説明

加硫ゴム製造用クロロプレンポリマーラテックス組成物及びその製造方法

【課題】 クロロプレンゴムの架橋を安定的に向上させ、優れたゴム物性を有する加硫ゴムを製造し得るクロロプレンポリマーラテックス組成物を提供する。
【解決手段】 クロロプレンポリマー100重量部に対して、2〜20重量部のハイドロタルサイトを含有することを特徴とする加硫ゴム製造用クロロプレンポリマーラテックス組成物及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクロロプレンポリマーを主成分とするラテックス組成物及びその製造方法に関するものである。詳しくは加硫ゴム製品を得るためのクロロプレンポリマーラテックス組成物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロロプレンゴムは各種合成ゴムの中でも各物性のバランスが良好であるため、幅広い用途に使用されている。それらのうち水系接着剤用途、アスファルト改質剤、浸漬成型用途にはチップ状の原料ゴムとしてではなく、ポリマーラテックスとして多く使用されている。中でも浸漬成型用途においては、家庭用、産業用、手術用等の手袋の主原料のひとつとしてクロロプレンポリマーラテックスが位置付けられている。
【0003】
一般にクロロプレンゴムから加硫ゴム製品を製造する場合、ゴムチップに充填剤、補強剤、老化防止剤、滑剤、可塑剤、受酸剤、酸化亜鉛、加硫促進剤、硫黄等を配合したコンパウンドを作製し、プレス成型機などの加熱により加硫反応を起こさせ加硫ゴムを得ている。
【0004】
一方、クロロプレンポリマーラテックスを使用した浸漬成型にて加硫ゴム製品を製造するには、クロロプレンポリマーラテックスに、充填剤、補強剤、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛、加硫促進剤、硫黄等を水に分散させた懸濁液、さらに必要により乳化剤、粘度調整剤およびpH調整剤を添加したラテックス組成物を作製し、その中へ凝集剤を含浸させた鋳型を浸漬することでゴム膜を形成させ、そのままオーブン等で加熱し、乾燥および加硫するという手法が一般的である。
【0005】
クロロプレンの加硫反応はポリマー構造に含まれる1,2−結合単位の塩素原子の脱離を伴い、それにより塩酸が生成される。系中のpHが低下すると加硫速度が低下する加硫促進剤が多く、そのため受酸剤を組成物中に含有させpH低下を抑制し、加硫反応速度を維持する必要がある。クロロプレンゴムチップから加硫ゴム製品を生産する際にコンパウンド中に添加する受酸剤としては、酸化マグネシウムが受酸能力およびコストの面から最も優れており、一般に広く使用されている。しかし浸漬用途向けのラテックス組成物に添加するための分散液を作製する工程において、酸化マグネシウムは水と反応し水酸化マグネシウムに変化することから、安定した分散液が作成できず、結果としてラテックス組成物中に配合することができない。従って浸漬用途向けの配合は、酸化マグネシウムのような高活性な受酸剤を含有せず、加硫剤と同時に弱い受酸剤として働く酸化亜鉛を多量に添加する方法が一般的である(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
しかしクロロプレンゴムの架橋効率を安定的に向上させるには、高活性の受酸剤の添加が必要であり、クロロプレンポリマーラテックス組成物に添加できる受酸剤分散液が要望されている。
【0007】
【非特許文献1】エマルジョン・ラテックスハンドブック編集委員会編、「エマルジョン・ラテックスハンドブック」、初版、株式会社大成社、昭和50年3月、p.541〜p.542
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加硫ゴム製品を得るクロロプレンポリマーラテックス組成物であり、架橋効率を安定的に向上させるため、加硫反応中に発生する塩酸を効率的に補足し得る受酸剤を含有する加硫ゴム製造用クロロプレンポリマーラテックス組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記した課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、クロロプレンポリマーラテックスに、受酸剤としてハイドロタルサイトの懸濁液を添加することで、加硫反応中に発生する塩酸を効率的に補足でき、それにより架橋効率が向上することを見出し本発明に至った。すなわち、本発明は、クロロプレンポリマー100重量部に対して、2〜20重量部のハイドロタルサイトを含有することを特徴とする加硫ゴム製造用クロロプレンポリマーラテックス組成物、及びその製造方法である。
