説明

加湿ユニット装置

【課題】給気対象室に調湿された空気を送気する際、ダクト部内に設置した水噴霧装置から噴霧されるミストが、ダクト部内を流れる気流に短距離で効率よく蒸発するようにした構造の簡単な加湿ユニット設置を提供する。
【解決手段】送気ダクトDの途中に接続されたダクト部11とその内部に設置された加湿ユニット12とを備え、加湿ユニットが、ほぼ中央で折曲されたV字形の気流調整板14と、これより下流側に設置され、上流側又は下流側に向かってミストを噴射する水噴霧装置15とを備え、気流調整板14が、気流を通過させる多数の通気穴18を備える有孔領域部20と、通気穴18の存在しない非有孔領域部19とを備え、非有孔領域部19は、気流調整板14の折曲部17から幅方向両端部に向かって形成され、気流調整板14は、折曲部17が上流側に位置し、かつ有孔領域部20と非有孔領域部19が気流を受けるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿ユニット装置に関し、さらに詳細には、給気対象室に加湿された空気を送給する際に使用される加湿ユニット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、クリーンルームを備える建屋や工場、或いは病院等では、それらのクリーンルームや部屋(給気対象室)に所定湿度に管理された空気の送給を要求されることがある。このような場合、一般的には、給気対象室に空調空気を送給する空気調和装置(空調装置)又は送気ダクト内に水噴霧装置を設置し、空調装置によってこの送気ダクトを介して空調空気を給気対象室に送るとき、送気ダクトを通過する空気を水噴霧装置により所定湿度に調湿することにより給気対象室内の空気を常に所定湿度に保っている。
【0003】
すなわち、水噴霧装置を設置したダクト部は、通常の送気ダクトの途中に介在され、このダクト部より下流側の送気ダクトには、空調装置が設置され、該空調装置の運転により上流側の送気ダクトに吸気された外気若しくは給気対象室内の空気が、水噴霧装置を設置したダクト部に送られ、ここで加湿された空気は、下流側の送気ダクトを通って給気対象室に送られる。水噴霧装置を設置したダクト部は、大別して、水噴霧装置が設置された拡大ダクト部と、この拡大ダクト部と上流側の送気ダクト部とを接続する接続ダクト部とから構成されている。
【0004】
気流の流れ方向から見た拡大ダクト部の断面形状は、送気ダクトの断面形状より大きく、従って、この拡大ダクト部と送気ダクトとを接続する接続ダクト部は、上流側から下流側に向かって断面積が漸次増加するラッパ状をしている。拡大ダクト部の内部に設置される水噴霧装置は、種々のものがあるが、一般的にはミスト(霧状の水滴)を噴霧する多数のノズル装置と、これらノズル装置に水を供給する配管系(同時に加圧空気を送る場合には加圧空気供給配管も含む)とで構成されている。このノズル装置から噴霧されたミストは、拡大ダクト部を下流方向に流れる空気中で蒸発し、このようにして所定湿度に調湿された空気は、下流側の送気ダクトを通って給気対象室に送気される。このようにミストを噴射するノズル装置からなる水噴霧装置をダクト内に設置し、通過する気体中に蒸発させて加湿する方法及び装置は、特許文献1に開示されているように既に公知の技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−019453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された加湿ユニット設置ダクトは、以下に説明するような従来の問題を解決するために本発明者によって創作されたものである。すなわち、従来の装置では、拡大ダクト部の断面積によっては最も外側に配置されるノズル装置と拡大ダクト部を形成する外壁内面とが非常に接近することがあり、そのような場合、拡大ダクト部内で加湿ユニットから噴霧されたミストの一部が拡大ダクト部の壁部内面に水滴となって付着(結露)しやすくなり、拡大ダクト部の壁部内面にこのような結露が生じると、加湿ユニットにより噴霧されたミストが、拡大ダクト部内を流れる空気中に設計通りに蒸発せず、拡大ダクト部を通過した空気は所定湿度にならない、という問題や、更に、拡大ダクト部を通過した後の送気ダクトの壁面に付着して結露が生じる、という問題があり、特許文献1に開示された加湿ユニット設置ダクトは、このような解決するために創作されたものであった。