説明

加圧流動焼却設備及び加圧流動焼却設備の立ち上げ運転方法

【課題】始動用バーナーの燃焼用空気送気用ブロワを使用しない又は小型化することにより、設備コストやランニングコストを低減させる。
【解決手段】被処理物Sを燃焼させる加圧流動炉10と、この燃焼により発生した排ガスによって駆動されるタービン41及びこのタービン41によって駆動され、加圧流動炉10内に供給する圧縮空気を生成するコンプレッサー42を有する過給機40を備える。コンプレッサー42に対して設けられた空気供給手段43からの空気を、前記コンプレッサー42を通して前記加圧流動炉10内に加圧空気を供給する経路と、この経路における前記コンプレッサー42を通った後の経路から分岐して、前記加圧流動炉10の始動用バーナー12に連なる分岐経路を有し、前記加圧流動炉10の立上げの際に、空気供給手段43からの空気を、前記コンプレッサー42を通して前記加圧流動炉10内に加圧空気を供給し、かつ、前記分岐経路を通して前記加圧空気を前記始動用バーナー12の燃焼用空気として供給するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧流動焼却設備及び流動焼却設備の立ち上げ運転方法に関し、詳しくは被処理物を加圧下で流動燃焼し、この燃焼により発生した排ガスにより駆動されるタービンを備え、該タービンによってコンプレッサーを駆動し、このコンプレッサーの駆動によって生成された圧縮空気を加圧流動炉内に供給する構成とされた加圧流動焼却設備及び流動焼却設備の立ち上げ運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加圧流動炉では石炭を燃料とする加圧流動床複合発電プラントが実用化され、通常、立上げ時において、タービンの過給機を電動機として使用して所定の圧力、温度まで起動している。ここで、過給機を使用するシステムでは過給機を起動時に空気供給手段として利用できないため大型の容量の起動用ブロワを採用する場合が多い。
他方、ガスタービンの排気を有効利用する方法として、本出願人は特許文献1として開示した。しかし、特許文献1には流動焼却設備の立ち上げ運転に関して開示はない。
また、流動焼却設備の立ち上げ運転の際の工夫として、本出願人は特許文献2を提案した。しかし、1年当たり1〜2回程度の立ち上げ運転に使用する始動用バーナーについての燃焼用空気をどこから持ち込むかの点について考慮がなされていない。一般的に始動用バーナーは常温から炉内温度を、原料(この場合、汚泥)を焼却できる温度にまで昇温するために使用し、専用に設けた専用ブロワから燃焼空気を供給するものである。
ところで、加圧流動炉は立ち上げ運転において、加圧流動炉内を常圧から安定運転に必要な圧力まで加圧する必要がある。このような加圧炉流動炉の圧力変化に対し、燃焼空気量を所定量確保できるよう、専用ブロワで燃焼空気を所定量供給するため、専用ブロワを炉内圧に適した運転をしなければならず、適切な運転のために、たとえば、専用ブロワの回転数を炉内圧に応じて、増減させるための制御設備等が必要とされている。さらに1年当たり1〜2回程度(多くとも数回)の立ち上げ運転だけのために、専用ブロワを用意することは、設備の高騰を招く。特に、加圧流動炉が所定の加圧状態の安定運転に達する時点まで専用ブロワによって吐出圧力・低送風量から高吐出圧力・高送風量を確保するために専用ブロワの大型化を回避できないものであった。
【特許文献1】特開平9−89232号公報
【特許文献2】特願2005−365777号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の主たる課題は、始動用バーナーに必要な燃焼空気を容易に供給し、また、始動用バーナーの燃焼用空気送気用ブロワを使用しない又は小型化することにより、設備コストやランニングコストを低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は、次のとおりである。
<請求項1記載の発明>
被処理物を加圧下で流動燃焼させる加圧流動炉と、この燃焼により発生した排ガスによって駆動されるタービン及びこのタービンによって駆動され前記加圧流動炉内に供給する圧縮空気を生成するコンプレッサーを有する過給機と、を備えた加圧流動焼却設備であって、
