説明

加圧型ニーダ

【課題】 混練材料のブレードロータへの噛込性を改良し強力に混練することが可能で、かつ生産性も良好な加圧型ニーダを提供することを目的とする。
【解決手段】 混練材料を収容する断面が繭形をした混練槽と、該混練槽に収容された混練材料を混練する並列した1対のブレードと、該混練槽の開口を閉鎖し、かつ、該混練槽とで混練室を構成し、混練材料を加圧する加圧蓋とを備えた加圧型ニーダであって、前記加圧蓋は、混練中に所定の位置に固定可能な固定部と混練中に加圧を行う加圧部とを備えることを特徴とする加圧型ニーダ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧型ニーダに関し、特に、混練材料のブレードへの噛込性と生産性の良好な加圧型ニーダに関する。
【背景技術】
【0002】
中、高粘度から超高粘稠材料の混練、捏和処理は、混練槽内に混練材料を入れ、強力に回転するブレ−ドで混練しているが、この際上記処理材料が粉体状で見かけ比重が低く充填率が低いものや、ブレ−ドの回転範囲以外でブリッジ(粉体同士がからみあって崩れない部分)を発生してしまうような材料、その他加圧した方が処理時間が大幅に短縮できるような材料では、混練槽内の処理材料を加圧蓋にて加圧することにより材料そのもののすべりを防ぐ加圧型ニ−ダが用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−38869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、混練槽内への混練材料の投入を容易にするために比較的大きな開口部が設けられている。そして、この開口部に内嵌して加圧蓋が配設され混練材料を加圧できるようになっている。この加圧蓋は通常エアシリンダーで加圧されるので、混練時の加圧動作時には、混練槽と加圧蓋で構成された混練室内の混練材料の見かけの体積変動により上下動を繰り返す。そのため、粉末材料に樹脂液や溶媒を配合した混練材料を練り物状に混練しようとする時に、加圧蓋の上下動により回転するブレードで加えるせん断力が、弱まることと混練材料のブレードへの噛込性が悪くなることにより、所望の樹脂液や溶媒量では混練できない場合があった。本発明では、上記従来技術の問題点を解決し、混練材料のブレードへの噛込性を改良し強力に混練することが可能で、かつ生産性も良好な加圧型ニーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、加圧型ニーダを下記の構成とすることにより、上記目的が達成できることを見いだし、本発明をなすに至った。ちなみに、本願でいう「繭型」とは、2つの円が一部重なったような形状のことを指す。
【0006】
すなわち、本発明の加圧型ニーダは、混練材料を収容する断面が繭形をした混練槽と、該混練槽に収容された混練材料を混練する並列した1対のブレードと、該混練槽の開口を閉鎖し、かつこの混練槽とで混練室を構成し、混練材料を加圧する加圧蓋とを備え、前記加圧蓋は、混練中に所定の位置に固定可能な固定部と、混練中に加圧を行う加圧部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の加圧型ニーダは、前記混練室の壁面に配設され、樹脂液または/および溶媒を混練室に加圧供給可能な液体供給口を有することを特徴とする。
【0008】
さらに、非磁性支持体上に磁性塗料を塗布してなる磁気記録媒体の製造方法であって、該磁性塗料が磁性粉末と結合剤と有機溶媒とを含む磁性塗料原料を前述の加圧型ニーダで混練する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、加圧型ニーダの加圧蓋を、混練中に所定の位置に固定可能な固定部と、混練中に加圧を行う加圧部と、を備え、固定部は上下動をしないように固定し、中央の加圧部のみ上下動するように構成しているため、混練材料のブレードへの噛込性が向上し、強力な混練が可能な加圧型ニーダを提供できる。
【0010】
また、混練室内に樹脂液または/および溶媒を加圧供給可能な液体供給口を配設することにより、生産性の良好な加圧型ニーダを提供できる。
【0011】
