説明

加圧型噴霧器

【課題】外部空間への噴霧溶液蒸気の放出量及び破損の可能性を従来に比べ非常に少なくすることが出来る安全弁機構を伴った加圧型噴霧器を提供することである。
【解決手段】加圧型噴霧器は、ポンプ機構14からの加圧空気で容器本体12中の噴霧液を加圧し噴霧液をノズル機構16により選択的に噴霧する。ポンプ機構では、ピストン14iが嵌合されているシリンダの外周面が外筒により取り囲まれ、これらの間にシリンダの長手方向に延出する隙間通路が創出されている。外筒は密封された一端部を先頭に容器本体内に挿入され上記長手方向に沿い上記一端部から離れた位置で隙間通路を容器本体内に連通させる連通孔を有する。シリンダの内端とこの内端に対応した隙間通路の一端部との間に逆止弁が介在されている。容器本体の外部に突出している外筒の他端部に隙間通路の他端部に連通した安全弁機構18が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、噴霧液を貯留する容器本体と、容器本体内に空気を圧縮して供給するポンプ機構と、ポンプ機構により圧縮して供給された空気により容器本体内で加圧された噴霧液を選択的に噴霧するノズル機構と、を備えている加圧型噴霧器に関係している。
【背景技術】
【0002】
このような加圧型噴霧器は、例えば特開2002−35656号公報により知られている。そして、この公報に記載の加圧型噴霧器のポンプ機構は、シリンダと、シリンダに摺動自在に嵌合されたピストンと、シリンダの外周面を取り囲みシリンダの外周面との間にシリンダの長手方向に延出する隙間通路を創出し一端部が密封され上記一端部を先頭に容器本体内に挿入され上記長手方向に沿い上記一端部から離れた位置で隙間通路を容器本体内に連通させる連通孔を有する外筒と、外筒の上記一端部に対応したシリンダの内端と外筒の上記一端部に対応した隙間通路の一端部との間に介在されシリンダにおいてピストンにより圧縮された空気をシリンダの内端から隙間通路の上記一端部に流入させるとともに隙間通路の上記一端部からシリンダの内端への圧縮された空気の逆流を阻止する逆止弁と、を備えている。
【0003】
このような加圧型噴霧器は家庭においてよりも産業分野において広く使用されており、産業分野においては種々の種類の噴霧液が使用されている。種々の噴霧液の中には金属に直接触れると金属を変質させたり或いは自身が変質してしまうものが在る。これを防止する為にポンプ機構の種々の部材を可能な限り合成樹脂により形成すると、上記種々の噴霧液の中には上記種々の部材に含まれる逆支弁やシリンダとピストンとの組み合わせの如き動作部品に長期間直接触れていると動作部品を膨潤させて動作部品の動作を不良にさせてしまうものもある。これを防止する為に、上述した公報に記載の加圧型噴霧器においては、ポンプ機構の外筒が密封された一端部を先頭に容器本体内に挿入され、シリンダの外周面と外筒との間の隙間通路を容器本体内に連通させる連通孔がシリンダの長手方向に沿い上記一端部から離れた位置に開口されている。
【特許文献1】特開2002−35656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
産業分野において使用される加圧型噴霧器では、使用時にポンプ機構により容器本体内の圧力が家庭用噴霧器に比べ遥かに高められる。従って、上記圧力が容器本体の耐圧強度を超えて容器本体が破壊されないよう、容器本体の上端部に安全弁機構が設けられている。
【0005】
容器本体に安全弁機構が設けられていると、容器本体に収容されている噴霧溶液の液面から噴霧溶液が蒸発されている場合には、安全弁機構が開放された時に容器本体内の噴霧溶液の蒸気も安全弁機構を介して外部空間に放出されてしまう。また、容器本体に設けられている安全弁機構は、容器本体の外表面から単独で突出しているので、外部空間に存在している種々の物体に衝突し易く、破損し易い。
【0006】
種々の噴霧溶液を使用する産業分野において使用される加圧型噴霧器では、安全弁機構が開放された時に容器本体内に充満している噴霧溶液の蒸気が安全弁機構を介して外部空間に放出される量を出来る限り少なくすることが求められている。
【0007】
