説明

加熱調理器

【課題】天板上の加熱調理範囲内の任意の位置に任意の形状の被加熱物を置いても、該被加熱物に対して効率の良い加熱が可能であり、また、一度天板上の加熱調理範囲内の適宜の位置に被加熱物を置いた後であっても、必要時には被加熱物を容易に他の位置に移動することができる加熱調理器を提供する。
【解決手段】加熱調理器100は、天板11上の加熱調理範囲全体に偏りなく分散配置された複数本のバーナ10を備えており、この複数本のバーナ10はそれぞれ、バーナ本体1と、このバーナ本体1の先端部3から一部が突出する支持部材2と、を備えている。また、支持部材2は該支持部材2上に支持される被加熱物の存在を検知する検知手段を兼ねており、この検知手段によって検知される検知信号に基づいて、被加熱物の下方のバーナ10の開閉弁21の開閉を制御して該バーナ10の燃焼を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器に関し、特にバーナ本体と支持部材とを備えたバーナの複数本が天板上に分散配置された加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
バーナを備えた加熱調理器は、ガスコンロ等の名称でよく知られている。通常のガスコンロは、天板に形成した1個から複数個の開口部のそれぞれに、円環状の火炎口を持つバーナが配置され、該開口部を囲むようにして、鍋やフライパン等の被加熱物をバーナ上に支持するための支持部材(ごとく)が設けられている。
【0003】
特許文献1には、美観と掃除のし易さに優れたガスコンロが記載されており、そこでは、平板状の天板と、天板に形成された天板開口部と、天板開口部の下方に離間して設けられて燃料ガスを燃焼させ天板開口部の下方に火炎を形成して被加熱物を加熱するバーナとを備え、天板の天板開口部の周囲には、被加熱物が載置される3つ以上の突起(支持部材)を、その周縁部が傾斜面状となる状態で天板から膨出する形状で形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−291560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来用いられているガスコンロでは、1つのバーナに対して1つの被加熱物を配置するのが原則であり、例えば3つのバーナを備えたガスコンロでは、使用者は、最大3つの被加熱物を選択的に使用することができる。しかし、被加熱物を配置する位置は各バーナの直上位置に限られており、その位置に被加熱物が適正に置かれるように、天板における各バーナの周囲には、被加熱物を安定的に支持するための支持部材(ごとく)が設けられている。しかし、被加熱物が重量物の場合や被加熱物の形状や大きさによっては、支持部材(ごとく)上の適正な位置に被加熱物を置くことが困難になることが起こり得る。その場合には、効率の良い加熱を受けることができない。さらに、被加熱物が重量物の場合、必要なときにバーナからバーナへ被加熱物を移し替えるのも困難となっている。
【0006】
また、ガスコンロを使用する者によっては、様々な大きさと形状の調理具(鍋やフライパンのみでなく鉄板等も含む)を使用することを望む場合があるが、従来のガスコンロにおける支持部材(ごとく)の形状と大きさはほぼ規格化されたものであり、それらの要請に的確に答え得るものとはなっていない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、複数本のバーナを寄せ集めて形成した加熱調理器において、天板上の加熱調理範囲内の任意の位置に任意の形状の被加熱物を置いても、該被加熱物に対して効率の良い加熱が可能であり、また、一度天板上の加熱調理範囲内の適宜の位置に被加熱物を置いた後であっても、必要時には被加熱物を容易に他の位置に移動することができるようにされた加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明の加熱調理器は、天板上の加熱調理範囲全体に偏りなく分散配置され、それぞれが、内部に燃焼ガスのためのガス流路を有し且つ先端部に火炎口を有するバーナ本体と、一部が該バーナ本体の先端部から一定距離だけ突出する支持部材と、を備える複数本のバーナと、前記複数本のバーナのうちの少なくとも1つのバーナに着火する着火手段と、前記バーナ本体の前記ガス流路に燃焼ガスを供給するために前記複数本のバーナに接続されたそれぞれの配管に設けられた開閉弁と、前記複数本のバーナの前記支持部材上に支持される被加熱物の存在を検知する検知手段と、前記検知手段によって検知される検知信号に基づいて、前記被加熱物の下方のバーナの開閉弁の開閉を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記する形態によれば、従来バーナの周囲に配置されていた支持部材(ごとく)をバーナ本体の先端部に設け、バーナ本体と支持部材を一体とすることで、隣接するバーナ同士を近接して配置することができる。したがって、加熱調理器全体の体格を小型化できると共に、使用者が任意に選択したバーナの支持部材上に被加熱物を置いたとしても、該被加熱物を略均一に加熱することができる。また、バーナ同士を近接して配置することで、バーナ同士の火炎伝播が容易となり、各バーナに着火手段を設けなくても、着火手段を設けないバーナについては、前記着火手段もしくは既に燃焼している隣接するバーナの火炎を用いて着火することが可能となり、加熱調理器の部品点数を削減して構造を簡素化し、その製造コストを抑制することができる。ここで、前記複数本のバーナのうち隣接するバーナのバーナ本体の軸線同士の距離が、該バーナで形成される火炎の火炎幅の1.3倍以内であれば、所定のバーナを使用した際にバーナ同士の火炎伝播を容易に可能とすることができる。
