、シリコーン層の一回もしくは繰り返しの取外しが原因となって皮膚および創傷ベッドを損傷することなく創傷部への優れて穏やかな接着性を与えるシリコーン接着性層が、製造され得ることが分かっている。
【0013】
様々の吸収性の創傷包帯の入手可能性にもかかわらず、創傷包帯を変えるときの外傷を防ぎ、創傷包帯の耐久性および寿命を向上させ、創傷に解剖学的に適合し、および向上された液体の吸収と保持と除去の特性を与える改良された創傷包帯の必要性と需要とが未だに存在している。公知の接着層のような欠点を有さず、代わって、優れた液体の吸収を可能にしながら、創傷部に穏やかに接着およびこれから離れる接着層を備えた創傷包帯を製造するのが望ましいことが、最も重要である。更に、単純かつ費用効率の高いこのような改良された創傷包帯を形成する改良された方法の必要性と需要とが存在している。
【0014】
本発明は、液体の吸収を増し、保持特性を向上させる優れた吸収剤を有した改良された創傷包帯を意図している。本発明の一実施形態では、創傷包帯は、互いに対向している前面および後面を規定している吸収性コアと、吸収性コアの前面に取着された別個の皮膚接着性エラストマーゲルの層とを有している。エラストマーゲルの層は、所定のパターンに配置された複数の貫通孔を有している。
【0015】
好ましい一実施形態では、エラストマーゲルの層は、シリコーンゲルである。エラストマーゲルの層は、その前面に沿って実質的に平らである。
【0016】
本発明の他の実施形態では、創傷包帯は、所定のパターンに配置された複数の穿孔を備えた別個のシリコーンゲルの層を有している皮膚接着性の表面層からなる。更なる他の実施形態では、表面層は、少なくとも2つの個々のシリコーンゲル層を有している。
【0017】
本発明の様々の実施形態は、様々の構成の孔のパターンを有している。例えば1つのパターンでは、孔が、様々の形状と、表面層の幅が変わる複数の領域に沿ったそれぞれの密度と、様々のサイズと、様々の離間構成とを有している。
【0018】
本発明の他の実施形態では、創傷包帯は、互いに対向している前面および後面を規定し、後面は中心部と縁部とを備えている吸収性コアと、この吸収性コアの後面に接続された液体を通さず気体を通す裏面層とを有している。裏面層は、吸収性コアの外周を越えて延びるように縁部を規定している。接着層は、裏面層の縁部の少なくとも前部に適用されている。この実施形態では、裏面層の縁部は、吸収性コアの前面と実質的に平行であり、吸収性コアの外周エッジに沿って延びている。穿孔性の皮膚接着性の表面層は、吸収性コアの前面に取着されている。裏面層の接着層は、表面層よりも高い皮膚接着特性を有している。
【0019】
本発明の他の実施形態では、創傷包帯は、互いに対向している前面および後面を規定し、後面は中心部と縁部とを備えている吸収性コアと、吸収性コアの前面に取着された皮膚接着性で穿孔性の表面層と、吸収性コアの後面に接続された液体を通さず気体を通す裏面層とを有している。裏面層は、吸収性コアの外周を越えて延びるような縁部を規定している。接着層は、裏面層の縁部の少なくとも前部に適用されており、表面層よりも高い皮膚接着特性を有している。表面層は、前面全体と、裏面層に接続するように吸収性コアの外周エッジとに沿って延びている。裏面層は、吸収性コアの後面と実質的に平行である。
【0020】
本発明の他の実施形態では、創傷包帯は、互いに対向している前面および後面を規定し、後面は中心部と縁部とを備えている吸収性コアと、吸収性コアの前面に取着されているとともに所定のパターンに配置された複数の貫通孔を備えている後面を有している別個の皮膚接着性エラストマーゲルの表面層とを有している。圧力感応接着性の層は、後面の反対側の前面の少なくとも一部で表面層に適用される。接着層は、表面層のエラストマーゲルよりも高い皮膚接着特性を有している。
【0021】
本発明の他の実施形態では、創傷包帯は、互いに対向している前面および後面を備えた吸収性コアと、吸収性コアの前面に取着された後面を有する別個の皮膚接着性で穿孔性の表面層とを有している。表面層は、前面に沿って、異なる皮膚接着特性をそれぞれに有する複数の領域を規定している。この実施形態では、表面層の中心部の皮膚接着性は、中心部を縁取る縁部に沿った領域での皮膚接着性よりも低い。
【0022】
吸収性コアおよびエラストマーゲルの層とを有している創傷包帯を作るための本発明に係わる方法は、別個のエラストマーゲルの層を穿孔装置上に形成するように硬化されていないエラストマーゲルを穿孔装置上に堆積させる工程と、エラストマーゲルの層を部分的に硬化された状態に硬化させる工程と、吸収性コアを部分的に硬化されたゲルの層の表面に適用する工程とを有している。穿孔装置は、複数の個々の穿孔部材がここから延びているほぼ平らな表面を有している。穿孔部材は、複数の孔を形成するために、硬化されていないエラストマーゲルの層を通って延びる。
【0023】
他の実施形態では、穿孔装置は、複数の孔隙と、これら孔隙に配置された複数の個々の穿孔部材とを有している。
【0024】
本発明の他の方法では、創傷包帯は、エラストマーの表面層を有し、吸収性コアは、エラストマーゲルの別個の層をキャリヤ面上に形成するように、硬化されていないエラストマーゲルをキャリヤ面上に堆積させ、エラストマーゲルを部分的に硬化された状態に硬化させ、所定のパターンに配置された複数の孔を形成するように複数の穿孔部材を有するローラ装置をエラストマーゲルの層上で回転させ、そして、吸収性コアをエラストマーゲルの部分的に硬化された表面に適用することによって形成される。
【0025】
別個の皮膚接着性エラストマーゲルの層は、Ossur hfのシリコーン技術とノウハウとを採用している。エラストマーゲルの層は、ゲルが創傷部を囲む皮膚に穏やかに接着され得るようにする特性を有している。エラストマーゲルの層は、本質的に感触が柔らかく、創傷部を覆う大きな接触領域を形成するように、皮膚に適用されたときに部分的に皮膚の微小の穴およびひびの中に流れる。
【0026】
本発明の多くの他の欠点および特性が、本発明の以下の詳細な説明、実施例、図面、および請求項から更に明らかになるだろう。
【0027】
図1および2に示されているように、本発明の創傷包帯10は、好ましくは、多孔性で疎水性かつ皮膚接着性の表面層12と、吸収性コア14と、液体を通さず気体を通す裏面層16とを有している。図1に示されている創傷包帯は、乾燥状態にあるとき、実質的には水分を有していない。図2により十分に例示されているように、吸収性コア14は、創傷表面wに面するように意図された前面p
と、創傷表面から離れ、前面pの反対側の後面dとを有している。基本構成では、包帯10は、吸収性コア14の前面pに取着されている表面層12と、吸収性コア14の後面dの少なくとも一部分に取着され、シールされた裏面層16とを有している。
【0028】
好ましい実施形態では、前記吸収性コア14は、レセプタクル18が連続した円筒形の分室として形成されるような所定のパターンで配置された複数のレセプタクル18を規定している。図2に示されているように、これらレセプタクル18は、吸収性コア14の後面dで開口し、吸収性コア中へこの全厚さtより短い距離t1だけ延びている。レセプタクルは、様々の構成を想定でき、円筒形状であったり、吸収性コアの後面の少なくとも部分に沿って横方向に延びていてもよい。また、レセプタクルは、以下に述べられるような他の可能な構成も想定できる。これら複数のレセプタクル18は、創傷からの滲出液を吸収してレセプタクル18から裏面層16の方へ移動させる吸収材料でできた別個部材20を収容している。
【0029】
図2に示されているように、吸収性コア14は、中心部22、中間部23、および縁部24を概して規定している。裏面層16は、吸収性コア14の縁部24に取着され、その外周に沿ってシールされていると好ましい。縁部24は、外周エッジの付近に、即ちエッジに沿って形成されたべベル28を有し、レセプタクル18から接着性のない吸収材料20を包帯10内に保持するようにされていると好ましい。以下に十分に説明されるように、裏面層16は、包帯10が乾燥状態にあるときには吸収性コア14の中心部22に軽く接着されていると好ましい。
【0030】
