説明

創傷被覆材

本発明は多層式創傷被覆材に関し、特に肉芽形成フェーズおよび上皮化フェーズにおける創傷治療用の多層式創傷被覆材に関する。前記創傷被覆材は、a)第1の面と第2の面とを有する創傷接触層としての第1の層と、b)第1の面と第2の面とを有し、親水性ポリウレタン発泡体を含む吸収層としての少なくとも1つの第2の層とを含み、前記ポリウレタン発泡体が少なくとも10重量%の水分率で水を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は創傷被覆材に関し、特に肉芽形成フェーズおよび上皮化フェーズにおける創傷治療手段としての創傷被覆材に関する。これらの創傷被覆材は、特に創傷の湿潤療法に有用である。さらに本発明は、上記創傷被覆材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚創傷の治癒は、上皮および結合・支持組織を再生する皮膚の能力に基づいている。再生自体の特徴は、治癒プロセスを段階的に進行させる細胞活動が重なり合った複雑な相互作用である。文献には、創傷の種類に関係なく創傷治癒には必須の3つのフェーズがあることが記載されている。それらのフェーズとは、血液凝固および創傷清浄化のための炎症または滲出フェーズ(フェーズ1、清浄フェーズ)、肉芽組織形成のための増殖期(フェーズ2、肉芽形成フェーズ)ならびに上皮化および瘢痕形成のための分化フェーズ(フェーズ3、上皮化フェーズ)である。
【0003】
個々の創傷治癒のフェーズを増進させるための数多くの提案が、文献に記載されている。特にポリウレタン発泡体を含んだ創傷被覆材は、かねてから多くの技術文献の記事や特許文献の主題となってきた。例えば、欧州特許第457977B1号、欧州特許第486522B1号、欧州特許第541390B1号、欧州特許第541391B1号、欧州特許第570430B1号、欧州特許第665856B1号、欧州特許第691113B1号、欧州特許第693913B1号または欧州特許第1082146B1号には、吸収層がポリウレタン発泡体を含んでいる、様々な構成の創傷被覆材が記載されている。これらのポリウレタン発泡体は、新しい細胞・組織が該発泡体の孔内に伸びていく際、治癒途中の創傷に癒着する可能性がある。
【0004】
また、欧州特許第855921B1号および欧州特許第1156838B1号には、疎水性シリコーンゲルでコーティングされたポリウレタン発泡体を含む創傷被覆材が開示されている。このシリコーンゲルは、ポリウレタン発泡体への創傷の癒着を防ぐとされている。
【0005】
さらには、国際公開第02/38097A1号、国際公開第02/47761A1号、国際公開第03/011352A1号、国際公開第03/086255A1号、国際公開第2004/052415A1または欧州特許第1658865A1号に、ヒドロゲルとポリウレタン発泡体とを含んでなる創傷被覆材が記載されている。使用されるのは、乾燥ポリウレタン発泡体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第457977B1号明細書
【特許文献2】欧州特許第486522B1号明細書
【特許文献3】欧州特許第541390B1号明細書
【特許文献4】欧州特許第541391B1号明細書
【特許文献5】欧州特許第570430B1号明細書
【特許文献6】欧州特許第665856B1号明細書
【特許文献7】欧州特許第691113B1号明細書
【特許文献8】欧州特許第693913B1号明細書
【特許文献9】欧州特許第1082146B1号明細書
【特許文献10】欧州特許第855921B1号
【特許文献11】欧州特許第1156838B1号
【特許文献12】国際公開第02/38097A1号
【特許文献13】国際公開第02/47761A1号
【特許文献14】国際公開第03/011352A1号
【特許文献15】国際公開第03/086255A1号
【特許文献16】国際公開第2004/052415A1
【特許文献17】欧州特許出願公開第1658865A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記および市販の創傷被覆材から発展して、本発明の目的は、改良された創傷被覆材、特に肉芽形成および/または上皮化フェーズにおける創傷治癒用の創傷被覆材を提供することである。本発明のさらに1つの目的は、正常で自然な治癒過程を辿ることができるように、創傷の病的状態に影響を及ぼす創傷被覆材を提供することである。この目的のために、本発明の創傷被覆材は、十分量の湿潤を創傷に与えると共に、高い吸収能力を有する。本発明のさらにもう1つの目的は、治療される創傷にかかる剪断力がほとんど生じない創傷被覆材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、上記目的が、請求項1に記載の多層式創傷被覆材によって実現されることを見出した。したがって、本発明に係る多層式創傷被覆材は、第1の面と第2の面とを有する創傷接触層としての第1の層と、第1の面と第2の面とを有し親水性ポリウレタン発泡体からなる吸収層としての少なくとも1つの第2の層とを含み、前記ポリウレタン発泡体は、少なくとも10重量%の水分率(Wasseranteil)で水を含有する。
【0009】
さらに特には、本発明に係る創傷被覆材の第2の層は、少なくとも20重量%、さらに特には少なくとも30重量%、最も好ましくは少なくとも35重量%の水分を含有する親水性ポリウレタン発泡体を含む。さらに好ましくは、前記ポリウレタン発泡体は、最大80重量%、さらに特には最大70重量%、最も好ましくは最大65重量%の水分率で水を含有する。さらに特には、上記の水分率は、前記発泡体のポリウレタンマトリックス中に均一に分布している。さらに詳しくは、前記親水性ポリウレタン発泡体は、少なくとも10重量%かつ最大80重量%の水分率で水を含有し、特に、前記ポリウレタン発泡体中の水の分布は、均一である。
【0010】
ここ、および以下において、含有物の各含有量は、本発明との関連において、特に指定されない限り、その含有物を含む構成要素(Komponente)の重量に基づいて、重量パーセント(%)で示されていることを理解すべきである。
