説明

加湿チャンバに関する改良

チャンバ(10)内の液体の液面高さを制御するバルブを開示する。バルブは、液体入口(30)と、第1のフロート(40)とを含み、第1のフロートは、チャンバ(10)内の液体(20)が所定の許容液面高さより低い場合に液体(20)が液体入口(30)を介してチャンバ(10)内へ流入可能となる開配置と、チャンバ(10)内の液体が所定の許容液面高さ以上の場合に液体(20)が液体入口(30)を介してチャンバ(10)内へ流入することが妨げられる閉配置と、の間の液体(20)の液面高さの変化に応答して動くことが可能である。バルブは、第2のフロート(50)も含み、第2のフロートは、チャンバ(10)内の液面が所定の許容液面高さを超えて増加することに応答して、非作動配置から、第1のフロート(40)が閉配置へ強制的に向かうように第2のフロート(50)が第1のフロート(40)に力をかける作動配置へ、と動くことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加湿チャンバに関し、特に、呼吸回路において吸入前にガスを加湿するために使用する加湿チャンバに関する。
【背景技術】
【0002】
充分な湿気の含まれていないガスを患者が吸入すると、気道を傷つけたり、炎症を起こしたり、又は、特に上気道のバイパスをしている患者の場合には、必須分泌液からの脱水が起きてしまう。したがって、呼吸回路内のガスは通常吸入前に適切な加湿チャンバを利用して加湿される。
【0003】
従来の加湿チャンバは、一般に多量の水を含み、加湿チャンバへのガスの出入り用の2つのポート、および水の加熱手段を持っている。さらに、加湿チャンバの多くは、水の液面高さを相対的に一定に保つために、加湿チャンバから失われた水を補給する手段を含む。そのような手段は通常、液体入口バルブにフロートアクチュエータをつけた形態を取り、加湿チャンバ内の水位を相対的に一定に保つために、使用時におけるフロートアクチュエータの浮き沈みによってバルブを開閉させる。
【0004】
しかし、従来の液体入口バルブは、壊れて正しく機能しないことがある。特に、小さな異物によってフロートアクチュエータの動きが制限されたり、フロートアクチュエータそのものへのダメージによって浮力が減少することがある。液体入口バルブが閉じない場合には、使用中に加湿チャンバ内の液面が上昇し続け、患者の呼吸回路に水が入る状態に至る。呼吸回路に水が入ると、患者にとっては明らかに潜在的な有害因子となる。このために、加湿チャンバの中への水の流れを防止するためのバックアップ機構を備えた加湿チャンバが開発されてきた。特に、第2のフロートアクチュエータを備えた加湿チャンバが開発されてきた。これは、加湿チャンバ内の液面高さが、第1のフロートアクチュエータが正常に動作していればバルブを閉じる筈の高さよりも高くなった場合に、第2のフロートアクチュエータが液体入口バルブを閉じるように作用するものである。このように、理由はどうであれ、第1のフロートアクチュエータが正しく機能しない場合に、加湿チャンバ内の水位の上昇による患者への問題が起きる以前に、第2のフロートアクチュエータによって液体入口バルブを閉じようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第0589429号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような加湿チャンバは、構造が複雑になることが多く、それによって製造コストが大幅に増大するという欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来技術に関連する、前述の及び/又はその他の不利な点を克服、もしくは大幅に軽減する、改良されたバルブおよび加湿チャンバが考案された。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、チャンバ内の液面高さを制御するバルブが設けられる。このバルブが、液体入口と、第1のフロートと、を含み、第1のフロートは、チャンバ内の液体が所定の許容液面高さより低い場合には液体が液体入口を通ってチャンバ内へ流入可能となる開配置と、チャンバ内の液体が所定の許容液面高さ以上の場合には液体が液体入口を通ってチャンバ内へ流入することが妨げられる閉配置と、の間の液面高さの変化に応答して動くことが可能である。また、このバルブは、第2のフロートを含む。第2のフロートは、チャンバ内の液面が所定の許容液面高さを超えて増加することに応答して、非作動配置から、第1のフロートを強制的に閉配置へ向かわせるように第2のフロートが第1のフロートに力をかける作動配置へ、と動くことが可能である。
【0009】