【0010】
また、加熱調理器が支持部材上に支持される被加熱物の存在を検知する検知手段を備え、該検知手段によって検知される検知信号に基づいて、被加熱物の下方のバーナの開閉弁の開閉を制御して複数本のバーナの燃焼を制御することで、天板上の加熱調理範囲内の任意の位置に任意の形状の被加熱物を置いても、当該被加熱物の位置や大きさ、形状等に応じた位置のバーナを燃焼させることができ、被加熱物をより効率的に加熱することができる。さらに、上記する検知手段を備えることで、例えば使用者が被加熱物を持ち上げて移動させる、あるいは横方向に滑らせて移動させる等、一度天板上の加熱調理範囲内の適宜の位置に被加熱物を置き、必要時に被加熱物を他の位置に移動した後であっても、その移動後の位置に対応するバーナに燃焼ガスを継続して供給してバーナの燃焼を継続することができ、移動後の被加熱物を容易に加熱することができる。ここで、前記制御手段は、前記検知手段によって検知される検知信号に基づいて、前記被加熱物の下方のバーナの開閉弁を開弁することで、例えば移動前の被加熱物の下方のバーナの燃焼を停止しながら、移動後の被加熱物の底部を加熱することができ、移動後の被加熱物をより効率的に加熱することができる。
【0011】
ここで、前記複数本のバーナの前記支持部材が前記検知手段を兼ねることが好ましい。この形態によれば、加熱調理器の部品点数を削減してさらに構造を簡素化することができ、加熱調理器の製造コストをさらに抑制することができる。
【0012】
また、前記加熱調理器は、各バーナの火炎口から噴出される燃焼ガスのガス流量を調整するガス流量調整手段を備えることを特徴とする。さらに、前記加熱調理器は、バーナの火力を指示する火力指示手段を備えており、前記ガス流量調整手段は、天板上の燃焼すべきバーナの本数および前記火力指示手段によって指示されるバーナの火力のうちの少なくともいずれか一方に基づいて、各バーナの火炎口から噴出される燃焼ガスのガス流量を調整することを特徴とする。この形態によれば、例えば被加熱物の大きさや形状等に応じてバーナの火炎口から噴出される燃焼ガスのガス流量を調整することができると共に、加熱調理器がバーナの火力を指示する火力指示手段を備えている場合には、例えば調理対象や調理段階等に応じて使用者が所望にガス流量を調整することができ、使用者が被加熱物を所望に加熱もしくは保温することができ、使用の自由度を高めることができる。
【0013】
また、本発明の加熱調理器の別の実施の形態は、天板上に分散配置された前記複数本のバーナは、所定の本数毎のバーナ集合体に区分されており、前記バーナ集合体はそれぞれ、該バーナ集合体の各バーナの火炎口から噴出される燃焼ガスのガス流量を調整するガス流量調整手段を備えることを特徴とする。
【0014】
上記する形態によれは、天板上に分散配置された複数本のバーナを所定の本数毎に区分して、それぞれのバーナ集合体毎に燃焼状態等を制御することができる。したがって、例えばガス流量調整手段を各バーナに設ける場合と比較して、ガス流量調整手段の基数を削減して加熱調理器の構造を簡素化することができ、その製造コストを抑制することができると共に、天板上のバーナの燃焼状態の制御を簡素化することができる。
【0015】
なお、バーナ集合体を構成するバーナの本数は、被加熱物の大きさや形状、家庭用または業務用、使用場所等の使用環境に応じて適宜設定することができる。また、天板上の加熱調理範囲の場所等に応じてその本数を適宜変更することもできる。
【0016】
また、前記バーナ集合体はそれぞれ、少なくとも1つの着火手段を有することを特徴とする。さらに、前記着火手段は、前記バーナ集合体のうちのいずれか1つのバーナに備えられていることが好ましい。
【0017】
上記するように、天板上に分散配置された複数のバーナを所定の本数毎に区分することで、それぞれのバーナ集合体毎に燃焼状態等を制御することができるため、バーナ集合体のそれぞれが少なくとも1つの着火手段を有していれば、検知手段の検知信号に基づいてバーナ集合体毎にバーナの着火を制御することができる。また、隣接するバーナ同士を近接して配置することができるため、バーナ集合体のいずれか1つのバーナが着火手段を備えていれば、その着火手段によってバーナ集合体の各バーナに着火することが可能となり、加熱調理器の部品点数を削減して構造を簡素化することができる。
【0018】
また、前記バーナ集合体の各バーナは、該バーナ集合体が備える着火手段、もしくは該バーナ集合体に隣接するバーナ集合体が備える着火手段によって着火されることを特徴とする。バーナ集合体を構成するバーナの本数や配置等によっては、バーナ集合体のうちの燃焼させるべきバーナが、そのバーナ集合体が備える着火手段よりも当該バーナ集合体に隣接するバーナ集合体が備える着火手段に近接して配置される場合がある。そのような場合には、バーナ集合体のうちの燃焼させるべきバーナを、当該バーナ集合体に隣接するバーナ集合体が備える着火手段によって着火することで、バーナの着火速度を速めることができると共に、燃焼させる必要のないバーナを着火することが不要となり、被加熱物の下方のバーナを迅速且つ効率的に着火することが可能となる。
【0019】
さらに前記加熱調理器は、バーナの火力を指示する火力指示手段を備えており、前記バーナ集合体の各ガス流量調整手段は、該バーナ集合体の燃焼すべきバーナの本数および前記火力指示手段によって指示されるバーナの火力のうちの少なくともいずかれ一方に基づいて、前記バーナ集合体の各バーナの火炎口から噴出される燃焼ガスのガス流量を制御することを特徴とする。この形態によれば、例えば被加熱物の大きさや形状、調理対象や調理段階等に応じてバーナの火炎口から噴出される燃焼ガスのガス流量をバーナ集合体毎に使用者等の所望のガス流量に調整することができる。
