説明

加熱調理装置

【課題】特に加熱調理の使用頻度が高く、省エネ性能ならび高耐久性能が求められるレストランなどのユーザーに好適となる加熱調理装置を提供すること。
【解決手段】被加熱物を収納する加熱室10と、加熱室10を照射する庫内灯13と、加熱室壁面に複数の小穴で形成したパンチ孔で構成した庫内灯窓12を有し、庫内灯13は複数のLED素子が実装された基板で構成され、パンチング面は加熱室壁面の加熱室外側であって段差部10aを設けた面に構成され、パンチング面の加熱室内側と加熱室外側の両面に透明度の異なる材料の庫内側シート21、庫外側シート22を貼りつけたことにより、レストランなどで頻繁に加熱調理動作をおこなっても、被加熱物から飛散した汚れなどは簡単にふき取ることができ、シートのはがれによる庫内灯の絶縁劣化の危険を防止するとともに、機器使用者に眩しさを与えない加熱調理装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理装置を構成する庫内灯にLED素子を使用した加熱調理装置に関し、特に頻繁に加熱調理動作を実施する業務用での利用で、調理物の視認に有効な構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理装置は、加熱手段として高周波を出力する高周波発生手段(マグネトロン)を備え、加熱室内の被加熱物に対して、短時間で効率の良い加熱ができる電子レンジとして急速に普及したが、近年省エネ性能が求められる中、加熱室内に照射する庫内灯を電球からLED素子へ置き換えて消費電力を抑えることが認知されるようになってきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、一般に加熱室を照射する庫内灯は、加熱室の電波を外部に漏らさないように、加熱室壁面に設けられた複数の小穴で形成したパンチングから加熱室内を照射していた。このとき、加熱室内からの蒸気が庫内灯に結露すると絶縁劣化の可能性があり危険なため、パンチング面を光が透過するシートなどで遮蔽していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−139336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、レストランなど、おもに業務用として使用される加熱調理装置においては加熱調理の使用頻度が高く、加熱室外側面にシートを張付けると、被加熱物から飛散した汚れなどがパンチングの小穴を通過してシートの接着剤に付着し、汚れをふき取れないという課題があった。
【0006】
また、接着剤に汚れが付着しないように加熱室内側面にシートを貼り付けると、被加熱物から飛散した油などにより接着力が低下し、シートがはがれてしまう、という課題もあった。また、LED照明は光源が強すぎるため、機器使用者の目に直接光が入ると、まぶしく感じられるという課題もあった。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、調理中の庫内灯としてLED素子を使用しても機器使用者に眩しさを与えず、加熱室内からの蒸気による庫内灯の結露を防止する加熱調理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理装置は、被加熱物を収納する加熱室と、加熱室を照射する庫内灯と、加熱室壁面に複数の小穴で形成したパンチング面を有し、庫内灯は複数のLED素子が実装された基板で構成され、パンチング面は加熱室壁面に加熱室外側に段差を設けた面に構成され、パンチング面の加熱室内側と加熱室外側の両面に透明度の異なる材料のシートを貼りつけたものである。
【0009】
これによって、レストランなどで頻繁に加熱調理動作をおこなっても、被加熱物から飛散した汚れなどは簡単にふき取ることができ、シートのはがれによる庫内灯の絶縁劣化の危険を防止するとともに、機器使用者に眩しさを与えない加熱調理装置を提供することが
できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の加熱調理装置は、パンチング面を加熱室壁面の加熱室外側に段差を設けた面に構成し、パンチング面の加熱室内側と加熱室外側の両面に異なる材料のシートを貼りつけることで、被加熱物から飛散した汚れなどは簡単にふき取ることができ、シートのはがれによる庫内灯の絶縁劣化を防止するとともに、機器使用者に眩しさを与えない加熱調理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理装置の扉を開いた状態の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における加熱調理器の庫内灯の取り付け部の構成を示す要部斜視図
