説明

加工糖質米

【課題】生理効果に有効といわれる糖質米において、糖質米の搗精時の歩留まりを維持しつつ、ショ糖と食物繊維含量を調整し、甘み及び口中のざらつきを抑え、おいしさを改善した糖質米を提供する。
【解決手段】(A)食物繊維を1〜2.2質量%、(B)ショ糖を2.2〜4.3質量%含有し、(A)/(B)の質量比が0.4〜0.7である搗精及びセルラーゼ処理した糖質米。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風味に優れた加工糖質米に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満の増加は栄養過多等食生活の変化が主な原因と言われ、適度な運動とともに食生活の改善が、健康の視点から重要性を増している。これまでにも、肥満を防ぐために食事療法、運動療法、薬物療法等が提案又は実施されてきた。しかしながら、食事療法は、栄養学的に正しい知識に基づく必要があり、個人や家庭で長期間継続して実施することは難しく、運動療法は、正しい知識に基づいて適度な運動量を決定する必要があり、疲労感の割にはエネルギー消費が少なく、かえって食欲を増し逆効果になる場合も少なくない。また薬物療法は副作用が懸念される等の問題を抱えている。
【0003】
前述したように食事療法には、栄養学的に正しい知識に基づく必要があり、また、見た目に明らかに食事量を減らした状態や代替的な食材に置き換えたことが外観的にも食味的にも明らかである状態での食事は満足感に乏しく、継続しにくい面もある。
【0004】
そこで従来の食品同様に違和感無く摂取しながら抗肥満効果や抗血糖効果が得られるような食品が提案されてきた。例えば、発芽処理した玄米を利用したもの(特許文献1)、うるち米に顆粒状コンニャク等を配合したもの(特許文献2)、難消化性デキストリンなどの食物繊維を添加したもの(特許文献3)などが知られている。
【0005】
また特に日本の食文化の観点から日本人の主食である米に対し、健康機能と食味を両立する米についての提案として、食物繊維を1.6〜4.3質量%、ショ糖を2〜5質量%含有するように搗精した糖質米が提案されている(特許文献4)。
【0006】
しかしながら、糖質米は同じ搗精条件の場合、コシヒカリや夢十色などの通常米(非糖質米)に比べて、玄米表層にショ糖が多く、主食としていろんな副菜と共に長期間食べ続けるには、甘みの観点から問題があった。またこの課題を解決する為に単に搗精条件を変更し、搗精度を高めることは、精米の歩留まりが低下するなどの新たな課題が発生した。
【0007】
一方、酵素による米粒の処理方法としては、例えば無洗米を炊飯する時の浸漬時間を短縮する為に、澱粉分解酵素α−アミラーゼ、蛋白質分解酵素プロテアーゼ及び植物組織崩壊酵素ペクチナーゼを同時に作用させる方法(特許文献5)、キシラーゼにより米粒の胚乳細胞壁の一部を分解し、食味を向上させる方法(特許文献6)、リン酸含有液にペクチナーゼとプロテアーゼを混合して白米を処理する方法(特許文献7)、米の澱粉細胞を分解し、炊飯時間を短縮する為に白米を炊飯する際にセルラーゼを使用する方法(特許文献8)などがある。しかしながら、いずれの技術もいわゆる白米に関する処理方法であり、搗精条件の異なる米粒に対する知見はなく、また炊飯時間の短縮や餅状整形体の製造に関するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−9810号公報
【特許文献2】特開平10−28554号公報
【特許文献3】特開2001−57854号公報
【特許文献4】特開2007−151446号公報
【特許文献5】特開2006−115818号公報
【特許文献6】特開平2−79944号公報
【特許文献7】特開2000−189086号公報
【特許文献8】特開2000−245365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記従来技術に記載した通り、糖質米は搗精度を高めることにより甘みは抑えられるが歩留まりが低下するという課題があるが、搗精度が低いままでは繊維質を多く含むため、食した際に口中のざらつきが感じられるという課題があることも見出した。