さらに、本発明の加圧型ニーダで混練する工程を含むことにより、電磁変換特性の優れた磁気記録媒体が得られる磁気記録媒体の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。図1に本発明の一例の加圧型ニーダの要部断面概略図を示す。図1に示すように、本発明の加圧型ニーダ10は、混練材料を収容し、互いに逆方向に回転する一対のブレード2を備え、上部に開口を備える混練槽1と、混練槽1の上部に配設され、混練槽1の開口を塞ぎ、、混練室6を形成するとともに、混練材料を加圧する加圧蓋3とを含み構成される。本発明の加圧型ニーダは、加圧蓋3が加圧蓋固定部31と加圧蓋加圧部32とから構成される。加圧蓋3は、シリンダ4により下方向に移動可能に構成されている。シリンダ4は不図示の油圧機構、空圧機構または、その他の機械的駆動手段により駆動される。
【0013】
加圧蓋固定部31は、例えば図5の平面断面図(図1のA−A’断面)で示されるように、一体構造になっており、加圧蓋加圧部32を内嵌できるようになっている。また、混練槽1の底部には溶液、溶媒などを混練室6内に加圧供給できる液体供給口5が配設されている。
【0014】
本発明の加圧型ニーダ10の動作を説明する。混練材料を混練槽に投入する際には、図2に示したように、加圧蓋3がシリンダ4により上方の待機位置まで引き上げられ、混練槽1の上部に大きな開口7が形成されるので、混練材料Mの投入が容易となる。混練材料としては、各種粉末、ゴム、樹脂、樹脂溶液、溶媒など、従来公知の材料が挙げられる。
【0015】
混練材料の投入が終了すると、まず、加圧蓋固定部31が待機位置から固定部用シリンダ41により下降し混練槽1の開口部の外側を塞ぐ。加圧蓋固定部31は、その下部面31aが、混練槽1の内壁面1aとほぼ連続した内壁面を形成し、断面が繭型の混練室6を形成する位置(動作位置)まで下降し、その位置で上下動が無いように機械的または油圧にてロックされる。その後、加圧蓋加圧部32が加圧部用シリンダ42により待機位置から下降し、混練槽1の開口をほぼ完全に塞ぐ。
【0016】
混練材料の嵩高さに応じて加圧蓋加圧部32は、混練材料の表面を押さえる適宜な位置(動作位置)でシリンダ42により空圧にて加圧される(図3)。加圧力は、混練材料の種類、混練目的により異なるが、加圧蓋面上の圧力で、0.01〜1MPaの範囲が好ましい。混練の工程が進行するにつれて、混練材料の嵩高さは低減し粉体状から練り物状に変化し、最終的には、図4で示したような位置(最終動作位置)にまでシリンダ42により加圧蓋加圧部32を下降させて、混練される。また、混練工程の実行中に、必要に応じて、液体供給口5から樹脂液や溶媒を加圧供給することが可能である。
【0017】
最終動作位置における混練室6の断面形状は、前述したとおり繭型となる。本願でいう繭型とは略同一の半径rを持つ2つの円が一部重なったような形状を指す。そしてブレード2は、ブレード2の回転軸の中心21が繭型の2つの円の中心とほぼ重なるように設置される。つまり、図4で説明すると、断面形状における混練室6を形成する内壁面は、混練室6の右側の内壁面は右側のブレードの回転軸の中心から常に等しい距離rにあることになり、混練室6の左側の内壁面は左側のブレードの回転軸の中心から常に等しい距離rにあることになる。
【0018】
本発明の加圧型ニーダは、図2に示すように、混練槽1のブレード2の回転軸の軸方向と直角方向の開口部の幅dは、ブレード2の軸間距離dよりかなり大きく設定されていて、混練材料の投入が容易に行えるようになっている。ブレード2の回転軸の軸方向と直角方向の混練室6の内壁の幅dは、ブレード2の軸間距離dに対して、d<d<2dの関係を満たすように設定されている。また、通常、d≦dの関係を満たすように設定されている。
【0019】
本発明の加圧型ニーダは、図3に示すように、混練時には加圧蓋固定部31を動作位置にて固定するので、あたかも混練槽1の混練室内壁がそのまま連続して上部にまで続いているような形状に混練室を形成することができる。そのために、下記に説明するような強力な混練効果を奏することが可能となる。
【0020】
図6、図7に示した従来の加圧型ニーダでも、混練材料の投入を容易にするために、混練槽101のブレード102の回転軸と直角方向の開口部の幅d’は、ブレード102の軸間距離d’よりかなり大きく設定されている。そして、この開口部を塞ぐように加圧蓋103が配設され、不図示の空圧手段により駆動されるシリンダ104により混練材料を下方向に加圧できるようになっている。
【0021】
粉末の混練材料を混練する場合には、混練材料M’を投入後、加圧蓋103を降下させて所定の圧力で加圧しながら、ブレード102を回転させて混練材料M’を混練しはじめると、最初は嵩高かった粉末材料、樹脂液、溶媒等から構成される混練材料の見かけ体積は、混練工程の進行とともに次第に減少し、粉末状から、多数の小さな塊状、少数の大きな塊状、練り物状に変化する。練り物状になってから所定時間混練し、混練工程が終了する。