包帯10の裏面層16は、吸収性コア14の中心部22と縁部24との間に配置された許容部(compliant element)26を有していると好ましい。許容部26は、中心部22とほぼ同心であり、包帯10が乾燥状態にある時には吸収性コア14に接着されなくてもよい裏面層16の一部分を有している。許容部26は、少なくとも1つの同心のリッジを有していると好ましい。図2が1つのみの同心リッジを備えた許容部26を有している包帯を示している。図3は、内側リッジ31および外側リッジ32が吸収性コア14の後面dから外方に延びて、これらリッジが許容部26の内側境界部と外側境界部とを概して構成するような複数のリッジを備えた包帯10を示している。
【0031】
許容部が様々の構成を想定できることが理解されるだろう。許容部の方向付けは様々の方向になされることができ、例えば、リッジは、許容部の縁部の側面の吸収性コアにほぼ平行な方向から、許容部の中心部の側面の吸収性コアにほぼ平行な方向までの様々の方向の範囲内に延びる。
【0032】
図5に概略的に示されているように、許容部26は、吸収性コアの中間部に概して沿って位置付けられるように制限されていない。許容部26は、この許容部26が創傷包帯の縁部または中心部の少なくとも一方で少なくとも1つのリッジ30またはそのセグメントを有し得る創傷包帯の縁部または中心部などに位置されてもよい。創傷包帯の縁部または中心部の少なくとも一方に許容部を有するように適用された創傷包帯は、吸収性コアの後面に対する裏面層の拡張可能性と膨張性とを向上させるために与えられる。
【0033】
表面層12は、吸収性コア14の前面pに取着されると好ましい。表面層12は、表面層12を吸収性コア14に取着する前に所定のパターンで穿孔された複数の孔34を有している。図2および4に概略的に示されているように、複数の孔34は、所定のパターンで配置され得る。複数の孔34は、創傷部から吸収性コア14へと滲出液を運ぶために、吸収性コア14の複数のレセプタクル18の領域またはその付近の領域に対応するように構成され得る。表面層12は、吸収性コア14の前面pのみに取着されていると好ましく、また、前面pの付近に形成された吸収性コア14の孔隙即ち穴の壁部をコーティングしないことが望ましい。しかしながら、表面層の前記部分は、吸収性コアに対する表面層の安定性を向上させるように、吸収性コアの前面または吸収性コアの孔隙に沿って配置された凸凹部を満たし得ることが理解されるだろう。
【0034】
本発明は、特定の動作機構として限定されることは望ましくないが、図6ないし8に示されているように、液体が滲み出る皮膚の創傷に包帯を巻いた後に包帯10として機能するように意図されている。本発明の文脈では、液体、水分、および滲出液という用語が、創傷と創傷包帯に関して取替え可能に使用されていることが理解されるだろう。包帯10は、吸収性コア14に入る滲出液の毛管作用と表面層12とによって部分的に創傷用ベッドbと閉じた同格に保持されている。
【0035】
図6に示されているように、創傷用ベッドbから滲出された液体が、孔34を通って吸収性コア14とレセプタクル18内に収容された吸収性材料20とに向かって吸収される。長期間にわたって創傷部に巻かれた後、この包帯10が、図7に示されているように、僅かに拡大されたドーム形のリザーバ構造36が吸収性コア14の中心部にわたって延びるような状態になる。リザーバ36は、レセプタクル18から所望の量の滲出液を吸収した吸収材料20によって形成され、その個別部材は、レセプタクルから膨張して移動し、これによって、裏面層16の拡張を生じる。膨張された滲出液を充填した吸収材料20の個別部材により、裏面層16が、予期できる形で吸収性コア14の後面dから分離され、包帯10が創傷部wにわたって更に連続して吸収および膨張するように上方に拡張される。更に、吸収性コア14が、横方向と長手方向との両方向に膨張し、吸収性コア14の領域が、液体の吸収を増しながら、概して大きくなる。
【0036】
裏面層16は、包帯10の縁部に沿ってシールされたままに留まるが、リザーバ36は、裏面層16と吸収性コア14の後面dとの間に規定されるように形成され、縁部24に沿ってシールされる。リザーバ36により、吸収材料20の膨張された個別部材がレセプタクルから移動可能にされ、創傷用ベッドbからの液体の保持を向上させる。許容部26は、吸収材料20の膨張により裏面層16の付加的な膨張を可能にして裏面層16に更なる可撓性と膨張性とを与えることによって裏面層16用の可撓性結合部として有効に働く。図8に示されているように、包帯10は、その最大膨張能力にほぼ達しており、裏面層16は、その限界まで拡張している。進行する膨張のこのステージでは、包帯10の縁部24が、吸収性コア14と吸収材料20との膨張並びに裏面層15の拡張を補う許容部26を設けたことによって創傷部wに接着されたままに留まることに、とりわけ注意すべきである。更には、リッジ30が概して裏面層16の隣接する部分に対して十分に平らになっておらず、吸収性コア14の後面dから、許容部26によって画定された裏面16の拡張部に関連して、概して外方に、少なくとも部分的に延びていることに、注意すべきである。
【0037】
好ましい表面層12はまた、吸収性コア14が横方向に膨張するにつれて伸張し得るような適当な弾性特性を有していることが理解されるだろう。
【0038】
包帯10が、滲出液が充填されたか十分に染み込まされた包帯として規定されるような最大膨張状態に達するまで膨張したときは、包帯10を取り外すか取り替えることが望ましい。水分が染み込まされたか十分に滲出液が充填されたステージにあるときにも、包帯10の縁部24に沿った角部が概して、図9に示されているように、滲出液が過度に吸収された場合を除いて創傷部wに接着されたままに留まる。これは、創傷部wを囲む皮膚に対して表面層12が十分な接着性を与えるためである。吸収性コア中への液体の吸収の程度に関連した包帯の膨張の程度を観察することによって、いつ包帯を取り外すのが適当かを視覚的に判断することができるだろう。
【0039】
図10に例示されているように、包帯10は、表面層12に配置された付加的な接着剤19を有している。接着剤19は、吸収性コア14の縁部の対応する部分またはその付近に表面層12に配置されていると好ましい。圧力感応接着剤19は、創傷包帯の分野で知られている接着性のある圧力感応シリコーンまたはアクリラート接着剤であると好ましい。
【0040】
好ましい実施形態では、吸収性コア14は、好ましくは体表に適合可能で液体を吸収可能な疎水性の合成ポリマーを有している。吸収性コアは、本発明の包帯の効果、具体的には吸収材料を収容しているレセプタクルへの液体の吸収を増すように急速に滲出液を吸収すると望ましい。吸収に加えて効果的なウィッキング機構を利用することも好ましい。即ち、吸収性コアは、局所集中を最小にして吸収性コアの効果を最大にするように、急速に液体を吸収性コアの前面から離れてより遠くの保存領域へと方向付ける(即ち、レセプタクルは、吸収材料の別個部材を収容している)。
【0041】
好ましい吸収性コアは、可撓性の開口セルで構成されている。このセルは、少なくとも微妙に疎水性ぎみである。適当なフォームは、30ないし700ミクロン、好ましくは50ないし300ミクロンの開口セルのサイズを有している。開口セルにより、液体および細胞残屑がフォーム中に運ばれ得る。このフォームの領域のセルのサイズは、毛細作用に働きかけ液体の運搬を促進するのに十分なサイズであることが望ましい。
【0042】
吸収性コアは、液体で飽和されると、そのサイズの約135%まで膨張可能である。本発明の表面層および裏面層と結合されると、吸収性コアは、滲出液が充填されたときは乾燥時のサイズの約110%まで膨張可能である。
【0043】
本発明の一実施形態に係われば、吸収剤フォームが、吸収性コアの厚み方向にわたって、セルのサイズが吸収性コアおよび後面の方向に減っていくようなセルのサイズの勾配を有している。セルのサイズが吸収性コアの前面またはその付近で大きくなることから、毛細作用が強くなり、その結果、吸収性コアの前面近くで液体を放出し、レセプタクルに向けて液体を吸収する。さらに、吸収剤フォームは、レセプタクルに向けて方向付けられたセルのサイズの勾配を有していてよく、これによって、吸収剤フォーム内に、液体の案内を果たすようにレセプタクルに向けての毛細作用を増すように構成された局所的な領域を与え得る。
【0044】
