説明

加温販売用容器詰めゼリー入り飲料及びその製造方法

【課題】保温性に優れ、ゼリーの食感を有する加温販売用容器詰め飲料、並びに当該飲料の製造方法、品温低下抑制方法及び食感保持方法を提供する。
【解決手段】ゲル化剤によってゲル化されたゼリーを含む加温販売用容器詰めゼリー入り飲料であって、ゲル化剤の量に対して質量基準で0.024〜0.095倍量のカルシウムを含有する加温販売用容器詰めゼリー入り飲料。60℃にて20メッシュを通過させたときに残る固形分量は、ゼリー入り飲料の20〜90質量%であることが好ましい。ゼリーは、果汁又は果汁を含有する組成物をゲル化したものであることが好ましい。ゼリー入り飲料の60℃における粘度は10〜700mPas・sであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加温販売を前提とした容器詰めゼリー入り飲料、その製造方法、品温低下抑制方法及び食感保持方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、飲料に対する嗜好の多様化により、容器詰めされた果汁飲料が加温された状態で販売されるようになり、特に冬季に販売されることが多い。しかしながら、これらの加温販売用容器詰め果汁飲料は、販売時点では所定の温度(一般的には60℃前後)の加温状態にあるが、購入後、しばらくしてから飲もうしたときに、温度が低下してしまっていることがある。このような温度低下の問題は、特に気温が低いときに生じやすい。
【0003】
ところで、近年、飲料としてのゼリー又はゼリーの入った飲料が普及してきている。これらのゼリー入り飲料としては、例えば、スパウト付きパウチ等に詰められ、絞り出して飲むタイプのものや(特許文献1等)、缶等の容器に詰められ、所定回数振ってから飲むタイプのものがある(特許文献2等)。前者のゼリー入り飲料は、喉越しの良い食感が好まれており、後者のゼリー入り飲料は、所定の大きさの塊(塊の大きさは振る回数に応じて変化する)のある食感が好まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−270105号公報
【特許文献2】特開2002−291453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のゼリー入り飲料は、冷蔵した上で又は常温にて飲用されるものであり、加温して飲用されることはなかった。また、今までのゼリー入り飲料をそのまま加温した場合、ゼリーは崩壊して粘性が低下し、ゼリーとして好ましい食感は得られないと考えられる。
【0006】
一方、果汁飲料以外に、加温して販売される容器詰め飲料として、おしるこ飲料やコーンポタージュ飲料が知られている。しかしながら、これらの飲料は、上記のゼリー入り飲料のような食感はない。
【0007】
そこで、本発明は、保温性に優れ、ゼリーの食感を有する加温販売用容器詰め飲料、並びに当該飲料の製造方法、品温低下抑制方法及び食感保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、ゲル化剤によってゲル化されたゼリーを含む加温販売用容器詰めゼリー入り飲料であって、前記ゲル化剤の量に対して質量基準で0.024〜0.095倍量のカルシウムを含有することを特徴とする加温販売用容器詰めゼリー入り飲料を提供する(発明1)。
【0009】
上記発明(発明1)においては、カルシウムの含有量が上記の範囲にあることで、保温性(品温低下抑制性能)に優れ、かつ、加温した状態でも程良い固さのゼリーの食感が得られる。
【0010】
上記発明(発明1)において、60℃にて20メッシュを通過させたときに残る固形分量は、当該ゼリー入り飲料の20〜90質量%であることが好ましい(発明2)。
【0011】
上記発明(発明1又は2)において、前記ゼリーは、果汁又は果汁を含有する組成物をゲル化したものであることが好ましい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明1〜3)において、当該ゼリー入り飲料の60℃における粘度は10〜700mPas・sであることが好ましい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明1〜4)に係るゼリー入り飲料は、PET容器に充填されていることが好ましい(発明5)。