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された加湿ユニット設置ダクトは、従来のかかる問題、即ち水噴霧装置が設置された拡大ダクト部の内壁への水滴の付着を防止することはできるが、このダクトの構造が極めて複雑で、かつその製造に手間が掛かり、その結果、非常に製造コストが掛かる、という問題があった。また、特許文献1に記載された加湿ユニット設置ダクトは、確かに、従来の装置に比べると水噴霧装置から噴射されたミストが拡大ダクト部内を流れている空気に蒸発するまでの距離が短くはなったが、それでもこのようなダクトを含む空調設備の設置条件を大きく緩和させるほどではなかった。
【0008】
この発明の目的は、かかる問題点を解決するためになされたもので、給気対象室に調湿された空気を送気する際、ダクト部内に設置した水噴霧装置から噴霧されるミストが、ダクト部内を流れる気流に短距離で効率よく蒸発するようにした構造の簡単な加湿ユニット設置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、送気ダクト内を流れる空気を加湿する加湿ユニット装置であり、その特徴とするところは、前記送気ダクトの途中に接続されたダクト部と、このダクト部の内部に設置された加湿ユニットとを備え、前記加湿ユニットが、ほぼ中央の折曲部でV字状に折曲された気流調整板と、この気流調整板より下流側に設置され、ミストを噴射する水噴霧装置とを備え、前記気流調整板が、前記ダクト部内を流れる気流を通過させる多数の通気穴を備える有孔領域部と、前記通気穴の形成されていない非有孔領域部とを備え、該非有孔領域部は、前記気流調整板の前記折曲部から該折曲部に対向する両端部に向かって形成され、前記気流調整板は、前記折曲部が気流の流れ方向上流側に位置し、かつ前記有孔領域部及び前記非有孔領域部が前記ダクト部内を流れる前記気流を受けるように配置されていることにある。
【0010】
かかる加湿ユニット装置における実施形態の一例としては、前記気流調整板が、全面に前記通気穴を開けた有孔板と、この有孔板の一部を覆って前記有孔板の前記通気穴を塞ぐ覆い板とで構成され、前記非有孔領域部が、前記有孔板に前記覆い板を取り付けることで形成されている。
【0011】
本発明の加湿ユニット装置に係る実施形態の他の例としては、前記気流調整板が、全面に前記通気穴をあけた有孔板と、この有孔板に前記非有孔領域部を形成すると共にその範囲を調整可能にすべく前記有孔板の一部を覆って前記有孔板の前記通気穴を塞ぐ複数の板部材で構成され、選択された数の前記板部材を前記有孔板に着脱可能に取り付けて前記非有孔領域部の範囲を自在に調整可能にされている。
【0012】
本発明の加湿ユニット装置に係る実施形態の他の例としては、前記気流調整板が、該気流調整板の周囲縁部と前記ダクト部の内壁面と間に間隔を開けるように前記ダクト部内に支持されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の加湿ユニット装置によると、送気ダクトからダクト部に入った気流は、気流調整板に当たり、その有孔領域部に形成された通気穴を通過するとき、その下流側で整流化し、その整流化された気流中に水噴霧装置からミストが噴射されるので、ミストが効率よく気流に蒸発する。これにより、かかる構成の加湿ユニット装置では、通気穴の大きさや数を適切に調整することにより最適な蒸発効果を得ることができ、その結果、従来の加湿ユニット設置ダクトに比べてダクト部の長さを短くできる。