説明

加圧容器のためのシール

【課題】 加圧容器のための通気可能シール、特に密封された電気化学セルのための通気可能シールを提供する。
【解決手段】 通気孔の開いたシール部材の再密封を確実に防止する通気孔アセンブリを有する加圧容器。一実施形態では、通気孔アセンブリは、第1の電極、第2の電極、第1及び第2電極間に位置するセパレータ、及び電極とセパレータに接触する電解質を含む容器の端部を密封する。シール部材は、シール部材の表面上に少なくとも2つの突起を含む。突起は、シール部材が破裂した後にカバーとシール部材の間に間隙を形成して維持し、それによって容器内の圧力を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、加圧容器のための通気可能シール、より詳細には密封された電気化学セルのための通気可能シールに関する。
【背景技術】
【0002】
加圧容器は、広く様々な用途で使用されている。これらの用途には、エアゾールスプレー用容器、通常は産業環境において使用される圧縮ガス用保存容器、及び化学物質間の反応中にガスを発生する電気化学的活物質を含有する円筒形バッテリがある。多くの消費者が様々な装置に電力供給するために購入するバッテリは、本質的に、高い内圧に耐えると同時に、圧力が過度になった場合にガスを逃がすことになる破裂可能な通気孔を含むべきであるという独特な部類の加圧容器を形成する。加圧容器に確実な破裂可能通気孔がなく、圧力が容器の破裂強度を超えた場合には、容器は、予測できない潜在的に有害な方法で破裂する可能性があると考えられる。
【0003】
円筒形アルカリ電気化学セルのような電気化学セルは、2つの電気化学活物質及び水性電解質を使用する。電気化学活物質は、一般的に二酸化マンガン及び亜鉛である。これらの物質は、従来的に、セル製造工程中に電気化学活物質及び電解質を挿入することができるように一端が開いている円筒形の細長い容器に収容されている。ディスク形状のエラストマー性シール部材と、剛性内側カバーと、シール部材の中心を貫通して突出する細長い金属性集電体とを組み込んだ閉鎖アセンブリが容器の開放端を閉鎖する。閉鎖アセンブリは、シール部材の周囲に亘って容器の端を圧着することにより容器の開放端に固定される。シール部材は、通常は、集電体を囲むハブと、シール本体の中央領域内に一体成形された薄い隔膜とを含む。隔膜の機能は、内圧が高くなり過ぎた場合に破裂してセル内からガスを放出することである。集電体は、亜鉛とセルの端部上に位置するセルの端子カバーの1つとの間に導電経路をもたらすものである。
【0004】
電気化学バッテリの製造業者は、多種多様なバッテリ式装置において自社製品の性能を改善するように常に努力している。大部分のバッテリ製造業者の重要な目標は、バッテリが装置に電力供給する時間の量を向上させることである。この目標を達成するための1つの戦略は、セルの通気孔アセンブリのようなセルの非電気化学的活性構成要素が占める容積を最小化し、それによってセル内のより多くの容積を電気化学的活性構成要素に対して利用可能に残すことである。近年、通気孔アセンブリは、必要な構成要素をより少なくし、それでも以前から公知の通気孔アセンブリよりも確実に作動するようにそれらを設計し直すことにより、より容積効率的なものに作られている。通気孔アセンブリが占める容積が減少すると、通気孔の開いたシールが通気孔アセンブリの別の構成要素に対して「再密封」する問題がより顕著になっている。この問題は、非充電式バッテリとしても公知の一次バッテリにおいてそれらが他のバッテリによって充電された場合に最も一般的に起こる。大部分のバッテリは従来的な方法で使用されるが、ごく少数の割合のバッテリは、一次バッテリがバッテリの正極と負極端子を逆にするように装置に不注意に置かれた時のような不正な状態に曝される。この問題は、例えば、AAサイズのアルカリバッテリ8個で電力供給されるいくつかの市販懐中電灯で起こることがある。一般的に、バッテリは、それぞれ4つのバッテリを収容する細長いチャンバ2つに挿入される。懐中電灯に添付の使用説明書によれば、バッテリは、1つのバッテリの正極端子が隣接するバッテリの負極端子に接触するという意味の「直列」で挿入されるべきである。