【0014】
上記発明(発明1〜5)において、容器容量は220〜600mLであることが好ましい(発明6)。
【0015】
第2に本発明は、ゲル化剤によってゲル化されたゼリーを含む加温販売用容器詰めゼリー入り飲料の製造方法であって、前記ゲル化剤の量に対して質量基準で0.024〜0.095倍量のカルシウムを配合することを特徴とする加温販売用容器詰めゼリー入り飲料の製造方法を提供する(発明7)。
【0016】
上記発明(発明7)において、当該ゼリー入り飲料の60℃における粘度が10〜700mPas・sとなるように、粘度を調整することが好ましい(発明8)。
【0017】
第3に本発明は、ゲル化剤によってゲル化されたゼリーを含む加温販売用容器詰めゼリー入り飲料の品温低下抑制方法であって、前記ゲル化剤の量に対して質量基準で0.024〜0.095倍量のカルシウムを配合することを特徴とする加温販売用容器詰めゼリー入り飲料の品温低下抑制方法を提供する(発明9)。
【0018】
上記発明(発明9)において、当該ゼリー入り飲料の60℃における粘度が10〜700mPas・sとなるように、粘度を調整することが好ましい(発明10)。
【0019】
第4に本発明は、ゲル化剤によってゲル化されたゼリーを含む加温販売用容器詰めゼリー入り飲料の食感保持方法であって、前記ゲル化剤の量に対して質量基準で0.024〜0.095倍量のカルシウムを配合することを特徴とする加温販売用容器詰めゼリー入り飲料の食感保持方法を提供する(発明11)。
【0020】
上記発明(発明11)において、当該ゼリー入り飲料の60℃における粘度が10〜700mPas・sとなるように、粘度を調整することが好ましい(発明12)。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、保温性(品温低下抑制性能)に優れ、ゼリーの食感を有する加温販売用容器詰め飲料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】温度低下試験(試験例1)の結果を示すグラフである。
【図2】温度低下試験(試験例5)の結果を示すグラフである。
【図3】温度低下試験(試験例5)の結果を示すグラフである。
【図4】温度低下試験(試験例6)の結果を示すグラフである。
【図5】温度低下試験(試験例6)の結果を示すグラフである。
【図6】温度低下試験(試験例6)の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る加温販売用容器詰めゼリー入り飲料(以下単に「ゼリー入り飲料」という場合がある。)のゼリー入り飲料は、ゲル化剤によってゲル化されたゼリーを含む飲料であって、ゲル化剤と、カルシウムとを必須成分として含有し、好ましくは、果汁又は果汁を含有する組成物をゲル化したゼリーを含む。
【0024】
なお、本実施形態に係るゼリー入り飲料は、ゼリー部だけからなるものであってもよいし、ゼリー部と液体部とからなるものであってもよい。
【0025】
ゲル化剤としては、例えば、ゼラチン、ペクチン、寒天、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、グアガム、タラガム、タマリンドガム、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、カードラン、グルコマンナン等が挙げられ、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。上記ゲル化剤の中でも、カルシウムとの反応性の観点から、ペクチン、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、又はアルギン酸塩が好ましい。
【0026】
本実施形態に係るゼリー入り飲料は、ゲル化剤を含有することで、ゼリー分を得ることができ、加温した状態でも所定の固形分や粘度を有することとなる。これにより、当該ゼリー入り飲料は、粘度の低い飲料、例えば従来の加温販売用容器詰め果汁飲料と比較して、多少なりとも保温性が向上する。
