説明

加湿機

【課題】送風効率が良く、加湿部を電解水で除菌することが可能であり、さらに、加湿の有無に関わらず電解水ミストの放散が可能な加湿機を提供する。
【解決手段】空気清浄加湿機1は、筐体10の内部に、一方の端が吸気口12、他方の端が排気口13となった空気流通経路15を形成している。空気流通経路15には、上流側から順に、空気清浄装置20、空気加湿装置30、及び送風装置40が配置される。加湿装置30の加湿部32を構成する空気加湿フィルタ33は給水装置50が供給する水で濡らされるが、その水は電解水生成装置60で電気分解されて電解水とされる。電解水の一部は電解水ミスト生成部65でミスト化される。電解水ミスト生成部65に向け、ダクト構造70を通じて送風装置40の吐出空気の一部が導入され、これにより、電解水ミスト混じりの空気が機外に放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加湿機、特に空気清浄機能を備えた加湿機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気清浄機や加湿機には、これまでにも様々な工夫が盛り込まれている。例えば特許文献1記載の加湿機では、加湿用の水槽の水を電気分解して次亜塩素酸を含む電解水を生成し、この次亜塩素酸を水槽の水や加湿フィルタの除菌に利用している。特許文献2記載の空気清浄機では、電解水のミストを、空気清浄機内で清浄化された空気を用いて機外に放散し、室内空気の殺菌や脱臭を行っている。特許文献3記載の加湿機では、加湿用の水の一部を電気分解して電解水を生成し、この電解水をミスト化し、加湿された空気に乗せて機外に放散することにより、室内空気の除菌や脱臭に役立てている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−57995号公報(国際特許分類:F24F6/00)
【特許文献2】特開2007−37589号公報(国際特許分類:A61L9/14、A61L9/01、C02F1/46)
【特許文献3】特開2009−216320号公報(国際特許分類:F24F6/16、F24F7/00、C02F1/46)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献に記載された加湿機は、送風装置の吐出側に空気加湿装置が配置されているため、空気加湿装置が大きな抵抗となり、送風装置が本来有する送風能力を十分に発揮することができなかった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、送風効率が良く、加湿部を電解水で除菌することが可能であり、さらに、加湿の有無に関わらず電解水ミストを室内へ放出して室内空気の除菌や脱臭を行うことが可能な加湿機を提供することを目的とする。また、電解水ミストの放出を可能にしたことが製造コストの著しい増大につながることのない加湿機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る加湿機は、筐体と、前記筐体内に形成され、一方の端が吸気口、他方の端が排気口となった空気流通経路と、前記空気流通経路に上流側より順に配置された空気清浄装置、空気加湿装置、及び送風装置と、前記空気加湿装置の加湿部を濡らす水を供給する給水装置と、前記給水装置が供給する水を電解水とする電解水生成装置と、前記電解水生成装置で生成された電解水の一部をミスト化する電解水ミスト生成装置と、前記電解水ミスト生成装置に向けて前記送風装置の吐出空気の一部を導入し、電解水ミスト混じりの空気を機外に放出するダクト構造と、を備えることを特徴としている。
【0007】
この構成によると、空気清浄装置の後に空気加湿装置、さらにその後に送風装置が並んでいるから、空気清浄装置にも空気加湿装置にも送風装置の吐出力でなく吸引力が作用することになり、送風装置の送風能力が十分に発揮され、送風量の低下が少なくて済む。また、加湿部を濡らす水を電解水とすることができるから、加湿部を除菌することができる。さらに、電解水の一部をミスト化し、送風装置の吐出空気の一部を使って機外に放出するから、室内空気も除菌及び脱臭される。ミスト化する電解水は加湿部に供給される電解水の一部であるから、ミスト化用電解水を生成する目的のためだけに別途電解水生成装置を設ける必要がなく、製造コストを抑制することができる。また、電解水のミストは送風装置の吐出空気で放出されるものであり、送風装置を通らないから、送風装置の金属部分に錆が生じたり、ミスト中のミネラル成分が送風装置に付着してスケールになったりするおそれがない。