従って、本発明は、生理効果に有効といわれる糖質米において、糖質米の搗精時の歩留まりを維持しつつ、ショ糖と食物繊維含量を調整し、甘み及び口中のざらつきを抑え、おいしさを改善した糖質米を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、糖質米を食物繊維とショ糖が特定量になるように搗精し、その後、特定の酵素であるセルラーゼ酵素で処理することにより、糖質米中の食物繊維とショ糖のバランスを調節することで、糖質米の甘みを制御しつつ、食物繊維感として感じる口中のざらつきが改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、(A)食物繊維を1〜2.2質量%、(B)ショ糖を2.2〜4.3質量%含有し、(A)/(B)の質量比が0.4〜0.7である搗精及びセルラーゼ処理した糖質米を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の糖質米は、従来の糖質米に比べて甘みが抑えられると共に、口中のざらつきが低減されるため、高血糖や肥満の予防又は抑制のための食品として長期間食べ続けるのに有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用する「糖質米」とは、糖類の蓄積異常を示す変異体、すなわちシュガリー(sugary)変異体からなる米品種を意味する。具体的には、糖質米は、フィトグリコーゲンを含む水溶性多糖を従来の食用米よりも多く含むことを特徴としている。好ましくは、本発明の原料として用いる糖質米の水溶性多糖含量は乾燥質量あたり3質量%(以下、単に「%」と記載する)以上、より好ましくは7〜70%、より好ましくは9〜20%である。なお、非糖質米であるコシヒカリやシュランケン(shrunken)変異体における水溶性多糖含量はそれぞれ高々0.5%、2〜3%に過ぎない。
【0014】
前記シュガリー変異体には、1)澱粉はそれほど少なくないが水溶性多糖(例えば、フィトグリコーゲン)含量がやや多いもの(sugary-2)、2)澱粉含量が著しく少なく水溶性多糖が多いが全糖量がそれほど多くないもの(sugary-1)、3)水溶性多糖含量とともに全糖量が著しく多いものが含まれる。本発明の糖質米には、このような変異体のいずれも含まれる。
【0015】
一般に米の胚乳断面は約40×50〜80×105μm2の大きさ胚乳細胞壁が重なっており、主にセルロース、ヘミセルロース、ぺクチン性物質等の食物繊維より構成され、この細胞の中に澱粉粒や顆粒状タンパク質が充満している(渋谷直人、米の細胞壁の化学構造と品質、日本食品工業学会誌、37、p740-748(1990)より)。
【0016】
糖質米の胚乳には、非糖質米より食物繊維が多く含まれている。例えば歩留91〜92%程度搗精したコシヒカリ、ハクチョウモチ、夢十色、ミルキークイーンなどの非糖質米の食物繊維含量は0.5〜0.9%であるのに対し、歩留93%に搗精した糖質米であるあゆのひかりの食物繊維含量は4%を超える(後記する表1)。歩留82%、65%、40%となるに従って食物繊維量は減少するものの、40%においても食物繊維が1.5%含まれる。
なお、本発明における「食物繊維」とは、後述する「プロスキー変法」にて分析されるものをいい、そのほとんどが水不溶性のものである。
【0017】
本発明で使用可能な糖質米の例としては、特に限定するものではないが、あゆのひかり、EM5、EM41、EM273、EM75等を挙げることができる(佐藤光、日本農芸化学会誌、68巻、11号、p1557-1580(1994))。また、糖質米のその他の例としては、あゆのひかり、EM5、EM41、EM273、EM75等を親株とし、他の品種と交配して得られる、本発明の糖質米の特徴を有する交配品種も挙げることができる。
【0018】
好ましい糖質米は、あゆのひかりであり、北陸研究センター(新潟県)によって入手可能である。この品種は、胚乳糖質突然変異品種EM5と多収穫品種奥羽311号(ふくひびき)との交配品種である。ここでEM5は、イネ(金南風)の開花受精直後の1細胞期受精胚にN-メチル-N-ニトロソウレア等を用いて処理する受精胚処理法によって澱粉以外の糖含量や水溶性多糖含量が改変されたものである。
【0019】
本発明の原料として用いる糖質米は、玄米表層にショ糖が多く、また食物繊維が多いため、非糖質米と同様に食したのでは甘みが強く、また食物繊維感が高く口中でざらつく。そのため、本発明の糖質米は、(A)食物繊維を1〜2.2%、(B)ショ糖を2.2〜4.3%の範囲とし、(A)/(B)を0.4〜0.7の範囲とすることで、これらの課題を解決した。そして、これらの要件を満たすために、玄米の搗精とセルラーゼ処理を行う。
