説明

加工廃液処理装置

【課題】切削屑や研削屑が付着して寿命に達したフィルターを容易に交換することができる加工廃液処理装置を提供する。
【解決手段】加工廃液を収容する廃液タンク2と、加工廃液を送給する加工廃液送給手段8と、廃液を濾過するためのカセットフィルター4と、カセットフィルター4を支持するとともに清水流出口を備えたフィルターラック5,6と、流出した清水を貯留する清水タンク7とを具備する加工廃液処理装置であって、フィルターラック5,6は清水流出口を備えた底壁と、底壁の外周縁から立設して設けられ底壁とともに清水パンを形成する側壁56と、底壁の上面に配設されカセットフィルター5,6を載置するための支持面を備えた複数個の支持部材57とを備えており、複数個の支持部材57は間隔がフォークリフトのフォークが侵入可能な間隔に設定され、支持面の高さ位置が側壁の上面からフォークの厚みより高い位置に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物を切削する切削装置や被加工物を研削する研削装置等の加工装置に付設され、加工時に供給される加工液の廃液を濾過する加工廃液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。このように表面にデバイスが形成された半導体ウエーハをストリートに沿って切断することにより、デバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。また、サファイヤ基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスウエーハもストリートに沿って切断することにより個々の発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
上述した半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のストリートに沿った切断は、通常、ダイサーと呼ばれる切削装置によって行われている。この切削装置は、半導体ウエーハ等の被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削するための切削ブレードを備えた切削手段と、切削ブレードに加工水を供給する加工水供給手段を具備し、該加工水供給手段によって切削水を回転する切削ブレードに供給することにより切削ブレードを冷却するとともに、切削ブレードによる被加工物の切削部に加工水を供給しつつ切削作業を実施する。
【0004】
このようにして分割されるウエーハは、ストリートに沿って切断する前に研削装置によって裏面が研削され、所定の厚さに加工される。研削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブル上に保持された被加工物を研削する研削手段とを具備している。この研削手段は、回転スピンドルと、該回転スピンドルの下端に設けられたホイールマウントと、該ホイールマウントの下面に着脱可能に装着される研削ホイールとを具備しており、該研削ホイールがホイール基台と該ホイール基台の下面における外周部の砥石装着部に装着された複数の研削砥石とからなっており、研削ホイールを回転し研削水を供給しつつ研削砥石をチャックテーブルに保持された被加工物に押圧することにより被加工物を研削する。
【0005】
上述したように切削装置による切削時や研削装置による研削時に供給された加工液にはシリコンや窒化ガリウム系化合物半導体を切削や研削することによって発生する切削屑や研削屑が混入される。この半導体素材からなる切削屑や研削屑が混入された加工廃液は環境を汚染することから、加工廃液を処理して排水しなければならず、廃液処理コストが係るという問題がある。
【0006】
上記問題を解消するために、加工廃液をフィルターで濾過して清水を生成し、切削水または研削水として循環して使用する加工廃液処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−95941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、加工廃液を濾過することにより切削屑や研削屑が付着して寿命に達したフィルターは数十キロの重量となり、新たなフィルターと交換する作業を人力によって円滑に行うことが困難であるという問題がある。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、切削屑や研削屑が付着して寿命に達したフィルターを容易に交換することができる加工廃液処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、加工廃液を収容する廃液タンクと、該廃液タンクに収容された加工廃液を送給する加工廃液送給手段と、該加工廃液送給手段によって送給された廃液を濾過するためのカセットフィルターと、該カセットフィルターを支持するとともにカセットフィルターによって廃液が濾過された清水を流出する清水流出口を備えたフィルターラックと、該フィルターラックの該清水流出口から流出した清水を貯留する清水タンクと、を具備する加工廃液処理装置において、