これにより、加湿ユニットを内部に設置したダクト部を備える空調設備の設置条件が緩和され、よって空調設備設置の自由度を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の加湿ユニット装置によれば、上述したように水噴霧装置から噴射されたミストの蒸発効果が優れていることから、加湿ユニットが設置されるダクト部における気流の流れ方向から見た断面をこのダクト部に接続される送気ダクトの断面と同じ大きさにできるので、このような観点からも加湿ユニットを内部に設置したダクト部を備える空調設備の設置条件を緩和することができ、空調設備設置の自由度を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の加湿ユニット装置では、気流調整板が、全面に通気穴を開けた有孔板と、この有孔板の一部を覆って通気穴を塞ぐ覆い板とで構成されているので、例えばパンチングメタルのような全面に通気穴が形成された有孔板を用い、覆い板をこの有孔板に取り付ければ、気流調整板を簡単に製作することができ、その結果、安価な製作コストでこの加湿ユニット装置を提供することができる。
【0016】
また、本発明の加湿ユニット装置によると、気流調整板が、全面に通気穴を開けた有孔板と、この有孔板に非有孔領域部を形成すると共にその範囲を調整可能にする複数の板部材とから構成されているので、適切に選択された数の板部材を有孔板に取り付けることにより非有孔領域部の範囲を自由に且つ精細に調整することができる。このことは、既に設置されている空調設備に、加湿ユニット装置を追加設置する場合などにその空調設備の条件に適切に対応した加湿効果を得ることができる、という優れた効果を奏する。
【0017】
さらに、本発明の加湿ユニット装置によると、気流調整板が、該気流調整板の周囲縁部とダクト部の内壁面と間に間隔を開けるようにダクト部内に支持されているので、ダクト部の内壁面に沿って流れる気流の速度が速く、従ってダクト部内壁面への結露を生じることもなく、その結果、水噴霧装置から噴射されたミストの全てが気流に蒸発するので、設計通りの加湿効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】加湿ユニット装置を概略的に示す斜視図。
【図2】加湿ユニット装置を気流方向に沿う方向で切断して示す断面図。
【図3】加湿ユニット装置の気流調整板に係る一具体例を示す斜視図。
【図4】加湿ユニット装置の気流調整板に係る他の具体例を示す斜視図。
【図5】加湿ユニット装置の気流調整板の更に別の具体例を示す斜視図。
【図6】加湿ユニット装置におけるミストの拡散効果を気流シミュレーションで解析した模式図。
【図7】加湿ユニット装置において気流調整板から所定距離離れた位置でのミストの拡散効果を気流シミュレーションで解析した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の加湿ユニット装置を添付の図に示された好適な実施形態についてさらに詳細に説明する。図1及び図2には、本発明の一実施形態に係る加湿ユニット装置10が示されている。図1及び図2から明らかなように、加湿ユニット装置10は、一般的に空調整備として構成される送気ダクトD(図1では仮想線で示されている)に接続されるダクト部11と、その内部に設置される加湿ユニット12とから構成されている。図1では、加湿ユニット装置10の構造を理解しやすくするために、ダクト部11を実線で示すと共にその内部に設置される加湿ユニット12も透視した状態として同じく実線で示している。
【0020】
一般的に、送気ダクトDは、気流の流れ方向(図1及び図2に矢印13で示されている)から見た断面が矩形である。従って、この送気ダクトDに接続されるダクト部11も気流の流れ方向13から見た断面が矩形であり、しかも後述する理由から送気ダクトDと同じ大きさ及び同じ形状で形成することができるので、このダクト部11を送気ダクトDに接続したときには、それぞれの外壁面が連続した平坦面を形成する。
【0021】
