説明

力センサー装置

【課題】小型で力検出感度の高い力センサー装置を得る。
【解決手段】力センサー装置は、振動部20a、20bを有する振動素子20と、この振
動素子20の対向する2つの端を連結する固定部25a、25bとを備える力センサー素
子5と、ベース基板10と、一端が固定部に夫々接続され、他端が前記ベース基板に接続
された弾性力を有する架線部材13と、備えている。そして、振動部20a、20bを挟
む少なくとも2箇所にそれぞれ一端がベース基板10に固定された架線部材13の他端を
接続した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話の縦横切換器、ゲームコントローラ、ナビゲーション装置、PND
(Personal Navigation Device)等に用いられる力センサー装置に関し、特に小型化、高
精度化を図った力センサー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子に加わる応力と共振周波数変化との関係を利用した力検出素子、及び力セン
サー装置が実用化されている。圧電振動子に双音叉型圧電振動子を用いることにより、応
力に対する感度が良好となり、僅かな力の変化から例えば高度差、深度差等を検知するこ
とができる。
特許文献1には、水晶基板を用いた加速度センサー素子、加速度センサーが開示されて
いる。
図7は、特許文献1に開示されている加速度センサー素子の構成を示した図であり、(
a)は加速度センサー素子の平面図、(b)は、(a)のQ−Qにおける断面図である。
この図7に示す加速度センサー素子60は、Zカット水晶基板70の裏面にハーフエッ
チングで凹部78を形成し、更にエッチングしてY軸に平行な略長方形の貫通孔73、7
4、75を開設して、周縁部よりも厚さが薄い一対の振動腕81、85を有する双音叉型
水晶振動素子80が形成される。振動腕81、85のそれぞれには、表裏両面からY軸方
向に溝が穿設され、表裏面、側面に励振電極が形成されている。
図7に示す加速度センサー素子60に+Z方向の加速度を加えると、慣性力により固定
部71を基部として−Z方向に撓み、振動腕81、85は伸張される。振動腕81、85
が伸張されると、双音叉振動素子の共振周波数は高くなるように変化する。つまり、加速
度を加えたときの共振周波数と、基準周波数との差とから加速度の大きさを測定すること
ができる。一方、−Z方向の加速度を加えると振動腕81、85は圧縮され、双音叉振動
素子の共振周波数は低い方へ変化する。基準周波数に対する双音叉振動素子の周波数の変
化から、印加される加速度の方向も検出できると開示されている。
【0003】
特許文献2には、振動子の支持構造および物理量測定装置が開示されている。
図8は、特許文献2に開示されている従来の振動子の支持構造を示す断面図である。
図8に示す振動子では、パッケージ109内に振動子91、基板102及びボンディン
グワイヤ104A(104B)を収容し、さらに台座107及びIC部品108をマウン
トする。そして、台座107上に導電性接着剤106を介して基板102を設置し、導電
性接着剤106を加熱し、基板102を台座107上に接着して固定する。
また、特許文献3には、加速度計と力変換装置が開示されている。
図9は、特許文献3に開示されている従来の力変換装置の構造を示す断面図である。
この図9に示す力変換装置116は、2つの同一構造の力変換デバイス117、118
がパッド124を共有した構造をしている。力変換デバイス117(118)は、2つの
振動腕121を有する双音叉振動素子の両固定端123に、夫々2つの連結子122を菱
型状に連結し、図中上部の2つの連結子122はパッド126に連結し、図中下部の2つ
の連結子122はパッド124に連結されている。なお、力変換装置116は、水晶基板
を用いて一体的に形成されている。
このように構成される力変換装置116は、中央のパッド124に図中垂直方向の力が
加えられると、例えば一方の力変換デバイス117には圧縮力が、他方の力変換デバイス
118には伸長力が作用し、夫々の力変換デバイス117、118の周波数の変化は互い
に逆に変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−163244公報
【特許文献2】特開2006−105962公報
【特許文献3】米国特許第5289719号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された加速度センサー素子は、小型化を図る場合に検