該フィルターラックは、該清水流出口を備えた底壁と、該底壁の外周縁から立設して設けられ該底壁とともに清水パンを形成する側壁と、該底壁の上面に配設され該カセットフィルターを載置するための支持面を備えた複数個の支持部材とを備えており、
該複数個の支持部材は、間隔がフォークリフトのフォークが侵入可能な間隔に設定され、該支持面の高さ位置が該側壁の上面から該フォークの厚みより高い位置に設定されている、
ことを特徴とする加工廃液処理装置が提供される。
【0011】
上記フィルターラックは上下に配設された第1のフィルターラックと第2のフィルターラックとからなり、該第1のフィルターラックと該第2のフィルターラックにはそれぞれ2個のカセットフィルターが配置されており、上記加工廃液送給手段は第1のフィルターラックと第2のフィルターラックに配置された4個のカセットフィルターのうちの2個のカセットフィルターからなる第1のカセットフィルターグループと他の2個のカセットフィルターからなる第2のカセットフィルターグループとに選択的に加工廃液を導入する。
上記第1のカセットフィルターグループは上記第1のフィルターラックと上記第2のフィルターラックに配置されたそれぞれ一方のカセットフィルターからなり、上記第2のカセットフィルターグループは上記第1のフィルターラックと上記第2のフィルターラックに配置されたそれぞれ他方のカセットフィルターからなる。
また、上記加工廃液送給手段は、上記廃液タンクに収容された加工廃液を送給するポンプと、該ポンプによって送給された加工廃液を上記第1のカセットフィルターグループの2個のカセットフィルターに送る第1の配管と、ポンプによって送給された加工廃液を上記第2のカセットフィルターグループの2個のカセットフィルターに送る第2の配管と、ポンプによって送給された加工廃液を第1の配管と第2の配管に選択的に切り換えて導入する切り換え手段と、第1の配管と第2の配管内の圧力を検出する圧力検出手段と、該圧力検出手段からの検出信号に基づいて該切り換え手段を制御する制御手段とを具備している。
【発明の効果】
【0012】
本発明による加工廃液処理装置においては、カセットフィルターを支持するとともにカセットフィルターによって加工廃液が濾過された清水を流出する清水流出口を備えたフィルターラックは、清水流出口を備えた底壁と、該底壁の外周縁から立設して設けられ底壁とともに清水パンを形成する側壁と、底壁の上面に配設されカセットフィルターを載置するための複数個の支持部材とを備えており、複数個の支持部材は、間隔がフォークリフトのフォークが侵入可能な間隔に設定され、上面高さが該側壁の上面から該フォークの厚みより大きい値に設定されているので、カセットフィルターをフィルターラックから搬出する際はフォークリフトのフォークを複数個の支持部材間におけるカセットフィルターの下面と清水パンを形成する側壁の上面との間に侵入せしめることにより、フォークリフトを用いて加工屑が堆積したカセットフィルターをフィルターラックから搬出することができる。従って、カセットフィルターの交換を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に従って構成された加工廃液処理装置の要部斜視図。
【図2】図1に示す加工廃液処理装置の要部を分解して示す斜視図。
【図3】本発明に従って構成された加工廃液処理装置の構成ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成された加工廃液処理装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1には本発明に従って構成された加工廃液処理装置の要部斜視図が示されており、図2には図1に示す加工廃液処理装置の要部分解斜視図が示されている。
図示の実施形態における加工廃液処理装置は、加工廃液を収容する廃液タンク2と、該廃液タンク2に収容された加工廃液を送給するポンプ3と、該ポンプ3によって送給された加工廃液を濾過するための4個のカセットフィルター4a、4b、4c、4dと、上下に配設され2個のカセットフィルター4a、4bを支持する第1のフィルターラック5および2個のカセットフィルター4c、4dを支持する第2のフィルターラック6と、該第1のフィルターラック5および第2のフィルターラック6の後述する清水流出口から流出した清水を貯留する清水タンク7を具備している。
【0016】
廃液タンク2は、端壁に廃液流入口21を備えており、該廃液流入口21が図示しない切削装置や研削装置等の加工装置に装備される加工廃液送出手段に接続される。この廃液タンク2の上壁に加工廃液を送給するポンプ3が配設されている。
