加熱調理器のロック装置
【課題】機器の設計的負担を軽減し且つ機器の組み立て作業の煩雑化を抑制することが可能となり、しかも、加熱指示用操作具の製作コストの低下を図ることが可能となる加熱調理器のロック装置を提供する。
【解決手段】押し移動操作により加熱部の加熱開始を指示する加熱指示用操作具7の押し移動を牽制する牽制状態と牽制を解除する解除状態とに切換え操作自在なロック手段Eが、固定側の受止め体55Bと、この受止め体55Bにて受止められる牽制位置と受止めが解除される解除位置とに切換え自在に加熱指示用操作具7に支持された牽制部材56とから構成されている。
【解決手段】押し移動操作により加熱部の加熱開始を指示する加熱指示用操作具7の押し移動を牽制する牽制状態と牽制を解除する解除状態とに切換え操作自在なロック手段Eが、固定側の受止め体55Bと、この受止め体55Bにて受止められる牽制位置と受止めが解除される解除位置とに切換え自在に加熱指示用操作具7に支持された牽制部材56とから構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押し移動操作により加熱部の加熱開始を指示する加熱指示用操作具が設けられ、この加熱指示用操作具の押し移動を牽制する牽制状態と牽制を解除する解除状態とに切換え操作自在なロック手段が設けられた加熱調理器のロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる加熱調理機器のロック装置は、ガスコンロ等の加熱調理機器において、子供のいたずら操作により、加熱指示用操作具が押し移動操作されることによって、コンロバーナ等の加熱部が不必要に加熱を開始することを回避するようにしたものである。
【0003】
このような加熱調理機器のロック装置として、従来では、ロック手段が、加熱指示用操作具に一体的に形成した被受止め部と、その被受止め部を加熱指示用操作具が押し移動されたときに受止める牽制位置と受止めを解除する解除位置とに切換え自在に機器ケーシング側に設けた牽制部材とから構成されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−39869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の加熱調理機器のロック装置におけるロック手段は、牽制位置と解除位置とに切換えられる牽制部材を、機器ケーシング側に設けて、牽制部材が牽制位置に位置するときに、加熱指示用操作具に一体的に形成した被受止め部を牽制部材にて受止めるように構成されるものであるため、機器ケーシング側に組み付ける部材として、位置変更される牽制部材が存在することにより、機器の設計的負担が大きくなる傾向や機器の組み立て作業が煩雑化する虞があった。
【0006】
また、牽制部材にて、加熱指示用操作具に一体的に形成した被受止め部が受止められるときに、その被受止め部の形成部分に応力が集中する傾向となるため、加熱指示用操作具を十分な強度にて形成する必要があり、加熱指示用操作具の製作コストが高くなる傾向があった。
つまり、一般に、加熱指示用操作具は、合成樹脂にて成型加工されることになるが、このような場合において、加熱指示用操作具に十分な強度を備えさせるためには、その肉厚を厚くすることや、多数の補強リブを備えさせることが行われることになり、加熱指示用操作具の製作コストが高くなるものであった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、機器の設計的負担を軽減し且つ機器の組み立て作業の煩雑化を抑制することが可能となり、しかも、加熱指示用操作具の製作コストの低下を図ることが可能となる加熱調理器のロック装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の加熱調理器のロック装置は、押し移動操作により加熱部の加熱開始を指示する加熱指示用操作具が設けられ、この加熱指示用操作具の押し移動を牽制する牽制状態と牽制を解除する解除状態とに切換え操作自在なロック手段が設けられたものであって、その第1特徴構成は、
前記ロック手段が、前記加熱指示用操作具が押し移動されたときにその移動を受止めるための固定側の受止め体と、この受止め体にて受止められる牽制位置と受止めが解除される解除位置とに切換え自在に前記加熱指示用操作具に支持された牽制部材とから構成されている点を特徴とする。
【0009】
すなわち、加熱指示用操作具に牽制位置と解除位置とに切換え自在に支持された牽制部材を牽制位置に切換えれば、加熱指示用操作具が押し移動されたときに、牽制部材が固定側の受止め体にて受止められて、火力調節操作具が押し移動されることが牽制されることになる。そして、牽制部材を解除位置に切換えれば、加熱指示用操作具が押し移動されたときに、牽制部材が固定側の受止め体にて受止められることがなく、火力調節操作具が押し移動されて、加熱部の加熱が開始されることになる。
【0010】
このように、牽制部材を牽制位置と解除位置とに切換え自在に加熱指示用操作具に支持し、牽制部材を受止める固定側の受止め体を設けることにより、ロック手段を構成するものであるから、機器ケーシング側には、固定側の受止め体を設けるものとなるため、器機の設計的負担を軽減し且つ機器の組み立て作業の煩雑化を抑制することが可能となるのである。
つまり、ロック手段の設置のために、機器ケーシング側に位置変更される部材を支持する構造を設ける必要がないため、位置変更される部材を設置するスペースやその支持部材を設置するスペース等を機器ケーシング側に確保する必要がなくなり、機器の設計的負担が軽減することになる。
【0011】
さらに、ロック手段の設置のために、機器ケーシング側に位置変更される部材を組み付ける作業が不要となるため、機器の組付作業の煩雑化を抑制できる。
説明を加えると、機器ケーシングには種々の多数の部材を組み付けることになるが、その組み付ける部材として、位置変更される部材が多いほど、機器の組付スペースが狭いこと等に起因して、機器の組付作業が煩雑化することになる。一方、加熱指示用操作具に対して牽制部材を組み付ける作業は、機器の組付作業とは別作業として広い空間にて行えるものとなるため、機器ケーシングに位置変更される部材を組み付けるよりも容易に行えるものとなる。
【0012】
また、加熱指示用操作具に牽制部材を設けて、その牽制部材を固定側の受止め体にて受止めることにより、加熱指示用操作具の押し移動を受止めるものであるから、加熱指示用操作具の一部に大きな応力が集中して作用することを回避できるため、加熱指示用操作具に備えさせる強度を低下させても不都合は生じないから、加熱指示用操作具の製作コストの低下を図ることが可能となる。
【0013】
説明を加えると、固定側の受止め体にて牽制部材が受止められたときに、牽制部材に作用する力を加熱指示用操作具にて受止めることになるが、牽制部材は、加熱指示用操作具とは別部材であるから、牽制部材に作用する力を加熱指示用操作具の複数箇所にて受止める、つまり、牽制部材を加熱指示用操作具の複数箇所にて受止めるようにすることができるのであり、加熱指示用操作具の一部に大きな応力が集中して作用することを回避できるのである。
【0014】
要するに、本発明の第1特徴構成によれば、機器の設計的負担を軽減し且つ機器の組み立て作業の煩雑化を抑制することが可能となり、しかも、加熱指示用操作具の製作コストの低下を図ることが可能となる加熱調理器のロック装置を提供できる。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、上記した第1特徴構成に加えて、
被操作部が押し移動されることにより前記加熱部としてのバーナに対してガス燃料を供給する器具栓が、前記加熱指示用操作具に支持された前記牽制部材にて前記被操作部を押し移動される状態で設けられている点を特徴とする。
【0016】
すなわち、牽制部材を解除位置に切換えた状態で、加熱指示用操作具を押し移動操作すると、その加熱指示用操作具に支持した牽制部材が器具栓の被操作部を押し移動操作することになり、器具栓が加熱部としてのバーナに対してガスを供給して、バーナの加熱、つまり、燃焼が開始されることになる。
【0017】
器具栓の被操作部を牽制部材にて押し移動操作するときには、牽制部材に作用する力を加熱指示用操作具にて受止めることになるが、請求項1における作用効果の説明でも述べた如く、牽制部材は、加熱指示用操作具とは別部材であるから、牽制部材に作用する力を加熱指示用操作具の複数箇所にて受止める、つまり、牽制部材を加熱指示用操作具の複数箇所にて受止めるようにすることができるのであり、加熱指示用操作具の一部に大きな応力が集中して作用することを回避できるものとなる。
【0018】
したがって、加熱指示用操作具に支持した牽制部材にて器具栓の被操作部を押し移動操作するようにしても、加熱指示用操作具の一部に大きな応力が集中して作用することを回避できるため、加熱指示用操作具に備えさせる強度を低下させても不都合は生じないから、加熱指示用操作具の製作コストの低下を図ることが可能となる。
【0019】
要するに、本発明の第2特徴構成によれば、上記した第1特徴構成による作用効果に加えて、加熱指示用操作具の押し移動操作により、加熱部としてのバーナに燃料を供給する器具栓の被操作部を押し移動操作するものでありながらも、加熱指示用操作具の製作コストの低下を図ることが可能となる加熱調理器のロック装置を提供できる。
【0020】
本発明の第3特徴構成は、上記した第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、
前記加熱指示用操作具が、上端側を支点に揺動自在に支持され、かつ、庇状の突部を前面に備える状態に構成され、
前記牽制部材の操作用把持部が、前記加熱指示用操作具における前記庇状の突部の下方側に配設されている点を特徴とする。
【0021】
すなわち、上端側を支点に揺動自在に支持されている加熱指示用操作具の前面に、庇状の突部を備えているから、加熱指示用操作部を押し移動操作するときに、庇状の突部を押し操作することにより、加熱指示用操作具を移動させること、つまり、加熱指示用操作具を上端側の支点周りで揺動させることを良好に行い易いものとなる。
【0022】
また、牽制部材を牽制位置と解除位置とに切換えるために、操作者が把持することになる牽制部材の操作用把持部が、加熱指示用操作具における庇状の突部の下方側に配設されているから、加熱開始を指示するために加熱指示用操作具を押し移動操作するときに、牽制部材の操作用把持部が誤操作されることを回避できるものとなる。
【0023】
要するに、本発明の第3特徴構成によれば、上記第1特徴構成又は第2特徴構成による作用効果に加えて、加熱指示用操作具に対する押し移動操作を良好に行え、しかも、牽制部材を誤操作することを回避できる加熱調理器のロック装置を提供できる。
【0024】
本発明の第4特徴構成は、上記した第1〜第3特徴構成のいずれかに加えて、
前記加熱指示用操作具及び前記牽制部材が合成樹脂製であり、
前記牽制部材が、前記加熱指示用操作具に、その背面に摺動自在に接当する状態で支持されている点を特徴とする。
【0025】
すなわち、加熱指示用操作具及び牽制部材が合成樹脂製であるから、加熱指示用操作具を外観が美麗で且つ操作性が優れた形状に成形することができ、また、牽制部材を加熱指示用操作具の形状に合わせた形状に成形することができ、製作の容易化を図ることができる。
【0026】
そして、牽制部材が、加熱指示用操作具に、その背面に摺動自在に接当する状態で支持されているから、牽制部材が固定側の受止め体にて受止められたときに作用する力を、加熱指示用操作具の背面を用いて、加熱指示用操作具の一部に応力が集中することが無い状態で受止めることができるのであり、
【0027】
