説明

加熱調理器

【課題】マイクロ波により蒸し調理を良好に行うことのできる加熱調理器を提供する。
【解決手段】調理物W1が収納される加熱室3にマイクロ波を供給するマイクロ波供給部5、6、7と、マイクロ波が通過しない小孔23を開口して加熱室3内に設置される金属製の遮断部材20とを備え、遮断部材20の下方にマイクロ波を供給して遮断部材20によりマイクロ波を遮断した。蒸し調理時に調理物W1が遮断部材20の上方に配され、水が入った貯水容器W2が遮断部材20の下方に配される。遮断部材20の下方にマイクロ波を供給すると貯水容器W2の水が蒸発し、小孔23を介して遮断部材20の上方に蒸気が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波によって蒸し調理を行うことのできる加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理器は特許文献1に開示されている。この加熱調理器はマイクロ波を発生するマグネトロンを備え、調理物を収納する加熱室内に導波管を介してマイクロ波を供給する。加熱室内に配された角皿上に調理物を載置してマグネトロンを駆動することにより、調理物が加熱調理される。
【0003】
また、角皿は周壁を有して内部に水を溜めることができるように形成される。角皿に設置される載置台上に調理物を載置し、角皿に給水して蓋をする。そして、マグネトロンを駆動すると、角皿内の水が蒸発し、調理物の蒸し調理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−198013号公報(第4頁−第6頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の加熱調理器によると、蒸し調理を行う際にマイクロ波によって調理物が加熱され、良好な蒸し調理を行うことができない問題があった。
【0006】
本発明は、マイクロ波により蒸し調理を良好に行うことのできる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、調理物が収納される加熱室にマイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、マイクロ波が通過しない小孔を開口して前記加熱室内に設置される金属製の遮断部材とを備え、前記遮断部材の下方にマイクロ波を供給して前記遮断部材によりマイクロ波を遮断したことを特徴としている。
【0008】
この構成によると、遮断部材の上方に調理物が配置され、遮断部材の下方に水が入った貯水容器が配置される。マイクロ波供給部により遮断部材の下方にマイクロ波が供給され、貯水容器内の水が蒸発して蒸気が発生する。この時、遮断部材が金属により形成されるとともに小孔がマイクロ波を通過しないため、遮断部材の上方へのマイクロ波の供給が遮断される。遮断部材の下方で発生した蒸気は小孔を介して遮断部材の上方に供給され、調理物の蒸し調理が行われる。
【0009】
また本発明は、上記構成の加熱調理器において、前記遮断部材の周縁に絶縁部材を設けたことを特徴としている。この構成によると、絶縁部材によって金属製の遮断部材と加熱室の壁面との間の放電が防止される。
【0010】
また本発明は、上記構成の加熱調理器において、前記遮断部材は前記加熱室の両側壁間に橋架される平板により形成されることを特徴としている。この構成によると、遮断部材は加熱室内に橋架され、調理物を遮断部材上に載置して調理を行うことができる。
【0011】
また本発明は、上記構成の加熱調理器において、前記マイクロ波供給部は前記加熱室の下方に隣接してマイクロ波を導波する導波部を有し、前記遮断部材は前記導波部よりも広い範囲を覆う脚部により前記加熱室の底面上に設置されることを特徴としている。この構成によると、マイクロ波は導波部を介して加熱室内に供給され、脚部を有する遮断部材が加熱室の底面上に設置される。脚部は導波部をよりも広い範囲を覆うため、遮断部材の上方へのマイクロ波の供給が遮断される。
【0012】
また本発明は、上記構成の加熱調理器において、前記小孔の直径を3mm以下にしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、小孔を有した金属製の遮断部材の下方にマイクロ波を供給して遮断部材によりマイクロ波を遮断するので、遮断部材の上方に調理物を配置して遮断部材の下方に水が入った貯水容器を配置することにより、調理物がマイクロ波によって加熱されずに貯水容器から発生した蒸気により加熱される。従って、マイクロ波によって良好な蒸し調理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態の加熱調理器を示す概略正面図