本発明のバルブは、吸入前にガスを加湿するために呼吸回路で使用される加湿チャンバに特に有利である。ゆえに、本発明のさらなる態様によれば、吸入前にガスを加湿するために呼吸回路で使用される加湿チャンバが設けられ、この加湿チャンバは、多量の液体を収容するのに適し、かつ、使用時に加湿チャンバを貫通してガスが流れるためのガス入口部およびガス出口部と、加湿チャンバ内の液面の高さを制御するための前述のバルブと、を備える。
【0010】
本発明によるバルブおよび加湿チャンバの主たる利点は、チャンバ内の液体が所定の許容液面高さに達したとき、あるいはそれ以上となったときに、第1のフロートが閉配置へ移行しそこなう場合に、チャンバ内部の液面高さの上昇により、第2のフロートが第1のフロートに力を及ぼして、第1のフロートを閉配置へ強制的に導くことである。第2のフロートは、バルブを閉じるための別のアクチュエータ部材に接続されているのではなく、第1のフロートに力を及ぼすのであるから、本発明のバルブおよび加湿チャンバは、従来技術によるバルブおよび加湿チャンバに比べて、はるかに単純な構造であり、それゆえ、製造コストは大幅に削減され、かつ運転の信頼性がより高い。
【0011】
液体は通常、水もしくは適切な水溶液である。使用中に、チャンバを通って流れるガスが加湿されるので、加湿チャンバ内の液面高さは徐々に減少する。もっとも好ましくは、バルブが、所定の許容レベル付近の比較的狭い範囲内に、チャンバ内の液面高さを維持することができる。
【0012】
第2のフロートが第1のフロートにかける力は、好ましくは第2のフロートの浮力によって生じる。したがって、チャンバ内の液面高さが上がるにつれてこの力は増加する。それゆえ、この力は好ましくは、第1のフロートの閉配置への移行の阻害要因を克服するのに充分なまで増加する。第1のフロートが閉配置に移行できない原因の可能性としては、小さな異物が第1のフロートの動きを妨げているとか、第1のフロートが損傷して浮力が減少しているとか、がある。第2のフロートは、好ましくは、第1のフロートよりも大きな浮力を有する。特に、第2のフロートは、第1のフロートの浮力に比べて、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍、そしてもっとも好ましくは約4倍の浮力を有する。
【0013】
第1のフロートは好ましくは、液体入口に対して摺動自在に搭載される。この場合、第2のフロートは好ましくは、第1のフロートに対して摺動自在に搭載される。もっとも好ましくは、第1および第2のフロートのいずれもが、ガイドスリーブに対して摺動自在に搭載される。ガイドスリーブは好ましくは、加湿チャンバの内部表面から延在し、液体入口は好ましくはガイドスリーブの内部に配設される。この好適な実施形態においては、第1のフロートの少なくとも一部分がガイドスリーブ内に摺動自在に搭載され、かつ、第2のフロートの少なくとも一部分がそのガイドスリーブの周りに摺動自在に搭載される。この場合、ガイドスリーブが好ましくは、その内部表面に長手の肋材(リブ)を含み、第1のフロートの外部表面を液体が流れ落ちる水路を画定する。
【0014】
第2のフロートは好ましくは、第1のフロートに強制的に閉配置に向かわせる力をかけるために、第1のフローに直結している。好ましくは、この係合は第1と第2のフロートの外側表面上にあるそれぞれの協同構造の間でなされる。もっとも好ましくは、第2のフロートが、第1のフロートの作用面への係合に適応する、少なくとも1つの突起を有する。作用面は好ましくは、第1のフロートの少なくとも1つの突起の下側に画定される。この好適な実施形態においては、第2のフロートが、第1のフロートの少なくとも一部が貫通して延在する中央開口部を含み、この中央開口部が、第1のフロートの外部表面上の1つまたは複数の突起に係合する1つまたは複数の突起を含む。特に、第2のフロートは好ましくは、第1のフロートの1つまたは複数の突起と係合する、内側に張り出した環状フランジを含む。このフランジは好ましくは、少なくともひとつの開口部、好ましくは一連の開口部を備え、使用中にフランジを通って液体が流れることを可能とする。第2のフロートは好ましくは、空気で充填された内部チャンバを備える。この内部チャンバには好ましくは、使用中に第2のフロートへ過度の圧力が蓄積されることを防ぐための通気孔が、好ましくは第2のフロートの上側の壁に形成されて、設けられている。
【0015】
液面の高さが所定の許容液面高さに近い場合、前記第2のフロートは好ましくは、バルブの正常動作中は非作動配置に留まるようになっている。特に、好ましくはフロート及び/又はチャンバには、第2のフロートを加湿チャンバの他の部分に対して最低限の高さあるいはそれ以上に維持するための手段が設けられる。この結果、好ましくは、正常動作中は第2のフロートが液面から離間し、チャンバ内のガスの加湿を促進する。たとえば、第2のフロートを加湿チャンバの他の部分に対して最低限の高さあるいはそれ以上に維持するために、第2のフロートが、前記チャンバの内部表面上の構造と係合する。あるいは、第2のフロートを加湿チャンバの他の部分に対して最低限の高さあるいはそれ以上に維持するために、第2のフロートが、加湿チャンバの下側の内部表面上に載るのに適合する1つまたは複数の脚を含む。この場合、バルブの正常動作時には脚の下部のみが液中に浸り、第2のフロートの残りの部分は液面から離間している。