【0022】
特に、混練材料として粉末材料と樹脂と溶媒からなる混練の目的は、樹脂中に粉末材料を、高充填化し、均一に分散することにある。そのためには、粉末と樹脂とを大きなせん断力で混練する必要がある。そのためには、混練時の溶媒はなるべく少なくして、高い固形分濃度で混練することが好ましい。
【0023】
加圧型ニーダは、混練材料を粒状/塊状から、練り物状にする時に、混練材料を上から押さえ込むことにより、加圧機構のない通常のニーダに比較して、より少ない溶媒量で練り物状にすることができる。しかし、従来の加圧型ニーダ、特に生産に用いられる大型の加圧型ニーダは材料の投入を容易にするため、開口部の幅d’は大きく設定されていて、加圧蓋103はこの開口部の全域を押す設計になっていた。また、加圧は、空圧による加圧手段で行われているので、ブレードの回転による混練材料の見かけの嵩高さの変化にともない、従来の加圧型ニーダでは加圧蓋全体が上下に動いていた。
【0024】
ニーダのせん断力は、ブレードの先端面と混練室の内壁面との間で発生する。すなわち、従来の加圧型ニーダでは、ブレードの先端が黒円弧形矢印で示したθ1aの角度の領域を動く時に混練材料に強いせん断力が加わる。これに対してブレードの先端が白円弧形矢印で示したθ1bの角度の領域を動く時には、混練材料に押し上げられて、加圧蓋が持ち上げられるので、ブレードの先端と加圧蓋底面との距離が広がり、ブレードへの混練材料の噛込性の悪化と相俟ってせん断力が低下する。ただし、ただ単に加圧蓋103の全域を固定してしまうと、混練中にブレードへ大きく負荷がかかり、ブレード軸の破損やモータ過負荷による運転不能などの危険性が高まってしまう。
【0025】
これに対して本発明の加圧型ニーダでは、図8に示したように、加圧蓋固定部31は、油圧またはロックピンなどで機械的に固定されているので、混練材料によって押し上げられることはなく、混練材料のブレードへの噛込性が良好になり、ブレードの先端と加圧蓋底面との距離は広がることがなく、せん断力が低下することはない。
【0026】
したがって、混練材料に強いせん断力が加わる領域は、黒円弧形矢印で示したθ2aの角度の領域となり、従来の強いせん断力が加わる領域θ1aに対して広い領域で混練材料に強いせん断力が加えることが可能になる。また、空圧による加圧手段で加圧される加圧蓋加圧部32の底面は、混練材料に押し上げられて、加圧蓋が持ち上げられ、ブレードの先端と加圧蓋底面との距離が広がりせん断力が低下するが、白円弧形矢印で示したθ2bの角度の領域は、従来の加圧型ニーダのせん断力が低下するθ1bの角度の領域に比較して狭い。このように、本発明の加圧型ニーダでは、混練材料に対し広い範囲にて強いせん断力を加えることが可能となることで、強力な混練効果が得られる。また、加圧蓋加圧部32があるため、混練中にブレードへ過剰な負荷をかけずに、ブレード2を破損することなく、安全に強いせん断力を加えることが可能である。
【0027】
本発明の加圧型ニーダの特徴である、混練材料の投入の容易さと強力な混練性能とを両立させるためには、ニーダの各構成部の寸法関係が以下の関係を満たすことが好ましい。すなわち、混練槽1のブレード2の回転軸と直角方向の開口部の幅dは、ブレード2の軸間距離dよりかなり大きく設定されていて、混練材料の投入が容易に行えるようになっている。ブレード2の回転軸の軸方向と直角方向の混練室の内壁の幅dは、ブレード2の軸間距離dに対して、d<d<2d、より好ましくは、1.5d<d<1.9dの関係を満たすように設定されている。この関係を満たすことにより、ブレード2は、効率よく混練材料を混練することができる。また、通常、d≦dの関係を満たすように設定されている。さらに、ブレード2の回転軸の軸方向と直角方向の加圧蓋加圧部の寸法をdと、ブレード2の軸間距離dは0.3d<d<1.0dの関係を満たすことが好ましい。この関係を満たすことにより、より強力な混練が可能となる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部は、重量部である。また、実施例および比較例中の平均粒子径は、数平均粒子径である。
【0029】
(実施例1)
《下塗塗料成分》
(1)成分
・針状酸化鉄 68部
・カーボンブラック 20部
・粒状アルミナ粉末 12部
・メチルアシッドフォスフェート 1部
・塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 9部
(含有−SONa基:0.7×10−4当量/g)