【0008】
また本発明は、上記構成の加湿機において、前記空気加湿装置はモータで水平軸線まわりに回転するホイールと、当該ホイールに取り付けられた空気加湿フィルタを含み、前記ホイールの周縁には、当該ホイールの回転に伴い前記給水装置から水を汲み上げて前記空気加湿フィルタに注ぎかけるバケットが取り付けられていることを特徴としている。
【0009】
この構成によると、ホイールの回転を止めた状態で、電解水生成装置、電解水ミスト生成装置、及び送風装置を稼働すれば、室内空気の加湿を伴うことなく、電解水ミストの放出のみ実行できる。
【0010】
また本発明は、上記構成の加湿機において、前記ダクト構造には、前記送風装置の吐出風速増加に伴って空気導入部の開口面積を減らす絞り機構が付属することを特徴としている。
【0011】
この構成によると、送風装置の吐出風速の如何に関わらず、一定した風量で電解水のミストを放出することができる。
【0012】
また、本発明に係る加湿機は、筐体と、前記筐体内に形成され、一方の端が吸気口、他方の端が排気口となった空気流通経路と、前記空気流通経路に上流側より順に配置された空気加湿装置及び送風装置と、前記空気加湿装置の加湿部を濡らす水を供給する給水装置と、前記給水装置が供給する水を電解水とする電解水生成装置と、前記電解水生成装置で生成された電解水の一部をミスト化する電解水ミスト生成装置と、前記電解水ミスト生成装置に向けて前記送風装置の吐出空気の一部を導入し、電解水ミスト混じりの空気を機外に放出するダクト構造と、を備えることを特徴としている。
【0013】
この構成によると、空気加湿装置の後に送風装置が並んでいるから、空気加湿装置には送風装置の吐出力でなく吸引力が作用することになり、送風装置の送風能力が十分に発揮され、送風量の低下が少なくて済む。また、加湿部を濡らす水を電解水とすることができるから、加湿部を除菌することができる。さらに、電解水の一部をミスト化し、送風装置の吐出空気の一部を使って機外に放出するから、室内空気も除菌及び脱臭される。ミスト化する電解水は加湿部を濡らすための電解水の一部であるから、ミスト化用電解水を生成する目的のためだけに別途電解水生成装置を設ける必要がなく、製造コストを抑制することができる。また、電解水のミストは送風装置の吐出空気で放出されるものであり、送風装置を通らないから、送風装置の金属部分に錆が生じたり、ミスト中のミネラル成分が送風装置に付着してスケールになったりするおそれがない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、空気清浄や空気加湿を行うにも関わらず送風量の低下が少なくて済む上、電解水を用いた加湿部の除菌と、室内空気の除菌を両方とも遂行できる。また、電解水のミストが送風装置の金属部分に錆をもたらしたり、ミスト中のミネラル成分が送風装置に付着してスケールになったりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る空気清浄加湿機の斜視図である。
【図2】図1の空気清浄加湿機の垂直断面図である。
【図3】図1の空気清浄加湿機の垂直断面図で、図2と反対の方向に視点を置き、且つ断面箇所を異ならせたものである。
【図4】図1の空気清浄加湿機の水平断面図である。
【図5】図1の空気清浄加湿機の筐体に挿入される、空気加湿装置保持状態の水受けパンと、それに組み合わせられる筐体内部材の斜視図である。
【図6】図1の空気清浄加湿機の垂直断面図で、図2及び図3と直角の方向に断面したものである。
【図7】空気加湿装置保持状態の水受けパンの垂直断面図である。
【図8】空気加湿装置保持状態の水受けパンの垂直断面図で、図7のA−A線の位置で断面したものである。
【図9】空気加湿装置保持状態の水受けパンの垂直断面図で、図7のB−B線の位置で断面したものである。
【図10】空気加湿装置非保持状態の水受けパンの斜視図である。
【図11】空気加湿装置保持状態の水受けパンの上面図である。
【図12】空気加湿装置非保持状態の水受けパンの上面図である。