前記コンプレッサーに対して設けられた空気供給手段からの空気を、前記コンプレッサーを通して前記加圧流動炉内に加圧空気を供給する経路と、この経路における前記コンプレッサーを通った後の経路から分岐して、前記加圧流動炉の始動用バーナーに連なる分岐経路とを有し、
前記加圧流動炉の立上げの際に、空気供給手段からの空気を、前記コンプレッサーを通して前記加圧流動炉内に加圧空気を供給し、かつ、前記分岐経路を通して前記加圧空気を前記始動用バーナーの燃焼用空気として供給するように構成した、
ことを特徴とする加圧流動焼却設備。
【0005】
(作用効果)
先にも触れたように、1年当たり1〜2回程度(多くとも数回)の立ち上げ運転だけのために、始動用バーナーについての燃焼用空気を送るために専用ブロワを用意することは、設備の高騰を招く。特に、加圧流動炉が所定の加圧状態の安定運転に達する時点まで専用ブロワによって、容量的に大きい加圧流動炉に対して燃焼用空気を送り込むことは、専用ブロワの大型化を回避できないものである。
後者の点についてさらに説明すると、立ち上げ当初の加圧流動炉の圧力は低圧であるが、時間の経過とともに炉内圧力は増加させる必要がある。このために、専用ブロワは、当初の低吐出圧力・低送風量から時間経過後の高吐出圧力・高送風量を確保するために容量を予めもっている必要があるために、専用ブロワの大型化を回避できないものである。
しかるに、本発明によればおいては、コンプレッサーに対して設けられた起動用ブロワなどの空気供給手段からの空気を、コンプレッサーを通して加圧流動炉内に加圧空気を供給する経路と、この経路におけるコンプレッサーを通った後の経路から分岐して、加圧流動炉の始動用バーナーに連なる分岐経路とを有し、加圧流動炉の立上げの際に、分岐経路を通して加圧空気を始動用バーナーの燃焼用空気として供給するものである。
【0006】
時間経過に伴う燃焼の進行によって昇温し、これに伴って、加圧流動炉内の圧力が上昇すると、コンプレッサー側での圧縮比が高くなり、コンプレッサー出口側の圧縮空気圧力は加圧流動炉内の圧力よりも常に高くなる(加圧流動炉内の流動部の圧力損失分を超える圧力)ので、加圧流動炉内の圧力上昇に伴ってコンプレッサー出口側の風量が増加する。すなわち加圧流動炉内圧力と、加圧流動炉内へ燃焼用空気として吹き込む加圧空気の圧力が連動しているので、始動用バーナーにおける燃焼用空気量制御が容易になる。仮に容量の小さい専用ブロワを使用した場合であっても、時間経過後においても高吐出圧力・高送風量を確保することができる。したがって、図1に符号43Aとして仮定的に図示した始動用バーナーについての燃焼用空気を送るために専用ブロワを使用しないか、きわめて小型のもので足りるものとなり、さらにブロワの回転数を制御するために必要な装置が不要となることから、設備コストやランニングコストを低減させることができる。
なお、本明細書における空気供給手段とは、空気圧縮機、送風機等の単体機器や、他設備で発生する空気を供給する装置等であってよく、当業者が適宜、選定するものである。
【0007】
<請求項2記載の発明>
別途、前記始動用バーナーの燃焼用空気送気用ブロワを備えていない請求項1記載の加圧流動焼却設備。
【0008】
(作用効果)
別途、前記始動用バーナーの燃焼用空気送気用ブロワを備えていないことは、設備コストの低減効果が大きいものとなる。
【0009】
<請求項3記載の発明>
被処理物を加圧下で流動燃焼させる加圧流動炉と、この燃焼により発生した排ガスによって駆動されるタービン及びこのタービンによって駆動され前記加圧流動炉内に供給する圧縮空気を生成するコンプレッサーを有する過給機と、を備えた加圧流動焼却設備における立ち上げ運転の際に、
前記コンプレッサーに対して設けられた空気供給手段からの空気を、前記コンプレッサーを通して前記加圧流動炉内に加圧空気を供給する経路を通して加圧空気を供給するとともに、前記経路における前記コンプレッサーを通った後の経路から分岐する分岐経路を通して、前記加圧流動炉の始動用バーナーに前記加圧空気を燃焼用空気として供給する、
ことを特徴とする加圧流動焼却設備の立ち上げ運転方法。
【0010】
(作用効果)
請求項1記載のものと同様の作用効果を奏する。
【0011】
<請求項4記載の発明>
別途、前記始動用バーナーの燃焼用空気送気用ブロワを設けない又は使用しない請求項3記載の加圧流動焼却設備の立ち上げ運転方法。
【0012】