出感度を上げられないという問題点があった。また圧電基板を数度に分けてエッチング加
工するため、コスト低減が難しいという問題点があった。
また、特許文献3に開示された力変換装置は、構造が複雑であり、製造歩留まりが悪い
という問題と、コストが掛かり過ぎるという問題点があった。
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、小型化しても大きな検出感度が得
られる力センサー装置を提供することにある。また本発明は、製造歩留まりがよくコスト
低減が可能な力センサー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]振動部を有する振動素子と、該振動素子の対向する2つの端を連結する固
定部とを備える力センサー素子と、ベース基板と、一端が前記固定部に夫々接続され、他
端が前記ベース基板に接続された弾性力を有する架線部材と、備え、前記振動部を挟む少
なくとも2箇所にそれぞれ一端が前記ベース基板に固定された前記架線部材の他端を接続
したことを特徴とする力センサー装置である。
【0008】
適用例1によれば、振動部を挟む少なくとも2箇所とベース基板との間に夫々架線部材
を配置するため、力センサー装置に加わる力を夫々の架線部材を介して振動部に伝えるこ
とにより、従来の片持ち支持の力センサー装置に比べ、より大きな伸長応力、又は圧縮応
力が振動部に作用するので力検出感度が向上するという効果がある。
【0009】
[適用例2]前記固定部が環状の梁であることを特徴とする適用例1に記載の力センサ
ー装置である。
【0010】
適用例2によれば、振動素子の対向する2つの端を連結する固定部が環状の梁で構成さ
れることにより、固定部を介して伝わる力が振動素子の両端部に同時に加わるため、従来
の片持ち支持の力センサー装置に比べ、より大きな伸長応力、又は圧縮応力が振動部に作
用するので、力検出感度が向上するという効果がある。
【0011】
[適用例3]前記振動部を前記環状の梁の開口を跨ぐように配置すると共に、前記2つ
の端を結ぶ仮想線を挟む少なくとも2箇所にそれぞれ前記架線部材の他端を接続し、前記
架線部材の弾性力によって前記梁の一部に前記仮想線と直交する方向に力が加わるように
構成したことを特徴とする適用例2に記載の力センサー装置である。
【0012】
適用例3によれば、振動部を環状の梁の開口の中央に配置し、振動部を挟む環状の梁の
少なくとも2箇所とベース基板との間に架線部材を設けることにより、従来の片持ち支持
の力センサー装置に比べ、力センサー装置に加わる力は、架線部材でより大きな力となり
、この力が環状の梁でより振動部の両端に同時に加えられるので、力センサー装置の検出
感度は、架線部材による増加感度と、環状の梁による増加感度との積になるという効果が
ある。
【0013】
[適用例4]前記環状の梁が、括れ部を有することを特徴とする適用例2に記載の力セ
ンサー装置である。
【0014】
適用例4によれば、環状の梁に左右及び上下方向に対称な括れ部を設けることにより、
環状の梁の固定部加わる力を目的とする方向の力に効率よく変換することができるという
効果がある。
【0015】
[適用例5]前記架線部材と前記仮想線とのなす角度θが、0°<θ<90°又は90
°<θ<180°を満たすことを特徴とする力センサー装置である。
【0016】
適用例5によれば、ベース基板に接続された架線部材の一方の端部が、固定部に接続さ
れる架線部材の他方の端部に対し、環状の梁の外側に位置する場合には、架線部材と仮想
線(力センサー素子の平面)とのなす角度θを0°<θ<90°とし、前記環状の梁の内
側に位置する場合には、又は90°<θ<180°とすることで、角度θを変えることに
より、力センサー装置に加わる力を固定部に伝える際にその大きさを調整することができ
るという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態の力センサー装置の構造を示した概略図であり、(a)は力センサー装置の断面図、(b)は力センサー素子の平面図、(c)は力センサー素子の断面図、(d)は架線部材の断面図である。
【図2】(a)、(b)、(c)は双音叉型圧電振動素子を説明する図である。
【図3】第2の力センサー素子の平面図である。
【図4】第3の力センサー素子の平面図である。
【図5】第3の力センサー装置の構成を示す断面図である。
【図6】第4の力センサー装置の要部の構成を示す平面図である。