【図13】背面側から見た送風装置の斜視図である。
【図14】図6と同様の空気清浄加湿機の垂直断面図で、図6と反対の方向に視点を置いたものである。
【図15】本発明の第2実施形態を示す、図14と同様の空気清浄加湿機の垂直断面図である。
【図16】図15の空気清浄加湿機の部分拡大断面図である。
【図17】図16と同様の部分拡大断面図で、図16と異なる状態を示すものである。
【図18】図16と同様の部分拡大断面図で、さらに図16と異なる状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から図14までの図に基づき第1実施形態の加湿機である空気清浄機能を備えた空気清浄加湿機について説明する。第1実施形態の空気清浄加湿機1は前後方向に偏平な筐体10を有する。筐体10の説明に用いる方位表現については、図1における紙面左側が左、紙面右側が右、と定義する。他の構成要素の説明に用いる方位表現もこれにならうものとする。
【0017】
筐体10の上面前方には操作パネル11が配置される。操作パネル11には、各種指令を入力するスイッチ群と、空気清浄加湿機1の運転状況その他の情報を表示するランプ群が配置されている。スイッチ群はメンブレンスイッチにより構成され、ランプ群は発光ダイオード(LED)により構成される。
【0018】
筐体10には前方の左右側面及び底面にスリット状の吸気口12が形成され、上面後方に排気口13が形成されている。排気口13には桟を格子状に組んだガードグリル14が設けられ、排気口13から手指等が差し込まれるのを防いでいる。
【0019】
筐体10の内部には、一方の端が吸気口12、他方の端が排気口13となった空気流通経路15が形成される。空気流通経路15には、上流側より順に、空気清浄装置20、空気加湿装置30、及び送風装置40が配置される。
【0020】
空気清浄装置20は空気清浄フィルタ21により構成される。空気清浄フィルタ21は粗塵用フィルタ、脱臭フィルタ、細塵用フィルタなどを組み合わせたものである。空気清浄フィルタ21に代え、あるいは空気清浄フィルタ21に加えて、電気集塵方式の集塵部を用いることも可能である。
【0021】
空気加湿装置30については後で説明する。
【0022】
送風装置40は、吸気口12から吸い込まれ、排気口13から排出される空気流を形成すものであって、シロッコファン41及びそれを回転させるモータ42と、シロッコファン41を囲むファンケーシング43により構成される。ファンケーシング43には排気口13に接続する吐出口43a(図13に最も良く形状が表れている)が形成されている。
【0023】
空気加湿装置30に対し、給水装置50で加湿用の水を供給する。給水装置50は、筐体10の右側面から挿入される、引出式の水受けパン51を中心として構成される。水受けパン51の右側面と、その上に着脱可能に取り付けられるカバー52は、筐体10の外殻の一部を構成する。水受けパン51の右側面には手を掛けるための凹部53が形成されている。
【0024】
水受けパン51は空気加湿装置30を支持し、また図6に示すように給水タンク54を支持する。水受けパン51の右端には、図5に示すように、給水タンク54から供給される水を受ける受水槽55が形成される。受水槽55には給水タンク54の図示しないバルブを押し開ける突起56が形成されている。
【0025】
水の入った給水タンク54を水受けパン51の受水槽55上にセットすると、突起56でもって給水タンク54のバルブが押し開けられ、後述するように所定水位(図7〜図9で示す水位線WL)まで水が水受けパン51に供給される。
【0026】
水受けパン51には、図12に示すように、受水槽55に連通する加湿用貯水槽57が形成されている。加湿用貯水槽57は左右に細長く延び、その左端にはミスト生成用貯水槽58が連続して形成されている。加湿用貯水槽57は空気加湿装置30に供給する電解水を貯めるためのものであり、ミスト生成用貯水槽58は電解水ミスト生成用の電解水を貯めるためのものである。
【0027】
加湿用貯水槽57の右端には、受水槽55から加湿用貯水槽57に流れ込む水を電気分解して電解水とする電解水生成装置60が配置される。電解水生成装置60は、加湿用貯水槽57内の水に浸る1対の電極61により構成される。
【0028】