要するに、本発明の第4特徴構成によれば、上記第1〜第3特徴構成のいずれかによる作用効果に加えて、製作の容易化を図り、しかも、加熱指示用操作具に応力が集中することを抑制できる加熱調理器のロック装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】コンロの斜視図
【図2】ガス燃料の流路構成を示す概略図
【図3】コンロバーナを示す縦断側面図
【図4】閉じ状態のコンロ用器具栓を示す縦断側面図
【図5】点火状態のコンロ用器具栓を示す縦断側面図
【図6】開き状態のコンロ用器具栓を示す縦断側面図
【図7】コンロ用器具栓の平面図
【図8】コンロ用火力調節具と弁体との連係を示す平面図
【図9】制御構成を示すブロック図
【図10】コンロ用操作具及びグリル用操作具の装着部を示す正面図
【図11】コンロ用操作具及びグリル用操作具の装着部の一部省略斜視図
【図12】グリル用操作具と牽制部材との分解斜視図
【図13】図10のI III−I III線矢視図
【図14】グリル用操作具を押し移動操作した状態の縦断側面図
【図15】グリル用操作具の背面図
【図16】図15におけるI VI−I VI線矢視図
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔実施形態〕
本発明にかかるガス燃焼機器の火力調節装置を、ガス燃焼機器の一例としてのガスコンロに適用した場合の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、例示するガスコンロは、加熱部としての2つのコンロバーナ1A、1Bを備えるコンロ部、及び、加熱部としてのグリルバーナ2(図2参照)を装備するグリル部Gを備え、そして、キッチンカウンターに組み込まれるビルトインタイプに構成されている。
【0030】
ガスコンロの上面は、ガラス製のトッププレート3にて覆われ、ガスコンロの上面の後部側には、グリル部Gの燃焼排ガスを排気するためのグリル排気口4が形成されている。
2つのコンロバーナ1A、1Bの夫々にて加熱される鍋等の被加熱物を載置するための五徳5A、5Bが、トッププレート3の上部に設けられている。
【0031】
ガスコンロの前面には、2つのコンロバーナ1A、1Bに対する点火及び消火を指令する押し操作式の一対のコンロ用操作具6A、6B、グリルバーナ2に対する点火及び消火を指令する押し操作式のグリル用操作具7、2つのコンロバーナ1A、1Bの火力を調節する一対のコンロ用火力調節具8A、8B、及び、グリルバーナ2の火力を調節するグリル用火力調節具9が設けられ、加えて、調理情報等の種々の情報を入力するためのコンロ用設定操作部10及びグリル用設定操作部11が設けられている。
尚、ガスコンロの前面には、電池収納部を開閉する電池収納用開閉蓋12が設けられている。
【0032】
図2に示すように、都市ガス等の燃料ガスが供給される元ガス供給路15に、一対のコンロバーナ1A、1Bに対するコンロ用分岐路16A、16B、及び、グリルバーナ2に対するグリル用分岐路17が接続されている。
そして、一対のコンロ用分岐路16A、16Bの夫々には、コンロ用器具栓19が配設され、グリル用分岐路17には、グリル用器具栓20が配設されている。
尚、グリルバーナ2は、一般に、被加熱物を上方から加熱する上バーナと被加熱物を下方から加熱する下バーナとを備えさせることになり、本実施形態においても、上バーナと下バーナとを備えさせるものであるが、図2においては、上バーナのみを記載して、下バーナの記載を省略し、それに合わせて、グリル用器具栓20についても、下バーナに対する部分を省略して記載している。
【0033】
コンロ用器具栓19は、コンロ用操作具6A、6Bの背部箇所に配設され、そして、コンロ用操作具6A、6Bの点火操作によりコンロバーナ1A、1Bへ燃料を供給する状態に操作され、コンロ用操作具6A、6Bの消火操作によりコンロバーナ1A、1Bへの燃料供給を停止する状態に操作され、コンロ用火力調節具8A、8Bの操作や後述する制御部H(図9参照)の指令(操作)にてコンロバーナ1A、1Bへの燃料供給量を調節するように操作され、加えて、制御部Hの指令(操作)によってコンロバーナ1A、1Bへの燃料供給を停止する状態に操作されるように構成されている。
【0034】
グリル用器具栓20は、グリル用操作具7の背部箇所に配設され、そして、グリル用操作具7の点火操作によりグリルバーナ2へ燃料を供給する状態に操作され、グリル用操作具7の消火操作によりグリルバーナ2への燃料供給を停止する状態に操作され、グリル用火力調節具9の操作や制御部Hの指令(操作)にてグリルバーナ2への燃料供給量を調節するように操作され、加えて、制御部Hの指令(操作)にてコンロバーナ1A、1Bへの燃料供給を停止する状態に操作されるように構成されている。
【0035】
図2及び図3に示すように、2つのコンロバーナ1A、1B及びグリルバーナ2の夫々に対して、点火用の点火プラグP、熱電対等を用いて構成される着火状態検出用の着火センサRが装備されている。
尚、グリルバーナ2は、上述の如く、上バーナと下バーナとを備えさせる場合には、夫々のバーナに対して、点火プラグP及び着火センサRが装備されることになる。
【0036】
また、2つのコンロバーナ1A、1Bの夫々に対して、鍋等の被加熱物の存否を検出し且つその温度を検出する被加熱物検出センサSが装備されている。
この被加熱物検出センサSは、上下方向に伸縮自在でかつ上方に復帰付勢された伸縮体S1を備えて、この伸縮体S1が被加熱物に押されて下方に移動したことを伸縮検知部S2にて検出することにより被加熱物の存在を検出するように構成され、また、伸縮体S1の上端部に設けた温度検知部S3が、被加熱物に接触してその温度を検出するように構成されている。
【0037】
図9に示すように、マイクロコンピュータを備えて構成されて、ガスコンロの運転を制御する制御部Hが設けられている。
すなわち、この制御部Hは、コンロ用操作具6A、6Bやグリル用操作具7の点火操作に基づいて、コンロバーナ1A、1Bやグリルバーナ2に対する点火プラグPを作動させ且つ着火センサRにて着火を検出する点火処理、コンロ用操作具6A、6Bやグリル用操作具7の消火操作に基づいて、コンロ用器具栓19やグリル用器具栓20に装備された安全弁24(図2参照)を閉じ操作して、コンロバーナ1A、1Bやグリルバーナ2への燃料の供給を停止する消火処理、及び、コンロバーナ1A、1Bやグリルバーナ2の燃焼中において着火センサRにて着火が検出されなくなると、上記したコンロ用器具栓19やグリル用器具栓20に装備された安全弁24を閉じ操作して、コンロバーナ1A、1Bやグリルバーナ2への燃料の供給を停止する非常停止処理を実行することになる。
【0038】
さらに、制御部Hは、コンロ用設定操作部10の設定情報や被加熱物検出センサSの検出情報等に基づいて、コンロ用器具栓19に装備した火力調節用の電磁弁26(図2参照)や安全弁24を操作して、コンロバーナ1A、1Bに対する燃料供給量の調整やコンロバーナ1A、1Bへの燃料供給を停止する自動調理処理、及び、被加熱物検出センサSにて異常な高温が検出されると、コンロ用器具栓19に装備された安全弁24を閉じ操作して、コンロバーナ1A、1Bへの燃料の供給を停止する異常停止処理を実行し、さらに、グリル用設定操作部11の設定情報等に基づいて、グリル用器具栓20に装備した火力調節用の電磁弁26(図2参照)や安全弁24を操作して、グリルバーナ2に対する燃料供給量の調整やグリルバーナ2に対する燃料供給を停止する自動グリル処理等の各種の処理を実行するように構成されている。
【0039】
制御部Hが実行する自動調理処理としては、変更設定された設定時間が経過すると自動的に消火するタイマ運転処理、被加熱物検出センサSにて検出される温度が変更設定される目標温度に維持するように火力を大小に調節する揚げもの運転処理、被加熱物検出センサSにて検出される温度が沸騰を検出すると消火する湯沸し運転処理、及び、運転開始からの時間経過に伴って火力を設定パターンにて変更させる炊飯運転処理等がある。
【0040】
次に、ガスコンロの詳細について説明を加えるが、一対のコンロバーナ1A、1Bの夫々について装備されるコンロ用器具栓19は、同じ構造であり、かつ、グリルバーナ2について装備されるグリル用器具栓20は、コンロ用器具栓19と同様な構造であり、そして、コンロ用器具栓19及びグリル用器具栓20の操作構成も同様であるので、以下、左側のコンロバーナ1Aについて装備されるコンロ器具栓19を代表して説明して、右側のコンロバーナ1Bに対するコンロ用器具栓19及びグリル用器具栓20については、左側のコンロバーナ1Aについて装備されるコンロ器具栓19について記載する符合と同じ符合を図面に記載することにより、その説明を省略する。
【0041】
図2及び図4〜図6に示すように、コンロ用器具栓19は、本体ケーシング22の内部に、コンロ用操作具6Aにて開閉操作されるメイン弁23、閉状態に弾性付勢された電磁操作式の安全弁24、コンロ用火力調節具8Aにて操作されるニードル式の流量調整弁25、及び、火力調節用の電磁弁26を組み込んで構成されている。
そして、メイン弁23及び安全弁24を備える本流路28に対して、流量調整弁25及び電磁弁26を備える主流路29Aと、小火用オリフィス27を備える分岐流路29Bとが、並列状態で接続されており、電磁弁26の開状態では、ガス燃料が主流路29A及び分岐流路29Bを通して流動し、電磁弁26の閉状態では、ガス燃料が分岐流路29Bを通して流動するように構成されている。
【0042】
ちなみに、制御部Hは、自動調理処理を実行するときに、火力調節用の電磁弁26を開閉操作することにより、大火力状態と小火力状態とに切換えることになる。
そして、大火力状態における火力は、流量調整弁25の流量調整によって変動することになるため、自動調理処理を実行するときには、大火力状態における火力が適正な火力となるように、コンロ用火力調節具8Aにて流量調整弁25を操作することになる。
【0043】
図4〜図6に示すように、本体ケーシング22は、複数の鋳造部品をそれらの間にパッキンを介装してボルト固定する状態に組み立てることによって構成され、そして、本体ケーシング22には、元ガス供給路15が接続されてガス燃料が供給される導入口30、及び、コンロバーナ1Aのガス混合部1aにガス燃料を噴出するガスノズルN(図3参照)に接続される導出口31が開口されている。そして、本体ケーシング22の内部には、導入口30と導出口31とを連通接続される状態で、本流路28、主流路29A、及び、分岐流路29Bが形成されている。
【0044】
本体ケーシング22の前端側の下方箇所には、合成樹脂製の支持枠33がビス止めされる状態で固着され、この支持枠33に、合成樹脂製のスライダ34が摺動自在に内嵌されている。
このスライダ34には、金属製のバルブロッド35が安全弁24を構成する弁体24Aに向けて延出される状態で固着され、このバルブロッド35には、メイン弁23を構成する弁体23Aが設けられている。
【0045】
スライダ34と支持枠33との間には、スライダ34をコンロ前面側に付勢する第1コイルスプリング36が介装され、メイン弁23を構成する弁体23Aを閉じ側に付勢する第2コイルスプリング37が介装されている。
メイン弁23を構成する弁体23Aは、コンロ前面側に移動すると閉状態となり、コンロ背面側に移動すると開状態となるものであり、スライダ34は、第2コイルスプリング37にても、コンロ前面側に付勢されることになる。
【0046】
コンロ用操作具6Aが、上端側の揺動支点Qを中心にして、コンロ背面側に向けて押し込み移動操作自在に枢支され、そして、その押し込み移動により、スライダ34をコンロ背面側に押し込み移動させるように構成されている。
尚、コンロ用操作具6Aは、その自重によりコンロ背面側に向けて付勢されて、スライダ34に接当する状態に維持されるように構成されている。ちなみに、右側のコンロバーナ1Bに対するコンロ用操作具6B及びグリル用操作具7についても、左側のコンロバーナ1Aに対するコンロ用操作具6Aと同様に、その自重によりコンロ背面側に向けて付勢されて、スライダ34に接当する状態に維持されるように構成されている。