【0027】
カルシウムは、通常は、カルシウム塩又はカルシウムイオンとして含まれている。カルシウム塩としては、例えば、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム等、食品原料として使用できるものであれば特に限定されないが、香味の質の面からは、乳酸カルシウム又はグルコン酸カルシウムが好ましく、乳酸カルシウムが特に好ましい。また、カルシウムは、果汁に含まれるカルシウム分であってもよい。
【0028】
カルシウムの含有量(カルシウム塩を配合する場合は、カルシウム換算量)は、ゲル化剤の量に対して質量基準で0.024〜0.095倍量であることを要し、好ましくは0.03〜0.09倍量である。カルシウムの含有量がかかる範囲にあることで、本実施形態に係るゼリー入り飲料は、加温した状態でも程良い固さの食感が得られる。カルシウムの含有量がゲル化剤の量に対して0.024倍量未満であると、得られるゼリー入り飲料は、軟らかく、ゼリーとして不満足な食感となる。また、カルシウムの含有量がゲル化剤の量に対して0.03倍量未満であると、振り方によっては固形分が少なくなり、ゼリーとして不満足な食感となる場合がある。一方、カルシウムの含有量がゲル化剤の量に対して0.095倍量を超えると、得られるゼリー入り飲料は、固過ぎて、食感が悪くなる。すなわち、ゲル化剤の量に対して0.024〜0.095倍量のカルシウムを配合することで、ゼリー入り飲料の食感を保持することができる(本発明の食感保持方法に該当)。
【0029】
また、カルシウムの含有量が上記の範囲にあることで、得られるゼリー入り飲料の粘度を、保温性に優れた好ましい範囲に設定することができる。すなわち、ゲル化剤の量に対して0.024〜0.095倍量のカルシウムを配合することで、ゼリー入り飲料の品温低下を抑制することができる(本発明の品温低下抑制方法に該当)。
【0030】
本実施形態に係るゼリー入り飲料のゼリーが、果汁又は果汁を含有する組成物をゲル化したものである場合、果汁の種類としては、例えば、柑橘類果実(オレンジ、温州ミカン、レモン、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、ユズ、シークワーサー、タンジェリン、テンプルオレンジ、タンジェロ、カラマンシー等)、リンゴ、ブドウ、モモ、パイナップル、グアバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、プルーン、パパイヤ、パッションフルーツ、ウメ、ナシ、アンズ、ライチ、メロン、西洋ナシ、スモモ類等の果実の果汁が挙げられる。上記の果汁は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
上記果実から果汁を得るには、従来公知の方法によって行えばよく、例えば、原料としての果実に対して、温める、煮る、蒸す等の加熱処理や、十分な水洗い、水にさらす、薬品処理する等の非加熱処理を施してから、搾汁すればよい。
【0032】
本実施形態に係るゼリー入り飲料は、通常は水分を含有する。水分は、配合する果汁に由来するものであってもよいし、ミネラル水、天然水、イオン交換水、精製水、脱気水、水道水等の水であってもよい。
【0033】
本実施形態に係るゼリー入り飲料は、甘味付与剤を含有していてもよい。甘味付与剤としては、糖類又は甘味料を使用することができる。糖類としては、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、還元麦芽糖等が挙げられる。甘味料としては、例えば、砂糖、異性化糖、フラクトース、グルコース、キシリトール、ステビア抽出物、パラチノース、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、サッカリン、サッカリンナトリウム等が挙げられる。また、シュガーレスバルク甘味料、バルク砂糖甘味料、高甘味度甘味料等を含んでいてもよいし、ソルビトール等の糖アルコールを含んでいてもよい。
【0034】