【0020】
さらに、前記加熱調理器は、前記ガス流量調整手段に送られる燃焼ガスの空気量および燃料量を調整する空気量調整手段および燃料量調整手段を備えていることで、被加熱物や使用環境等に応じてガス流量調整手段に送られる燃焼ガスのガス組成やガス流量を調整することができる。
【0021】
なお、前記加熱調理器は、同時に複数の被加熱物を加熱することができることが好ましい。天板上の加熱調理範囲を適宜設定して同時に複数の被加熱物を加熱することができるようにすることで、複数の料理を同時に調理することができると共に、複数名が同時に加熱調理器を使用することができ、効率的に被加熱物を加熱することができ、使用の自由度を更に高めることができる。また、例えば加熱調理範囲を高温加熱領域、中温加熱領域、低温加熱領域等の複数の領域に区画することで、調理対象や調理段階等に応じて被加熱物を加熱調理範囲内で移動して置くことができ、使用者の要求に応じて被加熱物を効率的に加熱または保温することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
以上の説明から理解できるように、本発明の加熱調理器によれば、バーナ本体と被加熱物を支持する支持部材(ごとく)とを備えたバーナの複数本を天板上の加熱調理範囲全体に偏りなく分散配置し、加熱調理器が前記支持部材によって支持される被加熱物の支持部材上の存在を検知する検知手段を備えることで、天板上の加熱調理範囲内の任意の位置に任意の形状の被加熱物を置いても、該被加熱物に対して効率の良い加熱が可能であり、また、一度天板上の加熱調理範囲内の適宜の位置に被加熱物を置いた後であっても、必要時には被加熱物を容易に他の位置に移動することができる加熱調理器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による加熱調理器の一実施の形態を示す斜視図。
【図2】図1で示すバーナの全体構成を示す図であり、(a)はその斜視図、(b)はその縦断面図。
【図3】図1で示す加熱調理器に被加熱物を置いた状態を示す図であり、(a)はそれを模式的に示す斜視図、(b)はその一部拡大図。
【図4】被加熱物が置かれていない状態での図1で示す加熱調理器の基本構成を示す図であり、(a)はその上面図、(b)は図4(a)のA−A矢視図。
【図5】被加熱物が置かれた状態での図1で示す加熱調理器の基本構成を示す図であり、(a)はその上面図、(b)は図5(a)のB−B矢視図。
【図6】被加熱物を移動した状態での図1で示す加熱調理器の基本構成を示す図であり、(a)はその上面図、(b)は図6(a)のC−C矢視図。
【図7】実験で使用したバーナのバーナ本体の先端部近傍を模式的に示した図であり、(a)はその拡大斜視図であって、その内部を視認できるように一部を切り欠いて示した図、(b)はその縦断面図。
【図8】燃焼ガスの当量比を変更した際の燃焼ガスの噴出流速とバーナで形成される火炎の火炎幅との関係を示した図であり、(a)は外径10mmのバーナ、(b)は外径15mmのバーナ、(c)は外径20mmのバーナにおける燃焼ガスの当量比を変更した際の燃焼ガスの噴出流速とバーナで形成される火炎の火炎幅との関係を示した図。
【図9】バーナを天板上の加熱調理範囲に所定の距離を置いて配置した実施例1〜3の燃焼状態のバーナ本体の先端部近傍を模式的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に基づき説明する。
【0025】
図1は、本発明による加熱調理器の一実施の形態を示したものである。なお、図1は、ビルトインタイプの加熱調理器(コンロ)100を示したものであるが、ガステーブルタイプの加熱調理器(コンロ)に本実施の形態の加熱調理器を適用することもできる。
【0026】
図示する加熱調理器100は、天板11上の加熱調理範囲全体に偏りなく分散配置された複数本のバーナ10を備えており、この複数本のバーナ10はそれぞれ、バーナ本体1と、このバーナ本体1の先端部3から一部が突出する支持部材2と、を備えている。また、加熱調理器100は、その天板11上に前記バーナ10に着火するための着火手段20を備えており、着火手段20は、天板11上の加熱調理範囲に適宜の間隔で分散配置されている。また、加熱調理器100は、その前面12にバーナ10の着火および消火を行うための点火スイッチ13とバーナ10の火力を指示するための火力指示手段14を備えており、使用者の操作に基づいて各バーナ10の着火や消火、火力調整等を行うことができるようになっている。なお、本実施の形態においては、加熱調理器100は加熱調理範囲の左右の領域で異なる燃焼状態となるように、前面12の左右に点火スイッチ13と火力指示手段14を備えている。また、加熱調理器100は内部にバーナ10の燃焼を制御する制御手段30を備えていて、制御手段30は各バーナ10や着火手段20、火力指示手段14等と制御線(不図示)で接続されており、後述する検知手段や火力指示手段14の信号に基づいて天板11上の複数本のバーナ10の着火や燃焼を制御できるようになっている。
【0027】
図2は、図1で示すバーナ10の全体構成を示したものであり、図2(a)はその斜視図、図2(b)はその縦断面図を示したものである。
【0028】
図2(a)で示すように、バーナ10は、基本的な構成として略円筒状のバーナ本体1とその先端部3から一部が突出する支持部材2を備えている。バーナ本体1は、その先端部3に火炎口4を有しており、図2(b)で示すようにその内部空間に形成されたガス流路5を通り、火炎口4から噴出される燃焼ガス(予混合ガスであって、空気と燃料からなる混合ガス)Gを該火炎口4で燃焼することで、支持部材2上に置かれた被加熱物を加熱することができる。なお、バーナ本体1の下端部には継ぎ手9が螺合されており、継ぎ手9がガス供給配管L10(図4(b)参照)と接続されることで、バーナ本体1のガス流路5に燃焼ガスGを供給できるようになっている。