ミスト生成用貯水槽58には電解水をミスト化する電解水ミスト生成装置65が配置される。電解水ミスト生成装置65は、ミスト生成用貯水槽58の底部に振動部を露出させた超音波振動子66(図8参照)により構成される。
【0029】
水受けパン51の左端外面には、図9に示すように、電解水生成装置60と電解水ミスト生成装置65に電流を供給するためのコネクタ68が設けられている。水受けパン51を筐体10の奥まで押し込むと、筐体10の内部に設けられた図示しないコネクタにコネクタ68が接続し、電解水生成装置60と電解水ミスト生成装置65のそれぞれに対する給電が可能となる。
【0030】
水受けパン51には、図10に示すように、加湿用貯水槽57の中程の箇所の前後の側壁の上端から、1対の支柱51aが互いに向かい合う形で立ち上がる。各支柱51aには、対向面の上端に、上方に開いたU字形の軸受部51bが形成されている。この軸受部51bに空気加湿装置30が支持される。続いて空気加湿装置30の構造を説明する。
【0031】
空気加湿装置30の中心をなすのは水車のような形状のホイール31である。ホイール31は中心にハブ31a、周縁にリム31bを有し、ハブ31aとリム31bを、複数の正面側スポーク31cと複数の背面側スポーク31dで連結した構造となっている。
【0032】
詳述すると、図7に示すようにホイール31は、正面側スポーク31c、リム31b、及び内側のハブ31a1を有するホイールベース31lと、背面側スポーク31d、外側のハブ31a2、及び後述する入力歯車31fを有するホイールキャップ31mとから構成され、ホイールベース31lにホイールキャップ31mを、ハブ31a1、31a2同士を嵌め合わせて結合することにより構成されている。内外両ハブ31a1、31a2を合わせたものがハブ31aとなる。
【0033】
ハブ31aからは前後に支軸31eが突き出しており、この支軸31eを支柱51aの軸受部51bに落とし込むことにより、ホイール31は水平軸線まわりに回転自在に支持される。
【0034】
ホイール31には加湿部32(図7参照)が設けられる。加湿部32を構成するのはディスク状の空気加湿フィルタ33である。空気加湿フィルタ33は保水能力と通風性を兼ね備えた素材、例えばネットや不織布からなり、背面側スポーク31dの前面に取り付けられる。
【0035】
空気加湿フィルタ33は、平板状のまま取り付けられるのでなく、所定の起伏形状を呈するように取り付けられる。実施形態では、図7に示すように、空気加湿フィルタ33の中心部を正面側スポーク31cの方に押し出し、周囲に円錐面33aを生じさせている。
【0036】
詳述すると、ホイール31の背面側スポーク31dには円錐面33aを形成するための傾斜面31hを有するリブ31iが突設され、一方、正面側スポーク31cの裏側には、傾斜面31hと向かい合う位置に、傾斜面31hと同じ傾斜面31jを有するリブ31kが突設されている。ホイールベース31lとホイールキャップ31mを結合する際に両リブ31iと31kの間に空気加湿フィルタ33を挟み込むことにより、空気加湿フィルタ33を所定の形状にしている。
【0037】
ホイール31のリム31bには、複数(図では6個)のバケット34が、一定の角度間隔で配置される。バケット34は、別部品をリム31bに取り付けてもよく、リム31bに一体成型してもよい。
【0038】
全てのバケット34が口を一定方向に向けて配置されている。ホイール31が回転し、バケット34がリム31bの最下部まで移動した時、バケット34は加湿用貯水槽57の中の水に沈み、水がバケット34に浸入する。ホイール31が回転し、バケット34の口が上を向くと、バケット34は水を汲み上げる形になる。バケット34がリム31bの上部に来て、その口が横向きになるにつれ、汲み上げた水が滴下する。空気加湿フィルタ33の円錐面33aは水の落下進路に干渉しており、滴下する水はその上に落下する。
【0039】
ホイール31を回転させるモータ35は、水受けパン51にではなく、筐体10の内部の隔壁10a(図5参照)に支持される。モータ35は出力歯車35aを有する。出力歯車35aは、モータ35と同じく隔壁10aに支持された中間歯車36にかみ合う。中間歯車36には、ホイール31のホイールキャップ31mの外周部に一体成型ないし固定された入力歯車31fがかみ合う。入力歯車31fが中間歯車36にかみ合うのは、水受けパン51を最も奥まで押し込んだときである。