【0047】
ちなみに、コンロ用操作具6A、6B及びグリル用操作具7の背部には、詳細は後述するが、ロック手段Eを構成する牽制部材56が設けられており、この牽制部材56が、コンロ用操作具6A、6B及びグリル用操作具7を自重によりコンロ背面側に向けて付勢する錘として作用することになる。そして、コンロ用操作具6A、6B及びグリル用操作具7は、牽制部材56にて、スライダ34をコンロ背面側に押し込み移動させるように構成されている。
【0048】
スライダ34の下面には、ほぼハート型のカム溝を備えたハートカム部材38が取り付けられ、支持枠33に左右方向に揺動自在に保持されたU字状のピン39の遊端部が、支持枠33を貫通してハートカム部材38のカム溝に係合して、いわゆるプッシュ−プッシュ機構が構成されている。
このプッシュ−プッシュ機構は、従来公知であるため詳しい説明は省略するが、このハートカム部材38とピン39との協働作用により、両コイルスプリング36、37によってコンロ前面側に弾性付勢されたスライダ34を、コンロ前面側に位置する閉位置A、及び、この閉位置Aよりもコンロ背面側でかつコンロ背面側に最も大きく押し込んだ点火位置Cよりもコンロ前面側の開位置Bに保持するように構成されている。
【0049】
説明を加えると、スライダ34が閉位置Aに位置保持されている状態で、コンロ用操作具6Aを押し込み操作して、閉位置Aに位置保持されているスライダ34を点火位置Cにまで操作し、その後、コンロ用操作具6Aに対する押し込み操作を解除すると、スライダ34が開位置Bに弾性復帰移動して、その開位置Bに位置保持されることになる。
スライダ34が開位置Bに位置する状態で、コンロ用操作具6Aを押し込み操作することにより、開位置Bに位置保持されているスライダ34を点火位置Cに向けて操作し、その後、コンロ用操作具6A、6Bに対する押し込み操作を解除すると、スライダ34が閉位置Aに弾性復帰移動して、その閉位置Aに保持されることになる。
【0050】
また、支持枠33の横一側部には、点火用の固定接点や安全用の固定接点などを備えた接点板ブロックD(図7、図8参照)が取り付けられ、スライダ34の摺動に伴って、スライダ34側に取り付けた可動接点が各固定接点に対する接触状態と非接触状態とに切り換えられるように構成されている。
この接点板ブロックDの検出情報は、制御部Hに入力されて、制御部Hが、点火プラブPの作動、及び、安全弁24の作動を制御することになる。
【0051】
次に、コンロ用操作具6Aの操作に基づく、コンロ用器具栓19の作動及び制御部Hの制御作動についてまとめて説明する。
すなわち、図4に示すように、スライダ34が閉位置Aにあるときは、可動接点が点火用の固定接点及び安全用の固定接点に対する非接触状態となり、そして、メイン弁23の弁体23Aが本流路28を閉じ、且つ、安全弁24も弾性的に閉弁されて、弁体24Aが本流路28を閉じるように構成されている。
【0052】
コンロバーナ1Aを点火すべくコンロ用操作具6Aを押し込み操作して、スライダ34を閉位置Aから押し込むと、メイン弁23の弁体23Aが本流路28を開き、可動接点が安全用の固定接点に接触する接触状態に切り換えられ、かつ、バルブロッド35の先端が安全弁24の弁体24Aを押圧して開弁するように構成されている。
さらに、コンロ用操作具6Aを押し込み操作して、図5に示すように、スライダ34を点火位置Cにまで押し込むと、可動接点が点火用の固定接点に接触する接触状態に切り換えられるので、制御部Hが、着火センサRにて着火が検出されるまで点火プラグPを作動させる点火処理を実行し、加えて、着火センサRにて着火が検出されると、安全弁24を開き状態に保持すべく、安全弁24に通電することになる。
【0053】
コンロバーナ1Aが着火したのち、コンロ用操作具6Aの押し込み操作を解除すると、図6に示すように、スライダ11が開位置Bにまで弾性復帰してその位置に保持されることになり、可動接点が点火用固定接点に接触しない非接触状態に切り換えられる。
この開位置Bにおいては、可動接点が安全用の固定接点に接触する接触状態となっているので、制御部Hは、着火センサRにて着火が検出されているときには、安全弁24を開き状態に操作することになり、そして、着火センサRにて着火が検出されないときには、安全弁24を閉じ状態に操作する非常停止処理を実行することになる。
【0054】
コンロバーナ1Aを消火すべくコンロ用操作具6Aを押し込み操作すると、スライダ11が閉位置Aに自動復帰してその位置に保持されることになり、メイン弁23の弁体23Aが本流路28を閉じることになる。また、この状態においては、可動接点が点火用の固定接点及び安全用の固定接点に対する非接触状態となるので、制御手段Hが、安全弁24を閉じ状態に操作する消火処理を実行することになる。
【0055】
次に、コンロバーナ1Aの火力の調整について説明する。
図4〜図6に示すように、弁体ケーシングとしての本体ケーシング22には、その前端部の開口から主流路29Aにまで至る円筒状の挿通孔41が穿設され、この挿通孔41の内部に、流量調整弁25を構成するスライド式弁体としての金属製で且つ円柱状のニードル42が摺動自在に挿入されている。
そして、ニードル21が、挿通孔41に対して摺動することにより、主流路29Aと導出口31とを接続する部分の開度を変更して、主流路29Aから導出口31に向けて流動するガス燃料量を調整するように構成されている。つまり、ニードル42をコンロ前方側に移動させるほど、主流路29Aと導出口31とを接続する部分の開度が大きくなり、主流路29Aから導出口31に向けて流動するガス燃料量が大きくなって、コンロバーナ1Aの火力が大きくなるように構成されている。
【0056】
また、火力調節用の電磁弁26の弁体26Aが、本体ケーシング22の弁座26Bに対して接当する閉じ状態と弁座26Bから離れる開き状態に切換えられることにより、上述したごとく、電磁弁26の開状態では、ガス燃料が主流路29A及び分岐流路29Bを通して流動する大火力状態となり、電磁弁26の閉状態では、ガス燃料が分岐流路29Bを通して流動する小火力状態となる。この電磁弁26は、上述の如く、制御部Hにて操作されることになる。
【0057】
流量調整弁25におけるニードル42の先端部には、このニードル42をコンロ用火力調節具8Aにて摺動操作するための被操作部として、金属製の操作ピン43が上下方向を向く姿勢で挿入されて固定されている。
ニードル42がそのスライド方向に沿う軸心周りで回転自在に本体ケーシング22に支持され、本体ケーシング22には、操作ピン43をニードル42のスライド方向に案内するスリット状溝44が、本体ケーシング22の上面から挿通孔41にまで至り、かつ、挿通孔41の長手方向に沿う状態で形成されている。
そして、操作ピン43が、スリット状溝44の内部を挿通して、本体ケーシング22から上方に突出する状態で位置するように構成されている。
【0058】
図4〜図6及び図7に示すように、コンロ用火力調節具8Aは、板材をレバー状に形成して構成され、そして、本体ケーシング22の上部に、上下方向に沿う揺動軸心U周りで左右に揺動自在に枢支されている。つまり、コンロ用火力調節具8Aが、揺動式のレバー状に構成されている。
そして、その火力調節具8Aにおける揺動軸心Uよりもレバー先端側部分には、操作ピン43が係合するカム操作孔Kが形成されている。
カム操作孔Kは、左右方向に伸びる円弧状で、かつ、右端側ほど揺動軸心Uに近づく状態に形成されている。
したがって、コンロ用火力調節具8Aを右側に揺動するほど操作ピン43がコンロ前方側に移動されて、主流路29Aと導出口31とを接続する部分の開度が大きくなり、主流路29Aから導出口31に向けて流動するガス燃料量が大きくなって、コンロバーナ1Aの火力が大きくなるように構成されている。
【0059】
ちなみに、本実施形態では、コンロバーナ1Aに供給するガス量を調整する往復移動式の弁体としての、前後にスライド移動するニードル42と、往復移動操作式の火力調節操作具としての、左右方向に揺動操作されるコンロ用火力調節具8Aとが、カム操作孔K及び操作ピン43を主要部として構成されるカム式の連係機構45にて連係されて、コンロ用火力調節具8Aの左右方向の揺動操作によりニードル42が前後にスライド移動されるように構成されることになる。
【0060】
図4〜図7に示すように、コンロ用火力調節具8Aの根元側の右横側部に、点火用位置Wよりも小火力側に位置するコンロ用火力調節具8Aを点火用位置Wに操作するための被操作片8aが下方に向けて連設され、そして、スライダ34には、点火位置Cに移動されるときに被操作片8aを係止して、コンロ用火力調節具8Aを点火用位置Wに移動操作する操作部34Aが設けられている。
ちなみに、本実施形態では、スライダ34に設けた操作部34Aが、コンロバーナ1Aを点火する点火用操作具としてのコンロ用操作具6Aが点火操作されたときにコンロ用火力調節具8Aを点火用位置Wに操作する操作手段を構成することになる。
【0061】
したがって、コンロ用操作具6Aを押し込み操作して、コンロバーナ1Aを点火させるときに、コンロ用火力調節具8Aが点火用位置Wよりも小火力側に位置する場合においても、コンロ用火力調節具8Aが点火用位置Wに操作されることになり、コンロバーナ1Aの点火を良好に行えるものとなる。
ちなみに、本実施形態の点火用位置Wは、最大火力位置Y1よりも小火力側で、且つ、最大火力位置Y1と最小火力位置Y3との中間の中火力位置Y2よりも大火力側に定められている。
【0062】
図8に示すように、コンロ用火力調節具8Aに形成したカム操作孔Kにおける操作ピン43を流量減少側に押圧する大径側内面M1及び操作ピン43を流量増大側に押圧する小径側内面M2が、コンロ用火力調節具8Aの左右方向での往復移動操作により発生する押付け力にて操作ピン43が押し付けられる摺動面Fとして機能することになる。
また、操作ピン43が、コンロ用火力調節具8Aの左右方向での往復移動操作により発生する押付け力にてカム操作孔Kの大径側内面M1及び小径側内面M2に押付けられた状態でコンロ用火力調節具8Aの往復移動操作により往復移動する可動体と機能することになる。
【0063】
そして、カム操作孔Kの大径側内面M1、つまり、ニードル42を火力減少側に移動させるときに操作ピン43が摺動する火力減少側の摺動面としての大径側内面M1と、カム操作孔Kの小径側内面M2、つまり、ニードル42を火力増大側に移動させるときに操作ピン43が摺動する火力増大側の摺動面としての小径側内面M2とのうちの、大径側内面M1におけるコンロ用火力調節具8Aが火力調節用移動範囲の特定位置に位置するときに操作ピン43が位置する箇所に、操作ピン43が入り込むことによりクリック感を付与するクリック感付与用の凹部Zが設けられている。
本実施形態では、コンロ用火力調節具8Aが火力調節用移動範囲の特定位置に位置するときとして、コンロ用火力調節具8Aが中火力位置Y2に位置するときに定めて、図8(a)に示すように、コンロ用操作具6Aを操作してコンロバーナ1Aを点火させたのちにおいて、図8(b)に示すように、点火位置Wに位置するコンロ用火力調節具8Aを中火力位置Y2に操作することを、クリック感を付与することで適切に行えるようにしてある。
【0064】
つまり、上述した自動調理処理のひとつとしての炊飯運転処理においては、制御部Hが、火力調節用の電磁弁26を開閉操作することにより、大火力状態と小火力状態とに切換えることになり、そして、炊飯運転処理においては、大火力状態における火力は、火力調節範囲の中火力が望ましいものである。
このため炊飯運転処理を行うときには、コンロ用操作具6Aを操作してコンロバーナ1Aを点火させた状態において、点火位置Wに位置するコンロ用火力調節具8Aを中火力位置Y2に操作することになるが、このように点火位置Wに位置するコンロ用火力調節具8Aを中火力位置Y2に操作することが、クリック感が付与されることで適切に行えるものとなる。
【0065】
