説明

加工原紙用塗工剤及びそれを塗工した加工原紙

【課題】 加工原紙のこわさや腰といった剛度を向上させることが可能で、かつ原紙への塗工時に曳糸性が無く、操業性に優れた加工紙用塗工剤を提供する。
【解決手段】 カチオン性基及び/又はアニオン性基を有する重量平均分子量50万〜200万の分岐型共重合ポリアクリルアミド、好ましくは10%水溶液のB型粘度が50〜200mPa・sで、かつ曳糸性のない分岐状共重合ポリアクリルアミドを加工原紙用塗工剤として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加工原紙塗工剤に使用される特定のポリアクリルアミドに関するものであり、更に該ポリアクリルアミドを表面塗工することにより、紙のこわさや紙腰といった剛度を向上させた加工原紙に関する。
【背景技術】
【0002】
剥離紙等の加工用原紙において、紙のコワサが不足すると、剥離紙を用いて粘着加工した粘着ラベルシートに印刷、狭幅にスリット、ダイカット(打ち抜き)等の行う時、紙ジワやズレが起き易くなり、印刷不良、ダイカット不良、幅の不揃いなどが発生し問題となる。従来から紙のコワサを改善することを目的に抄紙機工程のサイズプレスやゲートロールコータ等で澱粉やPVAを両面塗工することで対応していたが十分な効果が得られていなかった。
【0003】
一般にポリアクリルアミドやデンプンなどの紙力増強剤を内添すると紙の剛度は向上する。しかし、十分な剛度向上効果を得るためには、通常以上の配合量が必要となり、紙の地合の悪化を引き起こし易く、かえって剛度が低下する可能性がある。また、抄紙工程に凝集性、粘着性を有するこれら薬品を増配することは操業不安定化の恐れがあること、さらには薬品の増配はコストの点から困難であると考えられる。
【0004】
一方、紙に酸化デンプンやヒドロキシエチル化デンプンなどデンプンを塗工すると紙の剛度が向上することが知られている。しかし、必要な剛度を得るためにデンプンの塗工量を増やすと表面粘着性が増すため、オフセット印刷時に印刷機のブランケットに用紙が取られる現象が発生することがある。そのため、塗布量を増加することには限界があり、十分な剛度を得ることができない。
【0005】
また、これまでに剛度向上を目的とした紙用表面塗工剤として下記の例が公知となっている。水ガラスと高分子エマルション又はラテックスを特定量配合する方法(特許文献1参照)、ポリビニルアルコール系樹脂でサイズされた紙に電子線や放射線を照射する方法(特許文献2参照)、ポリビニルアルコール系重合体成分とポリアクリルアミド系重合体成分を混合する方法(特許文献3参照)、ポリビニルアルコール系重合体存在下でアクリルアミド系モノマーを特定重合比でラジカル重合して得た重合体による方法(特許文献4参照)、アセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂とジルコニウム塩とを含む水溶液による方法(特許文献5参照)、ポリビニルアルコール成分とポリアクリルアミド成分から成るブロック共重合体(特許文献6参照)、(メタ)アクリルアミドとα,β−不飽和カルボン酸又はその塩とN,N−ジメチルアクリルアミドとN-メチロール(メタ)アクリルアミドとN−メチロール(メタ)アクリルアミドの1モル当たり0.3〜1モルのエチレン尿素を重合成分とした水溶性共重合体による方法(特許文献7参照)、(メタ)アクリルアミドとα,β−不飽和カルボン酸又はその塩とN,N−ジメチルアクリルアミドとN−メチロール(メタ)アクリルアミドとN−メチロール(メタ)アクリルアミドの1モル当たり0.3〜1モルのジシアンジアミドを重合成分とした水溶性共重合体による方法(特許文献8参照)、アルキルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体による方法(特許文献9参照)、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂やグリオキザールまたはメラニンホルマリン樹脂から成る耐水化剤とポリビニルアルコール、デンプン、ポリアクリルアミド樹脂又はカルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子を塗布する方法(特許文献10参照)、アルカリ金属の酢酸塩が2重量%以下、酢酸が5重量%以下、かつアルカリ金属の酢酸塩/酢酸の重量比が0.01〜100となる割合でアルカリ金属の酢酸塩、酢酸を含むアセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とすることを特徴とする紙用塗工剤を塗布する方法(特許文献11参照)、顔料と中空重合体粒子および共重合体ラテックスと澱粉とからなる接着剤を含有し、該共重合体ラテックスの数平均粒子径が0.06〜0.2μm、該共重合体ラテックスを構成する共重合体のガラス転移温度が−50〜45℃であり、さらに該共重合体ラテックス/該澱粉の重量比率が、固形分換算で、80/20〜5/95であることを特徴とするグラビア印刷用塗工紙用組成物(特許文献12参照)、チタン酸化物または水酸化物の超微粒子分散液とポリアクリルアミドやポリビニルアルコールなどの紙力増強剤を含むことを特徴とする紙用剛度向上剤組成物(特許文献13参照)等が開示されている。しかし、これらの方法は生産性やコストに問題があったり、表面粘着性の悪化から高速印刷には適していなかったり、古紙として使用した場合の離解性に問題があるため実用化は困難である。