【0010】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明の加硫ゴム製造用クロロプレンポリマーラテックス組成物は、クロロプレンポリマー100重量部に対して、2〜20重量部のハイドロタルサイトを含有するものである。このハイドロタルサイトが受酸剤として機能するものである。
【0012】
本発明のクロロプレンポリマーラテックス組成物に含有されるハイドロタルサイトは、一般的には下記構造式(1)で表される化合物であり、層状で鱗片状の結晶構造を有している。
【0013】
MgAl(OH)16CO・4HO (1)
ハイドロタルサイトの含有量は、クロロプレンポリマーを100重量部として、2〜20重量部であることが必要である。ハイドロタルサイトが2重量部未満であると受酸剤としての能力が不十分であり、20重量部を超えるとラテックス組成物の粘度が大きく上昇し、浸漬による成型が困難となる。4〜10重量部が好ましい。
【0014】
ハイドロタルサイトの結晶水は焼成により排除可能であり、一般的に焼成物として販売もされているが、本発明のクロロプレンポリマーラテックス組成物においては、ラテックス安定性維持のために、ハイドロタルサイトは水に懸濁させた分散液状態にて安定である必要があり、未焼成物のハイドロタルサイトを用いることが好ましい。
【0015】
本発明の加硫ゴム製造用クロロプレンポリマーラテックス組成物の製造方法は、ラテックスの安定性を維持し、凝集物が発生することを防止するため、クロロプレンポリマーラテックスにハイドロタルサイトを粉体のまま直接添加することよりも、乳化剤とともに水へ添加、撹拌することによりハイドロタルサイトを含む懸濁液を予め作製し、クロロプレンポリマーラテックスへ添加することが好ましい。
【0016】
ハイドロタルサイトを含む懸濁液におけるハイドロタルサイトの濃度は特には限定しないが、全固形分の低下を防止し、加硫ゴムの生産性を向上させ、かつ、懸濁液の濃度を適度に維持して、組成物生産時の作業性を向上させるため、30〜80重量%が好ましい。
【0017】
ハイドロタルサイトを含む懸濁液で使用される乳化剤は一般に用いられる界面活性剤であれば、特に限定するものではなく、カルボン酸塩型、スルホン酸塩型、硫酸塩型等のアニオン型乳化剤及びノニオン型乳化剤等が用いられ、具体的には、不均化ロジン酸のアルカリ金属塩、ロジン酸のアルカリ金属塩、高級脂肪酸アルカリ金属塩またはアンモニウム塩、カゼインのアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルアリール硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドとの縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアシルエステル等が挙げられ、単独または2種以上の併用が可能である。乳化剤の添加量はその種類により最適範囲は異なるが、ハイドロタルサイトを含む懸濁液の安定性を維持できる範囲として、ハイドロタルサイト100重量部に対し0.01〜15重量部が好ましく、0.05〜10重量部が特に好ましい。
【0018】
本発明の加硫ゴム製造用クロロプレンポリマーラテックスにおけるクロロプレンポリマーラテックスは、2−クロロ−1,3−ブタジエンおよび連鎖移動剤からなる単量体混合物、または2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエンと共重合可能な少なくとも1種のコモノマーおよび連鎖移動剤からなる単量体混合物の乳化重合により得られるポリマーラテックスである。
【0019】
連鎖移動剤としては、一般のラジカル重合に用いられる化合物であれば、特に限定するものではなく、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジブチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンスルフィド類、ヨウ化ベンジル、ヨードホルム等が挙げられ、単独または2種以上で使用される。連鎖移動剤の量としては、分子量調整のため一般のラジカル重合で使用される量であれば特に限定するものではないが、得られる重合体の分子量を目的通りにするために、連鎖移動剤以外の単量体混合物100重量部に対して0.01〜1重量部であることが好ましく、0.1〜0.5重量部がさらに好ましい。
