説明

加熱収縮装置及び封止加工方法

【課題】熱収縮後における熱収縮部材内部の気泡の発生又はその大きさを抑制することが可能な加熱収縮装置、及び封止加工方法を提供する。
【解決手段】シュリンク装置2は、ケーブル10とハーネス12とを連結する連結部材11の突起部111を含む所定の範囲を収容するように配置された円筒状の熱収縮チューブ14を、突起部111の外周側に対応する熱収縮チューブ14の第1の被加熱領域14aにおける熱収縮が、第1の被加熱領域14aから離間した熱収縮チューブ14の端部を含む第2の被加熱領域14bにおける熱収縮に先行して始まるように加熱し、ケーブル10,ハーネス12,及び連結部材11の所定の領域を熱収縮チューブ14によって封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の熱収縮部材を加熱して収縮させることにより、その内部における被加工物を封止する加熱収縮装置、及び封止加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱収縮チューブをヒータによって加熱して収縮させ、熱収縮チューブに収容された被封止部材の一部の領域を密封する収縮機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された収縮機は、複数の電線を互いに接続する電線接続部を熱収縮チューブにより被覆し、この熱収縮チューブをヒータによって加熱して、電線接続部を密封する。また、この収縮機では、熱収縮チューブの加熱時における振れを抑制するため、熱収縮チューブの一端を保持治具により保持するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3331561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、被加工物の熱収縮チューブに収容される領域に、電線と電線との接続部等の突起が形成されている場合には、熱収縮チューブの内側における突起の周辺に気泡が発生してしまう場合があった。この気泡は、熱収縮チューブの端部の熱収縮によって突起の周辺における空気の逃げ場がなくなり、内部に留まるために発生すると考えられる。このような気泡があると、その大きさによっては熱収縮チューブの気泡が発生した部分の強度が低くなるため、熱収縮チューブを取り外して再度同様の加工を行う等の処理が必要となる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、熱収縮後における熱収縮部材内部の気泡の発生又はその大きさを抑制することが可能な加熱収縮装置、及び封止加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、被加工物の長手方向に対して交差する方向に突出した突起を含む前記被加工物の所定の範囲を収容するように配置された筒状の熱収縮部材を、前記突起の外周側に対応する前記熱収縮部材の第1の被加熱領域における熱収縮が、前記第1の被加熱領域から離間した前記熱収縮部材の端部を含む第2の被加熱領域における熱収縮に先行して始まるように加熱して、前記被加工物の前記所定の領域を前記熱収縮部材によって封止する加熱収縮装置を提供する。
【0008】
また、加熱収縮装置は、前記被加工物及び前記熱収縮部材を所定の方向に移動させる移動手段と、前記所定の方向に沿って設けられた熱源と、前記熱収縮部材の加熱工程の少なくとも初期において前記熱源から前記第2の被加熱領域への熱の伝達を抑制し、前記移動手段による移動に伴って前記熱源から前記第2の被加熱領域への熱伝達量を増大させる熱伝達抑制部材とを備えてもよい。
【0009】
また、前記熱源は、前記移動手段による前記熱収縮部材の移動方向に沿って設けられた赤外線光源であり、前記熱伝達抑制部材は、前記移動手段による前記熱収縮部材の移動に伴って前記第2の被加熱領域への赤外線照射量が増大するように、その前記赤外線光源側の端面が前記赤外線光源に対して傾斜して設けられた板状の部材であってもよい。
【0010】
また、前記熱源は、前記移動手段による前記熱収縮部材の移動方向に沿って設けられ、前記熱収縮部材を挟んで対向する一対の赤外線光源であり、前記熱伝達抑制部材は、前記移動手段による前記熱収縮部材の移動に伴って、前記一対の赤外線光源のうち前記突起が設けられた側における一方の赤外線光源から前記熱収縮部材の前記第2の被加熱領域への赤外線照射量が増大するように、その端面が前記一方の赤外線光源に対して傾斜して設けられていてもよい。