【図7】従来の加速度センサー素子の構成を示した図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図8】従来の振動子の支持構造を示す断面図である。
【図9】従来の力変換装置の構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る力センサー装置の構成を示した概略図であり
、(a)は力センサー装置の断面図、(b)は力センサー装置に用いる力センサー素子の
構成を示す平面図、(c)は(b)のP−Pにおける力センサー素子の断面図、(d)は
力センサー素子を支持する架線部材の断面図である。
この図1に示す力センサー装置1は、加えられた力を電気信号に変換する力センサー素
子5と、力センサー素子5を凹部に収容するベース基板10と、一端が力センサー素子5
の固定部に夫々接続され、他端が前記ベース基板10の段差部11に夫々接続される弾性
力を有する架線部材13と、力センサー素子5を励振し、その出力周波数を処理するIC
部品17と、ベース基板10の開口部を密封する蓋部材19と、を備えている。
【0019】
図1(b)は、力センサー素子の一例を示す平面図であり、力センサー素子5は、双音
叉型圧電振動素子20と、双音叉型圧電振動素子20の両基部21a、21bに一体的に
連結する環状の梁23と、を備えている。
双音叉型圧電振動素子20は、互いに平行に延在する一対の振動部(振動腕)20a、
20bと、この一対の振動部(振動腕)20a、20bの両端部に夫々連結され一体化さ
れた基部21a、21bと、を有する。
一対の振動部(振動腕)20a、20bには、振動腕20a、20bがその長手方向に
対し互いに対称な屈曲振動をするように、励振電極が形成されている。
力センサー素子5は、双音叉型圧電振動素子20の振動腕20a、20bが環状の梁2
3の開口の中央部を跨ぐように配置される。つまり、双音叉型振動素子20の両基部21
a、21bに連結する環状の梁23は、Y軸方向に平行な一対の細板状の梁24a、24
bと、X軸方向に平行な一対の細板状の梁24c、24dと、からなり、梁24a、24
d、24b、24cがこの順に環状に連結され、一体化している。
【0020】
環状の梁23は、Y軸方向の中心線に対し対称であると共に、X軸方向の中心線に対し
ても対称な形状をしている。図中左右の梁24a、24bには、X軸方向の中心線に対し
て対称であると共に、環状の梁23の中心寄りの端にそれぞれ複数の括れ部26が形成さ
れている。そして、環状の梁23の4つの外角にも括れ部27が形成されている。括れ部
26の形状は半円形、半楕円形、楔形等であり、括れ部27の形状の一例は扇型であり、
梁の幅が括れ部26において幅狭な形状となっている。なお、環状の梁23は梁24a、
24bの中心部で破線の小円で示す固定部25a、25bで支持される。
環状の梁23付き双音叉型圧電振動素子20は、薄板状の圧電基板、例えばZカット水
晶基板にフォトリソグラフィ技法、エッチング手法を適用して、一体的に形成し、これに
真空蒸着等の手段で励振電極、リード電極が形成されている。
ベース基板(パッケージ本体)10は、例えばセラミックス材料からなる下層板、フレ
ーム状の中層板及び上層板を積層して構成されている。下層板はベース基板10の外底部
とIC部品17の実装面とを形成し、中層板は架線部材13の一方の端部を固定する段差
部11を形成し、フレーム状の上層板はベース基板(パッケージ本体)10の内部空間を
形成する。下層板の外底面には実装端子が形成され、下層板の内底面にはIC部品17用
のパッドが形成されている。該パッドと実装端子とは内部導体にて接続されている。中層
板の段差部11上にはパッドが形成され、内部導体によりIC部品17用のパッドと導通
されている。上層板の上部周縁に形成されメタライズには金属製の蓋部材19がシーム溶
接され、気密封止される。
【0021】
以上では、一例としてセラミックス製のベース基板(パッケージ本体)10を説明した
が、ガラス製のベース基板10でもよいし、力センサー素子5と同じ圧電基板をエッチン
グ加工して形成したベース基板10でもよい。ガラス製、あるいは圧電材料を用いたベー
ス基板10の場合は、ベース基板10と同質の蓋部材19を用い、接着剤等でベース基板
10を気密封止する。気密封止としてUVプラズマ、直接接合、低融点ガラス等の手法が
ある。
【0022】
架線部材13の一例は、図1(d)に示すように、細板状の平坦部材13a、13cと