【0020】
2−クロロ−1,3−ブタジエンと共重合可能な少なくとも1種のコモノマーとしては、ラジカル重合可能な単量体であれば特に限定するものではなく、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン等のモノビニル化合物、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和基含有カルボン酸類、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の不飽和基含有カルボン酸エステル類、イソプレン、1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン等の共役ジエン化合物等が挙げられ、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、1−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンが2−クロロ−1,3−ブタジエンとの共重合が容易であり、得られるクロロプレンゴムの改質効果が大きいために特に好ましい。2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエンと共重合可能な少なくとも1種のコモノマーおよび連鎖移動剤からなる単量体混合物においては、2−クロロ−1,3−ブタジエンと、2−クロロ−1,3−ブタジエンと共重合可能な少なくとも1種のコモノマーとの割合は、共重合可能な量比であれば特に限定するものではないが、クロロプレンとしての特性を維持するために,重量比で25/75〜99/1が好ましく、クロロプレンの特徴を強く発揮させるために、80/20〜99/1がさらに好ましい。
【0021】
クロロプレンポリマーラテックスを得るための乳化剤としては、一般に乳化重合に用いられる界面活性剤であれば、特に限定するものではなく、カルボン酸塩型、スルホン酸塩型、硫酸塩型等のアニオン型乳化剤及びノニオン型乳化剤等が用いられ、具体的には、不均化ロジン酸のアルカリ金属塩、ロジン酸のアルカリ金属塩、高級脂肪酸アルカリ金属塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルアリール硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドとの縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアシルエステル等が挙げられ、単独または2種以上の併用が可能である。各乳化分散剤の添加量はその種類により最適範囲は異なるが、乳化重合を安定に実施できる範囲として、連鎖移動剤以外の単量体混合物100重量部に対して0.1〜15重量部が好ましく、0.1〜10重量部が特に好ましい。
【0022】
クロロプレンポリマーラテックスを得るための重合開始剤としては、フリーラジカル生成物質であれば、特に限定するものではなく、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸化物、過酸化水素、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の無機又は有機過酸化物等が挙げられ、これら単独または上記化合物と硫酸第一鉄、ハイドロサルファイトナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオ硫酸塩、チオ亜硫酸塩、有機アミン等の還元性物質を併用したレドックス系が使用される。
【0023】