ところで、本実施形態のコンロ用器具栓19には、図2示すように、主流路29Aの電磁弁26を装備する部分と並列する状態で追加流路29Cが設けられ、例示はしないが、この追加流路29Cを開閉する追加電磁弁が本体ケーシング22に装着自在に構成され、また、追加流路29Cには、中火用オリフィスが装着自在に構成されている。
そして、本実施形態においては、追加電磁弁の取り付け座を閉じる蓋体49が本体ケーシング22に装着され、そして、追加流路29Cには、これを閉じる閉止体50が装着されている。
【0066】
左右のコンロバーナ1A、1Bに対するコンロ用操作具6A、6B、並びに、グリルバーナ2に対するグリル用操作具7の夫々に対して、その押し移動を牽制する牽制状態と牽制を解除する解除状態とに切換え操作自在なロック手段Eが設けられている。そして、コンロ用操作具6A、6B及びグリル用操作具7に対して設けられるロック手段Eは、同様な構成であるので、以下、右側のコンロバーナ1Bのコンロ用操作具6B及びグリル用操作具7に対して設けられるロック手段Eについて説明する。
【0067】
図10及び図11に示すように、コンロケーシングに組み付けられる操作具装着枠55が設けられ、この操作具装着枠55に、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7が、上端側を支点Qに揺動自在に支持されている。
尚、図11においては、グリル器具栓20のみを記載して、コンロ用器具栓19の記載を省略している。また、グリルバーナ2が上バーナと下バーナとを備えるものとして、上下に一対のグリル用火力調節具9が記載されている。
【0068】
ロック手段Eが、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7が押し移動されたときにその移動を受止めるための固定側の受止め体として、操作具装着枠55の水平板状部55Aの上面に上方に突出する状態で且つ前後方向に伸びる状態で設けた突状部55Bと、左右方向の往復移動により、突状部55Bにて受止められる牽制位置と受止めが解除される解除位置とに切換え自在にコンロ用操作具6B及びグリル用操作具7の背部に支持された牽制部材56とから構成されている。
尚、図10は、コンロ用操作具6Bに対するロック手段Eが牽制状態であり、グリル用操作具7に対するロック手段Eが解除状態である場合を例示している。
【0069】
すなわち、図10に示すように、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7の下端部には、突状部55Bを挿通させる凹部J1(図12参照)が形成され、牽制部材56には、牽制位置において凹部J1と重複位置し、かつ、解除位置にて凹部J1を開放する牽制作用部J2(図12参照)が設けられている。
ちなみに、図14に示すように、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7が押し込み操作された状態においては、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7における凹部J1の内部に突状部55Bが突入するように構成されて、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7を押し込み操作した際には、牽制部材56を牽制位置に操作することができないようになっている。
【0070】
コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7に支持した牽制部材56は、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7が押し移動されると、コンロ用器具栓19及びグリル用器具栓20のスライダ34を押し移動するように構成されている。
つまり、コンロ用器具栓19及びグリル用器具栓20が、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7に支持した牽制部材56にてスライダ34を押し移動される状態で設けられて、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7が、それに装備した牽制部材56にて、コンロ用器具栓19及びグリル用器具栓20を操作するように構成されている。
【0071】
コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7が、庇状の突部T(図13参照)を前面に備える状態に構成され、そして、牽制部材56の操作用把持部56Aが、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7における庇状の突部Tの下方側に配設されている。
つまり、操作用把持部56Aが、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7の背部側に位置する牽制部材56から前方に突出する状態に形成され、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7には、操作用把持部56Aを挿通させる開口Vが形成されている。
【0072】
コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7並びに牽制部材56が合成樹脂製であり、そして、牽制部材56が、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7に、その背面に摺動自在に接当する状態で支持されている。
【0073】
次に、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7並びに牽制部材56について説明を加えるが、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7は同様な構成であるので、以下、グリル用操作具7を代表として、グリル用操作具7並びに牽制部材56について説明する。
【0074】
図12に示すように、グリル用操作具7は、左右の側壁部7L、7R、上部壁7U、及び、前壁7Fを備え、背部が開口した形状に形成されている。
上部壁7Uには、左右一対の枢支部7aが上方に突出状態で形成され、上部壁7Uにおける左右の枢支部7aの間には、牽制部材56の上部に形成した上部被案内部56Bが左右方向に移動自在に係合するスリット状の係合孔7bが形成されている。
【0075】
また、グリル用操作具7の下部には、牽制部材56の下方に形成した左右の下部被案内部56Cが左右にスライド嵌合する左右一対のU字状部7cが形成されている。
さらに、前壁7Fの背面における開口Vの下方側箇所には、牽制部材56の位置決め用の凸部7dが形成されている。
【0076】
図12、図15及び図16に示すように、牽制部材56は、上部被案内部56B及び左右一対の下部部被案内部56Cが、グリル用操作具7のスリット状係合孔7b及び左右一対のU字状部7cにて左右方向に移動自在に支持されることにより、左右に移動自在に支持されている。
そして、牽制部材56は、図13及び図14に示すように、その上部の第1接触部56Dが、グリル用操作具7の上壁7Uの内面に接当し、その前面側で且つ上部の第2接触部56Eが、グリル用操作具7の前壁7Fの内面に接当し、且つ、その前面側で且つ下部の第3接触部56F(図16参照)が、グリル用操作具7の前壁7Fの内面に接当する状態で、グリル用操作具7に対して摺動するように構成されている(図4〜6参照)。
【0077】
つまり、牽制部材56は、グリル用器具栓20のスライダ34を押し移動する際や、受止め用の突状部55Bにて牽制作用部J2が受止められる際には、第1接触部56D、第2接触部56E、及び、第3接触部56Fにて、グリル用操作具7に接当することになるため、応力が集中することが抑制される状態でグリル用操作具7にて支持されることになり、また、グリル用操作具7は、応力が集中することが抑制された状態で、牽制部材56を支持することになる。
【0078】
ちなみに、牽制部材56は、上下方向及び前後方向に多少の融通ガタが存在する状態でグリル用操作具7に支持されており、グリル用器具栓20のスライダ34を操作するときに、第1〜第3接触部56D〜56Fがグリル用操作具7に接触する状態になる。
【0079】
また、図16に示すように、牽制部材56の前面側の下方部分には、前記グリル用操作具7の位置決め用の凸部7d(図12参照)が係合する左右一対の位置決め用の凹部56Gが、突部56Hにて分離された状態に形成されて、牽制位置および解除位置において、位置決め用の凸部7dが位置決め用の凹部56Gに係合することにより、牽制部材56が牽制位置及び解除位置に位置決めされるように構成されている。
【0080】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、押し移動操作により加熱部の加熱開始を指示する加熱指示用操作具として、押し移動操作により加熱開始(点火)を指示するのに加えて、加熱状態における押し移動操作により加熱停止(消火)を指示するコンロ用操作具6A、6B、並びに、グリル用操作具7を例示したが、加熱停止を指示する操作具を、加熱指示用操作具とは別個に設ける形態で実施してもよい。
【0081】
(2)上記実施形態では、加熱指示用操作具としての、コンロ用操作具6A、6B、並びに、グリル用操作具7が、上端側を支点に揺動される形態にて設けられる場合を例示したが、加熱指示用操作具としては、スライド移動自在に支持される形態で設けても良い。
【0082】
(3)上記実施形態では、加熱指示用操作具に支持した牽制部材が、器具栓の被操作部を押し移動操作する場合を例示したが、器具栓を備えない加熱調理器にも本願発明は適用できるものである。
また、器具栓を備える加熱調理器においても、器具栓の被操作部を加熱指示用操作具そのものにて押し移動操作するようにして、牽制部材が器具栓の被操作部を押し移動操作しない形態で実施することもできる。
【0083】
(4)上記実施形態では、ガス燃焼機器として、コンロバーナとグリルバーナとを備えたコンロを例示したが、本願発明は、グリルバーナを備えないコンロに適用する等、種々のガス燃焼機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1A 加熱部
1B 加熱部
2 加熱部
6A 加熱指示用操作具
6B 加熱指示用操作具
7 加熱指示用操作具
19 器具栓
20 器具栓
55B 受止め体
56 牽制部材
56A 操作用把持部
E ロック手段
T 凸部
【技術分野】
【0001】
本発明は、押し移動操作により加熱部の加熱開始を指示する加熱指示用操作具が設けられ、この加熱指示用操作具の押し移動を牽制する牽制状態と牽制を解除する解除状態とに切換え操作自在なロック手段が設けられた加熱調理器のロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる加熱調理機器のロック装置は、ガスコンロ等の加熱調理機器において、子供のいたずら操作により、加熱指示用操作具が押し移動操作されることによって、コンロバーナ等の加熱部が不必要に加熱を開始することを回避するようにしたものである。
【0003】
このような加熱調理機器のロック装置として、従来では、ロック手段が、加熱指示用操作具に一体的に形成した被受止め部と、その被受止め部を加熱指示用操作具が押し移動されたときに受止める牽制位置と受止めを解除する解除位置とに切換え自在に機器ケーシング側に設けた牽制部材とから構成されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−39869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の加熱調理機器のロック装置におけるロック手段は、牽制位置と解除位置とに切換えられる牽制部材を、機器ケーシング側に設けて、牽制部材が牽制位置に位置するときに、加熱指示用操作具に一体的に形成した被受止め部を牽制部材にて受止めるように構成されるものであるため、機器ケーシング側に組み付ける部材として、位置変更される牽制部材が存在することにより、機器の設計的負担が大きくなる傾向や機器の組み立て作業が煩雑化する虞があった。