【0011】
また、前記赤外線光源の光を受けて前記熱収縮部材に向けて反射する反射部材をさらに備え、前記熱伝達抑制部材は、前記反射部材で反射して前記熱収縮部材の前記第2の被加熱領域を照射する方向の光の少なくとも一部を遮蔽するようにしてもよい。
【0012】
また、前記被加工物は、複数の電線と、前記複数の電線を相互に連結すると共に前記突起が形成された連結部材とを有し、前記熱収縮部材は、前記連結部材及び前記複数の電線の端部を含む領域を前記熱収縮部材により封止するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、被加工物の長手方向に対して交差する方向に突出した突起を含む前記被加工物の所定の範囲を収容するように配置された筒状の熱収縮部材を、前記突起の外周側に対応する前記熱収縮部材の第1の被加熱領域における熱収縮が、前記第1の被加熱領域から離間した前記熱収縮部材の端部を含む第2の被加熱領域における熱収縮に先行して始まるように加熱して、前記被加工物の前記所定の領域を前記熱収縮部材によって封止する封止加工方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱収縮後における熱収縮部材内部の気泡の発生又はその大きさを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る接触センサの概略の構成例を示し、(a)は全体模式図、(b)及び(c)は接触非検知状態及び接触検知状態における(a)のA−A線断面図である。
【図2】接触センサにおける連結部材及びその周辺部を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るシュリンク装置の概略の構成を示す斜視図である。
【図4】(a)及び(b)は、シュリンク装置による熱収縮チューブの加熱工程の様子を示す図である。
【図5】(a)〜(d)は、熱収縮チューブが収縮する過程の一例を示した概略図である。
【図6】加熱工程における第1の被加熱領域及び第2の被加熱領域の温度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態]
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。この実施の形態は、被加工物の長手方向の一部の領域を筒状の熱収縮部材の加熱によって封止する加熱収縮装置において、前記被加工物の長手方向に対して交差する方向に突出した突起を含む所定の範囲を収容するように配置された前記熱収縮部材を、前記突起の外周側に対応する前記熱収縮部材の第1の被加熱領域における熱収縮が前記第1の被加熱領域よりも前記熱収縮部材の端部に近い第2の被加熱領域における熱収縮に先行して始まるように加熱する加熱収縮装置及び封止加工方法についてのものである。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る熱収縮部材及び被加工物の一例としての接触センサの概略の構成例を示し、(a)は接触センサの全体を示す模式図、(b)は接触を検知していない状態における(a)のA−A線断面図、(c)は接触を検知した状態における(a)のA−A線断面図である。この接触センサ1は、例えば人体や物体等の検知対象物の接触又は非接触を電気信号の変化によって検知するために用いられる。
【0018】
(接触センサの構成)
図1(a)に示すように、接触センサ1は、接触検出部であるケーブル10と、ケーブル10における検知対象物の接触による電気抵抗の変化を示す信号を伝達するハーネス12と、ケーブル10とハーネス12とを相互に連結する連結部材11と、連結部材11に支持された抵抗器13と、連結部材11及び抵抗器13を含む範囲を封止する熱収縮チューブ14とを有する。
【0019】
ケーブル10,連結部材11,ハーネス12,及び抵抗器13は、封止加工の対象となる被加工物の一例であり、ケーブル10及びハーネス12の延伸方向は、この被加工物の長手方向にあたる。また、熱収縮チューブ14は熱収縮部材の一例である。
【0020】
ケーブル10は、第1〜第4の導線101〜104と、第1の導線101と第3の導線103とを短絡する第1の短絡線105と、第2の導線102と第4の導線104とを短絡する第2の短絡線106と、第1〜第4の導線101〜104をその内面107aに保持する筒状の外皮107とを有している。外皮107は、内部に空間を有し、弾性及び絶縁性を有するフッ素樹脂,エポキシ樹脂,あるいはウレタンアクリレート等の樹脂材料からなる。