【0017】
カセットフィルター4a、4b、4c、4dは、それぞれ筒状に形成された濾紙41と、該濾紙41の外周を覆う筒体42と、筒状の濾紙41の下端を閉塞する底板43と、筒状の濾紙41の上端を閉塞する天板44とを有している。カセットフィルター4a、4b、4c、4dを構成する筒状の濾紙41は、放射状に複数折り畳まれて形成され、濾過面積が増大するように構成されている。筒状の濾紙41の外周を覆う筒体42は、側面に複数の開口421が形成されている。また、上記筒状の濾紙41の上端を閉塞する天板44には、中央部に廃液導入口441が設けられている。
【0018】
上述したカセットフィルター4a、4bを支持する第1のフィルターラック5は、図2に示すように矩形状に形成された底壁51と、該底壁51の外側縁から立設された側壁52、53、54、55とからなっており、4本の支持柱56によって支持される。第1のフィルターラック5は、底壁51と側壁52、53、54、55によって上記カセットフィルター4aおよび4bによって加工屑が分離された濾過済み加工液である清水を収容する清水パン50を形成している。そして、第1のフィルターラック5を構成する底壁51には、清水パン50に貯留された濾過済み加工液である清水を流出する清水流出口511が設けられている。なお、この清水流出口511には流出ホース58が接続されており、清水流出口511から流出した清水パン50に貯留され清水流出口511から流出した清水が流出ホース58を介して後述する清水タンク7に流入するようになっている。また、第1のフィルターラック5を構成する底壁51の上面には、上記カセットフィルター4aおよび4bを支持するためのそれぞれ2個の第1の支持部材57a、57aおよび第2の支持部材57b、57bが配設されている。この第1の支持部材57a、57aの上面である支持面にカセットフィルター4aが載置され、第2の支持部材57b、57bの上面である支持面にカセットフィルター4bが載置される。上記第1の支持部材57a、57aおよび第2の支持部材57b、57bは、それぞれ間隔が後述するフォークリフトのフォークが侵入可能な間隔に設定され、上面である支持面の高さ位置が側壁52、53、54、55の上面から後述するフォークの厚みより高い位置に設定されている。なお、図示の実施形態においては、第1の支持部材57a、57aおよび第2の支持部材57b、57bはそれぞれ2個の支持部材によって形成されているが、図2において2点鎖線で示すようにそれぞれ間に1個の支持部材57cを配設して3支持部材としてもよい。この第1の支持部材57a、57aと支持部材57cとの間隔および第2の支持部材57b、57bと支持部材57cとの間隔は、後述するフォークリフトのフォークが侵入可能な間隔に設定される。
【0019】
次に、上記カセットフィルター4c、4dを支持する第2のフィルターラック6について、主に図2を参照して説明する。第2のフィルターラック6は、上記第1のフィルターラック5と同様に矩形状に形成された底壁61と、該底壁61の外側縁から立設された側壁62、63、64、65とからなっている。第2のフィルターラック6は、底壁61と側壁62、63、64、65によって上記カセットフィルター4cおよび4dによって加工屑が分離された濾過済み加工液である清水を収容する清水パン60を形成している。そして、第2のフィルターラック6を構成する底壁61には、清水パン60に貯留された濾過済み加工液である清水を流出する清水流出口611、612、613が設けられており、この清水流出口611、612、613から流出した清水パン60に貯留された清水が後述する清水タンク7に流入するようになっている。なお、上記流出ホース58は、清水流出口612を挿通して配設される。また、第2のフィルターラック6を構成する底壁61の上面には、上記カセットフィルター4cおよび4dを支持するためのそれぞれ2個の第1の支持部材67a、67aおよび第2の支持部材67b、67bが配設されている。この第1の支持部材67a、67aの上面である支持面にカセットフィルター4cが載置され、第2の支持台67b、67bの上面である支持面にカセットフィルター4dが載置される。上記第1の支持部材67a、67aおよび第2の支持部材67b、67bは、それぞれ間隔が後述するフォークリフトのフォークが侵入可能な間隔に設定され、上面である支持面の高さ位置が側壁62、63、64、65の上面さから後述するフォークの厚みより高い位置に設定されている。なお、図示の実施形態においては、第1の支持部材67a、67aおよび第2の支持部材67b、67bはそれぞれ2個の支持部材によって形成されているが、図2において2点鎖線で示すようにそれぞれ間に1個の支持部材67cを配設して3支持部材としてもよい。この第1の支持部材67a、67aと支持部材67cとの間隔および第2の支持部材67b、67bと支持部材67cとの間隔は、後述するフォークリフトのフォークが侵入可能な間隔に設定される。
