説明

加工装置

【課題】薄板状のワークを自動的に立ち上げ、組立工数または組立時間などの増大を抑制すること。
【解決手段】折り曲げ位置においてワークの表面にエッジ部32が接するよう本体に取り付けられたエンドブロック12と、本体に対し、基材の表面に沿ってかつワークの折り曲げ方向に沿って移動可能にかつ折り曲げ方向を含む平面内において回動可能に支持された爪部材61と、ワークの表面に吸着可能であってかつ吸着した状態でワークを基材の表面から離す方向に移動可能なように配置された吸着パッド71と、を備え、爪部材61は、吸着パッドがワークの表面に吸着しかつワークを基材の表面から離す方向に移動することによってワークの先端部を基材の表面から浮かせた状態で、当該爪部材の移動にともなってワークの裏面に入り込み、当該爪部材がエンドブロック12に当接することによって回転してワークを起こして折り曲げるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面に配置された薄板状のワークを起こして折り曲げる加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、住宅の屋根などに太陽電池パネルを設置し、クリーンな太陽エネルギを直接に電力に変換する住宅用太陽光発電システムが注目されている。
【0003】
太陽電池パネルは、例えば、単結晶シリコンや多結晶シリコンからなる複数の太陽電池セルをEVA樹脂などの透明接着層を介してガラス板などに貼り付けるとともに、太陽電池セルの裏面側にPET樹脂やPVFの間にアルミニウムをサンドイッチしたバックフィルム(裏面防湿層)が貼り付けて構成される(特許文献1)。
【0004】
太陽電池パネルには、発電された電力を取り出すために、2本または複数本の銅箔などからなる薄い帯状のブスバー(電極線)が、バックフィルムの電極挿通孔を経て外部に引き出される。ブスバーは、太陽電池本体の製造工程中において、その裏側の表面に沿って寝た状態で設けられるが、端子ボックスの端子に接続するために、ほぼ直角の状態に折り曲げて起こす必要がある。太陽電池本体の表面に対してほぼ直角に起立した状態のブスバーに、端子ボックスを被せ、ブスバーの先端部を端子の端子穴に挿入し、必要に応じて折り曲げる(特許文献2)。
【0005】
従来において、太陽電池セルの表面に沿って寝た状態のブスバーを起こして立ち上がった状態とするための作業は手作業で行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−302595号
【特許文献2】特開2005−236206号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上に述べたように、従来において、太陽電池セルの表面に沿って寝た状態のブスバーを立ち上がった状態とするための作業は手作業で行われており、自動化は行われていなかった。
【0008】
そのため、太陽電池パネルの組立工数が増大してコスト的な問題または組立工程における所要時間の増大などの問題があった。
【0009】
特に、太陽電池パネルの高性能化によって、1つの太陽電池本体に多数のブスバーが設けられることがあり、その場合には、それら多数のブスバーを立ち上がった状態とするために多くの時間を要することとなっていた。
【0010】
また、手作業であるために品質のばらつきが生じる可能性があり、この点においても改善の余地があった。
【0011】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、太陽電池本体などの基材の表面に配置されたブスバーのような薄板状のワークを自動的に立ち上げ、組立工数または組立時間などの増大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る装置は、基材の表面に配置された薄板状のワークを起こして折り曲げる加工装置であって、本体と、折り曲げ位置において前記ワークの表面にエッジ部が接するよう前記本体に取り付けられたエンドブロックと、前記本体に対し、前記基材の表面に沿ってかつ前記ワークの折り曲げ方向に沿って移動可能にかつ前記折り曲げ方向を含む平面内において回動可能に支持された爪部材と、基材の表面に配置された状態の前記ワークの表面に吸着可能であってかつ前記吸着した状態で前記ワークを前記基材の表面から離す方向に移動可能なように配置された吸着パッドと、を備え、前記爪部材は、前記吸着パッドが前記ワークの表面に吸着しかつ前記ワークを前記基材の表面から離す方向に移動することによって前記ワークの先端部を前記基材の表面から浮かせた状態で、当該爪部材の前記移動にともなって前記ワークの裏面に入り込み、当該爪部材が前記エンドブロックに当接することによって回転して前記ワークを起こして折り曲げるように構成されている。