【0021】
連結部材11は、第1〜第4の導体膜111a,112a,111b,112bが外面に形成された絶縁材料からなる。連結部材11の詳細については後述する。
【0022】
ハーネス12は、第1の導線121と第2の導線122とを絶縁体である円筒状のシース123に収容して構成されている。第1の導線121と第2の導線122の両端部は、ハーネス12の連結部材11側の第1の端部12a、及び第1の端部12aとは反対側の第2の端部12bにおいてシース123から外部に導出されている。
【0023】
図1(b)に示すように、第1〜第4の導線101〜104は、外皮107の内部において絶縁体に覆われておらず、金属からなる導電性材料が外皮107の内部空間に露出している。第1〜第4の導線101〜104は、外皮107の内面107aに螺旋状に保持されている。また、以下の説明では、ケーブル10の連結部材11側の端部を第1の端部10a、連結部材11とは反対側の端部を第2の端部10bとする。
【0024】
第1〜第4の導線101〜104の一端部101a〜104aは、ケーブル10の第1の端部10aにおいて外皮107の内面107aから引き出されている。外皮107の内面107aは、第2の端部10b側で密封されている。
【0025】
第1の導線101の一端部101a及び第2の導線102の一端部102aは、連結部材11の第1の導体膜111a及び第2の導体膜112aを介してハーネス12の第1の導線121及び第2の導線122に接続されている。また、第3の導線103の一端部103a及び第4の導線104の一端部104aは、連結部材11の第3の導体膜111b及び第4の導体膜112bを介して抵抗器13に接続されている。
【0026】
第1の導線101の他端部101bと第3の導線103の他端部103bは、ケーブル10の第2の端部10bにて、第1の短絡線105によって接続されている。また、第2の導線102の他端部102bと第4の導線104の他端部104bは、ケーブル10の第2の端部10bにて、第2の短絡線106によって接続されている。
【0027】
検知対象物がケーブル10に触れていない状態では、図1(b)に示すように、外皮107の弾性によって第1〜第4の導線101〜104がそれぞれ非接触の状態に保たれている。一方、検知対象物がケーブル10に触れ、ケーブル10が圧力を受けると、図1(c)に示すように、例えば第1の導線101と第2の導線102が外皮107の内部で接触する。これにより、検知対象物の非接触状態では絶縁されていた第1の導線101と第2の導線102が、検知対象物の接触状態では抵抗器13の抵抗値に相当する電気抵抗を有することになる。この電気抵抗の違いによって検知対象物の接触の有無を検知することが可能である。
【0028】
なお、第1の導線101と第4の導線104、又は第2の導線102と第3の導線103、あるいは第3の導線103と第4の導線104が接触した場合も同様に、第1の導線101と第2の導線102が抵抗器13の抵抗値に相当する電気抵抗を有することとなり、これにより検知対象物の接触の有無を検知することが可能である。
【0029】
図2は、連結部材11及びその周辺部を示す斜視図である。連結部材11は、例えば絶縁性の樹脂からなり、平板状の本体部110と、本体部110の表面110aに対して垂直な方向に突出して形成された直方体状の突起部111とを一体に有している。本体部110は直方体状であり、その長辺はケーブル10及びハーネス12の延伸方向に沿った方向である。突起部111の先端には、本体部110の表面110aと平行な平面111fが形成されている。突起部111は、本発明における突起の一例である。
【0030】
本体部110の表面110aには、第1の導体膜111a及び第2の導体膜112aが形成されている。また、本体部110の裏面110bには、第3の導体膜111b及び第4の導体膜112bが形成されている。
【0031】
本体部110の表面110aからの突起部111の高さは、抵抗器13の表面110aからの高さよりも高くなるように形成されている。これにより、抵抗器13に作用する外力を緩和して、抵抗器13の接続部における断線等の発生を抑制している。なお、突起部111は本体部110の表面110aに対して傾斜して立設されていてもよい。
【0032】
熱収縮チューブ14は、その熱による収縮によって、連結部材11及び抵抗器13を含むケーブル10の第1の端部10aからハーネス12の第1の端部12aまでの範囲を液密に封止する。これにより、水分等の侵入によって接触センサ1の抵抗値等の特性が変化することが抑えられる。なお、熱収縮チューブ14として、本実施の形態においては、断面円形状のものを用いたが、例えば断面矩形状のものを用いることも可能である。