【0020】
以上のように構成された第2のフィルターラック6は図1に示すように清水タンク7上に配置され、この第2のフィルターラック6の4隅上に上記第1のフィルターラック5の4本の支持柱56が配置され適宜の固定手段によって固定される。
【0021】
図2を参照して説明を続けると、清水タンク7は矩形状に形成された底壁71と、該底壁71の両側縁から立設された側壁72、73と、底壁71の両端縁から立設された端壁74、75とからなっており、上方が開放して構成されている。このように構成された清水タンク7の端壁75に排出口751が設けられており、該排出口751を通して清水タンク7内に収容された清水が排出される。
【0022】
次に、上述した廃液タンク2に収容された加工廃液を上記カセットフィルター4a、4b、4c、4dに送給するための加工廃液送給手段について、図3を参照して説明する。
図3に示す加工廃液送給手段8は、上記廃液タンク2に収容された加工廃液を送給するポンプ3と、該ポンプ3に接続された送給配管81と、該送給配管81と第1のカセットフィルターグループとしてのカセットフィルター4aおよび4cの廃液導入口441および441とを接続する第1の配管81aと、送給配管81と第2のカセットフィルターグループとしてのカセットフィルター4bおよび4dの廃液導入口441および441とを接続する第2の配管81bと、送給配管81と第1の配管81aおよび第2の配管81bとの間に配設された電磁切り換え弁82を具備している。この電磁切り換え弁82は、除勢(OFF)している状態では送給配管81と第1の配管81aおよび第2の配管81bとの連通を遮断しており、一方の電磁コイル82aを附勢(ON)すると送給配管81と第1の配管81aが連通し、他方の電磁コイル82bを附勢(ON)すると送給配管81と第2の配管81bが連通するようになっている。従って、電磁切り換え弁82は、ポンプ3によって送給された加工廃液を第1の配管81aと第2の配管81bに選択的に切り換えて導入する切り換え手段として機能する。なお、送給配管81には、上記第1の配管81aと第2の配管81b内の加工廃液の圧力を検出する圧力検出手段83が配設されている。この圧力検出手段83は、その検出信号を後述する制御手段に送る。なお、図示の実施形態においては圧力検出手段83を送給配管81に配設した例を示したが、圧力検出手段83は第1の配管81aと第2の配管81bにそれぞれ配設してもよい。
【0023】
また、図示の実施形態における加工廃液処理装置は、上記圧力検出手段83からの圧力信号を入力し、上記ポンプ3、電磁切り換え弁82に制御信号を出力する制御手段9を具備している。この制御手段9は、上記廃液タンク2および清水タンク7に隣接して配設されている。
【0024】
図示の実施形態における加工廃液処理装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
廃液タンク2に収容された加工廃液を処理するに際しては、制御手段9は先ずポンプ3を作動するとともに、電磁切り換え弁82の一方の電磁コイル82aを附勢(ON)する。この結果、ポンプ3によって送給された加工廃液は、送給配管81、電磁切り換え弁82、第1の配管81aを介して第1のカセットフィルターグループとしてのカセットフィルター4aおよび4cに導入される。カセットフィルター4aに導入された加工廃液は、筒状の濾紙41によって濾過され、再生された加工液である清水となって筒状の濾紙41の外周を覆う筒体42の側面に形成された複数の開口421を通して第1のフィルターラック5に形成された清水パン50に流出する。このようにして第1のフィルターラック5に形成された清水パン50に流出した清水は、第1のフィルターラック5の底壁51に形成された清水流出口511から流出し、流出ホース58を介して清水タンク7に流入する。
【0025】
一方、カセットフィルター4cに導入された加工廃液は、筒状の濾紙41によって濾過され、再生された加工液である清水となって筒状の濾紙41の外周を覆う筒体42の側面に形成された複数の開口421を通して第2のフィルターラック6に形成された清水パン60に流出する。このようにして第2のフィルターラック6に形成された清水パン60に流出した清水は、第2のフィルターラック6の底壁61に形成された清水流出口611、612、613から流出して清水タンク7に流入する。
このようにして清水タンク7に流入した清水は、排出口751から図示しない加工装置に装備された加工液供給手段によって再循環されるか、廃棄手段を介して廃棄される。
【0026】