【0029】
また、バーナ10の支持部材2は被加熱物の検知手段を兼ねている。すなわち、支持部材2は、図2(b)に示すように、バーナ本体1の軸線方向に摺動可能となっていて、支持部材2の上に鍋等の被加熱物が置かれると、コイルバネ6の付勢力によってバーナ本体1の先端部3から一定距離だけ突出した上限位置に位置決めされていた支持部材2は、その外的負荷に応じてバーナ本体1の基部側に向けて摺動移動する。そして、支持部材2の下端部に取り付けられたマグネット7が磁気センサ8に対して相対的に移動することで、被加熱物の存在を検知することができるようになっている。この磁気センサ8の検知信号が制御手段30に送信されることで、該制御手段30は、バーナ本体1のガス流路5に連通するガス供給配管L10に取り付けられた開閉弁(例えば電磁弁)21(図4(b)参照)を開放し、被加熱物が置かれた支持部材2を有するバーナ10をそれぞれ燃焼させることができる。
【0030】
なお、制御手段30は、支持部材2上に被加熱物が置かれた際に、磁気センサ8に対する支持部材2のマグネット7の移動量から被加熱物の重量を演算し、その重量に応じてバーナ10の火力を変更することもできる。また、支持部材2に被加熱物の温度を測定する温度センサを取り付け、その温度に応じてバーナ10の火力を変更することもできる。さらに、制御手段30は、検知手段の検知信号に基づいて、加熱調理範囲における被加熱物の位置を特定する位置特定手段(不図示)を備えることもできる。
【0031】
また、図示しないが、上記するようなマグネット7と磁気センサ8による検知手段に代えて、支持部材2の底部によって直接押圧される接触スイッチ(タクトスイッチ)をバーナ本体1の内部に埋設し、その接触信号を検知して開閉弁21に開信号を送信する機構としてもよい。また、支持部材2の上部に対して例えば周囲に延びる羽根等の接触部材を取り付け、バーナ本体1の先端部3に取り付けた圧力センサを押圧した際に、その信号を検知して開閉弁21に開信号を送信する機構としてもよい。さらに、従来知られたフォトカプラにより検知手段を採用することもできる。
【0032】
なお、バーナ10の下方部分には、例えば加熱調理器100の機枠等の他の基材にこのバーナ10を立てた姿勢で取り付けるための取り付け具等も設けられている。
【0033】
図3は、図1で示す加熱調理器100に被加熱物Hを置いた状態を示したものであり、図3(a)はその模式図、図3(b)はその一部拡大図である。
【0034】
図3(a)で示すように、加熱調理器100の加熱料理範囲内に被加熱物Hが置かれると、その下方の支持部材(ごとく)2が下方に沈み込み、その支持部材2の移動の信号が制御手段30に送信される。そして、使用者が加熱調理器100の前面12に設けられた点火スイッチ13をON状態にすると、被加熱物Hの下方に設けられた着火手段20(図3(b)参照)によって被加熱物Hの下方の所定のバーナ10が着火される。それ以外のバーナ10については、前記する着火手段20によって着火される、もしくは既に着火されたバーナ10から火炎が伝播することによって着火されることで、被加熱物Hの下方のバーナ10を燃焼して被加熱物Hを効果的に加熱することができる。
【0035】
なお、図3(b)に示すように、バーナ本体1の上端部3の火炎口4は、バーナ本体1の周方向に等間隔で形成された縦長のスリットで形成されており、バーナ10の火炎がバーナ本体1の軸線に直交する方向に噴出されるようになっていることで、バーナ10同士の火炎伝播が容易となる。
【0036】
そして、被加熱物Hの加熱や保温が完了し、使用者が点火スイッチ13をOFF状態にすることで、被加熱物Hの下方のバーナ10を消火することができる。
【0037】
次に、図4〜図6を参照して、本実施の形態の加熱調理器100による被加熱物Hの加熱方法について詳述する。
【0038】
まず、図4は、被加熱物Hが置かれていない状態での本実施の形態の加熱調理器100の基本構成を示したものであり、図4(a)はその上面図、図4(b)は図4(a)のA−A矢視図である。
【0039】
図4(a)で示すように、加熱調理器100は、天板11上の加熱調理範囲全体に偏りなく分散配置された複数本のバーナ10を備えている。なお、本実施の形態においては、6×16=96基のバーナ10が分散配置されているが、バーナ10の本数はこれに限定されるものではなく、キッチンの大きさや家庭用、業務用等の使用環境に応じて適宜設定することができる。また、本実施の形態においては、複数のバーナ10が加熱調理範囲内で縦方向および横方向に略均等に配置されているが、バーナ10の配置はこれに限定されるものではなく、被加熱物Hを略均一に加熱できれば適宜の位置に配置することができる。
【0040】
ここで、加熱調理範囲内に分散配置されたバーナ10同士の距離は20〜40mmであるのが好ましい。本実施の形態においては、燃焼ガス(予混合ガス)の当量比は一般に1.6〜1.7、より具体的には1.66であり、家庭用として使用する際の弱火における燃焼ガスの噴出流速は40cm/s、中火における燃焼ガスの噴出流速は60cm/s、強火における燃焼ガスの噴出流速は100cm/sであることから、天板11上の加熱調理範囲内のバーナ10の本数を抑制しながら、弱火であったとしてもバーナ10間の火炎伝播を可能とするために、バーナ10同士の距離を30mmとしている。また、バーナ10の外径(直径)は約15mmである。なお、バーナ10同士の距離やバーナ10の外径等はこれに限定されるものではなく、後述する[バーナ同士の火炎伝播に関する実験とその結果]で本発明者等が見出したように、隣接するバーナ10同士の距離、より具体的にはバーナ10のバーナ本体1の軸線同士の距離がバーナ10で形成される火炎の火炎幅の1.3倍以内となるように、バーナ10同士の距離、燃焼ガスの当量比や噴出流速を調整することでバーナ10間で火炎を伝播させることができる。特に、上記するような一般家庭で使用される当量比(1.66)の燃焼ガスを使用する際に弱火であったとしても容易にバーナ10間で火炎を伝播させるために、バーナ10の外径は15mm以上であるのが好ましい。
