説明

力測定機構

【課題】荷重受部の中心部を加重点とすることにより、高精度の測定が実現でき、偏置誤差を少なくする。
【解決手段】荷重の測定に際して、ロバーバル部1の荷重受部3の上側力伝達棒11の上端に、荷重が加わると荷重は荷重受部3の加重点Gに伝達される。
荷重受部3は枠体部3aを有し、枠体部3a内において各隅部から中央に向けて梁部3bが設けられている。梁部3bは枠体部3aの中心においてほぼ合体され、軸部3cに連結されている。上側力伝達棒11による荷重は枠体部3aの軸部3cの加重点Gに加わり、また下側力伝達棒12を用いた場合にも負荷は同じ加重点Gに加わり、両者の場合に偏置誤差の差が生ずることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば比重測定などの微小荷重を高精度に測定することが可能な力測定機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ロバーバル機構を有する力測定機構を使用して荷重を測定する場合に、ロバーバル機構の荷重受部の任意の一部に負荷を加えると、偏置誤差等が発生するために、特許文献1のように偏置誤差補償機構により偏置誤差を調整することがある。
【0003】
【特許文献1】WO2005/31286A1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、微小負荷に対する高精度な測定が必要な場合に、例えば上皿による荷重受部への加重点と、下皿による加重点が異なる位置にあると、同じ大きさの負荷を掛けても偏置誤差により測定値が微妙に異なり、たとえ偏置誤差補償機能を備えてもこれらの測定値を一致させることは困難である。
【0005】
また、これらの負荷の加重点と内蔵の基準分銅の加重点とが異なると、基準分銅による正確な校正が実施できない。
【0006】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、荷重受部の中心部を加重点とすることにより、負荷を掛ける方向が異なっても高精度の測定が実現でき、偏置誤差が少ない力測定機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る力測定機構は、基部と荷重受部との間を上下一対に2組の計4本の両端にフレクシャを備えた平行リンク部材により連結したロバーバル機構である荷重変換部から成り、前記荷重受部は外形を直方体とし、該直方体の四隅に前記平行リンク部材の一端を連結し、前記直方体の中心部の加重点に負荷を加えるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る力測定機構によれば、偏置誤差が少なく、微小荷重を高精度で測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は力測定機構の斜視図、図2は正面図、図3は平面図、図4は側面図、図5は図4のA−A線に沿った断面図である。力測定機構となるロバーバル部1は、1個の金属ブロック体を刳り抜いて製作されている。基体2と外形を直方体形状とした荷重受部3の四隅間には、上下一対2組の計4本の平行リンク部材4、5が接続され、基体2の4個所と平行リンク部材4、5の間、平行リンク部材4、5と荷重受部3の間にはそれぞれ2個ずつ計8個の薄肉部から成るフレクシャ6が形成されている。また、左右の平行リンク部材4、4間及び5、5間は、それぞれ連結部7により連結されている。更に、基体2から左右の平行リンク部材4、5間にセンサ固定部8が延在されている。
【0010】
荷重受部3は外部に四角枠状の枠体部3aを有し、枠体部3a内において各隅部から中央に向けて複数の梁部3bが設けられている。梁部3bは枠体部3aの中心の集合部においてほぼ合体され、平行リンク部材4、5と平行方向を向く軸部3cに連結されている。そして、軸部3cの中央部には、左右方向及び上下方向に通孔3d及び3eが形成されている。通孔3dの左右方向の枠体部3aには、通孔3dよりも大径の透孔3f、3gが設けられ、通孔3eの上下方向の枠体部3aに同様の透孔3h、3iが設けられている。
【0011】
左右の透孔3f、3g、中央の通孔3dを通って、分銅吊棒9が水平方向に挿通され、分銅吊棒9は通孔3dにおいて軸部3cに固定されている。分銅吊棒9は左右の透孔3f、3gに対して非接触であり、分銅吊棒9の両端部には、基準分銅を吊下するための金属板を加工した吊ばね10が取り付けられている。
【0012】
また、上下の透孔3h、3iから中央の通孔3eに向けて、荷重伝達用の上側力伝達棒11と下側力伝達棒12がそれぞれ挿通され、分銅吊棒9に突き当てられており、分銅吊棒9を挿通した連結軸13を介して連結されている。なお、上側力伝達棒11、下側力伝達棒12は共に上下の透孔3h、3iに対して非接触とされている。
【0013】
また、基体2の上部には、力点部14a、15a(15aは図示せず)を自由端とした2つの第1、第2のL字状の調整レバー14、15が平行リンク部材4の方向にほぼ平行に、また基体2の側部に沿ってL字形に延在され、ロバーバル部1と一体的に形成されている。
【0014】
基体2と第1、第2の調整レバー14、15は、薄肉の可撓部である支点16、17により基体2に連結され、第1、第2の調整レバー14、15の作用点部14b、15b(15bは図示せず)は、基体2側の上側のフレクシャ6の近傍上部に連結されている。なお、支点16、17の位置は調整レバー14、15の作用点部14b、15b寄りに設けられていて、調整レバー14、15の力点部14a、15aの変位が、作用点部14b、15bの変位として縮小して伝達されるようになっている。
【0015】
作用点部14b、15b近傍のフレクシャ6の動きを容易とするために、基体2から左右別個に、2つずつの薄肉部18、19及び20、21を介してブロック22、23が延在され、これのブロック22、23にそれぞれフレクシャ6は接続され、ブロック22、23の上部に第1、第2の調整レバー14、15の作用点部14b、15bが連結されている。第1、第2の調整レバー14、15の力点部14a、15aは基体2に対して、調整ボルト24、25(25は図示せず)により変位するようにされ、基体2に対する間隔が調整可能とされている。