、該平坦部材13a、13cの端部に接続する細板状の傾斜部材13bと、平坦部材13
cに接続された板状部材13dとから成る。平坦部材13a、13c、傾斜部材13b、
板状部材13dは、例えば樹脂製の部材の表面に金属製のリード導体を貼り合わせたもの
であり、弾性を有する。あるいは弾性を有する金属製の細い薄板で形成してもよい。
傾斜部材13b、板状部材13bに必要な剛性は、双音叉型圧電振動子20の自重を支
えることができる程度であり、更に、少なくとも板状部材13bは力Fによって撓み可能
な程度の弾性力(弾性)を有する。
なお、図1(a)、(d)に示すように、傾斜部材13bと−X軸方向とのなす角度を
θとしたときに、θは90°又は180°以外の角度、即ち0°<θ<90°又は90°
<θ<180°を満たす範囲内に設定すれば、力センサー素子5に加わる力を調整するこ
とが可能になる。
IC部品17は、1チップICなどにより構成され、双音叉型圧電振動素子20を励振
する発振回路や、発振回路の出力周波数と基準周波数との差を演算し印加された力を求め
る処理回路等が形成されている。
【0023】
力センサー装置1の構成は、始めにベース基板(パッケージ本体)10の凹部底面に設
けたパッドにクリーム半田を塗布し、その上にIC部品17を搭載し、加熱して半田付け
する。力センサー素子5の裏面の固定部25a、25bに架線部材13の一方の端部を夫
々ギャングボンディングして固定する。そして、架線部材13の他方の端部を、導電性接
着剤を塗布した段差部11に搭載し、加熱して接続、固定する。力センサー素子5の平面
を、ベース基板(パッケージ本体)10の外底面に平行に実装した後、該ベース基板(パ
ッケージ本体)10の内部を真空にし、ベース基板(パッケージ本体)10の開口部を蓋
部材19にて気密封止して力センサー装置1を完成する。
【0024】
図2を用いて双音叉型圧電振動子20について簡単に説明する。
双音叉型圧電振動素子20は、図2(a)に示すような一対の基部21a、21b、及
び基部21a、21b間を連設する2つの振動腕20a、20bを備えた圧電基板からな
る応力感応部と、圧電基板の振動領域上に形成した励振電極と、を備えている。
図2(a)は、双音叉型圧電(水晶)振動素子23の振動姿態を示す平面図である。双
音叉型圧電振動素子20の振動モードが、長手(振動腕)方向の中心軸に対して対称なモ
ードで振動するように励振電極を配置する。図2(b)は、双音叉型圧電振動素子20に
形成する励振電極と、ある瞬間に励起される励振電極上の電荷の符号を示した平面図であ
る。図2(c)は、振電極の結線を示す模式断面図である。
【0025】
双音叉型圧電振動素子は伸張・圧縮応力に対する感度が良好であり、高度計用、或いは
深度計用の応力感応素子として使用した場合には分解能力が優れるために僅かな気圧差か
ら高度差、深度差を知ることができる。
双音叉型水晶振動素子の例では、双音叉型水晶振動素子が呈する周波数温度特性は、上
に凸の二次曲線であり、その頂点温度は水晶結晶のX軸(電気軸)の回りの回転角度に依
存する。一般的には頂点温度が常温(25℃)になるように各パラメータを設定する。
双音叉型水晶振動素子の2本の振動腕に外力Fを加えたときの共振周波数fFは以下の
如くである。
F=f0(1−(KL2F)/(2EI))1/2・・・(1)
ここで、f0は外力がないときの双音叉型水晶振動素子の共振周波数、Kは基本波モー
ドによる定数(=0.0458)、Lは振動ビームの長さ、Eは縦弾性定数、Iは断面2次モー
メントである。
断面2次モーメントIはI=dw3/12より、式(1)は次式のように変形することが
できる。
F=f0(1−SFσ)1/2・・・(2)
但し、応力感度SFと、応力σとはそれぞれ次式で表される。
F=12(K/E)(L/w)2・・・(3)
σ=F/(2A)・・・(4)
Aは振動ビームの断面積(=w・d)である。dは振動ビームの厚さ、wは幅である。
【0026】
以上から双音叉型水晶振動子に作用する力Fを圧縮方向のとき負、伸張方向(引張り方
向)を正としたとき、力Fと共振周波数fFの関係は、力Fが圧縮力で共振周波数fFが減
少し、伸張(引張り)力では増加する。また応力感度SFは振動ビームのL/wの2乗に
比例する。
また、応力感応素子としては、双音叉型水晶振動子に限らず、伸張・圧縮応力によって
周波数が変化する圧電振動素子であればどのようなものも用いることが可能である。
【0027】
図1(a)に示す本実施の形態に係る力センサー装置1の動作について説明する。
+Z軸方向に加速度αが印加されると、慣性力により−Z軸方向に力F(=α×m、こ