【0016】
第2のフロートは好ましくは、射出成形されたプラスチック材料で形成される。第2のフロートは、好ましくは複数、もっとも好ましくは2つの部材からなり、これらの部材は相互に係合可能であって、協同して第2のフロートの内部チャンバを画定する。この好適な実施形態では、係合可能な部材は協同構造を含む。これにより、その部材を一緒に固定し、もっとも好ましくはスナップフィットで固定する。係合可能な部材は、一緒に接着してもよい。前記の協同構造は、スナップフィットで相互に係合可能な、大きいヘッドを有する容易に変形できる突起であってよい。この好適な実施形態においては、第2のフロートが、個別部品として射出成形された2つの係合可能な部材からなり、この2つの部材がヒンジで結合され、回転して相互に係合することができる。
【0017】
バルブは好ましくは、弁座を含み、第1のフロートか別のアクチュエータ部材のいずれかが好ましくは、弁座と係合可能で、液体入口を通ってチャンバに入る液体流を制御する。開配置においては、第1のフロートかアクチュエータ部材のいずれかが好ましくは弁座から開放され、液体が液体入口を通ってチャンバ内へ流入可能である。また、閉配置においては、第1のフロートかアクチュエータ部材のいずれかが好ましくは弁座と係合し、液体が液体入口を通ってチャンバ内へ流入するのを妨げる。個別のアクチュエータ部材が弁座と係合可能な場合には、このアクチュエータ部材は好ましくは第1のフロートと操作可能に連結し、第1のフロートの動きに応答して動くことができる。本好適な実施形態においては、アクチュエータ部材が、第1のフロートと係合するバルブクッションの形態を有する。アクチュエータ部材及び/又は弁座は、好ましくは、信頼性がありかつ効果的にシールができるように、熱可塑性エラストマのような弾力性のある材料からできている。
【0018】
バルブの液体入口は好ましくは、加湿チャンバの壁を貫通して延在する液体用管路の形態を有する。液体入口は好ましくは、一端が液体源への接続用となり、もう一方の端部がチャンバへの液体の導入用となっている。もっとも好ましくは、液体入口が、液体がチャンバに入るための開口部を含み、弁座が好ましくはこの開口部の周りに延在する。この開口部は、好ましくは、液体入口のその他の部分に比べて直径が小さく、液体入口は好ましくは、開口部に繋がるテーパのついた端部を含む。弁座は好ましくは、液体入口と一体構造となっており、好ましくは、狭い作用面を有する。
【0019】
加湿チャンバは好ましくは、プラスチック材料、特にもっとも好ましくは射出成形によるプラスチック材料で形成された上部と、適切な金属などの熱の良導体で形成されたベースと、を備え、これらが協同して液体を収納する容器を画定する。ベースは好ましくは概ね円形であり、上部は好ましくは概ね円筒状の側壁を有する。ガス入口部分およびガス出口部分は好ましくは加湿チャンバの上部壁中に形成され、好ましくは、通常の呼吸器コネクタおよび配管との接続に適合する、直立した管状コネクタを含む。液体入り口およびガイドスリーブが、好ましくは加湿チャンバの上部に一体で形成され、好ましくは加湿チャンバの上部壁内の概ね中央に配置される。
【0020】
本発明の好適な実施形態を、例示としての添付の図面を参照して、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による加湿チャンバの第1の断面図である。ここで第1のフロートが液体入口バルブを閉配置に保持するように作用している。
【図2】本発明による加湿チャンバの第2の断面図である。ここで第2のフロートが液体入口バルブを閉配置に保持するように作用している。
【図3】第1のフロートの断面図である。
【図4】第2のフロートの断面図である。
【図5】加湿チャンバの液体入口バルブの部分断面図である。
【図6】加湿チャンバの液体入口フィルタの透視図である。
【図7】液体入口フィルタの側面図である。
【図8】液体入口フィルタの、図7の線VIII−VIIIに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1および図2は、一般に符号10で示された本発明による加湿チャンバを示す。加湿チャンバ10は、透明プラスチック材料で射出成形された本体12と、本体12の開放された下端に固定された金属ベース14とを含む。加湿チャンバ10の本体12およびベース14は、使用時に多量の水20を収容する容器を協同して画定する。
【0023】
加湿チャンバ10の本体12は、その下端がベース14の周辺に固定された、概ね円筒形で、わずかにテーパの付いた側壁と、普通の浅いドーム形状を有する上部壁とを備える。加湿チャンバ10のベース14は円板の形状を有し、その上方に曲がった縁が、本体12の側壁の下端にあるフランジで密封される。