この発明は上記事情の下でなされ、この発明の目的は、噴霧溶液の蒸気が安全弁機構を介して外部空間に放出される量を従来に比べ非常に少なくすることが出来るとともに、容器本体の外表面からの突出を無くして破損の可能性を少なくすることが出来る安全弁機構を伴った加圧型噴霧器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成する為にこの発明に従った加圧型噴霧器は:噴霧液を貯留する容器本体と、容器本体内に空気を圧縮して供給するポンプ機構と、ポンプ機構により圧縮して供給された空気により容器本体内で加圧された噴霧液を選択的に噴霧するノズル機構と、を備えている。そして、ポンプ機構は、シリンダと、シリンダに摺動自在に嵌合されたピストンと、シリンダの外周面を取り囲みシリンダの外周面との間にシリンダの長手方向に延出する隙間通路を創出し一端部が密封され上記一端部を先頭に容器本体内に挿入され上記長手方向に沿い上記一端部から離れた位置で隙間通路を容器本体内に連通させる連通孔を有する外筒と、外筒の上記一端部に対応したシリンダの内端と外筒の上記一端部に対応した隙間通路の一端部との間に介在されシリンダにおいてピストンにより圧縮された空気をシリンダの内端から隙間通路の上記一端部に流入させるとともに隙間通路の上記一端部からシリンダの内端への圧縮された空気の逆流を阻止する逆止弁と、を備えていて、ポンプ機構の外筒の他端部が容器本体の外部に突出していて、隙間通路の他端部が外筒の他端部に対応しており、外筒の他端部に隙間通路の他端部に連通した安全弁機構が設けられている、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
このように構成されたことを特徴としている本願の発明に従った加圧型噴霧器においては、ポンプ機構の外筒の他端部が容器本体の外部に突出していて、隙間通路の他端部が外筒の他端部に対応しており、外筒の他端部に隙間通路の他端部に連通した安全弁機構が設けられているので、ポンプ機構によって加圧された容器本体内の空気の圧力が安全弁機構に予め設定されている圧力を超えて安全弁機構が開放された場合でも、容器本体内の加圧された空気よりも先にポンプ機構のシリンダの外周面とそれを取り込む外筒との間に創出されている隙間通路中の加圧された空気が安全弁機構を介して外部空間に排出される。
【0010】
隙間通路中には隙間通路中から容器本体内に入る以前の加圧された空気が存在しており、容器本体内に噴霧溶液の蒸気が存在していても隙間通路中の加圧された空気には外筒の連通孔を介して容器本体内の噴霧溶液の蒸気が混ざらない。従って、噴霧溶液の蒸気が安全弁機構を介して外部空間に放出される量を従来に比べ非常に少なくすることが出来る。
【0011】
しかも安全弁機構が容器本体の外表面から単独で突出しておらず、代わりに、容器本体の外部に突出しているポンプ機構の外筒の他端部に設けられているので、外部空間中の種々の物体との衝突が避けられ、破損を防止することが出来る。
【0012】
上述した如く構成されたことを特徴とする本願の発明に従った加圧型噴霧器においては、ポンプ機構の外筒は容器本体の上端部から下端部に向かい略鉛直に挿入されていることが好ましい。
【0013】
このようであれば、外筒において隙間通路を容器本体内に連通させる連通孔を容器本体内の噴霧溶液の液面から最も遠ざけることが出来、ひいては隙間通路中の加圧された空気に外筒の連通孔を介して容器本体内の噴霧溶液の蒸気が混ざる可能性をさらに低下させることが出来る。
【0014】
上述した如く構成されたことを特徴とする本願の発明に従った加圧型噴霧器においては、少なくとも容器本体とポンプ機構の外筒とノズル機構中の加圧された噴霧液が流れる流路の表面が合成樹脂により形成されている場合、安全弁機構を、外筒の他端部と合成樹脂により一体的に形成され隙間通路の他端部と連通した弁孔を有する弁体収容部と、合成樹脂により形成された弁体と、弁体を弁孔に着座した閉鎖位置と弁孔から離間した開放位置との間で移動可能に支持しているとともに弁体が開放位置に配置された時に弁孔を外部空間に連通させる逃がし通路を有しており弁体収容部に固定され合成樹脂により形成された弁体支持部と、弁体支持部と弁体との間に介在され弁体を閉鎖位置に向かい付勢する付勢手段と、を含んでいるよう構成することが出来る。
【0015】
このようであれば、上述した如く構成されたことを特徴とする本願の発明に従った加圧型噴霧器のノズル機構中に低コストで安全弁機構を組み込むことが出来るし、金属に直接触れると金属を変質させたり或いは自身が変質してしまう噴霧溶液を使用するのに都合が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、添付の図面を参照しながら、この発明の一実施の形態に従った加圧型噴霧器10を詳細に説明する。
