説明

加熱反応調味料の製造方法

【課題】 本発明は、食品へ添加できる、良好な風味を持ち、なおかつコク、甘味、濃厚感、脂肪感などを付与することができる調味料を提供することを目的とする。
また、本発明は、特に乳製品の風味を改善し、コク、甘味、濃厚感、脂肪感、乳感などを付与することのできる調味料を提供することを目的とする。
【解決手段】 果汁と酵母エキスを加熱反応させることによって得られる調味料およびその製造方法。特に、果汁と酵母エキスを加熱反応させることによって得られる調味料およびその製造方法であって、加熱反応が、約50℃〜約180℃、好ましくは約80〜約130℃、特に好ましくは約90℃〜約110℃にて、約1分間〜約60分間、好ましくは約1分間〜約30分間、特に好ましくは約1分間〜約10分間行われることを特徴とする、前記調味料および方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調味料および調味料の製造方法に関する。より具体的には、食品、特に乳製品等に添加して、コク、甘味、濃厚感、脂肪感、乳感(ミルク感)などを増強させることのできる調味料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、酵母エキスと糖類を加熱反応させた、いわゆるメイラード反応による畜肉系の風味を呈する調味料あるいはフレーバーが開発されてきた(特開2001-103920、特開2003-169627等)。しかし、これらは独特の風味が強いため、長時間煮込むスープ・ソース類や加熱調理した畜肉系・魚介系の食品に利用されることがほとんどである。それゆえ、乳製品、アイス等にはその風味が強すぎることで使用されることが少なく、乳製品などにも応用できる調味料が求められていた。
【0003】
【特許文献1】特開2001-103920号公報
【特許文献2】特開2003-169627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、食品へ添加できる、良好な風味を持ち、なおかつコク、甘味、濃厚感、脂肪感などを付与することができる調味料を提供することを目的とする。
また、本発明は、特に乳製品の風味を改善し、コク、甘味、濃厚感、脂肪感、乳感などを付与することのできる調味料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、果汁と酵母エキスを加熱反応させることによって得られる調味料およびその製造方法である。
特に、本発明は、果汁と酵母エキスを加熱反応させることによって得られる調味料およびその製造方法であって、前記果汁が、りんご、パイナップル、マンゴー、ピーチ、オレンジ、ゆず、からなる群より選ばれる、前記調味料およびその製造方法である。
また、本発明は、酵母エキスが、ビール酵母エキス、パン酵母エキスおよびトルラ酵母エキスからなる群より選ばれる、前記調味料およびその製造方法である。
本発明の製造方法において、上述した加熱反応は、約50℃〜約180℃、好ましくは約80℃〜約130℃、特に好ましくは約90℃〜約110℃にて、約1分間〜約60分間、好ましくは約1分間〜約30分間、特に好ましくは約1分間〜約10分間行う。本発明において最も好ましくは、上述した加熱反応は約90℃〜約110℃にて約1分間〜約10分間行う。
さらに本発明は乳製品用調味料およびその製造方法でもある。
【発明の効果】
【0006】
本発明の加熱反応調味料を食品に添加することにより、コク、甘味、濃厚感、脂肪感、を増強し、加熱工程を経なくても熟成感、ロースト感を付与することができる。特に本発明の調味料を乳製品に添加することにより、コク、甘味、濃厚感、脂肪感、乳感(ミルク感)などを増強することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いられる果汁にはりんご、パイナップル、マンゴー、ピーチ、オレンジ、ゆずなどの果汁が含まれるがこれらに限定されず、食用に供されるものであれば特に制限はない。また、本発明に用いる果汁はどのような方法で作製したものであってもよい。例えば、本発明に用いることのできる果汁には、絞汁しただけの果汁、更にろ過した果汁、濃縮した果汁、無濃縮の果汁が含まれる。
本発明において、複数の種類の果汁を酵母エキスと反応させても良い。複数の種類の果汁を酵母エキスと反応させる場合に果汁の組合せは特に限定されず、どのような果汁の組合せを使用しても良い。
【0008】