【0024】
22mmの管状コネクタの形をした、2つの入口/出口部分16が、加湿チャンバ10の上部壁にある開口部から上方へ延在する。入口/出口部分16のそれぞれは、半円筒状の延長部分17と円形の終端バッフル18も加湿チャンバ10の筐体の中に含み、これらが協同して加湿チャンバ10の側壁に対向する下部開口部を画定する。さらに、加湿チャンバ10が4つのバッフル19を含み(このうちの2つが図1に示されている)、これらのすべては加湿チャンバ10の本体12と一体で形成され、それぞれが上部壁の内部表面から下方向へ延在する。バッフル19のそれぞれのは水平方向に弓状となっており、加湿チャンバ10の側壁の内部表面と、ガイドスリーブ32に離間して隣接する位置との間で水平方向に延在する。
【0025】
次に図5も参照すると、加湿チャンバ10は、加湿チャンバ10の上部壁の中央にある開口部を貫通して延在する液体入口30も含む。液体入口30は、開放された上端を持つ上部円筒部と、直径の小さい中間円筒部と、加湿チャンバ10の中に終端を有し上部開放端に比べてはるかに小さい直径の下部開口部を有するテーパのついた下端部とを含む。
【0026】
図5でもっともはっきりわかるように、下部開口部を囲む液体入口30の外部表面は2つの同軸の突起を含む。ここで、内側の突起が外側の突起よりも長い。これらの同軸の突起がそれぞれ相対的に狭い端部で終端する。これらの相対的に狭い端部が、内側弁座34および外側弁座35を画定する。これらの2つは、以下に詳細を述べるエラストマのバルブクッション42と共にシールを形成するようになっている。
【0027】
フィルタ60が液体入口30に固定され、液体入口30を通って流入する水は必然的にフィルタ60を通流する。フィルタ60は図6、7、8にもっとも明瞭に示されており、円筒形入口部62と、直径の小さい円筒形出口部64とからなる。入口部62には1つの開放端と、出口部64が延出する1つの端部とがある。入口部62の内部に少し入ったところに出口部64の開放端があり、これによって、環状をした、フィルタ60の第1の集塵室68が画定される。そして出口部64は、入口部62の端部壁から外へ突き出している。出口部64の突出部が、閉鎖端と、6つの細長い開口部65を備えた側壁とを有する。この細長い開口部65はそれぞれは、出口部64の内側に向かって次第に幅が狭くなっている。開口部65は、周方向に拡がるペアの開口が、出口部64の長手軸に沿って等間隔に3組配置された構成となっている。さらに、この開口部65に対して直交して延在する長手部材66が、出口部64の内部表面上に形成され、この結果、出口部64の側壁内にアレイ状の開口部が画定される。出口部64の終端部には開口はなく、よってフィルタ60の第2の集塵室69が画定される。この実施形態においては、フィルタ60はポリカーボネートプラスチック材料で射出成形され、それぞれの開口部は幅が約0.26mmで長さが約0.36mmとなっている。
【0028】
フィルタ60の入口部62は、液体入口30の上部内に締まりばめで受けられ、フィルタ60の入口部分62の外側表面と液体入口30の上部の内部表面との間が適切な接着剤で密封されて固定される。フィルタ60の出口部分64は、その外部表面が、液体入口30の中間部およびテーパのついた下端部の内部表面とは、すべての場所で離間するような寸法となっている。フィルタ60の入口部分62もまた、使用時に液体入口30が水源と連通できるために、適切な液体管路のコネクタを受けられるような適切な寸法となっている。
【0029】
図1および2に示すように、加湿チャンバ10の上部壁には、中央に位置し、下方向に延在する円筒形のガイドスリーブ32がある。これは液体入口30よりも直径が大きく、それと同軸で延在している。使用時に、液体入口30を介して供給される水20が第1のフロート40の外部表面を流れ落ちる水路を画定するように、8個の長手の肋材33が、ガイドスリーブ32の内部表面に等角度間隔で設けられる。
【0030】
液体入口バルブが、液体入口30を通る水20の流れを制御する。液体入口バルブは、第1のフロート40と、バルブクッション42と、第2のフロート50と、からなる。第1のフロート40は分離して図3に示すが、上部と下部とからなり、欧州特許出願EP1366881号に説明されている射出成形プロセスを用いてプラスチック材料で一体成形される。
【0031】
第1のフロート40の上部は、相対的に薄い壁と上部開放端から下部開放端に向かって徐々にかつわずかに増大する直径とを有する概ね円筒形のチューブである。上部の外部表面は、ガイドスリーブ32と低摩擦で摺動自在に係合できるようにするために、高度に磨かれている。そして周方向に延在し、直径をはさんで正対する一対の突起48を含む。これらの突起48は、以下により詳細を説明するように、第2のフロート50が係合するようになっており、それぞれが、第1のフロート40の上部の隣接面に対して直交する方向を向いた作用下面を備えている。