【0013】
好ましくは、前記本体には、前記基材の表面に沿ってかつ前記ワークの折り曲げ方向に沿って移動可能な移動ブロックが設けられ、前記爪部材は、前記移動ブロックに対して回動可能に支持される。
【0014】
また、前記移動ブロックには、カム面が設けられており、前記吸着パッドは、前記移動ブロックが移動したときに前記カム面の変化に応じて移動可能に設けられている。
【0015】
また、前記吸着パッドは、前記本体に取り付けられた調整シリンダによって移動可能に設けられる。
【0016】
また、前記爪部材は、前記基材の表面に摺接する底面と、前記ワークの裏面に入り込んで摺接する面であって前記底面における前記エンドブロックに近い側において前記底面に対し鋭角で交わるワーク起こし面とを有し、前記ワーク起こし面から所定の距離だけ離れた回動軸を中心に回動可能に支持される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、太陽電池本体などの基材の表面に配置されたブスバーのような薄板状のワークを自動的に立ち上げ、組立工数または組立時間などの増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態の加工装置の正面図である。
【図2】加工装置の左側面図である。
【図3】加工装置の背面図である。
【図4】加工装置の平面図である。
【図5】加工装置によるブスバーの立ち上げ加工の過程を示す図である。
【図6】加工装置によるブスバーの立ち上げ加工の過程を示す図である。
【図7】加工装置によるブスバーの立ち上げ加工の過程を示すタイミング図である。
【図8】太陽電池本体の裏側の表面から見た様子を示す図である。
【図9】ブスバーの状態を示す側面図である。
【図10】第2の実施形態の加工装置を示す正面図である。
【図11】第2の実施形態の加工装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態では、太陽電池本体の表面に配置されたブスバーを起こして折り曲げる加工装置について説明する。
【0020】
図8には太陽電池本体TDの裏側の表面に設けられた2本のブスバーBBが示されている。
【0021】
太陽電池本体TDは、正面視および背面視が長方形の薄板状のものである。太陽電池本体TDの表側の表面は太陽光の受光面であり、裏側の表面H2には発電された電力を取り出すための複数のブスバーBBが取り付けられている。
【0022】
ブスバーBBは、銅などの金属からなり、幅が5mm程度、厚さが0.1mm程度の薄い帯状の電極線である。ブスバーBBは、折り曲げが可能であり、また半田付けが可能である。
【0023】
ブスバーBBは、太陽電池本体TDの製造工程中において、その裏側の表面H2に沿って寝た状態で設けられる。図示しない端子ボックスの端子に接続するために、本実施形態の加工装置1によってほぼ直角の状態に折り曲げて起立される。
【0024】
図9にはブスバーBBの側面形状の例が示されている。
【0025】
図9(A)では、ブスバーBBOは、太陽電池本体TDの表面H2に沿って寝た初期の状態である。
【0026】
図9(B)では、ブスバーBB1は、太陽電池本体TDの表面H2に対して垂直に起立した状態である。
【0027】
図9(C)では、ブスバーBB2は、太陽電池本体TDの表面H2に対して垂直よりも小さい角度で斜めに起立した状態である。
【0028】
図9(D)では、ブスバーBB3は、太陽電池本体TDの表面H2に対して垂直に起立し、先端部において斜めに折れて曲がっている状態である。
【0029】
ブスバーBBは、これら以外に、緩い円弧を描いた形状、くの字形に曲がった形状など、他の種々の形状とすることが可能である。
【0030】
なお、図において、ブスバーBBはその全体が太陽電池本体TDの表面H2に露出した状態となっているが、実際には、ブスバーBBの一部が、太陽電池本体TDの表面H2を形成するバックフィルムの内部に入り込んでいる。