【0011】
各成分中の水の量は、DIN EN 14079規格に準拠して、本発明との関連で規定され、以下のようにして算定される:
【0012】
【数1】


上記式中、Wは構成要素の総重量を基準にした水の重量%、Wは水含有構成要素の重量、Wは乾燥構成要素の重量である。
【0013】
これにより、本発明に関連して、少なくとも10重量%の水分率で水を含有するポリウレタン発泡体は、そのポリウレタン発泡体から放出可能な少なくとも10重量パーセントの水を含有するポリウレタン発泡体であると理解されるべきである。逆に言うと、例えばポリウレタン発泡体の出発材料の重合において、形成用に使われる可能性のある水分率を意味しているのではない。こうした水は共有結合しているので、創傷治療には利用できない。また、上記発泡体の製造過程で使用される水分率のことでもない。この水分率は、上記ポリウレタン発泡体の製造後または製造中に、通常は乾燥によって、例えばオーブンで乾燥させて発泡体から除去されるので、これも創傷治療には利用できない。したがって、本発明に係る創傷被覆材は、乾燥後、製造過程に起因したいかなる残留水分含有量をも明らかに超える水分率を含有するポリウレタン発泡体を含む。
【0014】
本発明による創傷被覆材はさらに好ましくは、少なくとも20%の保持値Rを有する親水性ポリウレタン発泡体を含む。さらに好ましくは、前記親水性ポリウレタン発泡体は、少なくとも30%、さらに特には少なくとも40%、さらに特には少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%の保持値Rを有する。
【0015】
上記とは独立に、本発明の創傷被覆材はさらに好ましくは、最大90%、さらに特には最大80%、非常に特には最大70%の保持値Rを有する親水性ポリウレタン発泡体を含む。この保持値Rは、本明細書中で記載される方法によって決定される。
【0016】
本発明に係る創傷被覆材は、非常に特に好ましくは、少なくとも10重量%の水分率を有する親水性ポリウレタン発泡体を含み、前記水分率は前記ポリウレタン発泡体の保持値Rに相当する。
【0017】
したがって、最先端の創傷治療用に最適条件化されたポリウレタン発泡体創傷被覆材を提供することができる。これは、ポリウレタン発泡体中の水含有量により、本発明の創傷被覆材を貼付直後、治療される創傷表面に対して、該創傷被覆材により、特に創傷治癒を促進する環境が与えるからである。本発明の創傷被覆材では、最初から創傷に湿潤または水が供給される一方で、同時に前記吸収性ポリウレタン発泡体による十分な吸収能力が保持されている。これにより、創傷治癒にとっていかなるマイナス要因も創傷表面から取り除かれるのと併行して、十分量の湿潤や水が与えられる。放出可能な水を含まず、通常大量の創傷浸出液を急速に吸収して結果的に創傷表面を乾燥させる、乾燥ポリウレタン発泡体と比べて、本発明の創傷被覆材は若干吸収能力が低いので、創傷治癒の上皮化または肉芽形成フェーズにおける使用に極めて適している。したがって、本発明の創傷被覆材は、ある程度まで自然に、創傷の肉芽形成および/または上皮化を促進させることができる。
【0018】
また、乾燥親水性ポリウレタン発泡体を含む創傷被覆材と比べ、創傷にかかる剪断応力が格段に小さい創傷被覆材を提供することができる。上記ポリマー発泡体中の少なくとも10重量%の水分率の水により、あらかじめ調整(前調整)された親水性ポリウレタン発泡体を含み、乾燥親水性ポリウレタン発泡体を有する創傷被覆材よりも液体吸収に関連する膨潤容量が極めて小さい創傷被覆材の提供が可能になる。したがって、上記の前調整されたポリウレタン発泡体の、より小さい膨潤容量は、創傷被覆材内部では、治療される創傷に関してのみならず、さらなる層または材料に関しても、かかる剪断力はより小さくなる。これにより、創傷治癒を特に促進させるポリウレタン発泡体創傷被覆材を提供することが可能になる。
【0019】
そこで、もう1つの展開した概念によれば、本発明はまた、第1の面と第2の面とを有する第2の層を含み、前記層が、少なくとも10重量%の水分率で水を含有し最大80%の膨潤容量ΔVを有する親水性ポリウレタン発泡体を含む、創傷被覆材を提供する。さらに特には、前記親水性ポリウレタン発泡体は、最大60%、さらに特には最大40%、さらに特には最大30%、最も好ましくは最大20%の膨潤容量ΔVを有する。この関連において、前記ポリウレタン発泡体が、少なくとも5%の残存膨潤容量ΔVを有していることはさらに有利になるであろう。この残存膨潤容量は、吸収の間、創傷被覆材と創傷床との接触をより良好にするために利用されることができる。
【0020】
ポリウレタン発泡体の膨潤容量ΔVは、少なくとも10重量%の水含有量のポリマー発泡体と比べて、その吸収容量を完全に使い切ったポリウレタン発泡体の体積増加量を意味するものとして理解されるべきである。この膨潤容量は、本明細書に記述されている試験により決定されるものである。
【0021】
本発明に関連して有効な上記ポリウレタン発泡体としては、最新の創傷治療用に一般的に使用され、そのポリウレタンマトリックス中に水分率を吸収し、十分な吸収性を有するいかなる親水性ポリウレタン発泡体であってもよい。これにより、本発明に関連して、親水性ポリウレタン発泡体は、そのポリウレタンマトリックスの中およびその孔内に液体を吸い込んで貯留する、すなわち吸収することができるとともに、吸い込んだ液体の少なくとも幾分かの量を再放出できる親水性ポリウレタン発泡体である。有用な親水性ポリマー発泡体としては、より詳細には、連続気泡型親水性ポリウレタン発泡体などがある。したがって、特に好ましい創傷被覆材は、連続気泡型親水性ポリウレタン発泡体を含む第2の層を含む。
【0022】
本発明は、高い吸収能力を有するようなポリウレタン発泡体の使用を必要とする。この吸収能力は、たとえポリウレタン発泡体がそのポリマーマトリックス中に発泡体自体の重さの水分率の水を吸収したとしても保持されるべきものである。これにより、本発明のさらに1つの展開では、本発明に係る創傷被覆材は、少なくとも10重量%かつ最大80重量%の水分率で水を含有し、少なくとも10g/g、さらに特には少なくとも12g/g、最も好ましくは少なくとも15g/gの自由吸収率Aを有するポリウレタン発泡体を含み、前記自由吸収率Aは、DIN−EN 13726−1 (2002)に準拠して決定される。ここで、前記自由吸収率Aは、前記水含有ポリウレタン発泡体の自由吸収率である。