このフォームは、例えばポリウレタン、セルロース、カルボン酸ブタジエンスチレンゴム、ポリエステルフォーム、親水性エポキシフォーム、もしくはポリアクリレート(polyacrylate)から形成可能である。好ましい実施形態では、このフォームは、Reynel Inc.(Boothbay、ME)の製品表記(product designation)L00562-Bのポリウレタンフォームなどの、親水性ポリウレタンフォームから形成されている。上述されたフォームがそれ自体で親水性であることと、および吸収材料を収容しているレセプタクルの使用の観点とから、好ましい実施形態でフォームがより親水性となるようにこれを処理する必要はない。
【0045】
他の実施形態では、必要に応じて、滲出液が吸収材料に運ばれるのを防げることのないようにフォームが過度の親水性にはならない程度までより親水性にされ、これによって、滲出液がフォーム内でより急速に凝固する傾向を増すように、処理されていてもよい。このような実施形態では、吸収剤フォームの親水特性の程度は、フォームのセル中への液体の移動が容易にされるように、表面張力が最小にされるように設計され得る。かくして、液体は、創傷部の高い相対湿度を維持しながらも、吸収剤フォーム中に保持される。
【0046】
吸収性コアがフォームから構成されることに制限されないことが理解されるだろう。他の実施形態では、吸収性コアは、当分野の当業者が入手できる公知の材料を使用して幾つかの手段によって製造され得る多孔性の織布または不織布材料であってよい。例えば、吸収性コアは、ランダムまたはランダムでないアレイの形に配置された非常に短いセルロース繊維から成る分厚くゆるく形成されたウェブ、セルロースフレークのパッド、もしくは、高分子微小繊維マトリックスであってもよい。
【0047】
吸収性コアの厚さは、0.5mmないし20mmにおよび、好ましくは、3mmないし5mmの間である。
【0048】
吸収性コアは、これに形成されたレセプタクルのアレイを有してよく、本発明の包帯に適した十分な強度および可撓性を保持しながら、別個部材吸収材料の所望のバルクもしくは量を収容し得るような所定の適当な予め選ばれたパターンに形成され得る。図1に示された好ましい実施形態では、レセプタクル18のパターンは、格子状の構成である。このようなレセプタクルは、均等な所定の形状およびサイズを有し、吸収性コアの後面dを超えて延びていると好ましい。この実施形態では、複数のレセプタクルは、長方形のパターンに配置されており、概して、5mmだけ(各レセプタクルの中心軸から測定)互いに離間されている。各レセプタクルの深さは、概して4〜5mmであり、表面層から少なくとも0.5mmのところに配置されている。この実施形態では、パターンは、包帯の特定の領域においてその他の領域よりも多くのレセプタクルを有するように作られている。
【0049】
図11に示されている創傷包帯の実施形態では、包帯10の縁部24の近くよりも吸収性コア14の中心部22における方がレセプタクル18の密度が高くなっている。液体の吸収を最大にして、縁部など吸収性コアの所定領域における液体の吸収を制限するために、吸収性コアの所定の領域におけるレセプタクルの量は、より大量に局所的に発生する液体の認められる領域、例えば中心部などによって決まる。
【0050】
図2に示されているように、レセプタクル18は、吸収性コア14の後面で開口し、厚さ方向に所定距離だけ延びるように配置されている。好ましい一実施形態では、レセプタクルは、吸収性コア18の全厚さtより短い所定の距離tだけ延びている。また、レセプタクルは、吸収性コア14の全厚さの70〜90%の長さだけ延びていると好ましい。しかし、創傷包帯の1実施形態では、レセプタクルは、吸収性コアの全厚さに達するまで延びていてよいことが理解されるだろう。
【0051】
創傷包帯の他の実施形態では、複数のレセプタクル18は、図13に示されているように、個々の位置および創傷部から滲み出た液体の局所的な発生に基づいて様々の距離だけ吸収性コア14の厚さ方向にそれぞれ延びるように配置され得る。この実施形態では、包帯10の中心部近くに配置されたレセプタクル18は、吸収性コア14の厚さ方向により深く延びており、吸収性コアの縁部近くに配置されたレセプタクルは、吸収性コア14の厚さ方向により浅く延びている。より深いレセプタクル18が、浅いレセプタクル18よりも多くの吸収材料20を収容し、かくして、より大きな局所的な吸収領域を与えることが理解できる。
【0052】
レセプタクルが好ましくは部分的にのみ吸収性コアの全厚さに達するまで延びていることから、滲出液は、移動されて吸収材料によって吸収される。この効果により、レセプタクルを有さない吸収性コアの前面が、過度の滲出液を吸収しない所望の湿度環境に維持される。このため、包帯は、長期間にわたって創傷部に保持され得る。
【0053】
図1および2に示されている好ましい実施形態では、個々のレセプタクル18の形状は、均等であり、概して円筒形である。レセプタクルの形状は、吸収材料の別個部材の密閉を最大にし、別個部材が液体によって増大されたときにその別個部材の移動を容易にするように、少なくとも部分的に選択されている。レセプタクルは、円筒形の構造に制限されず、ピラミッド形状、チャネル形状、半球形、円錐形、ブロック形、および面取りされた形状などの変形例およびこれらの組み合わせであってよい。さらに、レセプタクルは、その開口部から基部へと延びたテーパを有していてよい。この結果、レセプタクルは、基部よりも開口部近くの方がより大きな幅を有している。この構造により、吸収された水分が充填された吸収材料の別個部材がレセプタクルから容易に移動され、よって、水分がレセプタクルからより自由に流れ得る。代わりに、レセプタクルは、包帯の後面の横方向に沿ってランダムなパターンに配置され得る。
【0054】
吸収性コアの1実施形態では、レセプタクルは、吸収性コアの後面の少なくとも一部分に沿って横方向に延びた複数のチャネルを有していてもよい。この実施形態では、チャネルは、歯状の、または、起伏する断面外形を有していてよい。この実施形態は、吸収性コアが薄すぎて上述された円筒形レセプタクルなどのレセプタクルを形成できないような創傷包帯において有益である。
【0055】
個々のレセプタクルのサイズは、所定の適当なサイズであり、創傷部からの滲出液を十分に吸収できる適当な量の吸収材料を収容可能である。一般に、レセプタクルは、約500ないし5,000μm、好ましくは約1000〜3000μm(個々の高さと幅のディメンション)の断面を有するサイズにされている。好ましいパターンのレセプタクルは、1つのレセプタクルから他のレセプタクルまで、および中心軸から中心軸までの距離として規定された500〜5,000μm、好ましくは1000〜4500μmの反復距離を有している。
【0056】
好ましい実施形態で、複数のレセプタクルが創傷包帯の横方向にわたって均等な容量を有していることから、それぞれのレセプタクルは、吸収性コアの後面におけるその開口部の位置に応じて異なる容量を有していてよい。レセプタクルの様々の深さに関連した実施形態と同様に、吸収性コアの中心部またはその近くに配置されたレセプタクルは、吸収性コアの縁部近くのレセプタクルよりも大きな容量を有していてよい。様々の容量を有するレセプタクルは、同様に、様々の大量の吸収材料の別個部材を収容することが理解されるだろう。
【0057】
本発明の包帯で使用される吸収材料は、大量の水を吸収して水分に晒されると膨張して水和ゲル(ヒドロゲル)を形成する高吸収性の重合体の粒、フレーク、もしくはパウダーで構成されていると好ましい。本明細書では、高吸収剤は、大量の液体、即ち、1部に対して10ないし15部を超えた液体を吸収可能な材料として規定されている。これらの高吸収材料は、概して3つのクラス、即ち、でんぷん移植共重合体、交差結合されたカルボキシメチルセルロース派生品、および改良された親水性ポリアクリラートに分けられる。このような吸収剤重合体の例には、加水分解されたでんぷんアクリルニトリルグラフト(graft)共重合体、中和されたでんぷんアクリル酸グラフト共重合体、齢化されたアクリル酸エステルビニールアセテート共重合体、加水分解されたアクリロニトリル共重合体またはアクリルアミド共重合体、改良された交差結合ポリビニールアルコール、中和された自己交差結合ポリアクリル酸、交差結合されたポリアクリラート塩、カルボン酸セルロース、および中和された交差結合イソブチレンマレイン無水物共重合体がある。高吸収剤の微粒子親水性ポリマーはまた、米国特許No.4,102,340に詳しく説明されている。この特許は、交差結合されたポリアクリルアミドなどの吸収材料を開示している。本発明の包帯で使用されている高吸収材料の微粒子は、交差結合されたポリアクリル酸で構成されていると好ましい。