【0041】
なお、当量比(Equivalence Ratio、φ)とは、燃焼ガス中の燃料と空気(または酸素剤)の混合比率を示すものであり、完全燃焼によって燃焼ガス中の空気(または酸素剤)を消費し尽す燃料量を基準として、この何倍の燃料量が燃焼ガス中に存在しているかを示すものである。
【0042】
また、加熱調理器100の複数本のバーナ10は、図4(a)に示すように、所定の本数(本実施の形態においては、2×2=4本)毎のバーナ集合体50に区分されていて、それぞれのバーナ集合体50は、そのうちの1つのバーナ10に隣接して着火手段20を備えている。
【0043】
次に、加熱調理器100の内部構成について図4(b)に基づいて説明する。図示するように、この加熱調理器100の内部には、バーナ10に連通する配管L10と、前記バーナ集合体50毎に前記配管L10が4本ずつ束ねられた配管L50と、全ての配管L50が束ねられた主配管L100とが備えられている。また、この主配管L100に連通するように燃焼ガスGの空気量と燃料量を調整する空気量調整手段24と燃料量調整手段25が備えられている。したがって、コンプレッサ等空気源から供給された空気Aとガス配管やボンベ等から供給された燃料Fは、それぞれ空気量調整手段24と燃料量調整手段25によってその空気量と燃料量が調整され、流量が調整された空気Aと燃料Fから生成された燃焼ガスGは、主配管L100を通ってそこから分岐した配管L50に送られ、さらに配管L50から分岐した配管L10に送られてバーナ10毎の火炎口4から噴出されることで、バーナ10の火炎口4で燃焼ガスGを燃焼させることができる。なお、本実施の形態においては、空気量調整手段24および燃料量調整手段25によって、空気量と燃料量がそれぞれ200L/min、50L/minに調整されているが、使用環境等に応じて空気量と燃料量を変更して燃焼ガスのガス組成(当量比)を調整することができる。
【0044】
また、バーナ10の配管L10には、その流路を開閉する開閉弁21が備えられ、配管L50には、バーナ集合体50の各バーナ10の火炎口4から噴出される燃焼ガスGのガス流量を調整するガス流量調整手段22が備えられている。このように開閉弁21とガス流量調整手段22が備えられていることで、各バーナ10の検知手段(支持部材2)によって検知され、制御手段30に送信された被加熱物Hの検知信号に基づいて、制御手段30は、各バーナ10の配管L10に取り付けられた開閉弁21の開閉をそれぞれ制御できると共に、バーナ集合体50の各バーナ10の火炎口4から噴射される燃焼ガスGのガス流量を制御することができる。すなわち、バーナ集合体50毎にガス流量を制御することができることで、バーナ10毎にガス流量を制御する場合と比較してその制御が容易となり、バーナ集合体50の各バーナ10については、各バーナ10に設けられた開閉弁21の開閉を制御してその燃焼状態を制御することができる。したがって、部品点数を抑制しながら、支持部材2上の被加熱物Hの位置や形状等に応じて被加熱物Hの加熱量を効率的に制御することができる。なお、図4で示すような、被加熱物がバーナ10上に置かれていない状態では開閉弁21は閉弁状態となっており、バーナ10のガス流路5に対する燃焼ガスGの供給は遮断されている。
【0045】
また、加熱調理器100の内部には、空気量調整手段24と燃料量調整手段25が備えられており、制御手段30は、被加熱物Hが置かれることで開放された開閉弁21の個数や火力指示手段(図1参照)に基づいて、空気量調整手段24と燃料量調整手段25の空気量と燃料量を制御し、バーナに送られる燃焼ガスのガス組成やガス流量を調整することもできる。また、上記する配管L50のガス流量調整手段22の上流側には、燃焼ガスGの逆流を防止するための逆止弁23が取り付けられている。
【0046】
なお、加熱調理範囲内に分散配置された各バーナ10は、バーナ本体1の火炎口4が天板11の上方に位置するように、天板11と機枠15とによって立てた姿勢で略均等な間隔で取り付けられている。また、バーナ10の支持部材2は、その一部がバーナ本体1から約15〜20mm程度突出するように設定されており、その突出量は被加熱物等に応じて調整できるようになっている。また、支持部材2の上端部は滑らかな曲面で形成されていると共に、被加熱物を支持部材2上に置いたときの支持部材2の沈み込み量は約10mm程度となっていることで、後述するような使用者が被加熱物を天板11上で滑らせるように移動させる際にも抵抗感なく移動させることができるようになっている。
【0047】
次に、図5は、被加熱物が置かれた状態での加熱調理器100の基本構成を具体的に示したものであり、図5(a)はその上面図、図5(b)は図5(a)のB−B矢視図である。なお、図5においては1つの被加熱物を加熱する方法について説明するが、同時に複数の被加熱物を加熱する場合においても同様の方法を使用することができる。
【0048】