【図2】本発明の第1実施形態の加熱調理器の遮断部材を示す上面図
【図3】本発明の第1実施形態の加熱調理器の遮断部材を示す正面断面図
【図4】本発明の第2実施形態の加熱調理器を示す概略正面図
【図5】本発明の第2実施形態の加熱調理器の遮断部材を示す正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は第1実施形態の加熱調理器を示す概略正面図である。加熱調理器1は前面を開口した箱状に形成されるステンレス等の金属製の加熱室筐体2を備えている。加熱室筐体2の側方にはマイクロ波を発生するマグネトロン5が配置される。加熱室筐体2の底面にはマグネトロン5に連結した導波管6が導出される。
【0016】
加熱室筐体2の下部には上下を仕切るセラミック製の底板4が配される。加熱室筐体2内には底板4の上方に調理物W1を収納する加熱室3が形成され、底板4の下方に導波部7が形成される。底板4によって加熱室3の底面が形成される。マグネトロン5により発生したマイクロ波は導波管6及び導波部7を導波して加熱室3に供給される。従って、マグネトロン5、導波管6及び導波部7は加熱室3にマイクロ波を供給するマイクロ波供給部を構成する。
【0017】
導波部7内にはマイクロ波を均一化するための回転するアンテナ8が配置される。また、導波部7の底部及び加熱室3の天面にはそれぞれ加熱ヒータ9、10が配される。加熱ヒータ9、10は調理物W1を輻射熱により調理する際に駆動される。
【0018】
加熱室3の側壁には設置部3aが突設され、両設置部3a間には遮断部材20が橋架される。図2、図3は遮断部材20の上面図及び正面断面図を示している。遮断部材20は基材21及び絶縁部材22を有している。基材21は平板状の金属の表面をホーロー仕上げして形成され、調理物W1(図1参照)を載置するトレイを形成する。基材21の周部には複数の小孔23が開口する。小孔23はパンチング加工等によってマイクロ波が通過しない大きさに形成され、例えば、直径が3mm以下の円形に形成される。絶縁部材22はシリコンゴムやセラミック等により断面コ字状に形成され、基材21の周縁に被嵌される。
【0019】
上記構成の加熱調理器1において、蒸気による蒸し調理を行う際に遮断部材20上に調理物W1が載置され、遮断部材20の下方に水が入った貯水容器W2が配置される。マグネトロン5の駆動によって導波管6及び導波部7を介して遮断部材20の下方にマイクロ波が供給される。これにより、貯水容器W2内の水が蒸発して蒸気が発生する。
【0020】
この時、遮断部材20が金属により形成されるとともに小孔23がマイクロ波を通過しないため、遮断部材20の上方へのマイクロ波の供給が遮断される。遮断部材20の下方で発生した蒸気は小孔23を介して遮断部材20の上方に供給され、調理物W1の蒸し調理が行われる。
【0021】
本実施形態によると、小孔23を有した金属製の遮断部材20の下方にマイクロ波を供給して遮断部材20によりマイクロ波を遮断するので、遮断部材20の上方に調理物W1を配置して遮断部材20の下方に水が入った貯水容器W2を配置することにより、調理物W1がマイクロ波によって加熱されずに貯水容器W2から発生した蒸気により加熱される。従って、マイクロ波によって良好な蒸し調理を行うことができる。また、加熱室3の遮断部材20よりも下方の狭い空間にマイクロ波を供給して貯水容器W2を加熱するため、加熱効率が向上して蒸し調理時の省電力化を図ることができる。
【0022】
また、遮断部材20の周縁に絶縁部材22を設けたので、絶縁部材22によって金属製の遮断部材20と加熱室3の壁面との間の放電を防止することができる。尚、遮断部材20と加熱室筐体2との間にマイクロ波が通過しない隙間を設け、絶縁部材22を省いてもよい。
【0023】
また、遮断部材20が加熱室3の両側壁間に橋架される平板により形成されるので、調理物W1を載置するトレイを別途設ける必要がなく、加熱調理器1の利便性を向上することができる。
【0024】
次に、図4は第2実施形態の加熱調理器を示す側面断面図である。説明の便宜上、前述の図1〜図3に示す第1実施形態と同一の部分は同一の符号を付している。本実施形態は導波部7及び遮断部材の構成が第1実施形態と異なっている。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0025】