【0006】
また、顔料を含有する紙用塗工添加剤として、1級または2級アミノ基を有するアミノ化合物および分子内にエポキシ基を少なくとも2個有するエポキシ化合物を反応させて得られる水溶性樹脂(特許文献14参照)、ポリアミン系化合物およびビスフェノールA型エポキシ樹脂を反応させて得られる塗工紙用添加剤(特許文献15参照)等が開示されている。
【0007】
また、一般に紙用表面塗工剤として用いられるポリアクリルアミドは、アクリルアミドモノマーからポリアクリルアミドを重合した後、アミド基を部分加水分解したもの、あるいはアクリルアミドモノマーと(メタ)アクリル酸モノマーとから製造される比較的低分子量(数十万程度)の直鎖状ポリマーである。これを原紙の表面に塗工した場合、該ポリアクリルアミドが低分子のため紙原紙内部へ浸透してしまい、また、パルプ繊維同士を接着する効果が小さいため、十分な剛度向上効果を得ることはできない。一方、該ポリアクリルアミドの分子量を大きくすると剛度が若干向上するものの、極めて高粘度となり、原紙への塗工が困難となる問題がある。
【0008】
一方、内添用紙力向上剤として、アクリルアミドモノマー、4級及び/又は3級アンモニウムカチオン基に代表されるカチオン性モノマー及び/又はカルボキシル基に代表されるアニオン性モノマー、架橋剤から製造される比較的高分子量(250〜400万程度)の分岐型ポリアクリルアミドが用いられている。これを紙用表面塗工剤として用いた場合、紙内部への浸透性が抑えられ、パルプ繊維同士を接着する効果が大きいため大幅に紙の剛度を向上させることは可能である。しかし、このような内添用ポリアクリルアミドは高粘度で高曳糸性を示すため、原紙への塗工時に、ボイリングの発生や塗工ロール間にミストが発生したり、塗工部で均一に塗布できないなどの操業上、品質上の問題があった。
【0009】
【特許文献1】特開昭59−130398号公報
【特許文献2】特開昭60−155799号公報
【特許文献3】特開昭60−173197号公報
【特許文献4】特開昭60−151800号公報
【特許文献5】特開平1−156597号公報
【特許文献6】特公平3−23678号公報
【特許文献7】特開平6−65893号公報
【特許文献8】特開平6−65894号公報
【特許文献9】特開平7−238490号公報
【特許文献10】特開平8−100388号公報
【特許文献11】特開平9−3797号公報
【特許文献12】特開2000−110094号公報
【特許文献13】特開2001−123393号公報
【特許文献14】特開平6−166994号公報
【特許文献15】特開2001−214397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、加工原紙への表面塗工剤の塗工量が少ないにもかかわらず充分な剛度を有し、剥離紙を用いて粘着加工した粘着ラベルシートに印刷、狭幅にスリット、ダイカット(打ち抜き)等の行う時、紙ジワやズレが起き難く、印刷不良、ダイカット不良、幅の不揃いなどが発生し難い剥離紙用原紙等の加工原紙を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
カチオン性基及び/又はアニオン性基を有する共重合分岐型ポリアクリルアミドの重量平均分子量を50万〜200万とすることにより、該ポリアクリルアミド水溶液の粘度が低下すると同時に曳糸性が無くなり、紙用表面塗工剤として使用することが可能となる。また、該ポリアクリルアミドを原紙の表面に塗工した加工原紙は、剛度が顕著に向上する。
【発明の効果】
【0012】
カチオン性基及び/又はアニオン性基を有する共重合分岐型ポリアクリルアミドの重量平均分子量を50万〜200万とすることにより、該ポリアクリルアミド水溶液の粘度が低下すると同時に曳糸性が無くなり、操業性に優れた加工原紙用塗工剤となる。また、該ポリアクリルアミドを原紙の表面に塗工した場合、該ポリアクリルアミドの原紙内部への浸透が抑制され、またパルプ繊維同士を強く接着するため、加工原紙の剛度が顕著に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の加工原紙用塗工剤に用いるポリアクリルアミドは、カチオン性基及び/又はアニオン性基を有する分岐型共重合体であり、重量平均分子量50万〜200万のものである。
【0014】
本発明で使用するポリアクリルアミドは、従来公知の方法で製造される。具体的には、アクリルアミドモノマー類とカチオン性モノマー及び/又はアニオン性モノマー、更に架橋剤類を共重合して製造される。
【0015】
本発明のポリアクリルアミドの原料として使用されるアクリルアミドモノマー類としては、アクリルアミド、メタアクリルアミドが最も好ましい。他にN−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等の水溶性であるN置換低級アルキルアクリルアミド等が挙げられ、これらを1種または2種以上併用することができる。