ダクト部11の内部に設置される加湿ユニット12は、気流調整板14と、水噴霧装置15とから構成され、ダクト部11内の気流の流れ方向13から明らかなように、水噴霧装置15は気流調整板14より下流側に配置されている。図3には、気流調整板14の一具体例が示されている。この具体例における気流調整板14は、比較的に薄い長方形状の板であり、矢印16で示す幅方向のほぼ中央部には折曲部17が形成され、気流調整板14は、この折曲部17によりV字状に形成されている。
【0022】
このような気流調整板14は、その表裏面を貫通し、気流が通過可能な大きさの多数の通気穴18が形成された有孔領域部19と、このような通気穴18の存在しない非有孔領域部20とを備えている。非有孔領域部20は、気流調整板14の折曲部17からこの折曲部17に対向する幅方向16の両端部21a,21bに向かって所定の幅寸法内に形成され、他方、この非有孔領域部20に隣接して並び、この非有孔領域部20に連続するように気流調整板14の両端部21a,21bまでが多数の通気穴18を形成した有孔領域部19とされている。
【0023】
V字状をした気流調整板14は、図1及び図2に示されるように、ダクト部11内において、折曲部17の稜線がダクト部11内を流れる気流の方向13に直交するように上流側に位置すると共に有孔領域部19及び非有孔領域部20に気流が当たるように配置され、かつその周囲縁部とダクト部11の内壁面との間に間隔を開けるように、ダクト部11内を横断するように取り付けられた数本の細い取り付けロッド22を用いて支持されている。
【0024】
このように、気流調整板14が、該気流調整板14の周囲縁部とダクト部11の内壁面と間に間隔を開けるようにダクト部11内に支持されているので、ダクト部11の内壁面に沿って流れる気流の速度が速く、従ってダクト部11の内壁面への結露の発生を防ぐことができる。
【0025】
図4には、気流調整板14の他の具体例が示されている。この具体例に係る気流調整板14は、全面に通気穴18が形成された有孔板23と、この有孔板23に非有孔領域部20を形成する2つの覆い板25とから構成されている。この覆い板25は、通気穴18を覆うように有孔板23の所定範囲に取り付けられ、その範囲に形成されている通気穴18を塞ぐ。この覆い板25は、矢印24で示す方向を有孔板23の高さ方向とすると、この有孔板23の高さ寸法と同じ長さ寸法で形成され、かつその幅寸法は有孔板23における折曲部17から端部21a,21bまでの幅より短い。
【0026】
これら各覆い板25は、図4に示されるように有孔板23の折曲部17から両端部21a,21bに向かう所定の幅方向範囲を覆うように該有孔板23の上流側表面に取り付けられ、これにより覆い板25が取り付けられた部分は通気穴18が塞がれて非有孔流域部20となる。このような気流調整板14において、有孔領域部19と、有孔板23に覆い板25を取り付けることで形成された非有孔流域部20との割合は、加湿ユニット装置10が設置される空調設備によって異なるので、各覆い板25をそれぞれ一枚の板材で構成する場合、その幅寸法は、加湿ユニット装置10が設置される空調設備の条件によって決められる。なお、このような覆い板25は、V字状に形成された一枚の板材で構成することもできる。
【0027】
図5には、気流調整板14の更に他の具体例が示されている。この具体例に係る気流調整板14は、全面に通気穴18が形成された有孔板23と、この有孔板23に非有孔領域部20を形成すると共にその範囲を調整可能にする複数の板部材28とから構成されている。これらの板部材28は、図4に示された覆い板25を幅方向に複数に分割したような短冊状をしている。このように複数の板部材28を有孔板23に取り付けることで非有孔領域部20を形成する場合には、この加湿ユニット装置10を既存の空調設備に追加設置するようなときに実際に設置する場所で既設の送気ダクトDを流れる気流の特性に対応して有孔板23に取り付ける板部材28の枚数を調整することにより非有孔領域部20の範囲、言い換えれば有孔領域部19と非有孔領域部20の面積割合を簡単に変更することができるので、その空調設備に適切に対応した加湿ユニット装置10とすることができる。
【0028】