【0017】
図1は、この発明の一実施の形態に従った加圧型噴霧器10の側面図であり;そして、図2は、図1の加圧型噴霧器10の縦断面図である。
【0018】
加圧型噴霧器10は、噴霧液を貯留する容器本体12と、容器本体12内に空気を圧縮して供給するポンプ機構14と、ポンプ機構14により圧縮して供給された空気により容器本体12内で加圧された噴霧液を選択的に噴霧するノズル機構16と、を備えている。
【0019】
容器本体12は噴霧溶液に対して化学反応や膨潤を生じさせない材料により形成され、この実施の形態では噴霧溶液に対して化学反応や膨潤を生じさせない合成樹脂により形成されている。容器本体12の上端部には筒状の口部12aが形成されている。
【0020】
ノズル機構16は、容器本体12の上端部の筒状の口部12aの外周面に例えば螺合により着脱可能に固定されている蓋部材16aを備えている。蓋部材16aは、容器本体12と同様に、噴霧溶液に対して化学反応や膨潤を生じさせない材料により形成され、この実施の形態では噴霧溶液に対して化学反応や膨潤を生じさせない合成樹脂により形成されている。蓋部材16aの外周面において周方向に相互に正反対の位置には、取っ手16b及びノズル基部16cが蓋部材16aの径方向の外方に向かい突出して形成されている。
【0021】
蓋部材16aにおいて容器本体12の上端部の筒状の口部12を取り囲んでいる内孔には、例えばO−リングの如き密封手段16dを介して環状の吸い上げホース支持部材16eが例えば螺合により着脱可能に固定されている。吸い上げホース支持部材16eは、蓋部材16aの内孔の底面との間に外側環状通路16fを創出しているとともに、例えば柔軟な合成樹脂製の噴霧液吸い上げチューブ16gの一端部を支持している。噴霧液吸い上げチューブ16gの他端部は容器本体12の内底面まで垂れ下がっており、上記他端部にはフィルター部材16hが固定されている。噴霧液吸い上げチューブ16gの一端部は外側環状通路16fに連通されている。
【0022】
吸い上げホース支持部材16eの外端面の周縁にも例えばO−リングの如き密封手段16iが支持されていて、この密封手段16iはノズル機構16の蓋部材16aが図1及び図2中に示されている如く容器本体12の上端部の筒状の口部12aの外周面に着脱可能に固定された時に容器本体12の上端部の口部12aの外端面に圧縮されて容器本体12の上端部の口部12aとノズル機構16の蓋部材16aとの間の気密を保つ。
【0023】
蓋部材16aの内部には、容器本体12の口部12の外端よりも外方に内側環状通路16jが形成されている。蓋部材16aの内部において内側環状通路16jは取っ手16bに対応した位置で外側環状通路16fに連通されている。内側環状通路16jと外側環状通路16fとの交差領域には取っ手16bの上端部に設置された弁機構20が介在されている。弁機構20の詳細な構成は図4を参照して後述する。
【0024】
内側環状通路16jは、ノズル基部16c中を上記径方向の外方に向かい延出している基部ノズル通路16kに連通している。基部ノズル通路16kはノズル基部16cの外端に固定されているノズル本体16m中を延出している本体ノズル通路16nに連通され、本体ノズル通路16nはノズル本体16mの外端に取り付けられている噴霧状態調節部材16pを介して外部空間に連通している。
【0025】
ノズル機構16の蓋部材16aには上述した内孔に貫通したポンプ機構取り付け孔16qが形成されている。ポンプ機構14は、ノズル機構16の蓋部材16aのポンプ機構取り付け孔16qに略鉛直に挿入されている外筒14aを備えている。外筒14aは、噴霧溶液に対して化学反応や膨潤を生じさせない材料により形成され、この実施の形態では噴霧溶液に対して化学反応や膨潤を生じさせない合成樹脂により形成されている。
【0026】
外筒14aの一端部である挿入端には、例えばO−リングの如き密封手段14bを伴った逆止弁蓋14cが例えば螺合により着脱可能に固定されていて、逆止弁蓋14cは上記一端部を密封している。逆止弁蓋14cもまた、外筒14aと同様に、噴霧溶液に対して化学反応や膨潤を生じさせない材料により形成され、この実施の形態では噴霧溶液に対して化学反応や膨潤を生じさせない合成樹脂により形成されている。
【0027】