【0031】
また、ブスバーBBには、その保護などのために、表面H2に露出した部分の根元の近辺において、それぞれのブスバーBBごとにまたは複数のブスバーBBに渡って、合成樹脂などからなるフィルム材が張り付けられることがある。
【0032】
図9(B)〜(D)のように起立した状態のブスバーBBに、例えば、端子ボックスを被せ、ブスバーBBを曲線状に曲げながらその先端部を端子の端子穴に挿入する。そして、端子と端子に挿入したブスバーBBの先端部とを半田付けにより接続して固定する。端子ボックスは、例えば太陽電池本体TDの裏側の表面H2に接着される。このようにして太陽電池パネルTPが完成する。
【0033】
本実施形態においては、図9(A)に示す状態のブスバーBBに対し、まず、折り曲げ位置(折り曲げ予定位置)において、ブスバーBBの上にエンドブロックのエッジ部が載るように配置する。次に、ブスバーBBの先端部を吸着パッドで吸着した状態で、吸着パッドを若干上方へ引き揚げる。これによって、ブスバーBBの先端部を太陽電池本体TDの表面H2から少し浮かせる。
【0034】
そして、浮かせたブスバーBBの先端部の隙間に爪部材を挿入し、さらに爪部材をエンドブロックの方に向かって移動させ、ブスバーBBを起こしていく。ブスバーBBは、エンドブロックのエッジ部において折り曲げられていく。
【0035】
爪部材は、その移動にしたがって、最初に爪部材の先端部がエンドブロックのエッジ部に近い位置に当接するが、当接によって爪部材の先端部のそれ以上の移動が妨げられるので、その後、爪部材は回動軸を中心に回動する。
【0036】
なお、爪部材は、回動軸によって回動可能に支持され、かつ、自由状態では初期の姿勢が維持されるようにバネ部材などによって回動方向原位置に向かって付勢されている。
【0037】
ブスバーBBは、爪部材の回動によってさらに折り曲げられ、最後に、爪部材の表面(ワーク起こし面)とエンドブロックとにより挟まれてプレスされ、図9(B)〜(D)のような形状に形成される。
【0038】
なお、吸着パッドは、爪部材がブスバーBBの先端部の隙間に挿入された直後に、吸着を解除し、上方に移動して退避する。
【0039】
次に説明する第1の実施形態の加工装置1は、このような一連の動作を、1つの流体圧シリンダによる移動駆動とカム機構とによって実現する。
〔第1の実施形態〕
図1〜図4には加工装置1の外形が示されている。
【0040】
図1〜図4において、加工装置1は、本体11、エンドブロック12、空気圧シリンダ13、移動ブロック14、爪装置15、および吸着装置16などを備える。
【0041】
本体11は、加工装置1の全体を支持する構造体であり、金属または合成樹脂などによるフレーム材、ブロック材、および板材などが、ボルトなどにより一体的に連結されることによって構成される。
【0042】
図に示す例では、本体11は、鉛直方向に配置された基板21,22、これら基板21,22の上端面に当接して水平方向に配置された連結板23などからなる。基板21と基板22とは、互いに直角の角度を有して配置されている。
【0043】
これら、基板21,22および連結板23は、いずれも鉄鋼などの金属材料からなる板状のものであり、ボルトによって互いに一体に連結されている。
【0044】
連結板23は、移動装置17に連結されて固定される。移動装置17によって、加工装置1は、太陽電池本体TDが配置された三次元空間において任意の位置に移動され位置決めされる。そのような移動装置17として、種々の構造、方式、形状の装置を用いることができる。例えば、多関節ロボット、または複数のXYテーブルを組み合わせたXYZ位置決め装置などを移動装置17として用いることができる。
【0045】
エンドブロック12は、ブスバーBBの折り曲げ位置においてブスバーBBの表面にエッジ部32が接するように配置されている。
【0046】
すなわち、エンドブロック12は、基板21の下端部に取り付けられたブロック24に取り付けられている。エンドブロック12の前側面31は垂直な平面であり、前側面31と水平な底面との境界にある辺部が、エッジ部32となっている。
【0047】
なお、図には示されていないが、エッジ部32の両側にブスバーBBを案内するためのガイド部材を設けてもよい。ガイド部材を設けることによって、ブスバーBBをより正確に折り曲げることができる。
【0048】