図3〜図5に示される気流調整板14の各具体例において、有孔板23として、ステンレスから形成されたパンチングメタルを使用することが好ましい。しかし、本発明では、有孔板23をパンチングメタルに限定するものではなく、金属板或いは合成樹脂製板などに多数の通気穴18を形成したものや網状の板なども使用することができる。
【0029】
また、覆い板25や、複数の板部材28を有孔板23に取り付けて非有孔領域部20を形成する場合には、図4及び図5に示されるようにビス27でこれら覆い板25や各板部材28を有孔板23に着脱可能に取り付けることが好ましい。特に、板部材28が有孔板23に着脱可能に取り付けられていれば、板部材28の増減が容易にできるので、加湿ユニット装置10の設置後でも気流調整板14における有孔領域部19と非有孔領域部20の面積割合を簡単に変更することができる。
【0030】
さらに、この加湿ユニット装置10のすぐ上流側に位置する送気ダクトDがエルボ形状であったりした場合には、加湿ユニット装置10のダクト部11に流れ込む気流の速さはその内部で均一ではない場合がある。そのようなときには、気流調整板14の折曲部17を境に各側の表面(折曲部17から端部21a又は21bまでの表面)における非有孔領域部20の範囲を変えることで気流の整流化を図ることができるので、複数の板部材28で非有孔領域部20を形成するようにすれば、折曲部17を中心にその両側、即ち端部21a,21bの方向に向かって形成される非有孔領域部20をそれぞれ異なる幅寸法範囲に容易に変えることができる。
【0031】
もちろん、図5に示されるような覆い板25を有孔板23に取り付けて非有孔領域部20を形成する場合には、折曲部17を境に各側の表面に取り付ける覆い板25の幅寸法をそれぞれ変えて対応することができる。なお、図4及び図5に示される気流調整板14の各具体例において覆い板25や板部材28は、有孔板23における上流側の表面に取り付けられているが、下流側に向いた表面に取り付けられていてもよい。
【0032】
このように有孔領域部19と非有孔領域部20の面積割合を簡単に変更できれば、加湿ユニット装置10による加湿を、この加湿ユニット装置10が設置される空調設備の性能に正確かつ適切に対応させることができる。気流調整板14の下流側に配置される水噴霧装置15は、複数のノズル装置15a,15bを備え、これらのノズル装置15a,15bから水を霧状(ミスト状)に噴霧する。図1〜図3に示される実施形態では、ノズル装置15a,15bが気流調整板14の方向、即ち気流の流れ方向13に対して逆方向に向いて設置され、気流調整板14に向かってミストを噴霧するように構成されている。
【0033】
このようにノズル装置15a,15bを気流の流れ方向13に対して逆方向に向けて設置すると、噴霧されたミストがUターンして下流方向に流れることから蒸発距離が長くなり、これにより蒸発効果を高めることができる。しかし、この発明では、ノズル装置15a,15bを気流調整板14の方向に向けて設置する場合に限定されるものではなく、気流の流れ方向13に向けて設置しても良いことはいうまでもない。なお、この水噴霧装置15それ自体の構成やこれに水を供給する配管系は既に良く知られているものであるのでその詳細な構造の説明及び図示については省略する。
【0034】
次に、前述した実施形態に係る加湿ユニット装置10によるミストの拡散効果について気流シミュレーションによる解析結果(図6及び図7)を参照しながら説明する。送気ダクトDから送られる空気は、この送気ダクトDに接続されたダクト部11に入り、気流調整板14の折曲部17が分水嶺のような役割をし、該折曲部17の稜線を境にV字状に折れ曲がった気流調整板14の上流側表面に沿って下流側に流れる。
【0035】
前述したように気流調整板14は、折曲部17より幅方向両端部21a,21bに向かって非有孔領域部20が形成され、これに続いて有孔領域部19が形成されているので、この非有孔領域部20に当たった気流は気流調整板14の上流側表面を両端部21a,21b方向に沿って有孔領域部19に達する。有孔領域部19に達した気流と、直接有孔領域19に当たった気流は、その一部が多数の通気穴18を通って下流側に吹き出し、それ以外の気流は、気流調整板14の周囲縁部とダクト部11の内壁面との隙間から該内壁面に沿って下流側に流れる。