外筒14aの他端部は、例えばO−リングの如き密封手段14dを伴ってノズル機構16の蓋部材16aのポンプ機構取り付け孔16qに例えば螺合により着脱可能に固定されていて、密封手段14dはノズル機構16の蓋部材16aのポンプ機構取り付け孔16qに対し外筒14aを密封している。
【0028】
外筒14aの内孔にはシリンダ14eの一端部が挿入されている。シリンダ14eは、噴霧溶液に対して化学反応や膨潤を生じさせない材料により形成され、この実施の形態では噴霧溶液に対して化学反応や膨潤を生じさせない合成樹脂により形成されている。
【0029】
シリンダ14eの他端部は、例えばO−リングの如き密封手段14fを伴って外筒14aの他端部に対応した外筒14aの内孔の他端部に例えば螺合により着脱可能に固定されていて、密封手段14fは外筒14aの内孔の他端部に対しシリンダ14eの他端部を密封する。
【0030】
シリンダ14eの外周面とシリンダ14eの外周面を取り囲んだ外筒14aとの間には、外筒14aの一端部に対応したシリンダ14eの内端である一端部から外筒14aの他端部に対応したシリンダ14eの他端部の密封手段14fまでシリンダ14eの長手方向に延出する隙間通路14gが創出されている。隙間通路14gは、上記長手方向に沿いシリンダ14eの上記一端部から離れた位置、この実施の形態ではシリンダ14eの上記他端部の密封手段14fの近傍、で外筒14aに形成された連通孔CH(図3参照)により容器本体12の内部空間に連通されている。この実施の形態では、連通孔CHは外筒14aの他端部においてノズル機構16の蓋部材16aのポンプ機構取り付け孔16qの内周面に対面した部分に開口しているが、この部分に外筒14eの長手方向に延出して形成されている図示されていない長溝により容器本体12の内部空間の上部に連通されている。
【0031】
外筒14aの一端部に対応したシリンダ14eの一端部である内端と外筒14aの上記一端部に対応した隙間通路14gの一端部との間には逆止弁15が介在されている。
【0032】
逆止弁15は、シリンダ14eの一端部に外筒14aの一端部の逆止弁蓋14cに対向して取り付けられている弁座部材15aを含んでいる。逆止弁15はさらに、外筒14aの内孔中において逆止弁蓋14cとシリンダ14eの弁座部材15aとの間で逆止弁蓋14cに支持されている弁体15bを含む。弁体15bは、弁座部材15aの弁孔に着座して上記弁孔を閉鎖する閉鎖位置と上記弁孔から離間して上記弁孔を開放する開放位置との間で移動可能に逆止弁蓋14cに支持されている。逆止弁15はさらに、上記内孔中で逆止弁蓋14cに支持されている例えば圧縮コイルばねの如き付勢手段を含む。この付勢手段は、弁体15bを上記閉鎖位置に付勢している。なお、この付勢手段は、図2中には図面の明確化の為に図示されていない。弁座部材15a及び弁体15bは、噴霧溶液に対して化学反応や膨潤を生じさせない材料により形成され、この実施の形態では噴霧溶液に対して化学反応や膨潤を生じさせない合成樹脂により形成されている。
【0033】
シリンダ14eの内部孔には、一端部に例えばO−リングの如き密封手段14hを伴ったピストン14iが上記一端部を先頭に挿入されている。ピストン14iは密封手段14hを介してシリンダ14eの内孔に摺動自在に嵌合されている。ピストン14iの他端部は、シリンダ14eの他端部の外端を覆うシリンダ覆い14jの貫通孔を貫いてシリンダ14eの内部孔から外方に突出していて、上記他端部の外端には握り部材14kが固定されている。
【0034】
ポンプ機構14の外筒14aの他端部はノズル機構16の蓋部材16aのポンプ機構取り付け孔16qから外部空間に突出していて、これにより容器本体12の外部に突出している。このような外筒14aの他端部には、外筒14aの他端部に対応している隙間通路14gの他端部に連通した安全弁機構18が設けられている。
【0035】
次に、図3を参照しながら、安全弁機構18の構成を説明する。なお、図3は、図1の線III−IIIに沿った、容器本体12の口部12aに着脱可能に固定されているノズル機構16、ノズル機構16に着脱可能に固定されているポンプ機構14、そしてポンプ機構14の外筒14aの他端部に設けられている安全弁機構18の断面を拡大して示す拡大縦断面図である。
【0036】
安全弁機構18は、ポンプ機構14の外筒14aの他端部と一体的に形成された弁体収容部18aを備える。即ち、弁体収容部18aは外筒14aと同じ材料により形成されている。弁体収容部18aは外筒14aの他端部の外周面から外筒14aの径方向の外方に突出た筒形状をしていて、その中心孔の底面に外筒14aと外筒14aが取り囲んでいるシリンダ14iの外周面との間に規定されている隙間通路14gの他端部に連通した弁孔18bが形成されている。