(A)食物繊維の含有量は、更に1〜2%、特に1〜1.5%とすることが、口中でのざらつきを低減させる点から好ましい。(B)ショ糖の含有量は、更に2.2〜4%、特に2.2〜3%とすることが、甘みを抑制する点から好ましい。(A)/(B)の範囲は、更に0.4〜0.6、特に0.4〜0.5とすることが、甘みの抑制と口中のざらつきの低減の両立の点から好ましい。
【0020】
本発明にかかる糖質米とするには、糖質米の玄米を、精米機、無洗米機等で搗精して玄米表層を除去することが好ましい。搗精の度合いは、質量換算で玄米に対し60〜90%、好ましくは70〜90%、より好ましくは75〜85%、特に好ましくは80〜85%の歩留とすることが、糖質米玄米の糠層〜胚乳表層に含有する着色成分及び不味成分が除去されると共に玄米表層に多く含まれるショ糖が除去され、甘みが抑制される点から好ましい。
【0021】
本発明においては、糖質米の玄米を搗精した後にセルラーゼ処理を行うことが、甘みを抑え、口中のざらつきを低減させる点から好ましい。セルラーゼ処理は、糖質米1gに対し、エンドグルカナーゼ活性として5〜150units、更に10〜130units、特に20〜120units、殊更50〜100unitsのセルラーゼで処理することが、口中のざらつきを低減させる点から好ましい。このとき、セルラーゼは水溶液とし、これに糖質米を浸すことが、効果的に処理できる点から好ましい。
【0022】
本発明において、セルラーゼ処理の時間は15〜120分、更に40〜80分、特に50〜70分とすることが、処理効率、口中のざらつきを有効に低減できる点から好ましい。セルラーゼ処理の温度は10〜80℃、更に15〜50℃、特に20〜40℃とすることが、酵素活性を良好に保ち、口中のざらつきを有効に低減できる点から好ましい。
【0023】
本発明で使用されるセルラーゼとしては、セルロース等のβ-1,4-グルカンのグリコシド結合を加水分解するものであれば特に限定されない。例としてはトリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、アスペルギルス アクレアタス(Aspergillus acleatus)、クロストリジウム サーモセラム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム ジョスイ(Clostridium josui)、セルロモナス フィミ(Cellulomonas fimi)、アクレモニウム セルロリティクス(Acremonium celluloriticus)、イルペックス ラクテウス(Irpex lacteus)、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)、フミコーラ インソレンス(Humicola insolens)、パイロコッカス ホリコシ(Pyrococcus horikoshii)由来のセルラーゼ等が挙げられる。
これらの中で、好ましくはトリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)由来のセルラーゼ、例えばセルクラスト1.5L(novozymes)を用いることにより、効率良く食物繊維のコントロールができる。
胚乳細胞壁は、セルロース、ヘミセルロース及びぺクチン性物質等の食物繊維より構成される。しかし、本発明においては、意外にもセルラーゼにのみ食物繊維感、即ち口中のざらつきを低減する効果が見出された。
【実施例】
【0024】
(米の成分分析試験)
<方法>
糖質米としては玄米あゆのひかり(北陸研究センター、新潟県)を、非糖質米としては玄米コシヒカリ(新潟県)、玄米ハクチョウモチ(北海道)、玄米夢十色(千葉県)及び玄米ミルキークイーン(三重県)をテストミルTM05((株)サタケ社製、金剛ロール#40、ロール回転数750rpm)で搗精して、歩留93%、82%、70%、65%、40%のあゆのひかり、歩留92%のコシヒカリ、歩留91%のハクチョウモチ、歩留91%の夢十色、及び歩留91%のミルキークイーンを得た。
各米試料のデンプン、ショ糖、全糖、食物繊維含量につき(財)日本食品分析センターにより定量分析し、表1に示した。
【0025】
【表1】