空気圧シリンダ13は、2つの給排ポートPT1,PT2に圧縮空気を交互に供給することにより、ピストンおよびピストンロッド41が伸縮する複動型の作動シリンダである。空気圧シリンダ13には、ピストンロッド41の両側にガイドロッド42,42が設けられており、ピストンロッド41およびガイドロッド42,42の先端部に先端ブロック43が取り付けられている。
【0049】
空気圧シリンダ13は、基板22の表面にボルトによって固定されており、ピストンロッド41が往復直線駆動することによって、先端ブロック43が図1の左右方向に移動駆動される。
【0050】
移動ブロック14は、鉄鋼などの材料からなる板状のものであり、先端ブロック43にボルトなどで取り付けられている。したがって、空気圧シリンダ13によって先端ブロック43が移動すると、移動ブロック14は先端ブロック43と一体に移動する。
【0051】
移動ブロック14には、その上端面にカム面51が設けられており、後述するように、カム面51の変化に応じて吸着パッド71が上下移動する。カム面51は、最も低い水平面51a、傾斜面51b、および最も高い水平面51cの3つの平面が連続して構成される。
【0052】
爪装置15は、爪部材61、回動軸62、ベアリングユニット63、および回動原位置調整装置64などを有する。
【0053】
爪部材61は、図1に示すように、正面視で平行台形の幾何学上の底辺に矩形状のものが接続された形状である。つまり、爪部材61は、太陽電池本体TDの表面H2に摺接する底面61a、および、ブスバーBBの裏面に入り込んで摺接する面であって底面61aにおけるエンドブロック12に近い側において底面61aに対し鋭角(この例では45度)で交わるワーク起こし面61bを有する。底面61aとワーク起こし面61bとの交わる稜線が先端部61cである。
【0054】
回動軸62は、移動ブロック14に取り付けられたベアリングユニット63によって回転可能に支持されている。回動軸62は、ベアリングユニット63および移動ブロック14を貫通し、その両側端に突出している。回動軸62の一方の端部に爪部材61が固定され、他方の端部に回動原位置調整装置64が設けられる。
【0055】
つまり、爪部材61は、回動軸62によって回動可能に支持されており、回動軸62から所定の距離だけ離れた位置にワーク起こし面61bが存在するような配置となっている。
【0056】
回動原位置調整装置64は、回動軸62の回動角度を調整して規制するものである。つまり、回動軸62と一体に回転するように固定された回動原位置調整装置64には、移動ブロック14に取り付けられた調整板65にネジ込まれた調整ネジ66の先端が当接し(図2、図4参照)、これによって爪部材61の原位置が規定される。爪部材61の原位置は、調整ネジ66によって調整することができる。
【0057】
また、ベアリングユニット63と回動原位置調整装置64との間において、回動軸62の外周面にはコイルバネ67が装着される。コイルバネ67は、圧縮された状態において、その両端部がベアリングユニット63および回動原位置調整装置64に係止され、これにより、自由状態において回動原位置調整装置64が調整ネジ66の先端に当接するように付勢されている。
【0058】
したがって、爪部材61は、図1に示す原位置に対して、右方向への回転は可能であるが左方向への回転は不能となっており、かつ、左方向に付勢されて自由状態において原位置に復帰するようになっている。
【0059】
このようにして、爪部材61は、本体11に対し、太陽電池本体TDの表面に沿ってかつブスバーBBの折り曲げ方向に沿って移動可能であり、かつ、折り曲げ方向を含む平面内において回動可能なように回転軸62によって支持された状態である。
【0060】
したがって、移動ブロック14が移動すると、爪部材61の底面61aが、太陽電池本体TDの表面に沿って移動する。爪部材61が移動したときに、ワーク起こし面61bがブスバーBBの裏面に入り込み、その移動にともなってブスバーBBを起こしていく。
【0061】
吸着装置16は、吸着パッド71、支持板72、倣い装置73、および支持ガイド74などを備える。
【0062】
吸着パッド71は、先端(下端)に合成ゴム材料などからなるパッドを備え、負圧によってブスバーBBの表面に吸着する。上端部に負圧を供給するためのチューブ接続口が設けられ、そこに接続されたチューブは、真空ポンプなどの図示しない負圧供給装置に接続される。
【0063】