また、本実施形態に係るゼリー入り飲料は、必要に応じて、通常飲食品に配合される各種食品素材、例えば、酸味料、香料、ミネラル分、ビタミン類、色素成分、栄養成分、酸化防止剤等を含有してもよい。
【0035】
酸味料としては、例えば、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、又はそれらの塩類が挙げられ、中でも、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸等が好ましい。
【0036】
香料としては、例えば、柑橘その他果実から抽出した香料、果汁又は果実ピューレ、植物の種実、根茎、木皮、葉等又はこれらの抽出物、乳又は乳製品、合成香料等が挙げられる。
【0037】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンD及びビタミンB等が挙げられる。
【0038】
ミネラル分としては、例えば、カルシウム、カリウム、クロム、銅、フッ素、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、ケイ素、モリブデン及び亜鉛等が挙げられる。
【0039】
色素成分としては、例えば、マリーゴールド色素等のカロテノイド系色素、ベニバナ色素等のフラボノイド系色素、アントシアニン系色素、クロレラ、葉緑素等が挙げられる。
栄養成分としては、例えば、食物繊維、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナイアシン、パントテン酸、L−アスコルビン酸やそのナトリウム塩等が挙げられる。
【0040】
機能性成分としては、例えば、コラーゲン、鮫軟骨、牡蛎エキス、キトサン、プロポリス、オクタコサノール、トコフェロール、カロチン、ポリフェノール、梅エキス、アロエ、乳酸菌、霊芝、アガリクス等が挙げられる。
【0041】
また、本実施形態に係るゼリー入り飲料は、その他、各種エステル類、乳化剤、保存料、調味料、ガム、油、pH調整剤、品質安定剤等を含有してもよい。
【0042】
本実施形態に係るゼリー入り飲料のpHは、2.5〜4.5であることが好ましく、3.0〜4.0であることがより好ましい。ゼリー入り飲料のpHが上記範囲内にあると、ほどよい酸味が得られる。
【0043】
本実施形態に係るゼリー入り飲料においては、60℃にて20メッシュ(一辺850μmの開口部を有するふるい)を通過させたときに残る固形分量が、当該ゼリー入り飲料の20〜90質量%であることが好ましく、特に40〜90質量%であることが好ましい。固形分量がかかる範囲にあることで、加温した状態でもゼリーとして程良い食感が得られる。固形分量が20質量%未満であると、当該ゼリー入り飲料は液状になり過ぎて、ゼリーとして食感が十分でないことがある。一方、固形分量が90質量%を超えると、当該ゼリー入り飲料は飲用時に、固過ぎて、食感が悪くなる。
【0044】
なお、上記のように20メッシュを通過させるゼリー入り飲料は、そのままの状態(全く振ってない状態)であってもよいし、所望の回数振った後の状態であってもよい。本実施形態に係るゼリー入り飲料を振ってから飲む場合、振る回数は、通常は2〜50回であり、好ましくは5〜40回である。
【0045】
本実施形態に係るゼリー入り飲料は、60℃における粘度が10〜700mPas・sであることが好ましく、特に50〜600mPas・sであることが好ましい。粘度がかかる範囲にあることで、加温した状態でもゼリーとして程良い食感が得られ、また、効果的に保温性を向上させることができる。粘度が10mPas・s未満であると、当該ゼリー入り飲料は軟らか過ぎて、ゼリーとして不満足な食感となることがあり、また保温性が十分でない場合がある。一方、粘度が700mPas・sを超えると、当該ゼリー入り飲料は、飲み込み難く、飲料というよりも、通常のゼリーの範疇に入ることとなる。
【0046】
すなわち、本実施形態に係るゼリー入り飲料の食感を保持するためには、あるいは品温低下を抑制するためには、60℃における粘度が10〜700mPas・sとなるように、粘度を調整することが好ましい。
【0047】
なお、上記の粘度は、B型粘度計によって、回転スピード60rpmにて測定した値である。