【0058】
高吸収剤の微粒子は商用であり、例えばでんぷんグラフトポリアクリラートヒドロゲルパウダーが、Hoechst-Calanese of Portsmouth,VAから市販されている。他の高吸収剤の粒子には、商標名SANWET(Sanyo Kasei Kogyo Kabushiki Kaishaによって提供されている)、SUMIKA GEL(Sumitomo Kagaku Kabushiki Kaishaによって提供され、重合された粉末粒子である溶液と対照的な重合された球形のエマルジョンである)、およびFAVOR(Degussa AG, Duseldorf, Germanyによって製造されている)がある。
【0059】
高吸収剤の粒子は、より大きな使用可能な表面領域親水コロイドを与えるために、顆粒もしくはフレークの形状であると好ましい。高吸収剤の粒子のサイズは、乾燥時に1ないし1000μmの範囲内にあるのが典型的である。吸収剤の粒子のサイズの範囲は、100ないし900μmであると好ましい。創傷内で溶けない粒子は、乾燥粒子1グラムにつき0.5倍以上の水を吸収する吸収能力を有している。
【0060】
他の実施形態では、吸収材料は、水と接触すると膨張する親水性ゲルであってよい。親水性ゲルは、概して細胞のまたは中空の内部構造を有さず、固体または半固体の形状を有している。親水性ゲルは、材料が生理的かつ臨床的に許容可能である限りは、親水コロイド、ヒドロゲル、およびこれらの組み合わせとなるように構成されていてよい。適当な親水性ゲルの説明が、Stickels等に特許された米国特許No.6,566,575で成されており、このような親水性ゲルは市販されている。
【0061】
創傷包帯の他の実施形態では、吸収性コアが、この吸収性コア内に網目状に設けられている吸収材料の複数の別個部材を有していてよい。このような吸収材料の別個部材は、吸収性コア内に自由に配置されて吸収性コア内で好ましくは後面に向かって移動可能にされている別の高吸収剤重合体の顆粒、フレーク、もしくはパウダーであってよい。創傷包帯の更なる他の実施形態では、吸収性コアは、網目状に設けられている吸収材料と、吸収材料の別個部材を収容しているレセプタクルとの両方を有していてよい。
【0062】
要約すると、これまで説明してきた吸収性コアの実施形態の各々において、その前面またはその面の付近の吸収性コアの一部分における液体の吸収が、最小にされ、レセプタクルまたはそれを超えた部分の吸収材料による液体の吸収が、最大にされることに注意すべきである。このような機構により、裏面層の形状と共同して、包帯が吸収できる液体の量が最大にされ、さらに、液体が皮膚に接触しないことから、患者が比較的長期間にわたって使用できる。
【0063】
裏面層は、本発明の包帯の全実施形態で使用されている。裏面層は、動物(人間を含む)にとって快適な解剖学的表面であり、液体不透過性だが気体透過性であると好ましい。上述されたように、裏面層は、吸収性コアと共同して、包帯が膨張されて水分が充填された状態にある時にはこれら裏面層とコアとの間にリザーバを形成するように作られ得る。裏面層は液体もしくは滲出液の通路を生じないが、吸収された滲出液の水分が、気体の形態で周囲の空気中へと裏面層を通過する。
【0064】
裏面層の好ましい実施形態は、水蒸気を通し積層が可能な弾性材料から形成されたバクテリアバリアを与える薄い重合体の弾性もしくは可撓性フィルムコーティングである。このフィルムは連続しており、フィルムの厚さ全体に延びるような穿孔部もしくは孔隙を有していない。このタイプのフィルムは、公知であり、一般的に、水蒸気を通す親水性の重合体材料である。
【0065】
裏面層は、吸収性コアの前面に取着されている。好ましい一実施形態では、裏面層は、吸収性コアの後面にのみ接着され、孔隙、セル、もしくはそのキャビティ内には侵入していない。一般的に、フィルムは、15ないし45μmの範囲内、好ましくは約30μmの厚さを有している。裏面層は、InteliCoat Technologies(South Hadley, MA)から製品表示INSPIREで市販されているポリウレタンフィルム(エラストマーポリエステル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリビニールクロリド、およびポリエーテルアミドブロック共重合体の混合物)などのポリウレタンを有していてよい。本発明で使用するのに好ましい裏面層は、ポリウレタンフィルムである。これは、ポリウレタンフィルムが弾性特性を有していて、よい適合性、更に高程度の伸縮性を有し得るためである。
【0066】
本発明の裏面層は、少なくとも半透明であり、更に好ましくは、包帯が巻かれた創傷部が包帯を通して見えるくらいに十分に透明であると好ましい。包帯を扱う不要な操作をなくし、創傷を周囲に晒すことを防止して汚染の可能性を減じるために、包帯を取り外すことなく治療し、創傷を検診することが、効果的である。
【0067】
適当な連続した変形可能な裏面層は、裏面層単独で、38℃で、24時間につき1500ないし14600g/m、好ましくは24時間につき2500ないし2700g/mの水蒸気伝達率(MVTR)を有している。裏面層の厚さは、好ましくは10ないし1000μm、更に好ましくは100ないし500μmの範囲内である。本発明の表面層は、吸収性コアの前面に接着された疎水性で液体および水分不透過性の層であると好ましい。好ましい実施形態では、表面層は、例えば、NuSil Technology(Carpenteria, CA)によって製品表示MED-6340として製造された交差結合されたシリコーン(ポリジメチルシロキサンゲル)などの交差結合されたシリコーンエラストマーゲルである。表面層は、好ましくは0.05mmないし0.5mmの範囲内の厚さ、更に好ましくは0.1mmの厚さを有していると好ましい。創傷に対する包帯の適合性は、構成部品の厚さに幾分左右される。包帯が体の一部分に適合された時は、表面が動かされた時でさえも包帯が表面に適合する。表面が曲げられた後に曲げられていない位置に戻るときは、表面層は、関節部の屈曲とともに動くように伸びるが、表面が曲げられていない位置に戻される時には表面に適合し続けるように十分に弾性的にされている。
【0068】
シリコーンの表面層は、包帯を創傷に固定するために接着剤タイプの接着剤を使用する創傷包帯を上回る大きな利点を有している。特に、接着性のシリコーンゲルは、例外的に創傷に対して非接着的なコーティングを与えるが、周囲の皮膚に対しては十分に接着的である。更に、このようなゲルは、全体的に不動であり、熱もしくは体の滲出液によって影響を受けない。これは、本発明に係わる包帯が、実質的な期間、例えば数日間にわたって所定位置に配置された後でさえもこれらの非接着特性を保持することを意味する。
【0069】
シリコーンゲルの層は、基本的に柔らかい感触を有し、創傷部を覆って大きな接触領域を作り出すように部分的に皮膚の微小のキャビティおよび割れ目に流れることから、周囲の皮膚にやさしく接着する。この結果、シリコーン層を創傷の上に固定するために、接着剤を有する接着層を使用する公知の包帯よりも小さい接着力が必要とされるのみである。シリコーン層がより十分にその接着力を分配させることから、包帯が創傷部から取り外されるときも、その剥離強度は表皮細胞を剥ぎ取らない。従って、包帯は、皮膚および創傷部の創傷に損傷を与えずに再び巻かれることができる。更に、シリコーン層が疎水性であり、更に吸収性コアの毛管力が滲出液を包帯中に引き込むことから、このような層の下での水分の増加が防がれ、創傷包帯の装着者に傷を与えずに包帯が皮膚から持ち上げられ得る。
【0070】
本発明の包帯で表面層として使用されているシリコーンは、1未満のShore A硬度を有し、最も好ましくは、測定可能なShore A硬度を有していない。
【0071】
シリコーンが2つ以上のシリコーンの混合物を交差結合することによって形成されているとき、様々の構成部品の分子の重さと反応基によるその代用品の程度とは、異なっていることがある。これにより、異なる物理的特性を有するゲルが、構成部品の割合を単に変えることによって形成され得る。
【0072】