【0036】
このように気流調整板14における有孔領域部19の通気穴18を通過する気流と、気流調整板14の周囲縁部を回って下流側に流れる気流とによって、V字状をした気流調整板14の下流側は整流化され、この整流化された部分に向かって水噴霧装置15のノズル装置15a,15bからミストが吹き出される。図6は、V字状をした気流調整板14の下流側におけるミストの拡散状態を気流シミュレーションした解析結果を模式的に示す図であり、気流調整板14より下流側において、濃淡が最も濃い部分(符号30で示す部分)は、水噴霧装置15のノズル装置15a,15bより吹き出されたミストが蒸発し切れずに水滴の状態で集合していることを示している。この水滴状態の部分30を中心に、気流調整板14に向かう上流方向及び下流方向に向かって濃淡が次第に薄くなり、ほぼ4段階(濃度の濃い順に符号31,32,33,34で示す)の状態に分かれるも、いずれもミストが蒸発している。
【0037】
一方、図7は、気流調整板14から下流側に2m離れた箇所でのミストの拡散状態を気流シミュレーションした解析結果を模式的に示す図であり、この図7から明らかなように図6に符号30で示される程の濃い部分、即ち水滴集合部はなくなり、濃淡が最も濃い部分でも図6に符号31で示される濃度と同等の部分であり、その部分を中心にして濃淡が次第に薄くなっている。このことから明らかなことは、前述した構成の気流調整板14を用い、この気流調整板14に向かって下流側から水噴霧装置15でミストを噴霧した場合、気流調整板14から2mほど離れた下流側では、水噴霧装置15から噴霧されたミストは、気流中に完全に拡散し、かつ蒸発していることが分かる。
【0038】
次に、気流調整板14の構造の違いによってミストの蒸発がどのように変化するかを検証した表1を参照して本発明の加湿ユニット装置10におけるミスト蒸発の効果を説明する。
【0039】
【表1】

【0040】
上記の表1では、本発明の加湿ユニット装置10において用いた有孔領域部19と非有孔領域部20とを備えるV字状をした気流調整板14をダクト部11内に設置してミストの蒸発を検証したのが実験例1であり、実験例2は、全面が有孔領域部のV字状をした気流調整板を用いた例、また、実験例3は、全面が非有孔領域部のV字状をした気流調整板を用いた例である。これらの実験例から明らかなように、実験例1では、図6及び図7でも示されているように気流調整板14の直近における濡れ度合い即ち水滴となってダクト部11から排水される水量は僅かで、噴霧装置15から噴霧される水量の1%程度であり、気流調整板14から2m離れた箇所での濡れ度合い、即ち水滴となって排水される水量はまったくなくほぼ完全に蒸発している。
【0041】
他方、実験例2の場合には、気流調整板14の直近における濡れ度合いは、まったくないが、気流調整板14から2m離れた箇所での濡れ度合いは、噴霧装置15から噴霧される水量の80%であり、ほとんど蒸発し切れていなかった。さらに、実験例3の場合には、気流調整板14の直近では、噴霧装置15から噴霧される水量の3%程度が排水されるが、2m離れた箇所での濡れ度合いはなかった。
【0042】
このような実験例1〜3を比較すると、実験例1及び実験例3が、気流調整板から2m離れた箇所での濡れ度合いはなく、加湿ユニット装置に用いる気流調整板として良好な性能であるが、実験例3では、気流調整板が全面非有孔領域部であるためこれがダクト部11を流れる気流に大きな抵抗となって圧力損失が非常に高くなる。そのため、実験例1〜3について総合的な評価をすると本発明の加湿ユニット装置10で構成されるような有孔領域部19と非有孔領域部20とを備えるV字状の気流調整板14を用いた場合が最も良いとの結論が得られた。
【0043】