【0037】
安全弁機構18はさらに、弁体18c及び弁体18cを支持している弁体支持部18dを備えている。弁体18c及び弁体支持部18dの夫々は、ポンプ機構14の外筒14aと同様に、噴霧溶液に対して化学反応や膨潤を生じさせない材料により形成され、この実施の形態では噴霧溶液に対して化学反応や膨潤を生じさせない合成樹脂により形成されている。
【0038】
弁体支持部18dは、弁体収容部18aに例えば螺合により着脱可能に固定されていて、弁体18cを弁体収容部18aの弁孔18bに図3中に示されている如く着座させ閉鎖位置と、弁孔18bから離間させた開放位置との間で移動可能に支持している。なお、この実施の形態において弁体18cは例えばO−リングの如き密封手段18eを伴っていて、閉鎖位置において密封手段18eを介して弁体収容部18aの弁孔18bに図3中に示されている如く着座する。
【0039】
弁体支持部18dは、弁体18cが開放位置に配置された時に弁体収容部18aの弁孔18bを外部空間に連通させる逃がし通路18fを有している。
【0040】
安全弁機構18はさらに、弁体支持部18dと弁体18cとの間に介在され弁体18cを閉鎖位置に向かい付勢する付勢手段18gを備えている。この実施の形態において付勢手段18gは圧縮コイルばねにより構成されている。付勢手段18gは弁体18cの周囲に巻かれ、弁体18cとともに弁体支持部18dの逃がし通路18f中に収容されている。
【0041】
付勢手段18gは、弁体収容部18aの弁孔18bが連通されている隙間通路14g中の空気の圧力が所定の大きさになると、この所定の大きさの空気圧に負けて弁体18cが閉鎖位置から開放位置へと付勢手段18gの付勢力に抗して移動することを許容する。
【0042】
次に、図1においてノズル機構16の取っ手16bの上端部に示されている弁機構20の構成を、図4を参照しながらより詳細に説明する。なお、図4は、図1に示されているノズル機構16の弁機構20及びその周囲の部材の縦断面を拡大した拡大縦断面図である。
【0043】
弁機構20は、ノズル機構16の取っ手16bの上端部において蓋部材16a中に形成されている内側環状通路16jと外側環状通路16fとの交差領域に介在されていて、上記交差領域に形成された弁座20aを含んでいる。弁座20aは内側環状通路16jと外側環状通路16fとを連通させている弁孔を有していて、この実施の形態において弁座20aには上記弁孔を取り囲む例えばO−リングの如き環状の密封手段20bが配置されている。
【0044】
弁機構20はさらに、弁座20aから蓋部材16aの径方向の外方に向かい延出し取っ手16bの上端部において蓋部材16aの外周面に開口した弁機構収容孔20cを含む。弁機構収容孔20c中には上記径方向に延出した弁体20dが収容されていて、弁体20dは弁機構収容孔20c中に弁体20dを取り囲むよう収容されている弁体支持部材20eにより上記径方向に沿い移動可能に支持されており、弁座20aの密封手段20bに対向している内端部である一端部20fを密封手段20bに着座させた閉鎖位置と一端部20fを密封手段20bから離間させた開放位置との間を上記径方向に沿い移動可能である。
【0045】
蓋部材16aの外周面における弁機構収容孔20cの開口は、例えば螺合により蓋部材16aの外周面に着脱可能に固定された弁体覆い20gにより覆われており、弁体20dにおいて弁座20aとは反対側に向いている外端部である他端部20hは弁体覆い20gを貫通し外部空間に突出している。弁体20dは、弁体20dの他端部20hと弁体覆い20gとの間に介在された例えば圧縮コイルばねの如き付勢手段20iにより閉鎖位置に付勢されている。
【0046】
取っ手16bの上端部には、枢軸20jを介して上下方向に揺動可能に弁操作レバー20kが取り付けられていて、弁操作レバー20kは弁体20dの外端部である他端部20hを上方から覆っている。
【0047】
弁体20dの他端部20hには環状のクリップ20mが固定されていて、クリップ20mはクリップ20mと弁体覆い20gとの間に弁操作レバー20kから延出している弁操作部20nと対向している。
【0048】