合成の表面層はまた、シリコーンエラストマー中に混合された例えばワセリンやアロエなどの1つ以上の皮膚治療剤を有していてよい。好ましい一実施形態では、合成の弾性層の重量の20%まで、好ましくは11.9%がワセリンであってよく、3%まで、好ましくは0.1%がアロエなどの第2の皮膚治療剤であってよい。皮膚治療剤によって治療される皮膚の状態に応じて、異なる、もしくは、付加的な治療剤が使用され得ることが、理解されるだろう。
【0073】
好ましい一実施形態では、シリコーンの表面層は、シリコーンゲルシートが吸収性コアに取着される前に形成された所定のパターンの孔を有するシリコーンゲルシートとして形成されている。これら孔は、0.05ないし1.0mmの直径を有し、1cmにつきほぼ50〜350の孔が設けられていることが典型的である。図2に示された好ましい一実施形態では、孔34が、概して均等なパターンで配置されるように示されているが、表面層12は、この配置に制限されない。
【0074】
シリコーンの表面層は、前面に沿ってほぼ平らであってよい。更に、シリコーンの表面層は、この表面に沿って配置された開口部、隙間、もしくは部分的な孔隙として形成された吸収性コアの表面の凸凹部に侵入するかこれらを補充している。
【0075】
図13に例示されている他の実施形態では、包帯10の中心部22に対応する表面層12内の孔34の密度が高くなっているのに対し、包帯の縁部付近でまたはこれに沿って孔34の密度が低くなっているか孔が存在していない。あるいは、表面層は、包帯の縁部、特に吸収性コアのベベルに対応する領域において、全体的に孔を有していなくてもよい。これにより、包帯の所定領域における液体の吸収が軽減されて、より効果的に滲出液を吸収する領域内での滲出液の吸収をより効果的に導くことができる。更に、他の実施形態では、レセプタクルを有する吸収性コアの一部分またはその付近に孔がより集中しているところがあり、これによって、レセプタクル中への滲出液の吸収を増進する。
【0076】
特に、表面層は、吸収性コアの前面のみに接着され、その厚さのほぼ50%の長さだけ吸収性コアに侵入している。吸収性コアに取着する前に孔を形成することによって、表面層は、セルをふさがず、吸収性コアのセルの内壁をコーティングしない。従って、表面層の適当な透過性が、表面層に適当なアレイ状に配置された孔を事前形成することによって得られるのが好ましい。かくして、シリコーンゲル層を通して液体の通過を確立させるのによりよい制御がなされる。
【0077】
表面層の厚さは、その長さ方向にわたって変化してよい。例えば、表面層は、より厚い表面層を有する領域で表面層により高い強度を与えるために、中心部に比べて創傷包帯の縁部付近がより厚くなった領域を有していてよい。
【0078】
更なる他の実施形態では、表面層は、それぞれ異なる特性を有する少なくとも2つの異なる層を有していてよい。例えば、創傷部に直接隣接して装着される柔らかい層が、創傷部にきっちりと適合するように与えられているのに対し、硬い層は、柔らかい層と吸収性コアとの間に配置されたこの硬い層が包帯に頑丈さと強度とを備えさせるように与えられている。幾層かに積層されたか、より適切な二重の受ロメーターを有している表面層は、2000年の10月24日に特許された本発明の譲受人によって所有された米国特許No.6,136,039(この開示は本明細書に組み込まれている)に説明されている原則を採用している。
【0079】
他の実施形態では、本発明の表面層は、埋め込み穿孔補強層によって補強されている上述されたタイプのシリコーン層を有していてよい。このような補強層は、不織布、編まれたか織られた布材料、もしくは、ポリウレタンで形成されたフィルムなどの重合体フィルムを有していてよい。この実施形態では、シリコーン層の孔は、補強層の穿孔部に概して対応している。
【0080】
非シリコーン層が、本発明の範囲から逸脱することなく本発明の包帯に採用され得ることが、理解されるだろう。このような表面層は、柔らかく、可撓性で、変形可能で、刺激がなく、過敏にさせないものであると好ましい。包帯は、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、もしくはポリエステル材料などの様々の重合体によって加圧接着性接着剤を有して形成され穿孔されたベースフィルムを備えた表面層を有していてよい。更に、表面層は、水蒸気透過性フィルム、穿孔されたフィルム、織布、不織布、もしくはニットウェブ即ちスクリムの形態であってよい。接着剤は、低い外傷特性を有し濡れた皮膚によく接着する繊維の接着剤またはミクロスフィアであってよい。この接着剤は、表面層の一部分でのみコーティング可能であり、例えば、接着剤は、包帯の中心部が接着剤を有さず、縁部の周りにのみ塗布され得ることが、理解されるだろう。表面層は、液体がこれを通って吸収性コアへと通過され得るように、穿孔されていると好ましい。
【0081】
本発明の包帯は、本発明の範囲から逸脱することなく、例えば、薬剤、石鹸、消毒及び殺菌剤、悪臭管理剤、止血剤、たんぱく質、酵素、および核酸を含む材料の様々の組み合わせを有していてよい。これらの薬剤は、吸収性コア内に直接に組み込まれるか、分散され得ると好ましい。あるいは、これらの材料は、これらの材料を組み込みんた吸収性コアへの付加的な層を含む所定の適当な手段によって、包帯中に組み込まれ得る。
【0082】
適当な薬剤、石鹸、消毒および殺菌剤、たんぱく質、および酵素は、市販されている。このような薬剤は、抗真菌剤、抗菌剤、血管形成推進剤、および適当な薬剤を有していると好ましい。
【0083】
図10を参照しながら上述されているように、表面層12は、接着剤を有していてよい。この接着剤は、NuSil Technology(Carpenteria, CA)によって製造された製品表示MED‐1356の接着性シリコーン、または、NuSil Technology(Carpenteri, CA)によって製造された製品表示MED-6345の非常に接着性の強いシリコーンなどの圧力感応シリコーンであると好ましい。接着性シリコーンは、部分的に硬化された状態のときに接着性シリコーンが表面層に塗布されてこの表面層上で硬化を終えるように、表面層が硬化された後にシリコーンの表面層に塗布され得る。あるいは、接着剤は、接着剤を下地に塗布するための従来の方法を用いて表面層に塗布されるアクリラート接着剤もしくは熱溶解接着剤であってよい。
【0084】
本発明の好ましい実施形態では、接着性のシリコーンゲルが、NuSil Technology(Carpenteria,CA)によって製造されたMED‐6340の成分(parts)AおよびBなどの二液形シリコーンから作られる。2つの成分AおよびBの各々は、同じベース、ビニール置換(vinyl-substituted)、ポリ(ジメチスシロキサン)を有している。更に、成分Aは、成分Aと成分Bが混合された時にこれらの間の反応を容易にするようにプラチナ触媒を有している。成分Bは、交差結合するヒドリド収容シリコーンを有している。成分AおよびBの両方が、容易に混合され、別々に処理され、反応および硬化しない。
【0085】
接着性のシリコーンゲルは、比率1:1の徹底的な混合成分AおよびBによって生成される。かくして、ビニール置換シリコーンのビニールのグループが、触媒およびヒドリド収容シリコーンによって活性化され得る。この結果、シリコーンが交差結合されて、硬化し始める。硬化に必要な時間に影響する要因の1つが、成分AおよびBの混合された組み合わせの温度である。適当な温度の範囲は、50〜150°であり、好ましくは100〜130°である。硬化時間に影響するもう1つの要因は、成分AおよびBの組み合わせで使用される触媒の量である。しかし、触媒はまた、シリコーンゲルの接着性に好ましくなく影響する可能性がある。本発明では、100℃で硬化される厚さ0.1mmのシリコーンゲルの表面層の硬化時間が、ほぼ1分であり、シリコーンゲルの表面層は、成分Aと成分Bとが混合された後に3〜12秒の範囲内で部分的に硬化された状態のとき、通常は吸収性コアに移動される。
【0086】
接着性のシリコーンゲルを作るための上述された工程は、例示する目的のためだけに与えられているものであり、本発明は、この工程によって制限されないよう意図されていることが、理解されるだろう。部分的に硬化された接着性の表面層を作るための所定の適当な工程が、本発明の範囲内で使用され得る。
【0087】