クロロプレンポリマーラテックスを得るための重合を停止する重合転化率は、クロロプレンポリマーが得られる範囲内であれば、特に限定するものではないが、生産性および加硫物の品質を維持するため、80〜100%が好ましく、85〜99%が特に好ましい。ここで、重合を停止する際に必要に応じて重合停止剤を添加することも可能であり、重合停止剤としては、ラジカルを捕捉する化合物であれば特に限定するものではなく、例えば、フェノチアジン、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ハイドロキノン、4−メトキシハイドロキノン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン等のラジカル禁止剤等が挙げられ、単独または2種以上が使用できる。各重合停止剤の添加量はその種類により最適範囲は異なるが、重合を確実に停止でき、かつ得られたクロロプレンポリマーの安定性を確保できる範囲として、連鎖移動剤以外の単量体混合物100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.02〜2重量部が特に好ましい。
【0024】
クロロプレンポリマーラテックスを得るための重合における重合温度は0〜60℃の範囲で行うことができ、好ましくは5〜50℃の範囲である。
【0025】
クロロプレンポリマーラテックスを得るため、重合終了後に実施する未反応単量体の除去方法としては、特に限定はしないが、例えば減圧下スチームストリッピングが挙げられる。
【0026】
本発明の加硫ゴム製造用クロロプレンポリマーラテックス組成物は上記のクロロプレンポリマーラテックスおよびハイドロタルサイト懸濁液以外に加硫剤として作用する酸化亜鉛等の金属酸化物および加硫促進剤を含有することが好ましく、さらに必要に応じて、硫黄、充填剤、補強剤、可塑剤、滑剤、老化防止剤、着色剤、湿潤剤、消泡剤、乳化剤、pH安定剤、防着剤、粘度調整剤等を含有することも可能である。
【0027】
本発明の加硫ゴム製造用クロロプレンポリマーラテックス組成物は、含有するハイドロタルサイトによって加硫中に発生する塩酸を効率的に補足することができる。よって通常の浸漬成型と同様の方法に従い、目的とする加硫ゴム成型物の鋳型に凝固剤を塗布または含浸させ、それをラテックス組成物に浸漬することでゴム膜を形成させることができ、さらにゴム膜を鋳型とともに水に浸け、余分な乳化剤などを水洗除去した後、鋳型とともに加熱乾燥することで加硫物を得ることが可能である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の加硫ゴム製造用クロロプレンポリマーラテックス組成物は、懸濁状態のハイドロタルサイトを含有しているため、加硫反応において発生する塩酸を効率的に補足することができ、従来のクロロプレンポリマーラテックスに比較して加硫密度が高く、破断強度およびモジュラスの高い加硫物を製造することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0030】
実施例中のクロロプレンポリマーラテックス組成物の固形分は、ラテックス組成物約2gを105℃熱風乾燥機において2時間乾燥させた際の、乾燥前後の重量より評価した。またラテックス組成物の粘度はビスメトロン回転粘度計(芝浦システム社製)を用い、25℃、No.2またはNo.3ローター、60rpmの条件にて測定した。
【0031】
また加硫物特性は、JIS K6251(1993年度版)に従い、ダンベル状4号型の試験片を用い、引張り速度500mm/分、23℃の条件により評価した。
【0032】
実施例1
2−クロロ−1,3−ブタジエン100重量部、n−ドデシルメルカプタン0.300重量部を10Lの撹拌機付きオートクレーブに仕込み、ロジン酸カリウム5重量部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルムアルデヒド縮合物0.7重量部、水酸化ナトリウム0.6重量部、蒸留水90重量部からなる乳化液をそれに添加し、充分に窒素置換した後、撹拌により乳化させた。3重量%ハイドロサルファイトナトリウム水溶液を添加し、重合器内が40℃一定となるようにジャケット温度を制御しながら、0.2重量%過硫酸カリウム水溶液の連続滴下により重合を開始した。
【0033】
単量体に対する転化率が99%となった時点で、フェノチアジン0.03重量部をトルエンに溶解しドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液にて乳化したものを重合停止剤として添加し重合を終了させた。減圧スチームストリッピング法により残存する未反応単量体を除去し、クロロプレン単独重合体のポリマーラテックスを得た。