【0048】
本実施形態に係るゼリー入り飲料が充填される容器としては、PET容器、金属缶、瓶等の加温販売用に通常用いられる飲料用容器であればよいが、中でも、軽量で保温性に優れるとともに、振って中身のゼリーを崩すことのできるPET容器が好ましい。なお、おしるこ飲料やコーンポタージュ飲料は、内溶液に含まれる固形物を含めた加熱処理を行うために、通常、金属缶での販売を行なうが、本実施形態に係るゼリー入り飲料は、そのような制限はない。
【0049】
本実施形態に係るゼリー入り飲料が充填される容器の容量は、220〜600mLであることが好ましく、特に250〜550mLであることが好ましい。容器の容量が220mL以上であることで、保温効果がより優れたものとなる。一方、容器の容量が600mLを超えると、振ることのある容器としては、持ち難いものとなる。なお、容器詰めのおしるこ飲料やコーンポタージュ飲料は、通常は190g缶に充填されて提供されている。
【0050】
本実施形態に係るゼリー入り飲料を製造するには、例えば、ゲル化剤と、当該ゲル化剤の0.024〜0.095倍量のカルシウムと、所望により甘味付与剤その他の食品素材とを混合し、これに果汁及び/又は水を加え、溶解させる。そして、ホットパック充填により容器に充填する。
【0051】
上記の製造工程では、ゼリー入り飲料の60℃における粘度が10〜700mPas・sとなるように、粘度を調整することが好ましい。粘度の調整は、ゲル化剤及びカルシウムの各配合量、又は果汁や水の添加量を調整することで行うことができる。
【0052】
本実施形態に係るゼリー入り飲料を販売するときの温度は、飲料として40〜80℃であることが好ましく、45〜75℃であることが特に好ましく、50〜70℃であることがさらに好ましい。
【0053】
本実施形態に係るゼリー入り飲料を飲用する際には、容器に入ったゼリー入り飲料をそのまま飲んだり、容器を所望の回数振って、中身のゼリーを所望の大きさに崩してから飲むことができる。通常振る回数は、前述した通りである。
【0054】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0055】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0056】
〔実施例1〕
ゲル化剤(ゲルアップK−S(F),三栄源エフ・エフ・アイ社製,ジェランガム含有量42質量%)14.4gと、乳酸カルシウム(カルシウム含有量13質量%)3.0g(ゲル化剤の0.064倍量のカルシウム)と、その他の成分として、砂糖、水飴、柚子抽出物、香料、酸味料、ビタミンC、甘味料及び色素とを混合し、これにレモン及びゆずの混合果汁33gを溶解させた後、クエン酸でpH3.7に調整し、水で3000gにメスアップし、ホットパック充填により295mLのPET容器に充填した。
【0057】
〔実施例2〕
ゲル化剤(ゲルアップK−S(F),三栄源エフ・エフ・アイ社製,ジェランガム含有量42質量%)14.4gと、乳酸カルシウム(カルシウム含有量13質量%)1.125g(ゲル化剤の0.024倍量のカルシウム)と、その他の成分として、砂糖、水飴、柚子抽出物、香料、酸味料、ビタミンC、甘味料、色素とを混合し、これにレモン及びゆずの混合果汁33gを溶解させた後、クエン酸でpH3.7に調整し、水で3000gにメスアップし、ホットパック充填により295mLのPET容器に充填した。なお、得られたゼリー入り飲料のゲル強度は軟らかいものであった。
【0058】
〔実施例3〕
ゲル化剤(ゲルアップK−S(F),三栄源エフ・エフ・アイ社製,ジェランガム含有量42質量%)14.4gと、乳酸カルシウム(カルシウム含有量13質量%)2.25g(ゲル化剤の0.048倍量のカルシウム)と、その他の成分として、砂糖、水飴、柚子抽出物、香料、酸味料、ビタミンC、甘味料、色素とを混合し、これにレモン及びゆずの混合果汁33gを溶解させた後、クエン酸でpH3.7に調整し、水で3000gにメスアップし、ホットパック充填により295mLのPET容器に充填した。なお、得られたゼリー入り飲料のゲル強度は適度なものであった。
【0059】
〔比較例1〕