加熱室筐体2の下部の導波部7は環状の周壁7aによって底板4の外形よりも狭い範囲で囲まれる。底板4上には遮断部材30が設置される。図5は遮断部材30の正面断面図を示している。第1実施形態と同様に遮断部材30は基材31及び絶縁部材32を有している。基材31は周部を下方に折曲した断面コ字状の金属の表面をホーロー仕上げして形成される。基材31の周部の折曲によって環状の脚部30aが形成される。基材31の上面の周部には第1実施形態の小孔23(図2参照)と同様の複数の小孔33が開口する。
【0026】
絶縁部材32はシリコンゴムやセラミック等により断面コ字状に形成され、基材31の周縁となる脚部30aの下端に被嵌される。脚部30aは導波部7よりも広い範囲を覆い、導波部7を導波するマイクロ波は遮断部材30の上方へのマイクロ波の供給が遮断される。また、絶縁部材32によって金属製の遮断部材30と加熱室3の壁面との間の放電が防止される。
【0027】
尚、加熱室3の両側壁に設けた設置部3a間にトレイ11が橋架される。トレイ11は遮断部材30よりも上方に配され、トレイ11と加熱室筐体2との間には蒸気が流通する隙間(不図示)が形成される。
【0028】
上記構成の加熱調理器1において、蒸気による蒸し調理を行う際にトレイ11上に調理物W1が載置され、遮断部材30の下方に水が入った貯水容器W2が配置される。マグネトロン5の駆動によって導波管6及び導波部7を介して遮断部材30の下方にマイクロ波が供給される。これにより、貯水容器W2内の水が蒸発して蒸気が発生する。遮断部材30の下方で発生した蒸気は小孔33を介して遮断部材30の上方に供給され、調理物W1の蒸し調理が行われる。尚、遮断部材30の上面に調理物W1を載置してもよい。
【0029】
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、遮断部材30は導波部7よりも広い範囲を覆う脚部30aにより加熱室3の底面上に設置されるので、簡単にマイクロ波を遮断することができる。
【0030】
また、遮断部材30の周縁に絶縁部材32を設けたので、絶縁部材32によって金属製の遮断部材30と加熱室3の壁面との間の放電を防止することができる。尚、遮断部材30の脚部30aと加熱室3の側壁との隙間が大きい場合は絶縁部材32を省いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によると、マイクロ波によって蒸し調理を行うことのできる加熱調理器に利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 加熱調理器
2 加熱室筐体
3 加熱室
4 底板
5 マグネトロン
6 導波管
7 導波部
8 アンテナ
9、10 加熱ヒータ
11 トレイ
20、30 遮断部材
21、31 基材
22、32 絶縁部材
23、33 小孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理物が収納される加熱室にマイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、マイクロ波が通過しない小孔を開口して前記加熱室内に設置される金属製の遮断部材とを備え、前記遮断部材の下方にマイクロ波を供給して前記遮断部材によりマイクロ波を遮断したことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記遮断部材の周縁に絶縁部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記遮断部材は前記加熱室の両側壁間に橋架される平板により形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記マイクロ波供給部は前記加熱室の下方に隣接してマイクロ波を導波する導波部を有し、前記遮断部材は前記導波部よりも広い範囲を覆う脚部により前記加熱室の底面上に設置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記小孔の直径を3mm以下にしたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−220590(P2011−220590A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88906(P2010−88906)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】