【0032】
円形の隔壁44が、第1のフロート40の上部の内側を横断して延在し、第1のフロート40の上部表面に円筒形のリセスを画定する。さらに、この上部は、円形隔壁44の下の壁の下側部分に、等角度間隔で配置された4つの開口部46を含む。
【0033】
第1のフロート40の下部もまた概ね円筒形の形状であるが、フロート40の上部よりも厚い壁を有している。この下部のプラスチック材料は、プラスチック材料中にガスを捕捉した沢山のポケットを有する、泡状の構造をなす。第1のフロート40は加湿チャンバ10の筐体内部に配置され、充分な量の水20が加湿チャンバ10の中に導入されるまでは、第1のフロート40の下端が加湿チャンバ10のベース14上に載っている。また、第1のフロート40の上部の大部分は、ガイドスリーブ46内に摺動可能なすり合わせで収容される。
【0034】
バルブクッション42は、エラストマ材料で形成されるが、カップ形状となっていて、第1のフロート40の上部表面の円筒形リセスの内部に締まりばめで収容される。バルブクッション42の開放された上端は、第1のフロート40の上部の縁に載る、外方向に拡がったフランジを有する。またバルブクッション42のベースは第1のフロート40の円形隔壁44からは離れていて、使用時にバルブクッション42が中央隔壁44の方向へ変形できるようになっている。
【0035】
第2のフロート50を分離して図4に示す。この第2のフロートは、上部部材52と下部部材54とからなり、これらは個別部品として射出成形され、ヒンジ53で結合されている。上部部材52と下部部材54とが協同して内部チャンバを画定し、これが第2のフロート50に、第1のフロート40の約4倍の浮力を与える。しかし、図2で示すように、使用中に第2のフロート50中への過度の圧力蓄積を防ぐための通気孔55が、第2のフロート50の上側の壁に設けられている。
【0036】
上部部材52が第2のフロート50の側壁および上部壁を画定し、下部部材54が第2のフロート50の円筒形の内壁およびベースを画定する。上部部材52の内部端と下部部材54の上端には、大きなヘッドを持つ、相対応する環状突起が形成され、相互にスナップフィットとして係合する。同様に、上部部材52および下部部材54の外部端には、大きなヘッドを持つ、相対応する環状突起が形成され、相互にスナップフィットとして係合する。このように、ヒンジ53で結合される上部部材52と下部部材54とは、個別部品として射出成形され、次に、上部部材52と下部部材54が回転されて相互にスナップフィットで係合して、第2のフロート50を形成する。対応する突起間のスナップフィットは、使用中に第2のフロート50の内部チャンバへの水の浸入を防ぐようになっている。しかし、必要な場合には、上部部材52と下部部材54は接着される。
【0037】
第2のフロート50の上部部材52は、第2のフロート50が加湿チャンバ10の上部壁に沿って配置できるように、加湿チャンバ10の上部壁の内部表面に概ね一致した形状を有する。特に、上部部材52は、図1および図4で最もよくわかるように、概ね円筒形であるが僅かに傾斜した側壁と、環状の上部壁とを有す。さらに図2に最もはっきり示すように、上部部材52は、入口/出口部16の延長部17とバッフル18を収納するための浅い窪みと、加湿チャンバ10の上部壁から延在する弓状のバッフル19を収納するためのより広範なリセスとを備えている。
【0038】
下部部材54は、第1のフロート40の下部の上側部分を収納できる形状となった環状ベースと、ガイドスリーブ32の外部表面と摺動自在に係合できるようになった円筒状の内側部分と、を備える。円筒状の内側部分は開放された上下端と、その内側表面上に等角度間隔で配置された6個の長手の肋材56と、を有す。さらに、環状フランジ58は、第2のフロート50の内部下端から内側へ延在し、第1のフロート40の外部表面上にある突起48と係合する上側作用面を含む。フランジ58は、使用時に水20の通流を可能とする、一連の開口部57もまた含む。
【0039】
下部部材54は、加湿チャンバ10のベース14に載る3本の脚59も含み、これによって正常動作時に第2のフロート50を最小高さに維持する。図2に示すように、脚59はそれぞれ、第2のフロート50の内部のほかの部分と連通する内部チャンバを含む。
【0040】
最後に、加湿チャンバ10は、ユーザが容易に水20の液面高さを確認できる、液面指示計70を含む。この液面指示計は環状フロート70と(図1および図2には表示せず)適切なレベル指示マークとを含み、これは欧州特許出願EP1347797号に説明されている。
【0041】
ガス入口管路(図には表示せず)を入口/出口部分16の1つへ連結し、ガス出口管路をもう1つの入口/出口部分16に連結することによって、加湿チャンバ10が呼吸回路に接続される。熱源(図には表示せず)が加湿チャンバ10のベース14に接触して配置され、加湿チャンバ10の中の水20を所望の温度へ加熱する。