残念ながら、消費者の中には、通常は装置と共に含まれている使用説明書に従わず、はからずもセルの1つを逆に挿入してしまう者がいる。4つのバッテリを収容する空洞内で第2又は第3のバッテリでこれが起きた場合、懐中電灯のスイッチが「オン」の位置に動かされた時に、逆に挿入されたセルは、正しく挿入されたセルの1つ又はそれ以上によって充電されることになる。逆に挿入されたバッテリを充電すると、バッテリ内にかなりの量の熱とガスが発生する。例えば、バッテリの外部温度は、65℃を超えることがある。温度の上昇は、セル内の圧力を増大させる。バッテリの温度上昇に加えて、セルの充電中に起きる化学反応は、セル内の圧力を大きく増大させるガスを発生する。ガスの生成及び温度上昇が同時に起きることにより、通常はナイロン製のエラストマー性シールを軟化してその構造的剛性を幾分失わせることになる。シールの薄い通気可能部分は、ナイロンの加熱と内圧の上昇の両方により細長くなる場合がある。その結果、軟化して歪んだシールが圧力の蓄積に応じて破裂する時に、初期量のガスはセル内から逃げることができるが、破裂したシールの裂け目は、軟化して破裂したシールが端子カバーの滑らかな内面に触れて端子カバーを再密封する時に再密封されるであろう。この問題は、シール部材とセルカバーのような他の構成要素との間の距離が非常に小さい低容積の通気孔アセンブリで特に深刻である。破裂したシールが実際にカバーを再密封し、セルがガスを発生し続けた場合は、セルは、最終的に圧着外れを受けることがあり、シールと容器の間の圧着結合が破壊され、通気孔アセンブリが強制的に容器から放出されることになる。
【0005】
米国特許第6,270,919号B1に開示するように、破裂したシール本体の再密封を防ぐこれまでの試みは、シールの内側ディスク部分にリブを含むように変更することを含むものである。リブは、破裂したシール本体に開口部を維持するように設計され、それによって通気孔機構の再密封を防ぐことになる。しかし、シールの隔膜にリブを含むことは、大部分のセルにおいて再密封を防ぐのに役立つが、リブを組み込んだいくつかのセルは、充電中に発生する熱に露出された時に変形し、そのためにリブがシール破裂後のシールの開口部を維持できない場合がある。
【0006】
米国特許第6,312,850号B1に開示されたシールの実施形態では、シールアセンブリの一部を形成する圧縮部材の表面に垂直方向の溝が配置されている。溝は、通気孔の開いたシールの隔膜の再密封を防ぐように設計されている。この溝は、ガスを通気させるチャンネルを作り出し、それによって通気孔の開いた隔膜の再密封を防止する。この実施形態は、圧縮部材の表面に対する隔膜の再密封を実際に防止するが、溝は、セルの端子カバーの内面に対する裂けた隔膜の再密封を防止することはできない。
【0007】
米国特許第6,270,918号B1は、シール部材と開口部を組み込んだ内側カバーとを利用するシールアセンブリを開示している。シール部材は、内側カバーに直接当接している。外側カバーは、シールアセンブリに固定されてセルの接触端子を形成する。セルの圧力が許容限度を超えて増大した場合には、シール部材が破裂し、それによってガスを内側カバー及び接触端子の両方の開口部を通じて逃がすものである。上述のシールアセンブリは、電気化学セルを実際に安全に通気するが、このシールアセンブリは、内側カバーの利用に依存している。残念ながら、内側カバーは、セルの電気化学的活物質をより多く格納するために使用する方がよいと考えられるセル内のスペースを占有することになる。
従って、電気化学セルのような加圧容器内で最小量の容積を占め、かつ通気孔の開いたシールの再密封を確実に防止することができる廉価で製造が簡単な通気孔アセンブリの必要性が存在する。
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,270,919号B1
【特許文献2】米国特許第6,312,850号B1
【特許文献3】米国特許第6,270,918号B1
【発明の開示】
【0009】