【0034】
一方、ハイドロタルサイト(協和化学工業株式会社製DHT−6(未焼成品))、酸化亜鉛、硫黄、加硫促進剤CA(N,N‘−ジフェニルチオウレア)、加硫促進剤ZnEDC(ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛)それぞれを100重量部として、アンモニウムガゼイン3重量部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物3重量部、蒸留水100重量部をそれぞれ混合し、ボールミルにて1日撹拌することにより、各配合剤の安定な懸濁液を作製した。
【0035】
表1に示す組成となるように、クロロプレンポリマーラテックスに各配合剤の懸濁液を添加し、1時間撹拌することによりクロロプレンポリマーラテックス組成物を作製した。ラテックス組成物の固形分および粘度を表1に示す。
【0036】
25%硝酸カルシウム水溶液に浸漬し、乾燥させた平板状の鋳型をクロロプレンポリマーラテックス組成物に浸漬することで、平板上にゴムフィルムを凝集形成させた。鋳型とともに30℃温水に浸し、水溶性の不純物を溶出させた後、120℃の熱風乾燥機にて30分および50分間加熱し、乾燥および加硫を行い厚さ約0.25mmの加硫ゴムシートを得た。加硫物の常態物性を測定した。加硫物特性を表1に示す。
【0037】
【表1】

加硫密度が高く、破断強度およびモジュラスが高い優れたゴム物性を有する加硫物が得られた。
【0038】
実施例2
実施例1と同様に作製したクロロプレン単独重合体のポリマーラテックスと各配合剤の懸濁液を表1に記載した組成になるように配合し、クロロプレンポリマーラテックス組成物を作成した。ラテックス組成物の固形分および粘度を表1に示す。
【0039】
さらに実施例1と同様の方法にて加硫ゴムシートを作製し、加硫物の常態物性を測定した。加硫物特性を表1に示す。
【0040】
加硫密度が高く、破断強度およびモジュラスが高い優れたゴム物性を有する加硫物が得られた。
【0041】
実施例3
2−クロロ−1,3−ブタジエン95重量部、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン5重量部、n−ドデシルメルカプタン0.320重量部とし、重合停止転化率を96%とした以外は実施例1と同様の方法にてクロロプレンポリマーラテックスを作製した。実施例1と同様に作製した各配合剤の懸濁液を表1に記載した組成になるように配合し、クロロプレンポリマーラテックス組成物を作成した。ラテックス組成物の固形分および粘度を表1に示す。
【0042】
さらに実施例1と同様の方法にて加硫ゴムシートを作製し、加硫物の常態物性を測定した。加硫物特性を表1に示す。
【0043】
加硫密度が高く、破断強度およびモジュラスが高い優れたゴム物性を有する加硫物が得られた。
【0044】
実施例4
実施例3と同様に作製したクロロプレンポリマーラテックスおよび実施例1と同様に作製した各配合剤の懸濁液を表1に記載した組成になるように配合し、クロロプレンポリマーラテックス組成物を作成した。ラテックス組成物の固形分および粘度を表1に示す。
【0045】
さらに実施例1と同様の方法にて加硫ゴムシートを作製し、加硫物の常態物性を測定した。加硫物特性を表1に示す。
【0046】
加硫密度が高く、破断強度およびモジュラスが高い優れたゴム物性を有する加硫物が得られた。
【0047】
実施例5
n−ドデシルメルカプタン0.250重量部とし、重合温度を35℃、重合停止転化率を90%とした以外は実施例1と同様の方法にてクロロプレン単独重合体のポリマーラテックスを作製した。実施例1と同様に作製した各配合剤の懸濁液を表1に記載した組成になるように配合し、クロロプレンポリマーラテックス組成物を作成した。ラテックス組成物の固形分および粘度を表1に示す。
【0048】
さらに実施例1と同様の方法にて加硫ゴムシートを作製し、加硫物の常態物性を測定した。加硫物特性を表1に示す。
【0049】
加硫密度が高く、破断強度およびモジュラスが高い優れたゴム物性を有する加硫物が得られた。
【0050】
実施例6
実施例5と同様の方法にてクロロプレン単独重合体のポリマーラテックスを作製した。実施例1と同様に作製した各配合剤の懸濁液を表1に記載した組成になるように配合し、クロロプレンポリマーラテックス組成物を作成した。ラテックス組成物の固形分および粘度を表1に示す。