支持板72は、金属材料などからなる帯状の板材を正面視で略コ字形に折り曲げたものであり、下端部に吸着パッド71が取り付けられ、上端部に倣い装置73が取り付けられる。
【0064】
倣い装置73は、調整シリンダ731、ブラケット732、およびローラ733などを備える。
【0065】
調整シリンダ731は、吸着パッド71を上下方向に若干移動させるためのものであり、常時はロットが収縮しているが、下端部に設けられたポートに圧縮空気を供給することによりロッドが伸長移動する単動型のものである。複動型のものでもよい。調整シリンダ731のストロークは、例えば数ミリメートル程度である。
【0066】
調整シリンダ731は、そのロッドの先端部が支持板72の上端部に取り付けられ、シリンダチューブの外周にブラケット732が取り付けられる。
【0067】
ブラケット732は、帯状の板材を側面視で略L字形に折り曲げたものであり、上に述べたように上面はシリンダチューブの外周に取り付けられ、側面の下端部にローラ733が取り付けられる。
【0068】
ローラ733は、移動ブロック14の上端面に設けられたカム面51に当接して回転する。ローラ733として、例えばカムフォロアが用いられる。移動ブロック14の移動にしたがってカム面51の高さが変化し、それに応じてローラ733が上下移動する。ローラ733が上下移動すると、ブラケット732、調整シリンダ731、および支持板72が一体的に上下移動する。
。支持ガイド74は、基板21に取り付けられた2つの支持ブロック741,741、支持ブロック741,741によって支持された鉛直方向に延びるガイドロッド742、および、ガイドロッド742に沿って摺動可能な摺動ブロック743などを有する。
【0069】
摺動ブロック743には支持板72に取り付けられており、これにより、支持板72は上下方向にのみ移動可能に支持される。
【0070】
したがって、空気圧シリンダ13の駆動による移動ブロック14の水平方向の移動にともなって、カム面51の高さの変化に応じて吸着パッド71が上下移動する。
【0071】
吸着パッド71がブスバーBBを吸着する際には、ローラ733は水平面51a上にあり、爪部材61がブスバーBBに接近すると、ローラ733は傾斜面51bに沿って上昇し、これにともなって吸着パッド71が上昇して退避を開始する。爪部材61がエンドブロック12に到達する時点において、ローラ733は水平面51cに達し、吸着パッド71は最も高い位置に退避する。
【0072】
次に、図5〜図7を参照して、加工装置1による加工動作を説明する。
【0073】
図5および図6には、加工装置1によるブスバーBBの立ち上げ加工の過程が示されている。図7には、ブスバーBBの立ち上げ加工の過程における各部の動作状態が示されている。以下の説明において、時刻t0〜t9については図7を参照すればよい。
【0074】
加工装置1は、搬送中の太陽電池本体TDに対し、退避した位置において待機しているが、太陽電池本体TDが搬送されてきて加工ステーションに位置決めされると、加工装置1は移動装置17によって移動され、時刻t0において太陽電池本体TDに対して所定の位置に位置決めされる。
【0075】
つまり、太陽電池本体TDに対し、エンドブロック12のエッジ部32が、ブスバーBBの折り曲げ位置に位置決めされる。
【0076】
図5(A)には、時刻t0における爪装置15の初期状態が示されている。
【0077】
図5(A)に示すように、吸着パッド71は、ブスバーBBの先端部の表面に接触しており、時刻t1において負圧が供給されると、吸着パッド71がブスバーBBの先端部の表面に吸着する。なお、この状態では、調整シリンダ731のポートに圧縮空気が供給されてロッドが伸長しており、吸着パッド71は下端位置にある。
【0078】
図5(B)に示すように、時刻t2において調整シリンダ731への圧縮空気の供給が遮断され、調整シリンダ731のロッドが収縮して上端に移動する。これによって吸着パッド71が若干持ち上げられて中間位置となる。
【0079】
これにともなって、時刻t3において、ブスバーBBの先端部が持ち上げられて太陽電池本体TDの表面H2から少し浮き上がる。時刻t3の近辺において空気圧シリンダ13が前進駆動され、これによって爪部材61が前進移動し、爪部材61の先端部61cがブスバーBBの裏側に入り込む。
【0080】