【0033】
接触センサ1の組立は、ケーブル10及びハーネス12を連結部材11に連結する連結工程と、連結部材11を含む封止範囲を収容するように熱収縮チューブ14を配置する配置工程と、熱収縮チューブ14を加熱する加熱工程とによって行われる。次に、この熱収縮チューブ14を加熱して収縮させる加熱収縮装置の一例としてのシュリンク装置、及びこのシュリンク装置を用いた封止加工方法について具体的に説明する。
【0034】
(シュリンク装置の構成)
図3は、シュリンク装置の概略の構成を示す斜視図である。このシュリンク装置2は、熱収縮チューブ14を加熱する加熱装置3と、連結部材11により連結されたケーブル10及びハーネス12を加熱装置3に対して移動させる移動手段の一例としての移動装置4とを有している。
【0035】
加熱装置3は、断面円弧状の湾曲した反射面301aが形成された第1の反射部材301と、反射面301aと対向する断面円弧状の湾曲した反射面302aが形成された第2の反射部材302と、第1の反射部材301のホルダ310に支持された第1の石英管ヒータ31と、第2の反射部材302のホルダ320に支持された第2の石英管ヒータ32と、第1の反射部材301における第2の反射部材302との対向面301bに固定された遮蔽板33とを有して構成されている。
【0036】
第1の反射部材301と第2の反射部材302とは、図略の支持部材によって、加熱対象物である熱収縮チューブ14、及びケーブル10やハーネス12が通過する空間を介して対向配置されている。
【0037】
第1の石英管ヒータ31及び第2の石英管ヒータ32は、熱収縮チューブ14を加熱するための熱源としての一対の赤外線光源の一例である。また、遮蔽板33は、第1の反射部材301から熱収縮チューブ14への熱の伝達を抑制する熱伝達抑制部材の一例である。
【0038】
第1の石英管ヒータ31と第2の石英管ヒータ32とは、互いに平行となるように配置されている。第1の石英管ヒータ31及び第2の石英管ヒータ32は、図略の電源装置から供給される電力によって赤外線光を放射する。
【0039】
第1の反射部材301の反射面301aは、第1の石英管ヒータ31の長手方向に直交する面における断面形状が円弧状である。また、反射面301aは、第1の石英管ヒータ31の長手方向に対して平行となるように形成されている。同様に、第2の反射部材302の反射面302aは、第2の石英管ヒータ32の長手方向に直交する面における断面形状が円弧状であり、第2の石英管ヒータ32の長手方向に対して平行となるように形成されている。
【0040】
遮蔽板33は、ステンレス鋼等の金属板からなる板状の部材である。この遮蔽板33は、第1の反射部材301の反射面301aと第2の反射部材302の反射面302aとの間に、第1の石英管ヒータ31と第2の石英管ヒータ32とを含む仮想面に対して直交する向きに配置されている。また、この仮想面に対向する遮蔽板33の端面33aは、第1の石英管ヒータ31及び第2の石英管ヒータ32の長手方向に対して傾斜して設けられている。
【0041】
本実施の形態では、図3に例として示すように、遮蔽板33が台形状であり、図3の手前側の下底が奥側の上底よりも長く形成されているが、長方形状の板状部材を第1の石英管ヒータ31に対して傾斜して配置したものであってもよい。
【0042】
移動装置4は、加熱装置3の両側方に対をなすように配置された第1のベルト41及び第2のベルト42と、これら第1及び第2のベルト41,42を駆動するための複数のローラ410,420と、第1及び第2のベルト41,42の外面に設けられた複数の保持具411,421とを有して構成されている。
【0043】
第1及び第2のベルト41,42は、ローラ410,420から回転力を受け、第1及び第2の石英管ヒータ31,32の延伸方向と平行な方向に回転するように配置されている。保持具411,421は、連結部材11により連結されたケーブル10及びハーネス12を保持することが可能である。
【0044】
図4は、シュリンク装置2による熱収縮チューブ14の加熱工程の様子を示す図であり、(a)はシュリンク装置2を第1及び第2の石英管ヒータ31,32の長手方向から見た状態を、(b)は第2の反射部材302を透視して第2の反射部材302の側から見た状態を、それぞれ示す。
【0045】