本発明に使用する酵母エキスとしては、ビール酵母エキス、パン酵母エキス、トルラ酵母エキスなどを挙げることができるが、食用に供されるものであれば特に制限はない。また、複数の種類の酵母エキスを使用することもできる。
複数の種類の酵母エキスを使用する場合、使用する酵母エキスの組合せに特に制限はなく、それらを混合した後、果汁と反応させればよい。複数の酵母エキスと複数の果汁を反応させる場合、それらを全て混合してから加熱してもよく、一部のみを混合して一定時間加熱した後、更に酵母エキスおよび/または果汁を追加して加熱反応を継続しても良い。
【0009】
酵母エキスの抽出方法には、自己消化法(酵母菌体内に本来あるタンパク質分解酵素等を利用して菌体を可溶化する方法)、酵素分解法(微生物や植物由来の酵素製剤を添加して可溶化する方法)、熱水抽出法(熱水中に一定時間浸漬して可溶化する方法)、酸あるいはアルカリ分解法(種々の酸あるいはアルカリを添加して可溶化する方法)、物理的破砕法(超音波処理や、高圧ホモジェナイズ法、グラスビーズ等の固形物と混合して混合・磨砕することにより破砕する方法)、凍結融解法(凍結・融解を1回以上行うことにより破砕する方法)等が含まれるが、これらに限定されない。これらの酵母エキス調製方法は当業者にはよく知られた方法である。
例えば、ビール酵母エキスについて、ビール製造過程で得られるビール酵母を適宜ろ過、洗浄等を行い、上述した種々の方法により菌体を破砕または分解し、得られた粗エキスをそのまま、または、更にろ過、濃縮等をおこなって精製エキスとしてビール酵母エキスを得ることが出来る。
【0010】
本発明の調味料は、上述した果汁と酵母エキスを混合し、加熱することによって製造される。添加されるそれぞれの成分の添加量は特に限定されないが、酵母エキスは果汁の1〜40重量部が好ましい。加熱反応は約50℃〜約180℃、好ましくは約80℃〜約130℃、特に好ましくは約90℃〜約110℃にて、約1分間〜約60分間、好ましくは約1分間〜約30分間、特に好ましくは約1分間〜約10分間行う。本発明において、加熱反応時の圧力自体は本質的ではなく、反応中の圧力は加熱温度に依存して一般に約0.01〜1.0M Paであれば充分であろう。特に加熱反応を90℃〜110℃程度で行う場合は、加熱反応時の圧力は0.1M Pa〜0.3M Pa程度で充分であろう。加熱反応中は撹拌することが好ましい。加熱反応時のpHは限定されず、特に調整の必要はないが、果汁および酵母エキスが著しく酸又はアルカリ分解されない範囲であることが好ましく、一般には2.5〜9.0、より一般には、果汁を用いるという本発明の性質上、3.5〜4.0程度であろう。
一般に温度が高すぎると焦げ臭が目立ち、温度が低すぎるとロースト感が不足する傾向があるので、ロースト感のあるフルーティーな香りを際だたせるためには特に100℃前後の温度、例えば約90℃〜約110℃で短時間処理することが特に好ましい。本発明の最も好ましい態様においては、加熱反応は約0.1M Pa〜0.3M Paの圧力下にて、約90℃〜約110℃にて約1分間〜約10分間行われる。
【0011】
加熱反応後に得られた生成物はそのまま、又は冷却後そのまま(Brix65程度の褐色ペースト)調味料として使用することができるが、更に精製してもよい。得られた調味料液を更に濃縮(Brix80程度)または希釈してもよく、スプレードライ、フリーズドライ、バキュームドライ、エアードライ等の乾燥方法を用いて粉末状にしてもよい。
このようにして得られた調味料は、場合により、一般に調味料に許容される添加物を更に加えることもできる。
【0012】
本発明の調味料は、食品一般に使用することができ、例えば、アイスクリーム、ラクトアイス、ミルクプリン、ヨーグルト等の乳製品、豆乳製品、クリームシチュー、クリームスープ、ラーメンスープ、カレー、焼き肉のたれ、ソース、ドレッシング、特にアイスクリーム、ラクトアイス、ミルクプリン、ヨーグルトを含む乳製品に添加して使用することができる。添加量は、添加する食品に応じて大きく変動し得る。本発明の調味料は、質量百分率で食品に対して少なくとも0.01%程度添加すれば明らかな効果を生じさせることができ、一般には0.01%〜0.5%添加されるであろう。しかしながら、本発明の調味料は、それ自体を単独で食用に供することもできるので、更に広範な添加量範囲、例えば質量百分率で食品に対して0.001%〜50%の割合で添加することもできる。特に、実施例に示すように、牛乳、ラクトアイス等の乳製品の場合は、本発明の調味料を約0.01%〜0.5%、特に0.01%〜0.1%程度添加すれば充分である。