本発明は、通気孔の開いたシール部材の再密封を確実に防止する通気孔アセンブリを有する加圧容器を提供する。通気孔アセンブリは、容器内で最小量のスペースを占め、生産するのに廉価である。
一実施形態では、本発明は加圧容器である。加圧容器は、壁を通る開口部を形成する壁を含む。通気孔アセンブリは、容器の壁に固定され、開口部を密封して閉じる。アセンブリは、剛性カバー及び破裂可能なシール部材を含む。カバーは、それを通る穴を形成し、かつ壁の開口部内に位置している。シール部材は、可撓性でディスク形で破裂可能であり、容器内の開口部を覆っている。シール部材はまた、開口部と同心に整列した環状形の破裂可能な隔膜領域を有する。隔膜は、カバーの下、かつ容器と接触するシール部材の周囲とシール部材からカバーへ向って突出した中央に位置する管状形延長部との間に位置している。延長部及び隔膜領域は互いに当接し、それによって360°の境界部を形成する。隔膜領域は、シール部材のカバーに最も近い側に位置する上面を有する。少なくとも2つの突起が隔膜の上面に位置している。突起は、隔膜と延長部の境界部からある一定距離に位置し、それによって延長部に隣接して位置する破裂可能隔膜の環状部分が突起によって妨げられないままであることを保証している。突起はまた、容器内の圧力の蓄積に応じてカバーと接触するように位置決めされ、360°境界部の周囲で延長部から隔膜を分離させる。シール部材が破裂した後に、突起は、隔膜とカバーの間に間隙を形成して維持する。容器内の圧力は、容器内のガスが破裂したシール部材を通り、次にシール部材とカバーの間の間隙を通り、次にカバー内の穴を通って逃げる時に減少する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1から6は、シール部材及びシール部材の1つを含む加圧容器の様々な図を示している。一緒にすると、これらの図及び以下の説明は、当業者に本発明の実施方法を教示するものである。1つの態様では、本発明は、シール部材10及び少なくとも1つのカバー42を含む通気孔アセンブリ52を有する加圧容器50である。通気孔アセンブリは、加圧容器の壁56にある開口部54を覆い、容器に固定される。通気孔アセンブリは、容器内の圧力が所定の値を超過した時に圧力を放出する圧力作動式安全弁として機能する。シール部材10は、シール部材の隔膜領域28にある弱められた線32に沿って破裂するように設計されている。裂けた隔膜は、次に、カバー42の方へ曲がることにより、容器内から通気されるガスに対応する。裂けた隔膜は、シール部材の上面14から突出している2つ又はそれ以上の突起22及び24の存在により、カバーに接触するのを防止される。突起は、裂けた隔膜とカバーの間の間隙を形成して維持するように配置及び形作られ、それによって容器内部からのガスをシール部材を通して逃がすことになる。カバー内の穴58は、ガスをカバーを超えて容器周囲の大気中に逃がすものである。ここで、本発明をより詳細に以下に説明する。
【0011】
図面、特に図1を参照すると、電気化学セルのような本発明の加圧容器で使用するのに適するシール部材10の斜視図が示されている。シール部材は、外径がその厚さよりも実質的に大きいほぼディスク状の単一構成要素である。シール部材は、シール部材が加圧容器内で破裂可能な弁として機能することを可能にするいくつかの領域及び/又は形態を含む。シール部材10の周囲は、直立壁12である。壁12の表面は、ほぼディスク状のシール部材の上面14及び底面(図示しない)に対して垂直である。壁12に当接してシール部材10の中心と同心の第1の環状形領域16が、壁12から内方に配置されている。円形隆起18が第1の環状形領域に当接している。隆起18に並列して、シール部材の中心へ向って傾斜している環状形領域20がある。少なくとも2つの突起は、領域20の表面に位置する。第1の突起22及び第2の突起24は、互いから約120°の位置にある。後に説明するように、突起の正確な数、大きさ、形状、及び位置は、シール本体の外径、シールが破裂するよう設定された圧力、シールを作る材料のようなシールの設計パラメータに適合するように変えることができる。領域20を延長部30に当接する隔膜領域28から切り離している第2の環状形領域26は、円形領域20から半径方向内方に位置する。領域28の厚さは、一様ではない。領域28の底面にある溝32(図3に示す)は、シール部材10と同心の延長部30の中心と同心である薄いシール材のリングを作る。シール部材10が内圧の増加に応じて破裂する時に、シール部材は溝32で破裂し、それによって延長部を突起22及び24、第1の環状形領域16、及び直立壁12のようなシール部材10の半径方向外側部分から少なくとも部分的に切り離す。溝32は、延長部の外周面と第2の環状形領域26及び隔膜領域28の接合部との間のどこにでも位置することができると考えられる。