【0023】
さらに好ましくは、本発明に係る創傷被覆材は、少なくとも10重量%かつ最大80重量%の水分率で水を含有し、少なくとも10g/g、さらに特には少なくとも12g/g、最も好ましくは少なくとも15g/gの自由吸収率Aを有するポリウレタン発泡体を含み、前記自由吸収率Aは、DIN−EN 13726−1 (2002)に準拠して決定される。ここで、前記自由吸収率Aは、前記乾燥ポリウレタン発泡体の自由吸収率である。
【0024】
さらに好ましくは、本発明に係る創傷被覆材は、1000μm未満、さらに特には100〜1000μmの範囲、さらに特には100〜500μmの範囲、最も好ましくは100〜300μmの範囲の平均孔径を有する親水性ポリウレタン発泡体を含む。さらに特には、前記第2の層の第1の面における平均孔径は、前記第2の層の内部の孔径に等しく、および/または前記第2の層の第2の面における平均孔径と同じあってもよい。さらに好ましい親水性ポリウレタン発泡体は、150kg/m未満、さらに特には140kg/m未満、最も好ましくは50〜120kg/mの範囲の密度を有する。
【0025】
特に有利な実施形態は、さらに、0.1〜5.0mmの範囲の層厚を有するポリウレタン発泡体を含む創傷被覆材を含む。したがって、さらに特には、本発明に係る創傷被覆材は、0.1〜5.0mmの範囲、さらに特には0.5〜5.0mmの範囲、最も好ましくは0.5〜3.0mmの範囲の層厚を有する吸収層を含む。これらのような層厚の創傷被覆材は、創傷の浸出液を吸い込むことができるのと併行して、十分量の水または湿潤を創傷に与えることができる。これらの層厚は、前記創傷接触層のあらゆる箇所で同じであってもよく、または前記創傷接触層の様々な領域で異なっていてもよい。ある1つの実施形態では、前記吸収層または前記ポリウレタン発泡体はまた、平らな端部を有する。
【0026】
本発明に係る創傷接触層は、創傷治癒に悪影響を及ぼさない材料であればいかなる材料を用いてもよい。本発明の創傷被覆材を使用する場合、創傷と直接接触するのは創傷接触層である。この創傷接触層は、治療される創傷から前記ポリウレタン発泡体を離すという唯一の用途を有しうるが、また、この創傷接触層は、治療される創傷に関連してのみならず当該創傷被覆材に関連してさらなる機能を発揮することもできる。さらに特には、本発明に係る創傷被覆材は、第1の面と第2の面とを有する創傷接触層を含んでいてもよい。この場合、前記創傷接触層は、ヒドロゲルマトリックス、ポリマーフィルム、親水コロイドマトリックス、ポリマーネット、不織布または接着剤を含む。
【0027】
本発明の創傷被覆材のさらなる1つの展開では、前記創傷接触層は、当該創傷接触層を介して液体を通過させるための多数の経路、開口部または孔を有していてもよい。この関連において提供されるのは、さらに特には、前記創傷接触層が、第1の面から第2の面まで創傷浸出液の通路となる経路を含むことである。この実施形態では、前記創傷接触層の第1の面は、治療される創傷と直接接触し、前記創傷接触層の第2の面は、前記吸収層の第1の面と直接接触している。
【0028】
本発明のさらに1つの展開では、前記創傷接触層はまた、直径0.5〜5mmの経路、開口部または孔を有していてもよい。さらに特には、前記創傷接触層は、直径1〜3mmの経路、開口部または孔を含む。非常に特に好ましくは、前記創傷接触層は、その第1の面(当該創傷被覆材が目的通りに使用される場合、創傷に面する側面)に直径1〜3mmの開口部を有する一方で、前記創傷接触層の第2の面は、前記ポリウレタン発泡体と直接接触する。
【0029】
さらに好ましくは、前記創傷接触層は、当該創傷接触層を液体が通過できるように多数(Vielzahl)の経路、開口部または孔を有し、前記創傷接触層の第1の面の経路、開口部または孔は、前記創傷接触層の第1の面の面積の最大95%の面積を占める。この関連においてさらに好ましくは、前記経路、開口部または孔は、前記創傷接触層の第1の面の面積の最大70%、さらに特には最大50%、さらに特には最大40%、最も好ましくは最大30%の面積を占める。非常に特に好ましくは、前記創傷接触層は、当該創傷接触層の第1の面に、当該創傷接触層の第1の面の面積の少なくとも5%、最大30%の面積を占める経路、開口部または孔を有する。1つの非常に詳細な実施形態では、本発明の創傷被覆材は、1平方センチ当たり2〜8個の孔を有する創傷接触層を含む。ここで1つの可能性として、当該創傷接触層は、穴あきポリマーフィルムまたはポリマーネット、さらに特にはポリウレタンフィルムまたはポリマーネットであってもよい。
【0030】
本発明のもう1つの実施形態では、本発明に係る創傷被覆材は、創傷接触層として親水コロイドマトリックスを含んでいてもよい。この親水コロイドマトリックスは、親水コロイド粒子がその中に分散している粘着性ポリマーマトリックスから構成されることができる。本発明の目的のために、親水コロイドは、水溶性もしくは吸収性および/または水膨潤性を有している親水性の合成または天然のポリマー素材である。好ましくは、創傷接触層は、アルギン酸、その塩、およびそれらの誘導体、キチンまたはその誘導体、キトサンまたはその誘導体、ペクチン、セルロースエーテルもしくはセルロースエステル、架橋結合もしくは非架橋結合カルボキシアルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロースなどのセルロースまたはその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、寒天、グアーゴム、ゼラチンならびにこれらの混合物とからなる群から選択される合成または天然のポリマー素材から構成される親水コロイドを含む。
【0031】