本実施の形態では、図4(a)に示すように、連結部材11の本体部110から突起部111が第1の石英管ヒータ31側に向かって突出するように、ハーネス12を第1のベルト41の保持具411によって、またケーブル10を第2のベルト42の保持具421によって、それぞれ保持する。熱収縮チューブ14は、突起部111を含む範囲を収容するように配置されている。
【0046】
遮蔽板33は、上面33bが熱収縮チューブ14及び第2の反射部材302の反射面302aに面しており、下面33cが第1の反射部材301の反射面301aに面している。遮蔽板33の上面33b及び下面33cには、赤外線光を吸収して反射を抑制するために黒色の塗料を塗布する等の黒化処理が施されている。
【0047】
熱収縮チューブ14は、筒状に形成され、外層141と内層142とを有している。外層141は、加熱によって収縮する特性を有する例えば電子線架橋軟質ポリオレフィン樹脂等の合成樹脂材料からなる。内層142は、熱により溶融するホットメルト接着剤であり、例えばエチレン酢酸ビニル共重合体からなる。内層142は、円筒状の外層141の内面の全体に塗布されている。
【0048】
図4(b)に示すように、移動装置4は、連結部材11によって連結されたケーブル10及びハーネス12、ならびに熱収縮チューブ14を矢印Aの方向に移動させる。矢印Aは、第1の石英管ヒータ31の長手方向に対して平行な向きである。つまり、第1の石英管ヒータ31は、移動装置4による熱収縮チューブ14等の移動方向に沿って設けられている。
【0049】
以下の説明では、第1の反射部材301と第2の反射部材302の間に形成される空間Sの熱収縮チューブ14等が搬入される側(矢印Aの根元側)を搬入側、空間Sの熱収縮チューブ14等が搬出される側(矢印Aの先端側)を搬出側とする。
【0050】
本実施の形態に係る遮蔽板33は、台形形状の長辺(下底)が搬入側に配置され、短辺(上底)が搬出側に配置されている。熱収縮チューブ14は、空間Sの最も搬入側にあるときには、ハーネス12側の端部が遮蔽板33によって第1の石英管ヒータ31の直接光から遮蔽され、最も搬出側にあるときには、熱収縮チューブ14の長手方向の全体が第1の石英管ヒータ31の直接光を受けるように移動する。ここで、直接光とは、第1の石英管ヒータ31から放射された赤外線光のうち、第1の反射部材301の反射面301a等で反射することなく、直接熱収縮チューブ14を照射する方向に進む光をいう。
【0051】
なお、遮蔽板33の形状や配置は上記したものに限らず、例えば熱収縮チューブ14が空間S内に存在する間、熱収縮チューブ14の反射面301a側における軸方向の全体が第1の石英管ヒータ31からの直接光を受け、加熱工程の初期には遮蔽板33が反射面301aの反射光の少なくとも一部を熱収縮チューブ14に対して遮蔽し、移動装置4による熱収縮チューブ14の矢印A方向への移動に伴って、遮蔽板33が反射面301aの反射光を遮る割合が徐々に小さくなるように加熱装置3を構成してもよい。
【0052】
これにより、加熱工程の初期には、遮蔽板33が第1の石英管ヒータ31から熱収縮チューブ14への放射による熱伝達量を抑制し、移動装置4による熱収縮チューブ14の移動に伴って、第1の石英管ヒータ31から熱収縮チューブ14の一方の端部への熱伝達量を徐々に増大させる。
【0053】
より具体的には、遮蔽板33は、移動装置4による熱収縮チューブ14の矢印A方向への移動に伴って、熱収縮チューブ14のハーネス12側の端部への赤外線照射量が増大するように、端面33aが第1の石英管ヒータ31に対して傾斜して設けられている。
【0054】
一方、第2の反射部材302及び第2の石英管ヒータ32の側には、遮蔽板33に相当する、第2の石英管ヒータ32から熱収縮チューブ14への熱伝達を抑制する部材が設けられていない。このため、熱収縮チューブ14の反射面302a側の面は、加熱工程の全体に亘って第2の反射部材302の直接光、及び第2の反射部材302から発した赤外線光が反射面302aで反射した反射光を受け、加熱される。
【0055】
図5は、熱収縮チューブ14が収縮する過程の一例を示したものであり、(a)は加熱前の状態を、(b)は加熱工程の初期段階の状態を、(c)は加熱工程の中期段階の状態を、(c)加熱工程の終期段階の状態を、それぞれ示す。
【0056】