(作用効果)
請求項2記載のものと同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、要すれば、始動用バーナーの燃焼用空気送気用ブロワを使用しない又は小型化することにより、設備コストやランニングコストを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に係る加圧流動焼却装置は、被処理物Sを燃焼させる加圧流動炉10と、この燃焼により発生した排ガスGによって駆動されるタービン41及びこのタービン41によって駆動され、加圧流動炉10内に供給する加圧空気を生成するコンプレッサー42を有する過給機40を備えている。
加圧流動炉10には、バイオマス、都市ゴミや下水汚泥の脱水ケーキ等の被処理物Sが供給口から供給されると共に、始動時において下部の燃焼用バーナー12から燃焼のための燃料及び燃焼用空気が供給されるようになっている。加圧流動炉10の下部からは、後述するように、加圧空気が吹き込まれ、その流動化エネルギーによって被処理物Sが流動されながら、燃焼焼却されるようになっている。
その燃焼焼却排ガスは、流路71を通して空気予熱器20に送られ、その後に流路72を通してバグフィルタやセラミックフィルタなどの集塵機30を通り、流路73を通して過給機40に導かれる。
過給機40では、タービン41を駆動し、これに連結されたコンプレッサー42を駆動する。タービン41で膨張した排ガスは、流路74を通して白煙防止用予熱器50を通り、流路75を通して排煙処理塔60に導かれ、清浄化が図られた後に煙突62から大気に放出される。
【0015】
他方、コンプレッサー42に対して空気供給手段として起動用ブロワ43が設けられており、切り替え弁44を有する流路76からの空気を、コンプレッサー42により加圧して、流路77及び流路78を通り、空気予熱器20を巡りながら流路79を通して、加圧流動炉10内に加圧空気を供給する経路が形成されている。
また、この経路におけるコンプレッサー42を通った後の経路77から分岐して、加圧流動炉10の始動用バーナー12に連なる分岐経路80も形成されている。
空気予熱器20は、排ガスのもっている熱により、加圧流動炉10内に供給する加圧空気を予熱するためのものである。
白煙防止用予熱器50は、白煙防止ファン52から送り込まれる空気を予熱し、排煙処理塔60からの排ガスを煙突62において加熱し、白煙を大気に発生させないようにするものである。排煙処理塔60は排ガスの最終的な清浄化を図るものであり、湿式集塵方式などが採用される。
【0016】
一方、起動用ブロワ43に対して、本設備周りから外部空気Aのコンプレッサー42に対する切り替え弁45を有する供給流路81が設けられ、立ち上がり運転時には起動用ブロワ43からコンプレッサー42に空気を送り込み、安定運転になった時点で、切り替え弁44を閉じ、その代わりに切り替え弁45を開として供給流路81を通して外部空気Aをコンプレッサー42に対して送り込むようになっている。
【0017】
立ち上げ運転の際には、コンプレッサー42に対して設けられた起動用ブロワ43からの空気を流路76を通してコンプレッサー42に送り込み、コンプレッサー42により加圧して、流路77及び流路78を通り、空気予熱器20を巡りながら流路79を通して、加圧流動炉10内に加圧空気を供給する。
また、この経路におけるコンプレッサー42を通った後の経路77から分岐した分岐経路80を通して、加圧流動炉10の始動用バーナー12に送り、燃焼用空気として供給する。
【0018】
立ち上がり運転時間経過に伴って、加圧流動炉10内の圧力が上昇すると、コンプレッサー側での圧縮比が高くなり、コンプレッサー42出口側の圧縮空気圧力は加圧流動炉10内の圧力よりも常に高くなる(加圧流動炉10内の流動部の圧力損失分を超える圧力)ので、加圧流動炉10内の圧力上昇に伴ってコンプレッサー42出口側の風量が増加する。
したがって、始動用バーナーに供給する燃焼用空気についても、その供給圧力、風量が加圧流動炉10内の状況に応じて変動するため、複雑な制御機構を設けることなく、空気比の調整が可能となる。
【0019】
補助的に、起動用ブロワ43を使用する場合であっても、一定量の風量が確保できればよく、必要な風量はごくわずかなものですむことになる。