【0006】
また、牽制部材にて、加熱指示用操作具に一体的に形成した被受止め部が受止められるときに、その被受止め部の形成部分に応力が集中する傾向となるため、加熱指示用操作具を十分な強度にて形成する必要があり、加熱指示用操作具の製作コストが高くなる傾向があった。
つまり、一般に、加熱指示用操作具は、合成樹脂にて成型加工されることになるが、このような場合において、加熱指示用操作具に十分な強度を備えさせるためには、その肉厚を厚くすることや、多数の補強リブを備えさせることが行われることになり、加熱指示用操作具の製作コストが高くなるものであった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、機器の設計的負担を軽減し且つ機器の組み立て作業の煩雑化を抑制することが可能となり、しかも、加熱指示用操作具の製作コストの低下を図ることが可能となる加熱調理器のロック装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の加熱調理器のロック装置は、押し移動操作により加熱部の加熱開始を指示する加熱指示用操作具が設けられ、この加熱指示用操作具の押し移動を牽制する牽制状態と牽制を解除する解除状態とに切換え操作自在なロック手段が設けられたものであって、その第1特徴構成は、
前記ロック手段が、前記加熱指示用操作具が押し移動されたときにその移動を受止めるための固定側の受止め体と、この受止め体にて受止められる牽制位置と受止めが解除される解除位置とに切換え自在に前記加熱指示用操作具に支持された牽制部材とから構成されている点を特徴とする。
【0009】
すなわち、加熱指示用操作具に牽制位置と解除位置とに切換え自在に支持された牽制部材を牽制位置に切換えれば、加熱指示用操作具が押し移動されたときに、牽制部材が固定側の受止め体にて受止められて、火力調節操作具が押し移動されることが牽制されることになる。そして、牽制部材を解除位置に切換えれば、加熱指示用操作具が押し移動されたときに、牽制部材が固定側の受止め体にて受止められることがなく、火力調節操作具が押し移動されて、加熱部の加熱が開始されることになる。
【0010】
このように、牽制部材を牽制位置と解除位置とに切換え自在に加熱指示用操作具に支持し、牽制部材を受止める固定側の受止め体を設けることにより、ロック手段を構成するものであるから、機器ケーシング側には、固定側の受止め体を設けるものとなるため、器機の設計的負担を軽減し且つ機器の組み立て作業の煩雑化を抑制することが可能となるのである。
つまり、ロック手段の設置のために、機器ケーシング側に位置変更される部材を支持する構造を設ける必要がないため、位置変更される部材を設置するスペースやその支持部材を設置するスペース等を機器ケーシング側に確保する必要がなくなり、機器の設計的負担が軽減することになる。
【0011】
さらに、ロック手段の設置のために、機器ケーシング側に位置変更される部材を組み付ける作業が不要となるため、機器の組付作業の煩雑化を抑制できる。
説明を加えると、機器ケーシングには種々の多数の部材を組み付けることになるが、その組み付ける部材として、位置変更される部材が多いほど、機器の組付スペースが狭いこと等に起因して、機器の組付作業が煩雑化することになる。一方、加熱指示用操作具に対して牽制部材を組み付ける作業は、機器の組付作業とは別作業として広い空間にて行えるものとなるため、機器ケーシングに位置変更される部材を組み付けるよりも容易に行えるものとなる。
【0012】
また、加熱指示用操作具に牽制部材を設けて、その牽制部材を固定側の受止め体にて受止めることにより、加熱指示用操作具の押し移動を受止めるものであるから、加熱指示用操作具の一部に大きな応力が集中して作用することを回避できるため、加熱指示用操作具に備えさせる強度を低下させても不都合は生じないから、加熱指示用操作具の製作コストの低下を図ることが可能となる。
【0013】
説明を加えると、固定側の受止め体にて牽制部材が受止められたときに、牽制部材に作用する力を加熱指示用操作具にて受止めることになるが、牽制部材は、加熱指示用操作具とは別部材であるから、牽制部材に作用する力を加熱指示用操作具の複数箇所にて受止める、つまり、牽制部材を加熱指示用操作具の複数箇所にて受止めるようにすることができるのであり、加熱指示用操作具の一部に大きな応力が集中して作用することを回避できるのである。
【0014】
要するに、本発明の第1特徴構成によれば、機器の設計的負担を軽減し且つ機器の組み立て作業の煩雑化を抑制することが可能となり、しかも、加熱指示用操作具の製作コストの低下を図ることが可能となる加熱調理器のロック装置を提供できる。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、上記した第1特徴構成に加えて、
被操作部が押し移動されることにより前記加熱部としてのバーナに対してガス燃料を供給する器具栓が、前記加熱指示用操作具に支持された前記牽制部材にて前記被操作部を押し移動される状態で設けられている点を特徴とする。
【0016】
すなわち、牽制部材を解除位置に切換えた状態で、加熱指示用操作具を押し移動操作すると、その加熱指示用操作具に支持した牽制部材が器具栓の被操作部を押し移動操作することになり、器具栓が加熱部としてのバーナに対してガスを供給して、バーナの加熱、つまり、燃焼が開始されることになる。
【0017】
器具栓の被操作部を牽制部材にて押し移動操作するときには、牽制部材に作用する力を加熱指示用操作具にて受止めることになるが、請求項1における作用効果の説明でも述べた如く、牽制部材は、加熱指示用操作具とは別部材であるから、牽制部材に作用する力を加熱指示用操作具の複数箇所にて受止める、つまり、牽制部材を加熱指示用操作具の複数箇所にて受止めるようにすることができるのであり、加熱指示用操作具の一部に大きな応力が集中して作用することを回避できるものとなる。
【0018】
したがって、加熱指示用操作具に支持した牽制部材にて器具栓の被操作部を押し移動操作するようにしても、加熱指示用操作具の一部に大きな応力が集中して作用することを回避できるため、加熱指示用操作具に備えさせる強度を低下させても不都合は生じないから、加熱指示用操作具の製作コストの低下を図ることが可能となる。
【0019】
要するに、本発明の第2特徴構成によれば、上記した第1特徴構成による作用効果に加えて、加熱指示用操作具の押し移動操作により、加熱部としてのバーナに燃料を供給する器具栓の被操作部を押し移動操作するものでありながらも、加熱指示用操作具の製作コストの低下を図ることが可能となる加熱調理器のロック装置を提供できる。
【0020】
本発明の第3特徴構成は、上記した第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、
前記加熱指示用操作具が、上端側を支点に揺動自在に支持され、かつ、庇状の突部を前面に備える状態に構成され、
前記牽制部材の操作用把持部が、前記加熱指示用操作具における前記庇状の突部の下方側に配設されている点を特徴とする。
【0021】
すなわち、上端側を支点に揺動自在に支持されている加熱指示用操作具の前面に、庇状の突部を備えているから、加熱指示用操作部を押し移動操作するときに、庇状の突部を押し操作することにより、加熱指示用操作具を移動させること、つまり、加熱指示用操作具を上端側の支点周りで揺動させることを良好に行い易いものとなる。
【0022】
また、牽制部材を牽制位置と解除位置とに切換えるために、操作者が把持することになる牽制部材の操作用把持部が、加熱指示用操作具における庇状の突部の下方側に配設されているから、加熱開始を指示するために加熱指示用操作具を押し移動操作するときに、牽制部材の操作用把持部が誤操作されることを回避できるものとなる。
【0023】
要するに、本発明の第3特徴構成によれば、上記第1特徴構成又は第2特徴構成による作用効果に加えて、加熱指示用操作具に対する押し移動操作を良好に行え、しかも、牽制部材を誤操作することを回避できる加熱調理器のロック装置を提供できる。
【0024】
本発明の第4特徴構成は、上記した第1〜第3特徴構成のいずれかに加えて、
前記加熱指示用操作具及び前記牽制部材が合成樹脂製であり、
前記牽制部材が、前記加熱指示用操作具に、その背面に摺動自在に接当する状態で支持されている点を特徴とする。
【0025】
すなわち、加熱指示用操作具及び牽制部材が合成樹脂製であるから、加熱指示用操作具を外観が美麗で且つ操作性が優れた形状に成形することができ、また、牽制部材を加熱指示用操作具の形状に合わせた形状に成形することができ、製作の容易化を図ることができる。
【0026】
そして、牽制部材が、加熱指示用操作具に、その背面に摺動自在に接当する状態で支持されているから、牽制部材が固定側の受止め体にて受止められたときに作用する力を、加熱指示用操作具の背面を用いて、加熱指示用操作具の一部に応力が集中することが無い状態で受止めることができるのであり、
【0027】
要するに、本発明の第4特徴構成によれば、上記第1〜第3特徴構成のいずれかによる作用効果に加えて、製作の容易化を図り、しかも、加熱指示用操作具に応力が集中することを抑制できる加熱調理器のロック装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】コンロの斜視図
【図2】ガス燃料の流路構成を示す概略図
【図3】コンロバーナを示す縦断側面図
【図4】閉じ状態のコンロ用器具栓を示す縦断側面図
【図5】点火状態のコンロ用器具栓を示す縦断側面図
【図6】開き状態のコンロ用器具栓を示す縦断側面図
【図7】コンロ用器具栓の平面図
【図8】コンロ用火力調節具と弁体との連係を示す平面図
【図9】制御構成を示すブロック図
【図10】コンロ用操作具及びグリル用操作具の装着部を示す正面図
【図11】コンロ用操作具及びグリル用操作具の装着部の一部省略斜視図
【図12】グリル用操作具と牽制部材との分解斜視図
【図13】図10のI III−I III線矢視図
【図14】グリル用操作具を押し移動操作した状態の縦断側面図
【図15】グリル用操作具の背面図
【図16】図15におけるI VI−I VI線矢視図
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔実施形態〕
本発明にかかるガス燃焼機器の火力調節装置を、ガス燃焼機器の一例としてのガスコンロに適用した場合の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、例示するガスコンロは、加熱部としての2つのコンロバーナ1A、1Bを備えるコンロ部、及び、加熱部としてのグリルバーナ2(図2参照)を装備するグリル部Gを備え、そして、キッチンカウンターに組み込まれるビルトインタイプに構成されている。
【0030】
ガスコンロの上面は、ガラス製のトッププレート3にて覆われ、ガスコンロの上面の後部側には、グリル部Gの燃焼排ガスを排気するためのグリル排気口4が形成されている。
2つのコンロバーナ1A、1Bの夫々にて加熱される鍋等の被加熱物を載置するための五徳5A、5Bが、トッププレート3の上部に設けられている。
【0031】
ガスコンロの前面には、2つのコンロバーナ1A、1Bに対する点火及び消火を指令する押し操作式の一対のコンロ用操作具6A、6B、グリルバーナ2に対する点火及び消火を指令する押し操作式のグリル用操作具7、2つのコンロバーナ1A、1Bの火力を調節する一対のコンロ用火力調節具8A、8B、及び、グリルバーナ2の火力を調節するグリル用火力調節具9が設けられ、加えて、調理情報等の種々の情報を入力するためのコンロ用設定操作部10及びグリル用設定操作部11が設けられている。