以下の説明では、熱収縮チューブ14の突起部111が形成された側における外周面のうち、突起部111の先端の平面111fの外周側にあたる軸方向の領域を第1の被加熱領域14a、ハーネス12の第1の端部12aの外周側にあたる軸方向の領域を第2の被加熱領域14b、ケーブル10の第1の端部10aの外周側にあたる軸方向の領域を第3の被加熱領域14cとする。第2の被加熱領域14bは、熱収縮チューブ14の一方の端部を含み、第1の被加熱領域14aに対して熱収縮チューブ14の軸方向の一方に離間している。また、第3の被加熱領域14cは、熱収縮チューブ14の他方の端部を含み、第1の被加熱領域14aに対して熱収縮チューブ14の軸方向の他方に離間している。
【0057】
図5に示すように、突起部111とハーネス12の第1の端部12aとの間の段差は、突起部111とケーブル10の第1の端部10aとの間の段差よりも大きくなっている。つまり、加熱工程の後において、第1の被加熱領域14aと第2の被加熱領域14bとの間の段差は、第1の被加熱領域14aと第3の被加熱領域14cとの間の段差よりも大きい。このため、第1の被加熱領域14aと第2の被加熱領域14bとの間には気泡が形成されやすい。以下の説明では、第1の被加熱領域14aと第2の被加熱領域14bとの間における空気の排出について重点的に説明する。
【0058】
図5(a)に示す加熱前の状態では、熱収縮チューブ14が円筒状であり、熱収縮チューブ14の内面と連結部材11等との間には空気が満たされている。
【0059】
加熱工程において熱収縮チューブ14が加熱されると、その外層141が収縮すると共に内層142が軟化する。前述のように、加熱工程の熱収縮チューブ14のハーネス12側の端部は加熱工程の初期において第1の石英管ヒータ31からの熱伝達量が抑制されているので、第1の被加熱領域14aは第2の被加熱領域14bよりも先行して外層141の収縮が始まる収縮温度に達する。つまり、第1の被加熱領域14aでは、第2の被加熱領域14bよりも先に熱収縮チューブ14の収縮が始まる。
【0060】
その結果、図5(b)に示すように、熱収縮チューブ14の内側では、まず第1の被加熱領域14aにおいて内層142と連結部材11との間の隙間がなくなり、軟化した内層142の一部が第1の被加熱領域14aから第2の被加熱領域14b又は第3の被加熱領域14c側に流動する。この状態では、第2の被加熱領域14b及び第3の被加熱領域14cの内部において、内層142とハーネス12及びケーブル10との間に空間が存在する。
【0061】
さらに熱収縮チューブ14が移動装置4によって移動すると、徐々に第2の被加熱領域14bへの熱伝達量が増大し、第2の被加熱領域14bにおける熱収縮チューブ14の収縮量が大きくなる。このため、図5(c)に示すように、第2の被加熱領域14bの内部における空間が狭くなる。つまり、第2の被加熱領域14bの内部の空気が熱収縮チューブ14の開口端部から押し出されていく。
【0062】
加熱工程の最終段階では、熱収縮チューブ14の全体が加熱され、図5(d)に示すように、第1〜第3の被加熱領域14a〜14cの全ての領域において熱収縮が完了する。熱収縮チューブ14の内部には、熱収縮チューブ14の強度に影響を与えるような大きさの気泡は残されておらず、また、内層142の一部は、その内部に気泡が形成されていない状態で、外層141の開口両端部からはみ出している。
【0063】
図6は、加熱工程における第1の被加熱領域14a及び第2の被加熱領域14bの温度の変化を示すグラフである。このグラフでは、第1の被加熱領域14aの温度を実線で、第2の被加熱領域14bの温度を一点鎖線で、それぞれ示している。
【0064】
時刻tで熱収縮チューブ14の加熱が始まると、徐々に第1の被加熱領域14a及び第2の被加熱領域14bの温度が上昇する。この加熱は、第1の石英管ヒータ31及び第2の石英管ヒータ32を熱源として行われるが、加熱工程の初期では第2の被加熱領域14bに対する加熱が遮蔽板33によって抑制されているので、第2の被加熱領域14bよりも第1の被加熱領域14aの方が早く温度が上昇する。
【0065】
このため、加熱開始の時刻tから熱収縮チューブ14の外層141の収縮が始まる収縮温度tempに到達するまでの時間は、第1の被加熱領域14aの方が第2の被加熱領域14bよりも短い。図6に示す例では、第1の被加熱領域14aが収縮温度tempに到達する時刻がtであり、第2の被加熱領域14bが収縮温度tempに到達する時刻は、時刻tよりも遅い時刻tである。
【0066】
(本実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
【0067】