【0016】
本発明のポリアクリルアミドの原料として使用されるカチオン性モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アリルアミン、ジアリルアミン等の3級アミン系モノマーまたはそれらの塩酸、硫酸、酢酸などの無機酸もしくは有機酸の塩類、または3級アミン系モノマーを塩化メチル、塩化ベンジル、ジメチル硫酸、エピクロルヒドリン等との反応で4級化した4級アンモニウム塩系のモノマー等を挙げることができる。これらのカチオン性モノマーを単独または2種以上併用して使用できる。
【0017】
本発明のポリアクリルアミドの原料として使用されるアニオン性モノマーとしては、カルボキシル基を含有するモノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ムコン酸等のジカルボン酸が挙げられる。これらアニオン性モノマーを単独または2種以上併用して用いることができる。
【0018】
また、本発明のポリアクリルアミドの製造反応時に、アクリルアミドモノマーの他に、上記カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとを併用しても良いし、カチオン性モノマーまたはアニオン性モノマーのみを使用しても良い。
【0019】
加えて、ノニオン性モノマーとして前記アニオン性モノマーのアルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜8)やアクリロニトリル、スチレン鎖、酢酸ビニル、メチルビニルエーテル等を単独または2種以上併用して用いることができる。
【0020】
本発明のポリアクリルアミドの原料として使用される架橋性モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類やメチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ビニル等のジビニルエステル類、アリルメタクリレート、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアンモニウム、ジアリルフタレート等の2官能性ビニルモノマー、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート等の3官能性ビニルモノマーが挙げられる。これら架橋性モノマーを単独または2種以上併用して用いることができる。
【0021】
本発明の分岐型共重合ポリアクリルアミドは、前記のように、アクリルアミドモノマー類と、カチオン性モノマー及び/又はアニオン性モノマー、更に架橋剤類を公知の方法で共重合させて製造されるが、その重量平均分子量は50万〜200万の範囲である必要があり、75万〜200万が好ましい。また、10%水溶液のB型粘度は50〜200mPa・sの範囲が好ましく、特に75〜200mPa・sが好ましい。さらに曳糸性がないように共重合反応の条件を設定して製造される。特に、本発明の分岐型共重合ポリアクリルアミドでは曳糸性がないように、ポリアクリルアミドの分岐度合を調整することが特に重要であり、このために反応時の架橋剤の配合量を加減する。架橋度を下げることにより、枝分かれが少ない直鎖状のポリアクリルアミドの分子構造になるため、曳糸性が少なくなると考えられる。
【0022】
本発明の分岐型共重合ポリアクリルアミドの原紙への塗工量は両面で0.01〜5.0g/mであることが好ましく、特に好ましくは0.1〜3.0g/mである。塗工量が0.01g/m未満の場合、剛度向上効果が得られない。一方、塗工量が5.0g/mを超える場合、剛度の向上が頭打ちになるので塗工量を増やしても意味がなく、また該ポリアクリルアミドを塗工した紙の表面粘着性が悪化してしまい、オフセット印刷時にブランケットへ紙が取られるトラブルの恐れがある。
【0023】
また、本発明の分岐型共重合ポリアクリルアミドを原紙へ塗工する際、紙の剛度や塗工液の曳糸性が悪化しない範囲で、他の表面塗工剤を併用しても良い。他の表面塗工剤としては、澱粉、酸化変性澱粉、酵素変性澱粉、各種化工澱粉、ポリビニルアルコール、各種表面サイズ剤などが挙げられる。
【0024】
塗工液を原紙の表面に塗工する装置には特に限定はなく、2ロールサイズプレス、メタリングサイズプレス、ゲートロールコーターなどの装置を用いることができる。しかし、紙表面に塗工剤が留まるほど紙の剛度が高くなることから、メタリングサイズプレス、ゲートロールコーターが好ましい。
【0025】
本発明で適用される加工原紙は、剥離紙として用いられるシリコーン樹脂直塗工タイプのグラシン紙、セミグラシン紙、クレーコート紙、クリアーコート紙等、ポリエチレンラミネートタイプの上質系原紙に使用することができる。
【0026】
本発明の分岐型共重合ポリアクリルアミドを塗工する加工原紙は、前記の紙用加工原紙または塗工原紙用の加工原紙であり、酸性抄紙法で製造されるものでも中性抄紙法で製造されるものであっても構わない。
【0027】