【0012】
図1は、突起がシール部材の上面にあるシール部材の一実施形態を表すものである。他の実施形態も可能であるが、シール部材が適切に機能することを保証するようにいくつかの設計判断基準を考える必要がある。第1に、隔膜領域28の底面にある溝は、シール部材が通気する時に円形の裂け目がシール部材内で形成されるように延長部30を取り囲むべきである。裂け目は、延長部を囲んで360°の裂け目を作るのが好ましい。しかし、360°より小さくても270°よりも大きい裂け目であれば機能する。第2に、溝といずれの突起との間にも妨げられていない距離があるべきである。ここで使用する「妨げられていない」という用語は、溝32においてシール部材が裂けるのを妨げる物理的要素がないということを意味する。図1に示す実施形態では、第2の環状形領域26は、溝と突起の間に妨げられていない距離を提供している。第3に、少なくとも2つの突起がなければならず、突起は、シールが破裂した後の隔膜の裂けた縁部とカバーの間に間隙を作って維持することを保証するように互いに対して配置されるべきである。間隙は、突起間の最も距離が短いところで生じる。突起が離れすぎている場合は、隔膜の裂けた縁部がカバーの底面に接触して再密封することもある。単に1つの突起が使用される場合は、裂けた隔膜は、突起のどちらの側でもカバーに対して再密封するであろう。従って、シール部材は、2つ又はそれ以上の突起を含むべきである。第4に、突起は、隔膜の裂け目の周りに連続した又はほぼ連続した障壁を形成してはならない。第5に、中央に位置する延長部は、シール本体の上面を覆って配置されたカバーに直接的又は間接的に接触するのに十分な高さでなければならない。
【0013】
突起の位置は、突起の数に合わせて変えることができる。2つの突起は、互いに20°の近距離に又は互いから180°離れて位置することができる。突起の位置は、「上面図」としても公知のシール本体の上面を見ることによって判断され、その後に各突起の中心から延長部の中心を通る直線を引くことによって形成される角度を判断する。図2を参照されたい。突起に適する位置は、45°、60°、90°、120°、又は180°離れた位置である。全ての突起がシール部材の中心から同じ距離に位置するのが好ましい。直径約14.5mm、高さ50.5mmの大きさのAAサイズのバッテリでは、シール部材は、バッテリの容器に挿入される前は直径14.3mmであり、120°離れて位置する3つの突起を有するのが好ましい。
【0014】
突起の形状は、シール部材が破裂した後にカバーとシール部材の間の間隙を維持するための手段として突起が機能することができれば重大なものではない。図1に示すように、ほぼ矩形、円筒形、三角錐形状、又は四角錐形状を有する突起が適している。突起は、突起の底部からカバーに最も近い突起の端部に向けてテーパ付になっているのが好ましい。突起の好ましい形状は角錐である。角錐の突起は、4角形の底部と、底部から突起の遠位端である共通の頂点に向けて延びる4つのほぼ三角形状の側面とを有する。図1に示す突起24は、第1の側面34、第2の側面36、第3の側面38、及び第4の側面40を有する。第1の側面34及び第2の側面36は、互いに同じ形状に作られている。第3の側面38及び第4の側面は、第1の側面及び第2の側面と異なると同時に互いに異なる形状に作られている。突起の頂点は切り取られて、隔膜が破裂した後にカバーと接触することになる小さく平らな区域を作り出している。図1は、同じ大きさ及び同じ形状の3つの突起を有するシール部材を示しているが、シール部材は、異なる大きさ及び/又は形状を有する突起を含むことも可能である。例えば、互いから等しく離れた4つの突起を有するシール部材は、2つの角錐形の突起及び2つの矩形の突起を有することができる。