図5(C)に示すように、爪部材61のさらなる移動にともなって、ブスバーBBがワーク起こし面61bによって徐々に起こされる(時刻t4の近辺)。このとき、ブスバーBBは、エンドブロック12のエッジ部32において折り曲げられる。吸着パッド71は、爪部材61の先端部61cがブスバーBBの裏側に入り込んだ後の適当なタイミング(時刻t3の後)において負圧の供給が遮断されて離脱状態となる。そして、ローラ733が傾斜面51bに沿って上昇することによって、吸着パッド71は上方に移動して退避する。
【0081】
図6(D)に示すように、時刻t5において、爪部材61の先端部61cがエンドブロック12に当接した状態となってそれ以上の前進移動が妨げられ、爪部材61は回動軸62を中心に回動し始める。
【0082】
図6(E)に示すように、爪部材61の回動によって、ブスバーBBは爪部材61のワーク起こし面61bによってさらに折り曲げられる。時刻t6において、爪部材61がほぼ45度回動することにより、ワーク起こし面61bがほぼ垂直な状態となり、ワーク起こし面61bとエンドブロック12の前側面31とによってブスバーBBがプレスされる。その結果、ブスバーBBは、エッジ部32を折り曲げ位置として、ほぼ直角に折り曲げられる。
【0083】
図7において、時刻t7において空気圧シリンダ13が後退駆動され、爪部材61が元の位置に向かって後退移動し、時刻t8において元の位置に戻る。
【0084】
そして、時刻t9において、加工装置1は移動装置17によって移動され、太陽電池本体TDの搬送に支障のない位置に退避する。
【0085】
折り曲げ加工が終わった太陽電池本体TDは、加工ステーションから搬出され、次の新しい太陽電池本体TDが搬入される。以降、上に述べた加工装置1の動作が繰り返される。
【0086】
このように、本実施形態の加工装置1では、吸着パッド71がブスバーBBの表面に吸着しかつブスバーBBを太陽電池パネルTPの表面から離す方向に移動することによって、ブスバーBBの先端部を太陽電池パネルTPの表面から浮かせる。この状態で、爪部材61が前進移動し、その先端部61cがブスバーBBの裏面に入り込む。これによりワーク起こし面61bがブスバーBBを起こし始める。
【0087】
そして、爪部材61の先端部61cがエンドブロック12に直接的または間接的に当接することにより、コイルバネ67の付勢力に抗して爪部材61が回転し、ブスバーBBをさらに起こして折り曲げる。
【0088】
本実施形態の加工装置1によると、太陽電池本体TDなどの基材の表面に配置されたブスバーBBのような薄板状のワークを自動的に立ち上げることができる。したがって、太陽電池パネルTPなどの組立工数または組立時間などの増大を抑制することができる。また、太陽電池パネルTPなどの生産における歩留りの向上と品質の安定にも寄与することができる。
【0089】
また、吸着パッド71によってブスバーBBを太陽電池パネルTPの表面から浮かせ、その状態で爪部材61がブスバーBBの裏面に入り込むので、動作が確実である。
【0090】
爪部材61が回転してワーク起こし面61bがブスバーBBをエンドブロック12の前側面31に押しつけてプレスするので、簡単な構成にも係わらず、ブスバーBBを直角または任意の角度に起立させることができる。また、エンドブロック12の前側面31および爪部材61のワーク起こし面61bの形状を設定しておくことにより、ブスバーBBを所定の形状に形成することが可能である。
【0091】
上に述べた実施形態では、吸着パッド71を調整シリンダ731によって微少距離だけ上下移動させた。これによると、ブスバーBBを太陽電池本体TDの表面から浮かせる動作の独立性が高くなるので、各部の動作タイミングの調整が容易であり、動作が確実である。
【0092】
しかし、調整シリンダ731を省略し、カム面51の形状を設定することによって吸着パッド71を微少距離だけ上下移動させてもよい。その場合には、例えば、爪部材61の先端部61cがブスバーBBの先端に到達する前に吸着パッド71が上方へ移動するよう、カム面51を形成すればよい。
【0093】
上に述べた実施形態の加工装置1では、爪部材61が1つのみ設けられ、1つのブスバーBBのみを折り曲げ加工する例を示したが、2つまたはそれ以上の個数の爪部材61を設けて複数のブスバーBBを同時に折り曲げ加工してもよい。また、複数の爪部材61に代えて、1つの長い爪部材を設け、複数のブスバーBBを同時に折り曲げ加工してもよい。その場合に、吸着パッド71をブスバーBBの個数に合わせて設けておけばよい。