【0042】
次に、液体管路(図には表示せず)の一端が給水源に、もう一方の端部が液体入口30に、接続されて、水20がフィルタ60および液体入口30へ連続的に供給される。水20の給水源が最初に加湿チャンバ10に接続されると、水20がフィルタ60および液体入口30を通って流れ、バルブクッション42を満杯にする。そして次にガイドスリーブ32の長手の肋材33で画定される水路を通って流れ、第2のフロート50のフランジ58にある開口部57を通り、第1のフロート40の外部表面を下がって加湿チャンバ10のベース14へと流れる。こうして加湿チャンバ10が水20で満たされ始める。
【0043】
給水源は、水を充填した可撓性バッグのような容器や、その他の種類の水貯蔵器であってよい。そのような給水源は、バッグや貯蔵器の製造、保管、過去の使用などの結果として存在しうる異物を含むことがしばしばある。しかし、フィルタ60が作用して、異物が液体入口30を通過して加湿チャンバ10の筐体内へ入ることを防止する。使用時には、異物は重力の影響により、フィルタ60の入口部62にある第1の集塵室68か、フィルタ60の出口部64にある第2の集塵室69、のいずれかに集まる。それぞれの場合、第1および第2の集塵室68、69に集積された異物は、出口部64の開放された上端および出口部64の側壁中の開口部からは遠くへ排除され、したがって、フィルタ60を通る水の流れを妨げたり、バルブ機構の正常動作を妨げたりしない。
【0044】
加湿チャンバ10の中の水20がある高さに達すると、第1のフロート40が浮力によって、加湿チャンバ10のほかの部分よりも相対的に上昇する。第1のフロート40はガイドスリーブ32によって直立の姿勢を保持される。第1のフロート40は上昇を続け、水20が充分な高さに達すると、バルブクッション42が液体入口30の内部弁座34に対し充分な力で押し付けられて実効的なシールを形成する。そうして、液体入口30の下部開口部を通って水20が流入することを防ぐ。この構成を図1に示す。
【0045】
通常は、バルブクッション42と内部弁座34との間に有効なシールが形成される以前に、バルブクッション42が第1のフロート40の中央隔壁44の方へいくらかの変形をする。そうすることによって、加湿チャンバ10への水20の流入がとまる。バルブクッション42の作用面及び/又は内部弁座34に異物があることなどにより、バルブクッション42と内部弁座34との間に有効なシールが形成されない場合には、第1のフロート40は上昇し続ける。そうして、バルブクッション42の変形が大きくり、液体入口30の外部弁座35へ充分な力で押し付けられて、最終的に有効なシールが形成される。こうして、液体入口30の下部開口部を通しての水20の流入が阻まれる。
【0046】
使用時には、患者の吸引用のガスが、ガス入口管路へ正圧で供給される。ガス入口管路とガス出口管路との間の圧力差によって、ガス入口管路から加湿チャンバ10の筐体を経由してガス出口管路へとガスが流れる。これにより、チャンバ10内の水蒸気が、加湿チャンバ10を貫流するガスに取り込まれ、その結果ガス出口管路内のガスが、ガス入り口管路のガスに比べて高い湿度を有する。
【0047】
加湿チャンバ10を貫流するガスに水が取り込まれるために、加湿チャンバ10内の水20の液面高さは次第に減少する。第1のフロート40は、したがって加湿チャンバ10のほかの部分に対して相対的に下がる。これは、液体入口バルブのバルブクッション42が、液体入口30の下部開口部から離れ、そうして液体入口30を通って加湿チャンバ10の中へ水20が流入するまで続く。水20の液面高さが再び増加すると、第1のフロート40が加湿チャンバ10のほかの部分に対して相対的に上がる。水20が充分な水位に達して、バルブクッション42をもう一度液体入口30の下部開口部の内部及び/又は外部弁座に対して充分な力で押し付けて有効なシールを形成するまで、第1のフロート40は上昇を続ける。こうして下部開口部を介しての水20の流入が阻止される。このように、使用中の水20の液面高さは相対的に一定に保たれる。さらに、第1のフロート40に開口部があることで、第1のフロート40の浮力が水20の表面と第1のフロート40の下部の内部表面との間に捕えられた空気に影響されることが防止される。
【0048】
第1のフロート40の動きを制限する小さな異物によって、又は、浮力を減少させるような第1のフロート40の損傷、などによって、液体入口バルブが損傷を受けた場合には、加湿チャンバ10内の水20の液面高さが上昇を続け、正常動作時には液体入口バルブが閉じる液面の高さを超えてしまう。しかし、加湿チャンバ10内の水20がある水位に達すると、第2のフロート50がその浮力によって、加湿チャンバ10のほかの部分に対して相対的に上昇し、かつガイドスリーブ32により直立の姿勢を保持する。