こでmは質量)が作用する。
力Fは、段差部11を介して架線部材13に作用し、架線部材13には圧縮力が働く。
架線部材13に圧縮力が働くと、力センサー素子5における環状の梁23の固定部25に
は、環状の梁23の固定部25a、25bには図1(b)に示す矢印の向きのごとく中心
部方向への力が作用する。固定部25に内部方向の力が働くと、環状の梁23の括れ部2
6、27の存在により、環状の梁23の外角には図1(b)に示す矢印の方向のごとく圧
縮力が作用し、この作用により双音叉型圧電素子20の基部21a、21bには伸長応力
が働く。
【0028】
双音叉型圧電素子20に伸長応力が作用すると、双音叉型圧電素子20の周波数は元の
周波数から増加するように変化する。
双音叉型圧電素子20に加わる応力と周波数変量とは略比例するが、正確に印加された
力を検出するには、応力と周波数変化量の表をIC部品のメモリに格納しておけばよい。
一方、−Z軸方向に加速度αが印加される場合は、力の作用は上記の説明と逆となり、双
音叉型圧電素子20の基部21a、21bには圧縮応力が働く。双音叉型圧電素子20に
圧縮応力が作用すると、双音叉型圧電素子20の周波数は元の周波数から減少するように
変化する。
以上のように、力の印加方向により双音叉型圧電素子20の周波数変化の増減が異なる
ので、力の大きさと同時に印加される方向も検出される。
【0029】
本実施の形態の力センサー装置1の特徴は、力センサー素子5の環状の梁23の構造と
、環状の梁23の固定部25a、25bを夫々支持する2つの架線部材13の構造とにあ
る。
架線部材13における傾斜部材13bは、X軸方向(ベース基板10の外底面、あるい
は力センサー素子5の平面方向)に対し、角度θだけ傾けている。加速度αが印加され力
センサー装置1に力Fが作用すると、この力Fは2つの略対称に配置された架線部材13
に同時に働く。即ち、図7に示すような従来の片持ち方式の力センサー素子と比較し、本
発明の力センサー素子5にはより大きな力が作用することになる。つまり、角度θを変え
ることにより、力センサー素子5の固定部25a、25bに伝える際に力の大きさを調整
することができるという効果がある。
【0030】
また、力センサー素子5は、環状の梁23の開口を跨ぐように、双音叉型圧電振動素子
20が配置された構造に形成されているため、2つの固定部25a、25bに作用する応
力が環状の梁23を伝わり、双音叉型圧電振動素子20の両基部21a、21bに同時に
働く。従来の双音叉型圧電振動素子の一方の基部に力が作用する片持ち方式のセンサー素
子と比較し、本実施の形態の力センサー素子5では双音叉型圧電振動素子20の両基部2
1a、21bに同時に力が作用するので感度が2倍となる。
つまり、振動部(双音叉型圧電振動素子)20を環状の梁23の開口の中央に配置し、
振動部(双音叉型圧電振動素子)20を挟む環状の梁23の少なくとも2箇所とベース基
板10との間に架線部材13を設けることにより、従来の片持ち支持の力センサー装置に
比べ、本実施の形態の力センサー装置1の双音叉型圧電振動素子20に加わる力は、架線
部材13による増加と、環状の梁23による増加と、の積になり、検出感度が大幅に増加
するという効果がある。
また、環状の梁23に図中左右及び上下方向に対称な括れ部26、27を設けることに
より、環状の梁23の固定部25a、25bに加わる力を目的とする方向(双音叉型圧電
振動素子20の振動腕方向)の力に効率よく変換することができるという効果がある。
【0031】
図3は、第2の実施の形態に係る力センサー素子6の構成を示す平面図であり、互いに
平行して延在する一対の振動腕20a、20bと、該一対の振動腕20a、20bの両端
部に夫々連結され一体化された基部21a、21bと、を有する双音叉型圧電振動素子で
ある。振動腕20a、20b及び基部21a、21bには、図2に示すような励振電極と
、リード電極が形成されている。
第2の実施の形態に係る力センサー装置は、図1(a)に示す力センサー素子5に代え
て、図3に示す力センサー素子6の基部21a、21bを両架線部材13の上端部に夫々
ギャングボンディングして力センサー装置を構成する。
力センサー装置2の力検出感度は、図1に示す力センサー装置1に比べて低いものの力
センサー素子6の構造が簡単で、歩留まりが高く、低コストの力センサー装置が構成でき
るという利点がある。
【0032】
図4は、第3の実施の形態に係る力センサー素子7の構成を示す平面図であり、図1(