弁体20dの内端部である一端部20f上には例えばO−リングの如き環状の密封手段20pが環状の密封手段押さえ20qとともに載置されている。密封手段20pは弁体20dの内端部である一端部20fの外周面と弁機構収容孔20cの内周面との間の隙間を密封する。
【0049】
この実施の形態において弁体20dの一端部20f,それに載置されている環状の密封手段20p及び環状の密封手段押さえ20q,弁機構収容孔20c中に収容されている弁体支持部材20e,そして弁操作レバー20kは、噴霧溶液に対して化学反応や膨潤を生じさせない材料により形成され、この実施の形態では噴霧溶液に対して化学反応や膨潤を生じさせない合成樹脂により形成されている。
【0050】
そして、常に大きな付勢力を発生させる付勢手段20i,付勢手段20iによる比較的大きな付勢力が常に付加される弁体20dの他端部20i及び弁体覆い20g,そして弁体20dの他端部20iに取り付けられている環状のクリップ20mは金属により形成されている。
【0051】
この実施の形態の弁体20dにおいて上述した如く合成樹脂により形成されている一端部20fは、金属により形成されている他端部20hの弁座側の部分の外周面と端面とを鞘のように覆うよう固定されている。
【0052】
次に、上述した如く構成されているこの実施の形態の加圧型噴霧器10の動作を説明する。
【0053】
容器本体12中の噴霧溶液が貯留されていて容器本体12の上端部の筒状の口部12aの外周面にノズル機構16の蓋部材16aが着脱可能に固定されている間に、使用者が一方の手で容器本体12aを保持し他方の手でポンプ機構14のピストン14iの外端の握り部材14kを握りピストン14iをシリンダ14eに対しシリンダ14eの長手方向に沿い往復移動させると、ピストン14iがシリンダ14eの外方に移動した時にシリンダ14eの内孔中でピストン14iの密封手段14hよりも外方にある空気が密封手段14hとピストン14iの外周面との間の隙間を介して密封手段14hよりも内方に移動し、次にピストン14iがシリンダ14eの内方に向かい移動した時にシリンダ14eの内孔中でピストン14iの密封手段14hよりも内方にある空気が密封手段14hとシリンダ14eの内端の逆止弁15との間で圧縮されてピストン14iの密封手段14hが圧縮された空気により弾性変形しピストン14iの外周面との間の隙間を塞ぎ、上述したように圧縮された空気の圧力をさらに高める。この時、同時にシリンダ14eの内孔中でピストン14iの密封手段14hよりも外方には、ピストン14iの外周面とピストン14iの外端部が貫通しているシリンダ覆い14jの貫通孔の内周面との隙間を介して外部空間から空気が進入する。
【0054】
シリンダ14eの内孔の内端の圧縮された空気の圧力が逆止弁15の図示されていない付勢手段の付勢力よりも大きくなると逆止弁15の弁体15bが上記図示されていない付勢手段の付勢力に抗して弁座部材15aの弁孔から離間して上記弁孔が開放され、ピストン14iの密封手段14hによりシリンダ14eの内孔の内端に圧縮された空気が逆止弁15の上記弁孔を介して上記内端から外筒14aの内孔の内端に流入する。
【0055】
シリンダ14eの内孔の内端の圧縮された空気が上述した如く外筒14aの内孔の内端に流入した後は、逆止弁15の弁体15bが上記図示されていない付勢手段の付勢力により弁座部材15aの弁孔に着座した閉鎖位置に移動されて上記弁孔が閉鎖され、外筒14aの内孔の内端中に上述した如く流入した圧縮された空気が逆止弁15の上記弁孔を介してシリンダ14eの内孔の内端へと逆流することを防止する。
【0056】
外筒14aの内孔の内端に流入した圧縮された空気は、シリンダ14eの外周面とそれを取り囲む外筒14aとの間に規定されている隙間通路14gを通過し、さらにシリンダ14eの他端部の密封手段14fの近傍の連通孔CH(図3参照)を介して容器本体12の内部空間の上部に流入する。
【0057】
上述した如く圧縮された空気は容器本体12の内部空間において噴霧溶液の存在している下部とは離れた上部に流入する。またもし、容器本体12の内部空間に噴霧溶液の蒸気が存在していても、隙間通路14g中の空気の圧力は容器本体12の内部空間の空気の圧力よりも低くならないので、容器本体12の内部空間中の噴霧溶液の蒸気が連通孔CH(図3参照)を介して隙間通路14g中に進入することもない。さらに、連通孔CH(図3参照)は外筒14aの内孔の内端部に位置している逆止弁15から遠いので、逆止弁15の前述した図示されていない付勢手段が例えば金属製の圧縮コイルばねであったとしても、上記噴霧溶液の蒸気がこの圧縮コイルばねを変質させたり、逆に上記圧縮コイルばねにより上記噴霧溶液の蒸気が変質され、ひいては容器本体12の内部空間中の噴霧溶液を変質させることがない。