【0016】
図6はセンサ固定部8に固定された例えば音叉振動子型の力センサ30の正面図を示し、1個の比較的薄肉の金属ブロックを刳り抜いて製作されている。力センサ30の基部31には支点32を介してレバー33が連結されている。レバー33の力作用点34には、連結片35を介して力作用部36が連結されている。レバー33の力点37は、薄肉部38を介して音叉振動子39の一端に連結され、音叉振動子39の他端は薄肉部40を介して基部31の一部の固定部41に連結されている。
【0017】
この力センサ30の基部31は、ボルト42によりセンサ固定部8の台座に固定され、力センサ30の力作用部36はボルト43により荷重受部3の台座に連結されている。また、基部31にスペーサ44を介して回路基板45が取り付けられ、回路基板45には回路用電子部品が搭載されている。
【0018】
荷重の測定に際して、ロバーバル部1の荷重受部3の上側力伝達棒11の上端に、例えば図示しない秤量皿を介して上方から荷重が加わると、荷重受部3が下方に沈み込むが、ロバーバル機構が構成されているので、基体2、平行リンク部材4、5とによる平行四辺形は維持される。
【0019】
荷重受部3に加わる荷重は、力センサ30の力作用部36に伝達され、連結片35を介してレバー33に作用し、レバー33のてこ比に従って数10〜数100分の1の力に減少され、音叉振動子39に伝達される。音叉振動子39に加わる張力は周波数の変化として検出され、力の大きさに変換される。
【0020】
上側力伝達棒11による荷重は枠体部3aの軸部3cの加重点Gに加わり、また下側力伝達棒12を用いて、例えば比重測定をする場合にも負荷は加重点Gに加わり、両者の場合に偏置誤差の差が生ずることはない。
【0021】
なお、このように中心部の加重点に負荷を集中させても、偏置誤差は多少なりとも発生するので、この場合に調整ボルト24、25を回転して調整レバー14、15を作用させて、偏置誤差を調整することができる。
【0022】
また、分銅吊棒9の両側の吊ばね10に内蔵の基準分銅を均等に吊り下げ、荷重受部3に荷重を加えて力測定機構を校正することができる。上述のロバーバル部1、力センサ30、基準分銅ははかりの筐体に内蔵されており、基準分銅が自動的にモータにより分銅吊棒9に吊下げされるので、校正ボタンによる操作だけで内部校正を行うことができる。この際に、基準分銅の取り付けの衝撃が加重点Gに加わらないように、分銅吊棒9に緩衝用の吊ばね10を介して吊り下げている。
【0023】
この場合においても、基準分銅による荷重は、上側力伝達棒11、下側力伝達棒12による荷重と同様に同じ加重点Gに加わるので、上側力伝達棒11、下側力伝達棒12を用いた測定と全く同じ条件で校正でき、高精度の校正を行うことができる。
【0024】
なお実施例においては、荷重変換部は1個の金属体から形成したが、製造の便宜性を考えて、別体に分割することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】力測定機構の斜視図である。
【図2】正面図である。
【図3】平面図である。
【図4】側面図である。
【図5】図4のA−A線に沿った断面図である。
【図6】力センサの正面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ロバーバル部
2 基体
3 荷重受部
4、5 平行リンク部材
6 フレクシャ
8 センサ固定部
9 分銅吊棒
10 吊ばね
11、12 力伝達棒
13 連結軸
14、15 調整レバー
30 力センサ
39 音叉振動子
G 加重点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と荷重受部との間を上下一対に2組の計4本の両端にフレクシャを備えた平行リンク部材により連結したロバーバル機構である荷重変換部から成り、前記荷重受部は外形を直方体とし、該直方体の四隅に前記平行リンク部材の一端を連結し、前記直方体の中心部の加重点に負荷を加えるようにしたことを特徴とする力測定機構。
【請求項2】
前記荷重変換部は1個の金属ブロック体を刳り抜いて形成したことを特徴とする請求項1に記載の力測定機構。
【請求項3】
前記荷重受部は外部を四角枠の枠体とし、該枠体から内部に向けて複数の梁部を設け、これらの梁部の集合部を前記加重点としたことを特徴とする請求項1に記載の力測定機構。
【請求項4】
前記荷重受部に上方から加えた負荷は、上方から前記加重点に接続した力伝達棒を介して前記加重点に加えるようにしたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つの請求項に記載の力測定機構。
【請求項5】
前記荷重受部に下方から加えた負荷は、下方から前記加重点に接続した力伝達棒を介して前記加重点に加えるようにしたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つの請求項に記載の力測定機構。
【請求項6】
内蔵の基準分銅を用いて校正を行う場合に、前記基準分銅による負荷を前記加重点に加えるようにしたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1つの請求項に記載の力測定機構。
【請求項7】
前記基準分銅による負荷は、前記加重点を通る水平方向を向く分銅吊棒の両端に均等に加えるようにしたことを特徴とする請求項6に記載の力測定機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−121949(P2009−121949A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296270(P2007−296270)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(390041346)新光電子株式会社 (38)