本発明の文脈では、“部分的に硬化された”シリコーンは、シリコーンが完全に硬化されてはおらず、従って、シリコーンは、十分に交差結合されていないことを示す。部分的に硬化されたシリコーン層を果たすパラメータが、ゲル混合物および使用された吸収材料に対して経験的に確立されなくてはならないのが典型的である。“部分的に硬化された”シリコーン層を果たすためのパラメータが変化する可能性がある一方で、シリコーンゲルが十分に硬化されるのに必要な時間の比率が、シリコーン層が部分的に硬化されるかどうかを判断するために採用され得る。特に、本発明では、シリコーン層は、シリコーンゲルを硬化するのに必要な全時間の5〜70%で部分的に硬化される。従って、表面層を吸収性コアに塗布する時間間隔は、5〜40%、より好ましくは5〜20%の間ということになる。
【0088】
シリコーン層を硬化するとき、硬化時間を加速し、シリコーンゲルの接着性を減じるために、触媒が使用可能である。シリコーン触媒は、NuSil Technology(Carpenteria, CA)から製品表示CAT-50として市販されている。
【0089】
本発明の表面層の他の好ましい特性は、表面において変えられる接着性である。この特性によって、表面層の接着性が、様々の領域で異なるように構成される。例えば、縁部またはそのその付近の表面層の領域には、表面層の中心部より高い接着性が与えられ得る。接着性は、表面層の半断面にわたって勾配をつけて、表面層の縁部またはその近くで最大となり、表面層の中心部またはその近くで最小となるように処置され得る。場所によって接着性が変えられた表面層12を備えた創傷包帯の一実施形態が、図14に示されている。示されているように、表面層12は、表面層12の縁部33が中心部37および中間部35よりも高い接着性を有するなどそれぞれがほぼ均一な接着性を有する複数の個々の部分として与えられ得る。接着性は、中心部37から縁部33に向けて徐々に増されるか、個々の部分33,35,および37において比較的一定に保たれ得る。
【0090】
表面層は、縁部が均一な接着性を有する形に制限されていない。表面層は、縁部が他の部分より高い接着性を有する少なくとも1つの側面を有していてよい。例えば、図15に示されているように包帯がほぼ正方形または長方形の構成を有している場合は、表面層12の縁部に対応する2つの対向する側面39が、表面層の残りの対向する側面41よりも高い接着性を有していてよい。あるいは、図16に示されているように包帯が概して円形の構造またはその変形した構造を有している場合は、縁部に対応する表面層12の部分43が、表面層12の縁部の他の部分よりも高い接着性を有していてよい。
【0091】
ステンレススチール表面からの90°の剥離テストによると、シリコーン表面層の中心部に対応する接着性は、一般的には0.05N〜1.0Nの範囲内にあり、好ましくは0.1Nないし0.4Nの範囲内にある。シリコーン表面層の縁部に対応する接着性は、0.5N〜5.0Nの範囲内にあり、個オ増し句は、0.8N〜3.0Nの範囲内にある。
【0092】
場所によって接着性が変えられた表面層は、複数の領域が、シリコーン成分の様々の混合物、シリコーン触媒または他の成分の存在もしくは様々の量、および圧力や温度などにおいて様々の硬化状況にさらすことを有している表面層を形成することによって、または、当分野の当業者に公知のシリコーンの素地に様々の接着性を与えるための他の何らかの方法によって得られる。更に、図14〜16に示されているような実施形態では、様々の接着性を有する表面層の不連続のそれぞれの部分が用意され、個別に吸収性コアに適用されている。または、表面層は、様々の接着性を有するそれぞれの部分を備えた連続的な表面層を有するように形成されることもできる。
【0093】
図17に示されている創傷包帯の他の実施形態では、裏面層16は、吸収性コアの縁部とコア上に配置された表面層12とを超えて延びる縁部45を規定するように構成され得る。裏面層16の縁部45は、吸収性コア14と表面層12との外周エッジを囲んでいると好ましい。裏面層16の縁部45には、好ましくは表面層12よりも接着性が強い皮膚接着性の接着剤またはエラストマーゲルが設けられ得る。裏面層16の縁部45の他より高くされた接着性により、包帯10は、創傷部の上方の所定位置にしっかりと固定され得る。この実施形態では、表面層12は、取り外す際の創傷の外傷を防ぐような穏やかな接着性を有していると好ましい。
【0094】
図18に示されている更なる他の実施形態では、裏面層16は、吸収性コアが裏面層16から延びるように、吸収性コア14に取着されている。表面層12は、吸収性コア14の側面を囲んで延びるように構成されており、概して、裏面層16に接するように延びている。裏面層16は、表面層12よりも強い接着性を有する縁部45を有してもよい。
【0095】
図17および18に示されている一実施形態では、裏面層には、上述された許容部が設けられていてよく、また、吸収性コアには、吸収材料で形成された別個部材を収容するレセプタクルが設けられていてもよい。
【0096】
吸収性コアに隣接する裏面層の側面全体が、縁部45のために使用された皮膚接着性の接着剤またはエラストマーゲルを有していてよい。しかし、このような実施形態では、皮膚接着性の接着剤またはエラストマーゲルは、裏面層を通る水分の移動を妨げないように裏面層に配置されているのが好ましい。変形例では、裏面層の縁部に配置された皮膚接着性の接着剤またはエラストマーゲルは、裏面層が吸収性コアに適用された後に、スプレーされた形や塗り広げられた形で、裏面層の縁部に与えられてもよい。
【0097】
この実施形態の製造方法は、本明細書で説明されている裏面層を吸収性コアに適用させる方法の1つを利用して実施され得る。あるいは、裏面層の1側面が、不連続的な接着剤またはエラストマーゲルによって吸収性コアに面する側面をコーティングされてもよい。このように、裏面層は、裏面層がコアの全表面に渡って延びるとともに、縁部を形成するように裏面層の一部が吸収性コアの外周エッジを越えて延びるように吸収性コア上に配置されている。裏面層を吸収性コアに適用する前に、裏面層に隣接する吸収性コアの側面に、吸収性コアに適用された裏面層を通る水分の移動を妨げないように不連続的に、下塗剤が塗布されてもよい。
【0098】
好ましい方法では、表面層とこれの孔は、吸収性コアに取着される前に形成される。穿孔装置42が、表面層およびこれの孔を形成するために使用されると好ましい。図19および20に示されているように、穿孔装置42は、所定距離だけ外方に延びる複数のニードル状の穿孔部材44を備えている、ほぼ平らなキャリヤ面47を有している。キャリヤ面43と穿孔部材44とを備えた穿孔装置42は、シリコーンの硬化温度まで選択的に加熱される。キャリヤ面47と穿孔部材44とは、TEFLONのような解放(release)フィルムでコーティングされている。
【0099】
好ましい実施形態では、穿孔部材は、シリコーン層の厚さよりも僅かに長い所定距離だけ延びている。この距離は、0.02ないし1.0mmまで変わり得るが、0.1〜0.2mmであると好ましい。この実施形態では穿孔部材がほぼ円形の断面を有しているが、ピンは、この構成に制限されるものではない。例えば、これらピンは、変形例で、三角形、四角形、長方形、もしくは他の何らかの形やこれらの組み合わせの形に構成された断面を有してもよい。穿孔装置は、1cmにつき5ないし300個の割合で穿孔部材を有しており、好ましくは、1cmにつき100個の穿孔部材が設けられる。
【0100】
表面層を形成するとき、硬化されていないシリコーンゲルの個々の層が、穿孔部材がシリコーンゲルの層を通って延びるように穿孔装置のキャリヤ面に配置される。硬化されていないシリコーンゲルは、概して、0.05〜0.5mmの範囲内の厚さを有している。シリコーンゲルが配置される前か後に、穿孔装置が、約100℃またはシリコーンゲルの他の何らかの適当な硬化温度まで加熱される。シリコーンゲルが、キャリヤ面全体にわたって平らにされると、キャリヤ面に隣接する内側部に沿って硬化し始める。しかし、シリコーンゲルの内側部に対向したシリコーンゲルの外側部が完全に硬化することは望ましくないことが理解されるだろう。これは、外側部が、吸収性コアに押圧されたときに吸収性コアに取着するのに十分な接着性を有するようにさせ、これによって、シリコーンゲルが吸収性コア自体に配置されながら硬化を終了できるようにするためである。
【0101】