【0058】
容器本体12の内部空間中の圧縮された空気は、容器本体12の内部空間の下部の噴霧溶液をフィルター部材16hを介して噴霧溶液吸い上げチューブ16gを介してノズル機構16の蓋部材16aと吸い上げホース支持部材16eとの間の外側環状通路16f中に送り込む。外側環状通路16f中を弁機構20の弁機構収容孔20c中において弁体20dの一端部20fと一端部20fの密封手段20pとの間の部分に進入する。
【0059】
このとき、弁体20dの一端部20f上の密封手段20Pは、弁機構収容孔20c中の上記部分に進入した噴霧溶液が上記部分から弁機構収容孔20cの内周面や弁体20dの一端部20fの外周面に沿い弁機構収容孔20cにおいて密封手段20pから外方に漏れ出ることを防止し、ひいては上述した如く噴霧溶液が漏れ出ることにより弁体20dのこの実施の形態では金属製の他端部20h及び付勢手段20iが変質することを防止している。
【0060】
ここで、弁機構20の弁操作レバー20kを使用者が枢軸20jを回動中心にして押し下げると、弁操作レバー20kの弁操作部20nが弁体20dの他端部20dのクリップ20mを弁機構収容孔20cの外方に押し、弁体20dを付勢手段20iの付勢力に抗して上記外方に開放位置に向かい移動させ、その結果として弁体20dの一端部20fを弁座20aの密封手段20bから離間させる。
【0061】
すると、弁機構20の弁機構収容孔20c中において弁体20dの一端部20fと一端部20fの密封手段20pとの間の部分に進入していた噴霧溶液は弁座20aの弁孔を介して内側環状通路16j中に流入し、さらに内側環状通路16jからノズル機構16のノズル基部16cの基部ノズル通路16kそしてノズル本体16mの本体ノズル通路16nを通過して、ノズル本体16mの先端部の噴霧状態調節部材16pを介して外部空間に噴霧される。
【0062】
使用者による弁機構20の弁操作レバー20kの上述した押し下げが中止されれば、弁体20dは付勢手段20iの付勢力により弁機構収容孔20cの内方に閉鎖位置に向かい移動し、その結果として弁体20dの一端部20fを弁座20aの密封手段20bに着座させる。この間に、弁操作レバー20kの弁操作部20nが弁体20dの他端部20dのクリップ20mにより弁機構収容孔20cの内方に向かい押され、弁操作レバー20kは図1,2,そして4中に示されている上述した押し下げが開始される以前の初期位置に復帰される。
【0063】
使用者によりポンプ機構14のピストン14iがその外端の握り部材14kを介してシリンダ14eの長手方向に沿い往復移動させられたときに、容器本体12の内部空間中の空気圧が予め設定されている大きさよりも大きくなると、ポンプ機構14のシリンダ14eの外周面とそれを取り囲む外筒14aとの間に規定されている隙間通路14gの他端部に設けられている安全弁機構18の弁体18cが、上記他端部の弁孔18bを介して弁体18cに負荷されている上記空気圧により付勢手段18gの付勢力に抗して弁孔18bから離れた開放位置に移動する。この結果として、隙間通路14a中の上述した如く予め設定されている大きさよりも大きな圧力を有するよう圧縮された空気が、安全弁機構18の弁孔18bを介し弁体支持部18dの逃がし通路18fから外部空間に放出され、その結果として容器本体12の内部空間中の空気圧が予め設定されている大きさ以下になる。
【0064】
安全弁機構18が上述した如く動作したときには、容器本体12の内部空間中の圧縮されている空気に先立って隙間通路14a中の圧縮されている空気が安全弁機構18を介し外部空間に放出される。しかも、安全弁機構18は、ノズル機構16の蓋部材16aのポンプ機構取り付け孔16qから外部空間に突出している外筒14aの他端部の外周面に設けられていることにより容器本体12の内部空間の下部の噴霧溶液や上記内部空間中の噴霧溶液の蒸気から遠ざけられているので、噴霧溶液の蒸気が安全弁機構18を介して外部空間に放出される量を従来に比べ非常に少なくすることが出来る。
【0065】
また、容器本体12に設けられている安全弁機構18は、容器本体12の外表面から単独で突出しておらずポンプ機構14の外筒14aの他端部の外周面に設けられているので、外部空間に存在している種々の物体に衝突し難く、破損が防止される。