【0051】
さらに実施例1と同様の方法にて加硫ゴムシートを作製し、加硫物の常態物性を測定した。加硫物特性を表1に示す。
【0052】
加硫密度が高く、破断強度およびモジュラスが高い優れたゴム物性を有する加硫物が得られた。
【0053】
比較例1
実施例1と同様に作製したクロロプレン単独重合体のポリマーラテックスと各配合剤の懸濁液を表2に記載した組成になるように配合し、クロロプレンポリマーラテックス組成物を作成した。ラテックス組成物の固形分および粘度を表2に示す。
【0054】
さらに実施例1と同様の方法にて加硫ゴムシートを作製し、加硫物の常態物性を測定した。加硫物特性を表2に示す。
【0055】
【表2】

実施例ではハイドロタルサイトが担っていた高活性の受酸剤として機能する化合物が存在しないため、加硫密度が低く、破断強度およびモジュラスの低い加硫物となってしまった。
【0056】
比較例2
実施例1と同様に作製したクロロプレン単独重合体のポリマーラテックスと各配合剤の懸濁液を表2に記載した組成になるように配合し、クロロプレンポリマーラテックス組成物を作成した。ラテックス組成物の固形分および粘度を表2に示す。
【0057】
さらに実施例1と同様の方法にて加硫ゴムシートを作製し、加硫物の常態物性を測定した。加硫物特性を表2に示す。
【0058】
実施例ではハイドロタルサイトが担っていた高活性の受酸剤として機能する化合物が存在しないため、加硫促進剤を増量しても加硫密度が低く、破断強度およびモジュラスが低く、さらに破断伸びも低い加硫物となってしまった。
【0059】
比較例3
実施例1と同様に作製したクロロプレン単独重合体のポリマーラテックスと各配合剤の懸濁液を表2に記載した組成になるように配合し、クロロプレンポリマーラテックス組成物を作成した。ラテックス組成物の固形分および粘度を表2に示す。
【0060】
さらに実施例1と同様の方法にて加硫ゴムシートを作製し、加硫物の常態物性を測定した。加硫物特性を表2に示す。
【0061】
実施例よりもハイドロタルサイト含有量が少ないため受酸剤として機能が十分でなく、加硫密度が低く、破断強度およびモジュラスが低く、さらに破断伸びも低い加硫物となってしまった。
【0062】
比較例4
実施例1と同様に作製したクロロプレン単独重合体のポリマーラテックスと各配合剤の懸濁液を表2に記載した組成になるように配合し、クロロプレンポリマーラテックス組成物を作成した。ラテックス組成物の固形分および粘度を表2に示す。
【0063】
ハイドロタルサイトを多く含有するためラテックス組成物の粘度が非常に高くなり、浸漬成型によって均一なゴムフィルムが成型できず加硫ゴム物性測定に至らなかった。
【0064】
比較例5
実施例3と同様に作製したクロロプレンポリマーラテックスおよび実施例1と同様に作製した各配合剤の懸濁液を表2に記載した組成になるように配合し、クロロプレンポリマーラテックス組成物を作成した。ラテックス組成物の固形分および粘度を表2に示す。
【0065】
さらに実施例1と同様の方法にて加硫ゴムシートを作製し、加硫物の常態物性を測定した。加硫物特性を表2に示す。
【0066】
実施例ではハイドロタルサイトが担っていた高活性の受酸剤として機能する化合物が存在しないため、酸化亜鉛および加硫促進剤を増量しても加硫密度が低く、破断強度およびモジュラスが低く、さらに破断伸びも低い加硫物となってしまった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレンポリマー100重量部に対して、2〜20重量部のハイドロタルサイトを含有することを特徴とする加硫ゴム製造用クロロプレンポリマーラテックス組成物。
【請求項2】
クロロプレンポリマーラテックスに、ハイドロタルサイトを含む懸濁液を添加することを特徴とする請求項1記載の加硫ゴム製造用クロロプレンポリマーラテックス組成物の製造方法。
【請求項3】
加硫ゴムが浸漬成型により製造されることを特徴とする請求項1記載の加硫ゴム製造用クロロプレンポリマーラテックス組成物。

【公開番号】特開2009−108195(P2009−108195A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281925(P2007−281925)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】