【0026】
<結果>
歩留91〜92%搗精したコシヒカリ、ハクチョウモチ、夢十色、ミルキークイーンなどのショ糖量は0.1〜0.4%、また食物繊維含量は0.5〜0.9%であるのに対し、歩留93%のあゆのひかりのショ糖は5%を超え、また食物繊維含量は4%を超えた。
【0027】
実施例1、2及び比較例1〜3
<方法>
使用した酵素を表2に示す。酵素処理量は生米1gに対し10unitsの処理で試験した。試験米は、歩留82%のあゆのひかりを使用した。生米100gをビーカーに秤量し酵素1000unitsを含む酵素水溶液160mLを加えた。室温で1時間浸漬した後に、オートクレーブにより120℃、10分間加圧加熱して炊飯米を得た。その後以下に示す、食物繊維の分析、ショ糖の分析、炊飯粒状態評価、風味評価および炊飯物性評価を行った。食物繊維及びショ糖の含有量分析は、前記炊飯米を凍結乾燥した後、粉砕機にて粉砕した試料を用いて行った。
【0028】
【表2】

【0029】
[食物繊維の分析法]
プロスキー変法(酵素−重量法)(分析実務者が書いた五訂日本食品標準成分表 分析マニュアルの解説、編集者:財団法人 日本食品分析センター、発行者:中央法規出版(株)、2001年発行、66〜72頁)により定量分析した。
[ショ糖の分析法]
粉砕試料2〜2.5gに50容量%エタノール(和光純薬工業:残留・PCB試験用エタノール、超純水)を加え超音波抽出した。50mLに定容後、ろ過(ADVANTEC:No.5B)し、ろ液を濃縮乾固した。超純水添加後、メンブランフィルター(東ソー:水系フィルター(孔径0.45μm))にてろ過したろ液を試料溶液とし、クロマトグラフィーによりショ糖含量を求めた。
高速液体クロマトグラフ条件
・インジェクション量:20μL
・機種:LC-10ADvp(島津製作所)
・検出器:示差屈折計 RID-10A(島津製作所)
・カラム:Wakosil 5NH2 φ4.6mm×250mm(和光純薬工業)
・容離液:アセトニトリル/超純水=75/25(v/v)(アセトニトリル:和光純薬工業HPLC用)
・ショ糖標準試薬:和光純薬工業、試薬特級
【0030】
[炊飯米物性評価]
炊飯米を市販ラップにて包装、密封し、室温2時間保存後炊飯米10gを量りとり、テンシプレッサー(タケトモ電機(株)製)で米飯の硬さを測定した。測定は米飯2×3測定解析おけるH5チャートで解析を行い、測定条件の詳細を表3に示した。5回測定の平均値を評価値とした。
【0031】
【表3】

【0032】
[炊飯粒状態]
炊飯直後の米粒の状態を目視評価した。
[官能評価]
炊飯直後の炊飯米の「甘み」及び「口中のざらつき」について、5名のパネルにより以下の評価軸で評価し、その平均値を評価値とし、表4に示した。なお、両評価の平均値を四捨五入した値を「総合評価」とした。
1)甘み評価
3:甘みを程よく感じる
2:甘みをやや感じる
1:甘みを強く感じる
2)口中のざらつき評価
3:ざらつきを感じない
2:ざらつきを感じる
1:ざらつきを強く感じる
【0033】
【表4】