【0015】
延長部30は、シール部材10の中央に位置する。延長部30の機能は、図3に示すように、カバー42に接触し、それによって隔膜領域28とカバー42の間に通気活性化区域を作ることである。通気活性化区域は、容器内の加圧ガスが破裂した隔膜を通って逃げる時に隔膜が裂けてカバーの方へ移動する空間を提供するために必要とされる。延長部は、セルの内圧が増大する時に隔膜に対して均一な抵抗を及ぼすように円筒形状であることが好ましい。延長部30の中心は、図1に示すように中実か、又は図4に示すように中空とすることができる。延長部の中心が中空である場合、延長部によって形成される管状形の開口部に別の構造要素を挿入することができる。好ましい構造要素は、電気化学セルの断面図を描いた図5に示すような集電体44とすることができるであろう。
【0016】
シール部材は、ナイロン、ポリプロピレン、ポリスルホン、又は耐衝撃性ポリスチレンのような材料を望ましい形状の空洞に入れて射出成形することにより形成することができる。冷却した後に、シール部材は、上述の少なくとも突起、延長部、及び通気可能隔膜を含む単一構成要素として型から取り外される。シールの成形時に突起を含むようにシール部材を設計することにより、通気孔の開いたシール部材がカバーに対して再密封するのを防止するための別々の構成要素を使用する必要がなくなる。従って、通気孔アセンブリの費用と大きさを最小化することができる。
【0017】
シール本体10と共に使用することができる任意的な構成要素は、図5に示すようにブッシング46である。ブッシングは、ブッシングの内径と延長部の外径の間で締まり嵌めするように設計された中空で管状形の構成要素である。ブッシングの壁の厚さは、ブッシングの外壁が隔膜領域28にある溝32と位置合せするように選択される。ブッシングを溝と位置合せすることにより、ブッシングがシール部材を溝で破裂しやすくすることができる。
【0018】
シール部材10の上面14と加圧容器の周りの環境との間には、端子カバーとして公知でありここでは第1のカバーとも呼ぶ少なくとも1つの剛性の構造要素が位置している。図5に示すように、第1のカバーは、容器50の開口部54内に位置している。第1のカバーが、加圧容器内のガスがシールを通ってセルの環境へ逃げるのを妨げるようにシール本体を覆っている場合、第1のカバーは、それを貫通する少なくとも1つの穴を形成しなければならない。シール部材の延長部に接触することに加えて、カバーの周囲は、シール部材の周囲を形成するシール部材の直立壁に接触する場合がある。更に、第2のカバーは、電気化学セル内での使用時には内側カバーとして説明することができる。第2のカバーはまた、中央に位置してシール本体の延長部の一部分が貫通して突出する第2の穴を形成することができる。
【0019】
端子カバー42は、ニッケルメッキ鋼から作られたほぼカップ状の構成要素である。カバー42の周囲78は、カバーの縁部をそれ自体の上に押し戻して形成され、カバー42の中央部分80にほぼ垂直の二倍の材料の厚さを作り出している。カバーの中央部分とその周囲の間で、カバーは、一連の曲げを通してその輪郭を描かれている。カバーの中央部分80は、カバーの押し戻した縁部82と比べて窪んでいる。カバー42がシール部材のカバー受け空洞84(図4参照)に挿入され、通気孔アセンブリが容器50の開放端に圧着される時に、カバーは、シール本体の直立壁12を容器50の内面に対して加圧するバネのように作用する。カバーをバネのような特性を有する外形にすることにより、通気孔アセンブリは、シール部材の周囲壁を容器に押し付けるための別々の構成要素を含む必要はない。
【0020】
図5を参照すると、本発明の組み立てられた電気化学セルの断面図が示されている。まずセルの外部を見ると、セルの構成要素は、容器50、容器50の内面に隣接する第1の電極62、第1の電極62の内面66に接触したセパレータ64、セパレータ64によって形成された空洞内に配置された第2の電極68、及び容器内に固定された通気孔アセンブリ52である。容器50は、開放端54、閉鎖端74、及びその間の側壁56を有する。閉鎖端74、側壁56、及び通気孔アセンブリ52は、セルの電極が収容される空洞を形成する。