尚、ガスコンロの前面には、電池収納部を開閉する電池収納用開閉蓋12が設けられている。
【0032】
図2に示すように、都市ガス等の燃料ガスが供給される元ガス供給路15に、一対のコンロバーナ1A、1Bに対するコンロ用分岐路16A、16B、及び、グリルバーナ2に対するグリル用分岐路17が接続されている。
そして、一対のコンロ用分岐路16A、16Bの夫々には、コンロ用器具栓19が配設され、グリル用分岐路17には、グリル用器具栓20が配設されている。
尚、グリルバーナ2は、一般に、被加熱物を上方から加熱する上バーナと被加熱物を下方から加熱する下バーナとを備えさせることになり、本実施形態においても、上バーナと下バーナとを備えさせるものであるが、図2においては、上バーナのみを記載して、下バーナの記載を省略し、それに合わせて、グリル用器具栓20についても、下バーナに対する部分を省略して記載している。
【0033】
コンロ用器具栓19は、コンロ用操作具6A、6Bの背部箇所に配設され、そして、コンロ用操作具6A、6Bの点火操作によりコンロバーナ1A、1Bへ燃料を供給する状態に操作され、コンロ用操作具6A、6Bの消火操作によりコンロバーナ1A、1Bへの燃料供給を停止する状態に操作され、コンロ用火力調節具8A、8Bの操作や後述する制御部H(図9参照)の指令(操作)にてコンロバーナ1A、1Bへの燃料供給量を調節するように操作され、加えて、制御部Hの指令(操作)によってコンロバーナ1A、1Bへの燃料供給を停止する状態に操作されるように構成されている。
【0034】
グリル用器具栓20は、グリル用操作具7の背部箇所に配設され、そして、グリル用操作具7の点火操作によりグリルバーナ2へ燃料を供給する状態に操作され、グリル用操作具7の消火操作によりグリルバーナ2への燃料供給を停止する状態に操作され、グリル用火力調節具9の操作や制御部Hの指令(操作)にてグリルバーナ2への燃料供給量を調節するように操作され、加えて、制御部Hの指令(操作)にてコンロバーナ1A、1Bへの燃料供給を停止する状態に操作されるように構成されている。
【0035】
図2及び図3に示すように、2つのコンロバーナ1A、1B及びグリルバーナ2の夫々に対して、点火用の点火プラグP、熱電対等を用いて構成される着火状態検出用の着火センサRが装備されている。
尚、グリルバーナ2は、上述の如く、上バーナと下バーナとを備えさせる場合には、夫々のバーナに対して、点火プラグP及び着火センサRが装備されることになる。
【0036】
また、2つのコンロバーナ1A、1Bの夫々に対して、鍋等の被加熱物の存否を検出し且つその温度を検出する被加熱物検出センサSが装備されている。
この被加熱物検出センサSは、上下方向に伸縮自在でかつ上方に復帰付勢された伸縮体S1を備えて、この伸縮体S1が被加熱物に押されて下方に移動したことを伸縮検知部S2にて検出することにより被加熱物の存在を検出するように構成され、また、伸縮体S1の上端部に設けた温度検知部S3が、被加熱物に接触してその温度を検出するように構成されている。
【0037】
図9に示すように、マイクロコンピュータを備えて構成されて、ガスコンロの運転を制御する制御部Hが設けられている。
すなわち、この制御部Hは、コンロ用操作具6A、6Bやグリル用操作具7の点火操作に基づいて、コンロバーナ1A、1Bやグリルバーナ2に対する点火プラグPを作動させ且つ着火センサRにて着火を検出する点火処理、コンロ用操作具6A、6Bやグリル用操作具7の消火操作に基づいて、コンロ用器具栓19やグリル用器具栓20に装備された安全弁24(図2参照)を閉じ操作して、コンロバーナ1A、1Bやグリルバーナ2への燃料の供給を停止する消火処理、及び、コンロバーナ1A、1Bやグリルバーナ2の燃焼中において着火センサRにて着火が検出されなくなると、上記したコンロ用器具栓19やグリル用器具栓20に装備された安全弁24を閉じ操作して、コンロバーナ1A、1Bやグリルバーナ2への燃料の供給を停止する非常停止処理を実行することになる。
【0038】
さらに、制御部Hは、コンロ用設定操作部10の設定情報や被加熱物検出センサSの検出情報等に基づいて、コンロ用器具栓19に装備した火力調節用の電磁弁26(図2参照)や安全弁24を操作して、コンロバーナ1A、1Bに対する燃料供給量の調整やコンロバーナ1A、1Bへの燃料供給を停止する自動調理処理、及び、被加熱物検出センサSにて異常な高温が検出されると、コンロ用器具栓19に装備された安全弁24を閉じ操作して、コンロバーナ1A、1Bへの燃料の供給を停止する異常停止処理を実行し、さらに、グリル用設定操作部11の設定情報等に基づいて、グリル用器具栓20に装備した火力調節用の電磁弁26(図2参照)や安全弁24を操作して、グリルバーナ2に対する燃料供給量の調整やグリルバーナ2に対する燃料供給を停止する自動グリル処理等の各種の処理を実行するように構成されている。
【0039】
制御部Hが実行する自動調理処理としては、変更設定された設定時間が経過すると自動的に消火するタイマ運転処理、被加熱物検出センサSにて検出される温度が変更設定される目標温度に維持するように火力を大小に調節する揚げもの運転処理、被加熱物検出センサSにて検出される温度が沸騰を検出すると消火する湯沸し運転処理、及び、運転開始からの時間経過に伴って火力を設定パターンにて変更させる炊飯運転処理等がある。
【0040】
次に、ガスコンロの詳細について説明を加えるが、一対のコンロバーナ1A、1Bの夫々について装備されるコンロ用器具栓19は、同じ構造であり、かつ、グリルバーナ2について装備されるグリル用器具栓20は、コンロ用器具栓19と同様な構造であり、そして、コンロ用器具栓19及びグリル用器具栓20の操作構成も同様であるので、以下、左側のコンロバーナ1Aについて装備されるコンロ器具栓19を代表して説明して、右側のコンロバーナ1Bに対するコンロ用器具栓19及びグリル用器具栓20については、左側のコンロバーナ1Aについて装備されるコンロ器具栓19について記載する符合と同じ符合を図面に記載することにより、その説明を省略する。
【0041】
図2及び図4〜図6に示すように、コンロ用器具栓19は、本体ケーシング22の内部に、コンロ用操作具6Aにて開閉操作されるメイン弁23、閉状態に弾性付勢された電磁操作式の安全弁24、コンロ用火力調節具8Aにて操作されるニードル式の流量調整弁25、及び、火力調節用の電磁弁26を組み込んで構成されている。
そして、メイン弁23及び安全弁24を備える本流路28に対して、流量調整弁25及び電磁弁26を備える主流路29Aと、小火用オリフィス27を備える分岐流路29Bとが、並列状態で接続されており、電磁弁26の開状態では、ガス燃料が主流路29A及び分岐流路29Bを通して流動し、電磁弁26の閉状態では、ガス燃料が分岐流路29Bを通して流動するように構成されている。
【0042】
ちなみに、制御部Hは、自動調理処理を実行するときに、火力調節用の電磁弁26を開閉操作することにより、大火力状態と小火力状態とに切換えることになる。
そして、大火力状態における火力は、流量調整弁25の流量調整によって変動することになるため、自動調理処理を実行するときには、大火力状態における火力が適正な火力となるように、コンロ用火力調節具8Aにて流量調整弁25を操作することになる。
【0043】
図4〜図6に示すように、本体ケーシング22は、複数の鋳造部品をそれらの間にパッキンを介装してボルト固定する状態に組み立てることによって構成され、そして、本体ケーシング22には、元ガス供給路15が接続されてガス燃料が供給される導入口30、及び、コンロバーナ1Aのガス混合部1aにガス燃料を噴出するガスノズルN(図3参照)に接続される導出口31が開口されている。そして、本体ケーシング22の内部には、導入口30と導出口31とを連通接続される状態で、本流路28、主流路29A、及び、分岐流路29Bが形成されている。
【0044】
本体ケーシング22の前端側の下方箇所には、合成樹脂製の支持枠33がビス止めされる状態で固着され、この支持枠33に、合成樹脂製のスライダ34が摺動自在に内嵌されている。
このスライダ34には、金属製のバルブロッド35が安全弁24を構成する弁体24Aに向けて延出される状態で固着され、このバルブロッド35には、メイン弁23を構成する弁体23Aが設けられている。
【0045】
スライダ34と支持枠33との間には、スライダ34をコンロ前面側に付勢する第1コイルスプリング36が介装され、メイン弁23を構成する弁体23Aを閉じ側に付勢する第2コイルスプリング37が介装されている。
メイン弁23を構成する弁体23Aは、コンロ前面側に移動すると閉状態となり、コンロ背面側に移動すると開状態となるものであり、スライダ34は、第2コイルスプリング37にても、コンロ前面側に付勢されることになる。
【0046】
コンロ用操作具6Aが、上端側の揺動支点Qを中心にして、コンロ背面側に向けて押し込み移動操作自在に枢支され、そして、その押し込み移動により、スライダ34をコンロ背面側に押し込み移動させるように構成されている。
尚、コンロ用操作具6Aは、その自重によりコンロ背面側に向けて付勢されて、スライダ34に接当する状態に維持されるように構成されている。ちなみに、右側のコンロバーナ1Bに対するコンロ用操作具6B及びグリル用操作具7についても、左側のコンロバーナ1Aに対するコンロ用操作具6Aと同様に、その自重によりコンロ背面側に向けて付勢されて、スライダ34に接当する状態に維持されるように構成されている。
【0047】
ちなみに、コンロ用操作具6A、6B及びグリル用操作具7の背部には、詳細は後述するが、ロック手段Eを構成する牽制部材56が設けられており、この牽制部材56が、コンロ用操作具6A、6B及びグリル用操作具7を自重によりコンロ背面側に向けて付勢する錘として作用することになる。そして、コンロ用操作具6A、6B及びグリル用操作具7は、牽制部材56にて、スライダ34をコンロ背面側に押し込み移動させるように構成されている。
【0048】
スライダ34の下面には、ほぼハート型のカム溝を備えたハートカム部材38が取り付けられ、支持枠33に左右方向に揺動自在に保持されたU字状のピン39の遊端部が、支持枠33を貫通してハートカム部材38のカム溝に係合して、いわゆるプッシュ−プッシュ機構が構成されている。
このプッシュ−プッシュ機構は、従来公知であるため詳しい説明は省略するが、このハートカム部材38とピン39との協働作用により、両コイルスプリング36、37によってコンロ前面側に弾性付勢されたスライダ34を、コンロ前面側に位置する閉位置A、及び、この閉位置Aよりもコンロ背面側でかつコンロ背面側に最も大きく押し込んだ点火位置Cよりもコンロ前面側の開位置Bに保持するように構成されている。
【0049】
説明を加えると、スライダ34が閉位置Aに位置保持されている状態で、コンロ用操作具6Aを押し込み操作して、閉位置Aに位置保持されているスライダ34を点火位置Cにまで操作し、その後、コンロ用操作具6Aに対する押し込み操作を解除すると、スライダ34が開位置Bに弾性復帰移動して、その開位置Bに位置保持されることになる。
スライダ34が開位置Bに位置する状態で、コンロ用操作具6Aを押し込み操作することにより、開位置Bに位置保持されているスライダ34を点火位置Cに向けて操作し、その後、コンロ用操作具6A、6Bに対する押し込み操作を解除すると、スライダ34が閉位置Aに弾性復帰移動して、その閉位置Aに保持されることになる。
【0050】
また、支持枠33の横一側部には、点火用の固定接点や安全用の固定接点などを備えた接点板ブロックD(図7、図8参照)が取り付けられ、スライダ34の摺動に伴って、スライダ34側に取り付けた可動接点が各固定接点に対する接触状態と非接触状態とに切り換えられるように構成されている。
この接点板ブロックDの検出情報は、制御部Hに入力されて、制御部Hが、点火プラブPの作動、及び、安全弁24の作動を制御することになる。