(1)熱収縮チューブ14の第1の被加熱領域14aにおける熱による収縮が始まった後に、第2の被加熱領域14bにおける収縮が始まるので、熱収縮チューブ14内の空気が第2の被加熱領域14b側の開口端部から押し出されるように排出されながら、熱収縮チューブ14による封止加工が行われる。これにより、熱収縮チューブ14の軸方向の全体が同時に収縮する場合に比較して、熱収縮チューブ14内に残存する空気の量を削減することが可能となり、封止加工後の接触センサ1の強度を増すことができる。
【0068】
(2)熱収縮チューブ14が、加熱によって収縮する外層141と熱により溶融する接着剤からなる内層142とを有し、かつ熱収縮チューブ14内の空気が押し出されるように排出されながら熱収縮チューブ14による封止加工が行われるので、加熱工程の最終段階において内層142の一部を気泡が形成されていない状態で外層141の開口両端部からはみ出させることが可能である。これにより、熱収縮チューブ14内への水分の侵入を、外層141の両端部における内層142により良好にせき止めることができ、接触センサ1の防水性を向上させることが可能となる。なお、従来の封止加工方法では、熱により溶融した内層が内部に気泡を含む状態で外層の開口両端部からはみ出す場合があり、この気泡が割れると、その割れた部分から水分が浸入して接触センサの故障等につながる虞があったが、本実施の形態によれば、このような水分の浸入を抑制することが可能である。
【0069】
(3)加熱装置3は、移動装置4による熱収縮チューブ14の移動中に熱収縮チューブ14を加熱し、かつ遮蔽板33が熱収縮チューブ14の移動に伴って第2の被加熱領域14bへの熱伝達量を徐々に増大させるように配置されているので、複数の熱収縮チューブ14を連続して加熱し、封止加工を行うことが可能である。つまり、第1のベルト41及び第2のベルト42を回転させながら、連結部材11に連結されたケーブル10及びハーネス12を順次、保持具411,421に固定することで、複数の熱収縮チューブ14に対して同時に加熱処理を行うことができ、作業性を向上させることができる。
【0070】
(4)熱収縮チューブ14を収縮させる熱源として、赤外線を放射する第1及び第2の石英管ヒータ31,32を適用したので、遮蔽板33による遮蔽によって熱収縮チューブ14の各領域への熱伝達量を精度よく調節することができる。また、熱収縮チューブ14を移動方向に対する両側から第1の石英管ヒータ31及び第2の石英管ヒータ32によって加熱するので、例えば熱収縮チューブ14をその中心軸周りに回転させる等の必要がなく、また遮蔽板33は連結部材11の突起部111の側のみに設ければよい。このため、シュリンク装置2の構成を容易化することができる。
【0071】
(5)第1及び第2の石英管ヒータ31,32の赤外線光を反射する反射面301a,302aを有する第1及び第2の反射部材301,302を設けたので、第1及び第2の石英管ヒータ31,32が発する熱を有効に利用できるとともに、熱収縮チューブ14に向かう赤外線光の強度の分布を熱収縮チューブ14の軸方向に均等化することができ、遮蔽板33による第2の被加熱領域14cへの赤外線照射量の調節を適切に行うことが可能となる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0073】
例えば、熱収縮チューブ14を加熱する熱源として、熱風を放出する熱風器を用いてもよい。この場合、例えば加熱工程の初期では第2の被加熱領域14cに直接熱風がかからないようにし、移動装置4による移動に伴って徐々に熱風が第2の被加熱領域14bに直接当たるように遮蔽板を配置することで、熱収縮チューブ14内の空気を排出しながら熱収縮チューブ14を収縮させることができる。あるいは、熱風の放出方向の中心が第1の被加熱領域14aから徐々に第2の被加熱領域14b側に移動するように、加熱装置3を構成してもよい。
【0074】
また、本実施の形態では、移動装置4として、第1及び第2のベルト41,42及びローラ410,420を用いたが、これに限らず、例えばチェーン及びスプロケットを用いることも可能である。
【0075】
また、加熱工程における熱収縮チューブ14の移動方向は、水平方向でもよく、垂直方向でもよい。また、水平方向及び垂直方向に対して傾斜した方向でもよい。
【0076】
また、本発明の適用対象は接触センサに限らない。長手方向に対して交差する方向に突出した突起を有する被加工物における突起を含む範囲を熱収縮部材によって封止するものであれば、本発明を適用して同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0077】