容器50は、1つの閉鎖端と1つの開放端とを有する円筒形状に形成されたニッケルメッキ鋼から作られている。通気孔アセンブリが容器の開放端内に挿入された後に、アセンブリは、通気孔アセンブリを覆って容器を内方に圧着することにより、及び/又はアセンブリを容器に接着固定することにより容器に固定される。容器は、セルの電極の1つのための集電体として働くことができる。
【0021】
第1の電極62は、二酸化マンガンと、黒鉛と、水酸化カリウムを含有する水溶液との混合物である。電極は、ある一定量のこの混合物を端部が開いた容器に入れ、その後にラムを使用して混合物を容器の側壁と同心の空洞を形成する中実の管状形に成形することにより形成される。代替的に、正極は、二酸化マンガンを含む混合物から複数のリングを予め形成し、次にリングを容器に挿入して管状形の第1の電極を形成することにより形成することもできる。
【0022】
第2の電極68は、水溶性アルカリ電解質と、亜鉛粉と、架橋ポリアクリル酸のようなゲル化剤との均一混合物である。水溶性アルカリ電解質は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、又はそれらの混合物のようなアルカリ金属水酸化物を含む。水酸化カリウムが好ましい。本発明のセルに使用するのに好ましいゲル化剤は、米国オハイオ州クリーブランド所在の「Noveon」から市販されている「Carbopol 940(登録商標)」のような架橋ポリアクリル酸とすることができる。アルカリ電解液に使用するのに好ましい他のゲル化剤の例は、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、及びポリアクリル酸ナトリウムである。亜鉛粉は、純亜鉛とするか、又は、インジウム、鉛、ビスマス、リチウム、カルシウム、及びアルミニウムから成る群より選択された1つ又はそれ以上の金属を適量含む合金とすることができる。適切な負極混合物は、67重量パーセントの亜鉛粉と、0.50重量パーセントのゲル化剤と、40重量パーセントの水酸化カリウムを有する32.5重量パーセントのアルカリ電解質とを含有する。亜鉛の量は、負極の重量の40パーセントから70パーセントまでの範囲とすることができる。ガス発生抑制剤、有機又は無機防錆剤、結合剤、又は界面活性剤のような他の成分を任意的に上に列挙した材料に追加することができる。ガス発生抑制剤又は防錆剤の例として、インジウム塩(水酸化インジウムなど)、パーフルオロアルキルアンモニウム塩、アルカリ金属の硫化物などを含むことができる。界面活性剤の例として、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンアルキルエーテル、パーフルオロアルキル化合物などを含むことができる。第2の電極は、上述の材料をリボンブレンダ又はドラムミキサーに入れて結合し、次にその混合物をかき混ぜてウェットスラリーにすることにより製造することができる。
【0023】
本発明のセルに使用するのに適切な電解質は、水酸化カリウムの37重量パーセント水溶液である。電解質は、ある一定量の流体電解質を第1の電極により形成された空洞内に配置することによりセル内に組み込むことができる。電解質はまた、第2の電極を製造するのに使用される工程中にゲル化媒体に水酸化カリウムの水溶液を吸収させることによりセル内に導入することができる。電解質が第1の電極62、第2の電極68、及びセパレータ64に接触している限り、電解質をセル内に組み込むために使用される方法は重要ではない。
セパレータ64は、不織繊維から作ることができる。セパレータの機能の1つは、第1及び第2電極の境界部で障壁を提供することである。この障壁は、電気絶縁性及びイオン透過性でなければならない。
【0024】