【0051】
次に、コンロ用操作具6Aの操作に基づく、コンロ用器具栓19の作動及び制御部Hの制御作動についてまとめて説明する。
すなわち、図4に示すように、スライダ34が閉位置Aにあるときは、可動接点が点火用の固定接点及び安全用の固定接点に対する非接触状態となり、そして、メイン弁23の弁体23Aが本流路28を閉じ、且つ、安全弁24も弾性的に閉弁されて、弁体24Aが本流路28を閉じるように構成されている。
【0052】
コンロバーナ1Aを点火すべくコンロ用操作具6Aを押し込み操作して、スライダ34を閉位置Aから押し込むと、メイン弁23の弁体23Aが本流路28を開き、可動接点が安全用の固定接点に接触する接触状態に切り換えられ、かつ、バルブロッド35の先端が安全弁24の弁体24Aを押圧して開弁するように構成されている。
さらに、コンロ用操作具6Aを押し込み操作して、図5に示すように、スライダ34を点火位置Cにまで押し込むと、可動接点が点火用の固定接点に接触する接触状態に切り換えられるので、制御部Hが、着火センサRにて着火が検出されるまで点火プラグPを作動させる点火処理を実行し、加えて、着火センサRにて着火が検出されると、安全弁24を開き状態に保持すべく、安全弁24に通電することになる。
【0053】
コンロバーナ1Aが着火したのち、コンロ用操作具6Aの押し込み操作を解除すると、図6に示すように、スライダ11が開位置Bにまで弾性復帰してその位置に保持されることになり、可動接点が点火用固定接点に接触しない非接触状態に切り換えられる。
この開位置Bにおいては、可動接点が安全用の固定接点に接触する接触状態となっているので、制御部Hは、着火センサRにて着火が検出されているときには、安全弁24を開き状態に操作することになり、そして、着火センサRにて着火が検出されないときには、安全弁24を閉じ状態に操作する非常停止処理を実行することになる。
【0054】
コンロバーナ1Aを消火すべくコンロ用操作具6Aを押し込み操作すると、スライダ11が閉位置Aに自動復帰してその位置に保持されることになり、メイン弁23の弁体23Aが本流路28を閉じることになる。また、この状態においては、可動接点が点火用の固定接点及び安全用の固定接点に対する非接触状態となるので、制御手段Hが、安全弁24を閉じ状態に操作する消火処理を実行することになる。
【0055】
次に、コンロバーナ1Aの火力の調整について説明する。
図4〜図6に示すように、弁体ケーシングとしての本体ケーシング22には、その前端部の開口から主流路29Aにまで至る円筒状の挿通孔41が穿設され、この挿通孔41の内部に、流量調整弁25を構成するスライド式弁体としての金属製で且つ円柱状のニードル42が摺動自在に挿入されている。
そして、ニードル21が、挿通孔41に対して摺動することにより、主流路29Aと導出口31とを接続する部分の開度を変更して、主流路29Aから導出口31に向けて流動するガス燃料量を調整するように構成されている。つまり、ニードル42をコンロ前方側に移動させるほど、主流路29Aと導出口31とを接続する部分の開度が大きくなり、主流路29Aから導出口31に向けて流動するガス燃料量が大きくなって、コンロバーナ1Aの火力が大きくなるように構成されている。
【0056】
また、火力調節用の電磁弁26の弁体26Aが、本体ケーシング22の弁座26Bに対して接当する閉じ状態と弁座26Bから離れる開き状態に切換えられることにより、上述したごとく、電磁弁26の開状態では、ガス燃料が主流路29A及び分岐流路29Bを通して流動する大火力状態となり、電磁弁26の閉状態では、ガス燃料が分岐流路29Bを通して流動する小火力状態となる。この電磁弁26は、上述の如く、制御部Hにて操作されることになる。
【0057】
流量調整弁25におけるニードル42の先端部には、このニードル42をコンロ用火力調節具8Aにて摺動操作するための被操作部として、金属製の操作ピン43が上下方向を向く姿勢で挿入されて固定されている。
ニードル42がそのスライド方向に沿う軸心周りで回転自在に本体ケーシング22に支持され、本体ケーシング22には、操作ピン43をニードル42のスライド方向に案内するスリット状溝44が、本体ケーシング22の上面から挿通孔41にまで至り、かつ、挿通孔41の長手方向に沿う状態で形成されている。
そして、操作ピン43が、スリット状溝44の内部を挿通して、本体ケーシング22から上方に突出する状態で位置するように構成されている。
【0058】
図4〜図6及び図7に示すように、コンロ用火力調節具8Aは、板材をレバー状に形成して構成され、そして、本体ケーシング22の上部に、上下方向に沿う揺動軸心U周りで左右に揺動自在に枢支されている。つまり、コンロ用火力調節具8Aが、揺動式のレバー状に構成されている。
そして、その火力調節具8Aにおける揺動軸心Uよりもレバー先端側部分には、操作ピン43が係合するカム操作孔Kが形成されている。
カム操作孔Kは、左右方向に伸びる円弧状で、かつ、右端側ほど揺動軸心Uに近づく状態に形成されている。
したがって、コンロ用火力調節具8Aを右側に揺動するほど操作ピン43がコンロ前方側に移動されて、主流路29Aと導出口31とを接続する部分の開度が大きくなり、主流路29Aから導出口31に向けて流動するガス燃料量が大きくなって、コンロバーナ1Aの火力が大きくなるように構成されている。
【0059】
ちなみに、本実施形態では、コンロバーナ1Aに供給するガス量を調整する往復移動式の弁体としての、前後にスライド移動するニードル42と、往復移動操作式の火力調節操作具としての、左右方向に揺動操作されるコンロ用火力調節具8Aとが、カム操作孔K及び操作ピン43を主要部として構成されるカム式の連係機構45にて連係されて、コンロ用火力調節具8Aの左右方向の揺動操作によりニードル42が前後にスライド移動されるように構成されることになる。
【0060】
図4〜図7に示すように、コンロ用火力調節具8Aの根元側の右横側部に、点火用位置Wよりも小火力側に位置するコンロ用火力調節具8Aを点火用位置Wに操作するための被操作片8aが下方に向けて連設され、そして、スライダ34には、点火位置Cに移動されるときに被操作片8aを係止して、コンロ用火力調節具8Aを点火用位置Wに移動操作する操作部34Aが設けられている。
ちなみに、本実施形態では、スライダ34に設けた操作部34Aが、コンロバーナ1Aを点火する点火用操作具としてのコンロ用操作具6Aが点火操作されたときにコンロ用火力調節具8Aを点火用位置Wに操作する操作手段を構成することになる。
【0061】
したがって、コンロ用操作具6Aを押し込み操作して、コンロバーナ1Aを点火させるときに、コンロ用火力調節具8Aが点火用位置Wよりも小火力側に位置する場合においても、コンロ用火力調節具8Aが点火用位置Wに操作されることになり、コンロバーナ1Aの点火を良好に行えるものとなる。
ちなみに、本実施形態の点火用位置Wは、最大火力位置Y1よりも小火力側で、且つ、最大火力位置Y1と最小火力位置Y3との中間の中火力位置Y2よりも大火力側に定められている。
【0062】
図8に示すように、コンロ用火力調節具8Aに形成したカム操作孔Kにおける操作ピン43を流量減少側に押圧する大径側内面M1及び操作ピン43を流量増大側に押圧する小径側内面M2が、コンロ用火力調節具8Aの左右方向での往復移動操作により発生する押付け力にて操作ピン43が押し付けられる摺動面Fとして機能することになる。
また、操作ピン43が、コンロ用火力調節具8Aの左右方向での往復移動操作により発生する押付け力にてカム操作孔Kの大径側内面M1及び小径側内面M2に押付けられた状態でコンロ用火力調節具8Aの往復移動操作により往復移動する可動体と機能することになる。
【0063】
そして、カム操作孔Kの大径側内面M1、つまり、ニードル42を火力減少側に移動させるときに操作ピン43が摺動する火力減少側の摺動面としての大径側内面M1と、カム操作孔Kの小径側内面M2、つまり、ニードル42を火力増大側に移動させるときに操作ピン43が摺動する火力増大側の摺動面としての小径側内面M2とのうちの、大径側内面M1におけるコンロ用火力調節具8Aが火力調節用移動範囲の特定位置に位置するときに操作ピン43が位置する箇所に、操作ピン43が入り込むことによりクリック感を付与するクリック感付与用の凹部Zが設けられている。
本実施形態では、コンロ用火力調節具8Aが火力調節用移動範囲の特定位置に位置するときとして、コンロ用火力調節具8Aが中火力位置Y2に位置するときに定めて、図8(a)に示すように、コンロ用操作具6Aを操作してコンロバーナ1Aを点火させたのちにおいて、図8(b)に示すように、点火位置Wに位置するコンロ用火力調節具8Aを中火力位置Y2に操作することを、クリック感を付与することで適切に行えるようにしてある。
【0064】
つまり、上述した自動調理処理のひとつとしての炊飯運転処理においては、制御部Hが、火力調節用の電磁弁26を開閉操作することにより、大火力状態と小火力状態とに切換えることになり、そして、炊飯運転処理においては、大火力状態における火力は、火力調節範囲の中火力が望ましいものである。
このため炊飯運転処理を行うときには、コンロ用操作具6Aを操作してコンロバーナ1Aを点火させた状態において、点火位置Wに位置するコンロ用火力調節具8Aを中火力位置Y2に操作することになるが、このように点火位置Wに位置するコンロ用火力調節具8Aを中火力位置Y2に操作することが、クリック感が付与されることで適切に行えるものとなる。
【0065】
ところで、本実施形態のコンロ用器具栓19には、図2示すように、主流路29Aの電磁弁26を装備する部分と並列する状態で追加流路29Cが設けられ、例示はしないが、この追加流路29Cを開閉する追加電磁弁が本体ケーシング22に装着自在に構成され、また、追加流路29Cには、中火用オリフィスが装着自在に構成されている。
そして、本実施形態においては、追加電磁弁の取り付け座を閉じる蓋体49が本体ケーシング22に装着され、そして、追加流路29Cには、これを閉じる閉止体50が装着されている。
【0066】
左右のコンロバーナ1A、1Bに対するコンロ用操作具6A、6B、並びに、グリルバーナ2に対するグリル用操作具7の夫々に対して、その押し移動を牽制する牽制状態と牽制を解除する解除状態とに切換え操作自在なロック手段Eが設けられている。そして、コンロ用操作具6A、6B及びグリル用操作具7に対して設けられるロック手段Eは、同様な構成であるので、以下、右側のコンロバーナ1Bのコンロ用操作具6B及びグリル用操作具7に対して設けられるロック手段Eについて説明する。
【0067】
図10及び図11に示すように、コンロケーシングに組み付けられる操作具装着枠55が設けられ、この操作具装着枠55に、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7が、上端側を支点Qに揺動自在に支持されている。
尚、図11においては、グリル器具栓20のみを記載して、コンロ用器具栓19の記載を省略している。また、グリルバーナ2が上バーナと下バーナとを備えるものとして、上下に一対のグリル用火力調節具9が記載されている。
【0068】
ロック手段Eが、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7が押し移動されたときにその移動を受止めるための固定側の受止め体として、操作具装着枠55の水平板状部55Aの上面に上方に突出する状態で且つ前後方向に伸びる状態で設けた突状部55Bと、左右方向の往復移動により、突状部55Bにて受止められる牽制位置と受止めが解除される解除位置とに切換え自在にコンロ用操作具6B及びグリル用操作具7の背部に支持された牽制部材56とから構成されている。
尚、図10は、コンロ用操作具6Bに対するロック手段Eが牽制状態であり、グリル用操作具7に対するロック手段Eが解除状態である場合を例示している。
【0069】