吸収性コアが、キャリヤ面に隣接する側面に対向する表面層の側面上に配置される。シリコーンゲルが部分的に硬化された状態にあるため、シリコーンゲルが、硬化して、吸収性コアの表面に取着する。シリコーンゲルが完全に硬化したとき、シリコーン層が、吸収性コアと一緒に穿孔装置から取り外される。表面層を吸収性コアに更に完全に取着させるために、吸収性コアおよび表面層に圧力がかけられ得る。
【0102】
シリコーン層は、吸収性コアに適用される前に穿孔装置から取り外され得る。この実施形態では、シリコーン層が、部分的に硬化した状態にあるときに穿孔装置から剥がされることができ、これによって、個々の部分的に硬化されたシリコーン層が形成される。このシリコーン層は、後で適用されるフィルムまたは素地を吸収性コアか、直接に所定の身体部位かに与えるように適用され得る。移送フィルムは、実質的に完全に硬化された時にシリコーン層が容易に適用および取外しされ得るようにする、空気を通す紙または同様のタイプのフィルムか紙であってよい。
【0103】
穿孔装置は、上述された説明を考慮して改良され得る。特に、穿孔装置のキャリヤ面は、この面を貫通して延びている複数の孔を有していてよく、複数の個々の穿孔部材が、これら複数の孔を通って摺動可能に配置されている。この穿孔装置を使用する方法は、穿孔装置の平らな面および穿孔部材を加熱する工程と、硬化されていないシリコーンゲルの層を穿孔装置の平らな面に配置させる工程とを有している。平らな面に配置されると、穿孔部材が、シリコーン層を貫通するように作動される。シリコーン層が少なくとも部分的に硬化された後、穿孔部材が、シリコーンゲル層から取り外される。吸収性コアは、シリコーン層が硬化する際に、シリコーン層上に与えられてもよい。あるいは、シリコーン層は、完全に硬化するまで穿孔装置に残され、その後に取り外されてもよい。または、シリコーン層は、完全に硬化する前に取り外されてもよい。
【0104】
本発明において表面層を吸収性コアに適用する他の方法では、部分的に硬化されたシリコーン層12が、機械ローラ46をこの上で回転させることによってこのシリコーンの層12内に複数の孔が形成されるときに、移送フィルム上に配置される。図21に示されているように、機械ローラ46は、図19〜20に示されている穿孔装置42のキャリヤ面43および穿孔部材44に構造が似た表面を有している。孔を形成するときは、機械ローラ46の穿孔部材44が、約100℃またはシリコーン層の硬化温度に加熱される。機械ローラ46は、シリコーン層12が吸収性コア14に与えられた後に部分的に硬化されたシリコーン層に適用されるか、シリコーン層が吸収性コアに与えられる前に移送フィルムに取着されているシリコーン層に適用され得る。
【0105】
機械ローラは、穿孔装置の一実施形態を参照して説明されているように摺動可能な穿孔部材を有していてよく、これとほぼ同じ方法で働く。
【0106】
他の方法では、硬化されていないシリコーンゲルが、上述されたタイプのものと同様に、所定速度で回転する加熱された機械ローラ上に直接に押出され得る。所定の長さの吸収性コア材が、移送面によって支持され、機械ローラの下に位置される。機械ローラが回転する際、部分的に硬化されたシリコーンゲルが、回転する機械ローラによって吸収性コア材上に配置され、このローラが吸収性コアに少なくとも小さな圧力をかける。機械ローラは、シリコーンゲルがキャリヤ面を離れて吸収性コアに取着されるときにほぼまたは完全に硬化されるような十分な速度で回転するように構成および配置されている。
【0107】
NuSil Technology(Carpenteria, CA)によって製造された製造表示CF6-135のシリコーン下塗剤のようなシリコーンの下塗剤が、シリコーン層の吸収性コアへの取着を容易にするために使用可能である。
【0108】
表面層を吸収性コアに適用させる更なる他の方法では、図22に示されているように、部分的に硬化され穿孔されていないシリコーン層12が、移送フィルム38に与えられ得る。続いて、シリコーン層12を有しているフィルム38が、フィルム38が上面となり、シリコーン層12が下面となる方向に裏返される。シリコーン層12が、吸収性コア14の上面にゆっくりと位置される。シリコーン層12が吸収性コア14上に穏やかに押圧された後、図19および20に示された上述の穿孔装置42と同様の同様の構造を有する複数の穿孔部材44を備えた穿孔装置42が、吸収性コア14の下面全体にわたって位置される。しかし、この穿孔装置42は、各穿孔部材44が個々の空気通路を有し、概してより大きい点で、図19および20の穿孔装置とは異なる。
【0109】
穿孔部材44が、吸収性コア14の厚さ方向に少なくとも一部分に挿入され、シリコーン層の各部に向かってニードル44を通って、空気が与えられる。穿孔部材44を通って与えられた空気が、シリコーン層12を硬化させ、更に、シリコーン層12に孔を形成させる。所定の時間ののちに孔が形成されたとき、ニードル44を有している装置42が、吸収性コア14から取り外される。フィルム38が、シリコーン層12から実質的に取り除かれる。シリコーン下塗剤が、上述されたように、シリコーン層の吸収性コアへの接着性を改良するようにシリコーン層の適用のために吸収性コア14に与えられ得る。
【0110】
表面層12を吸収性コア14に適用するための図23および24に示された更なる他の方法では、シリコーン層12に結果として負の圧痕を生じるためのパターンにされた負の面48が、与えられている。パターンにされた面48は、シリコーン層12の孔の完成後のパターンに対応する一連の頂部50と窪み52とを有している。部分的に硬化されたシリコーンゲル54が、パターンにされた面に与えられる。この面では、頂部50の少なくとも上部がこのシリコーンゲルを通って延びる一方で、窪み52内にシリコーンゲルが入って静止する。その後に、吸収性コア14が、頂部50の上部が吸収性コア14を貫通する形でシリコーンゲル54に位置される。シリコーンゲル54が、吸収性コア14に取着され、パターンにされた面48が、上記のように形成されたシリコーン層12から取り外される。パターンにされた面48を取り外すことにより、シリコーン層12に、パターンにされた面48の頂部50に対応する所定のパターンの孔が与えられる。
【0111】
表面層を吸収性コアに適用させるほかの方法では、シリコーンゲルが、コンテナ内で主に硬化される。シリコーンゲルが適当に分厚い堅さに達すると、シリコーンが、コアに取着するように系統だった方法で吸収性コアにスプレーされる。シリコーンが吸収性コアにスプレーされる間、複数の孔が、シリコーン層に沿って形成される。シリコーンをスプレーすることは、ランダムでない所定のパターンに孔が形成され得るような制御された方法で行なわれる。シリコーン層は、吸収性コアに起伏のある表面を形成するようにスプレーされてもよい。
【0112】
表面層を吸収性コアに適用するための上述されたそれぞれの方法では、シリコーンがセルの壁部または吸収性コアの孔をコーティングしないことが肝心である。この目的は、吸収性コアの前面を通って実質的に自由に流れる液体もしくは滲出液の移送を可能にすることにある。更に、本発明のシリコーンの表面層に形成された孔が、本発明の包帯が創傷部に適用されているときにシリコーンの表面層を通る液体をよりよく制御できるように所定のパターンに形成されていると好ましい。
【0113】
上述された方法のいずれにおいても、表面層と吸収性コアとは、ほぼ均等にこれらの対向した領域に沿って互いに取着されている。更に、上述された方法のいずれにおいても、表面層の孔は、表面層が吸収性コアに適用される前に形成されても後に形成されてもよい。穿孔部材、即ち、頂部は、表面層が穿孔装置上に位置されている状態で吸収性コアが表面層に適用されている場合、吸収性コア中に所定距離だけ延びていてよい。吸収性コアに適用されるときには、吸収性コアに取着するのに十分な接着性を有するように表面層が部分的にのみ硬化されているが、吸収性コアの孔もしくはセルの毛管作用によって吸収性コアに付加的な孔が形成されないように実質的には硬化されていると好ましいことが、理解されるだろう。
【0114】
本発明の上述された実施形態は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々の異なる形状、サイズ、および構造をとり得ることが理解されるだろう。
【0115】