以上の説明は、単に好ましい実施形態の説明と見なされるものである。当業者及び本発明の利用者には、本発明の変更が想起されるであろう。従って、図に示して上述した実施形態は単に例示的であり、「均等論」を含む特許法の原則に従って解釈される特許請求の範囲により規定された本発明の範囲を限定する意図はないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の加圧容器に有用な通気孔の開いていないシール部材の斜視図である。
【図2】図1に示すシール部材の上面図である。
【図3】図1に示すシール部材を含む本発明の加圧容器の縦断面図である。
【図4】本発明の電気化学セルに有用な通気孔の開いていないシール部材の断面図である。
【図5】図4に示すシール部材を含む本発明の電気化学セルの縦断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 シール部材
16 第1の環状形領域
22 第1の突起
24 第2の突起
26 第2の環状形領域
28 隔膜領域
30 延長部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを含み、
壁を貫通する円形開口部を形成する壁、及び容器の壁に固定されて該開口部を密封して閉じる通気孔アセンブリを有し、
前記アセンブリは、
a)前記壁の前記開口部内に位置し、少なくとも1つの穴が貫通して、それによりカバーを通るアクセスを形成した剛性カバーと、
b)容器に固定されて容器内の前記開口部を覆い、容器の壁内の該開口部と同心に位置合せした環状形の破裂可能な隔膜領域を有する、可撓性でディスク状の破裂可能なシール部材と、
を含み、
前記隔膜は、前記カバーの下に位置し、かつ容器と接触する前記シール部材の周囲と、該シール部材から該カバーに向けて突出して前記隔膜領域に当接し、それによって該隔膜と互いに接触する360°の境界部を形成する中央に位置した管状形延長部との間に位置し、
前記破裂可能な隔膜領域は、前記シール部材の前記カバーに最も近い側に位置した上面、及び該隔膜の上面に位置した少なくとも2つの突起を有し、
前記突起は、前記隔膜と延長部との前記境界部からある一定距離に位置し、それによって該延長部に隣接して位置した前記破裂可能な隔膜の環状部分が該突起によって妨げられないままであることを保証し、
前記突起はまた、容器内の圧力の蓄積に応じて前記カバーに接触するように位置決めされ、前記360°の境界部の周りで前記隔膜を前記延長部から分離させ、
前記突起はまた、前記シール部材が破裂した後に前記隔膜と前記カバーの間に間隙を形成して維持し、それによって、容器内のガスが該破裂したシール部材を通り、次に該シール部材とカバーの間の該間隙を通り、次に該カバー内の前記穴を通って逃げる時に、容器内の該圧力が減少することを可能にする、
ことを特徴とする加圧容器。
【請求項2】
前記突起の中心は、前記シール部材の中心から測った時に120°よりも大きく離れていないことを特徴とする請求項1に記載の加圧容器。
【請求項3】
前記突起の中心は、前記シール部材の中心から測った時に90°よりも大きく離れていないことを特徴とする請求項1に記載の加圧容器。
【請求項4】
前記突起の中心は、前記シール部材の中心から測った時に45°よりも大きく離れていないことを特徴とする請求項1に記載の加圧容器。
【請求項5】
前記突起の少なくとも1つは、前記シール部材の上面に当接する基部と、該突起の該基部と反対の端部上に位置する遠位端とを含み、該突起は、広い基部と狭い遠位端を形成するためにテーパが付いていることを特徴とする請求項1に記載の加圧容器。
【請求項6】
前記突起は、共通の頂点に向けてテーパの付いた少なくとも3つの側面を有することを特徴とする請求項5に記載の加圧容器。
【請求項7】
前記間隙は、隣接する突起間の最短距離に位置することを特徴とする請求項1に記載の加圧容器。
【請求項8】
前記シール部材は、少なくとも3つの突起を含むことを特徴とする請求項1に記載の加圧容器。
【請求項9】
前記シール部材は、少なくとも4つの突起を含むことを特徴とする請求項1に記載の加圧容器。
【請求項10】