本発明の調味料は、食品製造のどの過程で添加してもよく、製造された食品に後から添加してもよく、本発明の調味料を食品に添加後更にその食品を加熱することもできる。
以下の実施例によって本発明はさらに具体的に説明されるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、下記の実施例で使用する果汁は、全て絞汁後、ろ過および濃縮を行った透明濃縮果汁である。また、以下の実施例で使用したアサヒフードアンドヘルスケア(株)製酵母エキスは自己消化法によって調製されたものである。
【実施例1】
【0013】
実施例1.調味料の製造
1)調味料1
リンゴ7倍濃縮果汁(日進通商)75重量部、酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア(株)製ミーストN)25重量部を混合し、105℃にて5分間加熱した。反応終了後、冷却し、調味料1を得た。
2)調味料2
リンゴ7倍濃縮果汁(日進通商)25重量部、パイナップル5倍濃縮果汁(果香)25重量部、マンゴー6倍濃縮果汁25重量部、酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア(株)製ミーストN)25重量部を混合し、105℃にて5分間加熱した。反応終了後、冷却し、調味料2を得た。
【0014】
3)比較例1
リンゴ7倍濃縮果汁(日進通商)33重量部、パイナップル5倍濃縮果汁(果香)33重量部、マンゴー6倍濃縮果汁33重量部を混合し、105℃にて5分間加熱した。反応終了後、冷却し、比較試料1を得た。
4)比較例2
リンゴ7倍濃縮果汁(日進通商)25重量部、パイナップル5倍濃縮果汁(果香)25重量部、マンゴー6倍濃縮果汁25重量部、酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア(株)製ミーストN)25重量部を混合し、比較試料2を得た。
5)比較例3
酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア(株)製ミーストN)を105℃にて5分間加熱した。反応終了後、冷却し、比較試料3を得た。
【実施例2】
【0015】
実施例2.官能評価
1)牛乳への添加
実施例1の調味料1、2および比較試料1〜3を、それぞれ砂糖濃度10%とした牛乳へ0.1質量%添加し、官能評価を行った。官能評価は社内パネル5人で行い、無添加を0とした時、それぞれ「濃厚感」、「コク」、「甘味」、「脂肪感」、「ミルク感」について最大5点となるよう点数化した。評価結果を平均値±標準偏差として表1に示す。
【0016】
表1.官能評価の結果I

【0017】
2)ラクトアイスへの添加
実施例1の調味料2を添加したラクトアイスを作製し、無添加品(対照区)と調味料2添加品(添加区)で比較官能検査を行った。官能評価は社内パネル19人で行い、強い方、あるいは良好である方を挙げることにより行なった。ラクトアイスの配合を表2に、官能評価の結果を表3に示した。表3の数値は各区について「強い」または「良好」と判断した人数を示す。
【0018】
表2.ラクトアイスの配合(単位はすべてグラム(g))

【0019】
表3.官能評価の結果II

【0020】
表1および表3に示した結果は、本発明の加熱反応調味料を添加した場合、比較例または対照区と比べて、「コク」「濃厚感」「脂肪感」「ミルク感」が増強されることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
果汁と酵母エキスを混合し、加熱することを特徴とする、調味料の製造方法。
【請求項2】
果汁が、りんご、パイナップル、マンゴー、ピーチ、オレンジおよびゆず、からなる群より選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
酵母エキスが、ビール酵母エキス、パン酵母エキスおよびトルラ酵母エキスからなる群より選ばれる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
加熱が、50℃〜180℃にて1分間〜60分間行われる、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
調味料が乳製品用調味料である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の方法によって製造される調味料。