【0049】
第2のフロート50は上昇を続け、水20が十分な水位に達すると、第2のフロート50のフランジ58が、第1のフロート40の突起48に突き当たって係合する。加湿チャンバ10内の水20の液面高さの上昇に伴い、第2のフロート50にかかる上向きの浮力、したがって第2のフロート50が第1のフロート40に上向きにかける力は、増加し続ける。その結果、最終的に第1のフロート40が、加湿チャンバ10のほかの部分に対して相対的に上昇する。第2のフロート50は第1のフロートの約4倍の浮力を有する。したがって、第1のフロート40の動きの制限、浮力を減少させるような第1のフロート40への損傷、などの液体入口バルブへの通常の損傷は、第2のフロート50が第1のフロート40にかける上向きの力で克服することができる。第2のフロート50が第1のフロート40にかける上向きの力により、加湿チャンバ10のほかの部分に対して第1のフロート40が相対的に上昇し、ついにはバルブクッション42を、液体入口30の内部弁座34及び/又は外部弁座35に対して充分な力で押し付けて有効なシールを形成させる。こうして、詳細を前述したように、液体入口30の下部開口部を通しての水20の流入が阻止される。この構成を図2に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内の液面の高さを制御するバルブであって、
液体入口と、
第1のフロートと、
を含み、
前記第1のフロートは、チャンバ内の液体が所定の許容液面高さより低い場合には液体が液体入口を介してチャンバ内へ流入可能となる開配置と、チャンバ内の液体が所定の許容液面高さ以上の場合には液体が液体入口を介してチャンバ内へ流入することが妨げられる閉配置と、の間の液面高さの変化に応答して動くことが可能であり、
前記バルブは、第2のフロートを含み、前記第2のフロートは、チャンバ内の液面が所定の許容液面高さを超えて増加することに応答して、非作動配置から、前記第1のフロートを閉配置へ強制的に向かわせるように前記第2のフロートが前記第1のフロートに力をかける作動配置へ、と動くことが可能である、
ことを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記バルブは、前記所定の許容液面高さ付近の、比較的狭い範囲内にチャンバ内の液体の前記液面高さを維持するのに適応する、請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記第2のフロートにより前記第1のフロートにかけられる前記力が、前記第2のフロートの浮力によって生じる、請求項1又は2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記第2のフロートが前記第1のフロートよりも大きな浮力を有する、請求項3に記載のバルブ。
【請求項5】
前記第2のフロートが前記第1のフロートの浮力の少なくとも2倍の浮力を有する、請求項4に記載のバルブ。
【請求項6】
前記第2のフロートが前記第1のフロートの浮力の少なくとも3倍の浮力を有する、請求項5に記載のバルブ。
【請求項7】
前記第1のフロートが前記液体入口に対して摺動自在に搭載される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項8】
前記第2のフロートが前記第1のフロートに対して摺動自在に搭載される、請求項7に記載のバルブ。
【請求項9】
前記第1および第2のフロートがガイドスリーブに対して摺動自在に搭載される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項10】
前記ガイドスリーブが前記チャンバの内部表面から延在し、前記液体入口が前記ガイドスリーブ内に配設される、請求項9に記載のバルブ。
【請求項11】
前記第1のフロートの少なくとも一部分が前記ガイドスリーブ内に摺動自在に搭載され、かつ、前記第2のフロートの少なくとも一部分が前記ガイドスリーブの周りに摺動自在に搭載される、請求項10に記載のバルブ。
【請求項12】
前記ガイドスリーブがその内部表面に長手のリブを含み、このリブが前記第1のフロートの外部表面を液体が流れ落ちる水路を画定する、請求項11に記載のバルブ。
【請求項13】
前記第2のフロートが前記第1のフロートに直接係合し、前記第1のフロートを閉配置へ強制的に向かわせる力を前記第1のフロートへかける、請求項1〜13のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項14】
前記第1のフロートと前記第2のフロートとの間の係合は、前記第1および第2のフロートの両外側表面上の協同構造の間でなされる、請求項13に記載のバルブ。
【請求項15】
前記第2のフロートが、前記第1のフロートの作用面に係合するのに適する、少なくとも1つの突起を含む、請求項14に記載のバルブ。
