説明

加温装置

【課題】液体バッグを縦置きで設置しても安定して加温および温度測定でき、また、液体バッグの誤設置を防止する。
【解決手段】筐体2と、その開口部2aを開閉する扉2bと、筐体2内に配置され、容器の底部を支持する載置部4および容器の上部を吊り掛ける吊掛部5と、載置部4に設けられ、底部と接触して液体を加熱する加熱部6aおよび底部と接触して液体の温度を測定する温度測定部7とを備え、吊掛部5が、その先端部5dを開口部2a内に収納状態に配する上側位置と、先端部5dを開口部2aから突出状態に配する下側位置との間で上下方向に揺動可能に設けられた吊掛片5aと、該吊掛片5aを上方に付勢する付勢手段5bとを備え、該付勢手段5bが、容器が載置部4に載置された状態で吊掛片5aを上側位置に、それより大きな荷重が吊掛片5aに加わったときに吊掛片5aを下側位置に配する付勢力を発生する加温装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加温装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液バッグなど、柔軟な材質で構成された大容量の液体バッグ内の液体を加温するための装置として、水平に設置されたプレート状のヒータの上に液体バッグを水平に寝かせて横置きし加温する装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−278911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の加温装置の場合、液体バッグを横置きにする構成のため装置の設置面積が広くなるという不都合がある。また、加温装置および液体バッグを縦置きにして使用した場合、ヒータおよび温度測定部が液体バッグの側面に配置さているため、輸液が進んで水位が下がると、ヒータおよび温度測定部の位置に液体が隣接しなくなり、安定して加温および温度測定ができなくなるという不都合がある。
【0005】
また、効率良く加温または保温するために加温装置全体を断熱性の保温箱等で覆って使用する場合、液体バッグの設置状態を外部から目視で確認できなくなる。この場合に、液体バッグがヒータからずれて設置された状態で操作者が確認を怠って保温箱の扉を閉めてしまっても、それを検知する手段がない。したがって、液体バッグの誤設置が気付かれずに放置されてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、液体バッグを縦置きで設置しても安定して加温および温度測定でき、また、液体バッグの誤設置を容易に検出して未然に防止することができる加温装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、一側面に開口部を有する筐体と、前記開口部を開閉する扉と、前記筐体内に配置され、該筐体内に収容される容器の底部を支持する載置部および前記容器の上部を吊り掛ける吊掛部と、前記載置部に設けられ、前記底部と接触して前記容器内に収容された液体を加熱する加熱部および前記底部と接触して前記液体の温度を測定する温度測定部とを備え、前記吊掛部が、その先端部を前記開口内に収納状態に配する上側位置と、前記先端部を前記開口から突出状態に配する下側位置との間で上下方向に揺動可能に設けられた吊掛片と、該吊掛片を上方に付勢する付勢手段とを備え、該付勢手段が、前記容器が前記載置部に載置された状態で前記吊掛片を前記上側位置に、それより大きな荷重が前記吊掛部に加わったときに前記吊掛片を前記下側位置に配する付勢力を発生する加温装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、扉を開けて、液体が収容された容器を載置部および吊掛部に設置した後扉を閉める。そして、加熱部および温度測定部を作動させると、密閉された筐体内において、容器の底部を介して液体の温度を測定しながら液体を加温することができる。
この場合に、吊掛部には、付勢手段による上方の付勢力と、吊り掛けられた容器による下方の荷重がかかる。
【0009】
容器が載置部上に載置され正しく設置されている場合、容器による荷重は載置部および吊掛部に分配されるが、付勢手段による付勢力により吊掛片は上側位置、つまり筐体内に収納される位置に保持される。一方、容器が載置部からずれた位置に誤って設置さている場合、容器が載置部によって支持されないため、吊掛部にかかる下方の荷重が増加する。このときに、吊掛片が下方に揺動させられて下側位置へ配され、開口部から突出した先端部により扉の閉じる方向の位置が制限される。
【0010】
すなわち、本発明によれば、容器が載置部に正しく載置されていない場合、筐体の扉を閉じることができない。このように、容器の誤設置が操作者に容易に認識される構成にすることで、容器の誤設置を容易にかつ確実に検出して、容器が誤設置の状態で放置されることを未然に防止することができる。
【0011】
また、加熱部および温度測定部を容器の底部側に配置することにより、液面位置の変化にかかわらず加熱部および温度測定部と液体とが容器を介して安定して接触させられる。したがって、容器を縦置きで設置しても、液体を安定して加温および温度測定することができる。
【0012】