まず、図5(a)で示すように、使用者が天板11上の加熱調理範囲内の所望の位置に例えば直径16cmの鍋(被加熱物Ha)を置く場合、この被加熱物Haの重みによって被加熱物Haの下方のバーナ(10bc,10ea,10ec,…)の支持部材が下方に移動し(図5(b)参照)、その信号が制御手段30に送信される。そして、制御手段30は、その被加熱物Haの位置に対応する開閉弁21に対して開信号を送信する。ここで、天板11上のバーナ10間の距離は約30mmであり、天板11上の複数本のバーナ10は4本毎のバーナ集合体50に区分されているために、この被加熱物Haは隣接する複数のバーナ集合体50a〜50iに亘って置かれることとなる。
【0049】
次いで、使用者が加熱を開始するために点火スイッチ13をON状態にすると、制御手段30はその点火信号をバーナ集合体50a〜50iの着火手段20a〜20iに送信し、バーナ集合体50a〜50iの各バーナは、それぞれのバーナ集合体50a〜50iの着火手段20a〜20iによって着火される。
【0050】
ここで、バーナ集合体50aについては、そのバーナ集合体50aのうちのバーナ10adのみを着火すればよい。したがって、例えばこのバーナ10adとバーナ集合体50aに隣接するバーナ集合体50eの着火手段20eとの距離が、バーナ10adとバーナ集合体50aの着火手段20aに対して相対的に近ければ、バーナ10adをバーナ集合体50eの着火手段20eによって着火することもできる。
【0051】
また、例えばバーナ集合体50jのバーナ10jcについて被加熱物Haが置かれているといった誤信号が制御手段30に送信された場合には、制御手段30は、このバーナ10jcに隣接するバーナから送信される信号等に基づいてそれが誤信号である判定し、このバーナ10jcの着火を停止することができる。すなわち、この着火や後述する燃焼工程において、あるバーナから被加熱物が置かれているといった信号が制御手段30に送信された場合には、例えばそのバーナの周囲のバーナの検出手段(支持部材)から送信される信号を使用して、その信号が正しいか否かを判定し、各バーナの着火もしくは燃焼を制御することができる。
【0052】
次いで、バーナの着火が完了すると、火力指示手段14によって指示されるバーナの火力に基づいて、加熱調理範囲内の各バーナ(10bc,10ea,10ec,…)を所定の火力で燃焼させる。その際、上記する着火手段によって着火されないバーナが存在する場合には、既に着火されたバーナの火炎の伝播によってそのバーナを着火し燃焼させることができる。
【0053】
また、この燃焼工程においては、一般にバーナ集合体50a〜50i毎に燃焼されるバーナの本数が異なる。すなわち、図5(a)に示すように、バーナ集合体50a,50cにおいては1本、バーナ集合体50bにおいては2本、バーナ集合体50g,50iにおいては3本、バーナ集合体50d〜50f,50hにおいては4本のバーナを燃焼されることとなる。そこで、制御手段30は、バーナ集合体50a〜50i毎に取り付けられたガス流量調整手段22a〜22iに対してその本数に対応した開度となるような信号を送信し、ガス流量調整手段22a〜22i毎にその流路の開度を制御することで、バーナ集合体毎で燃焼されるバーナの本数が変化しても、被加熱物Haの底部を略一定に加熱できるようになっている。
【0054】
そして、図5に示す被加熱物Haを支持部材2から取り去ると、支持部材2はコイルバネ6の付勢力で上限位置に復帰し、その信号が制御手段30に送信され、制御手段30は、開閉弁21に対して閉信号を送信することで、天板11上の各バーナ(10bc,10ea,10ec,…)が消火される。また、使用者が点火スイッチ13をOFF状態とすることによって、天板11上の各バーナ(10bc,10ea,10ec,…)を消火することもできる。
【0055】
次に、図6は、被加熱物を加熱調理範囲内で移動した状態での加熱調理器100の基本構成を具体的に示したものであり、図6(a)はその上面図、図6(b)は図6(a)のC−C矢視図である。
【0056】
使用者が被加熱物を上方に持ち上げる、もしくは横方向に移動させることにより、被加熱物の加熱中に加熱調理範囲でこの被加熱物を移動させ(X1方向)、その被加熱物Hbを図6(a)で示す位置に置いた場合、これまで下方へ押圧されていたバーナ(10bc,10ea,10ec,…)のうち、例えばバーナ10bc,10eaの支持部材はコイルバネの付勢力で上限位置に復帰する。それと同時に、新たに被加熱物Hbが置かれた位置のバーナ(10ka,10kc,…)の支持部材は下方へ移動し、その信号が制御手段30へ送信される。これにより、加熱調理範囲における移動後の被加熱物Hbの存在する場所が新たに検知されることとなる。制御手段30は上記信号を受信すると、バーナ10bcを含むバーナ集合体50a〜50cのバーナやバーナ10ea等の適宜の開閉弁に対して閉信号を送信し、それらのバーナに供給される燃焼ガスを遮断して、それらのバーナを消火する。また、バーナ10ka,10kcを含むバーナ集合体50j〜50lのバーナの開閉弁に対しては開信号を送信し、それらのバーナを新たに燃焼させる。それと同時に、制御手段30は、被加熱物Hbの移動後の検知信号に基づいてガス流量調整手段に対して開度に関する信号を送信する。すなわち、バーナ集合体50a〜50cのガス流量調整手段に対しては、燃焼させるべきバーナが存在しなくなったことから閉鎖する信号を送信し、バーナ集合体50j〜50lのガス流量調整手段に対しては、その燃焼させるべきバーナの本数に対応する開度に関する信号を送信する。
【0057】
これにより、被加熱物を加熱調理範囲内で移動させたとしても、使用者等は着火や火力調整等を行うことなく、容易に被加熱物を加熱し続けることができる。
【0058】