【0040】
ホイール31の周囲を囲い37(図5参照)が取り巻き、囲い37の内部がファンケーシング43の吸気口43bに連通する。囲い37は、隔壁10aに一体成型した部分囲い37aと、水受けパン51に一体成型した部分囲い37bにより構成される。水受けパン51を最も奥まで押し込んだとき、部分囲い37aに部分囲い37bが接合し、囲い37が完成する。
【0041】
電解水ミスト生成装置65には、そこに送風装置40の吐出空気の一部を導入し、電解水ミスト混じりの空気にして筐体10の外に放出するダクト構造70が組み合わせられる。
【0042】
ダクト構造70は次のようにして構成される。水受けパン51には、ミスト生成用貯水槽58の上を覆う煙突状のダクト71が形成される。隔壁10aには、ダクト71に接続する煙突状のダクト72が一体成型ないし固定される。ダクト72の出口は筐体10の上面に形成されたミスト吐出口16に接続される。
【0043】
ファンケーシング43のスクロール流路には、吐出空気の一部を分流する副吐出口43c(図13参照)が分岐形成される。副吐出口43cの出口43dは、図3に示す通り、ダクト72の根元部に接続する。ダクト72の内部には、副吐出口43cから入ってくる吐出空気の向きを下向きに変え、電解水ミスト生成装置65の方に向かわせるガイド体72aが形成されている。
【0044】
続いて空気清浄加湿機1の動作を説明する。給水タンク54の中に水が十分残っていれば、受水槽55、加湿用貯水槽57、及びミスト生成用貯水槽58の中には、図7〜図9にそれぞれ示す水位線WLの高さまで水が溜まっている。給水タンク54の中の水が残り少なく、水位が水位線WLより下がっている状態であれば、図示しないセンサがそれを検知し、操作パネル11に水不足の旨の表示が出る。水不足の表示を見たときは、カバー52を外し、給水タンク54を取り出して水を補給する。水補給後、給水タンク54を水受けパン51の上に置くと、給水タンク54から流れ出す水によって水位が水位線WLの高さまで回復し、水不足の表示は消える。外しておいたカバー52を元通りはめ込めば、空気清浄加湿機1の運転が可能になる。
【0045】
空気清浄加湿機1を通常運転モードで運転すると、送風装置40のモータ42、電解水生成装置60の電極61、電解水ミスト生成装置65の超音波振動子66、及び空気加湿装置30のモータ35に給電が行われ、これらの構成要素はそれぞれ定められた動作を開始する。
【0046】
電解水生成装置60の電極61に所定の電圧(例えば10V)が印加されると、加湿用貯水槽57の中の水が電気分解されて電解水となる。
【0047】
電圧の印加は、1対の電極61が断続的に(例えば1時間毎に3〜10分程度)交互に逆極性となるように行われる。水が塩素を含む水道水であれば、次のような電気化学反応が生じる。
<陽極側>
4HO−4e→4H+O↑+2H
2Cl→Cl+2e
O+Cl←→HClO+H+Cl
<陰極側>
4HO+4e→2H↑+4OH
<電極間>
+OH→H
上記反応により、除菌作用と脱臭作用のある次亜塩素酸(HClO)や活性酸素を含む電解水が生まれる。
【0048】
加湿用貯水槽57の中の電解水は、加湿用貯水槽57と連通しているミスト生成用貯水槽58にも流れる。電解水ミスト生成装置65の超音波振動子66を発振させると、ミスト生成用貯水槽58の水面から電解水のミストが発生し、ミスト生成用貯水槽58とダクト71で囲まれた空間に充満する。
【0049】
モータ35はホイール31を所定のゆっくりとした回転速度で回転させる。回転方向は、ホイール31を正面側から見ている図6においては反時計方向、ホイール31を背面側から見ている図8においては時計方向となる。ホイール31がこの方向に回転することにより、バケット34は加湿用貯水槽57から電解水を汲み上げて空気加湿フィルタ33にかけるという動作を繰り返すことになる。
【0050】
モータ42への通電によりシロッコファン41が回転すると、吸気口12→空気清浄装置20→空気加湿装置30→送風装置40→排気口13という空気の流れが生じる。吸気口12から吸い込まれた空気は、空気清浄フィルタ21を通過する際に塵埃を捕捉されて
清浄になり、空気加湿フィルタ33を通過する際に湿気を帯びる。加湿された清浄空気は送風装置40に吸い込まれ、排気口13から排出される。