乳酸カルシウム3.0gと、その他の成分として、砂糖、水飴、柚子抽出物、香料、酸味料、ビタミンC、甘味料、色素とを混合し、これにレモン及びゆずの混合果汁33gを溶解させた後、クエン酸でpH3.7に調整し、水で3000gにメスアップし、ホットパック充填により295mLのPET容器に充填した。
【0060】
〔比較例2〕
ゲル化剤(ゲルアップK−S(F),三栄源エフ・エフ・アイ社製,ジェランガム含有量42質量%)14.4gと、乳酸カルシウム(カルシウム含有量13質量%)4.5g(ゲル化剤の0.097倍量のカルシウム)と、その他の成分として、砂糖、水飴、柚子抽出物、香料、酸味料、ビタミンC、甘味料、色素とを混合し、これにレモン及びゆずの混合果汁33gを溶解させた後、クエン酸でpH3.7に調整し、水で3000gにメスアップし、ホットパック充填により295mLのPET容器に充填した。なお、得られたゼリー入り飲料のゲル強度は固いものであった。
【0061】
〔試験例1〕(温度低下試験−1)
実施例1で得られたゼリー入り飲料を、固形分を感じなくなるまで振った(200回)もの(ゾル状ゼリー入り飲料)と、固形分を感じる程度に振った(10回)もの(ゲル状ゼリー入り飲料)とを検体として用意した。また、比較として、比較例1で得られた飲料(液状飲料)と、市販の容器詰めおしるこ飲料(伊藤園社製,缶大納言しるこ)と、市販の容器詰めコーンポタージュ飲料(伊藤園社製,缶コーンポタージュ)とを検体として用意した。
【0062】
上記の各検体を60℃に保温した後、5℃の雰囲気に置いて、各検体の経時温度(内容物の中心温度)を測定した。結果を表1及び図1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1及び図1から分かるように、実施例1から得られたゾル状ゼリー入り飲料及びゲル状ゼリー入り飲料は、比較例1で得られた液状飲料よりも保温性に優れ、おしるこ飲料及びコーンポタージュ飲料と同等の保温性を示した。
【0065】
〔試験例2〕(固形分量測定−1)
試験例1と同じ検体を用意し、20℃又は60℃に温度調整した後、各検体を20メッシュにあけ出し、当該20メッシュを通過したものの質量と、当該20メッシュ上に残ったもの(固形分)の質量とを測定し、それぞれ検体の質量に対する百分率(質量%)を算出した。結果を表2及び表3に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
表2及び表3より、実施例1から得られたゼリー入り飲料は、ゾル状又はゲル状において、また20℃又は60℃において、20メッシュ上に64〜85質量%の固形分が残り、加温販売用容器詰めゼリー入り飲料として最適な食感があることが示された(後述する食感評価参照)。一方、比較例1で得られた液状飲料、おしるこ飲料及びコーンポタージュ飲料では、20メッシュ上に0〜13質量%の固形分しか残らず、食感が少ないことが示された。
【0069】
〔試験例3〕(粘度測定)
試験例1と同じ検体を用意し、20℃又は60℃に温度調整した後、B型粘度計(東機産業社製,TVB−10形粘度計,使用ローターは表4に示す)を使用して、60rpmの回転スピードにて各検体の粘度(mPas・s)を測定した。結果を表4に示す。
【0070】
【表4】

【0071】
〔試験例4〕(固形分量測定−2)
比較例2で得られたゼリー入り飲料と、実施例2で得られたゼリー入り飲料と、実施例2で得られたゼリー入り飲料を5回又は200回振ったものと、実施例3で得られたゼリー入り飲料を10回振ったものとを検体として用意した。
【0072】
上記検体を20℃に温度調整した後、各検体を20メッシュにあけ出し、当該20メッシュを通過したものの質量と、当該20メッシュ上に残ったもの(固形分)の質量とを測定し、それぞれ検体の質量に対する百分率(質量%)を算出した。結果を表5に示す。
【0073】
【表5】

【0074】
また、比較例2で得られたゼリー入り飲料と、実施例2で得られたゼリー入り飲料と、実施例3で得られたゼリー入り飲料を10回、20回、30回又は40回振ったものとを検体として用意した。
【0075】