以上のようにして、第1のカセットフィルターグループとしてのカセットフィルター4aおよび4cによる加工廃液の処理を実施していると、カセットフィルター4aおよび4cを構成する筒状の濾紙41の内側には加工屑が堆積する。筒状の濾紙41の内側に加工屑が堆積すると、加工液が筒状の濾紙41を通過し難くなり、フィルターとしての機能が失われる。このように筒状の濾紙41の内側に加工屑が堆積すると、筒状の濾紙41内の圧力が上昇し第1の配管81a内の圧力が上昇する。この結果、第1の配管81aと電磁切り換え弁82を介して連通している送給配管81の圧力も上昇し、送給配管81内の圧力が例えば2気圧になると、送給配管81に配設された上記圧力検出手段83から出力される圧力信号を入力した制御手段9は、電磁切り換え弁82の他方の電磁コイル82bを附勢(ON)する。従って、送給配管81と第1の配管81aの連通が遮断されて、送給配管81と第2の配管81bが連通する。この結果、ポンプ3によって送給された加工廃液は、送給配管81、電磁切り換え弁82、第2の配管81bを介して第2のカセットフィルターグループとしてのカセットフィルター4bおよび4dに導入される。カセットフィルター4bに導入された加工廃液は、筒状の濾紙41によって濾過され、再生された加工液である清水となって筒状の濾紙41の外周を覆う筒体42の側面に形成された複数の開口421を通して第1のフィルターラック5に形成された清水パン50に流出する。このようにして第1のフィルターラック5に形成された清水パン50に流出した清水は、第1のフィルターラック5の底壁51に形成された清水流出口511から流出し、流出ホース58を介して清水タンク7に流入する。
【0027】
一方、カセットフィルター4dに導入された加工廃液は、筒状の濾紙41によって濾過され、再生された加工液である清水となって筒状の濾紙41の外周を覆う筒体42の側面に形成された複数の開口421を通して第2のフィルターラック6に形成された清水パン60に流出する。このようにして第2のフィルターラック6に形成された清水パン60に流出した清水は、第2のフィルターラック6の底壁61に形成された清水流出口611、612、613から流出して清水タンク7に流入する。
このようにして清水タンク7に流入した清水は、排出口751から図示しない加工装置に装備された加工液供給手段によって再循環されるか、廃棄手段を介して廃棄される。
【0028】
上述したように電磁切り換え弁82が切り換えられ、第2のカセットフィルターグループとしてのカセットフィルター4bおよび4dによって加工廃液を濾過している際に、第1のカセットフィルターグループとしての加工屑が堆積したカセットフィルター4aおよび4cを新しいフィルターと交換する。しかしながら、加工屑が堆積したカセットフィルター4aおよび4cは、重量が数十キロに達し、作業者が人力によって第1のフィルターラック5および第2のフィルターラック6から搬出することが困難である。しかるに、図示の実施形態における加工廃液処理装置においては、カセットフィルター4a、4bを支持する第1のフィルターラック5を構成する第1の支持部材57a、57aおよび第2の支持部材57b、57bは、第1の支持部材57aと57aとの間隔および第2の支持部材57bと57bとの間隔がフォークリフトのフォークが侵入可能な間隔に設定され、上面である支持面の高さ位置が側壁52、53、54、55の上面からフォークの厚みより高い位置に設定されているので、カセットフィルター4aを第1のフィルターラック5から搬出する場合は、図3において2点鎖線で示すようにフォークリフトの2本のフォーク10、10を第1の支持部材57aと57aとの間におけるカセットフィルター4aの下面と第1の支持部材57a、57aの上面である支持面との間に侵入せしめ、フォークリフトを用いて加工屑が堆積したカセットフィルター4aを第1のフィルターラック5から搬出することができる。また、カセットフィルター4c、4dを支持する第2のフィルターラック6を構成する第1の支持部材67a、67aおよび第2の支持部材67b、67bは、第1の支持部材67aと67aとの間隔および第2の支持部材67bと67bとの間隔がフォークリフトのフォークが侵入可能な間隔に設定され、上面である支持面の高さ位置が側壁62、63、64、65の上面からフォークの厚みより高い位置に設定されているので、カセットフィルター4cを第2のフィルターラック6から搬出する際も、図3において2点鎖線で示すようにフォークリフトの2本のフォーク10、10を第1の支持部材67aと67aとの間におけるカセットフィルター4cの下面と第1の支持部材67a、67aの上面である支持面との間に侵入せしめ、フォークリフトを用いて加工屑が堆積したカセットフィルター4cを第2のフィルターラック6から搬出することができる。従って、カセットフィルターの搬出を円滑に行うことができる。このようにしてカセットフィルター4aを第1のフィルターラック5から搬出するとともにカセットフィルター4cを第2のフィルターラック6から搬出したならば、第1のフィルターラック5の第1の支持部材57a、57a上および第2のフィルターラック6の第1の支持部材67a、67a上に新しいカセットフィルターをそれぞれ載置する。この間に加工廃液の処理は上述したように第2のカセットフィルターグループとしてのカセットフィルター4bおよび4dによって実施されるので、加工装置の作業を中断する必要はない。