前記親水コロイドは、マトリックス内で、繊維の形だけではなく粒子および/または繊維の形でも存在することができる。さらに特には、前記親水コロイドは、粘着性ポリマーマトリックス内において粒子の形で存在することができる。前記粘着性ポリマーマトリックスは、ABジブロック共重合体および/またはABAトリブロック共重合体からなる群から選択される少なくとも1つのブロック共重合体を含み、前記ブロック共重合体は、スチレン、ブタジエンおよびイソプレンのモノマーからなる。前記創傷接触層中における親水コロイド粒子の割合は、好ましくは、前記創傷接触層の総重量を基準として10〜70重量%を含む。このような組成が、例えば、欧州特許第1007597B1号に開示されている。
【0032】
本発明のさらに1つの実施形態では、本発明に係る創傷被覆材はさらに、創傷接触層として水含有ヒドロゲルマトリックスを含んでいてもよい。このヒドロゲルマトリックスは、好ましくは、少なくとも20重量%、さらに特には少なくとも30重量%、さらに特には少なくとも40重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%の水を含有する。この場合、ヒドロゲルマトリックスは、さらに好ましくは最大90重量%、さらに好ましくは最大80重量%の水を含有する。したがって、前記水含有ポリウレタン発泡体に加えて第2の水含有部材を含み、それにより自然な創傷治癒のために十分量の湿潤を与える創傷接触層を含む創傷被覆材の提供ができる。
【0033】
本発明に関連する有用な水含有ヒドロゲルマトリックスとしては、特に、密着性の不連続層を形成し圧力下で水を放出しないヒドロゲルマトリックスなどがあげられる。さらに特には、本発明に関連する有用なヒドロゲルマトリックスは、ポリウレタン‐ポリ尿素共重合体を含む。このポリウレタン‐ポリ尿素共重合体は、さらに特には,脂肪族ジイソシアネート基を有するプレポリマーおよびポリエチレンオキシド系ポリアミンとから形成されてもよい。さらに特には、前記ポリウレタン‐ポリ尿素共重合体は、イソホロンジイソシアネート末端を有するプレポリマーと、ポリエチレンオキシド系ポリアミンと、水と、から形成されてもよい。これらのヒドロゲルマトリックスは、水を貯留してその水を創傷に供給するために特に有用である。
【0034】
さらに好ましくは、前記水含有ヒドロゲルマトリックスは、2価、3価、4価、5価または6価のアルコール群から選択された少なくとも1つの多価アルコールをさらに含んでいる。さらに特には、前記アルコールはグリコール類、より詳細にはエチレングリコールもしくはプロピレングリコール、ソルビトールもしくはグリセロール、またはそれらの混合物からなる群から選択されることができる。これらのアルコール類は、湿潤付与剤として非常に有用であり、したがって創傷周辺の皮膚のためのケア成分を構成する。
この関連において、前記水含有ヒドロゲルマトリックスは、特に0〜50重量%の多価アルコールを含んでいてもよい。さらに特には、前記ヒドロゲルマトリックスは、5〜40重量%の多価アルコール、最も好ましくは10〜30重量%の多価アルコールを含む。
【0035】
さらに、前記水含有ヒドロゲルマトリックスは、特に、少なくとも1種類の塩を含んでいてもよい。さらに特には、この関連において、前記ヒドロゲルマトリックスは無機塩を含む。この関連で、アルカリおよびアルカリ土類金属の塩化物、ヨウ化物、硫酸塩、硫酸水素塩、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、リン酸二水素塩またはリン酸水素塩が特に好適である。非常に特に好ましくは、ヒドロゲルマトリックスは、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムまたはこれらの混合物を含む。これらの塩類は、創傷血清中で電解質混合物に擬態する上で特に適している。結果的に、これらの塩類を含むヒドロゲルマトリックスは、特に創傷治癒を促進する環境を創傷に与える。
【0036】
ここで1つの可能性は、前記ヒドロゲルマトリックスが、0〜5重量%の少なくとも1種類の塩を含むことである。さらに特には、前記ヒドロゲルマトリックスは、0.1〜3重量%の塩、最も好ましくは0.5〜1.5重量%の塩を含む。
【0037】
総じて、本発明の1つの可能な実施形態では、前記水含有ヒドロゲルマトリックスは、好ましくは、少なくとも20重量%の水と少なくとも10重量%のポリウレタン‐ポリ尿素共重合体とを含む。さらに1つの好ましいヒドロゲルマトリックスは、少なくとも20重量%の水と少なくとも15重量%のポリウレタン‐ポリ尿素共重合体とを含む。さらに1つの好ましい実施形態では、前記ヒドロゲルマトリックスは、脂肪族ジイソシアネート基を有する6〜60重量%のプレポリマーと、4〜40重量%のポリエチレンオキシド系ポリアミンと、0〜50重量%の多価アルコールと、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される0〜5重量%の少なくとも1種類の塩と、少なくとも20重量%の水とから形成される。
【0038】
さらに1つの好ましい実施形態では、ヒドロゲルマトリックスは、脂肪族ジイソシアネート基を有する6〜30重量%のプレポリマーと、4〜20重量%のポリエチレンオキシド系ジアミン、プロピレングリコールおよび/またはグリセロールからなる群から選択される10〜30重量%の多価アルコール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムまたはこれらの混合物からなる群から選択される0.5〜1.5重量%の1種類の塩と、少なくとも30重量%の水とから形成される。
【0039】
1つの非常に特に好ましい実施形態では、ヒドロゲルマトリックスは、イソホロンジイソシアネート末端を有する6〜20重量%のプレポリマーと、4〜15重量%のポリエチレンオキシド系ジアミンと、15〜20重量%のポリプロピレングリコールおよび/またはグリセロールと、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムまたはこれらの混合物からなる群から選択される0.5〜1.5重量%の塩と、少なくとも40重量%の水とから形成される。このヒドロゲルマトリックスは、少なくとも1g/g、最大5g/gの自由吸収率Aを有し(DIN EN 13723−1(2002)に準拠して測定)、非刺激性、液体吸収性および緩衝性のある皮膚様の媒体を構成し、抗菌効果を与えるので、創傷接触層としての使用には特に好適である。