上記検体を60℃に温度調整した後、各検体を20メッシュにあけ出し、当該20メッシュを通過したものの質量と、当該20メッシュ上に残ったもの(固形分)の質量とを測定し、それぞれ検体の質量に対する百分率(質量%)を算出した。結果を表6に示す。
【0076】
【表6】

【0077】
さらに、実施例3で得られたゼリー入り飲料を10回、20回又は40回振ったものを検体として用意した。上記検体を60℃にて1週間保温した後、各検体を20メッシュにあけ出し、当該20メッシュを通過したものの質量と、当該20メッシュ上に残ったもの(固形分)の質量とを測定し、それぞれ検体の質量に対する百分率(質量%)を算出した。結果を表7に示す。
【0078】
【表7】

【0079】
表5及び表6より、実施例2又は3で得られたゼリー入り飲料は、カルシウムの含有量(ゲル強度)や、飲料を振った回数により固形分量が変化するが、20メッシュ上に20〜87質量%の固形分が残り、加温販売用容器詰めゼリー入り飲料として適した食感があることが示された(後述する食感評価参照)。ただし、飲料を振り過ぎると、固形分が少なくなって、食感が十分でなくなる。
【0080】
なお、比較例2で得られたゼリー入り飲料(ゲル化剤の0.097倍量のカルシウム)は、ゼリー強度が高く、飲用時に、固過ぎて、食感が悪くなる。
【0081】
さらに、表5〜表7から分かるように、実施例3で得られたゼリー入り飲料においては、1週間の加温によっても、固形分量及び食感に影響がなかった。
【0082】
〔試験例5〕(温度低下試験−2)
比較例2で得られたゼリー入り飲料と、実施例2で得られたゼリー入り飲料と、実施例3で得られたゼリー入り飲料を10回、20回又は40回振ったものとを検体として用意した。各検体を60℃に保温した後、5℃の雰囲気に置いて、各検体の経時温度(内容物の中心温度)を測定した。結果を表8及び図2に示す。
【0083】
【表8】

【0084】
また、実施例3のゼリー入り飲料から得られた上記検体を60℃にて1週間保温した後、5℃の雰囲気に置いて、各検体の経時温度(内容物の中心温度)を測定した。結果を表9及び図3に示す。
【0085】
【表9】

【0086】
表8及び図2から分かるように、ゲル強度や固形分量は、保温性にはあまり影響がなかった。また、表9及び図3から分かるように、実施例3で得られたゼリー入り飲料においては、1週間の加温によっても、保温性には影響がなかった。
【0087】
〔試験例6〕(温度低下試験−3)
容器として、表10及び表11に示すものを用意した。容器1〜容器5は、容量の異なるPET容器である。
【0088】
【表10】

【0089】
【表11】

【0090】
各容器に、実施例1で得られたゼリー入り飲料を充填したものを検体とした。各検体を60℃に保温した後、5℃の雰囲気に置いて、各検体の経時温度(内容物の温度)を測定した。結果を表12〜表14及び図4〜図6に示す。
【0091】
【表12】

【0092】
【表13】

【0093】
【表14】

【0094】
表12〜表14及び図4〜図6より、容積が295mL以上の容器が保温性に優れることが分かる。ただし、容器の持ち易さは、容積が108〜530mLの容器が好ましく、295〜365mLの容器が特に好ましい。
【0095】
〔試験例7〕(食感評価)
市販の容器詰めおしるこ飲料(伊藤園社製,缶大納言しるこ;60℃)と、市販の容器詰めコーンポタージュ飲料(伊藤園社製,缶コーンポタージュ;60℃)と、比較例1で得られた飲料(液状飲料;固形分0質量%;60℃)と、実施例2で得られたゼリー入り飲料を、固形分を感じる程度に振った(5回)もの(ゲル状ゼリー入り飲料;60℃;固形分84質量%)と、比較例2で得られたゼリー入り飲料(20℃;固形分92質量%)と、実施例3で得られたゼリー入り飲料を10回振ったもの(60℃;固形分79質量%)、20回振ったもの(60℃;固形分60質量%)、30回振ったもの(60℃;固形分53質量%)、及び40回振ったもの(60℃;固形分46質量%)とを検体として用意した。
【0096】
上記検体について、食感の官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された5人のパネラーにより、上記検体を試飲することにより行った。次に示す基準で食感に関し、3段階にて評価した。最も多かった評価を表15に示す。