【0051】
本実施形態の構成では、空気清浄装置20にも空気加湿装置30にも、送風装置40の吐出力でなく吸引力が作用するから、空気加湿装置30が大きな抵抗にならず、送風量の低下が少なくて済む。また、空気加湿フィルタ33を濡らすのが電解水であるから、空気加湿フィルタ33を除菌することができる。
【0052】
シロッコファン41が吐出する空気は、大部分は吐出口43aを通じて排気口13から排出されるが、一部は図14に示すように副吐出口43cに入る。副吐出口43cに入った空気は出口43dからダクト72に入り、そこでガイド体72aにより風向を下向きに変えられる。電解水ミスト生成装置65に向けて下向きに吹き出される空気はミスト生成用貯水槽58の中の水面に阻まれて上方に方向転換し、同時に電解水ミストを巻き込む。電解水ミスト混じりの空気はダクト72の内部を上昇し、ミスト吐出口16から放出される。放出された電解水ミスト混じりの空気は排気口13から吹き出される気流にさらに巻き込まれ、室内に拡散する。これにより、室内空気も除菌及び脱臭される。
【0053】
電解水のミストは送風装置40の吐出空気で放出されるものであり、送風装置40を通らないから、送風装置40の金属部分に錆が生じたり、ミスト中のミネラル成分が送風装置40に付着してスケールになったりするおそれがない。ミスト化する電解水は加湿フィルタ33を濡らすための電解水の一部であるから、ミスト化用電解水を生成する目的のためだけに別途電解水生成装置を設ける必要がなく、製造コストを抑制することができる。
【0054】
上記通常運転モードでは、ホイール31が回転することで空気加湿フィルタ33に電解水が掛けられることから、排気口13から排出される空気は常に加湿済みの空気となる。別の運転モードとして、モータ35には通電せず、電解水生成装置60、電解水ミスト生成装置65、及び送風装置40のみ駆動する運転モードを設定することもできる。この運転モードでは、空気加湿フィルタ33が濡らされないので加湿は行われず、電解水ミストの室内への放出のみ行われることになる。
【0055】
続いて本発明の第2実施形態を図15から図18までの図に基づき説明する。第1実施形態と共通する構成要素には第1実施形態の説明で用いたのと同じ符号を付し、説明は省略する。
【0056】
ダクト構造70への空気導入部は副吐出口43cの入口ということになるが、第2実施形態では、この箇所に、送風装置40の吐出風速増加に伴って空気導入部の開口面積を減らす絞り機構44を設ける。絞り機構44は、ファンケーシング43の内面に沿ってスライド可能なシャッタ45と、ファンケーシング43とシャッタ45の間に張り渡されてシャッタ45を風上側に附勢する引張コイルばね46により構成される。シャッタ45の一端にはファンケーシング43内を流れる空気流の中に突き出す風受板45aが形成されている。
【0057】
シャッタ45は、ファンケーシング43内を流れる空気流の風速が弱いときは図16の位置にあり、副吐出口43cの入口を大きく開いている。風速が増し、風受板45aの受ける風圧が大きくなると、引張コイルばね46が伸び、シャッタ45は図17の位置に移動する。これにより、副吐出口43cは入口が少し絞られた形になる。風速がさらに増し、風受板45aの受ける風圧がさらに大きくなると、引張コイルばね46がさらに伸びてシャッタ45は図18の位置に移動し、副吐出口43cの入口は一層絞られる。
【0058】
このように絞り機構44を設けたことにより、送風装置40の吐出風速の如何に関わらず、一定した風量で電解水のミストを放出することができる。
【0059】
第2実施形態では、風受板45aが受ける風圧と、引張コイルばね46の張力との力のバランスでシャッタ45の位置が決まるものとしたが、モータ(例えばステッピングモータ)を用いてシャッタ45を移動させるようにしてもよい。このようにすれば、シャッタ45を精度良く移動させ、副吐出口43cの入口部の開口面積をより正確に制御することができる。
【0060】
絞り機構の考えは、特許文献2の図8に記載された実施形態のように、送風装置の吐出部近傍に電解水ミスト発生装置を配置し、気流による気圧差で電解水ミストが吸引されて外に出るようにした構成のものにおいても有効である。
【0061】