【0040】
特に有利な実施形態は、さらに、0.1〜5.0mmの範囲の層厚を有するヒドロゲルマトリックスを含む創傷被覆材を含む。したがって、さらに特には、本発明に係る創傷被覆材は、0.1〜5.0mmの範囲、さらに特には0.5〜5.0mmの範囲、最も好ましくは0.5〜3.0mmの範囲の層厚を有する創傷接触層を含む。これらのような層厚を有する創傷被覆材は、一方では創傷に付着することがなく、他方では創傷浸出液を吸収してそれを吸収層へ運ぶことができる。これらの層厚は、創傷接触層のあらゆる箇所で同じ厚みにすることができ、あるいは創傷接触層の様々な領域で異なる厚みにすることもできる。
【0041】
さらに好ましくは、前記ヒドロゲルマトリックスは、第1の面から第2の面へ液体を通過させるために、経路、さらに特には円錐形の経路を有する。これにより、特に創傷浸出液の通過が改善される。特に好ましくは、前記経路は、楕円形または円形の横断面を有する、すなわち、前記経路は、前記ヒドロゲルマトリックスの第1の面と第2の面の両方に円形または楕円形の開口部を有し、第1および第2の面の前記円形または楕円形の開口部の径は異なっている。しかしながら、前記経路はまた、三角形、長方形、正方形、五角形、六角形または他のいくつかの多角形の横断面を有していてもよい。非常に特に好ましくは、第1の面は、第2の面の開口部よりも大きい開口部を有する。
【0042】
本発明のさらに1つの展開では、前記創傷接触層または前記ヒドロゲルマトリックスはまた、直径0.5〜5mmの開口部を有していてもよい。さらに特には、前記創傷接触層または前記ヒドロゲルマトリックスは、直径1〜3mmの開口部を有する。非常に特に好ましくは、前記創傷接触層または前記ヒドロゲルマトリックスは、創傷に面する第1の面に直径1〜3mmの開口部を有する一方で、前記創傷接触層または前記ヒドロゲルマトリックスの第2の面は、前記ポリウレタン発泡体と直接接触している。
【0043】
吸収層と創傷接触層との間に移行層を設けてもよい。この実施形態では、本発明に係る創傷被覆材は、両素材からなる層をヒドロゲルマトリックスとポリウレタン発泡体との間に含む。この移行層は、ちょうど前記創傷接触層と同様に、経路、開口部または孔を有していてもよい。前記移行層が経路、開口部または孔を有する場合、さらに好ましい実施形態では、これらの経路、開口部または孔内には、ポリウレタン発泡体が充填されている。さらに好ましくは、これらの経路、開口部または孔は、前記創傷接触層の経路、開口部または孔と一致している。このような移行層を設けることにより、ポリウレタン発泡体とヒドロゲルマトリックスとから形成された薄層を含み、前記吸収層と前記創傷接触層との間が特に堅固に結合されている創傷被覆材を提供することができる。
【0044】
本発明のもう1つのさらに展開した概念によれば、本発明はまた、前記ヒドロゲルマトリックスと前記親水性ポリマー発泡体との間にバリア層を含む創傷被覆材を提供する。このようなバリア層は、例えば、開口部を設けたポリマーフィルムで構成されていてもよい。
【0045】
本発明に係る創傷被覆材はさらに裏打ち層を含んでいてもよい。この裏打ち層は種々の材料から構成されることができる。一般的には、創傷被覆材は、織物の裏打ち素材、不織布、ポリマーフィルムまたはポリマー発泡体を用いる。この裏打ち層は、前記吸収層の第2の面または前記親水性ポリマー発泡体と直接的または間接的に接触していてもよい。直接的な接触の場合、前記裏打ち層は前記吸収層または前記ポリウレタン発泡体上に直接積層されるが、間接的接触の場合には、前記裏打ち層は、接着剤によって前記吸収層または前記ポリウレタン発泡体に付けられる。この接着剤は、前記裏打ち層と前記吸収層との間で、均一にまたは部分的にのみ塗布されることができる。
【0046】
本発明に係る創傷被覆材の裏打ち層は、特にポリマーフィルムまたはポリウレタン発泡体を使用してもよい。非常に特に好ましいのは、不透水性で高い水蒸気透過率を有するポリマーフィルムまたはポリマー発泡体である。このために特に好適なフィルムまたは発泡体は、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタン、ポリエーテル‐ポリアミド共重合体、ポリアクリレートまたはポリメタクリレートから形成される。さらに特には、不透水性で水蒸気透過性のポリウレタンフィルムまたは不透水性で水蒸気透過性のポリウレタン発泡体が、裏打ち層として好適に使用される。さらに特には、ポリウレタンフィルム、ポリエステルウレタンフィルムまたはポリエーテルウレタンフィルムが、ポリマーフィルムとして好ましく使用される。
【0047】
しかしながらまた、非常に特に好ましくは、ポリマーフィルムは、15〜50μm、さらに特には20〜40μm、最も好ましくは25〜30μmの厚みを有する。前記創傷被覆材のポリマーフィルムの水蒸気透過率は、好ましくは少なくとも750g/m/24h、さらに特には少なくとも1000g/m/24h、最も好ましくは少なくとも2000g/m/24h(DIN EN 13726に準拠して測定)である。特に好ましい実施形態では、これらのフィルムは、防湿性かつ粘着性の端部を有する。この端部によって、確実に目的の場所に前記創傷被覆材を貼付して固定することができる。さらには、前記フィルムと治療される領域周辺の皮膚との間に液体が漏れるのを確実に防ぐことができる。特に好ましい接着剤は、20〜35g/mの量が薄く付加され、前記フィルムとの併用による水蒸気透過率が、少なくとも800g/m/24h、好ましくは少なくとも1000g/m/24h(DIN EN 13726に準拠して測定)を達成する。
【0048】