・ポリエステルポリウレタン樹脂 5部
(ガラス転移温度:40℃、含有−SONa基:1×10−4当量/g)
・テトラヒドロフラン 13部
・シクロヘキサノン 63部
・メチルエチルケトン 137部
(2)成分
・ステアリン酸ブチル 2部
・シクロヘキサノン 50部
・トルエン 50部
(3)成分
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA) 2.5部
(二重結合1個当りの重量平均分子量 約100)
・シクロヘキサノン 9部
・トルエン 9部
【0030】
《磁性塗料成分》
(1)成分
・(Al−Y−Fe−N)〔σs:70Am/kg(70emu/g)
Hc:175.1kA/m(2200Oe)平均粒子径16nm〕 100部
・塩化ビニル系共重合体 15部
(日本ゼオン社製MR−110)
・ポリエステルポリウレタン樹脂(PU) 4.5部
(含有−SO3 Na基:1.0×10−4当量/g)
・粒状アルミナ粉末(平均粒子径:80nm) 10部
・メチルアシッドホスフェート(MAP) 6部
・テトラヒドロフラン(THF) 20部
・メチルエチルケトン/トルエン(MEK/T) 4部
(2)成分
・メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(MEK/A) 100部
(3)成分
・パルミチン酸アミド(PA) 2部
・ステアリン酸n−ブチル(SB) 1部
・メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(MEK/A) 350部
(4)成分
・ポリイソシアネート 4部
・シクロヘキサノン(A) 120部
【0031】
上記の下塗塗料成分において(1)成分を回分式ニーダで混練したのち、(2)成分を加えて攪拌の後サンドミルで滞留時間を60分として分散処理を行い、これに(3)を加え攪拌・濾過した後、下塗塗料とした。
【0032】
これとは別に、上記の磁性塗料の成分において(1)の成分を予め高速混合しておき、その混合粉末を図1に示した本発明の加圧型ニーダ(d/d=1.8、d/d=0.6)を用いて、加圧蓋加圧部に0.1MPaの圧力を加えて混練工程を行い、混練材料が練り物状になってから2時間混練した、その後(2)成分を少なくとも2段階以上に分けて液体供給口から供給して希釈を行い、ミキシングタンクに排出後、(3)成分を加えて高速攪拌した。その後サンドミルで滞留時間を60分として分散し、配合タンクに排出後、これに(4)の成分を加え攪拌・ろ過後、磁性塗料とした。
【0033】
上記の下塗塗料を、ポリエチレンナフタレート支持体(厚さ6.1μm、MD=8GPa、MD/TD=1.1、商品名:PEN、帝人社製)からなるベースフィルム上に、カレンダ後の厚さが1.2μmとなるようにエクストルージョン型コータにて塗布した後乾燥、処理温度70℃、線圧力200kg/cm(196kN/m)の条件にて金属ロールからなる7段カレンダ装置にて平滑化処理を行った。その後、Nガス雰囲気中で電子線照射(40kV、5Mrad)し、硬化処理を行った。この下塗層上に、磁性塗料を塗布、乾燥、カレンダ処理後の磁性層の厚さが0.09μmとなるようにエクストルージョン型コータにて塗布し(逐次塗布)、ソレノイド磁石にて塗布走行方向に磁性体を配向させた。このときの支持体上に磁性塗料が塗布される場の磁界強度は400KA/mに調節した。その後乾燥、金属ロールからなる7段カレンダで、処理温度100℃、線圧力200kg/cm(196kN/m)の条件で平滑化処理を行い、さらに、磁気シートをえた。
【0034】
《バックコート層用塗料成分》
・カーボンブラック(平均粒子径:25nm) 87部
・カーボンブラック(平均粒子径:350nm) 10部
・粒状アルミナ粉末(平均粒子径:80nm) 3部
・ニトロセルロース 45部
・ポリウレタン樹脂(−SONa基含有) 30部
・シクロヘキサノン 260部
・トルエン 260部
・メチルエチルケトン 525部
【0035】
上記バックコート層用塗料成分をサンドミルで滞留時間45分として分散した後、ポリイソシアネート15部を加えてバックコート層用塗料を調整してろ過後、上記で作製した磁気シートの磁性層の反対面に、乾燥、カレンダ後の厚みが0.5μmとなるように塗布し、乾燥した。
【0036】
このようにして得られた磁気シートを金属ロールからなる7段カレンダで、処理温度100℃、線圧力200kg/cm(196kN/m)の条件で平滑化処理し、磁気シートをコアに巻いた状態で70℃にて72時間エージングし、バック層付き評価用の磁気シートを得た。