すなわち、図10に示すように、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7の下端部には、突状部55Bを挿通させる凹部J1(図12参照)が形成され、牽制部材56には、牽制位置において凹部J1と重複位置し、かつ、解除位置にて凹部J1を開放する牽制作用部J2(図12参照)が設けられている。
ちなみに、図14に示すように、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7が押し込み操作された状態においては、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7における凹部J1の内部に突状部55Bが突入するように構成されて、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7を押し込み操作した際には、牽制部材56を牽制位置に操作することができないようになっている。
【0070】
コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7に支持した牽制部材56は、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7が押し移動されると、コンロ用器具栓19及びグリル用器具栓20のスライダ34を押し移動するように構成されている。
つまり、コンロ用器具栓19及びグリル用器具栓20が、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7に支持した牽制部材56にてスライダ34を押し移動される状態で設けられて、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7が、それに装備した牽制部材56にて、コンロ用器具栓19及びグリル用器具栓20を操作するように構成されている。
【0071】
コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7が、庇状の突部T(図13参照)を前面に備える状態に構成され、そして、牽制部材56の操作用把持部56Aが、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7における庇状の突部Tの下方側に配設されている。
つまり、操作用把持部56Aが、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7の背部側に位置する牽制部材56から前方に突出する状態に形成され、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7には、操作用把持部56Aを挿通させる開口Vが形成されている。
【0072】
コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7並びに牽制部材56が合成樹脂製であり、そして、牽制部材56が、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7に、その背面に摺動自在に接当する状態で支持されている。
【0073】
次に、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7並びに牽制部材56について説明を加えるが、コンロ用操作具6B及びグリル用操作具7は同様な構成であるので、以下、グリル用操作具7を代表として、グリル用操作具7並びに牽制部材56について説明する。
【0074】
図12に示すように、グリル用操作具7は、左右の側壁部7L、7R、上部壁7U、及び、前壁7Fを備え、背部が開口した形状に形成されている。
上部壁7Uには、左右一対の枢支部7aが上方に突出状態で形成され、上部壁7Uにおける左右の枢支部7aの間には、牽制部材56の上部に形成した上部被案内部56Bが左右方向に移動自在に係合するスリット状の係合孔7bが形成されている。
【0075】
また、グリル用操作具7の下部には、牽制部材56の下方に形成した左右の下部被案内部56Cが左右にスライド嵌合する左右一対のU字状部7cが形成されている。
さらに、前壁7Fの背面における開口Vの下方側箇所には、牽制部材56の位置決め用の凸部7dが形成されている。
【0076】
図12、図15及び図16に示すように、牽制部材56は、上部被案内部56B及び左右一対の下部部被案内部56Cが、グリル用操作具7のスリット状係合孔7b及び左右一対のU字状部7cにて左右方向に移動自在に支持されることにより、左右に移動自在に支持されている。
そして、牽制部材56は、図13及び図14に示すように、その上部の第1接触部56Dが、グリル用操作具7の上壁7Uの内面に接当し、その前面側で且つ上部の第2接触部56Eが、グリル用操作具7の前壁7Fの内面に接当し、且つ、その前面側で且つ下部の第3接触部56F(図16参照)が、グリル用操作具7の前壁7Fの内面に接当する状態で、グリル用操作具7に対して摺動するように構成されている(図4〜6参照)。
【0077】
つまり、牽制部材56は、グリル用器具栓20のスライダ34を押し移動する際や、受止め用の突状部55Bにて牽制作用部J2が受止められる際には、第1接触部56D、第2接触部56E、及び、第3接触部56Fにて、グリル用操作具7に接当することになるため、応力が集中することが抑制される状態でグリル用操作具7にて支持されることになり、また、グリル用操作具7は、応力が集中することが抑制された状態で、牽制部材56を支持することになる。
【0078】
ちなみに、牽制部材56は、上下方向及び前後方向に多少の融通ガタが存在する状態でグリル用操作具7に支持されており、グリル用器具栓20のスライダ34を操作するときに、第1〜第3接触部56D〜56Fがグリル用操作具7に接触する状態になる。
【0079】
また、図16に示すように、牽制部材56の前面側の下方部分には、前記グリル用操作具7の位置決め用の凸部7d(図12参照)が係合する左右一対の位置決め用の凹部56Gが、突部56Hにて分離された状態に形成されて、牽制位置および解除位置において、位置決め用の凸部7dが位置決め用の凹部56Gに係合することにより、牽制部材56が牽制位置及び解除位置に位置決めされるように構成されている。
【0080】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、押し移動操作により加熱部の加熱開始を指示する加熱指示用操作具として、押し移動操作により加熱開始(点火)を指示するのに加えて、加熱状態における押し移動操作により加熱停止(消火)を指示するコンロ用操作具6A、6B、並びに、グリル用操作具7を例示したが、加熱停止を指示する操作具を、加熱指示用操作具とは別個に設ける形態で実施してもよい。
【0081】
(2)上記実施形態では、加熱指示用操作具としての、コンロ用操作具6A、6B、並びに、グリル用操作具7が、上端側を支点に揺動される形態にて設けられる場合を例示したが、加熱指示用操作具としては、スライド移動自在に支持される形態で設けても良い。
【0082】
(3)上記実施形態では、加熱指示用操作具に支持した牽制部材が、器具栓の被操作部を押し移動操作する場合を例示したが、器具栓を備えない加熱調理器にも本願発明は適用できるものである。
また、器具栓を備える加熱調理器においても、器具栓の被操作部を加熱指示用操作具そのものにて押し移動操作するようにして、牽制部材が器具栓の被操作部を押し移動操作しない形態で実施することもできる。
【0083】
(4)上記実施形態では、ガス燃焼機器として、コンロバーナとグリルバーナとを備えたコンロを例示したが、本願発明は、グリルバーナを備えないコンロに適用する等、種々のガス燃焼機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1A 加熱部
1B 加熱部
2 加熱部
6A 加熱指示用操作具
6B 加熱指示用操作具
7 加熱指示用操作具
19 器具栓
20 器具栓
55B 受止め体
56 牽制部材
56A 操作用把持部
E ロック手段
T 凸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押し移動操作により加熱部の加熱開始を指示する加熱指示用操作具が設けられ、この加熱指示用操作具の押し移動を牽制する牽制状態と牽制を解除する解除状態とに切換え操作自在なロック手段が設けられた加熱調理器のロック装置であって、
前記ロック手段が、前記加熱指示用操作具が押し移動されたときにその移動を受止めるための固定側の受止め体と、この受止め体にて受止められる牽制位置と受止めが解除される解除位置とに切換え自在に前記加熱指示用操作具に支持された牽制部材とから構成されている加熱調理器のロック装置。
【請求項2】
被操作部が押し移動されることにより前記加熱部としてのバーナに対してガス燃料を供給する器具栓が、前記加熱指示用操作具に支持された前記牽制部材にて前記被操作部を押し移動される状態で設けられている請求項1記載の加熱調理器のロック装置。
【請求項3】
前記加熱指示用操作具が、上端側を支点に揺動自在に支持され、かつ、庇状の突部を前面に備える状態に構成され、
前記牽制部材の操作用把持部が、前記加熱指示用操作具における前記庇状の突部の下方側に配設されている請求項1又は2記載の加熱調理器のロック装置。
【請求項4】
前記加熱指示用操作具及び前記牽制部材が合成樹脂製であり、
前記牽制部材が、前記加熱指示用操作具に、その背面に摺動自在に接当する状態で支持されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理器のロック装置。
【請求項1】
押し移動操作により加熱部の加熱開始を指示する加熱指示用操作具が設けられ、この加熱指示用操作具の押し移動を牽制する牽制状態と牽制を解除する解除状態とに切換え操作自在なロック手段が設けられた加熱調理器のロック装置であって、
前記ロック手段が、前記加熱指示用操作具が押し移動されたときにその移動を受止めるための固定側の受止め体と、この受止め体にて受止められる牽制位置と受止めが解除される解除位置とに切換え自在に前記加熱指示用操作具に支持された牽制部材とから構成されている加熱調理器のロック装置。
【請求項2】
被操作部が押し移動されることにより前記加熱部としてのバーナに対してガス燃料を供給する器具栓が、前記加熱指示用操作具に支持された前記牽制部材にて前記被操作部を押し移動される状態で設けられている請求項1記載の加熱調理器のロック装置。
【請求項3】
前記加熱指示用操作具が、上端側を支点に揺動自在に支持され、かつ、庇状の突部を前面に備える状態に構成され、
前記牽制部材の操作用把持部が、前記加熱指示用操作具における前記庇状の突部の下方側に配設されている請求項1又は2記載の加熱調理器のロック装置。
【請求項4】
前記加熱指示用操作具及び前記牽制部材が合成樹脂製であり、
前記牽制部材が、前記加熱指示用操作具に、その背面に摺動自在に接当する状態で支持されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理器のロック装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−47555(P2011−47555A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195385(P2009−195385)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(301066992)株式会社ハーマンプロ (145)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(301066992)株式会社ハーマンプロ (145)
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