本発明のさらに1つの展開された概念によれば、本発明はまた、裏打ち層と、吸収層と、親水性創傷接触層と分配層とを含み、前記創傷接触層は親水性ポリウレタンエラストマーを含む、多層式創傷被覆材を提供する。より詳しくは、前記吸収層は前記創傷接触層に接合されている。このような創傷被覆材は、非常に有利なことには、前記裏打ち層と前記吸収層との間に、特に親水性ポリウレタン発泡体からなる分配層を含んでいる。前記分配層は、前記創傷被覆材の面積全体に亘って、特に前記吸収層の上に、吸収された創傷液を分配する。すなわち、当該創傷液はz方向(前記裏打ち層への方向に創傷から離れ)のみならずx−y方向においても(前記創傷被覆材の面積に亘って)吸収される。
【0049】
さらに1つの展開された概念によれば、本発明はまた、多層式創傷被覆材の製造方法を提供する。さらに特には、本発明は、上記創傷被覆材の製造方法を提供する。この製造方法は、
a)ポリウレタン発泡体を準備する工程と、
b)少なくとも10重量%の水を前記ポリウレタン発泡体に付与する工程と、
c)b)で形成された水含有ポリウレタン発泡体を創傷接触層に積層する工程とを含む。
【0050】
さらに特には、前記方法において、前記ポリマー発泡体に付与される水の量は、少なくとも10重量%、最大80重量%であり、前記水は噴霧または浸漬により付与される。
【0051】
ここで留意しておくべきことは、本明細書中で列挙された本発明の好ましいまたは代替的実施形態の特徴は、上記の個々の好ましいまたは代替的特徴に限定されないということである。その一方で、上記実施形態を組み合わせたものや代替的実施形態の個々の特徴を組み合わせたものは、本発明の1つの実施形態に属するものとして同様にみなされなくてはならない。同じく、本発明は、下記の図面の説明によって限定されないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、第1の発明の創傷被覆材を示す。
【図2】図2は、第2の発明の創傷被覆材の横断面を示す。
【図3】図3は、第3の発明の創傷被覆材の横断面を示す。
【図3a】図3aは、上記第3の発明の創傷被覆材の横断面を詳細に示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、創傷接触層を有する第1の発明の創傷被覆材(10)の平面図を示す。創傷被覆材(10)は、所謂アイランド型被覆材として形成されており、アクリレート接着剤(12)で均一にコーティングされた不透水性かつ水蒸気透過性のポリウレタンフィルムから構成される裏打ち層(11)からなっている。裏打ち層の中央には、前記アクリレート接着剤(12)が、吸収性の親水性ポリウレタン発泡体層(ここでは図示されない)を付与するために使用されており、その上に、ポリウレタンフィルム(15)が創傷接触層として付与されている。この親水性ポリウレタン発泡体層は、40重量%の水分率で水を含有している。したがって、この例で使用されるポリウレタン発泡体100gは、40gの水分と60gのポリウレタンマトリックスとを含んでいる。前記ポリウレタンフィルム(15)は、前記吸収性ポリウレタン発泡体(ここでは図示されない)に粘着的に接合されている。多数の円形孔(16)が、前記ポリウレタンフィルムに形成されており、創傷浸出液が創傷から吸収層内にそれらの孔を通って流れるようになっている。前記ポリウレタンフィルムは、新たに形成される細胞が前記ポリウレタン発泡体の孔内に伸びていかないように防止する。
【0054】
図2は、発明の創傷被覆材のさらに1つの実施形態を示す。当該創傷被覆材(20)は裏打ち層(21)を含む。この裏打ち層(21)は、吸収層(23)に一致しており、不透水性かつ水蒸気透過性ポリウレタン発泡体から構成され、アクリレート接着剤の不連続接着層(22)によって、前記吸収層(23)に接合されている。前記不連続の付加物は、前記吸収層と前記裏打ち層とが接合されないままの領域(27)があることを意味する。前記創傷被覆材は、4mmの層厚を有する吸収層(23)と1.5mmの層厚を有する裏打ち層(11)とを含む。この吸収層(23)は、平均孔径220μmを有する連続気泡型の親水性ポリウレタン発泡体から形成される。当該ポリウレタン発泡体は70重量%の水分を含有している。該ポリウレタン発泡体の第1の面には、創傷接触層(25)としてポリウレタン接着剤が塗布される。秤量75g/mのポリウレタン接着剤を前記ポリウレタン発泡体に塗布した形態は不連続となっていて、前記創傷接触層(25)は、創傷浸出液通過を改善するための円形孔(26)を有している。前記ポリウレタン発泡体は、25cmの面積を有する第1の面を含んでおり、そのうち5cmの面積を、前記円形孔(26)の合計が占めている。
【0055】
図3は、発明の創傷被覆材の第3の実施形態を示す。本創傷被覆材(30)は、不透水性かつ水蒸気透過性ポリウレタンフィルムから構成される裏打ち層(31)と、連続気泡型親水性ポリウレタン発泡体からなり、該発泡体が52.8重量%(前記ポリウレタン発泡体を基準にして)の水分率を有する吸収層(33)と、水含有ヒドロゲルマトリックスからなり、該マトリックスが約63.5重量%(前記ヒドロゲルを基準にして)の水分率を有する創傷接触層(35)とを含む。前記裏打ち層(31)は、前記ポリマーフィルムに塗布されたアクリレート接着剤(32)により、前記親水性ポリマー発泡体に均一に積層される。ポリウレタン‐ポリ尿素共重合体を含む水含有ヒドロゲルマトリックス(35)は、前記吸収層の第1の面に付与されており、前記第1の面は、被覆材使用時に創傷に面する。前記ヒドロゲルマトリックスには、円形の横断面(創傷に対して平行)を有する円錐形の経路(36)が設けられている。したがって、創傷から前記吸収性の親水性発泡体中への創傷浸出液流入を改善することができる(図3a参照)。本創傷被覆材の製造過程で、まだ粘性のヒドロゲルマトリックスが、ポリウレタン発泡体中に僅かに浸透し、前記ヒドロゲルマトリックスと前記親水性ポリウレタン発泡体との間に、前記ヒドロゲルマトリックスと前記親水性ポリウレタン発泡体とからなる移行層(34)が形成される。そして次に、前記移行層は、経路(37)を有している。それらの経路は、ポリウレタン発泡体のみで充填されており、前記ヒドロゲルマトリックス内の前記経路に対して一致するように設けられている。
【実施例】
【0056】
本創傷被覆材は、図3を用いて説明された形状を有している。
【0057】
A)ヒドロゲルの作製