このような結論に基づき、この加湿ユニット装置10を設置する空調設備の特性によって気流調整板14の有孔領域部19と非有能領域部20との面積割合を変化させたり、或いは通気穴18の数や大きさを変化させてミストの蒸発効果が最大に得られるように設計される。なお、気流調整板14が、全面に多数の通気穴18を形成した有孔板23を使用して、この上流側若しくは下流側の面に覆い板25や複数の板部材28を取り付けて通気穴18を塞ぐことにより非有孔領域部20とする場合、有孔板23としてパンチングメタルを使用することができるので、気流調整板14を安価に製作することができる。
【0044】
前述したように、本発明の加湿ユニット装置では、送気ダクトに接続されるダクト部の内部に、有孔領域部と非有孔領域部とが形成されたV字状の気流調整板を、折曲部が上流側に位置するように配置すると共に、この気流調整板に向かって下流側から水噴霧装置によりミストを噴霧することにより、水噴霧装置から噴霧されるミストが、下流方向短距離で気流にほぼ完全に拡散し、かつ蒸発する。これにより、給気対象室に送気する空気を所定湿度に調整する加湿ユニット装置におけるダクト部の長さを短くでき、加湿ユニットを内部に設置したダクト部を備える空調設備の設置条件が緩和し、その結果、加湿ユニット装置を備える空調設備設置の設計の自由度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0045】
10 加湿ユニット装置
11 ダクト部
12 加湿ユニット
13 気流の流れ方向
14 気流調整板
15 水噴霧装置
15a,15b ミストを噴霧するノズル装置
16 気流調整板の幅方向を示す矢印
17 折曲部
18 通気穴
19 有孔領域部
20 非有孔領域部
21a,21b 気流調整板の幅方向両端部
22 取り付けロッド
23 有孔板
24 気流調整板の高さ方向
25 覆い板
28 短冊状の板部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
送気ダクト内を流れる空気を加湿する加湿ユニット装置において、
前記送気ダクトの途中に接続されたダクト部と、このダクト部の内部に設置された加湿ユニットとを備え、
前記加湿ユニットが、ほぼ中央の折曲部でV字状に折曲された気流調整板と、この気流調整板より下流側に設置され、ミストを噴射する水噴霧装置とを備え、
前記気流調整板が、前記ダクト部内を流れる気流を通過させる多数の通気穴を備える有孔領域部と、前記通気穴の形成されていない非有孔領域部とを備え、該非有孔領域部は、前記気流調整板の前記折曲部から該折曲部に対向する両端部に向かって形成され、前記気流調整板は、前記折曲部が気流の流れ方向上流側に位置し、かつ前記有孔領域部及び前記非有孔領域部が前記ダクト部内を流れる前記気流を受けるように配置されていることを特徴とする加湿ユニット装置。
【請求項2】
前記気流調整板が、全面に前記通気穴を開けた有孔板と、この有孔板の一部を覆って前記有孔板の前記通気穴を塞ぐ覆い板とで構成され、前記非有孔領域部が、前記有孔板に前記覆い板を取り付けることで形成される請求項1に記載の加湿ユニット装置。
【請求項3】
前記気流調整板が、全面に前記通気穴を開けた有孔板と、この有孔板に前記非有孔領域部を形成すると共にその範囲を調整可能にすべく前記有孔板の一部を覆って前記有孔板の前記通気穴を塞ぐ複数の板部材とで構成され、選択された数の前記板部材を前記有孔板に着脱可能に取り付けて前記非有孔領域部の範囲を自在に調整可能にした請求項1に記載の加湿ユニット装置。
【請求項4】
前記気流調整板が、該気流調整板の周囲縁部と前記ダクト部の内壁面と間に間隔を開けるように前記ダクト部内に支持されている請求項1〜3のいずれかに記載の加湿ユニット装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−57891(P2012−57891A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202959(P2010−202959)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(591023479)ダイダン株式会社 (82)
【Fターム(参考)】