また、本発明は、一側面に開口部を有する筐体と、前記開口部を開閉する扉と、前記筐体内に配置され、該筐体内に収容される容器の底部を支持する載置部および前記容器の上部を吊り掛ける吊掛部と、前記載置部に設けられ、前記底部と接触して前記容器内に収容された液体を加熱する加熱部および前記底部と接触して前記液体の温度を測定する温度測定部とを備え、前記扉の内面に凹部が設けられ、前記吊掛部が、前記開口部から突出させた位置に配置される先端部を有し、前記扉が閉じられたときに前記凹部が配置される位置に前記先端部を配する上側位置と、前記先端部を前記凹部から外れた位置に配する下側位置との間で上下方向に揺動可能に設けられた吊掛片と、該吊掛片を上方に付勢する付勢手段とを備え、該付勢手段が、前記容器が前記載置部に載置された状態で前記吊掛片を前記上側位置に、それより大きな荷重が前記吊掛部に加わったときに前記吊掛片を前記下側位置に配する付勢力を発生する加温装置を提供する。
【0013】
本発明によれば、載置部に載置された状態で容器が吊掛部に吊り掛けられたときは、上側位置に配された吊掛片の先端部が凹部内に収納され、扉が閉じられる。一方、容器が載置部に正しく載置されず吊掛部に過剰な下方の荷重がかかったときは、下側位置に配され開口部から突出した吊掛片の先端部に扉が引っ掛かり閉じることができない。
このようにすることで、容器の誤設置が操作者によって確実に検出され、また、容器を縦置きにしても液体を安定して加温および温度測定することがきる。
【0014】
上記発明においては、前記凹部が、前記扉を板厚方向に貫通する窓部であることとしてもよい。
このようにすることで、窓部内を観察することにより吊掛片の先端部の位置を外部からでも容易に視認することができ、これにより筐体内の容器の設置状態を外部からでも確認することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液体バッグを縦置きで設置しても安定して加温および温度測定でき、また、液体バッグの誤設置を容易に検出して未然に防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る加温装置1について、図1〜図3を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る加温装置1は、図1(a),(b)に示されるように、全体が保温室(筐体)2によって覆われており、その内部に、液体バッグ(容器)3を載置する底面板(載置部)4と、液体バッグ3を吊り掛ける吊掛部5と、底面ヒータ(加熱部)6aおよび背面ヒータ6bと、底面板4に設けられた温度測定部7とを備えている。
【0017】
保温室2は、直方体の箱状であり、内壁は断熱材料によって覆われて効率的に内部が保温されるようになっている。保温室2の前面(開口部)2aは開口しており、該前面2aを開閉可能な扉2bが設けられ、該扉2bの上方には、扉2bの厚さ方向に貫通した窓(窓部)2cが設けられている。
【0018】
保温室2内には、底面側に、前方に向かって斜め下方に傾斜した底面板4が配置され、該底面板4の前方および後方にはそれぞれ底面板4上に載置された液体バッグ3の前面と背面を支持する立て板4aと背面板4bとが設けられている。
【0019】
吊掛部5は、液体バッグ3の上部を吊り掛ける直棒状の吊掛片5aと、該吊掛片5aの途中位置と背面板4bとに両端が接続されたバネ(付勢手段)5bとを備えている。吊掛片5aは、一端がヒンジ5cを介して背面板4bに支持され、図1(b)の実線および2点鎖線で示されるように、水平方向位置(上側位置)と、他端の先端5dを下方に向けて傾斜した位置(下側位置)との間で上下方向に揺動可能に設けられている。
【0020】
吊掛片5aは、いずれの揺動位置においてもその先端5dが前面2aから突出するように長手方向の長さが調節されている。
また、窓2cは、吊掛片5aが略水平方向に配置されたときの先端5dの位置に設けられ、吊掛片5aが傾斜したときは、先端5dが窓2cより下方に配置されるようになっている。
【0021】
また、吊掛片5aは、バネ5bにより上方に付勢され、図2(a)に示されるように、吊り掛けられている液体バッグ3が底面板4上に載置されて吊掛片5aに分配される下方の荷重が十分小さいときは、吊掛片5aはバネ5bの付勢力により略水平方向位置(上側位置)に保持される。このとき、扉2bが閉じられると吊掛片5aの先端5dが窓2c内に挿入されるようになっている。
【0022】
液体バッグ3が底面板4上に載置されず過剰な大きさの下方の荷重が吊掛片5aに掛かったときは、図2(b)に示されるように、吊掛片5aがバネ5bの付勢力に抗して下方に揺動する。このとき、吊掛片5aの先端5dが扉2bの窓2cの下方に突き当り、扉2bの閉じる方向の位置が制限されるようになっている。
【0023】
底面ヒータ6aおよび背面ヒータ6bは、それぞれ底面板4と背面板4bに配置されたプレート形状のヒータであり、底面板4上に設置された液体バッグ3の底部および背面に密着させられ、液体バッグ3を介して内部の液体Aを加温するようになっている。
【0024】
温度測定部7は、底面板4の下面に設けられ、底面板4および底面ヒータ6aの中央部に設けられた開口を介して底面板4の上面に配置されたサーミスタ等の温度センサ7aを備えている。液体バッグ3が底面ヒータ6a上に設置されると、温度センサ7aが液体バッグ3の底部に接触し、液体バッグ3を介して内部の液体Aの温度を測定するようになっている。
【0025】
このように構成された加温装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る加温装置1を用いて液体バッグ3内の液体Aを加温するには、扉2bを開放して液体バッグ3を筐体2内に設置した後扉2bを閉じる。吊掛片5aにより妨害されて扉2bが閉じられない場合、液体バッグ3を正しく設置し直してから扉2bを閉じる。そして、各ヒータ6a,6bおよび温度測定部7を作動させると、液体Aが加温され、その温度が測定される。