前記ヒドロゲルは、下記の水溶液と成分(成分A,B、C)を用いて生成される。
【0058】
【表1】

【0059】
成分Aは、上記材料を混合し、塩が完全に溶解するまで攪拌して得られる。成分Aを2℃まで冷却する。
【0060】
【表2】

【0061】
水性成分Bは、50℃で固形ジェファーミンを溶融し、その溶融物をあらかじめ投入された水に加えて攪拌して得られる。成分Bを室温まで冷却する。
【0062】
【表3】

【0063】
成分Cは室温にする。
【0064】
上記ですでに得られた成分A,BならびにCを75.4:14.0:10.6の割合で混合して、回転式混合システムを用いて均一化し、均一な混合物を形成する。当該混合物を、準備した鋳型に、泡立たないように注入する。
【0065】
B1)使用するポリウレタン発泡体
親水性ポリウレタン発泡体(ポリウレタン発泡体MCF.03R;コーピュラ社製:オランダ、エテン−ルール)を使用する。当該乾燥親水性ポリウレタン発泡体には以下の特徴がある:
【0066】
a)密度:77.9〜83.7kg/m(EN ISO 845)
b)平均孔径:O208μm(顕微鏡で測定)
c)層厚:2.7mm(厚み測定器:25cmプレート、2g/cm荷重、EN ISO 9073−2に準拠して測定)
d)水蒸気透過率:MVTR(直立カップ法)=3593g/m/24h(DIN EN 13726−2に準拠して測定)
e)吸収率:自由吸収率A=20.5g/g(DIN EN 13726−1に準拠して測定)
f)膨潤容量:ΔV=89.7%
ポリウレタン発泡体の膨潤容量ΔVは、最大吸収量に到達後、乾燥ポリウレタン発泡体に生じる体積変化を示す。膨潤容量ΔVを測定するには、前記乾燥ポリマー発泡体の試料片の空間寸法と完全吸収後の同試料片の空間寸法とを、DIN EN 13726−1の自由吸収率に準拠して測定する。上記厚み(高さ)は、2g/cm荷重に設定した25cmプレートの厚み測定器を用いて、EN ISO 9073−2に準拠して測定する。水平方向の大きさ(長さ、幅)は、上記試料片が変形しないよう副尺で測定する。上記の大きさを測定するには、特定の試料片を、張力の無い状態で平滑面上に置く。吸収後の体積変化は、前記乾燥ポリウレタン発泡体の膨潤容量ΔVに相当し、3つ全ての空間方向が考慮に入れられる。
【0067】
【表4】



【0068】
【数2】

【0069】
上記式中、Vは吸収前の試料片の体積(標準条件下で測定:23℃、相対湿度50%)、Vは完全吸収後の試料片の体積である。
【0070】
g)保持値:R=52.8%
保持値Rは、孔に吸収され得る水に関係なく、ポリウレタン発泡体がそのポリウレタンマトリックス中で最大限に結合可能な水の量を示す。保持値は、厚みが5mm以下の親水性ポリウレタン発泡体から、5×5cmの試料片(標準条件下で保存)を打ち抜きして測定する。試料片の重量は標準条件下で測定する。その後、同試料片について、水の自由吸収率試験を実施する。この試験は、DIN EN 13726−1に類似のものである。孔から吸収された水を、ローラー(重さ5000g、直径10cm、幅5cm)によって同試料片から搾り出す。同試料片を、繰り返し新しい紙繊維の間に挟みローラーにかける。この作業を、紙繊維中に吸収された水分が視認できなくなるまで繰り返す。保持値Rを測定するため、水分の吸収および搾り出し後に前記ポリウレタン発泡体中に残存している水分Wwwを、DIN EN 14079に準拠して測定し、以下のようにして算出する。
【0071】
【表5】

【0072】
測定された試料片の厚みは2.80mmである。
【0073】
【数3】






(DIN EN 14079に準拠して測定される)
【0074】
上記式中、Wwwは吸収および搾り出し後の前記ポリウレタン発泡体中に存在する水の重量を示し、Wttは乾燥後の試料片の重量を示し、Wggは吸収および搾り出し後の試料片の重量を示す。
【0075】
B2)ポリウレタン発泡体の調整
前記乾燥親水性ポリウレタン発泡体を、20×30cmのサイズにカットし、3分間水に浸して、同ポリウレタン発泡体の最大吸収量に到達するようにさせる。同ポリウレタン発泡体を水から出し、注意して手で絞る。その後、同ポリウレタン発泡体を、繰り返し乾燥した紙繊維間に挟んで、紙繊維中に吸収された水分が視認できなくなるまでローラー(線形圧力:10N/cm)で絞り出す。したがって、発泡体の孔中に水が無いという可能性は除外することができる。
【0076】
前記水含有ポリウレタン発泡体には以下の特徴がある:
a)水含有量:前記親水性ポリウレタン発泡体は、52.8重量%の水分率Ww(DIN EN 14079に準拠して測定)の水を有し、これは、前記乾燥ポリウレタン発泡体の保持値Rに相当する。
b)吸収率:自由吸収率A=16.2g/g(DIN EN 13726−1に準拠して測定)
c)膨潤容量:ΔV=4%
前記水含有ポリウレタン発泡体の膨潤容量は、前記乾燥ポリマー発泡体と同様に測定される。
【0077】
【表6】

【0078】
【数4】



【0079】
上記式中、Vは水含有試料片の体積を示し、Vは完全吸収後の試料片の体積を示す。
【0080】
C)その他の使用材料
使用される裏打ち層は、厚み60μmの不透水性ポリウレタンフィルム(エクソパック社製:英国、レクサム)である。このフィルムは、アクリレート系感圧接着剤による厚み30μmの層でコーティングされている。当該フィルムは、1100g/m/24hの水蒸気透過率MVTR(直立カップ法)を有する(DIN EN 13726−1)。
【0081】
D)創傷被覆材の製造
上記創傷被覆材(見本)を以下の順で、手作業で製造する:
1.上記ポリウレタン発泡体を、B)に従って前調整し準備する。
2.経路を含むヒドロゲルマトリックスを生成するために、凸面構造を有するPTFE鋳型を準備する。前記凸面構造の凸部は円錐形で、その平均径は1.38mm(基部:1.56mm、先端:1.2mm)である。前記凸部は1.35mmの高さを有し、5mm間隔で離れて矩形パターンを形成している。
3.上記ヒドロゲルを、A)に従って作製し準備する。ただし、当該ヒドロゲルは、混合および均一化後、遅滞無くさらに処理される必要がある。このため、当該ヒドロゲルを、準備した鋳型に泡が立たないように注入してヒドロゲルマトリックスを形成する。