被加熱物Hbの移動としては、上記するように、被加熱物Hbを上方に持ち上げて移動させる形態や、被加熱物Hbを横方向に滑らせるように移動させる形態等を適用することができる。ここで、被加熱物Hbを横方向に滑らせるように移動させた場合でも、図示する加熱調理器100においては、バーナ本体の火炎口がその周方向に形成され、バーナの火炎がバーナ本体の軸線に直交する方向に噴出されるようになっており、さらに隣接するバーナ同士が弱火でも火炎伝播が可能な距離(約30mm)で配置されているため、新たに着火手段を使用することなく、隣接するバーナ同士で火炎を伝播させ、移動後においても被加熱物の下方のバーナの燃焼を継続することができる。すなわち、被加熱物Hbの移動に追従するように火炎を移動させることができ、被加熱物Hbの存在しなくなった位置のバーナを自動的に消火しながら、容易に移動後の被加熱物Hbを加熱し続けることができる。
【0059】
そして、被加熱物Hbの加熱や保温が完了し、使用者が被加熱物Hbを支持部材2から取り去ると、支持部材2はコイルバネ6の付勢力で上限位置に復帰し、その信号が制御手段30に送信され、制御手段30は、開閉弁21に対して閉信号を送信することで、天板11上の各バーナ(10ka,10kc,…)が消火される。また、使用者が点火スイッチ13をOFF状態とすることで、天板11上の各バーナ(10ka,10kc,…)を消火することもできる。
【0060】
[バーナ同士の火炎伝播に関する実験とその結果]
本発明者等は、バーナ本体の外径等の異なるバーナA〜Cを作製し、このバーナA〜Cをそれぞれ天板上の加熱調理範囲に所定の距離を置いて配置した加熱調理器(実施例1〜3)を作製した。そして、この実施例1〜3の加熱調理器について、バーナ同士の距離を変更しながら、バーナ同士が火炎伝播し得るバーナ火炎の火炎幅を測定した。
【0061】
図7は、本実験で使用したバーナA〜Cのバーナ本体1Aの先端部近傍を模式的に示したものであり、図7(a)はその拡大斜視図であって、その内部を視認できるように一部を切り欠いて示した図、図7(b)はその縦断面図である。なお、本実験で使用したバーナA〜Cは、図2で示すバーナ10に対して支持部材2を除いて作製した。
【0062】
図7(a)に示すように、本実験で使用したバーナA〜Cのバーナ本体1Aは、主として内筒1AAと、その先端部3Aにスリット状の火炎口4Aが形成された外筒1ABから構成されており、内筒1AAと外筒1ABとの間の空間が燃焼ガスのガス流路とされている。内筒1AAと外筒1ABとの間の空間を通った燃焼ガスは、外筒1ABの周方向に等間隔で設けられた火炎口4Aから噴出されることで、バーナA〜Cで形成される火炎がバーナ本体1Aの軸線1Lに直交する方向へ噴出するようになっている。
【0063】
表1は、上記するバーナA〜Cの、バーナ本体の外筒の外径(直径)D1、内筒の外径(直径)D2、バーナ本体の先端面と火炎口の上端面との距離d、火炎口の幅w1、火炎口の高さh、火炎口の基数n、外筒の外周面における火炎口同士の仕切りの幅w2を示したものである(図7(a)、(b)参照)。ここで、バーナA〜Cの火炎口は、バーナ本体1Aの外筒1ABの周方向にそれぞれ45°、30°、22.5°毎に等間隔で設けた。また、バーナA〜Cのバーナ本体1Aの外筒1ABの板厚tは1mmであった。
【0064】
【表1】

【0065】
上記するバーナA〜Cを用いて、燃焼ガスの当量比と噴出流速を変更した際のバーナA〜Cで形成される火炎の火炎幅DFを測定した。図8(a)〜(c)はそれぞれ、バーナA〜Cにおける燃焼ガスの当量比を変更した際の燃焼ガスの噴出流速とバーナで形成される火炎の火炎幅DFとの関係を示したものである。なお、この測定に際しては、バーナ上方に被加熱物を載置しない状態での火炎の火炎幅DFを測定した(図9参照)。
【0066】
図8(a)〜(c)で示すように、燃焼ガスの当量比や噴出流速が増加するにしたがってバーナで形成される火炎の火炎幅もほぼ同様に増加することが実証された。また、一般家庭で使用される当量比の燃焼ガスを燃焼させた場合、図8(b)で示すように、バーナの外径が15mmであると、燃焼ガスの噴出流速が40cm/s(弱火)の際には火炎幅が約23mm、燃焼ガスの噴出流速が60cm/s(中火)の際には約26mm、燃焼ガスの噴出流速が100cm/s(強火)の際には約32mmであることが実証された。また、図8(c)で示すようにバーナの外径が20mmであると、一般家庭で使用される当量比の燃焼ガスを燃焼させた場合、燃焼ガスの噴出流速が40cm/s(弱火)の際には火炎幅が約32mm、燃焼ガスの噴出流速が60cm/s(中火)の際には約35mm、燃焼ガスの噴出流速が100cm/s(強火)の際には約40mmであることが実証された。
【0067】
次に、図9に示すように、上記バーナA〜Cをそれぞれ天板上の加熱調理範囲に所定の距離DBを置いて配置した実施例1〜3について、実施例1〜3のバーナ同士の距離DBを変更しながら、バーナ同士が火炎伝播し得るバーナ火炎の火炎幅DFを測定した。なお、このバーナ同士の距離DBはバーナ本体の軸線1L同士の距離である。また、この測定に際しても、バーナ同士の火炎が最も伝播し難い状況を模擬してバーナ上方に被加熱物を載置しない状態での火炎の火炎幅DFを測定した。
【0068】
表2は、バーナ同士の距離DBを30mm、40mm、50mm、60mmとした場合の、上記実施例1〜3におけるバーナ同士が火炎伝播し得るバーナ火炎の火炎幅DF(単位:mm)を測定した結果である。なお、表2の火炎幅DFの下段には、測定した火炎伝播し得るバーナ火炎の火炎幅DFに対するバーナ同士の距離DBの割合S(S=DB/DF)を示している。
【0069】
【表2】

【0070】