本発明の上述された実施形態は、実際には説明のためのものであり、この変形例は当分野の当業者によって発想されるものであることが理解されるだろう。従って、本発明は、本明細書に開示されている実施形態に制限されるものではなく、添付請求項によって規定されて制限されるように意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の一実施形態に係わる創傷包帯の斜視図である。
【図2】図1のII−II線で切断された創傷包帯の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係わる創傷包帯の斜視図である。
【図4】本発明の表面層の一実施形態を示す平面図である。
【図5】図2の創傷包帯の他の実施形態の一部分の拡大図である。
【図6】創傷部を覆う図1〜2の創傷包帯の進行する膨張を示す断面図である。
【図7】創傷部を覆う図1並びに2の創傷包帯の進行する膨張を示す断面図である。
【図8】創傷部を覆う図1並びに2の創傷包帯の進行する膨張を示す断面図である。
【図9】図8の創傷包帯の一部分の拡大図を示している。
【図10】本発明の表面層の一実施形態を示す平面図である。
【図11】本発明の吸収性コアのレセプタクルの一実施形態を示す平面図である。
【図12】本発明の表面層の一実施形態を示す平面図である。
【図13】本発明の表面層およびレセプタクルの他の実施形態を示す正面図である。
【図14】本発明の様々の程度の皮膚接着性を有する領域を備えた表面層の実施形態を示す平面図である。
【図15】本発明の様々の程度の皮膚接着性を有する領域を備えた表面層の実施形態を示す平面図である。
【図16】本発明の様々の程度の皮膚接着性を有する領域を備えた表面層の実施形態を示す平面図である。
【図17】本発明の皮膚接着性の縁部を有する裏面層の一実施形態を示す立面図である。
【図18】本発明の皮膚接着性の縁部を有する裏面層の一実施形態を示す立面図である。
【図19】本発明の表面層に複数の孔を形成するための穿孔プレートの一実施形態の斜視図である。
【図20】図19の穿孔プレートを示す立面図である。
【図21】本発明の表面層に複数の孔を形成するための処理を示す概略図である。
【図22】本発明の表面層に複数の孔を形成するための処理を示す概略図である。
【図23】本発明の表面層に複数の孔を形成するための処理を示す概略図である。
【図24】図23の創傷包帯の表面層に複数の孔を形成するための配置の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面および後面を有する吸収性コアと、
この吸収性コアの前面に沿って配置され、所定のパターンに配置された複数の貫通孔を有している別個の皮膚接着性のエラストマーゲルの層とを具備している創傷包帯。
【請求項2】
前記エラストマーゲルの層の前面は、実質的に平面である請求項1の創傷包帯。
【請求項3】
前記エラストマーゲルの層は、交差結合されたシリコーンゲルを有している請求項1の創傷包帯。
【請求項4】
前記エラストマーゲルの層は、吸収性コアの前面に沿って表面の凸凹を埋めている請求項1の創傷包帯。
【請求項5】
前記エラストマーゲルの層は、アロエとワセリンよりなるグループから選択された皮膚治療剤を有している請求項1の創傷包帯。
【請求項6】
所定のパターンに配置された複数の穿孔を有する別個のシリコーンゲルの層から成る皮膚接着性の表面層を具備している、創傷を保護するための創傷包帯。
【請求項7】
前面および後面を規定し、後面は中心部および縁部を有している吸収性コアと、
吸収性コアの前記後面に接続され、吸収性コアの外周を超えて延びる縁部を規定している液体を通さず気体を通す裏面層と、
裏面層の前記縁部の少なくとも1つの前部に適用された接着層とを具備している創傷包帯。
【請求項8】
裏面層の前記縁部は、吸収性コアの前面と実質的に平行である請求項7の創傷包帯。
【請求項9】
前記裏面層は、吸収性コアの外周エッジに沿って延びている請求項8の創傷包帯。
【請求項10】
吸収性コアの前面に取着された穿孔性で皮膚接着性の表面層を更に具備している請求項8の創傷包帯。
【請求項11】
前記表面層は、吸収性コアの前記前面全体と、裏面層に接続するように吸収性コアの外周エッジとに沿って延びている請求項10の創傷包帯。
【請求項12】
前記表面層は、別個の穿孔性のエラストマーゲルの層である請求項10の創傷包帯。
【請求項13】
裏面層の前記縁部は、吸収性コアの後面と実質的に平行である請求項10の創傷包帯。
【請求項14】
互いに対向している前面および後面を有し、後面は中心部および縁部を有している吸収性コアと、
吸収性コアの前記前面に取着された後面と、所定のパターンに配置された複数の貫通孔とを有している別個の皮膚接着性エラストマーゲルの表面層と、
表面層の前面の少なくとも一部分でこの表面層に適用された別個の圧力感応接着層とを具備している創傷包帯。
【請求項15】
前記接着層は、表面層のエラストマーゲルよりも高い皮膚接着特性を有している請求項14の創傷包帯。
【請求項16】
互いに対向している前面および後面を有している吸収性コアと、
吸収性コアの前記前面に取着された後面を有している別個の皮膚接着性で穿孔性の表面層とを具備し、この表面層は、これの前面に沿って、異なる皮膚接着特性をそれぞれに有する複数の領域を備えている創傷包帯。
【請求項17】
表面層のほぼ中心部の皮膚接着性は、前記中心部を縁取る縁部に沿った領域の皮膚接着性よりも低い請求項16の創傷包帯。
【請求項18】
前記表面層は、創傷包帯の中心軸からそれぞれ異なる距離のところに位置する少なくとも2つの同心の部分を有し、これら2つの部分は、それぞれ異なる皮膚接着特性を有している請求項16の創傷包帯。
【請求項19】
吸収性コアとこの吸収性コアに取着されたエラストマーゲルの表面層とを有している創傷包帯を作る方法であって、
穿孔装置上に別個のエラストマーゲルの層を形成するように硬化されていないエラストマーゲルを穿孔装置上に堆積させる工程と、
エラストマーゲルの層を部分的に硬化された状態に硬化する工程と、
前記吸収性コアを前記部分的に硬化されたエラストマーゲルの層の表面に適用させる工程とを具備している方法。
【請求項20】
前記ゲルの層を吸収性コアに適用させる前に、このエラストマーゲルの層に複数の孔を形成する工程を更に具備している請求項19の方法。
【請求項21】
前記穿孔装置は、所定のパターンに形成された複数の穿孔部材を有し、これら穿孔部材は、エラストマーゲルの層に複数の孔を形成する請求項19の方法。
【請求項22】
エラストマーゲルをキャリヤ面上に堆積させる前にキャリヤ面と穿孔部材を加熱する工程を更に具備している請求項21の方法。
【請求項23】
吸収性コアが前記部分的に硬化されたエラストマーゲルに適用されるときに、前記穿孔装置の加熱状態を維持する工程を更に具備している請求項19の方法。
【請求項24】
前記エラストマーゲルの層と接触する表面と反対側の吸収性コアの表面に圧力をかける工程を更に具備している請求項21の方法。
【請求項25】
前記部分的に硬化されたエラストマーゲルの層は、交差結合されたシリコーンである請求項19の方法。
【請求項26】
硬化されていないシリコーンゲルを、シリコーンゲルの層を通って延びるような複数の穿孔部材を有している穿孔装置の平らな表面上に配置させる工程と、
前記平らな表面に隣接しているシリコーンゲルの層の少なくとも表面が少なくとも部分的に硬化された時に、シリコーンゲルを前記穿孔装置から剥がす工程とを具備している、穿孔性のシリコーンゲルの層を有している創傷包帯を作る方法。
【請求項27】
穿孔装置の前記平らな表面を加熱する工程を更に具備している請求項26の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2006−516003(P2006−516003A)
【公表日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508539(P2005−508539)
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/037074
【国際公開番号】WO2004/060359
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
TEFLON
【出願人】(300002872)オスール・エイチエフ (8)
【Fターム(参考)】