【0029】
なお、上述したように電磁切り換え弁82を切り換え、第2のカセットフィルターグループとしてのカセットフィルター4bおよび4dによって加工廃液を濾過することにより、カセットフィルター4bおよび4dの筒状の濾紙41の内側には加工屑が堆積する。筒状の濾紙41の内側に加工屑が堆積すると、上述したように筒状の濾紙41内の圧力が上昇し第2の配管81b内の圧力が上昇する。この結果、第2の配管81bと電磁切り換え弁82を介して連通している送給配管81の圧力も上昇し、送給配管81内の圧力が例えば2気圧になると、送給配管81に配設された上記圧力検出手段83から出力される圧力信号を入力した制御手段9は、電磁切り換え弁82の一方の電磁コイル82aを附勢(ON)する。従って、送給配管81と第2の配管81bの連通が遮断されて、送給配管81と第1の配管81aが連通する。この結果、ポンプ3によって送給された加工廃液は、送給配管81、電磁切り換え弁82、第1の配管81aを介して上述したように新しいフィルターとして交換された第1のカセットフィルターグループとしてのカセットフィルター4aおよび4cに導入され、上述したように第1のカセットフィルターグループとしてのカセットフィルター4aおよび4cによる加工廃液の濾過が実施される。
【0030】
このように第1のカセットフィルターグループとしてのカセットフィルター4aおよび4cによって加工廃液を濾過している際に、第2のカセットフィルターグループとしての加工屑が堆積したカセットフィルター4bおよび4dを新しいフィルターと交換する。このフィルター交換に際しても図示の実施形態における加工廃液処理装置においては、カセットフィルター4a、4bを支持する第1のフィルターラック5を構成する第1の支持部材57a、57aおよび第2の支持部材57b、57bは、第1の支持部材57aと57aとの間隔および第2の支持部材57bと57bとの間隔がフォークリフトのフォークが侵入可能な間隔に設定され、上面である支持面の高さ位置が側壁52、53、54、55の上面からフォークの厚みより高い位置に設定されているので、フォークリフトを用いることができる。即ち、カセットフィルター4bを第1のフィルターラック5から搬出する場合には、図3において2点鎖線で示すようにフォークリフトの2本のフォーク10、10を第2の支持部材57bと57bとの間におけるカセットフィルター4bの下面と第2の支持部材57bと57bの上面である支持面との間に侵入せしめ、フォークリフトを用いて加工屑が堆積したカセットフィルター4bを第1のフィルターラック5から搬出することができる。また、カセットフィルター4b、4dを支持する第2のフィルターラック6を構成する第1の支持部材67a、67aおよび第2の支持部材67b、67bは、第1の支持部材67aと67aとの間隔および第2の支持部材67bと67bとの間隔がフォークリフトのフォークが侵入可能な間隔に設定され、上面である支持面の高さ位置が側壁62、63、64、65の上面からフォークの厚みより高い位置に設定されているので、カセットフィルター4dを第2のフィルターラック6から搬出する際も、図3において2点鎖線で示すようにフォークリフトの2本のフォーク10、10を第2の支持部材67bと67bとの間におけるカセットフィルター4dの下面と第2の支持部材57b、57bの上面である支持面との間に侵入せしめ、フォークリフトを用いて加工屑が堆積したカセットフィルター4dを第2のフィルターラック6から搬出することができる。従って、カセットフィルターの搬出を円滑に行うことができる。このようにしてカセットフィルター4bを第1のフィルターラック5から搬出するとともにカセットフィルター4dを第2のフィルターラック6から搬出したならば、第1のフィルターラック5の第2の支持部材57b、57b上および第2のフィルターラック6の第2の支持部材67b、67b上に新しいカセットフィルターをそれぞれ載置する。この間に加工廃液の処理は上述したように第1のカセットフィルターグループとしてのカセットフィルター4aおよび4cによって実施されるので、加工装置の作業を中断する必要はない。
【0031】
なお、図示の実施形態における加工廃液処理装置においては、第1のフィルターラック5と第2のフィルターラック6を上下に配設し、第1のフィルターラック5に2個のカセットフィルター4aおよび4bが配置されるとともに、第2のフィルターラック6に2個のカセットフィルター4cおよび4dを配置されている。そして、加工廃液送給手段8は、第1のカセットフィルターグループとしてのカセットフィルター4aおよび4cまたは第2のカセットフィルターグループとしてのカセットフィルター4bおよび4dに加工廃液を導入するように構成されているので、同時に2個のカセットフィルターによって濾過作業を実施するため、カセットフィルターの交換頻度を半減することができる。