【図3】本発明の実施の形態1における加熱調理器のパンチング面のシートの貼付け部の要部断面図
【図4】本発明の実施の形態1における加熱調理器のLED素子を実装した基板の概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、被加熱物を収納する加熱室と、前記加熱室を照射する庫内灯と、前記加熱室壁面に複数の小穴で形成したパンチング面を有し、前記パンチング面の加熱室内側と加熱室外側の両面に透明度の異なるシートを貼りつける構成にすることにより、レストランなど、おもに業務用として使用される加熱調理装置において、加熱調理の使用頻度が高く被加熱物から飛散した汚れなどがパンチングの小穴を通過してシートの接着剤に付着することがなくなり、容易にふき取ることが可能になる。
【0013】
また、仮に加熱室内側のシートが、被加熱物から飛散した油などにより接着力が低下しはがれてしまったとしても、加熱室外側のシートにより加熱室内からの蒸気の進入を防ぐことができるので、結露による庫内灯の絶縁劣化を防止することができる。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明の庫内灯を複数のLED素子が実装された基板で構成することにより、消費電力を抑えるとともに点灯寿命が長くなるので、レストランなどおもに業務用として使用される加熱調理装置において、庫内灯の交換といったメンテナンスを必要とすることがなくなる。
【0015】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明のシートを加熱室内側と加熱室外側で透明度の異なる材料で構成することにより、光源が強いLED照明でも機器使用者に眩しさを与えなくする程度に加熱室内の照度を調整することができる。
【0016】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の加熱室外側に貼り付けるシートに光を拡散させる拡散シートを使用することにより、光源が強いLED照明でも機器使用者が直接光を見ても眩しさを与えなくすることができる。
【0017】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明のパンチング面を加熱室壁面の加熱室外側に段差を設けた面に構成させることにより、被加熱物から飛散した油などが加熱室内側のシートの接着部に侵入するのを防止し、シートのはがれを防ぐことができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理装置の扉を開いた状態の斜視図、図2は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の庫内灯の取り付け部の構成を示す要部斜視図、図3は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器のパンチング面のシートの貼付け部の要部断面図である。
【0020】
図1において、加熱調理装置は、前面を開放した加熱室10を区画形成した加熱調理装置本体17と、加熱室10の前面開口を開閉する扉11と、加熱室10内を加熱する加熱手段(マグネトロン(図示せず))とを備えている。加熱室10内の側壁面には、庫内灯窓12が形成されている。
【0021】
庫内灯窓12は、複数の細かいパンチ孔(小穴)で形成したパンチング面を有し、透光性の開口部であり、加熱室からの熱気や被加熱物から飛び散った汚れなどを防ぐ目的でシートにより遮蔽されている。
【0022】
また、加熱室10の前面開口上部には、加熱条件などの設定を行う操作部14と、この操作部14で設定された各種条件や残時間などを表示する表示部15が装備されている。加熱室10の外側には外装16により覆われ部品の露出を防いでいる。
【0023】
図2において、庫内灯13は加熱室10と外装16の間の空間に、庫内灯取付板18により庫内灯窓12に対向する面に傾斜をもたせて固定されており、加熱室10の前面開口からの視野方向に対して死角となる位置に配置されている。庫内灯13にLED素子のような発光体を使用すると、強い指向性を持つ特徴があるため、加熱室10の前面開口から機器使用者が覗き込んでも眩しさを抑えることができる。
【0024】
図3において、加熱室10の前面側から向かって左側の側面上部であって、かつ前面開口部近くに、パンチ穴を有する庫内灯窓12が、設けられている。この庫内灯窓12の庫内側・庫外側の両面には、庫内側シート21(シート)と庫外側シート22(シート)が、接着剤22a、22bにより接着固定されている。また、段差部10aが、加熱室10の側面を加熱室外側に突出させ、段差を設けて形成されている。庫内灯窓12は、この段差部10aに設けられており、庫内で調理を行った時に飛散した油が、庫内灯窓12より上方の加熱室内面に付着しても、段差部10aの凹みにより、庫内灯窓12の下方へ滴下し、庫内側シート21の接着面に油が付着しにくい構造になっている。