4.上記ゲルを、ゲル層が凸部の高さ(1.35mm)を有するようにPTFE加工のブレードで分配する。余分なゲルは鋳型から除去される。
5.約3分後に、上記前調整されたポリウレタン発泡体を上記ゲルの表面上に重ねる。当該発泡体に200N/mの圧力をかけてプレスし、そのまま維持する。
6.さらに約7分後、上記ゲルが上記ポリウレタン発泡体に接合して、水含有ポリウレタン発泡体と水含有ヒドロゲルマトリックスとからなる積層体を鋳型から取り外すことができる。水含有ヒドロゲルマトリックスと水含有ポリウレタン発泡体とからなる移行層が、0.3mmの厚みで形成されていた。
7.上記積層体は、創傷に面する側を保護するため、準備した剥離フィルム上にそのヒドロゲル側を下向きにして置く(当該フィルムのシリコーン処理側が上記ゲルに面する)。
8.上記組立体では、上記発泡体側を自己接着性ポリウレタンフィルム(D参照)で覆い、200N/mの圧力で、当該ポリウレタンフィルムを定位置にしっかりとプレスする。
9.端部の長さが10×10cmの創傷被覆材を、上記多重材料組立体から切り抜く。
【0082】
上記のように製造された創傷被覆材は、図3を用いて記述された構成を有している。ただし、図3には剥離ライナーは示されていない。このように、上記創傷被覆材は、創傷接触層としての可撓性水含有ヒドロゲルマトリックスと、連続気泡型親水性ポリウレタン発泡体の吸収層とで構成された積層体から成り、前記ヒドロゲルマトリックスは63.5重量%(前記ヒドロゲルマトリックスを基準にして)の水を含有し、前記ポリウレタン発泡体は52.8重量%(前記ポリウレタン発泡体を基準にして)の水分率を有する。
【0083】
上記創傷被覆材はさらに以下の特徴を有している:
【0084】
a)坪量:1550g/m(DIN EN 29073−1に準拠して測定)
b)吸収率:自由吸収率A=56g/100cm(DIN EN 13726−1に準拠して測定)
c)水の総含有量:
【数5】

d)膨潤容量:ΔV=10%(上記方法により測定)
【0085】
以上のように、上記創傷被覆材は高水分率、高吸収率ならびに低膨潤率を有している。したがって上記創傷被覆材は、創傷治癒フェーズ2および3(肉芽形成フェーズおよび上皮化フェーズ)での使用に最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層式創傷被覆材であって、
a)第1の面と第2の面とを有する創傷接触層としての第1の層と、
b)第1の面と第2の面とを有し、親水性ポリウレタン発泡体を含む吸収層としての少なくとも1つの第2の層と
を含み、前記ポリウレタン発泡体が、少なくとも10重量%の水分率で水を含有することを特徴とする多層式創傷被覆材。
【請求項2】
前記ポリマー発泡体は、少なくとも10重量%かつ最大80重量%の水を含有し、前記水は前記ポリウレタン発泡体に均一に分布していることを特徴とする、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項3】
前記ポリウレタン発泡体は、100〜500μmの範囲の孔径を有することを特徴とする、前記請求項の少なくとも一つに記載の創傷被覆材。
【請求項4】
前記ポリウレタン発泡体は、最大80%の膨潤容量ΔVを有することを特徴とする、前記請求項の少なくとも一つに記載の創傷被覆材。
【請求項5】
前記創傷接触層は、多数の孔、経路または開口部を有することを特徴とする、前記請求項の少なくとも一つに記載の創傷被覆材。
【請求項6】
前記創傷接触層は、ヒドロゲルマトリックス、ポリマーフィルム、親水コロイドマトリックス、ポリマーネット、不織布または接着剤を含むことを特徴とする、前記請求項の少なくとも一つに記載の創傷被覆材。
【請求項7】
前記ヒドロゲルマトリックスは、少なくとも20重量%の水を含有する水含有ヒドロゲルマトリックスであることを特徴とする、請求項6に記載の創傷被覆材。
【請求項8】
前記ヒドロゲルマトリックスは、ポリウレタン‐ポリ尿素共重合体を含むことを特徴とする、請求項6または7に記載の創傷被覆材。
【請求項9】
前記ヒドロゲルマトリックスは、液体が前記ヒドロゲルマトリックスを通過できるように、第1の面から第2の面にかけて経路を有することを特徴とする、請求項6,7または8に記載の創傷被覆材。
【請求項10】
前記創傷被覆材はさらに、裏打ち層として、不透水性かつ水蒸気透過性のポリマーフィルムまたは不透水性かつ水蒸気透過性のポリマー発泡体を含むことを特徴とする、前記請求項の少なくとも一つに記載の創傷被覆材。
【請求項11】
吸収層としてのポリウレタン発泡体を含む多層式創傷被覆材、特には前記請求項のいずれか一つに記載の多層式創傷被覆材の製造方法であって、
a)ポリウレタン発泡体を準備する工程と、
b)前記ポリウレタン発泡体に、少なくとも10重量%の水を付与する工程と、
c)b)で製造された水含有ポリウレタン発泡体を創傷接触層に積層する工程と、
を含む、多層式創傷被覆材の製造方法。
【請求項12】
前記ポリマー発泡体に付与される水の量は、少なくとも10重量%かつ最大400重量%であって、前記水は噴霧または浸漬により付与される、請求項11に記載の多層式創傷被覆材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−3a】
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【公表番号】特表2011−526176(P2011−526176A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515235(P2011−515235)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004734
【国際公開番号】WO2010/000451
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(500038020)パウル ハルトマン アクチェンゲゼルシャフト (64)
【Fターム(参考)】