b)、(c)に示す第1の実施の形態に係る力センサー素子5と異なる点は、力センサー
素子5の外角に夫々設けた括れ部27に替えて、図4に示すように環状の梁23のY軸方
向の中心線に対し対称な括れ部28を、図中上下の梁24c、24dに形成した点である

力センサー素子7の固定部25a、25bに力が作用した場合の力センサー素子7の動
作は、力センサー素子5の動作とほぼ同様であるので説明を省略する。
【0033】
図5は、第3の実施の形態に係る力センサー装置3の構成を示す断面図であり、図1(
a)に示す力センサー装置1と異なる点は、架線部材13’の構造である。架線部材13
’は、上部に平坦部が設けられた傾斜部材13’a、13’bと、平坦部材13’cとが
接合されて、断面はV字の形状をしている。架線部材13’は弾性を有し、V字状の上端
部の平坦部と、力センサー素子5の固定部25a、25bと、を夫々ギャングボンディン
グして接続する。そして、架線部材13’の平坦部材13’cと、ベース基板(パッケー
ジ本体)10の凹部底面に設けたパッドとを半田、又は導電性接着剤等を用いて接続する

なお、架線部材13’の平坦部材13’cの一部13’cは絶縁性を有し、V字状の両
腕13’a、13’bとは非導通である。なお、傾斜部材13’bと、−X軸(図1(a
)で定義した)とのなす角度をθとする。
力センサー装置3のZ軸方向に沿って加速度αが印加されると、力センサー装置3には
力F(=α×m、mは質量)が作用し、この力Fが架線部材13’を介して力センサー素
子5の固定部25a、25bに作用する。この力が双音叉型圧電振動素子20の基部21
a、21bに伝わり、双音叉型圧電振動素子20の周波数が変化する動作は既に説明した
通りである。
傾斜部材の角度θを変えることにより、力センサー装置3に加わる力をセンサー素子5
の固定部25a、25bに伝える際にその大きさを調整することができるという効果があ
る。
【0034】
図6は、第4の実施の形態に係る力センサー装置4の要部の構成、つまり力センサー素
子5と、力センサー素子5の固定部25a、25bを支持する弾性を有する架線部材14
とを示す平面図である。
図1(a)に示す力センサー装置1と異なる点は、架線部材14の構造である。架線部
材14の平面はV字状に形成されており、V字状の底部で力センサー素子5の固定部25
a、25bを支持する構造である。V字の上端部はベース基板10のパッドに接続される

第4の力センサー装置4の特徴は、架線部材14が強化されているので、大きな力の検
出に適している。
【符号の説明】
【0035】
1、3、4…力センサー装置、5、6、7…力センサー素子、10…ベース基板、11…
段差部、13、13’、14…架線部材、13a、13c、13’c…平坦部材、13b
、13’a、13’b…傾斜部材、13d…板状部材、15…接続材、17…IC部品、
19…蓋部材、20…双音叉型圧電振動素子、20a、20b…振動部(振動腕)、21
a、21b…基部、23…環状の梁、24a、24b、24c、24d…梁、25a、2
5b…固定部、26、27…括れ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部を有する振動素子と、該振動素子の対向する2つの端を連結する固定部とを備え
る力センサー素子と、ベース基板と、一端が前記固定部に夫々接続され、他端が前記ベー
ス基板に接続された弾性力を有する架線部材と、備え、
前記振動部を挟む少なくとも2箇所にそれぞれ一端が前記ベース基板に固定された前記
架線部材の他端を接続したことを特徴とする力センサー装置。
【請求項2】
前記固定部が環状の梁であることを特徴とする請求項1に記載の力センサー装置。
【請求項3】
前記振動部を前記環状の梁の開口を跨ぐように配置すると共に、前記2つの端を結ぶ仮
想線を挟む少なくとも2箇所にそれぞれ前記架線部材の他端を接続し、
前記架線部材の弾性力によって前記梁の一部に前記仮想線と直交する方向に力が加わる
ように構成したことを特徴とする請求項2に記載の力センサー装置。
【請求項4】
前記環状の梁は、括れ部を有することを特徴とする請求項2に記載の力センサー装置。
【請求項5】
前記架線部材と前記仮想線とのなす角度θが、0°<θ<90°又は90°<θ<18
0°を満たすことを特徴とする力センサー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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