したがって、図1に符号43Aとして仮定的に図示した始動用バーナーについての燃焼用空気を送るために専用ブロワを使用しないか、きわめて小型のもので足りるものとなり、もって、設備コストやランニングコストを低減させることができる。
【0020】
所定の温度、タービン41の入口温度がたとえば350℃以上、圧力が0.11〜0.15MPaの条件を指標とした安定運転になった時点で、切り替え弁44を閉じ、その代わりに切り替え弁45を開として供給流路81を通して本設備周りから外部空気Aをコンプレッサー42に対して送り込む。以後、この条件が続行される。
【0021】
従来、焼却に用いられている加圧を行わない気泡流動炉では、常時流動用ブロワを運転し続けること、排煙処理塔60で煙突から強制的に排気するための誘引ファンの設置が必要なものであるのに対し、本発明に係る加圧流動焼却装置は、起動時に起動用ブロワ43を使用するのみで足りるのでランニングコストが低減し、誘引ファンの設置が不要となる利点がある。
加圧流動炉10の運転条件に限定はないが、0.1〜0.3MPa程度の加圧にし、ダイオキシン発生防止の観点から800〜850℃程度の温度条件にすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る加圧流動焼却装置の構成例の説明図である。
【符号の説明】
【0023】
10…加圧流動炉、12…燃焼用バーナー、30…集塵機、40・・・過給機、41…タービン、42…コンプレッサー、43…起動用ブロワ(空気供給手段)、50…白煙防止用予熱器、60…排煙処理塔、S…被処理物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を加圧下で流動燃焼させる加圧流動炉と、この燃焼により発生した排ガスによって駆動されるタービン及びこのタービンによって駆動され前記加圧流動炉内に供給する圧縮空気を生成するコンプレッサーを有する過給機と、を備えた加圧流動焼却設備であって、
前記コンプレッサーに対して設けられた空気供給手段からの空気を、前記コンプレッサーを通して前記加圧流動炉内に加圧空気を供給する経路と、この経路における前記コンプレッサーを通った後の経路から分岐して、前記加圧流動炉の始動用バーナーに連なる分岐経路とを有し、
前記加圧流動炉の立上げの際に、空気供給手段からの空気を、前記コンプレッサーを通して前記加圧流動炉内に加圧空気を供給し、かつ、前記分岐経路を通して前記加圧空気を前記始動用バーナーの燃焼用空気として供給するように構成した、
ことを特徴とする加圧流動焼却設備。
【請求項2】
別途、前記始動用バーナーの燃焼用空気送気用ブロワを備えていない請求項1記載の加圧流動焼却設備。
【請求項3】
被処理物を加圧下で流動燃焼させる加圧流動炉と、この燃焼により発生した排ガスによって駆動されるタービン及びこのタービンによって駆動され前記加圧流動炉内に供給する圧縮空気を生成するコンプレッサーを有する過給機と、を備えた加圧流動焼却設備における立ち上げ運転の際に、
前記コンプレッサーに対して設けられた空気供給手段からの空気を、前記コンプレッサーを通して前記加圧流動炉内に加圧空気を供給する経路を通して加圧空気を供給するとともに、前記経路における前記コンプレッサーを通った後の経路から分岐する分岐経路を通して、前記加圧流動炉の始動用バーナーに前記加圧空気を燃焼用空気として供給する、
ことを特徴とする加圧流動焼却設備の立ち上げ運転方法。
【請求項4】
別途、前記始動用バーナーの燃焼用空気送気用ブロワを設けない又は使用しない請求項3記載の加圧流動焼却設備の立ち上げ運転方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−121776(P2009−121776A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297882(P2007−297882)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行所 社団法人 日本下水道協会 発行者名 福上 翕 刊行物名 第44回 下水道研究発表会講演集 発行年月日 平成19年 6月29日
【出願人】(301031392)独立行政法人土木研究所 (107)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】