1…接触センサ、2…シュリンク装置、3…加熱装置、4…移動装置、10…ケーブル、10a…第1の端部、10b…第2の端部、11…連結部材、12…ハーネス、12a…第1の端部、12b…第2の端部、13…抵抗器、14…熱収縮チューブ、14a〜14c…第1〜第3の被加熱領域、31…第1の石英管ヒータ、32…第2の石英管ヒータ、33…遮蔽板、33a…端面、33b…上面、33c…下面、41…第1のベルト、42…第2のベルト、101〜104…第1〜第4の導線、101a,102a,103a,104a…一端部、101b,102b,103b,104b…他端部、107…外皮、107a…内面、105…第1の短絡線、106…第2の短絡線、110…本体部、110a…表面、110b…裏面、111…突起部、111a,112a,111b,112b…第1〜第4の導体膜、111f…平面、121…第1の導線、122…第2の導線、123…シース、141…外層、142…内層、301…第1の反射部材、302…第2の反射部材、301a,302a…反射面、301b…対向面、310,320…ホルダ、410,420…ローラ、411,421…保持具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の長手方向に対して交差する方向に突出した突起を含む前記被加工物の所定の範囲を収容するように配置された筒状の熱収縮部材を、前記突起の外周側に対応する前記熱収縮部材の第1の被加熱領域における熱収縮が、前記第1の被加熱領域から離間した前記熱収縮部材の端部を含む第2の被加熱領域における熱収縮に先行して始まるように加熱して、前記被加工物の前記所定の領域を前記熱収縮部材によって封止する加熱収縮装置。
【請求項2】
前記被加工物及び前記熱収縮部材を所定の方向に移動させる移動手段と、
前記所定の方向に沿って設けられた熱源と、
前記熱収縮部材の加熱工程の少なくとも初期において前記熱源から前記第2の被加熱領域への熱の伝達を抑制し、前記移動手段による移動に伴って前記熱源から前記第2の被加熱領域への熱伝達量を増大させる熱伝達抑制部材とを備えた請求項1に記載の加熱収縮装置。
【請求項3】
前記熱源は、前記移動手段による前記熱収縮部材の移動方向に沿って設けられた赤外線光源であり、
前記熱伝達抑制部材は、前記移動手段による前記熱収縮部材の移動に伴って前記第2の被加熱領域への赤外線照射量が増大するように、その前記赤外線光源側の端面が前記赤外線光源に対して傾斜して設けられた板状の部材である請求項2に記載の加熱収縮装置。
【請求項4】
前記熱源は、前記移動手段による前記熱収縮部材の移動方向に沿って設けられ、前記熱収縮部材を挟んで対向する一対の赤外線光源であり、
前記熱伝達抑制部材は、前記移動手段による前記熱収縮部材の移動に伴って、前記一対の赤外線光源のうち前記突起が設けられた側における一方の赤外線光源から前記熱収縮部材の前記第2の被加熱領域への赤外線照射量が増大するように、その端面が前記一方の赤外線光源に対して傾斜して設けられた請求項2に記載の加熱収縮装置。
【請求項5】
前記赤外線光源の光を受けて前記熱収縮部材に向けて反射する反射部材をさらに備え、
前記熱伝達抑制部材は、前記反射部材で反射して前記熱収縮部材の前記第2の被加熱領域を照射する方向の光の少なくとも一部を遮蔽する請求項3又は4に記載の加熱収縮装置。
【請求項6】
前記被加工物は、複数の電線と、前記複数の電線を相互に連結すると共に前記突起が形成された連結部材とを有し、
前記熱収縮部材は、前記連結部材及び前記複数の電線の端部を含む領域を前記熱収縮部材により封止する請求項1乃至5の何れか1項に記載の加熱収縮装置。
【請求項7】
被加工物の長手方向に対して交差する方向に突出した突起を含む前記被加工物の所定の範囲を収容するように配置された筒状の熱収縮部材を、前記突起の外周側に対応する前記熱収縮部材の第1の被加熱領域における熱収縮が、前記第1の被加熱領域から離間した前記熱収縮部材の端部を含む第2の被加熱領域における熱収縮に先行して始まるように加熱して、前記被加工物の前記所定の領域を前記熱収縮部材によって封止する封止加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−228056(P2012−228056A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93109(P2011−93109)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】