【請求項16】
前記作用面が、前記第1のフロートの少なくとも1つの突起の下側に画定される、請求項15に記載のバルブ。
【請求項17】
前記第2のフロートが、前記第1のフロートの少なくとも一部分が貫通して延在する中央開口部を含み、前記中央開口部が、前記第1のフロートの外部表面上の1つまたは複数の突起に係合するのに適する1つまたは複数の突起を含む、請求項14〜16のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項18】
前記第2のフロートが、前記第1のフロートの1つまたは複数の突起と係合する、内側に突き出た環状のフランジを含む、請求項17に記載のバルブ。
【請求項19】
前記フランジに、使用時に前記フランジを貫通して液体が通過できるための少なくとも1つの開口部が設けられている、請求項18に記載のバルブ。
【請求項20】
前記第2のフロートが、空気で充填された内部チャンバを備え、前記内部チャンバには、使用中に前記第2のフロート内における過度の圧力蓄積を防ぐための通気孔が設けられている、請求項1〜19のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項21】
前記液面の高さが前記所定の許容液面高さに近いとき、前記バルブの正常動作中は前記第2のフロートが非作動配置に留まる、請求項1〜20のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項22】
前記第2のフロート及び/又は前記チャンバが、前記バルブの正常動作時に、前記加湿チャンバの他の部分に対して最低の高さ、あるいはそれより上に、前記第2のフロートを維持する手段を備える、請求項21に記載のバルブ。
【請求項23】
前記第2のフロートが、正常動作時に前記液体の表面から離れた位置にある、請求項22に記載のバルブ。
【請求項24】
前記第2のフロートが、前記チャンバの内部表面上の構造と係合し、前記加湿チャンバの他の部分に対して最低の高さ、あるいはそれより上に前記第2のフロートを維持する、請求項21〜23のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項25】
前記第2のフロートの前記内部チャンバを前記チャンバのほかの部分に対し、最低の高さ、あるいはそれより上に維持するために、前記第2のフロートが、前記チャンバの内部表面上に載るように1つまたは複数の脚を含む、請求項21〜23のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項26】
前記バルブの正常動作時には前記第2のフロートの前記1つまたは複数の脚の下部のみが液中に浸り、前記第2のフロートの残りの部分は前記液面から離間している、請求項25に記載のバルブ。
【請求項27】
前記第2のフロートが相互に係合可能な複数の部材を備え、その複数の部材が前記第2のフロートの前記内部チャンバを画定する、請求項1〜26のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項28】
前記第2のフロートの前記係合可能な部材が、前記部材を共に固定する協同構造を含む、請求項27に記載のバルブ。
【請求項29】
前記第2のフロートが、個別部品として射出成形された2つの係合可能な部材からなり、前記2つの部材はヒンジにより結合され、相互に係合するために回転可能である、請求項27又は28に記載のバルブ。
【請求項30】
前記バルブが、呼吸回路で使用する、吸入前にガスを加湿するための加湿チャンバへの組み込むに適応する、請求項1〜29のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項31】
呼吸回路において吸入前にガスを加湿するために使用する加湿チャンバであって、 前記加湿チャンバが、多量の液体を収容するのに適応し、かつ、使用時に、前記加湿チャンバを貫通してガスが流れるためのガス入口部とガス出口部、および、前記加湿チャンバ内の液体の液面の高さを制御するための請求項1〜30のいずれか一項に記載のバルブと、を備えることを特徴とする加湿チャンバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−500071(P2010−500071A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523356(P2009−523356)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050486
【国際公開番号】WO2008/017892
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(507289070)インターサージカル アクチェンゲゼルシャフト (4)