また、図示の実施形態における加工廃液処理装置においては、上記第1のカセットフィルターグループは第1のフィルターラック5と第2のフィルターラック6に配置されたそれぞれ一方のカセットフィルター4aおよび4cからなり、第2のカセットフィルターグループは第1のフィルターラック5と第2のフィルターラック6に配置されたそれぞれ他方のカセットフィルター4bおよび4dからっているので、第1のフィルターラック5と第2のフィルターラック6に配置されたそれぞれ2個のフィルターラックのいずれか一方が常に作動していることになる。従って、第1のフィルターラック5によって形成される清水パン50と第2のフィルターラック6によって形成される清水パン60に流出する清水の量が平準化されるので、清水パン50および60の容量を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0032】
2:廃液タンク
21:廃液流入口
3:ポンプ
4a、4b、4c、4d:カセットフィルター
41:筒状の濾紙
42:筒体
421:複数の開口
43:底板
44:天板
441:廃液導入口
5:第1のフィルターラック
50:清水パン
6:第2のフィルターラック
60:清水パン
7:清水タンク
8:加工廃液送給手段
82:電磁切り換え弁
83:圧力検出手段
9:制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工廃液を収容する廃液タンクと、該廃液タンクに収容された加工廃液を送給する加工廃液送給手段と、該加工廃液送給手段によって送給された廃液を濾過するためのカセットフィルターと、該カセットフィルターを支持するとともにカセットフィルターによって廃液が濾過された清水を流出する清水流出口を備えたフィルターラックと、該フィルターラックの該清水流出口から流出した清水を貯留する清水タンクと、を具備する加工廃液処理装置において、
該フィルターラックは、該清水流出口を備えた底壁と、該底壁の外周縁から立設して設けられ該底壁とともに清水パンを形成する側壁と、該底壁の上面に配設され該カセットフィルターを載置するための支持面を備えた複数個の支持部材とを備えており、
該複数個の支持部材は、間隔がフォークリフトのフォークが侵入可能な間隔に設定され、該支持面の高さ位置が該側壁の上面から該フォークの厚みより高い位置に設定されている、
ことを特徴とする加工廃液処理装置。
【請求項2】
該フィルターラックは上下に配設された第1のフィルターラックと第2のフィルターラックとからなり、該第1のフィルターラックと該第2のフィルターラックにはそれぞれ2個のカセットフィルターが配置されており、該加工廃液送給手段は該第1のフィルターラックと該第2のフィルターラックに配置された4個のカセットフィルターのうちの2個のカセットフィルターからなる第1のカセットフィルターグループと他の2個のカセットフィルターからなる第2のカセットフィルターグループとに選択的に加工廃液を導入する、請求項1記載の加工廃液処理装置。
【請求項3】
該第1のカセットフィルターグループは該第1のフィルターラックと該第2のフィルターラックに配置されたそれぞれ一方のカセットフィルターからなり、該第2のカセットフィルターグループは該第1のフィルターラックと該第2のフィルターラックに配置されたそれぞれ他方のカセットフィルターからなる、請求項2記載の加工廃液処理装置。
【請求項4】
該加工廃液送給手段は、該廃液タンクに収容された加工廃液を送給するポンプと、該ポンプによって送給された加工廃液を該第1のカセットフィルターグループの2個のカセットフィルターに送る第1の配管と、該ポンプによって送給された加工廃液を該第2のカセットフィルターグループの2個のカセットフィルターに送る第2の配管と、該ポンプによって送給された加工廃液を該第1の配管と該第2の配管に選択的に切り換えて導入する切り換え手段と、該第1の配管と該第2の配管内の圧力を検出する圧力検出手段と、該圧力検出手段からの検出信号に基づいて該切り換え手段を制御する制御手段とを具備している、請求項2又は3記載の加工廃液処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−152854(P2012−152854A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14021(P2011−14021)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】