前記突起は、共通の頂点に向けて全てテーパの付いた第1の側面、第2の側面、第3の側面、及び第4の側面を含み、該第1の側面及び該第2の側面は、互いに同一の形状を有し、該第3の側面及び該第4の側面は、互いに異なりかつ該第1の側面及び該第2の側面とも異なる形状を有することを特徴とする請求項9に記載の加圧容器。
【請求項11】
前記隔膜の前記延長部からの前記分離は、該隔膜に少なくとも270°の裂け目を作り出すことを特徴とする請求項1に記載の加圧容器。
【請求項12】
前記アセンブリは、第2の剛性カバーを含むことを特徴とする請求項1に記載の加圧容器。
【請求項13】
前記カバーの一方は、それを貫通する少なくとも2つの穴を含むことを特徴とする請求項12に記載の加圧容器。
【請求項14】
前記穴の1つは、前記カバーの中心に位置することを特徴とする請求項13に記載の加圧容器。
【請求項15】
前記シール部材は、一体成形のエラストマー性構成要素であることを特徴とする請求項1に記載の加圧容器。
【請求項16】
前記シール部材は、ナイロン、ポリプロピレン、ポリスルホン、及び耐衝撃性ポリスチレンから成る群から選択された材料から作られることを特徴とする請求項15に記載の加圧容器。
【請求項17】
容器と物理的に接触した第1の電極、前記シール部材の延長部を通って延びる導電部材に接触した第2の電極、該第1の電極及び該第2の電極の間に位置したセパレータ、及び該電極に接触した電解質を含むことを特徴とする請求項1に記載の加圧容器。
【請求項18】
前記第2の電極は、前記第1の電極及び該第2の電極の間に導電経路が確立された時に水素ガスを発生させることを特徴とする請求項17に記載の加圧容器。
【請求項19】
開口部を形成する壁、及び
容器内の前記開口部に固定された通気孔アセンブリ、
を有し
前記アセンブリは、
a)前記開口部内に位置した剛性のカバー、及び
b)容器内の前記開口部に固定され、前記カバーの下に位置決めされた可撓性で破裂可能なシール部材、
を含み、
前記シール部材は、該シール部材が容器の圧力の増加に応じて該シール部材の中央に位置する部分の周りで破裂した後に、前記カバーとシール部材の間に間隙を維持するための手段を含み、
前記間隙を維持するための手段は、前記シール部材の前記カバーに最も近い表面上に位置した2つ又はそれ以上の突起を含む、
ことを特徴とする加圧容器。
【請求項20】
前記突起は、前記シール部材の中心から等距離に位置することを特徴とする請求項19に記載の加圧容器。
【請求項21】
前記突起は、前記シール部材から前記カバーに向けてテーパが付いていることを特徴とする請求項19に記載の加圧容器。
【請求項22】
前記カバーは、それを貫通する少なくとも1つの開口部を形成することを特徴とする請求項19に記載の加圧容器。
【請求項23】
前記間隙を維持するための手段は、前記シール部材の中心に位置して前記カバーに接触した延長部を含むことを特徴とする請求項19に記載の加圧容器。
【請求項24】
前記間隙を維持するための手段は、前記延長部と前記突起の間に位置した、前記シール部材の妨げられない環状区域を含むことを特徴とする請求項23に記載の加圧容器。
【請求項25】
容器と物理的に接触した第1の電極、前記シール部材を通って延びる導電部材に接触した第2の電極、該第1の電極と該第2の電極の間に位置したセパレータ、及び該電極に接触した電解質を更に含むことを特徴とする請求項19に記載の加圧容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−521678(P2006−521678A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508800(P2006−508800)
【出願日】平成16年2月23日(2004.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/005303
【国際公開番号】WO2004/082045
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(504288351)エヴァレディ・バッテリー・カンパニー・インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】