【0066】
上述した如く構成されたことを特徴とする本願の発明の一実施の形態に従った加圧型噴霧器10においては、ポンプ機構14の外筒14aは容器本体12の上端部の口部12aの開口から容器本体12の内部空間の下端部に向かい略鉛直に挿入されていたが、容器本体12の上半部に口部を形成し、この口部の開口からポンプ機構14の外筒14aを斜めに挿入しても、ポンプ機構14の外筒14aの外周面の他端部に隙間通路14gの為に形成されている連通孔CHが容器本体12の内部空間の下端部に貯留されている噴霧溶液に触れなければかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の一実施の形態に従った加圧型噴霧器の側面図である。
【図2】図1の加圧型噴霧器の縦断面図である。
【図3】図1の線III−IIIに沿った、容器本体の口部に着脱可能に固定されているノズル機構、ノズル機構に着脱可能に固定されているポンプ機構、そしてポンプ機構の外筒の他端部に設けられている安全弁機構の断面を拡大して示す拡大縦断面図である。
【図4】図1に示されているノズル機構の弁機構及びその周囲の部材の縦断面を拡大した拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0068】
10…加圧型噴霧器、12…容器本体、14…ポンプ機構、14a…外筒、14e…シリンダ、14g…隙間通路、14i…ピストン、CH…連通孔、15…逆止弁、16…ノズル機構、18…安全弁機構、18a…弁体収容部、18b…弁孔、18c…弁体、18d…弁体支持部、18f…逃がし通路、18g…付勢手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧液を貯留する容器本体と、容器本体内に空気を圧縮して供給するポンプ機構と、ポンプ機構により圧縮して供給された空気により容器本体内で加圧された噴霧液を選択的に噴霧するノズル機構と、を備えており、
ポンプ機構は、シリンダと、シリンダに摺動自在に嵌合されたピストンと、シリンダの外周面を取り囲みシリンダの外周面との間にシリンダの長手方向に延出する隙間通路を創出し一端部が密封され上記一端部を先頭に容器本体内に挿入され上記長手方向に沿い上記一端部から離れた位置で隙間通路を容器本体内に連通させる連通孔を有する外筒と、外筒の上記一端部に対応したシリンダの内端と外筒の上記一端部に対応した隙間通路の一端部との間に介在されシリンダにおいてピストンにより圧縮された空気をシリンダの内端から隙間通路の上記一端部に流入させるとともに隙間通路の上記一端部からシリンダの内端への圧縮された空気の逆流を阻止する逆止弁と、を備えており、
ポンプ機構の外筒の他端部は容器本体の外部に突出していて、隙間通路の他端部が外筒の他端部に対応しており、外筒の他端部に隙間通路の他端部に連通した安全弁機構が設けられている、
ことを特徴とする加圧型噴霧器。
【請求項2】
ポンプ機構の外筒は容器本体の上端部から下端部に向かい略鉛直に挿入されている、ことを特徴とする請求項1に記載の加圧型噴霧器。
【請求項3】
少なくとも容器本体とポンプ機構の外筒とノズル機構中の加圧された噴霧液が流れる流路の表面が合成樹脂により形成されていて、
安全弁機構は、外筒の他端部と合成樹脂により一体的に形成され隙間通路の他端部と連通した弁孔を有する弁体収容部と、合成樹脂により形成された弁体と、弁体を弁孔に着座した閉鎖位置と弁孔から離間した開放位置との間で移動可能に支持しているとともに弁体が開放位置に配置された時に弁孔を外部空間に連通させる逃がし通路を有しており弁体収容部に固定され合成樹脂により形成された弁体支持部と、弁体支持部と弁体との間に介在され弁体を閉鎖位置に向かい付勢する付勢手段と、を含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載に加圧型噴霧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−136428(P2007−136428A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337374(P2005−337374)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000166155)
【Fターム(参考)】