原紙の原料パルプは、通常使用されているパルプであれば良く、特に限定は無く、ケミカルパルプ(CP)、砕木パルプ(GP)、ケミグラウンドパルプ(CGP)、リファイナーグラウンドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、セミケミカルパルプ(SCP)等の各種製造方法のパルプ、また、これらの針葉樹、広葉樹パルプ、あるいは晒、未晒パルプ、更に脱墨パルプ(DIP)等を紙の種類に応じて適宜配合したパルプである。
【0028】
酸性抄紙法で製造する原紙では、紙の品種に応じて必要であれば、ロジンサイズ剤、強化ロジンサイズ剤、合成サイズ剤等の公知の酸性抄紙用内添サイズ剤を使用でき、また、抄紙pHが酸性領域でも安定な填料を使用でき、具体的にはクレー、焼成カオリン、デラミカオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ等の無機填料や、尿素−ホリマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等の有機填料を単独でまたは適宜2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
中性抄紙法で製造する原紙では、紙の品種に応じて必要であれば、公知の内添中性サイズ剤である、アルキルケテンダイマー(AKD)系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸(ASA)系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤を使用でき、填料としては炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クレー、焼成カオリン、デラミカオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ等の無機填料や、尿素−ホリマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等を使用ができる。
【0030】
原紙の抄造に際して、従来から使用されている各種のノニオン性、カチオン性の歩留まり剤、濾水度向上剤、紙力向上剤等の製紙用内添助剤が必要に応じて適宜選択して使用される。また、例えば、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダや、塩基性塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウム等の塩基性アルミニウム化合物や、水に易分解性のアルミナゾル等の水溶性アルミニウム化合物、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄等の多価金属化合物、シリカゾル等が内添されてもよい。その他製紙用助剤として各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド、ポリアミン樹脂、ポリアミン、ポリエチレンイミン、植物ガム、ポリビニルアルコール、ラテックス、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー粒子分散物及びこれらの誘導体あるいは変成物等の各種化合物を使用できる。更に、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添剤を用途に応じて適宜添加することもできる。
【0031】
原紙を抄造する抄紙機の型式は特に限定は無く、長網抄紙機、ツインワイヤー型抄紙機、ヤンキー抄紙機等で適宜抄紙できる。プレス線圧は通常の操業範囲内で用いられる。カレンダーはバイパスしても良いし、通常の操業範囲内で処理しても良い。
【実施例】
【0032】
以下に実施例及び比較例にて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、例中の%は全て固形分重量%を示す。
【0033】
実施例及び比較例で使用したポリアクリルアミドの物性、及び加工原紙のクラーク剛度は以下の方法で測定し、結果を表1に示した。
・ポリアクリルアミドの重量平均分子量:カラムTSK-GEL P6000PWとP3000PW(東ソー株式会社製)を用い、0.3M塩化ナトリウム水溶液を溶媒としてGPCで測定した。
・B型粘度:ポリアクリルアミドの10%水溶液について、25℃、60rpmで測定した。
・曳糸性:ポリアクリルアミドの10%水溶液を岩田式粘度カップに入れ、下穴から伸びる糸の長さを測定した。その長さが10cm未満の場合を曳糸性なしと判断した。
・塗工適性:塗工液の高粘度によるボイリングや、曳糸性によるロール間の糸引き現象を目視観察し、良好、不良の2水準の評価を行った。
・クラーク剛度:JIS P 8143に従い、測定した。
また、供試したポリアクリルアミドのイオン性は以下の通りである。
(1)ポリアクリルアミドPAM−01:両性ポリアクリルアミド、カチオン量0.77meq/g、アニオン量1.95meq/g