第1及び第2実施形態は空気清浄装置を有する空気清浄加湿機に係るものであったが、空気清浄装置を備えていないもの(吸気口12に簡単なプレフィルタ程度を備えているものは含む)、即ち単なる加湿機にも本発明は適用可能であり、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。特許請求の範囲の請求項4〜6はこの加湿機のことを述べている。
【0062】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は空気清浄加湿機に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 空気清浄加湿機
10 筐体
12 吸気口
13 排気口
15 空気流通経路
16 ミスト吐出口
20 空気清浄装置
21 空気清浄フィルタ
30 空気加湿装置
31 ホイール
32 加湿部
33 空気加湿フィルタ
34 バケット
35 モータ
40 送風装置
41 シロッコファン
42 モータ
43 ファンケーシング
43a 吐出口
43c 副吐出口
44 絞り機構
45 シャッタ
45a 風受板
46 引張コイルばね
50 給水装置
51 水受けパン
54 給水タンク
55 受水槽
57 加湿用貯水槽
58 ミスト生成用貯水槽
60 電解水生成装置
65 電解水ミスト生成装置
70 ダクト構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に形成され、一方の端が吸気口、他方の端が排気口となった空気流通経路と、
前記空気流通経路に上流側より順に配置された空気清浄装置、空気加湿装置、及び送風装置と、
前記空気加湿装置の加湿部を濡らす水を供給する給水装置と、
前記給水装置が供給する水を電解水とする電解水生成装置と、
前記電解水生成装置で生成された電解水の一部をミスト化する電解水ミスト生成装置と、
前記電解水ミスト生成装置に向けて前記送風装置の吐出空気の一部を導入し、電解水ミスト混じりの空気を機外に放出するダクト構造と、
を備えた加湿機。
【請求項2】
前記空気加湿装置はモータで水平軸線まわりに回転するホイールと、当該ホイールに取り付けられた空気加湿フィルタを含み、前記ホイールの周縁には、当該ホイールの回転に伴い前記給水装置から水を汲み上げて前記空気加湿フィルタに注ぎかけるバケットが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の加湿機。
【請求項3】
前記ダクト構造には、前記送風装置の吐出風速増加に伴って空気導入部の開口面積を減らす絞り機構が付属することを特徴とする請求項1または2に記載の加湿機。
【請求項4】
筐体と、
前記筐体内に形成され、一方の端が吸気口、他方の端が排気口となった空気流通経路と、
前記空気流通経路に上流側より順に配置された空気加湿装置及び送風装置と、
前記空気加湿装置の加湿部を濡らす水を供給する給水装置と、
前記給水装置が供給する水を電解水とする電解水生成装置と、
前記電解水生成装置で生成された電解水の一部をミスト化する電解水ミスト生成装置と、
前記電解水ミスト生成装置に向けて前記送風装置の吐出空気の一部を導入し、電解水ミスト混じりの空気を機外に放出するダクト構造と、
を備えた加湿機。
【請求項5】
前記空気加湿装置はモータで水平軸線まわりに回転するホイールと、当該ホイールに取り付けられた空気加湿フィルタを含み、前記ホイールの周縁には、当該ホイールの回転に伴い前記給水装置から水を汲み上げて前記空気加湿フィルタに注ぎかけるバケットが取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の加湿機。
【請求項6】
前記ダクト構造には、前記送風装置の吐出風速増加に伴って空気導入部の開口面積を減らす絞り機構が付属することを特徴とする請求項4または5に記載の加湿機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−137605(P2011−137605A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298246(P2009−298246)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】