表2から明らかなように、全ての実施例1〜3において、バーナ火炎の火炎幅DFがバーナ同士の距離DBより小さくても、バーナ同士で火炎伝播し得ることが実証された。また、燃焼ガスの噴出流速や等量比を調整することで、全ての実施例1〜3において、バーナ火炎の火炎幅DFに対するバーナ同士の距離DBの割合Sが1.3以内であれば、バーナ同士で火炎伝播し得ることが実証された。また、表2および図8に示す結果から、バーナ同士の距離DBが30mm程度である場合、一般家庭で使用される当量比の燃焼ガスを使用する際に弱火であったとしてもバーナ同士で火炎を伝播を可能とするために、バーナの外径は15mm以上とする必要があることが実証された。
【0071】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0072】
1…バーナ本体、2…支持部材(検知手段)、3…先端部、4…火炎口、5…ガス流路、6…コイルバネ、7…マグネット、8…磁気センサ、9…継ぎ手、10…バーナ、11…天板、12…前面、13…点火スイッチ、14…火力指示手段、15…機枠、20…着火手段、21…開閉弁、22…ガス流量調整手段、23…逆止弁、24…空気量調整手段、25…燃料量調整手段、30…制御手段、50…バーナ集合体、100…加熱調理器、G…燃焼ガス(予混合ガス)、H…被加熱物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板上の加熱調理範囲全体に偏りなく分散配置され、それぞれが、内部に燃焼ガスのためのガス流路を有し且つ先端部に火炎口を有するバーナ本体と、一部が該バーナ本体の先端部から一定距離だけ突出する支持部材と、を備える複数本のバーナと、
前記複数本のバーナのうちの少なくとも1つのバーナに着火する着火手段と、
前記バーナ本体の前記ガス流路に燃焼ガスを供給するために前記複数本のバーナに接続されたそれぞれの配管に設けられた開閉弁と、
前記複数本のバーナの前記支持部材上に支持される被加熱物の存在を検知する検知手段と、
前記検知手段によって検知される検知信号に基づいて、前記被加熱物の下方のバーナの開閉弁の開閉を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記複数本のバーナの前記支持部材が前記検知手段を兼ねることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記検知手段によって検知される検知信号に基づいて、前記被加熱物の下方のバーナの開閉弁を開弁することを特徴とする請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記加熱調理器は、各バーナの火炎口から噴出される燃焼ガスのガス流量を調整するガス流量調整手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記加熱調理器は、さらにバーナの火力を指示する火力指示手段を備えており、
前記ガス流量調整手段は、天板上の燃焼すべきバーナの本数および前記火力指示手段によって指示されるバーナの火力のうちの少なくともいずれか一方に基づいて、各バーナの火炎口から噴出される燃焼ガスのガス流量を調整することを特徴とする請求項4に記載の加熱調理器。
【請求項6】
天板上に分散配置された前記複数本のバーナは、所定の本数毎のバーナ集合体に区分されており、
前記バーナ集合体はそれぞれ、該バーナ集合体の各バーナの火炎口から噴出される燃焼ガスのガス流量を調整するガス流量調整手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記バーナ集合体はそれぞれ、少なくとも1つの着火手段を有することを特徴とする請求項6に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記着火手段は、前記バーナ集合体のうちのいずれか1つのバーナに備えられていることを特徴とする請求項7に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記バーナ集合体の各バーナは、該バーナ集合体が備える着火手段、もしくは該バーナ集合体に隣接するバーナ集合体が備える着火手段によって着火されることを特徴とする請求項7または8に記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記加熱調理器は、さらにバーナの火力を指示する火力指示手段を備えており、
前記バーナ集合体のガス流量調整手段は、該バーナ集合体の燃焼すべきバーナの本数および前記火力指示手段によって指示されるバーナの火力のうちの少なくともいずかれ一方に基づいて、前記バーナ集合体の各バーナの火炎口から噴出される燃焼ガスのガス流量を調整することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記加熱調理器は、さらに前記ガス流量調整手段に送られる燃焼ガスの空気量および燃料量を調整する空気量調整手段および燃料量調整手段を備えていることを特徴とする請求項4〜10のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記複数本のバーナのうち隣接するバーナのバーナ本体の軸線同士の距離が、該バーナで形成される火炎の火炎幅の1.3倍以内であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項13】
前記加熱調理器は、同時に複数の被加熱物を加熱することができることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−68395(P2013−68395A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209386(P2011−209386)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)