【0094】
また、上に述べた実施形態の加工装置1では、吸着パッド71によってブスバーBBを吸着して調整シリンダ731で太陽電池本体TDから浮かせる際に、太陽電池本体TDの表面H2に対して吸着パッド71が垂直方向に移動した。しかし、厳密には、吸着パッド71は、エッジ部32を中心とした円弧を描くように移動するのが好ましいが、移動距離が極僅かであるので、実際上は問題ない。しかし、移動距離がある程度大きくなる場合、またはブスバーBBの折り曲げ距離が短い場合には、ブスバーBBの折り曲げ軌跡に沿って吸着パッド71が円弧を描いて移動するか、または直線移動であっても斜め方向に移動するようにするのが好ましい。
【0095】
次に、そのような爪部材および吸着パッドの変形例を第2の実施形態として説明する。
〔第2の実施形態〕
図10および図11には第2の実施形態の加工装置1Bが示されている。第2の実施形態の加工装置1Bにおいて、第1の実施形態の加工装置1と同様の機能を有する部分については説明を省略しまたは簡略化する。
【0096】
図10および図11において、加工装置1Bは、4つのブスバーBBを同時に折り曲げるため、4つの吸着パッド71B、および水平方向に長い1つの爪部材61Bが設けられている。
【0097】
つまり、吸着装置16Bは、4つの吸着パッド71Bが、所定の間隔をあけて、支持板72Bに一列に並んで配置される。支持板72Bは、鉛直方向に対して僅かに傾斜した姿勢のリニアガイド721によって斜め上下方向に移動可能に支持されており、リニアガイド731と平行に配置された調整シリンダ731Bによって斜め上下方向に移動駆動される。
【0098】
調整シリンダ731Bによる上端位置および下端位置は、調整シリンダ731Bの側面に設けられた調整ネジ734によってそれぞれ調整可能である。
【0099】
リニアガイド721および調整シリンダ731Bの軸方向は、吸着パッド71Bで吸着されたブスバーBBを折り曲げたときの先端部の移動軌跡に近い方向である。
【0100】
ブスバーBBが吸着パッド71Bで吸着された状態で、調整シリンダ731Bが上昇移動すると、吸着パッド71Bの先端部はブスバーBBを折り曲げた場合の先端部の軌跡にほぼ沿って上昇する。
【0101】
調整シリンダ731Bそれ自体は、支持ガイド74Bによって鉛直方向に沿って移動可能に支持され、かつ、倣い装置73Bによって上下方向の高さが可変される。
【0102】
つまり、支持ガイド74Bは、基板21Bに取り付けられたガイドレール742B、およびガイドレール742Bに沿って摺動可能な摺動ブロック743Bを備える。調整シリンダ731Bは、部材744,745を介して摺動ブロック743Bに取り付けられ、これらは一体的に移動する。
【0103】
部材744には、ブラケット732Bを介してローラ733Bが取り付けられ、ローラ733Bが、移動ブロック14Bに設けられたカム面51Bに沿って転動する。
【0104】
したがって、移動ブロック14Bが図示しない空気圧シリンダで水平方向に移動駆動されると、カム面51Bの高さの変化に応じてローラ733Bの高さ位置が変化し、吸着装置16Bの吸着面の高さ位置が変化する。
【0105】
爪装置15Bは、爪部材61B、回動軸62B、回動原位置調整装置64B、および支持部65などを有する。
【0106】
支持部65は、2本のロッド651,652およびそれらによって支持された2つの側板653,654を有する。
【0107】
爪部材61Bは、2つの側板653,654にそれぞれ設けられた回動軸62Bによって回動可能に支持される。爪部材61Bは、太陽電池本体TDに配置された4つのブスバーBBを充分にカバーする長さを有する。爪部材61Bの先端部61Bcは、4つのブスバーBBの裏面に同時に入り込むことが可能であり、ワーク起こし面61Bbによって4つのブスバーBBを同時に起こしていくことが可能である。
【0108】
また、4つのブスバーBBの折り曲げ位置に対応するように、長い1つのエンドブロック12Bが設けられている。
【0109】
回動原位置調整装置64Bは、爪部材61Bの原位置を規定するために、一方の回動軸62Bの外側に設けられている。側板653と回動原位置調整装置64Bとの間において、回動軸62Bにはコイルバネ67Bが装着され、自由状態において回動原位置調整装置64が調整ネジ66Bの先端に当接するように付勢されている。これにより、爪部材61Bは、自由状態において、図10および図11に示す原位置に復帰するようになっている。