【0037】
(比較例1)
本発明の加圧型ニーダの代わりに図6に示した従来の加圧型ニーダ(d/d=2.2、d/d=1.4)を用いて加圧蓋に0.1MPaの圧力を加えて混練した。この場合、混練材料は最終的に練り物状にならなかったが、全混練工程時間を実施例1に合わせた。なお、磁性塗料の成分において希釈用の(2)成分は、そのつど加圧蓋を待機位置まで上げて、開口部から添加した。それ以外の点は、実施例1と同様にしてバック層付き評価用の磁気シートを得た。
【0038】
(比較例2)
磁性塗料の成分において(1)成分のメチルエチルケトン/トルエン(MEK/T)を13.9重量部に変更し、混練材料が練り物状になってから2時間混練した以外は比較例1と同様にしてバック層付き評価用の磁気シートを得た。
【0039】
実施例および比較例の磁気シートを製造する際の、混練状態、磁気シートの磁気特性、表面粗さを下記の方法で評価し、表1にその結果を示した。
【0040】
表から明らかなように、本発明にかかる実施例1では、従来の加圧型ニーダを使用した比較例1、2に比較して高い固形分濃度で混練が行え、磁気特性に優れ、表面の平滑な磁気シートが得られた。この磁気シートから磁気記録媒体を製造すれば電磁変換特性の優れた磁気記録媒体が得られる。
【0041】
〈混練状態〉
混練工程の後期に、加圧蓋を待機位置まで上げて、混練材料の様子を観察した。練り物状に一体となっている場合を○、練り物状にならず複数の塊が存在する場合を×とした。
【0042】
〈磁気特性〉
評価用の磁気シートに、外部磁場0.8MA/m(10kOe)をかけ、常法に従って、長手方向(磁場配向方向)の磁気特性(角型(Br/Bm)、異方性磁界分布(SFD))を測定した。測定には、東英工業製の試料振動型磁束計VSM−P7を用いた。
【0043】
〈磁性層の表面粗さ〉
ZYGO社製の汎用三次元表面構造解析装置「NewView5000」で、走査型白色光干渉法により、Scan Lengthを5μmで測定した。なお、測定視野は54.2μm×72.2μm
磁性層の中心線平均粗さはRaとして求めた。
【0044】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一例の加圧型ニーダの要部断面図である。
【図2】本発明の一例の加圧型ニーダの混練材料投入時の状況を示す断面図である。
【図3】本発明の一例の加圧型ニーダの混練工程初期の状況を示す断面図である。
【図4】本発明の一例の加圧型ニーダの混練工程後期の状況を示す断面図である。
【図5】図1のA−A’断面における断面図である。
【図6】従来の一例の加圧型ニーダの要部断面図である。
【図7】従来の一例の加圧型ニーダの混練メカニズムを示す説明図である。
【図8】本発明の一例の加圧型ニーダの混練メカニズムを示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1 混練槽
2 ブレード
3 加圧蓋
31 加圧蓋固定部
32 加圧蓋加圧部
4 シリンダ
41 シリンダ固定部
42 シリンダ加圧部
5 液体供給口
6 混練室
10 加圧型ニーダ
M 混練材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練材料を収容する断面が繭形をした混練槽と、
該混練槽に収容された混練材料を混練する並列した1対のブレードと、
該混練槽の開口を閉鎖し、かつ、該混練槽とで混練室を構成し、混練材料を加圧する加圧蓋とを備えた加圧型ニーダであって、
前記加圧蓋は、
混練中に所定の位置に固定可能な固定部と
混練中に加圧を行う加圧部とを備えることを特徴とする加圧型ニーダ。
【請求項2】
前記混練室の壁面に配設され、樹脂液または/および溶媒を混練室に加圧供給可能な液体供給口を有することを特徴とする請求項1に記載の加圧型ニーダ。
【請求項3】
非磁性支持体上に磁性塗料を塗布してなる磁気記録媒体の製造方法であって、該磁性塗料が磁性粉末と結合剤と有機溶媒とを含む磁性塗料原料を請求項1または請求項2に記載の加圧型ニーダで混練する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−110691(P2010−110691A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285042(P2008−285042)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】