(2)ポリアクリルアミドPAM−02:両性ポリアクリルアミド、カチオン量0.64meq/g、アニオン量1.90meq/g
(3)アミドPAM−03:両性ポリアクリルアミド、カチオン量0.68meq/g、アニオン量1.87meq/g
(4)ポリアクリルアミドPAM−04:両性ポリアクリルアミド、カチオン量0.72meq/g、アニオン量1.82meq/g
(5)ポリアクリルアミドST−481H:アニオン性ポリアクリルアミド、アニオン量1.66meq/g
【0034】
[実施例1]
坪量75g/mの加工原紙用の原紙(日本製紙株式会社製)の両面に、ポリアクリルアミドPAM−01の濃度2.0重量%の塗工液をゲートロールにて塗工速度300m/min.で塗工して、加工原紙を製造した。
【0035】
[実施例2]
ポリアクリルアミドPAM−01の塗工液濃度を3.5重量%とした以外は実施例1と同様にして、加工原紙を製造した。
【0036】
[実施例3]
坪量75g/mの加工原紙用の原紙(日本製紙株式会社製)の両面に、ポリアクリルアミドPAM−02の2.0重量%の塗工液をゲートロールにて塗工速度300m/min.で塗工して、加工原紙を製造した。
【0037】
[実施例4]
ポリアクリルアミドPAM−02の塗工液濃度を3.5重量%とした以外は、実施例3と同様にして、加工原紙を製造した。
【0038】
[実施例5]
坪量75g/mの加工原紙用の原紙(日本製紙株式会社製)の両面に、ポリアクリルアミドPAM−03の2.0重量%の塗工液をゲートロールにて塗工速度300m/min.で塗工して、加工原紙を製造した。
【0039】
[実施例6]
ポリアクリルアミドPAM−03の塗工液濃度を3.5重量%とした以外は、実施例5と同様にして、加工原紙を製造した。
【0040】
[実施例7]
坪量75g/mの加工原紙用の原紙(日本製紙株式会社製)の両面に、ポリアクリルアミドPAM−04の2.0重量%の塗工液をゲートロールにて塗工速度300m/min.で塗工して、加工原紙を製造した。
【0041】
[実施例8]
ポリアクリルアミドPAM−04の塗工液濃度を3.5重量%とした以外は、実施例7と同様にして、加工原紙を製造した。
【0042】
[比較例1]
坪量75g/mの加工原紙用の原紙(日本製紙株式会社製)の両面に、ポリアクリルアミドST−481H(星光PMC株式会社製)の2.0重量%の塗工液をゲートロールにて塗工速度300m/min.で塗工した。なお、ST−481Hは、従来から紙表面塗工剤として使用されているポリアクリルアミドの代表的なものである。
【0043】
[比較例2]
ポリアクリルアミドST−481Hの塗工液濃度を3.5重量%とした以外は、比較例1と同様に行った。
【0044】
[比較例3]
坪量75g/mの加工原紙用の原紙(日本製紙株式会社製)の両面に、ポリアクリルアミド(商品名:ポリストロン851、ハリマ化成株式会社製)の2.0重量%の塗工液をゲートロールにて塗工速度300m/min.で塗工した。なお、ポリストロン851は、従来から内添紙力剤として使用されているポリアクリルアミドの代表的なものである。
【0045】
[比較例4]
ポリアクリルアミド、ポリストロン851の塗工液濃度を3.5重量%とした以外は比較例3と同様に行った。
【0046】
[比較例5]
坪量75g/mの加工原紙用の原紙(日本製紙株式会社製)の両面に、酸化デンプン(商品名:SK−20、日本コーンスターチ株式会社製)3.0重量%の塗工液をゲートロールにて塗工速度300m/min.で塗工した。
【0047】
[比較例6]
酸化デンプンの塗工液濃度を6.0重量%とした以外は比較例5と同様に行った。
【0048】
【表1】


表1に示されるように、カチオン性基及び/又はアニオン性基を有する、重量平均分子量50万〜200万の分岐型共重合ポリアクリルアミドであり、B型粘度が50〜200mPa・sの範囲にあるものを塗工した実施例1〜8の加工原紙は、従来用いられている表面塗工用の低分子量のポリアクリルアミドを塗工した比較例1、2より大幅な剛度向上効果を示した。また、従来内添紙力剤として使用されている重量分子量が200万より大きいポリアクリルアミドを塗工した比較例3、4より塗工適性が良好である。さらに酸化デンプンを用いた比較例5、6よりも剛度が大きく向上することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性基及び/又はアニオン性基を有する重量平均分子量50万〜200万の分岐型共重合ポリアクリルアミドからなる加工原紙用塗工剤。
【請求項2】
10%水溶液のB型粘度が50〜200mPa・sで、かつ曳糸性のない分岐状共重合ポリアクリルアミドからなる請求項1記載の加工原紙用塗工剤。
【請求項3】
請求項1ないし2記載の加工原紙用塗工剤を両面で0.01〜5.0g/m塗工したことを特徴とする加工原紙。

【公開番号】特開2006−283236(P2006−283236A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−104944(P2005−104944)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】