【0110】
第2の実施形態の加工装置1Bにおいては、太陽電池本体TDなどの基材の表面に配置された4つのブスバーBBを同時に自動的に立ち上げることができる。したがって、太陽電池パネルTPなどの組立工数または組立時間などの増大をより一層抑制することができる。
【0111】
上に述べた実施形態において、エンドブロック12は、ブスバーBBの曲げ型に対応する部分のみを交換可能に取り付けるようにしてもよい。
【0112】
上に述べた実施形態において、ワークとして帯状のブスバーBBを例として説明したが、他の形状のワークでもよい。互いに大きさの異なる複数のワークが設けられていてもよい。カム面51,51Bの形状は上に述べた以外に種々変更することができる。
【0113】
その他、本体11、エンドブロック12、空気圧シリンダ13、移動ブロック14、爪装置15、吸着装置16、または加工装置1の各部または全体の構成、構造、形状、材質、個数、配置などは、本発明の主旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 加工装置
11 本体
12 エンドブロック
13 空気圧シリンダ
14 移動ブロック
15 爪装置
16 吸着装置
31 前側面
32 エッジ部
51 カム面
61 爪部材
61a 底面
61b ワーク起こし面
62 回動軸
71 吸着パッド
731 調整シリンダ
733 ローラ
BB ブスバー(ワーク)
TD 太陽電池本体(基材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に配置された薄板状のワークを起こして折り曲げる加工装置であって、
本体と、
折り曲げ位置において前記ワークの表面にエッジ部が接するよう前記本体に取り付けられたエンドブロックと、
前記本体に対し、前記基材の表面に沿ってかつ前記ワークの折り曲げ方向に沿って移動可能にかつ前記折り曲げ方向を含む平面内において回動可能に支持された爪部材と、
基材の表面に配置された状態の前記ワークの表面に吸着可能であってかつ前記吸着した状態で前記ワークを前記基材の表面から離す方向に移動可能なように配置された吸着パッドと、
を備え、
前記爪部材は、前記吸着パッドが前記ワークの表面に吸着しかつ前記ワークを前記基材の表面から離す方向に移動することによって前記ワークの先端部を前記基材の表面から浮かせた状態で、当該爪部材の前記移動にともなって前記ワークの裏面に入り込み、当該爪部材が前記エンドブロックに当接することによって回転して前記ワークを起こして折り曲げるように構成されている、
ことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記本体には、前記基材の表面に沿ってかつ前記ワークの折り曲げ方向に沿って移動可能な移動ブロックが設けられ、
前記爪部材は、前記移動ブロックに対して回動可能に支持されている、
請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
前記移動ブロックには、カム面が設けられており、
前記吸着パッドは、前記移動ブロックが移動したときに前記カム面の変化に応じて移動可能に設けられている、
請求項2記載の加工装置。
【請求項4】
前記吸着パッドは、前記本体に取り付けられた調整シリンダによって移動可能に設けられている、
請求項1または2記載の加工装置。
【請求項5】
前記爪部材は、
前記基材の表面に摺接する底面と、前記ワークの裏面に入り込んで摺接する面であって前記底面における前記エンドブロックに近い側において前記底面に対し鋭角で交わるワーク起こし面とを有し、
前記ワーク起こし面から所定の距離だけ離れた回動軸を中心に回動可能に支持されている、
請求項1ないし4のいずれかに記載の加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−59925(P2012−59925A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201836(P2010−201836)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000204240)株式会社TAIYO (63)
【Fターム(参考)】