【0097】
=食感の評価=
○:充分に固形物の食感がある。
△:固形物の食感がある。
×:固形物が少ない、あるいは固さが弱く食感がない。又は、固形物が固過ぎて、食感が悪い。
【0098】
【表15】

【0099】
表15から、固形分量が20〜90質量%であるゼリー入り飲料が、飲用ゼリーとして食感に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明によれば、保温性に優れ、ゼリーの食感を有する、従来にない新規な加温販売用容器詰め飲料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル化剤によってゲル化されたゼリーを含む加温販売用容器詰めゼリー入り飲料であって、
前記ゲル化剤の量に対して質量基準で0.024〜0.095倍量のカルシウムを含有する
ことを特徴とする加温販売用容器詰めゼリー入り飲料。
【請求項2】
60℃にて20メッシュを通過させたときに残る固形分量が、当該ゼリー入り飲料の20〜90質量%であることを特徴とする請求項1に記載の加温販売用容器詰めゼリー入り飲料。
【請求項3】
前記ゼリーが、果汁又は果汁を含有する組成物をゲル化したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の加温販売用容器詰めゼリー入り飲料。
【請求項4】
当該ゼリー入り飲料の60℃における粘度が10〜700mPas・sであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の加温販売用容器詰めゼリー入り飲料。
【請求項5】
PET容器に充填されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の加温販売用容器詰めゼリー入り飲料。
【請求項6】
容器容量が220〜600mLであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の加温販売用容器詰めゼリー入り飲料。
【請求項7】
ゲル化剤によってゲル化されたゼリーを含む加温販売用容器詰めゼリー入り飲料の製造方法であって、
前記ゲル化剤の量に対して質量基準で0.024〜0.095倍量のカルシウムを配合する
ことを特徴とする加温販売用容器詰めゼリー入り飲料の製造方法。
【請求項8】
当該ゼリー入り飲料の60℃における粘度が10〜700mPas・sとなるように、粘度を調整することを特徴とする請求項7に記載の加温販売用容器詰めゼリー入り飲料の製造方法。
【請求項9】
ゲル化剤によってゲル化されたゼリーを含む加温販売用容器詰めゼリー入り飲料の品温低下抑制方法であって、
前記ゲル化剤の量に対して質量基準で0.024〜0.095倍量のカルシウムを配合する
ことを特徴とする加温販売用容器詰めゼリー入り飲料の品温低下抑制方法。
【請求項10】
当該ゼリー入り飲料の60℃における粘度が10〜700mPas・sとなるように、粘度を調整することを特徴とする請求項9に記載の加温販売用容器詰めゼリー入り飲料の品温低下抑制方法。
【請求項11】
ゲル化剤によってゲル化されたゼリーを含む加温販売用容器詰めゼリー入り飲料の食感保持方法であって、
前記ゲル化剤の量に対して質量基準で0.024〜0.095倍量のカルシウムを配合する
ことを特徴とする加温販売用容器詰めゼリー入り飲料の食感保持方法。
【請求項12】
当該ゼリー入り飲料の60℃における粘度が10〜700mPas・sとなるように、粘度を調整することを特徴とする請求項11に記載の加温販売用容器詰めゼリー入り飲料の食感保持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−65610(P2012−65610A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214331(P2010−214331)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【Fターム(参考)】