【0034】
<結果>
表4に示すとおり、比較例1の酵素無添加では、総合評価が2であり、特に口中のざらつきを強く感じた。比較例2のヘミセルラーゼと比較例3のペクチナーゼ処理においても同様の結果であり、改善は認められなかった。一方、実施例1のセルラーゼ1(Trichoderma reesei.由来)と実施例2のセルラーゼ2(Aspergillus niger由来)においては、共に総合評価が3となり、甘みをやや感じるものの口中のざらつきが改善され、セルラーゼ処理の効果が認められた。テンシプレッサーにおいても比較例1〜3は1.5〜1.6kgwであるのに対し、実施例1及び2はそれぞれ1.41及び1.37kgwとなり、硬さの改善が認められた。
【0035】
実施例3、4及び比較例4〜7
表1に示すとおりコシヒカリ、ハクチョウモチ、夢十色、ミルキークイーンの非糖質米のショ糖は最大でコシヒカリの0.42%であるのに対し、あゆのひかりは搗精度を歩留40%まで落としても約4倍のショ糖が含まれていた。また、非糖質米の食物繊維量は、0.6〜0.9%であるのに対し、あゆのひかりは一般的な搗精度である93%で4.4%含有していた。また搗精度を高めるに従い、食物繊維量が減少し、歩留40%においては1.5%まで低下することが分かった。そこで搗精度と酵素処理による総合評価への影響を評価した。
【0036】
<方法>
酵素についてはセルラーゼ1で処理した。酵素処理量は生米1gに対しエンドグルカナーゼ活性として100unitsの処理を施した。試験米としては、歩留92%、82%、65%、55%のあゆのひかりを使用した。歩留92%、82%、65%、55%の各歩留のあゆのひかりをセルラーゼ処理し、無添加と比較した。酵素水溶液処理条件、他の炊飯条件及び評価項目は、前述の「各種酵素による風味影響試験」に示した方法と同様に行った。結果を表5に示した。なお、セルラーゼ未処理のものとの比較のため、表5に比較例1を再掲した。
【0037】
【表5】

【0038】
<結果>
表5に示すとおり、歩留65%、82%のあゆのひかりにおいては、それぞれセルラーゼ処理なしと比較し、口中のざらつきの改善およびテンシプレッサーにおける硬さの改善が認められた。一方、歩留92%のあゆのひかりでは、セルラーゼ処理の有無に関わらず甘み、口中のざらつき共に改善効果が低かった。また歩留55%のあゆのひかりでは、搗精により米粒の粒子が小さくなり過ぎてしまい、甘みや口中のざらつきの評価は良いものの、米粒としての食感が悪くなってしまった(比較例4)。これらのことから搗精の最適な範囲は歩留65〜82%の範囲であることがわかった。また搗精歩留82%では米粒の粒子が程良く、食感が特に良好であった。
【0039】
実施例5〜7、比較例8及び9
<方法>
セルラーゼ処理量についてはセルラーゼ1を使用し、歩留82%のあゆのひかり生米1gに対しエンドグルカナーゼ活性として0、0.5、10、50、100、500unitsで処理した。他の炊飯条件及び評価項目は、前述の「各種酵素による風味影響試験」に示した方法と同様に行った。結果を表6に示した。なお、セルラーゼ未処理のものとの比較のため、表6に比較例1を再掲した。
【0040】
【表6】

【0041】
<結果>
表6に示すとおり、酵素無添加の比較例1は総合評価が2であるのに対し、米1gに対しエンドグルカナーゼ活性としてセルラーゼを10〜100units添加処理すると(実施例5〜7)、口中のざらつきが改善され、テンシプレッサーにおいても硬さの改善が認められた。セルラーゼ0.5units添加(比較例8)では改善効果が低く、500units(比較例9)では炊飯米の米粒同士が結着した大きな塊(餅様形状)となり炊飯米として食するには不適であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)食物繊維を1〜2.2質量%、(B)ショ糖を2.2〜4.3質量%含有し、(A)/(B)の質量比が0.4〜0.7である搗精及びセルラーゼ処理した糖質米。
【請求項2】
前記搗精が、歩留60〜90質量%となるように処理したものである請求項1記載の糖質米。
【請求項3】
前記セルラーゼ処理が、糖質米1gに対し、エンドグルカナーゼ活性として5〜150unitsのセルラーゼで処理したものである請求項1又は2記載の糖質米。
【請求項4】
前記搗精後の糖質米に対して前記セルラーゼ処理したものである請求項1〜3のいずれか1項記載の糖質米。

【公開番号】特開2011−155939(P2011−155939A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21950(P2010−21950)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】