【0025】
さらに、庫内側シート21は段差部10aの内側に接着固定されているので、加熱室内の汚れの拭き取り時に庫内側シート21の端面がふれにくくなり、剥がれるのを防止することができる。
【0026】
庫内側シート21と庫外側シート22は透明度の異なる材料で構成されており、庫内側シート21は光を透過する透明シート、庫外側シート22は光を拡散する半透明の拡散シートで構成されている。
【0027】
この構成にすることで、レストランなどで頻繁に加熱調理動作をおこない、ごく稀に被加熱物から飛散した油などにより接着力が低下し庫内側シート21が剥がれるようなことが発生しても、庫外側シート22により加熱室内からの蒸気の進入を防ぐことができるので、結露による庫内灯の絶縁劣化を防止することができるだけでなく、庫外側シート22は光を拡散させる拡散シートを使用しているので、光源が強いLED照明でも機器使用者が直接光を見ても眩しさを与えなくすることができる。
【0028】
図4は本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の庫内灯のLED素子を実装した
基板の概略図である。
【0029】
図4において、庫内灯13はLED基板30にLED素子31(半導体発光素子)を複数個実装した形態をしている。また、複数個のLED素子31でセルを構成し、セル単位で並列にL1、L2、L3の回路が接続され、接続端子32を介して制御基板(図示せず)に信号が伝達される。複数のLED素子でセルを構成することでそれぞれのセルの光源が広がり、直進性の強いLED素子の光源でも加熱室を広範囲に照らしだし、加熱室内の明暗を低減することができる。
【0030】
また、本実施の形態では複数個のLED素子でセルを構成する説明を行ったが、輝度などLED素子の特性によっては単品のLED素子で構成することも可能である。
【0031】
以上のように、本実施の形態においては、複数の小穴で形成したパンチング面を加熱室壁面の加熱室外側に段差を設けた面に構成し、パンチング面の加熱室内側と加熱室外側の両面に異なる材料のシートを貼りつける構成とすることにより、被加熱物から飛散した汚れなどは簡単にふき取ることができ、シートのはがれによる庫内灯の絶縁劣化を防止するとともに、機器使用者に眩しさを与えない加熱調理装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明にかかる加熱調理装置は、長寿命で且つ消費電力が少ないLED素子を庫内灯として使用し、パンチング面を加熱室壁面の加熱室外側に段差を設けた面に構成し、そのパンチング面の加熱室内側と加熱室外側の両面に透明度の異なる材料のシートを貼りつけたことで、被加熱物から飛散した汚れなどは簡単にふき取ることができる。
【0033】
また、シートのはがれによる庫内灯の絶縁劣化の危険を防止するとともに、機器使用者に眩しさを与えない加熱調理装置を提供することができることから、加熱調理の使用頻度が高く、省エネ性能ならび高耐久性能が求められる、レストランなどのユーザーに利用される業務用の加熱調理装置に有効である。
【符号の説明】
【0034】
10 加熱室
10a 段差部
12 庫内灯窓
13 庫内灯
21 庫内側シート(シート)
22 庫外側シート(シート)
30 LED基板
31 LED素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収納する加熱室と、前記加熱室を照射する庫内灯と、前記加熱室壁面に複数の小穴で形成したパンチング面を有し、前記パンチング面の加熱室内側と加熱室外側の両面にシートを貼りつけた加熱調理装置。
【請求項2】
庫内灯は、複数のLED素子が実装された基板で構成されている請求項1に記載の加熱調理装置。
【請求項3】
シートは加熱室内側と加熱室外側で透明度の異なる材料で構成されている請求項1または2に記載の加熱調理装置。
【請求項4】
加熱室外側に貼り付けるシートは、光を拡散させる拡散シートを使用する請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理装置。
【請求項5】
パンチング面は、加熱室壁面に加熱室外側に段差を設けた面に構成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−96616(P2013−96616A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238352(P2011−238352)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】