【0026】
このように、本実施形態によれば、液体バッグ3が正しく設置されていない場合には扉2bを閉じることができない構成にすることで、操作者が液体バッグ3の誤設置を容易にかつ確実に認識することができる。これにより、液体バッグ3が誤設置されたまま扉2bが閉められて放置されることを未然に防ぐことができる。
【0027】
また、液体バッグ3の底部側に底面ヒータ6aおよび温度測定部7を設けることにより、液体バッグ3内から液体Aが排出されて液面位置が下がっても、底面ヒータ6aおよび温度測定部7は液体バッグ3を介して液体Aに隣接した状態が維持される。したがって、液体バッグ3を縦置きにしても安定して液体Aを加温し、その温度を測定することができる。
【0028】
また、扉2bに設けられた窓2c内に吊掛片5aの先端5dが挿入される構成にすることで、保温室2外からでも先端5dを観察可能となり、外部からでも容易に液体バッグ3が正しく設置されているか否かを確認することができる。
【0029】
上記実施形態においては、液体バッグが底面板上に正しく設置されたときに配される吊掛片の先端の位置に窓が設けられ、該窓に先端が挿入されて扉が閉じられることとした。これに代えて、図3(a),(b)に示されるように、吊掛部に掛かる下方の荷重が十分に小さいときに吊掛片が筐体内に収納される位置に配され、それより大きい荷重が掛かったときに吊掛片が下方に揺動させられて先端が前面から突出する位置に配されることとしてもよい。
【0030】
この場合、窓2cは設けなくてもよい。このようにすることで、液体バッグ3が底面板4上からずれて載置されると、吊掛部5に掛かる下方の荷重が増加して吊掛片5aの先端5dが前面2aから突出させられる。これにより、前述した実施形態と同様に、扉2bを閉じようとしたときに扉2bが吊掛片5aに引っかかって閉じることができず、操作者が確実にかつ容易に液体バッグ3の誤設置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る加温装置の全体の構成を示す(a)正面図、(b)側面図である。
【図2】図1の加温装置に、(a)液体バッグが正しく設置されている状態、(b)液体バッグが誤って設置されている状態を示す図である。
【図3】図1の加温装置の変形例であり、(a)液体バッグが正しく設置されている状態、(b)液体バッグが誤って設置されている状態を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 加温装置
2 保温室(筐体)
2a 前面(開口部)
2b 扉
2c 窓(窓部)
3 液体バッグ(容器)
4 底面板(載置部)
4a 立て板
4b 背面板
5 吊掛部
5a 吊掛片
5b バネ(付勢手段)
5c ヒンジ
5d 先端(先端部)
6a 底面ヒータ(加熱部)
6b 背面ヒータ
7 温度測定部
7a 温度センサ
A 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側面に開口部を有する筐体と、
前記開口部を開閉する扉と、
前記筐体内に配置され、該筐体内に収容される容器の底部を支持する載置部および前記容器の上部を吊り掛ける吊掛部と、
前記載置部に設けられ、前記底部と接触して前記容器内に収容された液体を加熱する加熱部および前記底部と接触して前記液体の温度を測定する温度測定部とを備え、
前記吊掛部が、その先端部を前記開口内に収納状態に配する上側位置と、前記先端部を前記開口から突出状態に配する下側位置との間で上下方向に揺動可能に設けられた吊掛片と、該吊掛片を上方に付勢する付勢手段とを備え、
該付勢手段が、前記容器が前記載置部に載置された状態で前記吊掛片を前記上側位置に、それより大きな荷重が前記吊掛部に加わったときに前記吊掛片を前記下側位置に配する付勢力を発生する加温装置。
【請求項2】
一側面に開口部を有する筐体と、
前記開口部を開閉する扉と、
前記筐体内に配置され、該筐体内に収容される容器の底部を支持する載置部および前記容器の上部を吊り掛ける吊掛部と、
前記載置部に設けられ、前記底部と接触して前記容器内に収容された液体を加熱する加熱部および前記底部と接触して前記液体の温度を測定する温度測定部とを備え、
前記扉の内面に凹部が設けられ、
前記吊掛部が、前記開口部から突出させた位置に配置される先端部を有し、前記扉が閉じられたときに前記凹部が配置される位置に前記先端部を配する上側位置と、前記先端部を前記凹部から外れた位置に配する下側位置との間で上下方向に揺動可能に設けられた吊掛片と、該吊掛片を上方に付勢する付勢手段とを備え、
該付勢手段が、前記容器が前記載置部に載置された状態で前記吊掛片を前記上側位置に、それより大きな荷重が前記吊掛部に加わったときに前記吊掛片を前記下側位置に配する付勢力を発生する加温装置。
【請求項3】
前記凹部が、前記扉を板厚方向に貫通する窓部である請求項2に記載の加温装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−119449(P2010−119449A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293509(P2008−293509)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】